JP4392917B2 - 潤滑剤分子量制御法並びに磁気ディスク,磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑剤分子量制御法並びに磁気ディスク,磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードタイプの磁気ディスク装置は、コンピューターの高性能化に伴って、大容量化,小型軽量化が急速に進展している。磁気ディスクの記録密度は年率80%以上のスピードで増加を続けており、これに伴ってデータの処理スピードの高速化も要求されている。今後も市場では,パソコンやワークステーションのデータ処理能力の進歩に伴って、磁気ディスクの高記録密度化つまりは、磁気ディスク装置の大容量化とデータ処理スピードの高速化(データの高速転送)がさらに強く求められると予想される。
【0003】
しかし、磁気ディスクの高記録密度化とデータの高速転送に伴って磁気ディスク装置の信頼性を左右する磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での摺動状態はより過酷になっている。磁気ディスクの高記録密度化のためヘッド浮上量の低下が進んでおり,すでに浮上量hf(flying height)は、30nm以下にまで低下している。このため,磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダーが接触摺動する機会が増加し、強い摩擦力や摩耗が発生し易くなっている。
【0004】
また、データの高速転送を実現するために磁気ディスクの高速回転化が進められており、すでに市場では10000rpm 以上の回転数で回転する磁気ディスク装置が発売されている。磁気ディスクを10000rpm 以上で高速回転させると磁気ディスク表面に生じる空気との剪断力と遠心力とによって磁気ディスク表面に形成した潤滑膜(剤)が飛散し易くなる。また、スピンドルモーターの高速回転化と装置の小形化に伴う実装密度の増大により装置内部の温度が上昇している。空気との剪断力と遠心力並びに装置内部の温度上昇は、磁気ディスクの回転数の増大とともに高くなる傾向にある。潤滑膜(剤)が飛散すると初期に設定した磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間の信頼性設計が維持できなくなり、さらに前記ヘッド浮上量の低下も加わり、摺動信頼性が大幅に低下する危険性がある。磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での摺動信頼性が低下すると正常な記録再生ができなくなるばかりか最悪の場合、磁気ディスクのクラッシュによって記録したデータが消失する。従って、磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での摺動耐久性の確保は,磁気ディスク装置全体の信頼性のなかでも最も重要な位置づけとなっており、今後の記録密度の増大を実現するための最重要課題と言える。磁気ディスクの高記録密度化とデータの高速転送を実現するには潤滑剤自身の性能を向上させることは勿論のこと潤滑膜(剤)の飛散も低減して磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダー間での摺動耐久性を十分に確保する必要がある。
【0005】
潤滑膜(剤)の飛散を低減する手法としては,潤滑剤とディスク表面との吸着力を強くする方法と潤滑剤の分子量を高くする方法とが考えられる。潤滑剤とディスク表面との吸着力を強くする方法については、すでに市販されている10000 rpm の磁気ディスク装置において高吸着性の潤滑剤を採用している。しかし、高吸着性の潤滑剤は、飛散量は少ないものの、接触摺動耐久性に効果的なフリー層(吸着が弱いかもしくは吸着されない潤滑剤の層)が確保できないため、摺動耐久性が低下する問題があり、磁気ディスク用潤滑剤の機能として十分とは言えない。
【0006】
一方、潤滑剤の高分子量化を制御する手法についてだが、少なくとも現在磁気ディスク用潤滑剤として広く使用されているZ−Dol(アウジモント社製)潤滑剤で分子量が2000のものを4000程度にしても回転数10000rpm 以上で回転する磁気ディスク装置での十分な耐飛散性を実現できない。このため、潤滑剤の分子量を更に高くする必要がある。潤滑剤の分子量を高くする技術としては、これまでに溶媒抽出法等によって低分子量成分や不純物を除去する方法が特許番号第2677074号,特開平5−20673号,特開平5−234066号,特開平5−109053号,特開平6−215347号,特開平7−141644号,特開平9−291296号,特開平9−157674号,特開平10−53781 号に提案されている。溶媒抽出法は、蒸留法や分取液体クロマト法等と比較して大規模な設備を必要とせず、比較的精度良く、容易に目的とする平均分子量や分子量分布の潤滑剤を得ることができる。しかし、溶媒抽出法は、良溶媒と貧溶媒に対する各分子量の溶解性の違いを利用して分画する手法のため、同じ分子構造の潤滑剤でも分子量分布が異なる場合には良溶媒と貧溶媒の比率をその都度変える必要がある。また、同じ分子構造と分子量分布の潤滑剤でも温度や水分などの要因によって良溶媒と貧溶媒に溶解する潤滑剤の分子量が変化して目的とする平均分子量や分子量分布の潤滑剤を得ることができないなどの問題がある。さらに、潤滑剤の種類によっては末端官能基の置換率が低下したり、潤滑剤の種類が変わった場合は溶媒の種類も変える必要があり、潤滑剤の種類に対しての汎用性に乏しい等の問題もある。これらの事象は、本実施例と比較例に記載する。一方、分取液体クロマト法やGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法,蒸留法で工業的に対応した相当量の潤滑剤を分子量制御するためには、大規模な設備が必要となり経済的に不利である。
【0007】
回転数が10000rpm 以上の高速回転磁気ディスク装置の回転数は、今後も増大する傾向にあり、磁気ディスクの回転数の増大とヘッド浮上量の低下に対して飛散しにくく摺動信頼性に優れる具体的な潤滑膜(剤)の技術的な見通しが立たない状況にある。このため、摺動信頼性に優れる潤滑剤を表面に形成した磁気ディスクやそれらを搭載した磁気ディスク装置が得られていない。また、上記の分子量を高くする従来技術の課題を解決した潤滑剤の分子量制御法が無いのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
現在、市販されている磁気ディスクには、数平均分子量が2000〜6000程度のパーフロロポリエーテル潤滑剤が広く使用されており、例えば商品名フォンブリンZ−DOL,フォンブリンAM2001(アウジモント社製)などが挙げられる。これら市販のパーフロロポリエーテル潤滑剤は、数百から約15000程度までの分子量分布を有している。高速回転による空気との剪断や装置内の温度上昇によってこの内の低分子量成分が優先的に飛散する。従って、潤滑膜(剤)の飛散を低減するためには飛散し易い低分子量の潤滑剤成分を予め除去した潤滑剤を用いて磁気ディスク表面上に潤滑膜を形成する必要がある。
【0009】
潤滑剤の低分子量の潤滑剤成分の含有率が少なくなり、除去する低分子量側の分子量を高くするほど平均分子量は高くなる傾向にある。一般に潤滑剤の飛散は、分子量が高い程飛散しにくくなり、磁気ディスクの回転数に応じて潤滑剤の平均分子量、つまりは除去する低分子量側の量や分子量を調整する必要がある。ただし、潤滑剤の平均分子量を高くする場合に下記の点に留意しなければならない。
【0010】
まず、磁気ディスク装置の動作方式に対して潤滑剤の平均分子量の設定を考慮しなければならない。ヘッド浮上量の低下により磁気ヘッド・スライダーはシ−ク時にも接触摺動し易くなり、これによりディスク表面の潤滑剤がスライダーの摺動部に集められ易くなる。この様な状態の磁気ヘッド・スライダーは、ディスク起動時に強いスティクションを発生させ、さらに集められた潤滑剤の粘度が高くなる程(高分子量化)、よりスティクションが強くなる。従って、ディスク停止時に磁気ヘッド・スライダーがディスク表面上に接触状態で放置されるCSS方式の磁気ディスク装置では考慮すべき問題である。潤滑剤の粘度は一般に分子量の増大に伴って高くなる。このため、磁気ヘッド・スライダーが潤滑剤を掻き集めても強いスティクションが起こらない程度の粘度(分子量)の潤滑剤を選択すべきである。ただし、上記CSS方式の磁気ディスク装置でもモーターのトルクが強い場合にはある程度強いスティクションが発生しても磁気ディスクを起動できるのでより高分子量の潤滑剤、例えば平均分子量7000以上の潤滑剤の使用も可能である。
【0011】
なお、ディスク停止時に磁気ヘッド・スライダーがディスクの面外に退避するロード/アンロード方式では、磁気ヘッド・スライダーがディスク上にあるのは記録再生中に浮上する場合に限られるため、スティクションを特に考慮する必要はない。
【0012】
次に、潤滑剤の平均分子量を高くする場合に置換率の低下も防止しなければならない。平均分子量を高くしても潤滑剤の吸着力を確保する末端官能基の置換率が低下すると、潤滑剤は飛散してしまう。前記溶媒抽出法では、貧溶媒に対しては末端官能基と親和性が強いために選択的に末端に官能基のついた潤滑剤が溶解しやすく、逆に良溶媒側には末端官能基を持たない潤滑剤成分が優先的に溶解しやすくなる。このため、結果的には低分子量成分を除去した潤滑剤、すなわち良溶媒側の潤滑剤は高分子量化するが末端官能基の置換率が低下する。
【0013】
磁気ディスクの高速回転(10000rpm 以上)に対して潤滑剤の低分子量成分を除去して高分子量化し、且つ置換率も低下しない潤滑剤を得るためには、複雑な工程を必要とせず、比較的精度良く、且つ様々な種類や分子量分布の潤滑剤でも対応できる分子量制御技術を使う必要がある。また、大規模な設備を必要とせずコストの面でも有利である必要がある。この様な課題を解決できる技術で潤滑剤の分子量制御を行えば、飛散量が少なく摺動信頼性に優れる磁気ディスク並びに磁気ディスク装置を得ることができる。本発明は、上記の技術課題を解決する新規な分子量制御法並びにこの分子量制御法による潤滑剤を用いた磁気ディスク並びに磁気ディスク装置を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、大規模な設備を必要とせず、一定の圧力と流量で潤滑剤溶液を所定の分子量が分画できるフィルターに透過・循環させるだけで様々な潤滑剤の分画を可能とする限外ろ過法を用いて分子量を制御した潤滑剤を磁気ディスク表面に塗布して潤滑膜を形成する手法を考案し、低飛散で摺動信頼性に優れる磁気ディスク,磁気ディスク装置を得た。なお手段の具体的な内容は以下に記述されるものである。
【0015】
第一の手段は、構造式(1)のパーフロロポリエーテルからなる潤滑剤を、
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
分子量1000から3000の所定の分子量で分画可能で、アルコール系溶媒を介して該潤滑剤が透過可能となる処理を施された親水性の限外ろ過膜によって、該潤滑剤が数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御することを特徴とする潤滑剤分子量制御法。
【0016】
第二の手段は、非磁性基板表面上に少なくとも下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜を順に形成してなる磁気ディスクにおいて、該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式(1)のパーフロロポリエーテルからなり、
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
さらに、分子量1000から3000の所定の分子量を境に分画可能で、アルコール系溶媒を介して疎水性物質が透過可能となる処理を施された親水性の限外ろ過膜によって、該パーフロロポリエーテルが数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されていることを特徴とする磁気ディスク。
【0017】
第三の手段は、非磁性基板表面上に下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜が順に形成された磁気ディスクと該磁気ディスクを取り付けた10000rpm 以上で回転可能なスピンドルモーター並びに該磁気ディスクにデータを記録再生するための磁気ヘッド・スライダーと該磁気ヘッド・スライダーを該磁気ディスク表面近傍で作動させるためのアクチュエーター並びに制御回路を有し、該磁気ヘッド・スライダーが該磁気ディスク回転時のみ該磁気ディスクの面上にあり,該磁気ディスク停止時には必ず該磁気ディスクの外周側の面外に退避する機能を有し、データ転送速度が45MB/秒以上である磁気ディスク装置において,該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式のパーフロロポリエーテルからなり、
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
さらに、分子量1000から3000の所定の分子量で分画可能で、アルコール系溶媒を介して疎水性物質が透過可能となる処理を施された親水性の限外ろ過膜によって、該パーフロロポリエーテルが数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
【0018】
第四の手段は、非磁性基板表面上に少なくとも下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜を順に形成してなる磁気ディスクにおいて、該磁気ディスク表面の半径10mm以上25mm以下の範囲の領域にレーザーによって直径5.0μm 以下,高さ20nm以下のリング状の突起が規則的に配列された帯状のゾーンが存在し、該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式(1)のパーフロロポリエーテルを有し、
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
さらに、分子量1000から3000の所定の分子量で分画可能で、アルコール系溶媒を介して疎水性物質が透過可能となる処理を施された親水性の限外ろ過膜によって、該パーフロロポリエーテルが数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されていることを特徴とする磁気ディスク。
【0019】
第五の手段は、非磁性基板表面上に少なくとも下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜を順に形成してなる磁気ディスクであり、該磁気ディスク表面の半径10mm以上25mm以下の範囲の領域にレーザーによって直径5.0μm 以下,高さ20nm以下のリング状の突起が規則的に配列された帯状のゾーンが存在する磁気ディスクと該磁気ディスクを取り付けた10000rpm 以上で回転可能なスピンドルモーターと該磁気ディスクにデータを記録再生するための磁気ヘッド・スライダーと該磁気ヘッド・スライダーを該磁気ディスク表面近傍で作動させるためのアクチュエーター並びに制御回路を有し、該スピンドルモーターが停止時には該磁気ヘッド・スライダーが必ず該ゾーン上に待機し、データ転送速度が45MB/秒以上である磁気ディスク装置において、該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式(1)のパーフロロポリエーテルからなり、
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
さらに、分子量1000から3000の所定の分子量で分画可能で、アルコール系溶媒を介して疎水性物質が透過可能となる処理を施された親水性の限外ろ過膜によって、該パーフロロポリエーテルが数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
【0020】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の潤滑剤分子量制御法の構成
本発明に記載の潤滑剤分子量制御は、前記パーフロロポリエーテル潤滑剤の平均分子量や分子量分布を制御する目的で行った。具体的には、含フッ素系溶媒に前記パーフロロポリエーテル潤滑剤を溶解させた溶液を一定の圧力をかけながら均一な細孔を有するポリエーテルスルホンの膜(限外ろ過膜)に循環させ、細孔を透過する分子サイズと透過しない分子サイズの潤滑剤とに分画した。限外ろ過膜には様々なサイズの細孔を有する膜が各種準備されており、これらを組み合わせることにより、比較的容易に目的とする平均分子量や分子量分布に制御することができる。なお、本発明で使用したポリエーテルスルホンからなる限外ろ過膜は、親水性の膜である。一般に親水性の膜に対して、フッ素元素の含有率の高いパーフロロポリエーテル潤滑剤や含フッ素系溶媒等の疎水性の物質を透過させることは困難である。しかし本発明では、下記の要領で親水性である限外ろ過膜に対して疎水性の物質を透過させることを可能とした。まず、ポリエーテルスルホンからなる限外ろ過膜に純水を透過させる。この操作の主目的は、限外ろ過膜の表面に水分子を吸着させることである。次に、含フッ素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒を圧力をかけながら限外ろ過膜表面に循環させる。含フッ素系溶媒としては、アルコール系溶媒と相溶するHFE−7100,HFE−7200等のハイドロフロロエーテル系溶媒やバートレルXF等のハイドロフロロカーボン系溶媒等を使用する。アルコール系溶媒としては上記ハイドロフロロエーテル系溶媒やハイドロフロロカーボン系溶媒等に容易に混合可能なメチルアルコール,エチルアルコール,イソプロピルアルコール等が望ましい。これらにより限外ろ過膜表面の水分子がアルコールと置換して、限外ろ過膜の表面は、親水性でありながら疎水性の含フッ素系溶媒(ハイドロフロロエーテル系溶媒等)とも親和性をもつ表面に変えることできる。すなわち、水分子とは親和性の無いハイドロフロロエーテル系溶媒も、親水性でかつハイドロフロロエーテル系溶媒と相溶するアルコール分子に置換することによって膜を透過することができる。なお、初めから混合溶媒を循環させることも考えられるが、均一にアルコール分子を吸着させるためとポリエーテルスルホン膜の乾燥防止のため塗布されているグリセリン或いはやアルカリイオン金属類等のコンタミを除去するためにも混合溶媒の前に純水を透過させた方が望ましい。
【0021】
また、上記潤滑剤分子量制御を実現する装置は、前記の処理を施した限外ろ過膜を透過流路と循環流路を有する専用ホルダーに装着し、液循環装置から安定に溶液を透過・循環する構成になっている。この潤滑剤分子量制御装置は、溶液の液温を一定に保つ冷却ジャケットや溶液の処理工程を管理する液面センサー,タイマー等を具備しており、生産性にも十分配慮された構成となっている。また、溶液タンクや液循環ポンプ,配管等にはコンタミや溶出物の混入を極力防止する策を施している。
【0022】
(2)本発明の磁気ディスクの構成
本発明では二種類の磁気ディスク(タイプ(a),タイプ(b))を使用した。タイプ(a)の磁気ディスクは、ガラスからなる基板上にCr合金からなる下地膜を形成し、その上にCoCrTaPt等の磁性層,カーボンを主体とする保護膜、更にその上にパーフロロポリエーテルからなる潤滑膜を最外層として形成する構成である。
【0023】
ガラス基板の場合は硬度を高める目的で通常のもの(窓ガラスやコップ等に用いられるものはナトリウム含有量が5%程度,カリウム含有量が0〜1%程度)よりもナトリウム、及びカリウム含有量の多いものが好適である。ただ硬度と実用性を考慮するとナトリウムの含有量は10〜20%程度、カリウムの含有量は1〜5%程度が望ましい。磁性層は、目的とする記録密度を得るために構成材料を変えることが可能であり、これらはスパッタ法等で形成している。保護膜の材質は、カーボンが主体である。ただし、スパッタ法での成膜において、Ar/N2 ガス雰囲気下で成膜して硬度を高めている。なお、タイプ(a)の磁気ディスクは、磁気ヘッド・スライダーがディスク回転時にのみディスク面上に存在し、ディスク停止時にはディスク外周側の面外に必ず退避する(Load/Unload方式)磁気ディスク装置に搭載するため、磁気ディスクと磁気ヘッド・スライダーとの間でのスティクションを考慮する必要が無い。このため、タイプ(a)の磁気ディスク表面にはスティクションを防止するための突起を形成する必要が無く、表面は平滑である。
【0024】
タイプ(b)の磁気ディスクは、アルミ合金基板表面にNiP膜とCr膜を順に下地膜として形成し、その上にCoCrTaPt等の磁性層、カーボンを主体とする保護膜、更にその上にパーフロロポリエーテルからなる潤滑膜を最外層として形成する構成である。
【0025】
磁性層と保護膜は、タイプ(a)の磁気ディスクと同じ手法で形成している。タイプ(b)の磁気ディスクは、ディスク回転時には磁気ヘッド・スライダーがディスク面上で浮動し、ディスク停止時にはディスク面上に接触状態で待機する(Contact Start Stop方式)磁気ディスク装置に搭載するため、ディスク起動の際にディスクと磁気ヘッド・スライダーとの間でのスティクションを考慮する必要がある。このため、タイプ(b)の磁気ディスクの表面には、規則性のあるリング状の突起(以後レーザーゾーンテクスチャーと略称)が半径10mm以上25mm以下の内周部に形成されている。このレーザーゾーンテクスチャー部では強いスティクションが発生しない。磁気ヘッド・スライダーは、ディスク停止時には必ずレーザーゾーンテクスチャー部に戻って待機する。なお、レーザーゾーンテクスチャー部以外の表面部は平滑である。突起の最大高さは20nmである。
【0026】
また、本発明の潤滑膜はタイプa,タイプbの磁気ディスクともパーフロロポリエーテルで構成されている。具体的な潤滑剤の構造としては以下の通りである。
【0027】
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
なお、本発明では、いずれの潤滑剤も数平均分子量5500以上で、分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下,末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されており、低飛散性と摺動耐久性を両立している。
【0028】
潤滑剤の分子量制御についての詳細は、この後の潤滑剤分子量制御法に記載する。潤滑膜は、ディップ法にて形成した。分子量を制御した各潤滑剤を含フッ素系溶媒に所定の濃度で溶解させた溶液を作製し、浸漬時間1分〜10分,引き上げ速度(もしくは、溶液面の降下速度)1mm/s〜20mm/sの範囲でディップ塗布する。潤滑膜の膜厚は、上記の溶液の濃度,浸漬時間,引き上げ速度(もしくは、溶液面の降下速度)を変えることにより調整した。一般に、溶液濃度,浸漬時間,引き上げ速度(もしくは、溶液面の降下速度)の値が高いほど膜厚は厚くなる傾向にあるが、同じ塗布条件でも潤滑剤の吸着力や分子量によって膜厚が大きく変わるため、各潤滑剤で最適な塗布条件を検討する必要がある。用いる溶媒は分子量制御した前記パーフロロポリエーテル潤滑剤を溶解するものを選択する。なお、ディップ法では塗布槽内の溶液に浸漬している磁気ディスクを塗布槽から上部に引き上げる方式と溶液を塗布槽から抜く方式(ドレイン方式)がある。使用可能な溶媒としては前記パーフロロポリエーテル潤滑剤を溶解する3M社製のFC−72,FC−84,FC−77,FC−75,PF−5080,PF−5052,HFE−7100,HFE−7200,Du・Pont社製のバートレルXF,XE,XM等の含フッ素系溶媒が挙げられる。本発明に記載の実施例では上記含フッ素系溶媒のHFE−7100を用いた。磁気ディスクを塗布槽から上部に引き上げる方式では塗布槽の上部が開放状態になるため、上記のFC−72やHFE−7100,HFE−7200,バートレルXF等の低沸点の溶媒は揮発し易く溶液濃度が変化して膜厚がばらつく問題がある。このため、本発明に記載の実施例では溶液を塗布槽から抜く方式(ドレイン方式)を採用した。
(3)本発明の磁気ディスク装置の構成
本発明に記載の磁気ディスク装置は、基本的に装置筐体と前記磁気ディスク,データを記録再生するための磁気ヘッド・スライダーと磁気ディスクを回転させるスピンドルモーター並びに磁気ヘッド・スライダーをディスクの表面近傍に作動するための支持体,アクチュエーター(作動手段),制御用回路で構成される。装置の記憶容量は、磁気ディスクの搭載枚数やヘッド浮上量,磁性層の磁気特性,ヘッド性能によって決めることができる。本発明では(2)本発明の磁気ディスクの構成にも記載したとおり、装置の動作形態の異なるタイプ(A)とタイプ(B)の磁気ディスク装置を使用した。
【0029】
タイプ(A)の磁気ディスク装置は、ディスク停止時に磁気ヘッド・スライダーがディスク外周側の面外に退避するLoad/Unload方式であり、退避時の磁気ヘッド・スライダーを取り付けたジンバルを支持するためのランプを具備している。このLoad/Unload方式の磁気ディスク装置には、(2)本発明の磁気ディスクの構成に記載したタイプ(a)の磁気ディスクを搭載した。
【0030】
タイプ(B)の磁気ディスク装置は、ディスク回転時に磁気ヘッド・スライダーがディスク面上で浮動し、ディスク停止時にはディスク面上に接触状態で待機するCSS(Contact−Start−Stop)方式である。タイプ(B)の磁気ディスク装置には、(1)本発明の磁気ディスクの構成に記載したタイプ(b)の磁気ディスクを搭載した。
【0031】
(4)本発明の磁気ディスク並びに磁気ディスク装置の用途
本発明に記載の磁気ディスク,磁気ディスク装置の用途としては、電子計算機,ワードプロセッサー等の外部メモリー(具体的にはハードディスク装置等)が挙げられる。またモーバイルコンピューター,ナビゲーションシステム,ゲーム,携帯電話,PHS等の各種情報機器等にも適用可能である。
【0032】
本発明の限外ろ過を使った潤滑剤分子量制御法は、溶媒抽出法やGPC法等と比較して汎用性や生産性,コスト低減に優れている。本発明の限外ろ過を使った潤滑剤分子量制御法によって数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が全体に対して15重量%以下,重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5 以下、末端官能基の置換率が90%以上になるように制御されたパーフロロポリエーテル潤滑剤を用いることにより10000rpm 以上の高速回転による空気とのせん断や装置内部の温度上昇に対して潤滑剤の飛散が少なく摺動信頼性の高い磁気ディスクが得られる。また、この磁気ディスクを搭載することにより信頼性に優れる磁気ディスク装置を提供できる。
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
図1に本実施例の潤滑剤分子量制御装置を示す。本実施例では構造式(1)のパーフロロポリエーテル潤滑剤を限外ろ過膜を用いた潤滑剤分子量制御法によって低分子量成分を除去して、処理前の数平均分子量4990を数平均分子量6000程度になるよう処理を行った。
【0035】
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
まず、限外ろ過膜を用いて潤滑剤の分子量を制御するため、親水性の限外ろ過膜に疎水性物質であるパーフロロポリエーテル潤滑剤が透過可能なる処理を行った。ポリエーテルスルホンからなる限外ろ過膜を複数枚積層したフィルター4 (日本ポール社製、オメガシリーズ1K:分子量1000程度を境に分画可能)を準備した。純水5リットル中にフィルターを浸漬して純水中で揺動させながら約1分間フィルターについたグリセリンやコンタミを除去した。この操作を3回繰り返した。各操作では純水をその都度交換した。次に、図1に記載の限外ろ過装置部2にフィルター4を装着し、該限外ろ過装置部2と図1の溶液循環装置部1とを内径10mmのPFA(テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)製とSUS316製の管を使って配管した。溶液循環装置部1のタンク6に5リットルの純水を入れ、タンク下部の液循環ポンプ7(イワキポンプ社製,ケミカルギアポンプ)によって、入り側圧力:0.5kgf/cm2,戻り側圧力:0.4kgf/cm2,流量1.5リットル/min で約5hフィルターに純水を透過・循環させた。この操作はフィルター(限外ろ過膜)の洗浄が主目的なのでタンク6には流量2リットル/min で純水を補充し、限外ろ過装置部からの戻りの純水は、タンク6には戻さないように配管した。フィルターを透過した純水は廃棄した。また、この操作ではフィルターの洗浄以外に、限外ろ過膜の表面に水分子を吸着させることになる。次に、疎水性の物質を透過させるためにフィルター内の純水の除去と限外ろ過膜表面に吸着した水分子をエチルアルコール分子と置換する操作を行った。まずハイドロフロロエーテル系溶媒(3M社製,HFE−7100)とエチルアルコールの割合が7:3の混合溶媒を準備した。タンク、配管内の純水を除去した後、上記の混合溶媒3リットルをタンク6に入れ洗浄の操作と同条件で混合溶媒を透過・循環させた。混合溶媒がタンク内から無くなると、液循環ポンプ7を一旦止めて新しい混合溶媒3リットルをタンク6に入れて混合溶媒の透過・循環を再開させた。この操作を3回繰り返した。この操作によりフィルター内の純水はエチルアルコールによって除去され、限外ろ過膜表面に吸着した水分子はエチルアルコール分子と置換する。次にHFE−7100を3リットル透過・循環させ、HFE−7100が透過することを確認した。この操作では、戻り液(HFE−7100)はタンクに戻るよう配管した。以上の操作によってフィルターの洗浄と疎水性物質を透過させる処理を終了した。なお、上記の置換操作を行わず純水を透過・循環させた後にHFE−7100を循環させてもHFE−7100がフィルターから透過しなかった。すなわち、上記の処理を限外ろ過膜に施した本実施例において、初めて親水性の限外ろ過膜に疎水性物質を透過することができた。
【0036】
次にパーフロロポリエーテル潤滑剤の処理を行った。まず、上記の通り洗浄並びに疎水性物質を透過可能とする処理を施した日本ポール株式会社製,オメガシリーズ1Kを図1の限外ろ過装置部2に装着し、各部を配管した。限外ろ過装置部2からの循環液はタンク内に戻るよう配管している。限外ろ過装置部2では、タンクから液循環ポンプによって送流される溶液が、限外ろ過膜を透過する液と透過されずにタンクに戻る液とに分けられる。上記記載のパーフロロポリエーテル潤滑剤500gにHFE−7100を加えて5リットルの溶液を作製し、図1の溶液循環装置部1のタンク6に入れた。液循環ポンプ7を作動させて潤滑剤の分子量制御を開始した。この操作によって循環側のパーフロロポリエーテル潤滑剤は、分子量1000〜1500程度以下の低分子量成分の潤滑剤が徐々に除去され高分子量化(タンク側に濃縮)する。本実施例では、透過側の溶液の量が2.25 リットルになった所で液循環ポンプ7を停止させて循環側の溶液を回収した。エバポレーターによってHFE−7100を除去して低分子量成分を除去したパーフロロポリエーテル潤滑剤を得た。これにより限外ろ過によるパーフロロポリエーテル潤滑剤の分子量制御を終了した。この、パーフロロポリエーテル潤滑剤から10.0g を採取し、NMRによって数平均分子量と末端官能基の置換率を測定した。また液体クロマト法によって分子量分布も測定し、分子量3000以下の比率も算出した。また、本実施例の処理によって得られた潤滑剤の収率も算定した。表1に原料と本実施例の結果を示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004392917
【0038】
本実施例の結果と比較例1,2の結果を比較した。まず、置換率に注目すると溶媒抽出法で処理した比較例1の潤滑剤は、置換率が82%にまで低下しているのに対し、本実施例(限外ろ過法)では置換率が92%である。置換率が低下した潤滑剤は、磁気ディスク表面(保護膜表面)に対して吸着しない無極性の潤滑剤の含有率が高くなることを意味する。この無極性潤滑剤は高分子量化しても回転飛散し易く、結果的に摺動耐久性が低下する。すなわち、潤滑剤の分子量制御法としては、置換率が低下しないことが必要条件と言える。従って、溶媒抽出法では潤滑剤の置換率が原料より12%も低下するが、本実施例の潤滑剤分子量制御法では潤滑剤の置換率の低下が2%であり、置換率の低下を溶媒抽出法の約1/6にまで軽減できる。
【0039】
次に、収率に注目すると本実施例(限外ろ過法)の方が、比較例1(溶媒抽出法)と比較例2(GPC法)より効率が良い。特に、比較例2(GPC法)は収率が最も悪く、本実施例は比較例2(GPC法)の約6倍の収率である。また、本実施例(限外ろ過法)では、収率が比較例2(GPC法)の約6倍であるにもかかわらず、処理のために必要となる溶媒(HFE7100)は、比較例2 (GPC法)の約1/5の消費量に節約できた。
【0040】
さらに、比較例1(溶媒抽出法)と比較例2(GPC法)は、原料のロットが変わるたびに分子量分布も変動するため、その都度詳細に条件を変える必要がある。これに対して、本実施例(限外ろ過法)では、分子量分布の異なる原料ロットの処理でも処理時間(処理量)を変えるだけで同じ性状の分子量制御が可能である。
【0041】
以上本実施例の潤滑剤分子量制御法により、溶媒抽出法(比較例1)やGPC法(比較例2)より高い置換率(90%以上)の潤滑剤を比較的容易に得ることができる。また、本実施例の潤滑剤分子量制御法は、溶媒抽出法(比較例1)やGPC法(比較例2)より溶媒(HFE7100)消費量の大幅な節約や高収率が可能であり、コスト的にも有利である。
【0042】
(実施例2)
図2に本実施例の磁気ディスクの断面模式図を示す。本実施例で作製した磁気ディスクは、前記本発明の磁気ディスクの構成に記載したタイプ(a)の磁気ディスクである。以下に本実施例の磁気ディスクの作製法を詳細に記す。
【0043】
外径63.5mm の結晶化ガラス基板19を十分に洗浄した後、スパッタ法でCr下地膜20を形成した。次に、スパッタ法によりCrTi膜21を形成した後、CoCrPtTaからなる磁性膜22を形成する。更に、その上にIBD (Ion Beam Deposition)法を用いて硬質保護膜を約5nm形成する。さらに、この硬質保護膜23上に潤滑膜24を形成する。これにより磁気ディスク25を作製した。本実施例の潤滑膜24は、数平均分子量5500以上で、分子量3000以下の比率が異なる構造式(1)のパーフロロポリエーテル潤滑剤を、ドレイン方式のディップ法にて約2nm塗布したものである。なお、潤滑剤の数平均分子量と末端官能基の置換率はNMR(核磁気共鳴装置)でフッ素を分析することによって確認した。また、液体クロマト法によって重量平均分子量と数平均分子量の比(以下、分子量分布と略す)を算出した。表2に本実施例(試料1〜4)並びに比較例3〜6(試料5〜9)の各潤滑剤の測定値を示す。
【0044】
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
【0045】
【表2】
Figure 0004392917
【0046】
潤滑膜24を最外表面に形成した磁気ディスクとヘッドをピンオンディスクタイプの摩擦測定装置に装着し、1000h連続運転後のディスク表面の摩耗量並びに初期膜厚からの減少膜厚を測定した。磁気ディスクを18000rpm にまで回転させ、ヘッドを浮上させた状態で3秒間ランダムシークさせた後、ディスク回転数を500rpmまで低下させてヘッドとディスクを0.5秒間接触摺動させた。この動作を65℃環境下で短い周期で繰り返し行った。ディスク回転数500rpm では、ヘッドは浮上しないためヘッドとディスクは間欠的に接触摺動する。なお、本実施例の評価は、10000rpm 磁気ディスクとしての効果を短時間に確認するために加速評価したものであり、その評価条件は、現在一般に市販されている磁気ディスク装置より厳しい条件を設定した。ディスク表面の摩耗量は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した最大摩耗深さで評価した。ディスク表面の最大摩耗深さに対する磁気ディスクとしての摺動耐久性の指標は、硬質保護膜23の膜厚が5nmであることから、ディスククラッシュに至らない程度の摩耗を考慮すると、最大摩耗深さが2nm以下である必要があり、摺動信頼性の確保としての仕様値を2nm以下とした。潤滑膜厚は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で測定した。表2に本実施例(試料1〜4)の評価結果を示す。
【0047】
本実施例の試料1,2,3,4の潤滑剤は、比較例3に記載の数平均分子量4990の潤滑剤(原料)を、実施例1に記載の限外ろ過法によって数平均分子量8010,7020,6350,5750になる様に分子量制御した潤滑剤である。比較例4,5(試料6,7)は数平均分子量2000の潤滑剤(原料)を限外ろ過法によって数平均分子量4010,3020になる様に分子量制御した潤滑剤である。比較例6,7(試料8,9)は比較例3に記載の数平均分子量4990の潤滑剤(原料)を、溶媒抽出法によって数平均分子量5370,6020になる様に分子量制御した潤滑剤である。
【0048】
表2の結果から、各潤滑剤の性状と摺動信頼性の影響を明らかにするために、まず数平均分子量に対する磁気ディスク表面の最大摩耗深さの変化を整理した。図3に数平均分子量に対する磁気ディスク表面の最大摩耗深さの変化を示す。同じ限外ろ過法で分子量を制御した本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例4,5の磁気ディスク表面の最大摩耗深さの結果だけを曲線で結ぶと、数平均分子量が5500以上で磁気ディスク表面の最大摩耗深さは2nm以下になる傾向が見られる。また、原料である比較例3の結果もこの曲線上に位置する。しかし、比較例7は、本実施例の試料4より数平均分子量が大きいにも関らず、磁気ディスク表面の最大摩耗深さは2nm以上の結果となり、本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例3,4,5の曲線から外れている。また、比較例6も同様の結果となっている。これは、潤滑剤の分子量制御法の違いによる末端官能基の置換率が影響していると考えられる。少なくとも図3の結果からは、限外ろ過法で潤滑剤の分子量を制御したものについては、数平均分子量が5500以上になるように分子量制御した本実施例(試料1,2,3,4)が磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以下になり、摺動信頼性を確保できると言える。
【0049】
次に、表2の結果から分子量3000以下の比率に対する磁気ディスク表面の最大摩耗深さの変化を整理した。図4に結果を示す。図3の場合と同様、同じ限外ろ過法で分子量を制御した本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例4,5の磁気ディスク表面の最大摩耗深さの結果だけを曲線で結ぶと、分子量3000以下が15重量%以下で磁気ディスク表面の最大摩耗深さは2nm以下になる傾向が見られる。また、原料である比較例3の結果もこの曲線上に位置する。しかし、比較例6,7は、分子量が3000以下が15重量%以下であるにも関らず、磁気ディスク表面の最大摩耗深さは2nm以上の結果となり、本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例4,5の曲線から外れている。図4の結果からは、潤滑剤を限外ろ過法で分子量制御し、分子量3000以下が15重量%以下の本実施例(試料1,2,3,4)が、磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以下になり、摺動信頼性を確保できると言える。
【0050】
次に、表2の結果から末端官能基の置換率に対する磁気ディスク表面の最大摩耗深さの変化を整理した。図5に結果を示す。図5の結果からは、末端官能基の置換率と磁気ディスク表面の最大摩耗深さには相関関係が見られない。しかし、比較例6は数平均分子量が5500以下であるが、分子量3000以下が15重量%以下であり、比較例7に至っては数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下である。すなわち、限外ろ過法で分子量制御した本実施例(試料1,2,3,4)の潤滑剤の性状から言えば、数平均分子量では、比較例7は数平均分子量が5500以上の必要条件を満たしている。分子量3000以下が15重量%以下の条件にいたっては比較例6,7ともそれを満たしている。しかしながら、比較例6,7は磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以上である。比較例6,7と本実施例(試料1,2,3,4)の潤滑剤の性状の明らかな違いは、末端官能基の置換率であり、比較例6,7は末端官能基の置換率が90%以下であるのに対し本実施例(試料1,2,3,4)は90%以上である。溶媒抽出法で潤滑剤の分子量制御をした場合、末端官能基の置換率が限外ろ過法の場合より低下する事は実施例1でも示している。図5の結果には、末端官能基の置換率が90%以上であっても磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以上なるもの(比較例3,4,5)があるが、これらは図3,図4の結果から明らかなように数平均分子量が5500以上か分子量3000以下が15重量%以下である条件の少なくとも一つを満たしていないものである。すなわち、末端官能基の置換率以外の性状で磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以下を満たす事のできない性状である。このことから磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以下を実現するためには、少なくとも末端官能基の置換率が90%以上である必要がある。本実施例の潤滑剤は末端官能基の置換率が90%以上であることにより、比較例6,7より飛散しやすい無極性の潤滑剤が少なく、磁気ディスク表面の最大摩耗深さで1.5nm 以上も摩耗が少ない摺動信頼性に優れる磁気ディスクが得られた。なお、減少膜厚も磁気ディスク表面の最大摩耗深さの結果を反映し、本実施例(試料1,2,3,4)の方が比較例3,4,5,6,7より少ない。すなわち、本実施例の方が長期にわたって摺動信頼性を確保できる磁気ディスクと言える。
【0051】
以上、本実施例と比較例3,4,5,6,7の結果から、磁気ディスク表面の最大摩耗深さが2nm以下になるための潤滑剤の必要条件は、数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15%以下,末端官能基の置換率が90%以上であり、限外ろ過法で分子量を制御することである。これにより、本実施例では少なくとも比較例3,4,5,6,7より磁気ディスク表面の最大摩耗深さで0.9nm 以上摩耗が少なく、減少膜厚も約2/3以下であり、摺動信頼性に優れる磁気ディスクが得られた。
【0052】
(実施例3)
図6に本実施例の磁気ディスク装置32の上面模式図及び側面模式図を示す。本実施例の磁気ディスク装置32は、本発明の磁気ディスク装置の構成に記載したタイプ(A)の磁気ディスク装置であり、実施例2並びに比較例3,4,5,6,7の磁気ディスク25(タイプ(a))を搭載した(比較例8,9,10,11,12)。以下に本実施例の磁気ディスク装置32の詳細な作製法を示す。実施例2の磁気ディスク25をスピンドルモーター27に装着し、筐体26,スピンドルモーター27,アクチュエーター28,磁気ヘッド・スライダー29,制御回路31からなる磁気ディスク装置32を作製した。この磁気ディスク装置32には、ディスク停止中に磁気ヘッド・スライダーがディスクの外周側の面内に退避するためのランプ30を具備しており、ディスク回転中のみ磁気ヘッド・スライダーはディスクの面上に存在する(Load/unload機構)。本実施例の磁気ディスク装置32はディスク停止中にヘッドがディスクの面外に退避するため、ヘッド/ディスク間でのスティクションは考慮する必要はない。本実施例の磁気ディスク装置32の装置仕様は、ディスク回転数15000rpm ,記録密度0.025Gb/mm2,データ転送速度77MB/秒である。これらの装置仕様を実現するには、ヘッド/ディスクが正常に動作(ロード/アンロード)する事が前提であり、ヘッド/ディスク間の摺動信頼性の確保が必須である。潤滑剤の性能は、ヘッド/ディスク間の摺動信頼性を左右することから、装置としての機能を達成する上で重要である。本実施例の評価は、実施例2の場合と同様、本発明の効果(磁気ディスク装置としての効果)を短時間に確認するために加速評価を実施した。そのため、実際の磁気ディスク装置32の仕様より厳しい評価条件を設定した。具体的には、実施例2と同様、回転数18000rpm ,65℃環境下で磁気ヘッド・スライダー29のロード/アンロードの繰り返し試験を実施した。まず、磁気ヘッド・スライダー29を磁気ディスク25の加速中に磁気ディスク表面上にロードして7秒間ランダムシークさせる。次に磁気ヘッド・スライダー29を外周側の面外にアンロードし、1秒間保持する。これらの動作を繰り返して行った。磁気ヘッド・スライダー29が磁気ディスク25表面上に完全にロードされ、シーク動作に入った状態での磁気ディスク25の回転数は18000rpm である。本実施例では、上記のロード/アンロードの動作に異常が発生するまでの時間を測定した。測定は最大1000hまで行い、ロード/アンロードの動作異常が無い試料については1000hで測定を中止した。ここで、ロード/アンロード動作異常とは、ヘッドを安定にロード/アンロードできない状態を示す。これら動作異常の原因は、ヘッド・スライダー/ディスクの吸着やディスクやヘッド・スライダーの摩耗によるものであり、本実施例の結果は、潤滑剤の性能
(効果)を反映したものである。
【0053】
なお、本実施例の磁気ディスク装置32は3枚搭載なので、磁気ディスク25は実施例2並びに比較例3,4,5,6,7の磁気ディスクをそれぞれ3枚ずつ用意した。実施例2並びに比較例3,4,5,6,7の磁気ディスク25を各3枚ずつ搭載した磁気ディスク装置9台を評価した。比較例3,4,5,6,7の磁気ディスク25を搭載した磁気ディスク装置32は、順に比較例8,9,10,11,12である。表3に結果を示す。
【0054】
【表3】
Figure 0004392917
【0055】
比較例3,4,5,6,7の磁気ディスク25を搭載した磁気ディスク装置の比較例8,9,10,11,12は、何れも試験開始から1000h以内にロード/アンロードの動作異常が発生した。これに対し本実施例の試料1,2,3,4は、試験開始から1000h経過してもロード/アンロードの動作に異常は認められず、安定な動作を持続できた。すなわち、潤滑剤の性状としては、数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下,末端官能基の置換率が90%以上であり、限外ろ過法で分子量を制御した潤滑剤(本実施例)が、磁気ディスク装置として正常な動作を維持できると言える。この結果は、実施例2の結果と同じ傾向である。
【0056】
以上、本実施例と比較例8,9,10,11,12の結果から、磁気ディスク装置の安定な動作(ロード/アンロード)を維持するには、潤滑剤を数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下,末端官能基の置換率が90%以上になるよう限外ろ過法で分子量を制御することである。これにより、本実施例では少なくとも比較例8,9,10,11,12より安定なロード/アンロードを維持できる信頼性に優れる磁気ディスク装置が得られた。
【0057】
(実施例4)
図7に本実施例の磁気ディスク38の断面模式図を示す。本実施例で作製した磁気ディスク38は、前記本発明の磁気ディスクの構成に記載したタイプ(b)の磁気ディスクである。以下に本実施例の磁気ディスクの作製法を詳細に記す。外径76.2mmのアルミニウム合金基板の表面上に無電解メッキ法によりNiPメッキ膜を形成し研磨後洗浄した。次に、NiP面に吸収の高いレーザー波長104nmのQスイッチ発振可能なパルスレーザー(70kHz1J・s出力)を用いて規則性のある突起(以下バンプと略称)を形成し基板33を作製した。バンプは、レーザーエネルギーにより高さが調整され、バンプの間隔からレーザーの周波数との計算にて求めた回転数にて回転させながら、加工光軸を基板面の半径方向に走査して形成した。これにより、NiP面ではNiPが溶融し、その溶解金属の蒸発反跳圧力と温度勾配に起因する表面張力によってドーナッツ状のバンプを有するゾーン(レーザーゾーン)が形成される。ゾーンは、半径10mm以上25mm以下の範囲で幅5mm以下の帯状に存在する。本実施例のバンプは、高さ13nm,直径3.0μm である。次に、バンプを形成したアルミニウム合金基板33に、スパッタ法によりCr下地膜34を形成した後、Co合金からなる磁性膜35を形成する。更に、その上にN2 /Ar混合ガス雰囲気下でスパッタ法によって硬質保護膜36を約8nm形成する。さらに、この保護膜36上に潤滑膜37を形成した。これにより磁気ディスク38を作製した。本実施例の潤滑膜37は、実施例2と同じ潤滑剤を使用した。使用した潤滑剤は、数平均分子量5500以上で、分子量3000以下の比率が異なる構造式(1)のパーフロロポリエーテル潤滑剤を、ドレイン方式のディップ法にて約2nm塗布したものである。潤滑膜厚は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で測定した。なお、実施例2と同様潤滑剤の数平均分子量と末端官能基の置換率はNMR(核磁気共鳴装置)でフッ素を分析することによって確認した。また、液体クロマト法によって重量平均分子量と数平均分子量の比(以下、分子量分布と略す)を算出した。表4に本実施例(試料1〜4)並びに比較例13〜17(試料5〜9)の各潤滑剤の測定値を示す。
【0058】
HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2
−CH2OH (1)
(ここで、n,mは正の整数)
【0059】
【表4】
Figure 0004392917
【0060】
実施例2と同様、潤滑膜37を最外表面に形成した磁気ディスクとヘッドをピンオンディスクタイプの摩擦測定装置に装着し、65℃雰囲気下で1000h連続運転後のディスク表面のレーザーゾーンの摩耗量とヘッド/ディスク間のスティクション並びに初期膜厚からの減少膜厚を測定した。磁気ディスクを18000rpmにまで回転させ、ヘッドを浮上させた状態でデータゾーンを3秒間ランダムシークさせた後、ディスクの回転を停止させた。ディスクの回転が減速中に、データゾーン上でシークしていたヘッドは、レーザーゾーンに戻る。ディスク停止中には、ヘッドはレーザーゾーン上でディスクと接触して待機している。ディスクは、約1秒間停止した後、再度回転し、ヘッドはデーターゾーン上でランダムシークする。このような動作を繰返し行った。ヘッドは、ディスク起動時と停止時にレーザーゾーン上で接触摺動(CSS(Contact-Start-Stop)方式)する。レーザーゾーンは、ディスク起動時と停止時での接触摺動が必ず起こるため、非常に厳しい摺動状態となる。従って、本実施例では、摺動状態がもっとも厳しくなるレーザーゾーンの摩耗量を測定した。また、レーザーゾーンのバンプが摩耗して面荒さが小さくなると、ディスク起動時に強いスティクションが発生し易くなるため、ヘッド/ディスク間のスティクションも測定した。摩耗が進展すると強いスティクションが発生してヘッドが正常に浮上できなくなるかディスククラッシュにまで至る恐れがある。従って、本実施例の磁気ディスクとしての摺動信頼性はレーザーゾーンでの潤滑剤の性能が重要となる。なお、上記評価条件は、実施例2と同様、磁気ディスクとしての効果を短時間に確認するために加速評価したものであり、評価条件は、現在一般に市販されている磁気ディスク装置より厳しい条件を設定した。レーザーゾーンのバンプの摩耗量は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。表4に本実施例(試料1〜4)並びに比較例13〜17(試料5〜9)の評価結果を示す。
【0061】
本実施例での磁気ディスクとしての摺動耐久性確保の指標は、レーザーゾーンで発生するヘッド/ディスク間のスティクションの最大値が4.0gf 以下とした。これは、一般の磁気ディスク装置で使用されるスピンドルモーターのトルクからディスク1枚あたりのスティクションの最大値を見積もると4.0gf 以下である必要があり、4.0gf 以上のスティクションが発生するとディスクが起動できなくなる等の障害が発生するためである。この事象は、本実施例の磁気ディスクを装置に搭載し、装置の動作状態を評価した実施例5にも記載する。表4に本実施例(試料1〜4)の評価結果を示す。
【0062】
本実施例の試料1,2,3,4の潤滑剤は、比較例13に記載の数平均分子量4990の潤滑剤(原料)を、実施例1に記載の限外ろ過法によって数平均分子量8010,7020,6350,5750になる様に分子量制御した潤滑剤である。
【0063】
表4の結果からスティクションとバンプの摩耗量との関係を整理した。図8にスティクションとバンプの摩耗量との関係を示す。スティクションが4.0gf 以下になる本実施例の試料1,2,3,4は、バンプの摩耗量が4nm以下である。これに対し、スティクションが4.0gf 以上となった比較例13〜17のバンプの摩耗量は何れも4nm以上であり、スティクションとバンプの摩耗量との間には、深い相関関係があることが判る。スティクションは、潤滑剤がヘッド/ディスク間に多く集まったりした場合にも発生し、この場合ディスクの粗さの変化は直接の原因ではない。つまり、本実施例の評価でのスティクションは、潤滑剤のヘッド/ディスク間への集まり易さを反映したものでなく、バンプの摩耗によりレーザーゾーンの荒さが小さくなり、その度合いが有意差として反映されたと言える。従って、本実施例のスティクションは、潤滑剤の耐摩耗性の効果と関係する。図8の結果からスティクションを4.0gf 以下にするためには、少なくともバンプの摩耗量を4nm以下にしなければならない。
【0064】
表4の結果から、本実施例の磁気ディスクにおける各潤滑剤の性状と摺動信頼性の影響を明らかにするために、まず数平均分子量に対するスティクションの変化を整理した。図9に数平均分子量に対するスティクションの変化を示す。同じ限外ろ過法で分子量を制御した本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例14,15のスティクションの結果を結ぶと、数平均分子量が5500以上でスティクションが4.0gf 以下になっている。また、原料である比較例13の結果もこの曲線上に位置する。しかし、比較例17は、本実施例の試料4より数平均分子量が大きいにも関らず、スティクションが4.0gf 以上の結果であり、本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例13,14,15の曲線から外れている。また、比較例16も同様の結果となっている。これは、潤滑剤の分子量制御法の違いによる末端官能基の置換率が影響していると考えられる。
【0065】
少なくとも図9の結果からは、限外ろ過法で潤滑剤の分子量を制御したものについては、数平均分子量が5500以上になるように分子量制御した本実施例 (試料1,2,3,4)が、スティクションが4.0gf 以下になり、摺動信頼性を確保できると言える。
【0066】
次に、表4の結果から分子量3000以下の比率に対するスティクションの変化を整理した。図10に結果を示す。図9の場合と同様、同じ限外ろ過法で分子量を制御した本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例14,15のスティクションの結果を結ぶと、分子量3000以下が15重量%以下でスティクションは4.0gf 以下になっている。また、原料である比較例13の結果もこの曲線上に位置する。しかし、比較例16,17は、分子量が3000以下が15重量%以下であるにも関らず、スティクションが4.0gf 以上の結果となり、本実施例(試料1,2,3,4)並びに比較例4,5の曲線から外れている。また、表4の結果を見るとバンプの摩耗量も4nm以上になっている。これは、前にも記載した通り、潤滑剤の分子量制御法の違いによる末端官能基の置換率が影響していると考えられる。
【0067】
少なくとも図10の結果からは、限外ろ過法で潤滑剤の分子量を制御したものについては、分子量3000以下が15重量%以下になるように分子量制御した本実施例(試料1,2,3,4)が、スティクションが4.0gf 以下になり、摺動信頼性を確保できると言える。
【0068】
次に、表4の結果から末端官能基の置換率に対する磁気ディスク表面の最大摩耗深さの変化を整理した。図11に結果を示す。実施例2の場合と同様、図11の結果からは、末端官能基の置換率とスティクションとの間には相関関係が見られない。比較例16は数平均分子量が5500以下で、分子量3000以下が15重量%以下であり、比較例7に至っては数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下である。すなわち、限外ろ過法で分子量制御した本実施例(試料1,2,3,4)の潤滑剤の数平均分子量から言えば、比較例17は数平均分子量が5500以上の必要条件を満たしている。分子量3000以下が15重量%以下の条件にいたっては比較例16,17ともそれを満たしている。しかしながら、比較例16,17はスティクションが4.0gf 以上である。比較例16,17と本実施例(試料1,2,3,4)で潤滑剤の性状の明らかな違いは、末端官能基の置換率であり、比較例16,17は末端官能基の置換率が90%以下であるのに対し本実施例(試料1,2,3,4)は90%以上である。溶媒抽出法で潤滑剤の分子量制御をした場合、末端官能基の置換率が限外ろ過法の場合より低下する事は実施例1でも示している。図11の結果には、末端官能基の置換率が90%以上であってもスティクションが4.0gf 以上になるもの(比較例13,14,15)があるが、これらは図9,図10の結果から明らかなように数平均分子量が5500以上か分子量3000以下が15重量%以下である条件の少なくとも一つを満たしていないものである。すなわち、末端官能基の置換率以外の性状でスティクションが4.0gf 以下を満たす事のできない性状である。このことからスティクションが4.0gf 以下を実現するためには、少なくとも末端官能基の置換率が90%以上である必要がある。本実施例の潤滑剤は末端官能基の置換率が90%以上であることにより、比較例16,17より飛散しやすい無極性の潤滑剤が少なく、スティクションが1/2以下の摺動信頼性に優れる磁気ディスクが得られた。なお、減少膜厚もスティクション並びにバンプの摩耗量の結果を反映し、本実施例(試料1,2,3,4)の方が比較例13,14,15,16,17より少ない。すなわち、本実施例の方が長期にわたって摺動信頼性を確保できる磁気ディスクと言える。
【0069】
以上、本実施例と比較例13,14,15,16,17の結果から、スティクションが4.0gf 以下になるための潤滑剤の必要条件は、数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15wt%以下、末端官能基の置換率が90%以上であり、限外ろ過法で分子量を制御することである。これにより、本実施例では少なくとも比較例13,14,15,16,17よりスティクションで1.5gf 以上低く、バンプの摩耗量が約2/5で、減少膜厚も約1/2以下である摺動信頼性に優れる磁気ディスクが得られた。
【0070】
(実施例5)
図12に本実施例の磁気ディスク装置の上面模式図及び側面模式図を示す。本実施例の磁気ディスク装置は、本発明の磁気ディスク装置の構成に記載したタイプ(B)の磁気ディスク装置であり、実施例4(タイプ(b))の磁気ディスク38を搭載した。
【0071】
実施例4の磁気ディスク38をスピンドルモーターに装着し、筐体39,スピンドルモーター40,アクチュエーター41,磁気ヘッド・スライダー42,制御回路43からなる磁気ディスク装置44を作製した。
【0072】
この磁気ディスク装置44では、ディスク回転中は磁気ヘッド・スライダーがデーターゾーン上で浮動し、ディスク停止時には磁気ヘッド・スライダーがレーザーゾーン上に退避する。このため、ディスク起動時には、磁気ヘッド・スライダーとディスク間でのスティクションを考慮する必要がある。本実施例の磁気ディスク装置44の装置仕様は、ディスク回転数10000rpm ,記録密度0.011Gb/mm2 ,データ転送速度55MB/秒である。これらの装置仕様を実現するには、ディスクが正常に回転し、磁気ヘッド・スライダーが所定の高さで浮上して記録再生する事が前提であり、ヘッド/ディスク間の摺動信頼性の確保が必須である。すなわち、本実施例の磁気ディスク装置44の摺動信頼性の確保とは、レーザーゾーンでのスティクションが低いことを言う。潤滑剤の性能は、ヘッド/ディスク間の摺動信頼性、とりわけレーザーゾーンの摺動耐久性を左右することから、装置としての機能を達成する上で重要である。
【0073】
本実施例の評価は、実施例4の場合と同様、本発明の効果(磁気ディスク装置としての効果)を短時間に確認するために加速評価を実施した。そのため、実際の磁気ディスク装置32の仕様より厳しい評価条件を設定した。具体的には、回転数18000rpm ,65℃環境下でシーク&CSS(Contact-Start-Stop)試験を実施した。まず、磁気ディスク38を回転させてレーザーゾーン上に接触して待機している磁気ヘッド・スライダー42を浮上させる。次に、磁気ヘッド・スライダー42をデータゾーン上で7秒間ランダムシークさせた後、磁気ディスク38の回転を停止させる。磁気ヘッド・スライダー42は、ディスクの回転が完全に止まるまでにレーザーゾーン上に戻り、この際、磁気ヘッド・スライダー42はレーザーゾーン上で接触摺動する。磁気ヘッド・スライダー42を、レーザーゾーン上で接触状態で1秒間保持した後、ディスクを再度回転させた。これらの動作を繰り返し行った。磁気ヘッド・スライダー42が、完全に浮動して、シーク動作に入った状態での磁気ディスク38の回転数は18000rpm である。本実施例の磁気ディスク装置44には、磁気ヘッド・スライダー42と磁気ディスク38間で強いスティクションが発生して磁気ディスク38が回転できない場合に磁気ヘッド・スライダー42を強振させてスティクションを解除する機能が具備されている。このスティクションの解除機構は、ディスクの1面あたりのスティクションが4.0g を超えると作動する。本実施例での評価では、上記シーク&CSS(Contact-Start-Stop)試験を1000hまで行った後、6時間放置して再起動させた時にスティクションの解除機構が作動するか否かを確認した。
【0074】
なお、本実施例の磁気ディスク装置44は3枚搭載なので、磁気ディスク38は、実施例4並びに比較例13,14,15,16,17の磁気ディスクをそれぞれ3枚ずつ用意した。実施例4並びに比較例13,14,15,16,17の磁気ディスク38を、各3枚ずつ搭載した磁気ディスク装置9台を評価した。比較例13,14,15,16,17の磁気ディスク38を搭載した磁気ディスク装置44は、順に比較例18,19,20,21,22である。表5に評価結果を示す。
【0075】
【表5】
Figure 0004392917
【0076】
比較例13,14,15,16,17の磁気ディスク38を搭載した磁気ディスク装置の比較例18,19,20,21,22は、何れもシーク&CSS (Contact-Start-Stop)試験1000h後の再起動でスティクション解除機構が作動した。つまり、比較例18,19,20,21,22では、ヘッド/ディスク間で少なくともディスク1枚あたり平均で4.0gf 以上のスティクションが発生し、スピンドルが回転できない不具合が発生したことになる。これに対し、本実施例の試料1,2,3,4は、スティクション解除機構は作動しなかった。本実施例の試料1,2,3,4は、ヘッド/ディスク間でディスク1枚あたりのスティクションが平均で4.0gf 以下であり、装置として不具合が発生しなかったことになる。本実施例でスティクション解除機構が作動しなかったのは、実施例4の場合と同様、本実施例の潤滑剤の飛散が比較例18,19,20,21,22より少ないためにバンプの摩耗が少なく、レーザーゾーンの面粗さを維持できたためと考えられる。
【0077】
これらの結果から、潤滑剤の性状としては、数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下,末端官能基の置換率が90%以上であり、限外ろ過法で分子量を制御した潤滑剤(本実施例)が、磁気ディスク装置として正常な動作を維持できると言える。
【0078】
以上、本実施例では、潤滑剤を数平均分子量が5500以上,分子量3000以下が15重量%以下,末端官能基の置換率が90%以上になるよう限外ろ過法で分子量を制御することにより、ヘッド/ディスク間で強いスティクションを発生させず、安定な動作を維持できる信頼性に優れる磁気ディスク装置が得られた。
【0079】
(比較例1)
実施例1と同じパーフロロポリエーテル潤滑剤を溶媒抽出法で低分子量成分を除去して数平均分子量を6000程度にした本比較例の数平均分子量,末端官能基の置換率,分子量分布,分子量3000以下の比率並びに収率を表1に示す。実施例1と本比較例の結果とを比較した。
【0080】
(比較例2)
実施例1と同じパーフロロポリエーテル潤滑剤をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法で数平均分子量を6000近傍を分取した本比較例の数平均分子量,末端官能基の置換率,分子量分布,分子量3000以下の比率並びに収率を表1に示す。実施例1と本比較例の結果とを比較した。
【0081】
(比較例3)
実施例2と同じ膜構成の磁気ディスク25に限外ろ過法で分子量制御した実施例1並びに実施例2,3,4,5(試料1,2,3,4)の原料(潤滑剤)を、潤滑膜24として塗布した。表2に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例2と同条件で評価した減少膜厚とディスク表面の最大摩耗深さの結果を示す。
【0082】
(比較例4)
実施例2と同じ膜構成の磁気ディスク25に比較例3と同じ分子構造で数平均分子量が2000の潤滑剤を限外ろ過法で数平均分子量を4010になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜24として塗布した。表2に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例2と同条件で評価した減少膜厚とディスク表面の最大摩耗深さの結果を示す。
【0083】
(比較例5)
実施例2と同じ膜構成の磁気ディスク25に比較例3と同じ分子構造で数平均分子量が2000の潤滑剤を限外ろ過法で数平均分子量を3020になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜24として塗布した。表2に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例2と同条件で評価した減少膜厚とディスク表面の最大摩耗深さの結果を示す。
【0084】
(比較例6)
実施例2と同じ膜構成の磁気ディスク25に比較例3の潤滑剤を溶媒抽出法で数平均分子量を5370になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜24として塗布した。表2に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例2と同条件で評価した減少膜厚とディスク表面の最大摩耗深さの結果を示す。
【0085】
(比較例7)
実施例2と同じ膜構成の磁気ディスク25に比較例3の潤滑剤を溶媒抽出法で数平均分子量を6020になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜24として塗布した。表2に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例2と同条件で評価した減少膜厚とディスク表面の最大摩耗深さの結果を示す。
【0086】
(比較例8)
比較例3の磁気ディスク25を磁気ディスク装置32に搭載し、実施例3と同条件で評価した。表3に本比較例の潤滑剤の性状及びロード/アンロード動作異常発生までの時間を測定した結果を示す。
【0087】
(比較例9)
比較例4の磁気ディスク25を磁気ディスク装置32に搭載し、実施例3と同条件で評価した。表3に本比較例の潤滑剤の性状及びロード/アンロード動作異常発生までの時間を測定した結果を示す。
【0088】
(比較例10)
比較例5の磁気ディスク25を磁気ディスク装置32に搭載し、実施例3と同条件で評価した。表3に本比較例の潤滑剤の性状及びロード/アンロード動作異常発生までの時間を測定した結果を示す。
【0089】
(比較例11)
比較例6の磁気ディスク25を磁気ディスク装置32に搭載し、実施例3と同条件で評価した。表3に本比較例の潤滑剤の性状及びロード/アンロード動作異常発生までの時間を測定した結果を示す。
【0090】
(比較例12)
比較例7の磁気ディスク25を磁気ディスク装置32に搭載し、実施例3と同条件で評価した。表3に本比較例の潤滑剤の性状及びロード/アンロード動作異常発生までの時間を測定した結果を示す。
【0091】
(比較例13)
実施例4と同じ膜構成の磁気ディスク38に限外ろ過法で分子量制御した実施例1並びに実施例2,3,4,5(試料1,2,3,4)の原料(潤滑剤)を、潤滑膜37として塗布した。表4に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例4と同条件で評価したスティクションとバンプの摩耗量並びに減少膜厚の結果を示す。
【0092】
(比較例14)
実施例4と同じ膜構成の磁気ディスク38に比較例3と同じ分子構造で数平均分子量が2000の潤滑剤を限外ろ過法で数平均分子量を4010になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜37として塗布した。表4に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例4と同条件で評価したスティクションとバンプの摩耗量並びに減少膜厚の結果を示す。
【0093】
(比較例15)
実施例4と同じ膜構成の磁気ディスク38に比較例3と同じ分子構造で数平均分子量が2000の潤滑剤を限外ろ過法で数平均分子量を3020になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜37として塗布した。表4に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例4と同条件で評価したスティクションとバンプの摩耗量並びに減少膜厚の結果を示す。
【0094】
(比較例16)
実施例4と同じ膜構成の磁気ディスク38に比較例3の潤滑剤を溶媒抽出法で数平均分子量を5370になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜37として塗布した。表4に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例4と同条件で評価したスティクションとバンプの摩耗量並びに減少膜厚の結果を示す。
【0095】
(比較例17)
実施例4と同じ膜構成の磁気ディスク38に比較例3の潤滑剤を溶媒抽出法で数平均分子量を6020になるように分子量制御した潤滑剤を潤滑膜37として塗布した。表4に本比較例の潤滑剤の性状及び実施例4と同条件で評価したスティクションとバンプの摩耗量並びに減少膜厚の結果を示す。
【0096】
(比較例18)
比較例13の磁気ディスク38を磁気ディスク装置44に搭載し、実施例5と同条件で評価した。表5に本比較例の潤滑剤の性状及びスティクション解除機構作動の有無を測定した結果を示す。
【0097】
(比較例19)
比較例14の磁気ディスク38を磁気ディスク装置44に搭載し、実施例5と同条件で評価した。表5に本比較例の潤滑剤の性状及びスティクション解除機構作動の有無を測定した結果を示す。
【0098】
(比較例20)
比較例15の磁気ディスク38を磁気ディスク装置44に搭載し、実施例5と同条件で評価した。表5に本比較例の潤滑剤の性状及びスティクション解除機構作動の有無を測定した結果を示す。
【0099】
(比較例21)
比較例16の磁気ディスク38を磁気ディスク装置44に搭載し、実施例5と同条件で評価した。表5に本比較例の潤滑剤の性状及びスティクション解除機構作動の有無を測定した結果を示す。
【0100】
(比較例22)
比較例17の磁気ディスク38を磁気ディスク装置44に搭載し、実施例5と同条件で評価した。表5に本比較例の潤滑剤の性状及びスティクション解除機構作動の有無を測定した結果を示す。
【0101】
【発明の効果】
本発明により、潤滑剤の飛散や摺動特性に優れる磁気ディスクが得られる。さらにこれらの磁気ディスクを搭載することにより10000rpm 以上の回転数でも長期にわたり安定な動作状態を維持し、信頼性の高い磁気ディスク装置が得られる。また本発明の潤滑剤分子量制御法は汎用性,コスト且つ品質,生産性に優れており、これにより置換率の低下が少なく、高い摺動信頼性を実現できる潤滑剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1記載の分子量制御装置の上面模式図と側面模式図である。
【図2】実施例2記載の磁気ディスクの構成を示す断面模式図である。
【図3】実施例2及び比較例3〜7で作製した磁気ディスクの評価結果において数平均分子量と磁気ディスク表面の最大摩耗深さとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例2及び比較例3〜7で作製した磁気ディスクの評価結果において分子量3000以下の比率と磁気ディスク表面の最大摩耗深さとの関係を示すグラフである。
【図5】実施例2及び比較例3〜7で作製した磁気ディスクの評価結果において末端官能基の置換率と磁気ディスク表面の最大摩耗深さとの関係を示すグラフである。
【図6】実施例3及び比較例8〜12で作製した磁気ディスク装置の上面模式図と側面模式図である。
【図7】実施例4記載の磁気ディスクの構成を示す断面模式図である。
【図8】実施例4及び比較例13〜17で作製した磁気ディスクの評価結果においてスティクションとバンプの摩耗量との関係を示すグラフである。
【図9】実施例4及び比較例13〜17で作製した磁気ディスクの評価結果において数平均分子量とスティクションとの関係を示すグラフである。
【図10】実施例4及び比較例13〜17で作製した磁気ディスクの評価結果において分子量3000以下の比率とスティクションとの関係を示すグラフである。
【図11】実施例4及び比較例13〜17で作製した磁気ディスクの評価結果において末端官能基の置換率とスティクションとの関係を示すグラフである。
【図12】実施例5及び比較例18〜22で作製した磁気ディスク装置の上面模式図と側面模式図である。
【符号の説明】
1…溶液循環装置部、2…限外ろ過装置部、3…ドレイン・パン、4…フィルター、5…本体、6…溶液タンク、7…液循環ポンプ、8…入り側の管、9…戻り液用の管、10…透過した液を通す管、11…コック、12…圧力計、13…ドレインコック、14…ボックス、15…水冷ジャケット、16…液面センサー、17…インバータ、18…タイマー、19…ガラス基板、20,34…Cr下地膜、21…CrTi膜、22,35…CoCrPtTaからなる磁性膜、23,36…硬質保護膜、24,37…潤滑膜、25,38…磁気ディスク、26,39…筐体、27,40…スピンドルモーター、28,41…アクチュエーター、29,42…ヘッド、30…ランプ、31,43…制御回路、32,44…磁気ディスク装置、33…基板。

Claims (4)

  1. 非磁性基板表面上に少なくとも下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜を順に形成してなる磁気ディスクにおいて、該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式(1)のパーフロロポリエーテルを含有し、
    HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2−CH2OH
    (1)
    (ここで、n,mは正の整数)
    前記潤滑剤は、数平均分子量5500以上であって、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5以下であり、分子量3000以下の成分を潤滑剤全体の15重量%以下含み、 前記潤滑剤に含まれる構造式(1)のパーフロロポリエーテルの末端官能基(−CH2OH)の割合が90%以上であり、
    前記潤滑剤は、分子量1000から3000の所定の分子量を境に分画可能で、表面にアルコール分子が吸着した親水性の限界ろ過膜を透過した潤滑剤であることを特徴とする磁気ディスク。
  2. 請求項1に記載された磁気ディスクにおいて、
    該磁気ディスクは、表面の半径10mm以上25mm以下の範囲の領域にレーザーによって直径5.0μm以下,高さ20nm以下のリング状の突起が規則的に配列された帯状のゾーンを有することを特徴とする磁気ディスク。
  3. 非磁性基板表面上に下地膜,磁性層,保護膜,潤滑膜が順に形成された磁気ディスクと
    、該磁気ディスクを取り付けた10000rpm以上で回転可能なスピンドルモーターと、該磁気ディスクにデータを記録再生するための磁気ヘッド・スライダーと、該磁気ヘッド・スライダーを該磁気ディスク表面近傍で作動させるためのアクチュエーターおよび制御回路とを有し,
    該磁気ヘッド・スライダーが該磁気ディスク回転時に該磁気ディスクの面上にあり,該磁気ディスク停止時に該磁気ディスクの外周側の面外に退避する機能を有し、データ転送速度が45MB/秒以上である磁気ディスク装置において,
    該磁気ディスクの潤滑膜の潤滑剤が構造式(1)のパーフロロポリエーテルを含有し、
    HOCH2−CF2O−[−(CF2CF2O)m−(CF2O)n−]−CF2−CH2OH
    (1)
    (ここで、n,mは正の整数)
    前記潤滑剤は、数平均分子量5500以上であって、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.5以下であり、分子量3000以下の成分を潤滑剤全体の15重量%以下含み、前記潤滑剤に含まれる構造式(1)のパーフロロポリエーテルの末端官能基(−CH2OH)の割合が90%以上であり、
    前記潤滑剤は、分子量1000から3000の所定の分子量を境に分画可能で、表面にアルコール分子が吸着した親水性の限界ろ過膜を透過した潤滑剤であることを特徴とする磁気ディスク装置。
  4. 請求項に記載された磁気ディスク装置において、
    前記磁気ディスクは、表面の半径10mm以上25mm以下の範囲の領域にレーザーによって直径5.0μm以下,高さ20nm以下のリング状の突起が規則的に配列された帯状のゾーンを有することを特徴とする磁気ディスク装置。
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