JP2004010994A - 大気圧プラズマ放電処理装置、大気圧プラズマ放電処理方法及び光学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラズマ放電装置の電極と、基材を載せたまま移動出来る移動架台との放電空間で、プラズマ放電処理した後、移動架台を次のプラズマ放電装置に移動して大気圧プラズマ放電処理装置を用いて処理する大気圧プラズマ放電処理方法より解決出来る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は大気圧プラズマ放電処理方法及び装置に関し、特にガラス基板、レンズ、フィルム、シート等の基材の上に薄膜を積層して機能性光学素子を製造する大気圧プラズマ放電処理方法及び装置、並びにそれで作製された光学素子に関する。更に本発明は、基材の表面改質、表面改質された基材や薄膜形成された基材のクリーニング、洗浄またはエッチングに有用な大気圧プラズマ放電処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、CRT、PDP、有機ELディスプレイ、液晶画像表示装置等の画像表示装置の画面については、近年、その透過率やコントラストの向上、映り込み低減のために表面反射を減少させる反射防止技術が多数提案されており、その一つの反射防止技術としては、複数の屈折率の異なる膜を積層することによって、光の反射を減少させる反射防止層を有する光学素子が知られている。
【0003】
このように基材に機能性の膜を複数積層することにより、新たな機能を持たせることが出来、複数の機能性の膜を有する基材は、様々な技術分野で用いられている。
【0004】
基材の表面に特定の機能を付与する薄膜を積層してなる表面処理品を製造する方法としては、従来、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、減圧下でのグロー放電を利用したプラズマCVD法などが知られている。しかし、これらの方法は、何れも真空系で行われ、真空チャンバー、大型真空ポンプなど大がかりな設備が必要であり、製造にはいろいろな限界あるいは制限がある。
【0005】
上記真空系に対して、大気圧系での処理装置及び処理方法が最近、例えば、特開平11−241165号公報等で提案されるようになって来ている。これらの方法は処理室内を真空にする必要はないが、多層の薄膜を積層する場合、複数の処理室にそれぞれの薄膜形成をするための対向電極を持ち、基材をそれらの処理室から処理室へ移送する際に処理室から出して行うため、ゴミ等の不純物が付着する機会が増えるばかりでなく、薄膜形成中の基材に傷を付けたりして、不良品の増加が懸念され、また装置的にもコスト的に負担が多くかかる。また、基材を移動させないで、一つの処理装置において複数の層を積層する場合は、積層する薄膜形成ガスをいちいち入れ替えて行う必要があり、そのため薄膜材料のコンタミネーションが起こり易く、やはり収率が低下してしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、鋭意検討の結果達成することが出来た。本発明の目的は、装置が大がかりでなく、装置コストが安く、ゴミ付着やコンタミネーションが起こりにくく、生産性が高く、品質的に優れた高機能性物品を形成する処理方法及び処理装置を提供することにあり、第2の目的は、高機能性で、生産コストが安価で、優れた品質の光学素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来の真空系の方法は、基材上に薄膜を積層して形成する際、装置に基材を搬入し、真空にして、薄膜を形成し、真空系を解除して、基材を装置外に取り出し、次の装置に移送して基材を搬入し、真空系を減圧(真空)にして薄膜を形成させるという工程を積層ごとに繰り返し行う方法及び装置である。
【0008】
これに対して本発明は、基材を移動架台または移動架台の上に静置したまま装置外に出すことなく、次々と装置内を移動して薄膜を積層していくという方法及び装置で、しかも大気圧もしくはその近傍下で行うため大がかりな装置を必要とせず、設備コストが安く、真空のON/OFFを行わないため生産性が高く、ゴミの付着やコンタミネーションもない品質の優れた積層された高機能性の薄膜を有する光学素子を製造する方法及び装置である。大気圧系であっても現在のところ積層するたびに基材を装置外に運び出すため、光学素子は必ずしも収率(歩留まり)が高いとは言えない。とはいえ、大気圧プラズマ放電処理方法では、90%近い収率までにすることが出来るようになったが、更にこの収率を高めることはかなりむつかしく、95%以上、更に98%以上にするには技術的な難度の高い技術が必要とされて来たが、本発明の装置及び方法により高収率を達成することが出来るようになった。収率を高めることは環境的問題、省資源、省エネルギーの見地から重要な問題となっている。
【0009】
本発明は下記の構成によりなる。
(1) 少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置内にある第1の電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台と該第1の電極とで構成する第1の対向電極を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該第1の対向電極間(以降、対向電極間のことを放電空間ということがある)を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該第1の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により高周波電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該第1の放電空間で該基材を該プラズマ状態のガスに晒し、第1の処理を施した後、該移動架台を、第2のプラズマ放電装置に移動させ、第2のプラズマ放電装置内にある第2電極と該移動架台とで第2の対向電極を構成し、第2の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、第2の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって、第2の放電空間に導入したガスをプラズマ状態とし、第2放電空間において該基材の第1の処理を施した面を、第2の放電空間でプラズマ状態となったガスに晒し、該基材の上に重ねて第2の処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
【0010】
(2) 少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置内にある一組の第1の対向電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該第1の対向電極の底面と該移動架台表面との間で作る第1の処理空間及び該第1の対向電極の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該第1の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該第1の処理空間を該プラズマ状態のガスで満たして該移動架台上にある基材を該プラズマ状態のガスに晒し、第1の処理を施した後、該基材を載せたまま該移動架台を第2のプラズマ放電装置に移動して、第2のプラズマ放電装置内にある一組の第2の対向電極底面と該移動架台表面で作る第2の処理空間及び第2の対向電極の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、第2の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって第2の放電空間に導入したガスをプラズマ状態とし、該2の放電空間でプラズマ状態となったガスを第2の処理空間に満たし、該移動架台上にある基材の第1の処理を施した面を該2の放電空間でプラズマ状態となったガスに晒し、該基材の上に重ねて第2の処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
【0011】
(3) 一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置内にある電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台と該電極とで構成する対向電極を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該放電空間で該基材を該プラズマ状態のガスに晒して処理を施した後、該移動架台を基材を載せたまま予備室に移動して待機させ、その間に該プラズマ放電装置の内部のガスを全て抜き去った後、該プラズマ放電装置に該移動架台を戻し、該移動架台が該電極の下側に位置して再び対向電極を構成し、該放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に新たにガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって新たに導入したガスをプラズマ状態とし、該放電空間で該基材を該プラズマ状態の新たに導入したガスに晒し、該基材の上に重ねて処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
【0012】
(4) 一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置内にある一組の対向電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該対向電極の底面と該移動架台表面との間で作る処理空間及び放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該処理空間を該プラズマ状態のガスで満たして該移動架台上にある基材を該プラズマ状態のガスに晒し、処理を施した後、該移動架台上にある該基材上を該プラズマ状態のガスに晒して処理を施した後、該移動架台を基材を載せたまま予備室に移動して待機させ、その間にプラズマ放電装置の内部のガスを全て抜き去った後、該プラズマ放電装置に該移動架台を戻し、該処理空間及び放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に新たにガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって新たに導入したガスをプラズマ状態とし、
該放電空間でプラズマ状態となったガスを該処理空間に満たし、該移動架台上にある基材の前記処理を施した面を該処理空間で該プラズマ状態の新たに導入したガスに晒し、該基材の上に重ねて処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
【0013】
(5) 第2以降のプラズマ放電装置で重ねて処理を施した後、移動架台を重ねて処理する前のプラズマ放電装置に戻し更に同種の処理を重ねて施すことを特徴とする(1)または(2)に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
【0014】
(6) 第1と第2のプラズマ放電装置間を、移動架台を多数回往復して多数回重ねて処理を施すことを特徴とする(1)、(2)または(5)請求項1、2または5に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
【0015】
(7) 前記処理及び待機の操作を繰り返すことにより、多数回重ねて処理を施すことを特徴とする(3)または(4)に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
【0016】
(8) 前記電極及び前記移動架台の少なくとも一方を同一平面内で水平方向に揺動して処理を施すことを特徴とする(1)、(3)、(5)、(6)または(7)に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
【0017】
(9) 前記一組の対向電極及び前記移動架台の少なくとも一方を同一平面内で水平方向に揺動して処理を施すことを特徴とする(2)、(4)、(5)、(6)または(7)に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
【0018】
(10) 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置には第1の電極と該電極の下側に位置して第1の対向電極を構成する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、該移動架台が、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間を往復し得る移動手段を有し、第2のプラズマ放電装置には、該移動架台と対向電極を構成し得る第2の電極を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
【0019】
(11) 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、該第1のプラズマ放電装置には一組の第1対向電極と該対向電極の下側に位置する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、該移動架台が少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間を往復し得る移動手段を有し、更に該第2のプラズマ放電装置には、該移動架台と処理空間を形成し得る一組の該第2の対向電極を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
【0020】
(12) 前記少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間に、移動架台が通過し得る予備室を有することを特徴とする(10)または(11)に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
【0021】
(13) 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置に隣接する予備室を有し、一つの電極と該電極の下側に位置して対向電極を構成する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、且つ該移動架台が該プラズマ放電装置と該予備室とを往復し得る移動手段を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
【0022】
(14) 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置に隣接する予備室を有し、一組の対向電極と該対向電極の下側に位置する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、且つ該移動架台が該プラズマ放電装置と該予備室とを往復し得る移動手段を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
【0023】
(15) 前記電極がアース電極または印加電極であることを特徴とする(10)、(12)または(13)に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
【0024】
(16) 前記移動架台がアース電極または印加電極であることを特徴とする(10)、(12)または(13)に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
【0025】
(17) 前記移動架台が電流を導通しない構造を有していることを特徴とする(11)または(14)に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
【0026】
(18) (10)乃至(17)の何れか1項に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、(1)乃至(9)の何れか1項に記載の大気圧プラズマ放電処理方法により基材の上に光学薄膜を積層したことを特徴とする光学素子。
【0027】
本発明を以下に詳述する。
本発明においては、プラズマ放電処理が大気圧もしくはその近傍の圧力で行われるが、ここで大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。なお、「大気圧もしくはその近傍の圧力」を、以降において、「大気圧近傍の圧力」と略すことがある。
【0028】
先ず、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置及び大気圧プラズマ放電処理方法について説明する。
【0029】
図1は、本発明の基材上に重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【0030】
図1の大気圧プラズマ放電処理装置は、二つのプラズマ放電装置10、高周波電圧印加手段40及びガス供給手段50及び移動手段70を有している。
【0031】
図1には第1と第2の二つだけのプラズマ放電装置10A及び10Bを有している。プラズマ放電装置10Aには電極11Aと移動架台15があり、移動架台15は電極11Aの下側に位置し、電極11Aと移動架台15とで対向電極を構成している。またプラズマ放電装置10Bには電極11Bがあり、プラズマ放電装置10Aから移動して来る移動架台15′が電極11Bの下側の定位置に移動して停止し、電極11Bと移動架台15′(点線で示されている)とで対向電極を構成する。
【0032】
高周波電圧印加手段40には高周波電源41がスウィッチ43Aと43Bの切り替えにより、電極11Aに、また電極11Bに高周波電源41が接続される。移動架台15にはレール71からアース42が接地されている。
【0033】
図1では移動架台15の移動手段70としてレール71と移動架台についている車輪72が図示されているが、移動架台15の移動手段は水平に移動させることが出来る手段であれば制限なく、移動架台が摺動により移動してもよい。最も簡単で正確な手段として、例えば、2本のレール71をプラズマ放電装置10A内に敷設し、次のプラズマ放電装置10B内にも同じ水平水準でレールを敷設し、移動架台15に車輪72を付けて移動させるという方法が例示されている。
【0034】
電極11Aと移動架台15とで構成される対向電極の放電空間13Aを大気圧近傍の圧力とする。ガス供給手段50のガス供給装置51Aから供給されるガスGAは、給気口52Aから電極11A内のスリットを通路を通り、電極11Aの底面にあるスリット口12Aから放出され放電空間13Aを満たし、高周波電源41から印加された電界により放電空間に放電を発生させて、ガスGAは放電によりプラズマ状態のGA°として、移動架台15の上に静置して載っている基材Fの表面に処理を施す。なお、処理中、処理が均一に出来るように移動架台15を同一平面内を水平方向に揺動させてもよい。処理後のガスGA′は排気口53Aから排出される。プラズマ放電装置10Aで処理を施した後、ゲート19Aを開き、移動架台15を予備室4に移動した後、ゲート19Aを閉じ、移動架台15を予備室4に移動する。
【0035】
本発明において、プラズマ放電装置10A及び10Bの間に予備室4を設けてもよいし、設けなくてもよいが、設けるのが好ましい。予備室はプラズマ放電装置10Aと10B内のガスまたは処理後のガスがコンタミネーションを起こさないようにするための部屋で、その長さは制限ないが、移動架台15が収まる長さ程度であればよい。但し、図1では予備室4は短く描いてある。予備室4には給気口54から不活性ガスHGを導入して満たすことが好ましく、緩衝帯の役目をしている。不活性ガスHGは排気口55から排出される。ここで、不活性ガスとは処理された面に影響を及ぼさないようなガスをいい、希ガスや窒素ガス等を挙げることが出来る。
【0036】
該基材Fを載せた移動架台15はレール71と車輪72の移動手段70により、予備室4を通り抜け(または予備室で一旦待機してもよい)、次のゲート19Bが開きプラズマ放電装置10Bに入り、ゲート19Bを閉じる。プラズマ放電装置10Bの中に移動した移動架台は、電極11Bの下側の定位置に停止し、対向電極を構成する。電極11Bと移動架台15′との放電空間13Bを大気圧近傍の圧力として、ガスGBをガス供給装置51Bから給気口52Bを経て電極11Bのスリットに導入し、スリット出口12Bから放電空間13BにガスGBを満たす。
【0037】
高周波電源41は移動架台15がプラズマ放電装置10Aにある時はスウィッチ43Aに接続しているが、プラズマ放電装置10Bにある時はスウィッチ43Bに切り替わり電極11Bと移動してきた移動架台15′(点線で表示)との放電空間13Bでプラズマ放電を発生させ、該放電空間13BでガスGBをプラズマ状態にする。GB°はプラズマ状態のガスである。なお、ガスGAとGBは組成が同じでも異なっていてもよく、処理によって変化させればよい。前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台15′を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。
【0038】
また、移動架台15は図1のような二つのプラズマ放電装置10Aと10Bの間を何往復してもよく、例えば、ハーフミラーのような光学素子ではこのような交互に薄膜形成し10数層積層するという場合もある。
【0039】
移動架台15(15′)と基材Fは重ねて処理することが完了するまで、外界に触れることなしに移動することが出来、ゴミのような付着物もなく、またハンドリングもなく傷が付かず、コンタミネーションもなく不良品の発生をほぼ皆無にすることが出来、収率も向上する。
【0040】
プラズマ放電装置10A及びBのプラズマ放電処理容器はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0041】
図2は、上側の電極(図1の11AまたはB)を底面側から見上げた斜視図である。電極11の底面11Tにはスリット出口12が開いており、スリットは電極の内部を通り、電極上部では給気口52に接続している。電極の内部ではスリットが如何なる形をしていても構わないが、電極の底部スリット(直線)からはガスが電極の長さ方向に対して均一に同じ強さで吹き出すようになっていればよい。スリット出口12の長さは該電極の長さよりやや短く、電極の底部(対向している電極に相対する面)でスリット出口の両端は閉じられている。また電極の内部には空洞があり、電極温度を調節出来るジャケットとなっている。電極底面11Tに開放されているスリット出口12の幅は0.5〜10mm程度あればよい。電極11はチタン合金T64の金属質母材11aで出来ている。該電極の底面11T及び該底面に接する側面から30mm以上の高さまで(勿論スリットの面も同様)立ち上がるように下記のような誘電体11bを金属質母材表面に被覆してある。
【0042】
ここで、導電性の金属質母材及びその上に被覆された誘電体について触れておく。
【0043】
電極及び移動架台の母材は導電性の金属質のもので形作られている。また少なくとも一方の電極の導電性の金属質母材には、対向する電極の対向面上には固体誘電体が被覆されていることが好ましい。金属質母材及び誘電体の材質については、放電条件にも関係するので、詳しくは後述するが、ここでは概略的なことを以下述べておく。
【0044】
導電性の金属質母材(図2において11a)としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0045】
誘電体(図2において11b)は、導電性の金属質母材の上に誘電体としてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミックス被覆処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1〜10mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0046】
対向電極の電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0047】
電極の底面11Tの金属質母材11a表面には大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜が被覆されている。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行う。
【0048】
図3は、本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0049】
図3は、図1のプラズマ放電装置10A及び10BをC、D、Eと増設したもので、内容的にはAと全く同様であり、プラズマ放電装置が5基直列に並んで5種、5回以上を重ねて処理を施すことが出来る装置である。すなわち、110A、110B、110C、110D及び110Eはプラズマ放電装置で、それぞれの中に電極111A、111B、111C、111D及び111Eがある。ここで、請求項1に記載の少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有するということを図3においては、第1のプラズマ放電装置を110Aとすると、第2のプラズマ放電装置が110Bとなり、以降110Cが第3のプラズマ放電装置、110Dが第4のプラズマ放電装置、110Eが第5のプラズマ放電装置となる。第1のプラズマ放電装置内にある電極、対向電極及び放電空間等は全て第1という表現となる。以下同様である。なお、図3においては図1の符号等が省略されているところがある。
【0050】
プラズマ放電装置110A内の電極111Aと基材Fを搭載している移動架台115が対向電極を構成し、該対向電極間の放電空間を大気圧近傍の圧力としてガスGAを満たし、スウィッチ143AをONとし、高周波電源141Aから電圧を印加し、放電空間でガスGAをプラズマ状態にして、該プラズマ状態のガスにより基材Fの上に処理を施す。処理後、スウィッチ143AをOFFとし、プラズマ放電装置110Bに基材Fを搭載したまま移動架台115を移動し、電極111Bと下の定位置に停まり、スウィッチ143BがONになる。放電空間を大気圧近傍の圧力としガスGBを満たし、高周波電源141Bから放電空間に電圧を印加して放電を発生させ、ガスGBをプラズマ状態として、基材F上処理した基材F′面の上に重ねて処理を施す。ここまでは、図1と同様であるが、更に以降、プラズマ放電装置110C、110D、110Eに移動架台115′が移動し、同様に行われる。141C、141D及び141Eはぞれぞれの高周波電源、143C、143D、141Eはスウィッチ、GC、GD及びGEはそれぞれのガスである。この5連の処理装置で移動架台115(115′)と基材Fは一度も外界に出ることなく基材上を処理することが出来、ゴミの付着やコンタミネーションのない良品の製品を製造することが出来る。なお、移動架台は一方方向に移動するだけでなく、戻って前の処理を重ねてもよい。また、前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。
【0051】
図4は、本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0052】
図4の装置は、プラズマ放電装置200の隣に予備室があり、処理後、移動架台215が一旦予備室に移動して待機し(移動架台215′となる)、その間に該プラズマ放電装置200の内部のガスGAを抜き取り、移動架台215′をプラズマ放電装置内に戻し、再び対向電極を構成させる。プラズマ放電装置200内の放電空間213に組成の異なるガスを導入して、前の処理した基材Fの面に重ねて処理を施すというもので、図1または3の装置より簡単になっているのが特徴である。しかし、同一プラズマ放電装置で異なったガスを使用するため、若干コンタミネーションの心配はあるが注意深く行えば心配はない。251A及びBはガス供給装置で、ガス供給装置251AはガスGAを、またガス供給装置251BはガスGBを供給するようになっている。256A及び256Bはバルブで何れかを使用している時は不使用のバルブはOFFにしておくようになっている。241は高周波電源、212はスリット出口、213は放電空間、272は車輪、271はレール、219はゲートである。252はガスの給気口である。また、254は予備室の不活性ガスHGの給気口である。前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台215′を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。
【0053】
本発明において、図1及び3と異なる態様の電極について以下に述べる。
図5は本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。図5はプラズマ放電装置310A内に印加電極311A−1とアース電極311A−2の2個の電極で対向電極を構成している。この装置においては、該対向電極間が放電空間313Aとなっており、該対向電極の底面(311A−1と311A−2との)と移動架台316(または基材F面)とで形成するところは処理空間314Aである。移動架台316の上には基材Fが搭載されている。また、該移動架台316はアースに接地されておらず、電極ではなく単なる移動架台である。
【0054】
図5において、放電空間313A及び処理空間314Aを大気圧近傍の圧力とし、ガスGAを給気口352Aから放電空間313Aに導入し、高周波電源341からの電圧の印加によりガスGAがプラズマ状態のガスGA°となり、ジェットのような流れでスリット出口312Aから処理空間314Aに流れ出し、基材Fの上に処理が施される。基材Fは移動架台316の上に静置しており、該移動架台が移動手段により隣りのプラズマ放電装置310Bに移動するようになっている。プラズマ放電装置310B内には、印加電極311B−1とアース電極311B−2があり、その下に移動架台316が移動してきて定位置に移動架台316′となって、その上に組成の異なるガスGBが印加電極310B−1とアース電極301B−2との対向電極間(放電空間)313Bでプラズマ状態のガスGB°となり、ジェットのような流れで放電空間出口312Bから処理空間314Bの基材F′の上に吹き出し、基材F′の処理面の上に重ねて処理を施す。343Aと343Bは切り替えスウィッチ、304は予備室、352A及び325BはガスGBの給気口、354は予備室への不活性ガスの給気口、319A及び319Bはゲートである。なお、前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台316(または316′)を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。
【0055】
図6は本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。図6は、プラズマ放電装置410Aには、ガスを二つの成分を分けてガスGA1とガスGA2として別々に放電空間に導入するようになっている電極411Aを有している。該電極411Aには、GA1用スリットとガスGA2用スリットがあり、ガスGA2は給気口452A−1と452A−2から、またガスGA1は給気口452A−3からと別々に供給され、それぞれのガスは電極411Aの中のスリット(大気圧もしくはその近傍の圧力となっている)を流れるようになっている。電極411Aは印加電極で、アース電極の移動架台415との放電空間413A(大気圧近傍の圧力としてある)に、電極の底面にある別々のスリット出口412A−1、412A−2からGA2が、またスリット出口412A−3からガスGA1を放出して、放電空間を満たし、高周波電源441から電極411Aに電圧(切り替えスイッチ443AがON)が印加され、プラズマ放電が対向電極間(放電空間)413Aで発生し、ガスがプラズマ状態のガスGA°となる。このようにガスを分けて放電空間に導入するのは、ガスGA1を直接電極と接触させないことで、電極の汚れを防止するためである。該プラズマ状態のガスGA°により、基材Fの上に処理を施す。処理後、移動架台415を前述の場合と同様に移動手段により隣りのプラズマ放電装置410Bに移動し、電極411Aと同様な構造の電極411Bの下の定位置で停止し、対向電極を構成する。プラズマ放電装置410Aの場合と同様に、組成の異なるガスであるが、ガスGB1とガスGB2に分け、別々のスリットに流し、電極底面のスリット出口412B−1、412B−2及び412B−3から放出して放電空間413Bを満たし、切り替えスウィッチ143B側に切り替え、高周波電源441から電圧を印可して、放電空間413Bでガスはプラズマ状態のガスGB°により、基材F′の処理を施された面上に処理を施す。ここで、404は予備室、454は給気口、419Aと419Bはゲート、452B−1、452B−2及び452B−3は給気口である。なお、前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台415(または415′)を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。
【0056】
図7は本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。図7は図6と同様にガスを分けて導入する電極を有する装置である。プラズマ放電装置510A内の電極は少なくとも三つに分かれており、そのうちの一つの電極はガスGA1が導入されるスリット514A−1を有する独立した電極でアース電極511A−1となっており、これに対してガスGA2のスリットは、このアース電極511A−1の両端と印加電極511A−2の壁で挟まれた空間で形成される。なお印加電極511A−2はアース電極511A−1の両側の二つのブロックに分かれている。二つの印加電極511A−2とアース電極511A−1とで対向電極を構成し、放電空間514A−2が形成される。印加電極511A−2の下の定位置に、基材Fを静置して載せてある移動架台516があり、印加電極511A−2とアース電極511A−1の両方の電極の対向電極の底面と移動架台516とで作る処理空間513Aが形成される。スリット514A−1、放電空間514A−2及び処理空間513Aを大気圧近傍の圧力としておく。ガスGA1はアース電極511A−1のスリット514A−1を通り、ガスGA2は放電空間514A−2を通る。切り替えスウィッチ543AをONにして、高周波電源541から電圧を対向電極間(放電空間)にかけ、ガスGA2をプラズマ状態とし、処理空間513Aに放出される。一方ガスGA1はアース電極511A−1のスリット514A−1をそのまま通り、該処理空間513Aに流れ出し、該プラズマ状態のガスGA2によりGA1がプラズマ状態(G1°)となり、基材面に処理を施す。処理後、移動架台516は隣のプラズマ放電装置510Bに移動し、印加電極511B−2とアース電極511B−1とで構成する対向電極の下の定位置に停止する。あとの操作は、上記と同様であるので省略する。ここで、552A−1と552A−2はガスGA2の給気口、552B−1と552B−2はガスGB2の給気口、552A−3と552B−3はそれぞれガスGA1とGB1の給気口、G2°はプラズマ状態のガス、513Bは処理空間、516′は移動した移動架台、552B−1、552B−2、552B−3、554は給気口、504は予備室、HGは不活性ガスである。なお、前述同様、処理中処理が均一になるように移動架台516(または516′)を同一平面内で水平方向に揺動させてもよい。また、移動架台516(または516′)はアースに接地されておらず、電極ではなく単なる移動架台である。
【0057】
図8は本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。図8は図1のプラズマ放電装置10Aと図5のプラズマ放電装置310Bをつなげた大気圧プラズマ放電処理装置である。図8の特徴は電極(印加電極)611Aの底面とアース電極としての移動架台615との間で形成される放電空間613Aで基材Fに処理を施した後、移動架台615をプラズマ放電装置610Bに移動させて、電極611B−1と電極611B−2とで構成される対向電極の放電空間613Bでプラズマ状態となったガスGB°が該対向電極の底面と移動架台615′で形成される処理空間614に放出し、該処理空間614で基材F′の既に処理された面に重ねて処理を施すものである。更に、プラズマ放電装置610A内の移動架台615はレール671からアースに接地されるアース電極であるのに対し、プラズマ放電装置610B内の移動架台615′は、アース電極でもなく、単なる移動架台で、電流は通過できないようになっている。レール671は673において切断(電気的に)されており、プラズマ放電装置610B内のレールからはアースに接地出来ないようにしてある。
【0058】
このように、本発明において、処理する方法の異なるプラズマ放電装置、例えば図1、図5、図6、図7のような電極の構造、放電空間、処理空間、移動架台の電極の有無等を適宜組み合わせて大気圧プラズマ放電処理装置としてもよい。また、本発明に使用した図においては、一つの高周波電源を全てのプラズマ放電装置にスウィッチで切り替えて使用するように描いてあるが、放電条件が違う場合には、別の高周波電源をプラズマ放電装置に接続してもよい。
【0059】
本発明の大気圧プラズマ放電処理方法において、対向する電極間に印加する高周波電圧は、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、処理ガスを励起してプラズマを発生させる。
【0060】
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、より好ましくは15MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、より好ましくは800kHz以上である。
【0061】
また、電極間に供給する電力の上限値とは、好ましくは50W/cm2以下、より好ましくは20W/cm2以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2以上である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0062】
高周波電源より印加電極に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV/cm程度で、上記のように電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。
【0063】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られる。
【0064】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0065】
本発明においては、印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、神鋼電機製高周波電源(3kHz)、神鋼電機製高周波電源(5kHz)、神鋼電機製高周波電源(10kHz)、春日電機製高周波電源(15kHz)、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、パール工業製製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来る。好ましくは、100kHz超〜150MHzの高周波電源であり、好ましくは、200kHz〜150MHzの高周波電源であり、特に好ましくは、800kHz〜15MHzのものである。
【0066】
大気圧プラズマ放電処理方法では、均一で安定な放電を持続させるために電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0067】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、さらに好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0068】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
▲1▼金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲2▼金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
▲3▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲4▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
▲5▼金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲6▼金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
▲7▼金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
▲8▼金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼または▲2▼および▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0069】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0070】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0071】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0072】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体破片を用い空隙率を測定した。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0073】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0074】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、30%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0075】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0076】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0077】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0078】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0079】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材フィルムと接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材フィルムと接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0080】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0081】
次に、本発明の大気圧プラズマ放電処理方法に使用し、放電空間に供給するガスについて説明する。
【0082】
使用するガスは、基本的に放電ガスと反応性ガスとがあり、更に反応性を加速させたり、制御したりする補助ガスと用いることもある。
【0083】
供給するガスは、放電ガス及び反応性ガスを含有する。放電ガスと反応性ガスは混合して供給してもよいし、別々に供給してもかまわない。
【0084】
放電ガスとは、処理を可能なグロー放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスで、プラズマ放電を発生させるに必要なガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0085】
反応性ガスは、本発明において、薄膜形成ガスと表面改質ガスの二つに大きく分類することとする。
【0086】
薄膜形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性となり、基材上に化学的に堆積して薄膜を形成する原料のことである。
【0087】
表面改質ガスは、プラズマ放電処理の目的に応じて任意に選択することが出来る。例えば、被処理物(基材または処理された面を有する基材)の面に存在する有機物のクリーニング、レジストの除去、有機材料フィルムのエッチング等を行う場合、酸素、空気、二酸化炭素、水蒸気、N2O等の酸化性ガスを使用することが好ましい。また、シリコンなどのエッチングを行う場合は、CF4等のフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また、金属酸化物の還元を行う場合は、水素ガスやアンモニアなどの還元性ガスを用いることが出来る。一例として、反応性ガスの添加量は、放電ガスに対して10質量%以下、より好ましくは0.1〜5質量%である。上記処理において、反応性ガスによる被処理物表面の酸化やフッ素化が問題になる場合は、放電ガスのみを使用してプラズマ放電処理を行ってもよい。
【0088】
大気圧プラズマ放電処理の代表的な例は、薄膜形成による高機能膜を有する物品である。本発明においては、この薄膜形成ガスを使用した光学素子について作製について代表例として説明する。
【0089】
本発明に有用な薄膜形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。
【0090】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、M金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、好ましくはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来る。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0091】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0092】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、補助ガスを好ましく使用出来る。補助ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることが出来る。補助ガスを添加することにより薄膜の硬度を高める効果があり、これらのうち特に酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量は使用ガスに対して0.01〜10体積%、好ましくは0.1〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0093】
上記形成された酸化物または複合化合物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0094】
本発明において、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン化金属、金属水素化合物の金属として、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることが出来る。
【0095】
本発明の大気圧プラズマ放電処理方法で、上記のような有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等の金属化合物を不活性ガスと共に用いて高機能の薄膜を形成する使用することにより様々な高機能性の薄膜を得ることが出来る。本発明の光学素子の薄膜の例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0096】
電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO2、SiO、Si3N4、Al2O3、Al2O3、Y2O3
透明導電膜 In2O3、SnO2
エレクトロクロミック膜 WO3、IrO2、MoO3、V2O5
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe2O3、Co、Fe3O4、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In2O3、SnO2
反射防止膜 SiO2、TiO2、SnO2
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS2
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
本発明において、特に好ましい金属化合物の金属は、上記のうちSi(珪素)、Ti(チタン)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、In(インジウム)及びAl(アルミニウム)であり、これらの金属と結合する金属化合物のうち、上記一般式(I)で示した有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物の例示については後述する。
【0097】
ここで、上記の光学素子のうち反射防止膜(層)及び反射防止膜を積層した反射防止フィルム及び透明導電フィルムについて詳細に説明する。なお、本発明の大気圧プラズマ放電処理方法において、重ねて処理するということは、薄膜形成の場合の積層するということと同義である。
【0098】
本発明の光学素子のうちの反射防止フィルムの反射防止層は中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層それぞれの薄膜が積層されたものである。
【0099】
本発明に係る反射防止層薄膜形成ガスの高屈折率層を形成するチタン化合物、中屈折率層を形成する錫化合物、低屈折率層を形成する珪素化合物について述べる。反射防止層を有する反射防止フィルムは、各屈折率層を基材上に直接または他の層を介して積層して得られるものであるが、積層は、例えば、図1または2のような大気圧プラズマ放電処理装置を、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層以上を積層するために、図3のように3基並べて連続的に処理することが出来、この連続的積層処理は品質の安定や生産性の向上等から本発明の光学素子の作製に適している。本発明において、反射防止層の上に防汚層を設ける場合には、上記のプラズマ放電処理装置を更にもう1基続けて設置し、4基並べて最後に防汚層を積層してもよい。また、反射防止層を設ける前に、基材の上に予めハードコート層や防眩層を塗布によって設けてもよく、また、その裏側に予めバックコート層を塗布によって設けてもよい。
【0100】
本発明に係る反射防止フィルムの反射防止層薄膜形成ガスには、適切な屈折率を得ることの出来る化合物であれば制限なく使用出来るが、本発明において、高屈折率層薄膜形成ガスとしてはチタン化合物を、中屈折率層薄膜形成ガスとしては錫化合物またはチタン化合物と珪素化合物の混合物(または高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層と低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を、また低屈折率層薄膜形成ガスとしては珪素化合物、フッ素化合物、あるいは珪素化合物とフッ素化合物の混合物を好ましく用いることが出来る。これらの化合物を屈折率を調節するために、何れかの層の形成用薄膜形成ガスとして2種以上混合して使用してもよい。
【0101】
本発明に有用な中屈折率層薄膜形成ガスに用いる錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、ジブチルジエトキシ錫、ブチル錫トリス(2,4−ペンタンジオナート)、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、エチルエトキシ錫、メチルメトキシ錫、イソプロピルイソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、ジブチリロキシ錫、ジエチル錫、テトラブチル錫、錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫(2,4−ペンタンジオナート)、ジメチル錫ジ(2,4−ペンタンジオナート)、ジアセトメチルアセタート錫、ジアセトキシ錫、ジブトキシジアセトキシ錫、ジアセトオキシ錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来、何れも本発明において、好ましく用いることが出来る。また、これらの薄膜形成ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1011Ω/cm2以下に下げることが出来るため、帯電防止層としても有用である。
【0102】
本発明に有用な高屈折率層薄膜形成ガスに使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。またこれらの薄膜形成ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。
【0103】
本発明に有用な低屈折率層薄膜形成ガスに使用する珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。また、前記フッ素化合物を使用することが出来る。これらの薄膜形成ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。また、屈折率の微調整にこれら錫化合物、チタン化合物、珪素化合物を適宜2種以上同時に混合して使用してもよい。
【0104】
上記の有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物やアルコキシ基、β−ジケトン類錯体基を有する有機金属化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、アルコキシ基、β−ジケトン類錯体基を有する有機金属化合物が好ましく用いられる。また、上記の有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシ金属、テトライソプロポキシ金属などの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記アルコキシ金属は、溶媒によって希釈して使用されても良く、この場合、放電ガス中へ気化器等により気化して混合ガスに使用すればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0105】
薄膜形成ガスについて、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の含有率は、0.01〜10体積%で有することが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。なお、図6及び図7において、GA2とGB2が主として放電ガスを含有するガスで、GA1とGB1が薄膜形成ガスを含有する放電ガス(薄膜形成ガスは放電ガスにバブリングさせて気化させるため)に相当し、これらのガスを分けて導入する場合の放電ガスと薄膜形成ガスの割合は、その目的に応じて割合は異なるが、その一例として示すと、GA2ガスは、放電ガスが99.5体積%、補助ガス等が0.5体積%程度、また薄膜形成ガスは放電ガスが99.1体積%、薄膜形成ガスが0.9体積%程度が好ましい。
【0106】
なお、中屈折率層については、上記珪素化合物、上記チタン化合物または上記錫化合物を、目標とする屈折率に合わせて適宜混合することによっても得ることが出来る。
【0107】
なお、各屈折率層の好ましい屈折率と膜厚は、例えば、中屈折率層の酸化錫層では屈折率として1.6〜1.8、また膜厚として50〜70nm程度、高屈折率層の酸化チタン層では屈折率として1.9〜2.4、また膜厚として80〜120nm程度、低屈折率層の酸化珪素層では屈折率として1.3〜1.5、また膜厚として80〜120nm程度である。
【0108】
次に本発明の光学素子の他の例として透明導電膜を有する光学素子について説明する。
【0109】
前述の反射防止層を形成する際に使用する有機金属化合物の金属成分がインジウム等の透明性と導電性を有する薄膜を形成すると言う点が若干異なるが、有機基についてはほぼ同じような成分が用いられる。
【0110】
透明導電膜を形成する好ましい有機金属化合物の金属は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0111】
本発明において、好ましい有機金属化合物の好ましい例は、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(ヘキサフルオロペンタンジオナート)、インジウムトリアセトアセタート、トリアセトキシインジウム、ジエトキシアセトキシインジウム、トリイソポロポキシインジウム、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビス(アセトメチルアセタート)、ジ(n)ブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、ビス(2,4−ペンタンジオナート)亜鉛等を挙げることが出来る。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0112】
本発明においては、上記分子内に少なくとも1つの酸素原子を有する有機金属化合物の他に、該有機金属化合物から形成された透明導電膜の導電性を更に高めるために該透明導電膜をドーピングすることが好ましく、薄膜形成ガスとしての該有機金属化合物とドーピング用有機金属化合物ガスを同時に混合して用いることが好ましい。ドーピングに用いられる有機金属化合物またはフッ素化合物の薄膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、イソプロポキシボロン、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛ジ(2,4−ペンタンジオナート)、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることが出来る。
【0113】
前記透明導電膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成ガスの比は、成膜する透明導電膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、In:Snの原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成ガス量を調整することが必要である。好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう調整することが好ましい。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In2O3−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In:Sn、Sn:F及びIn:Znの各原子数比はXPS測定によって求めることが出来る。
【0114】
本発明において、透明導電薄膜形成ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。
【0115】
本発明において、得られる透明導電膜は、例えば、SnO2、In2O3、ZnOの酸化物膜、またはSbドープSnO2、FドープSnO2(FTO)、AlドープZnO、SnドープIn2O3(ITO)等ドーパントによるドーピングした複合酸化物を挙げることが出来、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするアモルファス膜が好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電膜を挙げることが出来る。
【0116】
上記形成された酸化物または複合酸化物の透明導電膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0117】
また、他の光学素子として、ハーフミラーのような、反射と透過の両方の性質を有するような光学素子は例えば、下記のように作製する。
【0118】
上述の酸化珪素を主成分とする低屈折率層と酸化チタンを主成分とする高屈折率層を交互に積層して5〜20層設けることにより、ハーフミラーとしての性質を付与することが出来る。酸化珪素層には上述と同様な有機珪素化合物、また酸化チタン層には、やはり上述と同様な有機チタン化合物が用いられる。
【0119】
本発明において、薄膜の最上層に汚れなどが付きにくい防汚層として薄膜を形成してもよい。
【0120】
本発明に係る防汚層薄膜形成ガスは、フッ素化合物と珪素化合物の混合物とフルオロシラン化合物のようなフッ素と珪素を有する化合物のガスが好ましく使用出来る。
【0121】
フッ素化合物としては、有機フッ素化合物として、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等を好ましく用いることが出来る。フッ化炭素ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン等を挙げることが出来る。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、例えば、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン等を挙げることが出来る。更に、例えば、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロシクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やトリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフルオロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を用いることが出来るが、これらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にフッ素化エチレン性不飽和基を有していても良い。
【0122】
また、珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。
【0123】
更に、本発明において、フッ素と珪素を有する化合物も好ましく用いることが出来る。例えば、テトラ(トリフルオロメチル)シラン、テトラ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(セプタフルオロプロピル)シラン、ジメチルジ(トリフルオロメチル)シラン、ジエチルジ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロメトキシ)シラン、テトラ(ペンタフルオロエトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ビニルトリ(トリフルオロメチル)シラン、トリパーフルオロメチルアクリロイルオキシシラン等のフルオロシラン化合物を挙げることが出来、これらの化合物を2種以上混合して使用してもよい。また重合性のシランモノマーのオリゴマーも使用出来る。
【0124】
上記フッ素化合物、珪素化合物、フッ素及び珪素を有する化合物を適宜2種以上混合して使用してもよい。
【0125】
かかる防汚層を形成するフッ素化合物及び珪素化合物の混合ガス、またフッ素及び珪素を有する化合物を用いることによって、防汚層(防汚層の表面)の表面エネルギーを低くし、撥水性も兼ね備えた薄膜を得ることが出来るが本発明の特徴である。
【0126】
なお、本発明にフッ素化合物、珪素化合物、フッ素及び珪素を有する化合物が常温、常圧で気体である場合は、混合ガスの構成成分として、そのまま使用できるので最も容易に本発明の方法を遂行することができる。しかし、フッ素化合物、珪素化合物、フッ素及び珪素を有する化合物が常温・常圧で液体または固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化して使用すればよく、また、適切な溶剤に溶解して用いてもよい。
【0127】
本発明に有用な基材としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の透明導電膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定はない。平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルム等を挙げることが出来る。材質的には、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用出来る。具体的には、ガラスとしては、ガラス板やレンズ等、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることが出来る。
【0128】
ガラスとしては、その材質は特に制限ないが、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、超高純度ガラス、クリスタルガラス等を挙げることが出来、これらは好ましく用いることが出来る。なお、ハーフミラー用にはソーダライムガラスが好ましい。またガラス板は使用目的によりことなるが、厚さは0.1〜5mm程度のものが用いられ、好ましくは0.3〜2mmである。
【0129】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。
【0130】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を適宜使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来るものを得ることが出来る。樹脂フィルムの膜厚としては0.1〜2mmが好ましい。
【0131】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用出来る。またこれら基材の反対側の面に防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。また、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。
【0132】
【実施例】
本発明を実施例により詳しく説明するが、これらに限定されない。
【0133】
〔評価〕
〈突起のカウント〉
20枚の試料を用意し、試料表面を斜めの反射光で観察し、微細な突起があるかを検査する。20枚中の試料中に観察される微細な突起の数を下記のようなレベルで評価した。
【0134】
A:微細な突起が一つもない
B:微細な突起が1個ある
C:微細な突起が2〜4個ある
D:微細な突起が5〜10個ある
E:微細の突起11個以上あり、更にやや大きめの突起も観察される。
【0135】
実施例1
〔ハーフミラーの作製〕
〈電極の作製〉
電極のサイズは、底面の長さ、幅、高さが500mm×100mm×100mmで、底面の中央に幅1mm、長さ400mmのスリットの開放口が開いている。電極11はチタン合金T64の金属質母材11aで出来ている。図2の該電極の底面11T及び該底面に接する側面の30mmの高さまで(勿論スリットの内部も同様)に下記のような誘電体11bを金属質母材表面に被覆した。
【0136】
電極の底面11Tの金属質母材11a表面に大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆した。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。最終的な誘電体の空隙率は5体積%であった。また、最終的な誘電体の膜厚は、1mm(膜厚変動±1%以内)、誘電体の比誘電率は10であった。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、JIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が5μmとなるように加工した。この電極を2個作製した。
【0137】
移動架台15は、長さ、幅及び厚さが500mm×500mm×100mmのサイズの平板で、この平板の下にはレール上を回転する直径が50mmの真円の車輪72を4個取り付けたものを使用した。なお、移動架台もチタン合金T64を金属質母材として形成し、電極の底面11Tに相対する面を上記と同様に誘電体を電極の底面から35mmの厚さに被覆した。
【0138】
〈薄膜形成条件〉
図1に示したような大気圧プラズマ放電処理装置を使用し、2個の電極11A及びBには、パール工業製の高周波電源13.56MHzを接続した。電極11Aと移動架台15の電極間面を平行にして、電極間隙を1.5mmとし、移動架台の上の中央に0.5mm厚の全く平坦な基材Fとしてのソーダライムガラス板を設置した。移動架台のアース42はレール71から設置した。
【0139】
放電空間13Aの圧力を103kPaとし、下記高屈折率層用混合ガス(GA)を放電空間13Aに満たし、スウィッチ43AをONにし、上記高周波電源41から周波数13.56MHz、2W/cm2の電力を供給して放電空間13Aに電圧をかけ、プラズマ状態の高屈折率層用混合ガスGA°に8分間晒し、1層目の高屈折率層を形成させた。薄膜形成後、スウィッチ43AをOFFにしてから移動架台15を次のプラズマ放電装置10Bに移動し、電極11Bの下の定位置に止め、放電空間13Bの圧力を同様に103kPaとし、下記低屈折率層用混合ガス(GB)を放電空間13Bに満たし、スウィッチ43BをONし上記高周波電源41から周波数13.56MHz、2W/cm2の電力を供給して放電空間13Bに電圧をかけ、プラズマ状態の低屈折率層用混合ガスGB°に5分間晒し、第2層目としての低屈折率層を形成した。スウィッチ43BをOFFとした。低屈折率層形成後、移動架台15を元のプラズマ放電装置10A内に戻し、再び同様な第3層目の高屈折率層薄膜形成を行い、更に第4層目としての低屈折率層薄膜形成を行い、表1に示したような、積層ごとの放電時間をかけて10Aで3〜8分を7回繰り返し、10Bでは1〜5分7回繰り返して薄膜形成を行った。高屈折率層薄膜形成と低屈折率薄膜形成を交互に7回、14層の積層を行いハーフミラーを作製した。積層ごとの放電時間を表1に示した。
【0140】
【表1】
【0141】
《高屈折率層用混合ガス(GA)》
放電ガス:アルゴン 99.3体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン蒸気 0.2体積%
補助ガス:酸素ガス 0.5体積%
《低屈折率層用混合ガス(GB)》
放電ガス:アルゴン 99.2体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン蒸気 0.3体積%
補助ガス:酸素ガス 0.5体積%
なお、上記薄膜形成ガス蒸気はリンテック(株)製の気化器を使用して気化後、アルゴンガス中に混合した。
【0142】
比較例1
図9は独立したプラズマ放電装置が二つある大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0143】
図9において、プラズマ放電装置700A及び700Bそれぞれに電極(印加電極)701A及びBと対向する下側の電極(アース電極)716A及び716Bが対向電極を構成している。対向電極間隙を1.5mmとし、0.5mmのソーダライムガラス板Fの基材を使用した。切り替えスウィッチ743AをONにし、プラズマ放電装置700Aの印加電極701Aとアース電極716Aとの対向電極間の放電空間713Aに、印加電極701Aのスリット出口712Aから実施例1と同様の高屈折率層用混合ガス(GA)を放出して満たし、該放電空間の圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源741のパール工業製(13.56MHz)で、周波数13.56MHzの高周波電圧及び2W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、放電時間として8分とし、基材Fの表面をプラズマ状態になった混合ガスGA°に8分間晒し、1層目の高屈折率層を形成させた。切り替えスウィッチ743AをOFFとし、1層目の高屈折率層を形成させたガラス基板を、クリーン度1,000のクリーンルームの外界に一旦取り出し、切り替えスウィッチ743BをONにして、続いてプラズマ放電装置700Bのアース電極716Bの所定の位置に載せ、印加電極701Bの下側の定位置にアース電極716Bとの放電空間713Bに、印加電極701Bのスリット712Bから実施例1と同様の低屈折率層用混合ガス(GB)を放出して満した。該放電空間713Bの圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源741から高周波電圧及び2W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、プラズマ状態になった混合ガスGB°にガラス基材F表面を5分間晒し、2層目として低屈折率層を積層して形成させた。表1のように、上記各層の放電時間で薄膜形成を行い、この操作を7回繰り返し全14層のハーフミラーを作製した。
【0144】
実施例2
〔ハーフミラーの作製〕
図4の大気圧プラズマ放電処理装置を使用した。プラズマ放電装置200の上側の電極(印加電極)201と下側の移動架台(車輪の付いたアース電極)215とで対向電極を構成した。基材Fとして厚さ0.5mmのソーダライムガラス板を用いた。両方の電極は実施例1と同様に金属質母材としてチタン合金T64を用い誘電体の被覆を行い作製した。電極201と移動架台215の対向電極間の放電空間213に、電極201のスリット212Aから実施例1と同様の高屈折率層用混合ガス(GA)を放出して満たし、該放電空間の圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源241のパール工業製(13.56MHz)で、周波数13.56MHzの高周波電圧及び2W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、プラズマ状態になった混合ガスGA°にガラス基材F表面を8分に晒し、高屈折率層を形成させた。
【0145】
高屈折率層を形成させたガラス基材Fが載っている移動架台215を車輪272とレール271を用い、ゲート219を開け、放電ガスで満たされている隣の予備室に移動させた。プラズマ放電装置200内の混合ガスGAを抜き取り、ガス供給装置251Aのバルブ256Aを閉じ、ガス供給装置251Bのバルブ256Bを開け、電極201のスリット212から混合ガスBを吹き出させて放電空間213を満し、ゲート219を開けて移動架台215′をプラズマ放電装置200に戻し、所定の位置に止め対向電極を構成する。該放電空間の圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源241のパール工業製(13.56MHz)で、周波数13.56MHzの高周波電圧及び2W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、プラズマ状態になった混合ガスGB°にガラス基材F表面を5分間晒し、低屈折率層を積層して形成させた。実施例1の放電時間でこの操作を7回繰り返し、全14層の薄膜を有するハーフミラーを作製した。なお、252は混合ガス給気口、254は放電ガスの給気口である。
【0146】
比較例2
図10は一つのプラズマ放電装置を有する大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0147】
図10において、プラズマ放電装置800に電極(印加電極)801と対向する下側の電極(アース電極)816とで対向電極を構成している。対向電極間隙を1.5mmとし、厚さ0.5mmのソーダライムガラス板の基材を使用した。プラズマ放電装置800の印加電極801とアース電極815との対向電極間の放電空間813に、ガス供給装置851Aからバルブ856A(混合ガスGB側のバルブ856Bは閉じてある)、給気口852、印加電極801のスリット出口812を通して実施例1と同様の高屈折率層用混合ガス(GA)を放出して満たし、該放電空間の圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源841Aのパール工業製(13.56MHz)で、周波数13.56MHzの高周波電圧及び5W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、プラズマ状態になった混合ガスG°にガラス基材F表面を3分間晒し、1層目の高屈折率層を形成させた。ここでバルブ856Aを閉じる。
【0148】
1層目の高屈折率層を形成させたガラス基板を、一旦ガラス基板Fをクリーン度1,000のクリーンルームの外界に一旦取り出し、続いてプラズマ放電装置800のアース電極816の所定の位置に載せ、印加電極801の下側の定位置にアース電極816との放電空間813に、ガス供給装置851Bからバルブ856Bを開けて、印加電極801のスリット出口812を通して実施例1と同様の低屈折率層用混合ガス(GB)を放出して満した。該放電空間813の圧力を103kPaとして、該放電空間に高周波電源841のパール工業製(13.56MHz)で、周波数13.56MHzの高周波電圧及び5W/cm2の電力をかけてプラズマ放電を発生させ、プラズマ状態になった混合ガスG°にガラス基材F表面を3分間晒し、2層目の低屈折率層を積層して形成させた。放電時間を実施例1と同じとしてこの操作を7回繰り返し全14層のハーフミラーを作製した。
【0149】
実施例3
〔反射防止光学素子の作製〕
〈中屈折率層の形成〉
図3に示したような4連のプラズマ放電装置を有する大気圧プラズマ放電処理装置を使用した。図3は図1よりかなりの部分を省略しているが、先ず、プラズマ放電装置110Aの電極111Aと移動架台115とで対向電極を構成した。何れの電極も実施例1と同様に作製した。対向電極間隙を1.5mmとし、厚さ0.5mmのソーダライムガラス板の基材を使用した。混合ガスGAとしては下記の中屈折率層用混合ガスを使用した。高周波電源141としてパール工業製(2MHz)を使用し、対向電極間の放電空間の圧力を103kPaとし、該放電空間に高周波電圧周波数2MHz、5W/cm2の電力をかけ、混合ガスGAを満たし、プラズマ放電を起こさせ、上記ガラス板の基材Fをプラズマ状態になった混合ガスに晒して基材上に中屈折率層を形成させた。
【0150】
《中屈折率層用混合ガスGA》
放電ガス:アルゴン 99.3体積%
薄膜形成ガス:テトラブチル錫蒸気 0.2体積%
補助ガス:酸素ガス 0.5体積%
なお、上記混合ガス蒸気はリンテック(株)製の気化器を使用して気化後、アルゴンガス中に混合した。
【0151】
〈中屈折率層/高屈折率層積層の形成〉
スウィッチ143AをOFFにして放電を停止して、基材ごと移動架台115を予備室104Aに移動させ、プラズマ放電装置110Bに移動した。切り替えスウィッチ143BをONにし、上記と同様に、中屈折率層の上に下記高屈折率層用混合ガスGBを用いて、上記と同様の条件で、中屈折率層の上に高屈折率層を積層して形成させた。
【0152】
《高屈折率層用混合ガスGB》
放電ガス:アルゴン 99.3体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン蒸気 0.2体積%
補助ガス:酸素ガス 0.5体積%
なお、上記混合ガス蒸気はリンテック(株)製の気化器を使用して気化後、アルゴンガス中に混合した。
【0153】
次に、切り替えスウィッチ143BをOFFに放電を停止して、下記の低屈折率層用の混合ガスGCを用いて、基材ごと移動架台115′を予備室104Bを経てプラズマ放電装置110Cに移動した。切り替えスウィッチ143CをONにして、上記と同様に、中屈折率層/高屈折率層の上に下記の低屈折率層用混合ガスを用いて、上記と同様な条件で低屈折率層を積層して形成させた。
【0154】
《低屈折率層用混合ガスGC》
放電ガス:アルゴン 99.3体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン蒸気 0.3体積%
補助ガス:酸素ガス 0.5体積%
なお、上記混合ガス蒸気はリンテック(株)製の気化器を使用して気化後、アルゴンガス中に混合した。
【0155】
更に、スウィッチ143CをOFFにして放電を停止して、下記の防汚層用の混合ガスGDを用いて、基材ごと移動架台115′を予備室104Cを経てプラズマ放電装置110Dに移動した。切り替えスウィッチ143DをONにして、上記と同様に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の上に下記の防汚層用混合ガスを用いて、上記と同様な条件で防汚層を積層して形成させた。
【0156】
《防汚層用混合ガスGD》
放電ガス:アルゴン 98.7体積%
薄膜形成ガス1:テトラメトキシシラン 0.6体積%
薄膜形成ガス2:テトラフルオロメタン 0.7体積%
比較例3
図11に示したような大気圧プラズマ放電処理装置を使用した。図11は多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。図11は基材を載せる電極が図3のような移動架台ではなく、移動しない電極になっている。各プラズマ放電装置は独立しており、一つのプラズマ放電装置で基材が薄膜形成終了後に、次のプラズマ放電装置にハンドリングにより基材を移し替え、薄膜を積層して形成するようになっている。
【0157】
プラズマ放電装置910A、910B、910C及び910Dを使用して、それぞれの各対向電極911Aと916A、911Bと916B、911Cと916C及び911Dと916Dの所定の位置にハンドリングで基材を置い以外は、実施例3と同様にして、薄膜を積層して反射防止光学素子を作製した。941は高周波電源で、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を用いた。それぞれのプラズマ放電装置において、切り替えスウィッチ943A、943B、943C、943Dで切り替えて積層を行った。
【0158】
上記実施例1〜3及び比較例1〜3について、上述の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0159】
【表2】
【0160】
(結果)
本発明の実施例1及び3はゴミ付着及び/またはコンタミネーションに起因する突起は1個もなかった。実施例2は突起が僅か1個であった。これに対して比較例1及び2は突起の数が非常に多かった。比較例3は入れ替えが少なかったためか2〜4のCであった。
【0161】
【発明の効果】
本発明により突起等の欠陥はほとんどなくなり、収率が飛躍的に向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基材上に重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【図2】上側の電極(図1の11AまたはB)を底面側から見上げた斜視図である。
【図3】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【図6】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【図7】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【図8】本発明の多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例の概略図である。
【図9】独立したプラズマ放電装置が二つある大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図10】一つのプラズマ放電装置を有する大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図11】多数回重ねて処理を施すための大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
10、10A、10B プラズマ放電装置
11A、11B 電極
13A、13B 放電空間
15 移動架台
40 高周波電圧印加手段
50 ガス供給手段
Claims (18)
- 少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置内にある第1の電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台と該第1の電極とで構成する第1の対向電極を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該第1の対向電極間(以降、対向電極間のことを放電空間ということがある)を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該第1の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により高周波電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該第1の放電空間で該基材を該プラズマ状態のガスに晒し、第1の処理を施した後、該移動架台を、第2のプラズマ放電装置に移動させ、第2のプラズマ放電装置内にある第2電極と該移動架台とで第2の対向電極を構成し、第2の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、第2の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって、第2の放電空間に導入したガスをプラズマ状態とし、第2放電空間において該基材の第1の処理を施した面を、第2の放電空間でプラズマ状態となったガスに晒し、該基材の上に重ねて第2の処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
- 少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置内にある一組の第1の対向電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該第1の対向電極の底面と該移動架台表面との間で作る第1の処理空間及び該第1の対向電極の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該第1の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該第1の処理空間を該プラズマ状態のガスで満たして該移動架台上にある基材を該プラズマ状態のガスに晒し、第1の処理を施した後、該基材を載せたまま該移動架台を第2のプラズマ放電装置に移動して、第2のプラズマ放電装置内にある一組の第2の対向電極底面と該移動架台表面で作る第2の処理空間及び第2の対向電極の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、第2の放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって第2の放電空間に導入したガスをプラズマ状態とし、該2の放電空間でプラズマ状態となったガスを第2の処理空間に満たし、該移動架台上にある基材の第1の処理を施した面を該2の放電空間でプラズマ状態となったガスに晒し、該基材の上に重ねて第2の処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
- 一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置内にある電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台と該電極とで構成する対向電極を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該放電空間で該基材を該プラズマ状態のガスに晒して処理を施した後、該移動架台を基材を載せたまま予備室に移動して待機させ、その間に該プラズマ放電装置の内部のガスを全て抜き去った後、該プラズマ放電装置に該移動架台を戻し、該移動架台が該電極の下側に位置して再び対向電極を構成し、該放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に新たにガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって新たに導入したガスをプラズマ状態とし、該放電空間で該基材を該プラズマ状態の新たに導入したガスに晒し、該基材の上に重ねて処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。
- 一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置内にある一組の対向電極の下側に位置する基材を静置して載せたまま移動可能な移動架台を有する大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、該対向電極の底面と該移動架台表面との間で作る処理空間及び放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間にガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって該ガスをプラズマ状態とし、該処理空間を該プラズマ状態のガスで満たして該移動架台上にある基材を該プラズマ状態のガスに晒し、処理を施した後、該移動架台上にある該基材上を該プラズマ状態のガスに晒して処理を施した後、該移動架台を基材を載せたまま予備室に移動して待機させ、その間にプラズマ放電装置の内部のガスを全て抜き去った後、該プラズマ放電装置に該移動架台を戻し、該処理空間及び放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に新たにガスを導入して、高周波電圧印加手段により電圧を印加して放電させることによって新たに導入したガスをプラズマ状態とし、
該放電空間でプラズマ状態となったガスを該処理空間に満たし、該移動架台上にある基材の前記処理を施した面を該処理空間で該プラズマ状態の新たに導入したガスに晒し、該基材の上に重ねて処理を施すことを特徴とする大気圧プラズマ放電処理方法。 - 第2以降のプラズマ放電装置で重ねて処理を施した後、移動架台を重ねて処理する前のプラズマ放電装置に戻し更に同種の処理を重ねて施すことを特徴とする請求項1または2に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
- 第1と第2のプラズマ放電装置間を、移動架台を多数回往復して多数回重ねて処理を施すことを特徴とする請求項1、2または5に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
- 前記処理及び待機の操作を繰り返すことにより、多数回重ねて処理を施すことを特徴とする請求項3または4に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
- 前記電極及び前記移動架台の少なくとも一方を同一平面内で水平方向に揺動して処理を施すことを特徴とする請求項1、3、5、6または7に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
- 前記一組の対向電極及び前記移動架台の少なくとも一方を同一平面内で水平方向に揺動して処理を施すことを特徴とする請求項2、4、5、6または7に記載の大気圧プラズマ放電処理方法。
- 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、第1のプラズマ放電装置には第1の電極と該電極の下側に位置して第1の対向電極を構成する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、該移動架台が、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間を往復し得る移動手段を有し、第2のプラズマ放電装置には、該移動架台と対向電極を構成し得る第2の電極を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
- 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置を有し、該第1のプラズマ放電装置には一組の第1対向電極と該対向電極の下側に位置する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、該移動架台が少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間を往復し得る移動手段を有し、更に該第2のプラズマ放電装置には、該移動架台と処理空間を形成し得る一組の該第2の対向電極を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
- 前記少なくとも第1と第2のプラズマ放電装置間に、移動架台が通過し得る予備室を有することを特徴とする請求項10または11に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
- 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置に隣接する予備室を有し、一つの電極と該電極の下側に位置して対向電極を構成する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、且つ該移動架台が該プラズマ放電装置と該予備室とを往復し得る移動手段を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
- 少なくともプラズマ放電装置、ガス供給手段及び高周波電圧印加手段を有する大気圧プラズマ放電処理装置において、一つのプラズマ放電装置を有し、該プラズマ放電装置に隣接する予備室を有し、一組の対向電極と該対向電極の下側に位置する基材を載せたまま移動出来る移動架台を有し、且つ該移動架台が該プラズマ放電装置と該予備室とを往復し得る移動手段を有することを特徴とする大気圧プラズマ放電処理装置。
- 前記電極がアース電極または印加電極であることを特徴とする請求項10、12または13に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
- 前記移動架台がアース電極または印加電極であることを特徴とする請求項10、12または13に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
- 前記移動架台が電流を導通しない構造を有していることを特徴とする請求項11または14に記載の大気圧プラズマ放電処理装置。
- 請求項10乃至17の何れか1項に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、請求項1乃至9の何れか1項に記載の大気圧プラズマ放電処理方法により基材の上に光学薄膜を積層したことを特徴とする光学素子。
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