JP2004115828A - 薄膜形成方法及び薄膜形成装置 - Google Patents

薄膜形成方法及び薄膜形成装置 Download PDF

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Kikuo Maeda
前田 菊男
Koji Fukazawa
深沢 孝二
Koji Ozaki
尾▲崎▼ 浩司
Yoshiro Toda
戸田 義朗
Shigeru Tajima
田島 茂
Kazuhiro Fukuda
福田 和浩
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Abstract

【課題】枚葉基材上に目標値の膜厚を正確に形成する薄膜形成方法とその方法を達成するに用いる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該ガスを励起し、何れか一方の電極上に搭載している枚葉基材と他方の電極とを相対的に移動させながら該励起したガスに該枚葉基材を晒すことにより、該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該他方の電極と該枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関し、特に大気圧もしくはその近傍の圧力下においてガラス板やシートのような枚葉基材の上に目標膜厚になるように制御して形成する薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ、液晶画像表示装置等の画像表示装置の画面については、近年、その透過率やコントラストの向上、映り込み低減のために表面反射を低減させる反射防止技術が多数提案されており、その一つの反射防止技術として、複数の異なる屈折率の膜を積層することによって、光の反射を減少させることが有効であるということが知られている。
【0003】
このように基材に機能性の薄膜を複数積層することにより、新たな機能を持たせることが出来、複数の機能性薄膜を有する基材は、様々な技術分野で用いられている。上記のような基材の表面に特定の機能を付与した薄膜を形成する方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、減圧下でのグロー放電を利用したプラズマCVD法などが知られている。しかしながら、これらの方法は、いずれも真空系で行われ、真空チャンバー、大型真空ポンプなど、大掛かりな設備が必要であり、製造にはいろいろな限界あるいは制約がある。
【0004】
上記真空系に対して、大気圧プラズマ放電処理薄膜形成方法が、蒸着やスパッタリング法にくらべた時の生産設備の経済性、生産操作性の観点から考案され実用化されつつある。大気圧プラズマ放電処理方法としてのメリットは、設備が安価であることに加え、薄膜形成速度が速いことである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、上記方法で形成された機能性薄膜は、薄膜の膜厚精度が重要であり、膜厚がずれてしまうことで、目的とする機能品質が損なわれてしまい、さらには近年より一層の高精度が必要となりつつあり、膜厚制御の方法が提案されている。
【0006】
例えば、連続製膜法において、膜厚をオンラインで測定し、製膜生成制御系にフィードバックして膜厚を制御する方法が提案されているが、この方法は、製膜後の膜厚測定であって、測定した製品の膜厚が所定の寸法でなかった場合、その製品は不良となってしまい生産性が悪い。更に製膜生成制御系として電源電圧、周波数、処理用ガス供給系の各条件で、膜厚を制御する場合、単独での条件変更では、製膜される膜質が変化してしまい、更に処理用ガス(薄膜形成ガス)の供給系が、目詰まりする場合があったり、電極表面に金属酸化物や有機金属化合物等の薄膜形成ガスの未反応の粉体が付着する場合があったりした場合、製膜生成制御系では、膜厚制御が難しくなったり、更に上記条件を組み合わせて膜厚制御を行った場合、制御系が複雑となってしまう(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−241165号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−181850号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであり、本発明の第1の目的は、簡易な方法で、効率的に枚葉基材上に目標値の膜厚を正確に形成する大気圧もしくはその近傍下での薄膜形成方法を提供することであり、また第2の目的は、その方法を達成するに用いるための薄膜形成装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の構成よりなる。
【0011】
(1) 対をなす電極で構成された対向電極の間で形成された放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該ガスを励起し、何れか一方の電極上に搭載している枚葉基材と他方の電極とを相対的に移動させながら該励起したガスに該枚葉基材を晒すことにより、該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該他方の電極と該枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
【0012】
(2) 対をなす電極で構成された対向電極の間で形成された放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該ガスを励起し、枚葉基材を搭載する架台と該対向電極とで形成された空間に該励起したガスを噴出させ、該架台の上に搭載している該枚葉基材と該対向電極とを相対的に移動させながら該励起したガスに該枚葉基材を晒すことにより、該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
【0013】
(3) スリットを有する電極とその両側にある電極とで構成する対向電極の間の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該放電ガスを主構成成分とするガスを励起し、枚葉基材を搭載する架台と該対向電極とで形成された空間に励起した放電ガスを噴出させると同時に、該スリットに薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該架台と該対向電極とで形成された空間に該スリットを通して該薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを放出させて、該架台の上に搭載している該枚葉基材と該対向電極とを相対的に移動させながら該空間で両ガスを混合させて励起したガスに該枚葉基材を晒すことによって薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
【0014】
(4) 前記薄膜形成中の薄膜の膜厚を測定し、その結果に応じて前記相対移動速度を変化させることを特徴とする(1)乃至(3)の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
【0015】
(5) 前記励起したガスに晒す空間が放電空間内であり、且つ、前記励起したガスに晒さない空間が放電空間外であることを特徴とする(1)、(3)または(4)に記載の薄膜形成方法。
【0016】
(6) 前記励起したガスに晒す空間が放電空間外であり、且つ、前記励起したガスに晒さない空間が、前記対向電極と前記枚葉基材を搭載する該架台とが相対していない空間であることを特徴とする(2)または(4)に記載の薄膜形成方法。
【0017】
(7) 前記枚葉基材を前記励起したガスに晒す空間と、前記励起したガスに晒さない空間とを交互に移動させることを特徴とする(1)乃至(6)の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
【0018】
(8) 前記薄膜の膜厚の測定が、前記励起したガスに晒さない空間で行われることを特徴とする(4)乃至(7)の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
【0019】
(9) 第1電極及び第2電極を対向させて配置した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを該電圧印加手段で該対向電極間に印加することにより励起させ、枚葉基材を該励起したガスに晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該第1電極あるいは第2電極の放電空間側の面上には該枚葉基材を搭載するようになっており、該第1電極と第2電極とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該第1電極と第2電極との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標の膜厚となるよう制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
【0020】
(10) 第1電極及び第2電極を対向させて配置した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該対向電極で形成された放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを該電圧印加手段で該放電空間に印加することにより励起させ、枚葉基材を該励起したガスに晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該対向電極の下側面に該放電空間から外部へ該励起したガスを噴出する噴出部と、該ガス噴出部のある対向電極面に対向する位置に枚葉基材を搭載する架台とを有し、該対向電極と該架台とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と該架台との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるように制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
【0021】
(11) スリットを有する第1電極とその両側にある第2電極とで構成した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスを主構成成分とする第2のガスを該電圧印加手段で該放電空間に印加することにより励起させ、該ガス供給手段から該スリットに供給し通過させた薄膜形成ガスを主成分とする第1のガスと該励起した第2のガスを混合したガスに枚葉基材を晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該放電空間から外部へ励起した第2のガスを噴出させる該対向電極の下側面にある噴出部と、該スリットから外部へ第1ガスを放出させる該対向電極の下面にある放出部と、該噴出部と該放出部のある対向電極面に対向する位置に枚葉基材を搭載する架台とを有し、該対向電極と該架台とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と該架台との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるように制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
【0022】
本発明を詳述する。
本発明の薄膜形成方法は、2個の電極が対をなす対向電極間で形成される放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力(以下大気圧近傍の圧力と略すことがある)下とし、該放電空間に薄膜形成に係るガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して、導入したガスを励起させ、励起したガスに枚葉基材を晒すことによって該枚葉基材上に薄膜を形成させる大気圧プラズマ放電処理方法といわれる方法を用いて薄膜形成を行うものである。
【0023】
この大気圧プラズマ放電処理方法は、真空減圧、真空解除等が必要なく操作が簡単で、装置のコストが低く、製膜速度が速く、膜厚の制御が容易である等のメリットが多くある大気圧プラズマ放電処理方法が、上記の方法のうち本発明に最も適した方法といえる。
【0024】
以下、大気圧プラズマ放電処理方法を用いた本発明の薄膜形成方法及び薄膜形成装置について述べることとする。
【0025】
本発明の薄膜形成方法は、大気圧もしくはその近傍の圧力で行われるが、ここで大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0026】
図1は、本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。
図1の薄膜形成装置は、対向電極を有するプラズマ放電装置10、高周波電圧を印加する電圧印加手段40及び放電空間にガスを供給するガス供給手段50、移動手段70及び膜厚制御手段80を有している。
【0027】
プラズマ放電装置10には中央部にスリット14を有する固定電極(ここでは第1電極とするが、第1電極と第2電極はどちらでもよい)11と移動架台電極(第2電極)15があり、移動架台電極15は印加電極の電極(第1電極と第2電極とのいずれを印加電極またはアース電極としてもよい)11の下側に位置し、電極11とアース電極の移動架台電極15とで対向電極を構成している。11Aは電極の導電性金属質母材であり、11Bはその上に被覆してある誘電体である。金属質母材及び誘電体については後述する。移動架台電極15の上には枚葉基材Fを搭載しており、移動架台電極は移動手段70により移動しながら枚葉基材Fの上に薄膜形成が行われるようになっており、薄膜形成後、移動架台電極は図1で右側(ガスに晒さない空間20)に移動するようになっている(移動架台電極15′)。移動架台電極15の移動手段は水平にスムースに移動出来る手段であれば制限なく、図示してないが、移動架台電極15の底面(図面下側)に車輪を付けて、レールの上を移動するようなものでも、移動架台電極15がリニアガイド上に載せられ、図示してない駆動装置(サーボモーターとボールねじ)により移動出来るようなものでも、更に移動架台電極15が摺動により移動するものでもよい。42はアース結線である。なお、移動架台電極15の15Aと15Bは導電性の金属質母材とその上に被覆してある誘電体を示している。電極11及び移動架台電極15の内部は温度調節のためのジャケットになっている(不図示)。
【0028】
薄膜形成は、まず、電極11と移動架台電極15とで構成される対向電極間の放電空間13を大気圧近傍の圧力とし、ガス供給手段50のガス供給装置51から供給されるガスMG(薄膜形成用のガス、ここでは後述の放電ガス、薄膜形成ガス、補助ガス等の混合ガス)を、ガス供給管52から電極11内のスリット14を通して、電極11の底面にあるスリット口12から放出させ、放電空間13に満たす。高周波電源41から高周波電圧を印加し、放電空間13に放電を発生させて、ガスMGを励起して(先ず後述の放電ガスが励起し、次いで薄膜形成ガスがエネルギーを受け励起する)ガスG°とし、移動架台電極15上に搭載されている枚葉基材Fの先頭から後尾まで進行に従ってガスG°に晒し、枚葉基材全体に薄膜が形成される。図面の右側のガスに晒さない空間20において、膜厚制御手段80により、形成された薄膜を膜厚測定装置81で測定し、演算装置83で次の製膜の移動速度の設定をして目標膜厚になるように移動速度を変化させるようになっている。
【0029】
膜厚制御手段80は、光源を有するプローブ82により反射光を照射して反射光を取り込み、分光器83により反射光スペクトルに分光し、この分光データをオプティカルマルチチャンネルアナラアイザ84で検出してその出力に基づいてコンピュータ85で膜厚を演算して、その結果を速度変速器71にフィードバックして次回の薄膜形成の移動架台電極15の移動速度を指示するようになっている。
【0030】
移動架台電極15′は、指示を受けた後、変更された速度で元の位置に戻りながら後尾であった枚葉基材Fを先頭から、該薄膜の上に薄膜が積層され、移動架台電極15が移動しながら図1の左方向のガスに晒さない空間20′に移動し、積層された薄膜面を再び光源を有するプローブ82′で光を照射して反射光を取り込み、ガスに晒さない空間20の分光器83により反射光スペクトルに分光し、この分光データをオプティカルマルチチャンネルアナラアイザ84で検出してその出力に基づいてコンピュータ85で膜厚を演算して、その結果を速度変速器71にフィードバックして次回の薄膜形成の移動架台電極15の移動速度を指示するようになっている。なお、※印は82′のプローブが分光器83に結線されていることを示している(以降の図も同様)。
【0031】
本発明において、薄膜形成中の任意の一定時間、この操作を行うことによって目標膜厚になるように移動を繰り返す。任意の一定時間というのは、薄膜形成を開始後如何なる時でもよいということであるが、目標膜厚に近づいた最後の頃に行うのが好ましい。
【0032】
本発明において、架台の速度以外の薄膜形成条件を一定とした場合、架台の速度と膜厚の関係を予め求めておき、数式として演算装置にインプットしておき、この関係をもとに、目標膜厚−測定膜厚から、それ以降、どのような時点で、どのような速度で、何回操作を行えばよいかが演算され、速度変速機に指示するようになっている。
【0033】
本発明においては、対向電極のいずれが移動してもよく、枚葉基材Fが搭載されている電極が固定で、その対向する電極が移動してもよい。つまり相対的に移動するのである。
【0034】
また、本発明において、移動する方向は、必ずしも両方向、つまり図1のように往復移動をしなくとも、ガスに晒される空間及びガスに晒されない空間が連続して並んでいて、一方向に移動してもよい。
【0035】
更に、2種の異なったガスを用いる場合、対向電極を、ガスに晒されない空間を挟んで反対側にも同様な対向電極があってもよい。
【0036】
プラズマ放電装置10のプラズマ放電処理容器10Aはパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0037】
図2は、図1の電極11を底面側から見上げた斜視図である。電極の底面11Tにはスリット出口12が開いており、スリット14は電極11の内部を通り、電極11上部ではガス供給管52に接続している。電極11の内部ではスリットが如何なる形をしていても構わないが、電極11の底部スリット(直線)からはガスが電極の長さ方向に対して均一に同じ強さで吹き出すようになっていればよい。スリット出口12の長さは該電極の長さよりやや短く、電極の底部11T(対向している電極に相対する面)でスリット出口12の両端は閉じられている。また電極の内部には空洞があり、電極温度を調節出来るジャケットとなっている。電極の底面11Tに開放されているスリット出口12の幅は0.5〜10mm程度あればよい。電極11の本体は、金属質母材11Aで出来ている。該電極の底面11T及び該底面に接する側面から30mm以上の高さまで(勿論スリットの面も同様)立ち上がるように下記のような誘電体11Bを金属質母材表面に被覆してある。
【0038】
ここで、導電性の金属質母材及びその上に被覆された誘電体について触れておく。
【0039】
電極及び移動架台の母材は導電性の金属質のもので形作られている。また少なくとも一方の電極の導電性の金属質母材には、対向する電極の対向面上には固体誘電体が被覆されていることが好ましい。金属質母材及び誘電体の材質については、放電条件にも関係するので、詳しくは後述するが、ここでは概略的なことを以下述べておく。
【0040】
導電性の金属質母材(図2において11A)としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0041】
誘電体(図2において11B)は、導電性の金属質母材の上に誘電体としてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミックス被覆処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1〜10mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0042】
対向電極の電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0043】
電極の底面11Tの金属質母材11A表面には大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜が被覆されている。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行う。
【0044】
図3は、本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。図3は、放電空間と薄膜形成する空間とが別々になっているジェット方式といわれる薄膜形成装置である。
【0045】
図3において、プラズマ放電装置110内に印加電極111とアース電極112の2個の電極で対向電極を構成している。電極111と112の111Aと112Aは導電性の金属質母材であり、111Bと112Bはその上に被覆してある誘電体である。この装置においては、該対向電極間が放電空間113となっており、該対向電極の底面(111と112との図面の下側)と移動架台116(または枚葉基材F面)とで形成するところは処理空間114である。移動架台116の上には枚葉基材Fが搭載されている。また、該移動架台116はアースに接地されておらず、電極ではなく単なる移動架台である。移動架台116は全体が絶縁体から出来ていてもよいが、金属製の台の周りを絶縁体で覆ったものでもよく、電気が絶縁されていればよい。
【0046】
図3において、放電空間113及び処理空間114を大気圧近傍の圧力とし、ガスMG(放電ガスと薄膜形成ガスの混合ガス)をガス供給管152から放電空間113に導入し、放電空間113に高周波電源141から高周波電圧を印加しガスMGを励起し、該励起したガスG°(励起した薄膜形成ガス)となり、ジェットのような流れでジェット噴出口115から処理空間114に噴射され、枚葉基材Fの上で薄膜形成が行われる。枚葉基材Fは移動架台116の上に搭載されており、該移動架台116が移動手段170によりガスに晒さない空間120及び120′に移動出来るようになっている。移動しながらの薄膜形成のし方、薄膜膜厚測定、膜厚制御方法及び繰り返し処理については、図1の説明と同様(放電空間と処理空間、また移動架台電極と移動架台との違いはあるが)であり、目標膜厚の薄膜が形成される。ここで、116′は移動した移動架台、171は速度変速器、180は膜厚制御手段、181は膜厚測定装置、182、182′は光源を有するプローブ、183は分光器、184はオプティカルマルチチャンネルアナラアイザ、185はコンピュータである。移動架台116の構造及び材質は図1と同様である。
【0047】
図4は、本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。
図4は薄膜形成に係るガスを分けて導入する電極を有する装置である。プラズマ放電装置210内の電極は少なくとも三つに分かれている。そのうちの一つの電極211は薄膜形成ガスを主構成成分とするガスG1(単にガスG1ということがある)が導入されるスリット214を有する独立した電極でアース電極となっている。これに対して、アース電極の両側に2個の電極212が電極211とで対向電極を構成している。対向電極の電極211と電極212との間は放電空間213となっている(この放電空間は電極211の両側面と電極211の壁で挟まれた空間で形成される)。対向電極(電極211と212)の下側には、枚葉基材Fを搭載している移動架台217があり、電極211と電極211の両方の電極の対向電極の底面と移動架台215とで作る励起ガスの晒す空間(処理空間ともいう)216が構成される。放電空間213、スリット214及び処理空間216を大気圧近傍の圧力としておく。ガスG1は、ガス供給管252から電極211のスリット214を通り処理空間216に放出される。一方、同時に、放電ガスを主構成成分とするガスG2(単にガスG2ということがある)は、ガス供給手段からガス供給管253を経て、放電空間213に導入され、高周波電源241から高周波電圧を印加し、ガスG2を励起し、ジェット状に噴出部215から処理空間216に噴出させる。励起したガスG2とガスG1は、処理空間216で混合し、ここでガスG1は励起したガスG2からエネルギーを受け取り励起した薄膜形成ガスG°となり、励起した薄膜形成ガスG°を移動架台上の基材に晒すことによって薄膜が形成される。移動しながらの薄膜形成のし方、膜厚制御の方法及び繰り返し処理については、図1の説明と同様、(励起ガスに晒す空間と励起ガスの晒さない空間が移動架台電極の上の空間と移動架台の上の空間との違いはあるが)であり、目標膜厚の薄膜が形成される。ここで、217′は移動した移動架台、271は速度変速器、281は膜厚測定装置、282、282′は光源を有するプローブ、283は分光器、284はオプティカルマルチチャンネルアナラアイザ、285はコンピュータである。なお、図4においては、金属質母材と誘電体については省略されている。
【0048】
ここで、薄膜形成方法を用いて薄膜を形成する条件、電極等について説明する。
【0049】
本発明の薄膜形成方法の対向電極間に印加する高周波電圧は、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力密度(または出力密度)を供給し、放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを励起してプラズマを発生させる。
【0050】
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、より好ましくは15MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、より好ましくは800kHz以上である。
【0051】
また、電極間に供給する電力密度の上限値とは、好ましくは50W/cm以下、より好ましくは20W/cm以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm以上である。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0052】
高周波電源より印加電極に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV/cm程度で、上記のように電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。
【0053】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが連続サイン波の方がより緻密で良質な薄膜が得られる。
【0054】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電装置に採用する必要がある。
【0055】
本発明においては、印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、神鋼電機製高周波電源(3kHz)、神鋼電機製高周波電源(5kHz)、神鋼電機製高周波電源(10kHz)、春日電機製高周波電源(15kHz)、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来る。好ましくは、100kHz超〜150MHzの高周波電源であり、好ましくは、200kHz〜150MHzの高周波電源であり、特に好ましくは、800kHz〜15MHzのものである。
【0056】
本発明の薄膜形成方法において、均一で安定な放電を持続させるための電極としては、導電性の金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0057】
本発明の薄膜形成装置に使用する誘電体被覆電極においては、様々な導電性の金属質母材と誘電体との間の特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、さらに好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0058】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
▲1▼金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲2▼金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
▲3▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲4▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
▲5▼金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲6▼金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
▲7▼金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
▲8▼金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼または▲2▼および▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0059】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0060】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0061】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0062】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体破片を用い空隙率を測定した。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気圧プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0063】
上記、大気圧プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0064】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、30%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0065】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiO)を主成分として含有するものが好ましい。
【0066】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0067】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0068】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiO(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiO含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0069】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材フィルムと接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材フィルムと接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0070】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0071】
次に、本発明の薄膜形成方法に使用し、放電空間に供給するガスについて説明する。
【0072】
使用するガスは、基本的に放電ガスと薄膜形成ガスを構成成分とするガスであり、更に反応性を加速させたり、制御したりする補助ガスと用いることもある。放電ガスと薄膜形成ガスは混合して供給(前述の図1及び3のように供給)してもよいし、別々に供給(前述の図4のように供給)してもかまわない。
【0073】
ここで、本発明における「放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とする」、「放電ガスを主構成成分とする」、または「薄膜形成ガスを主構成成分とする」という主構成成分とは、機能的に働くガスという意味で、量的に多いということではない。「放電ガスを主構成成分とする」は放電ガスが機能的に主であるという意味であり、また「薄膜形成ガスを主構成成分とする」は後述のように、薄膜形成ガスを不活性ガスにバブリングしてガス化して用いるが、この場合量的には不活性ガスが多量であるが、機能的には薄膜を形成させるガスが主であるという意味である。
【0074】
放電ガスとは、薄膜形成を可能にするグロー放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスで、プラズマ放電を発生させるに必要なガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0075】
薄膜形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性となり、基材上に化学的に薄膜を形成する原料のことである。一例として、薄膜形成ガスの添加量は、放電ガスに対して10質量%以下、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0076】
薄膜形成の代表的な例は、光学素子のような高機能薄膜を有する物品である。本発明においては、光学素子を作製する薄膜形成ガスを代表例として説明する。
【0077】
本発明に有用な薄膜形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。
【0078】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R MR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来る。Rのアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0079】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0080】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、補助ガスを好ましく使用出来る。補助ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることが出来る。補助ガスを添加することにより薄膜の硬度を高める効果があり、これらのうち特に酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量は使用ガスに対して0.01〜10体積%、好ましくは0.1〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0081】
上記形成された酸化物または複合化合物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0082】
本発明において、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン化金属、金属水素化合物の金属として、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることが出来る。
【0083】
本発明の薄膜形成方法で、上記のような有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等の金属化合物を不活性ガスと共に用いて高機能の薄膜を形成する使用することにより様々な高機能性の薄膜を得ることが出来る。本発明に係る光学素子の薄膜の例を以下に示すが、本発明においてはこれに限られるものではない。
【0084】
電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO、SiO、Si、Al、Al、Y
透明導電膜 In、SnO、ITO、IZO、FTO
エレクトロクロミック膜 WO、IrO、MoO、V
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe、Co、Fe、Cr、SiO、AlO
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In、SnO
反射防止膜 SiO、TiO、SnO
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
本発明において、好ましい金属化合物の金属は、上記のうちSi(珪素)、Ti(チタン)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、In(インジウム)及びAl(アルミニウム)であり、これらの金属と結合する金属化合物のうち、上記一般式(I)で示した有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物の例示については後述する。
【0085】
ここで、上記の光学素子のうち、屈折率の異なる薄膜を積層したハーフミラー、反射防止膜(層)及び反射防止膜を積層(屈折率の異なる薄膜を積層)した反射防止光学素子及び透明導電膜を有する光学素子について詳細に説明する。
【0086】
本発明に係る光学素子のうちの反射防止光学素子の反射防止層は中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層それぞれの薄膜が積層されたものである。
【0087】
反射防止層薄膜形成ガスの高屈折率層を形成するチタン化合物、中屈折率層を形成する錫化合物、低屈折率層を形成する珪素化合物について述べる。反射防止層を有する反射防止光学素子は、各屈折率層を基材上に直接または他の層を介して積層して得られるものであるが、積層は、例えば、上述の図に示したような薄膜形成装置を、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層以上を積層するために、複数の装置を用いて積層すればよい。本発明において、反射防止層の上に防汚層を積層してもよい。また、反射防止層を設ける前に、基材の上に予めハードコート層や防眩層を塗布によって設けてもよく、また、その裏側に予めバックコート層を塗布によって設けてもよい。
【0088】
反射防止光学素子の反射防止層薄膜形成ガスには、適切な屈折率を得ることの出来る化合物であれば制限なく使用出来るが、高屈折率層薄膜形成ガスとしてはチタン化合物を、中屈折率層薄膜形成ガスとしては錫化合物またはチタン化合物と珪素化合物の混合物(または高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層と低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を、また低屈折率層薄膜形成ガスとしては珪素化合物、フッ素化合物、あるいは珪素化合物とフッ素化合物の混合物を好ましく用いることが出来る。これらの化合物を屈折率を調節するために、何れかの層の形成用薄膜形成ガスとして2種以上混合して使用してもよい。
【0089】
中屈折率層薄膜形成ガスに用いる錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、ジブチルジエトキシ錫、ブチル錫トリス(2,4−ペンタンジオナート)、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、エチルエトキシ錫、メチルメトキシ錫、イソプロピルイソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、ジブチリロキシ錫、ジエチル錫、テトラブチル錫、錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫(2,4−ペンタンジオナート)、ジメチル錫ジ(2,4−ペンタンジオナート)、ジアセトメチルアセタート錫、ジアセトキシ錫、ジブトキシジアセトキシ錫、ジアセトオキシ錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来、何れも本発明において、好ましく用いることが出来る。また、これらの薄膜形成ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1011Ω/cm以下に下げることが出来るため、帯電防止層としても有用である。
【0090】
高屈折率層薄膜形成ガスに使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。またこれらの薄膜形成ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。
【0091】
低屈折率層薄膜形成ガスに使用する珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。また、前記フッ素化合物を使用することが出来る。これらの薄膜形成ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。また、屈折率の微調整にこれら錫化合物、チタン化合物、珪素化合物を適宜2種以上同時に混合して使用してもよい。
【0092】
上記の有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物やアルコキシ基、β−ジケトン類錯体基を有する有機金属化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、アルコキシ基、β−ジケトン類錯体基を有する有機金属化合物が好ましく用いられる。また、上記の有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。有機錫化合物、有機チタン化合物または有機珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシ金属、テトライソプロポキシ金属などの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記アルコキシ金属は、溶媒によって希釈して使用されても良く、この場合、放電ガス中へ気化器等により気化して混合ガスに使用すればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0093】
薄膜形成ガスについて、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の含有率は、0.01〜10体積%で有することが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。なお、図4において、薄膜形成ガスは不活性ガス(放電ガスのような希ガスや窒素ガス等)にバブリングさせて気化させるため、G1とG2を分けて導入する場合の放電ガスと薄膜形成ガスの割合は、その目的に応じて割合は異なるが、その一例として示すと、G2ガスは、放電ガスが99.5体積%、補助ガス等が0.5体積%程度、またガスG1は放電ガスが99.1体積%、薄膜形成ガスが0.9体積%程度が好ましい。
【0094】
なお、中屈折率層については、上記珪素化合物、上記チタン化合物または上記錫化合物を、目標とする屈折率に合わせて適宜混合することによっても得ることが出来る。
【0095】
なお、各屈折率層の好ましい屈折率と膜厚は、例えば、中屈折率層の酸化錫層では屈折率として1.6〜1.8、また膜厚として50〜70nm程度、高屈折率層の酸化チタン層では屈折率として1.9〜2.4、また膜厚として80〜120nm程度、低屈折率層の酸化珪素層では屈折率として1.3〜1.5、また膜厚として80〜120nm程度である。
【0096】
次に本発明の光学素子の他の例として透明導電膜を有する光学素子について説明する。
【0097】
前述の反射防止層を形成する際に使用する有機金属化合物の金属成分がインジウム等の透明性と導電性を有する薄膜を形成すると言う点が若干異なるが、有機基についてはほぼ同じような成分が用いられる。
【0098】
透明導電膜を形成する好ましい有機金属化合物の金属は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0099】
本発明において、好ましい有機金属化合物の好ましい例は、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(ヘキサフルオロペンタンジオナート)、インジウムトリアセトアセタート、トリアセトキシインジウム、ジエトキシアセトキシインジウム、トリイソポロポキシインジウム、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビス(アセトメチルアセタート)、ジ(n)ブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、ビス(2,4−ペンタンジオナート)亜鉛等を挙げることが出来る。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0100】
上記分子内に少なくとも1つの酸素原子を有する有機金属化合物の他に、該有機金属化合物から形成された透明導電膜の導電性を更に高めるために該透明導電膜をドーピングすることが好ましく、薄膜形成ガスとしての該有機金属化合物とドーピング用有機金属化合物ガスを同時に混合して用いることが好ましい。ドーピングに用いられる有機金属化合物またはフッ素化合物の薄膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、イソプロポキシボロン、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛ジ(2,4−ペンタンジオナート)、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることが出来る。
【0101】
前記透明導電膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成ガスの比は、成膜する透明導電膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、In:Snの原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成ガス量を調整することが必要である。好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう調整することが好ましい。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In:Sn、Sn:F及びIn:Znの各原子数比はXPS測定によって求めることが出来る。
【0102】
透明導電薄膜形成ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。
【0103】
得られる透明導電膜は、例えば、SnO、In、ZnOの酸化物膜、またはSbドープSnO、FドープSnO(FTO)、AlドープZnO、SnドープIn(ITO)等ドーパントによるドーピングした複合酸化物を挙げることが出来、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするアモルファス膜が好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電膜を挙げることが出来る。
【0104】
上記形成された酸化物または複合酸化物の透明導電膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0105】
また、他の光学素子として、ハーフミラーのような、反射と透過の両方の性質を有するような光学素子は例えば、下記のように作製する。
【0106】
上述の酸化珪素を主成分とする低屈折率層と酸化チタンを主成分とする高屈折率層を交互に積層して5〜20層設けることにより、ハーフミラーとしての性質を付与することが出来る。酸化珪素層には上述と同様な有機珪素化合物、また酸化チタン層には、やはり上述と同様な有機チタン化合物が用いられる。
【0107】
本発明に有用な枚葉基材としては、板状、シート状の平面形状のもの等の透明導電膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定はない。平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルムまたはシートあるいは板等を挙げることが出来る。材質的には、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用出来る。具体的には、ガラスとしては、ガラス板等、樹脂としては、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることが出来る。
【0108】
ガラスとしては、その材質は特に制限ないが、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、超高純度ガラス、クリスタルガラス等を挙げることが出来、これらは好ましく用いることが出来る。なお、ハーフミラー用にはソーダライムガラスが好ましい。またガラス板は使用目的によりことなるが、厚さは0.1〜5mm程度のものが用いられ、好ましくは0.3〜2mmである。
【0109】
樹脂フィルム、樹脂シートの材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。厚さは200μm〜200mm程度のものが用いられる。
【0110】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用出来る。またこれら基材の反対側の面に防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。また、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。
【0111】
【実施例】
実施例1
図1の薄膜形成装置を使用し、下記のように目標膜厚の光学素子を作製した。
【0112】
〈基材〉
枚葉基材として、アルカリバリアコートとして膜厚約50nmのシリカ膜が形成されている長さ500mm×幅500mm×厚さ1mmのソーダガラス板を用意した。
【0113】
〈電極の作製〉
図1及び2に示した薄膜形成装置の電極11と移動架台電極15を以下のように作製した。電極11は、長さ600mm、幅60mm、高さ70mm、肉厚5mm、スリット長さ520mm、スリット幅2mm、また、移動架台電極は長さ700mm、幅700mm、厚さ80mm、肉厚10mmで温度制御出来るように中空になっているチタン合金T64の導電性の金属質母材11A及び15Aに、下記の誘電体を被覆したものを用いた。誘電体の被覆は、電極11に対しては、図1及び2に示したように電極の底面と側面の30mmの立ち上がりまでの範囲(11T、11B)に行い、また、移動架台電極15に対しては上面(15B)に以下のように行った。導電性の金属質母材の表面を高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行ったものである。なお、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このロール回転電極の誘電体の空隙率は3体積%で、誘電体層のSiO含有率は77モル%、最終的な誘電体の膜厚は3mm、誘電体の比誘電率は10、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差は1.8×10−6/℃であった。
【0114】
移動架台電極の底面(図面下側)に、図示してないリニアガイド上に載せられ、図示してない駆動装置(サーボモーターとボールねじ)によりスムースに移動出来るようになっている。
【0115】
〈薄膜形成〉
電極底面の誘電体面(図1と2の電極の下部の面11Bまたは11T)と移動架台電極15の上の枚葉基材Fのガラス板との間隔(放電空間の距離)を1.5mmとなるようにした。上記の枚葉基材Fのガラス板はアルカリバリアコート面を上側にして置いた。
【0116】
先ず、移動架台電極15を図1の左の方に電極内のスリット14内と放電空間13を気圧102kPaとし、電極11と移動架台電極15の間の放電空間13に下記混合ガスMGを電極のスリット14に導入した。高周波電源41にはパール工業製(13.56MHz)を用い、周波数13.56MHzの電圧で、且つ5W/cmの電力密度を供給し、プラズマ放電を発生させてプラズマ発生させ、移動架台電極15を図の左側から右側に励起したガスに晒さない空間20へ移動しながら枚葉基材Fのガラス板の先頭から励起したガスG°に枚葉基材Fのガラス板のアルカリコートした面を晒し、枚葉基材Fのガラス板の後尾が通り過ぎたところで移動架台電極15を励起したガスに晒さない空間20で停止、また元の後尾側の先頭から後尾まで、励起ガスに晒さない空間20′の方に移動させ、この操作を繰り返した。
【0117】
励起したガスに晒さない空間20及び20′内で膜厚測定は枚葉基材Fのガラス板の先頭から後尾まで光学式のプローブ82で反射光を検出し、分光器83で反射スペクトルに分光し、オプティカルマルチチャンネルアナラアイザ84でその出力に基づいて、コンピュータ85で移動速度変換、移動速度変速機71に指令し、薄膜を形成した。
【0118】
目標膜厚100nmを得るために、予め求めておいた移動速度に対する膜厚の検量線をもとに、膜厚が目標膜厚を下回る範囲で、且つ最終製膜分を残す範囲で、移動速度及び製膜回数を設定した。最初の速度で1回に10nmの膜厚を得ていたので、9回の製膜を行った。9回目すなわち最終製膜前の段階で、膜厚を測定した結果から予定膜厚との乖離を求め、最終製膜において、その乖離量を含めて補うように最終移動速度を検量線より算出し、最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料1を得た。
【0119】
更に、高精度な膜厚を得るために、製膜運転の変動要因を加味した制御を行った。変動要因としては、薄膜形成ガスのガス供給系の目詰まり、電極表面への薄膜形成ガスからの未反応の粉体の付着等が起こることを想定し、製膜する度に予め製膜速度に対する膜厚の検量線からの乖離を求めながら、製膜を繰り返し、最終製膜回における目標膜厚100nmとの乖離量から、最終製膜速度について、補正を加え、最終速度を決定して最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料2を得た。
【0120】
Figure 2004115828
【0121】
比較例1
上記検量線から最終製膜までの回数を決めて、各製膜ごとの膜厚測定をいっさい行わずに10回の製膜回数とした以外は実施例1と同様に製膜し、試料3とした。
【0122】
実施例2
薄膜形成装置を図3の薄膜形成装置に変更した以外は、実施例1と同様にして目標膜厚の光学素子を作製した。
【0123】
〈基材〉
実施例1と同様なアルカリバリアコートのソーダガラスのガラス板を使用した。
【0124】
〈電極の作製〉
図3に示した薄膜形成装置の2個の電極111及び112を作製した。電極111と電極112は同じ形をしているもので、111を印加電極、また112をアース電極に使用した。これら電極のサイズは、長さ600mm、幅60mm、高さ80mm、肉厚5mmのもので、温度制御出来るように中空になっているチタン合金T64の導電性の金属質母材111A及び112Aに、下記の誘電体111B及び112Bを被覆したものを用いた。誘電体の被覆は、電極の1面に行い、導電性の金属質母材の表面を高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行ったものである。なお、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このロール回転電極の誘電体の空隙率は5体積%で、誘電体層のSiO含有率は75モル%、最終的な誘電体の膜厚は3mm、誘電体の比誘電率は10、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差は1.7×10−6/℃であった。2個の電極111及び112を誘電体被覆面を対向するように間隔2mmとなるように平行にして固定して対向電極とした。この対向電極の間隙が放電空間113である。
【0125】
移動架台については、長さ700mm、幅700mm、厚さ50mmのアルミニウム板の表面と側面に、厚さ10mmのポリエステル樹脂を被覆した。この移動架台の底面には、実施例1の移動架台電極15の場合と同様な移動手段を用いた。
【0126】
〈薄膜形成〉
対向電極と移動架台116の上の枚葉基材Fのガラス板との間隔(放電空間の距離)を1.5mmとなるようにした。上記の枚葉基材Fのガラス板はアルカリバリアコート面を上側にして置いた。
【0127】
先ず、移動架台116を図3の左の方に放電空間114及びその周辺を気圧102kPaとし、電極111と電極112の対向電極間の放電空間113に実施例1と同様な混合ガスMGをに導入した。高周波電源141にはパール工業製(13.56MHz)を用い、周波数13.56MHzの電圧で、且つ5W/cmの電力密度を供給し、プラズマ放電を発生させてプラズマ発生させ、放電空間113の下の噴射部115から励起したガスG°を噴射させ、移動架台116を図の左側から右側に励起したガスに晒さない空間120へ移動しながら枚葉基材Fのガラス板の先頭から励起したガスG°に枚葉基材Fのガラス板のアルカリコートした面を晒し、枚葉基材Fのガラス板の後尾が通り過ぎたところで移動架台116を励起したガスに晒さない空間120で停止、また元の後尾側の先頭から後尾まで、励起ガスに晒さない空間120′の方に移動させ、この操作を繰り返した。
【0128】
励起したガスに晒さない空間120及び120′内で膜厚測定は枚葉基材Fのガラス板の先頭から後尾まで光学式のプローブ182で反射光を検出し、分光器183で反射スペクトルに分光し、オプティカルマルチチャンネルアナラアイザ184でその出力に基づいて、コンピュータ185で移動速度変換、移動速度変速機171に指令し、100nmの目標膜厚の薄膜を形成した。
【0129】
目標膜厚100nmを得るために、予め求めておいた移動速度に対する膜厚の検量線をもとに、膜厚が目標膜厚を下回る範囲で、且つ最終製膜分を残す範囲で、移動速度及び製膜回数を設定した。最初の速度で1回に10nmの膜厚を得ていたので、9回の製膜を行った。9回目すなわち最終製膜前の段階で、膜厚を測定した結果から予定膜厚との乖離を求め、最終製膜において、その乖離量を含めて補うように最終移動速度を検量線より算出し、最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料4を得た。
【0130】
更に、高精度な膜厚を得るために、製膜運転の変動要因を加味した制御を行った。変動要因としては、薄膜形成ガスのガス供給系の目詰まり、電極表面への薄膜形成ガスからの未反応の粉体の付着等が起こることを想定し、製膜する度に予め製膜速度に対する膜厚の検量線からの乖離を求めながら、製膜を繰り返し、最終製膜回における目標膜厚100nmとの乖離量から、最終製膜速度について、補正を加え、最終速度を決定して最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料5を得た。
【0131】
比較例2
上記検量線から最終製膜までの回数を決めて、各製膜ごとの膜厚測定をいっさい行わずに10回の製膜回数とした以外は実施例2と同様に製膜し、試料6とした。
【0132】
実施例3
薄膜形成装置を図4の薄膜形成装置に変更、またガス組成を下記に変更した以外は、実施例2と同様にして目標膜厚の光学素子を作製した。
【0133】
〈基材〉
実施例1と同様なアルカリバリアコートのソーダガラスのガラス板を使用した。
【0134】
〈電極の作製〉
図4に示した薄膜形成装置の2組の電極211及び212を作製した。電極211は中央にスリットを有する2個の薄手の電極である。長さ600mm、幅60mm、高さ80mm、肉厚5mm、スリット幅1.5mmで図2のような形をしている。電極212は、図3の実施例2の電極と同様な形及びサイズとした。211を印加電極、また212をアース電極に使用した。また、電極211と212は温度制御出来るように中空になっているチタン合金T64の導電性の金属質母材(不図示)に、下記の誘電体(不図示)を被覆したものを用いた。誘電体の被覆は、対向電極の電極211及び電極212の放電空間213を形成する側の1面に行い、導電性の金属質母材の表面を高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行ったものである。なお、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このロール回転電極の誘電体の空隙率は5体積%で、誘電体層のSiO含有率は75モル%、最終的な誘電体の膜厚は3mm、誘電体の比誘電率は10、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差は1.8×10−6/℃であった。2組の電極211及び212を誘電体被覆面を対向するように間隔2mmとなるように平行にして固定して対向電極とした。この対向電極の間隙が放電空間213である。
【0135】
移動架台217については、実施例2の移動架台116と同様な形、サイズ、材質のものを用い、更に同様な移動手段を用いた。
【0136】
〈薄膜形成〉
対向電極と移動架台217の上の枚葉基材Fのガラス板との間隔(放電空間の距離)を1.5mmとなるようにした。上記の枚葉基材Fのガラス板はアルカリバリアコート面を上側にして置いた。
【0137】
先ず、移動架台217を図4の左の方に放電空間213及び励起したガスに晒す空間216(対向電極211と212及び移動架台との間の空間)を気圧102kPaとし、電極211と電極212の対向電極間の放電空間213に、下記の放電ガスを主構成成分とするガスG2をガス供給管253から導入した。高周波電源241にはパール工業製(13.56MHz)を用い、周波数13.56MHzの電圧で、且つ5W/cmの電力密度を供給し、プラズマ放電を発生させてプラズマ発生させ、放電空間213の下の噴射部215から励起したガスを励起したガスに晒す空間216に噴射させた。これと同時に、スリット214に、下記薄膜形成ガスを主構成成分とするガスG1をガス供給管252を通して導入し、スリット214の下から励起したガスに晒す空間216に放出し、この空間216で両ガスが混合して、薄膜形成ガスを励起し、励起したガスG°に枚葉基材Fのガラス板を晒し薄膜を形成させた。薄膜形成と枚葉基材Fの移動は実施例2と同様に行った。すなわち、移動架台217を図の左側から右側に励起したガスに晒さない空間220へ移動しながら枚葉基材Fのガラス板の先頭から励起したガスG°に枚葉基材Fのガラス板のアルカリコートした面を晒し、枚葉基材Fのガラス板の後尾が通り過ぎたところで移動架台217を励起したガスに晒さない空間220で停止、また元の後尾側の先頭から後尾まで、励起ガスに晒さない空間220′の方に移動させ、この操作を繰り返した。
【0138】
励起したガスに晒さない空間220及び220′内で膜厚測定は枚葉基材Fのガラス板の先頭から後尾まで光学式のプローブ282で反射光を検出し、分光器283で反射スペクトルに分光し、オプティカルマルチチャンネルアナラアイザ284でその出力に基づいて、コンピュータ285で移動速度変換、移動速度変速機171に指令し、100nmの目標膜厚の薄膜を形成した。
【0139】
目標膜厚100nmを得るために、予め求めておいた移動速度に対する膜厚の検量線をもとに、膜厚が目標膜厚を下回る範囲で、且つ最終製膜分を残す範囲で、移動速度及び製膜回数を設定した。最初の速度で1回に10nmの膜厚を得ていたので、9回の製膜を行った。9回目すなわち最終製膜前の段階で、膜厚を測定した結果から予定膜厚との乖離を求め、最終製膜において、その乖離量を含めて補うように最終移動速度を検量線より算出し、最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料7を得た。
【0140】
更に、高精度な膜厚を得るために、製膜運転の変動要因を加味した制御を行った。変動要因としては、薄膜形成ガスのガス供給系の目詰まり、電極表面への薄膜形成ガスからの未反応の粉体の付着等が起こることを想定し、製膜する度に予め製膜速度に対する膜厚の検量線からの乖離を求めながら、製膜を繰り返し、最終製膜回における目標膜厚100nmとの乖離量から、最終製膜速度について、補正を加え、最終速度を決定して最終製膜を行い、100nmの膜厚の試料8を得た。
【0141】
Figure 2004115828
【0142】
比較例3
上記検量線から最終製膜までの回数を決めて、各製膜ごとの膜厚測定をいっさい行わずに10回の製膜回数とした以外は実施例3と同様に製膜し、試料9とした。
【0143】
〔評価〕
目標膜厚100nmからの乖離量について膜厚測定の結果を、下記のレベルで評価した。
【0144】
A:0.0〜0.2nm
B:0.3〜0.5nm
C:0.6〜1.0nm
D:1.1〜3.0nm
E:3.1〜6.5nm
F:6.6〜10.0nm
G:10.1nm以上
評価した結果を表1に示した。
【0145】
【表1】
Figure 2004115828
【0146】
(結果)
試料1、4及び7については、目標膜厚100nmとの乖離量はほとんどないことがわかった。更に精度を上げた試料2、5及び8については一層の精度の向上が見られた。これに対して比較例の試料3、6及び9については、目標膜厚100nmからの乖離量がかなりあり、本発明の制御方法が優れていることを認められた。
【0147】
【発明の効果】
本発明の膜厚制御手段を使用することによって、枚葉基材上に目標値の膜厚を膜厚精度よく形成することが出来る薄膜形成方法と、その方法を達成するに用いる枚葉基材のための薄膜形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。
【図2】図1の電極を底面側から見上げた斜視図である。
【図3】本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。
【図4】本発明の薄膜形成装置の一例の概略図である。
【符号の説明】
10 プラズマ放電装置
11 電極
13 放電空間
15、15′ 移動架台電極
40 電圧印加手段
50 ガス供給手段
70 移動手段
80 膜厚制御手段
F 枚葉基材

Claims (11)

  1. 対をなす電極で構成された対向電極の間で形成された放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該ガスを励起し、何れか一方の電極上に搭載している枚葉基材と他方の電極とを相対的に移動させながら該励起したガスに該枚葉基材を晒すことにより、該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該他方の電極と該枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 対をなす電極で構成された対向電極の間で形成された放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該ガスを励起し、枚葉基材を搭載する架台と該対向電極とで形成された空間に該励起したガスを噴出させ、該架台の上に搭載している該枚葉基材と該対向電極とを相対的に移動させながら該励起したガスに該枚葉基材を晒すことにより、該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
  3. スリットを有する電極とその両側にある電極とで構成する対向電極の間の放電空間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、該放電空間に放電ガスを主構成成分とするガスを導入し、該放電空間に高周波電圧を印加して該放電ガスを主構成成分とするガスを励起し、枚葉基材を搭載する架台と該対向電極とで形成された空間に励起した放電ガスを噴出させると同時に、該スリットに薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを導入し、該架台と該対向電極とで形成された空間に該スリットを通して該薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを放出させて、該架台の上に搭載している該枚葉基材と該対向電極とを相対的に移動させながら該空間で両ガスを混合させて励起したガスに該枚葉基材を晒すことによって薄膜を形成する薄膜形成方法において、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と枚葉基材との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるよう制御することを特徴とする薄膜形成方法。
  4. 前記薄膜形成中の薄膜の膜厚を測定し、その結果に応じて前記相対移動速度を変化させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  5. 前記励起したガスに晒す空間が放電空間内であり、且つ、前記励起したガスに晒さない空間が放電空間外であることを特徴とする請求項1、3または4に記載の薄膜形成方法。
  6. 前記励起したガスに晒す空間が放電空間外であり、且つ、前記励起したガスに晒さない空間が、前記対向電極と前記枚葉基材を搭載する該架台とが相対していない空間であることを特徴とする請求項2または4に記載の薄膜形成方法。
  7. 前記枚葉基材を前記励起したガスに晒す空間と、前記励起したガスに晒さない空間とを交互に移動させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  8. 前記薄膜の膜厚の測定が、前記励起したガスに晒さない空間で行われることを特徴とする請求項4乃至7の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  9. 第1電極及び第2電極を対向させて配置した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを該電圧印加手段で該対向電極間に印加することにより励起させ、枚葉基材を該励起したガスに晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該第1電極あるいは第2電極の放電空間側の面上には該枚葉基材を搭載するようになっており、該第1電極と第2電極とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該第1電極と第2電極との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標の膜厚となるよう制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
  10. 第1電極及び第2電極を対向させて配置した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該対向電極で形成された放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とするガスを該電圧印加手段で該放電空間に印加することにより励起させ、枚葉基材を該励起したガスに晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該対向電極の下側面に該放電空間から外部へ該励起したガスを噴出する噴出部と、該ガス噴出部のある対向電極面に対向する位置に枚葉基材を搭載する架台とを有し、該対向電極と該架台とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と該架台との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるように制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
  11. スリットを有する第1電極とその両側にある第2電極とで構成した対向電極と、該対向電極間(放電空間)に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、該放電空間にガスを供給するガス供給手段とを有し、該ガス供給手段で該放電空間に供給された放電ガスを主構成成分とする第2のガスを該電圧印加手段で該放電空間に印加することにより励起させ、該ガス供給手段から該スリットに供給し通過させた薄膜形成ガスを主成分とする第1のガスと該励起した第2のガスを混合したガスに枚葉基材を晒すことにより該枚葉基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、該放電空間から外部へ励起した第2のガスを噴出させる該対向電極の下側面にある噴出部と、該スリットから外部へ第1ガスを放出させる該対向電極の下面にある放出部と、該噴出部と該放出部のある対向電極面に対向する位置に枚葉基材を搭載する架台とを有し、該対向電極と該架台とは対向平面方向において相対的に移動可能であって、当該薄膜形成中の少なくとも一定時間、該対向電極と該架台との相対移動速度を変化させて、該薄膜の目標膜厚となるように制御する膜厚制御手段を有することを特徴とする薄膜形成装置。
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