JP2008043937A - 接触気相酸化用反応器およびそれを用いたアクリル酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
従来の2つの反応器を用いる気相酸化反応の場合、反応器および配管等の設備にコストが掛かり、設置床面積も大きく、装置的にも大掛りなものになってしまう事や、アクロレインの自動酸化に伴う炭化物が堆積しやすいという問題を解消する。
【解決手段】
接触気相酸化反応に用いられる固定床多管式反応器であって、1つの反応器内に、2つの区画された反応帯(第1反応帯、第2反応帯)、当該2つの反応帯の間に外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部を有する接触気相酸化用反応器を用いる。
【選択図】 図3

Description

本発明は接触気相酸化を行うための固定床多管式熱交換型反応器に関し、詳しくは、1つの反応器を用いてプロピレンの接触気相酸化反応によりアクリル酸を効率よく製造するために使用される固定床多管式熱交換型反応器に関する。
プロピレンの二段接触気相酸化によりアクリル酸を製造することは広く工業的に行われている。この方法は、プロピレンをアクロレインに接触気相酸化する前段反応およびアクロレインをアクリル酸に接触気相酸化する後段反応とからなる。
このような反応を行うにあたり、従来、2つの反応器を用いる方法と1つの反応器を用いる方法の大きく分けて2つの方法が提案されている。
2つの反応器を用いる方法として、例えば、特許文献1や特許文献2では、前段反応に好適な前段触媒を充填した前段反応器および後段反応に好適な後段触媒を充填した後段反応器の2つの反応器を用い、前段反応器からの主としてアクロレインを含有する反応ガスと、リサイクルガス、酸素、あるいは窒素や水蒸気などの不活性ガスとを後段反応器に導入しアクロレインを更に酸化してアクリル酸を製造する方法が開示されている。
一方、1つの反応器でプロピレンからアクリル酸を製造する方法として、例えば、特許文献3、特許文献4あるいは特許文献5には、シェル側を仕切り板で2つの反応帯に分割し、それぞれの反応帯のシェル側には独立して熱媒体を循環できるようにし、一方の反応帯の反応管には前段反応に適した前段触媒が充填され、もう一方の反応帯には後段反応に適した後段触媒が充填された1つの反応器を用いプロピレンからアクリル酸を製造する方法が開示されている。
また、特許文献6には、それぞれのシェル内に熱媒体の流れを規制するため、邪魔板などを取り付けることにより、熱媒体による酸化反応による生成熱の除去効率を高かめる技術が開示されている。
また、特許文献7には、シェル内に設置される仕切り板に関して、溶接などでもよいが、円筒状の取り付け板を介してシェル内壁に固定される技術が開示されている。
特開昭53−15314号公報 特開昭55−102536号公報 特開昭54−19479号公報 特開昭54−21966号公報 特開平11−130722号公報 特開2001−137689号公報 特公平7−73674号公報
しかしながら、前記した2つの反応器を用いる場合、反応器および配管等の設備にコストが掛かり、設置床面積も大きく、装置的にも大掛りなものになってしまう。さらに、前段反応器からの主としてアクロレインを含有するガスを後段反応器に導入するまでの配管などでのガス滞留時間が比較的長いため、アクロレインが自動酸化しやすく、それに伴う炭化物等が堆積しやすいという問題がある。さらには、その炭化物等により、触媒が汚染され、ひいては性能劣化および反応官の閉塞や圧力損失といった現象が比較的短い期間で起こり易い。
また、前記した1つの反応器を用いる場合、前段反応および後段反応の両方で消費されるに十分な酸素量をあらかじめ前段反応の原料ガス中に含めておく必要があるため、前段反応および後段反応でのガス組成をそれぞれ独自に最適化することができない。そのため、生産性向上のために原料プロピレン濃度を高めようとしても、後段反応に必要な酸素量を前段反応の原料ガスガス中に含めておく必要があり、前段反応では必要以上の酸素の存在下での反応となり触媒性能への影響が大きくなる。また、爆発範囲の関係からもプロピレンの高濃度化にも限界があるという問題がある。
かくして、本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決し、プロピレンからアクリル酸を製造するに際し、1つの反応器を用いかつ後段反応におけるガス組成の変更が可能な新しい反応器を提供することにある。
本発明者らは、プロピレンの接触酸化反応によりアクリル酸を製造するに際して、1つの反応器内に、2つの区画された熱交換型多管式反応帯と、当該2つの反応帯の間に外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部が設置された反応器を用いることにより、上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで、区画された熱交換型多管式反応帯は、上下2枚の管板で区画されたシェル内に複数の反応管を有するもので、反応管内には触媒が充填され反応原料ガスを供給して接触気相酸化を行う一方、シェル側には熱媒体を循環させ反応熱が除去される。
すなわち、本発明は、接触気相酸化などに用いられる固定床多管式反応器であって下記の構成をもつ反応器ならびにこのような反応器を用いることを特徴とするアクリル酸の製造方法である。
(1)1つの反応器に、2つの区画された反応帯と、当該2つの反応帯の間に外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部を設置する。
(2)さらに前記空間部に第1反応帯出口ガスと外部からの追加ガスとを混合する機構を設置する。
(3)前記空間部に、反応ガスに対して実質的に不活性な物質を充填する。
(4)さらに、第2反応帯の入口部に反応ガス温度を調節するためのガス温調整部を設置する。
(5)さらに、上記いずれかに記載の反応器を用いるプロピレンの接触気相酸化によるアクリル酸の製造方法である。
本発明においては、上記構成を採用することにより、従来の反応器の問題点を解決し、プロピレンからアクリル酸を製造するに際し、1つの反応器を用いかつ後段反応におけるガス組成の変更が可能であり、プロピレンの高濃度化に適した新しい反応器を提供することができた。
また当該反応器を用いることによって、長期間の運転であっても炭化物が堆積しにくくなり、その結果、より効率の高いアクリル酸の製造方法を提供することができた。
図3に本発明の反応器の一つの形態を示す。図3の反応器を用いたプロピレンの接触気相酸化によるアクリル酸の製造において以下説明する。
図3において、反応原料ガスは反応器の上方から供給されているが、反応原料ガスの流れ方向は特に限定されるものではなく状況に応じて適宜選択できる。
反応器の上方から原料ガスが供給される場合、反応器内に、上部から順に、反応管内にプロピレンをアクロレインに変換するに好適な触媒(以下「前段触媒」と略記することもある)が充填された第1の反応帯、反応器外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部、反応管内にアクロレインをアクリル酸に変換するに好適な触媒(以下「後段触媒」と略記することもある)が充填された第2の反応帯が設置された反応器が用いられる。
プロピレンおよび分子状酸素を含有する原料ガスは、反応器上部から第1反応帯に供給されそこでアクロレインに変換され第1反応帯から出た反応ガスは空間部に流入する。ここで外部から別途供給された追加ガス(例えばリサイクルガスや空気など)と混合され第2反応帯に流入しここでアクリル酸に変換され反応器から流出する。
ここで、前段触媒としては、プロピレンを含む原料ガスを気相酸化してアクロレインを製造するのに一般に用いられている酸化触媒を用いることができる。同様に、後段触媒についても特に制限はなく、二段接触気相酸化法により前段触媒によって得られる主としてアクロレインを含む反応ガスを気相酸化してアクリル酸を製造するのに一般に用いられている酸化触媒を用いることができる。
具体的には、前段触媒としては、例えば、下記一般式(I):
MoBiFeX1X2X3X4 (I)
(ここで、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、X1はコバルトおよびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素、X2はアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、X3はタングステン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンから選ばれる少なくとも1種の元素、X4はリン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、砒素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、またa、b、c、d、e、f、gおよびxはそれぞれMo、Bi、Fe、X1、X2、X3、X4およびOの原子比を表し、a=12のとき、b=0.1〜10、c=0.1〜20、d=2〜20、e=0.001〜10、f=0〜30、g=0〜4であり、xは各元素の酸化状態によって定まる数値である)で示される酸化物触媒を挙げることができる。
また後段触媒としては、例えば、下記一般式(II):
MoY1Y2Y3Y4 (II)
(ここで、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Wはタングステン、Y1はアンチモン、ビスマス、クロム、ニオブ、リン、鉛、亜鉛およびスズから選ばれる少なくとも1種の元素、Y2は銅および鉄から選ばれる少なくとも1種の元素、Y3はアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Y4はケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、ロジウムおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、またh、i、j、k、l、m、nおよびyはそれぞれMo、V、W、Y1、Y2、Y3、Y4およびOの原子比を表し、h=12のとき、i=2〜14、j=0〜12、k=0〜5、l=0.01〜6、m=0〜5、n=0〜10であり、yは各元素の酸化状態によって定まる数値である)で示される酸化触媒を挙げることができる。
その形状についても特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、など公知の形状のものが使用される。
なお、第1反応帯および第2反応帯に充填される触媒は、それぞれ単一な触媒である必要はなく、例えば第1反応帯において、活性の異なる複数種の前段触媒を用い、これらを活性の異なる順に充填したり、触媒の一部を不活性担体などで希釈したりしてもよい。第2反応帯についても同様である。
第1反応帯の好適な温度は、通常、300〜380℃であり、また第2反応帯の好適な温度は、通常、250〜350℃である。又、第1反応帯及び第2反応帯における熱媒体の入口温度と出口温度の差は、10℃以下、好ましくは5℃以下とするのが良い。なお、本発明における第1反応帯の温度および第2反応帯の温度とは、それぞれの反応帯における熱媒体入口温度に実質的に相当するものであり、熱媒体入口温度は、上記の範囲内で設定された第1反応帯および第2反応帯のそれぞれの設定温度に応じて決定される。
この様に各反応帯の温度を制御するには、それぞれの反応帯のシェルに反応器の外部に取り付けた熱媒体循環装置により温度制御された熱媒体を別々に循環させればよく、熱媒体の循環方向は特に限定されるものではない。例えば、それぞれの熱媒体の循環方向として、図3では第1の反応帯、第2の反応帯共に下方から上方に循環されているが、その逆方向、あるいは第1反応帯では上方から下方、第2反応帯では下方から上方、あるいはその逆の循環方向となるようにするなど適宜選択することができる。
この時、それぞれのシェル内に熱媒体の流れを規制するため、例えば、特開2001−137689号公報に記載のような邪魔板などを取り付けることにより、熱媒体による酸化反応による生成熱の除去効率が高まり好ましくなる。
さらに、それぞれの反応帯のシェル内に仕切り板を設置し、各反応帯自体を2つ以上に区切り、別々に熱媒体を循環させ、それぞれ別個に温度制御することもできる。その場合、仕切り板は反応管に溶接などにより直接固定されてもよいが、仕切り板や反応管に熱的な歪みが生じるのを防止するために、実質的に独立して熱媒体を循環できる範囲において、仕切り板と反応管との間に適当な隙間を設けるのがよい。
具体的には、仕切り板と反応管との間隔を0.2〜5mm程度とするのが好ましい。また、仕切り板は反応器の内壁に溶接などにより直接固定されてもよいが、特公平7−73674号公報記載のように、円筒状の取り付け板を介して内壁に固定してもよい。
第1反応帯と第2反応帯との間の空間部に反応器外部から追加するガス状物質としては、第2反応帯において所望のガス組成に調整できれば特に限定されるものではないが、例えば、空気、酸素、窒素、スチーム、廃ガス(リサイクルガス)およびそれらの混合ガスなどが挙げられる。
本発明によれば、空間部に第1反応帯出口ガスと追加ガス状物質とを効率よく混合するための機構を設置すれば、空間部の容量をより小さくすることもでき反応器を小型化できるため好ましい。混合機構としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の機構などが挙げられる。
(ア)追加ガス状物質の噴出し口を多数設けて接触面積を高めて混合する方法(図5(b))。
(イ)追加ガス状物質を反応器に対し斜め方向に導入し、渦状の流れにより混合する方法(図5(c))。例えば、当該追加ガス状物質を、反応器に対し水平斜め方向に導入してもよい。
(ウ)第1反応帯と第2反応帯との間の空間部に括れを持たせ、そこでガス状物質を追加し、その下に設けた分散板を取り付けることで混合する方法(図6)。
また、本発明においては、空間部分に反応ガスに実質的に不活性な物質を充填することもできる。
充填する反応ガスに実質的に不活性な物質としては特に制限はなく、α−アルミナ、アランダム、ムライト、カーボランダム、ステンレススチール、炭化ケイ素、ステアタイト、陶器、磁器、鉄および各種セラミックなどが挙げられる。その形状についても、不活性物質自体による圧力損失の大幅な上昇がなければ特に制限はなく、ラシヒリング状、球状、円柱状、リング状、などの粒状のほかに、塊状、棒状、板状、金網状なども挙げることができる。
第1反応帯出口ガスは比較的高温であり、主成分として含まれるアクロレインは自動酸化などの後反応を起こし易い。このような不活性な物質を空間部に充填することにより、空間部でのガス滞留時間を短くすることで、アクロレインの自動酸化防止に効果的である。好ましくは、空間部におけるガス滞留時間が6秒以内になるように不活性物質の充填量を設定するのがよい。
このような不活性物質を充填しておくことにより、第1反応帯に充填された触媒層より飛散するモリブデン成分や第1反応での副生成物であるテレフタル酸などの高沸点物質やアクロレインの自動酸化に伴う炭化物による、第2の反応帯に充填された触媒の汚染ひいてはその性能劣化、および、空間部の閉塞や圧力損失の上昇などをより低減させることもできる。
また、本発明においては、第1反応帯出口ガスおよび追加ガス状物質の混合ガスを第2反応帯における反応に好適な温度範囲までに冷却あるいは加熱するために、空間部と第2の反応帯との間にガス温調節部を設けることが好ましい。
このガス温調節部により短時間かつ十分に第1反応帯出口ガスを冷却でき、アクロレインの自動酸化などの後反応が抑制可能となる。
一方、外部からのガスの追加などにより第2反応帯への入口ガスが冷却されすぎた場合には、第2反応帯で十分な触媒活性が得られない。このガス温調節部により短時間かつ十分に第2反応に必要な温度まで加熱できる。
ガス温調節部の構造は特に制限はなく、例えば、空間部にフィンチューブを蛇行させる、あるいは反応ガスが流通する複数の管と熱媒が流通するシェル部とを備える等の構造が挙げられるが、好ましくは後者であり、その場合、反応ガス流通管には何も充填せず空筒としても良いが、熱媒と反応ガスとの熱交換を容易にするには、反応ガス流通管内に反応には実質的に不活性な物質を充填するのが好ましい。
充填する不活性物質としては特に制限はなく、α−アルミナ、アランダム、ムライト、カーボランダム、ステンレススチール、炭化ケイ素、ステアタイト、陶器、磁器、鉄および各種セラミックなどが挙げられる。その形状についても、不活性物質自体による圧力損失の大幅な上昇がなければ特に制限はなく、ラシヒリング状、球状、円柱状、リング状、などの粒状のほかに、塊状、棒状、板状、金網状なども挙げることができる。
ガス温調節部における温度の制御は、各反応帯とは独立して熱媒を循環させることや、第1の反応帯あるいは第2反応帯の熱媒を循環させることも可能である。
反応実施時において、第1反応帯出口ガスの冷却、および/または、第2反応帯での反応ガス温度制御のための予熱層として使用する際には、ガス温調節部には独立して熱媒循環させるか、あるいは、第2反応帯に入る前の熱媒または第2反応帯から出た熱媒をガス温調節部に循環させることでガス温調節部の温度制御が可能である。
一方、本発明による空間部でのガスの滞留時間短縮、追加ガス導入でのガス濃度調節を行うことで、高負荷条件の下で長期間に渡るプロピレンの酸化によるアクリル酸の製造において、アクロレインの自動酸化やテレフタル酸等の高沸点物質による炭化物の生成を従来に比べ大幅に改善できる。しかし、長期間に渡る製造において、第1反応帯出口ガスを冷却することで第2反応帯入口部の触媒、あるいは、空間部やガス温調節部に不活性物質を充填した場合は、充填された不活性物質上で炭化物は少なからず生成され、閉塞や圧力損失の上昇の原因となりうる。
このような第2反応帯入口部の触媒や不活性物質上に生成した炭化物については、定期的に、好ましくは1回以上/年の頻度で第2反応帯入口部の触媒や不活性物質を交換するか、あるいは高温下で酸素含有ガスを流通させるエアレーションにより燃焼除去することができる。
このようなエアレーションの実施に際しては、通常、後段触媒は高温で酸素含有ガスと接触することにより触媒性能の劣化を引き起こすため、第2反応帯は、350℃以下、好ましくは330℃以下、さらに好ましくは320℃以下に保つのがよく、第1反応帯および/またはガス温調節部のみ320℃以上の高温にして実施する。実施に際しては、上記同様にガス温調節部に独立した熱媒循環させるか、あるいは、比較的高温である第1反応帯に入る前の熱媒または第1反応帯から出た熱媒を循環させることもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」、と記すことがある。
<実施例1>
[前段触媒1の調製]
蒸留水1000部を加熱攪拌しつつモリブデン酸アンモニウム385.2部およびパラタングステン酸アンモニウム39.3部を溶解した(A液)。別に140部の蒸留水に硝酸コバルト264.6部を溶解させ(B液)、また80部の蒸留水に硝酸第二鉄80.8部を溶解させ(C液)、さらに100部の蒸留水に硝酸(60%)20容量部を加えて酸性とした溶液に硝酸ビスマス105.8部を溶解させた(D液)。A液にこの3種の硝酸塩溶液(B、C、D液)を滴下した。引き続き、水酸化カリウム0.469部を30部の蒸留水に溶解した液を加えた。このようにして得られた懸濁液を加熱、攪拌、蒸発せしめた後、外径8mm、内径3mm、長さ7mmに成型し、空気流通下460℃で8時間焼成して触媒を調製した。この触媒の酸素を除く金属組成は原子比で次のとおりであった。
Mo12Bi1.2Fe1.1Co5.00.050.8
〔前段触媒2の調製〕
外径6mm、内径2mm、長さ6mmに成形した以外は、前段触媒1と同様に調製した。
[後段触媒1の調製]
蒸留水2000部を加熱攪拌しながら、この中にパラモリブデン酸アンモニウム365.4部、メタバナジン酸アンモニウム100.9部およびパラタングステン酸アンモニウム55.9部を溶解した。別に、蒸留水400部を加熱攪拌しながら、この中に硝酸銅83.3部を溶解した。得られた2つの液を混合した後、湯浴上の磁製蒸発器に入れ、これにα−アルミナからなる平均粒径が8mmの球状担体1000容量部を加え、攪拌しながら蒸発乾固して担体に付着させた後、空気雰囲気下400℃で6時間焼成して触媒を調製した。この触媒の酸素を除く金属組成は原子比で次のとおりであった。
Mo121.2Cu
〔後段触媒2の調製〕
平均粒径5mmの球状担体を用いた以外は後段触媒1と同様に調製した。
[反応器および酸化反応]
上から順に第1反応帯(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)、空間部(長さ1500mmで第2反応帯上管板より1300mm上方に、反応器に対して垂直方向にガス導入管を設置)、第2反応帯(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)を備える内径400mmの反応器を用いた。(図3および図5(a)参照)
第1反応帯にはガス入口側より前段触媒1を長さ800mm、前段触媒2を長さ2200mmとなるように充填し、第2反応帯にはガス入口側から後段触媒1を長さ700mm、後段触媒2を長さ2300mmとなるように充填した。
熱媒は、第1反応帯、ガス温調節部、第2反応帯とも下方から上方に向けて流した。下記組成の原料ガスを反応器の上方から導入し下記の条件で酸化反応を行った。
<原料ガス組成>
プロピレン12容量%、酸素15容量%、水蒸気9容量%および窒素等の不活性ガス64容量%。
<風量>
上記組成のガスを47.7m/Hrで供給。
<追加ガス>
空間部に、空気を13.6m/Hrで供給。
<触媒層温度>
第1反応帯温度(第1反応帯の熱媒体入口温度):320℃
第2反応帯温度(第2反応帯の熱媒体入口温度):265℃
<性能評価>
反応開始後、48時間と4000時間後のプロピレン転化率およびアクリル酸収率および4000時間後の初期からの圧損上昇を表1に示す。
また、4000時間後の状態を確認したところ、第2反応帯の触媒の入口から30mmにかけて炭化物の析出が認められた。
<エアレーション>
酸素12容量%、水蒸気50容量%および窒素等の不活性ガス38容量%の混合ガスを21.2m/Hrで供給。第1反応帯温度350℃、第2反応帯温度320℃で24Hr流通。
上記条件にて、エアレーションを実施したところ、触媒層温度の急激な上昇もなく炭化物の除去が確認され、圧力損失も反応開始時に戻っていた。処理後の性能評価について表1に示す。
<実施例2>
追加ガス導入管を反応器に対して接線方向にした以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。結果を表1に示す。(図3および図5(c)参照)
4000時間後の状態を確認したところ、第2反応帯の触媒の入口から10mmにかけて炭化物の析出が認められた。その後、実施例1と同じ条件でエアレーションを実施したところ、触媒層温度の急激な上昇もなく炭化物の除去が確認され、圧力損失も反応開始時に戻っていた。処理後の性能評価について表1に示す。
<実施例3>
〔反応器および酸化反応〕
上から順に第1反応帯(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)、空間部(長さ1500mmでガス温調節部より1300mm上方に、反応器に対して接線方向にガス導入管を設置)、ガス温調節部(長さ500mm、内径25mmの管24本)、第2反応帯(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)を備える内径400mmの反応器を用いた。
第1反応帯にはガス入口側より前段触媒1を長さ700mm、前段触媒2を長さ2300mmとなるように充填し、第2反応帯にはガス入口側から後段触媒1を長さ800mm、後段触媒2を長さ2200mmとなるように充填した。
ガス温調節部には、不活性物質として、外径6mm、長さ7mmのSUS製ラシヒリングを長さ500mmとなるよう充填した。また、熱媒は、第1反応帯、第2反応帯とも下方から上方に向けて流した。ガス温調節部の熱媒体入口温度を260℃とした。反応条件は実施例1と同じ条件で行った。結果を表1に示す。
4000時間後の状態を確認したところ、ガス温調部に充填した不活性物質上に炭化物の析出が認められたが、触媒層に炭化物が認められなかった。その後、ガス温調節部の熱媒体温度を340℃にした以外は、実施例1と同じ条件でエアレーションを実施したところ、触媒層温度の急激な上昇もなく炭化物の除去が確認され、圧力損失も反応開始時に戻っていた。処理後の性能評価について表1に示す。
<実施例4>
空間部に不活性物質として、直径40mmのセラミックボールを空間部でのガス滞留時間が6秒となるよう充填した以外は、実施例3と同じ条件で反応を行った。(図4および図5(c)参照)結果を表1に示す。
4000時間後の状態を確認したところ、空間部に充填した不活性物質表面にわずかに炭化物が認められたが、ガス温調部に充填した不活性物質および触媒層に炭化物は認められなかった。その後、実施例1と同じ条件でエアレーションを実施したところ、触媒層温度の急激な上昇もなく炭化物の除去が確認され、圧力損失も反応開始時に戻っていた。処理後の性能評価について表1に示す。
<比較例1>
従来の2つの反応器を用い、実施例1と同様の触媒を用いて反応を行った。
[反応器および酸化反応]
第1反応器(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)、第1反応器出口部にガス温調節部(長さ500mm、内径25mmの管24本)、第2反応器(長さ3000mm、内径25mmのSUS製反応管24本)を備える内径400mmの反応器を用いた。各反応器を内径200mm、長さ6000mmのSUS製パイプで連結した。さらに、第1反応器出口部に、追加ガス用の配管を連結した。(図1参照)
第1反応器にはガス入口側より前段触媒1を長さ800mm、前段触媒2を長さ2200mmとなるように充填し、第2反応器にはガス入口側から後段触媒1を長さ700mm、後段触媒2を長さ2300mmとなるように充填した。
第1反応器出口部のガス温調節部には、外径6mm、長さ7mmのSUS製ラシヒリングを長さ500mmとなるよう充填した。熱媒は、第1反応帯、第2反応帯とも下方から上方に向けて流した。下記組成の原料ガスを反応器の上方から導入し下記の条件で酸化反応を行った。
<原料ガス組成>
プロピレン12容量%、酸素15容量%、水蒸気9容量%および窒素等の不活性ガス64容量%。
<風量>
上記組成のガスを47.7m/Hrで供給。
<追加ガス>
空気を13.6m/Hrで供給。
<触媒層温度>
第1反応器温度(第1反応帯の熱媒体入口温度):320℃
ガス温調節部温度(ガス温調節部の熱媒体入口温度):260℃
第2反応器温度(第2反応帯の熱媒体入口温度):265℃
結果を表1に示す。
また、4000時間後の状態を確認したところ、反応器の連結パイプおよび不活性物質上に炭化物の析出が認められ、さらに第2反応帯の触媒の入口から200mmまで炭化物が認められた。
<エアレーション>
酸素12容量%、水蒸気50容量%および窒素等の不活性ガス38容量%の混合ガスを21.2m/Hrで供給。第1反応帯温度350℃、第2反応帯温度320℃での条件にて、エアレーションを実施したところ、触媒層温度の急激な上昇(暴走)が認められたため中断した。その後、反応を再開したところ、触媒が失活しており反応継続は不可能であった。
Figure 2008043937
従来の2つの反応器を用いる場合の反応器の模式図。 従来の1つの反応器を用いる場合の反応器の模式図 本発明で使用する反応器の模式図で、反応原料ガスが反応器の上方から供給され、当該2つの反応帯の間に外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部を有する接触気相酸化用反応器の模式図である。 本発明で使用する反応器の模式図で、ガス温調部を有し、空間部に不活性物質を充填した当該反応器の空間部に第1反応帯出口ガスと形態の接触気相酸化反応器の模式図である。 本発明で使用する反応器の追加ガス状物質の導入部の断面模式図である。(a)通常の追加ガス状物質の導入部の断面模式図。(b)追加ガス状物質の噴出し口を多数設けて接触面積を高めて混合する機構が設置された追加ガス状物質の導入部の断面模式図。(c)追加ガス状物質を反応器に対し斜め方向に導入し、渦状の流れにより混合する機構が設置された追加ガス状物質の導入部の断面模式図。 本発明で使用する反応器の模式図で、当該反応器の空間部に第1反応帯出口ガスと追加ガス状物質とを効率よく混合するための機構として、第1反応帯と第2反応帯との間の空間部に括れを持たせ、そこでガス状物質を追加し、その下に設けた分散板を取り付けることで混合する機構が設置された形態の接触気相酸化反応器の模式図である。
符号の説明
1 反応管
2 上管板
3 中管板
4 下管板
5 熱媒分散板(邪魔板)
6 空間部に充填した不活性物質
7 ガス温調節部に充填した不活性物質
8 ガス噴出口

Claims (5)

  1. 接触気相酸化反応に用いられる固定床多管式反応器であって、1つの反応器内に、2つの区画された反応帯(第1反応帯、第2反応帯)、当該2つの反応帯の間に外部からガス状物質を導入する機構を備えた空間部を有する接触気相酸化用反応器。
  2. 前記空間部に、第1反応帯出口ガスと追加ガス状物質とを混合する機構を備える請求項1に記載の接触気相酸化用反応器。
  3. 前記空間部に、反応ガスに対して実質的に不活性な物質が充填されてなる請求項1または2に記載の接触気相酸化用反応器。
  4. 第2反応帯と空間部との間にガス温調節部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の接触気相酸化用反応器。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の接触気相酸化用反応器を用いることを特徴とするプロピレンの接触気相酸化によるアクリル酸の製造方法。
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