JP2008039044A - 動力伝達チェーン、動力伝達チェーンの動力伝達部材を製造する方法および動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1のピン3の端面17は、チェーン幅方向Wに沿ってみたときに卵形形状をなす凸湾曲面21を含んでいる。凸湾曲面21は、第1の端部22と、第2の端部23と、チェーン進行方向Xに関する最大幅部24とを有している。凸湾曲面21をチェーン幅方向Wに沿ってみたときに、直交方向Vに関して、最大幅部24の中心241と第1の端部22との距離L1が相対的に遠く、最大幅部24の中心241と第2の端部23との距離L2が相対的に近い。凸湾曲面21の表面積を広くできる。
【選択図】図5
Description
本発明によれば、凸湾曲面の表面積を十分に大きくできる。凸湾曲面とプーリのシーブ面との接触面積を十分に確保でき、凸湾曲面内でプーリのシーブ面からの負荷を受け止めることができる。動力伝達部材の端面のエッジ(縁部)までシーブ面が接触することを防止して、エッジ当たりを防止でき、動力伝達部材の端面の磨耗の進行を格段に低減できる。
また、本発明において、所定の基準軸線(M)を含む任意の平面(K)と上記凸湾曲面(21)との交線(K1)は、上記任意の平面(K)において単一の曲率半径(Rg)を有する円弧状をなし、上記所定の基準軸線(M)は、第1の端部(22)に近接して連結部材(50)の外に配置されチェーン幅方向(W)に沿って延びている場合がある(請求項3)。凸湾曲面の交線をこのような形状にすることで、動力伝達部材の端面に凸湾曲面を形成することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
また、可動シーブ63には、溝幅を変更するための油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、入力軸61の軸方向(図2の左右方向)に可動シーブ63を移動させることにより、溝幅を変化させるようになっている。それにより、入力軸61の径方向(図2の上下方向)にチェーン1を移動させて、プーリ60のチェーン1に関する有効半径を変更できるようになっている。
各シーブ面73a,72aは、ドリブンプーリ70の中心軸線A2に直交する平面B2に対して傾斜しており、各シーブ面73a,72aの母線と上記平面B2とのなす角(プーリ半角C2)は、例えば、11°に設定されている。ドライブプーリ60のプーリ半角C1とドリブンプーリ70のプーリ半角C2とは等しい(C1=C2)。
図3は、チェーン1の要部の断面図である。図4は、図3のIV−IV線に沿う要部の断面図である。
以下では、チェーン1の進行方向に平行な方向をチェーン進行方向Xといい、チェーン進行方向Xに直交する方向のうち連結部材50の長手方向に平行な方向をチェーン幅方向Wといい、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方に直交する方向を直交方向Vという。
上記対をなす第1および第2のピン3,4は、対応するリンク2間の屈曲に伴い、互いに転がり摺動接触するようになっている。転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触状態をいう。
第1のピン3の周面11は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面に形成されており、チェーン進行方向Xの前方を向く対向部としての前部12と、チェーン進行方向Xの後方を向く後部13と、直交方向Vに相対向する一対の端部としての一端部14および他端部15とを有している。
第1のピン3の長手方向の一対の端部16は、各リンク2のうちチェーン幅方向Wの一対の端部に配置されるリンク2a,2bに対して、チェーン幅方向Wの外側にそれぞれ突出している。これら一対の端部16に、端面17がそれぞれ設けられている。
第1のピン3は、上記対応するシーブ面62a,63a,72a,73a間に挟持され、これにより、第1のピン3と各プーリ60,70との間で動力が伝達される。第1のピン3は、その端面17が直接動力伝達に寄与するため、例えば、軸受用鋼(SUJ2)等の高強度耐摩耗材料で形成されている。
第2のピン4は、その一対の端部が上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されており、対をなす第1のピン3に対して、チェーン進行方向Xの前方に配置されている。
チェーン1は、いわゆる圧入タイプのチェーンとされている。具体的には、各リンク2の前貫通孔9には、対応する第1のピン3が遊嵌されているとともに、対応する第2のピン4が圧入固定され、各リンク2の後貫通孔10には、対応する第1のピン3が圧入固定されているとともに、対応する第2のピン4が遊嵌されている。
また、チェーン1は、いわゆるインボリュートタイプのチェーンとされている。具体的には、第1のピン3の前部12に曲面部20が設けられている。曲面部20のうち直交方向Vの他方V2側の端部は、所定の起部F(チェーン幅方向Wからみて、所定の起点)とされている。
チェーン幅方向Wからみて、曲面部20は、所定の起部F(起点)をもつインボリュート曲線とされている。このインボリュート曲線は、基礎円Gに基づいている。基礎円Gは、中心G1、半径G2(基礎円半径、例えば、100mm)を有する円である。
上記の構成により、チェーン幅方向Wからみて、対応するリンク2間の屈曲に伴う接触部Tの移動軌跡は、第1のピン3を基準としてインボリュート曲線となる。
図2および図5(A)を参照して、本実施の形態の特徴の1つは、第1のピン3の端面17に凸湾曲面21が形成されており、この凸湾曲面21が、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aにそれぞれ接触する接触領域とされている点にある。
第1の端部22および第2の端部23は、それぞれ、最大幅部24の中心241を含む平面Kと交差しており、チェーン幅方向Wに沿ってみたとき、第1の端部22、最大幅部24および第2の端部23が一直線上に並んでいる。平面Kは、後部13と平行である。チェーン幅方向Wに沿ってみたとき、直交方向Vに関して、最大幅部24の中心241と第1の端部22とは、相対的に遠い距離L1を隔てており、最大幅部24の中心241と第2の端部23とは、相対的に近い距離L2を隔てている。
図5(A)および図5(B)を参照して、基準軸線Mを含む任意の平面Kと端面17との交線K1は、この平面Kにおいて単一の曲率半径Rg(例えば、180mmm)を有する円弧状をなしている。なお、図5(B)では、一例として、第1および第2の端部22,23を通る平面Kと凸湾曲面21との交線K1を図示している。
上記交線N1の曲率半径Pは、当該交線N1を構成する円筒面Nが一端部14から中心241側に移動するにしたがい大きくなる。また、交線N1の曲率半径Pは、当該交線N1を構成する円弧面Nが中心241から他端部15側に移動するにしたがい小さくなる。チェーン進行方向Xに平行な平面と端面17との交線(図示せず)は、この平面において曲率半径が一定ではない。
第1種ピン3aと第2種ピン3bの共通の構成については、上記第1のピン3で説明した通りであり、以下では、主に第1種ピン3aと第2種ピン3bとの相違点について説明する。
チェーン幅方向Wに沿ってみたとき、第1種ピン3aの凸湾曲面21aは、第2種ピン3bの凸湾曲面21bよりも直交方向Vに細長い形状とされている。第1種ピン3aの一端部14aと対応する基準軸線Maとの直交方向Vに関する距離Raは、第2種ピン3bの一端部14bと対応する基準軸線Mbとの直交方向Vに関する距離Rbよりも短く(Ra<Rb)されている。
図5(A)および図5(C)を参照して、第1種ピン3aの最大幅部24aの中心241aを通る円弧面Naと端面17aとの交線N1aの曲率半径Paは、図6(A)および図6(C)に示す、第2種ピン3bの最大幅部24bの中心241bを通る円弧面Nbと端面17bとの交線N1bの曲率半径Pbよりも小さくされている(Pa<Pb)。
具体的には、第1種ピン3aの前部12aの曲面部20aの断面形状と、第2種ピン3bの前部12bの曲面部20bの断面形状とが相異なっている。第1種ピン3aの曲面部20aの断面のインボリュート曲線の基礎円Gaの半径G2aは、例えば、40mmで相対的に小さくされており、第2種ピン3bの曲面部20bの断面のインボリュート曲線の基礎円Gbの半径G2bは、例えば、54mmで相対的に大きくされている。
前述したように、第1および第2種ピン3a,3bは、チェーン進行方向Xにランダムに配列されており、各第1のピン3が各プーリに対して順次に接触するときの接触周期がランダム化されている。
例えば、第1種ピン3aを「a」、第2種ピン3bを「b」として表したときに、チェーン進行方向Xに沿って、これらのピン3a,3bが、「a,b,b,a,b,b,b,a,b,b,b,b,b,a,b,b,b,b,b,b,b」(個別の「」は省略)という順番で配列されている。
図7(A)は、第1のピンの端面を研削して形成するための研削装置30の要部の側面図であり、図7(B)は、図7(A)のVIIB−VIIB線に沿う断面図である。図7(A)および図7(B)を参照して、研削装置30は、第1のピンの製造中間体31を保持するためのキャリア32と、キャリア32に保持された製造中間体31の一対の端面33,33を同時に研削するための砥石34とを備えている。製造中間体31は、細長い棒状とされている。
各保持部35は、製造中間体31を保持する保持面36と、保持面36と協働して製造中間体31を弾性的に挟持する弾性部材製の押さえ部材37とを有している。保持部35に保持された製造中間体31の一対の端面33,33は、それぞれ、キャリア32から軸方向に突出している。
各砥面39の曲率半径は、前述の曲率半径Rgと同じ曲率半径Rgにされている。中心軸線34aに直交する平面Sと、砥面39の母線とは、プーリ半角C1と同じ角度C1をなしている。砥石34の砥面39の回転半径は、適宜設定される。
この距離Rは、10mm以下にあることが好ましい。距離Rが10mmを超えると、ピン頂点部付近の曲率半径が50mmより大きくなって、エッジ当たりの可能性が大きくなるからである。なお、距離Rは、5mm以下であることがより好ましい。距離Rが5mm以下であれば、卵形形状をより明確な形状として形成できるからである。
以上説明したように、本実施の形態によれば以下の作用効果を奏することができる。すなわち、第1のピン3に卵形形状の凸湾曲面21を設けることにより、凸湾曲面21の表面積を十分に大きくできる。凸湾曲面21と対応するシーブ面62a,63a,72a,73aとの接触面積を十分に確保でき、凸湾曲面21内でシーブ面62a,63a,72a,73aからの負荷を受け止めることができる。
この磨耗低減効果は、チェーン進行方向Xに薄肉に形成された第1種ピン3aにおいて顕著に発揮される。また、第1のピン3の端面17に作用する面圧が少なくて負荷が低く、許容伝達トルクを高くできるとともに耐久性を向上できる。
なお、公知の構成、すなわち、第1のピンの端面にクラウニング加工を施した公知の構成では、クラウニング加工が施されている箇所とそうでない箇所との境界が、曲率半径が比較的大きく変化する変曲部となり、この変曲部がシーブ面と角当たりするおそれがあるが、本実施の形態の第1のピン3は、そのようなおそれがない。
さらに、第1のピン3の端面17において、基準軸線Mを含む任意の平面Kと凸湾曲面21との交線K1を、単一の曲率半径Rgを有する円弧状にするという構成で、第1のピン3の端面17に凸湾曲面21を形成することができる。
これにより、各第1のピン3がプーリ60,70に順次に噛み込まれるときの噛み合いの周期をランダムにして、この噛み合い音の周波数を広範囲に分布してピーク値を低くでき、チェーン1の駆動に伴う騒音を格段に低減することができる。
さらに、第1のピンの製造中間体31を一対の砥面39間に通過させるという簡易な方法で、第1のピン3の一対の端面17に凸湾曲面21を同時に形成でき、第1のピン3の全長のばらつきを少なくできる。
このようにして、第1のピン3の端面17の磨耗およびシーブ面62a,63a,72a,73aの磨耗が抑制されて耐久性に優れ、高トルクを伝達できるとともに静粛性に優れた無段変速機100を実現できる。
また、チェーン幅方向Wからみた、第1のピン3の曲面部20は、インボリュート曲線以外の曲線(例えば、単一または複数の曲率半径を有する曲線)をなしていてもよい。さらに、第1のピンの一対の端部のそれぞれの近傍に、当該第1のピンの端面と同様の動力伝達部を有する部材が配置された、いわゆるブロックタイプの動力伝達チェーンに本発明を適用してもよい。
Claims (6)
- チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、
チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び、複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材とを備え、
上記連結部材は、プーリのシーブ面に動力伝達可能に係合する端面を有する動力伝達部材を含み、
上記端面は、チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方に直交する直交方向に関する第1および第2の端部を有する凸湾曲面を含み、
上記凸湾曲面は、当該凸湾曲面をチェーン幅方向に沿ってみたときに、チェーン進行方向に関する凸湾曲面の最大幅部と第1の端部とが相対的に遠く、最大幅部と第2の端部とが相対的に近い卵形形状をなしていることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1において、上記第1の端部は、プーリ径方向の外方に相当する端部であることを特徴とする動力伝達チェーン。
- 請求項2において、所定の基準軸線を含む任意の平面と上記凸湾曲面との交線は、上記任意の平面において単一の曲率半径を有する円弧状をなし、
上記所定の基準軸線は、第1の端部に近接して連結部材の外に配置されチェーン幅方向に沿って延びていることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1,2または3において、上記動力伝達部材と対をなす対偶部材を備え、これら動力伝達部材と対偶部材とはリンク同士の屈曲に伴い移動する接触部で互いに転がり摺動接触し、
上記動力伝達部材はチェーン進行方向にランダムに配列された複数種類の部材を含み、
複数種類の部材は、チェーン進行方向に関して相対的に薄肉の第1の部材と、チェーン進行方向に関して相対的に厚肉の第2の部材とを有し、
接触部の移動軌跡が、複数の種類の部材間で相異なるようにされていることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の動力伝達チェーンの動力伝達部材を製造する方法において、
棒状をなす動力伝達部材の製造中間体の一対の端面のそれぞれを同時に研削するための一対の砥面を有する砥石を回転させるとともに、上記製造中間体を上記砥石の回転軸線と平行に保持するキャリアを砥石の回転軸線と平行な回転軸線回りに回転させ、
製造中間体の一対の端面を上記一対の砥面間に通過させることを特徴とする動力伝達チェーンの動力伝達部材を製造する方法。 - 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する請求項1〜4の何れか1項に記載の動力伝達チェーンとを備えていることを特徴とする動力伝達装置。
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