JP4910982B2 - 動力伝達チェーンの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、動力伝達チェーンの製造方法、さらに詳しくは、自動車等の車両の無段変速機(CVT)に好適な動力伝達チェーンを製造する際に用いられる製造方法に関する。
自動車用無段変速機として、図6に示すように、固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)を有しエンジン側に設けられたドライブプーリ(2)と、固定シーブ(3b)および可動シーブ(3a)を有し駆動輪側に設けられたドリブンプーリ(3)と、両者間に架け渡された無端状動力伝達チェーン(1)とからなり、油圧アクチュエータによって可動シーブ(2b)(3a)を固定シーブ(2a)(3b)に対して接近・離隔させることにより、油圧でチェーン(1)をクランプし、このクランプ力によりプーリ(2)(3)とチェーン(1)との間に接触荷重を生じさせ、この接触部の摩擦力によりトルクを伝達するもの(チェーン式無段変速機)が知られている。
動力伝達チェーンとしては、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられた第1ピンと一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定された第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされているものが知られており、特許文献1には、その製造方法において、リンクとピンとを組み合わせて無端状チェーンを形成する工程と、1対のプーリ間に無端状チェーンを巻き掛けてチェーンに予張力を付与する工程とを備えているものが提案されている。
特開2007−167931号公報
予張力の付与に際しては、実際の無段変速機で使用される条件よりも厳しい条件とすることが好ましく、特許文献1の製造方法によると、予張力付与時の巻き掛け径が無段変速で得られる巻き掛け径以下の大きさを含むようになされていることで、この条件を得ており、この結果、ピン同士の転がり接触する範囲が広くなり、リンクに掛かる負荷を適切なものとすることができる。
しかしながら、特許文献1のものでは、回転方向は順方向(車両の前進方向)のみとされているので、逆方向回転でも使用される車両の無段変速機用としての使用条件を網羅しているものではなかった。また、実際の使用条件下では、トルクの逆負荷によるチェーンの逆反り(リンクがプーリに沿う方向の屈曲とは逆の方向に屈曲)することがあるが、これも考慮されていなかった。なお、予張力付与装置として、実際の無段変速機(実機)に類似した構成のものを使用してかつ厳しい条件とするためには、装置の構成が複雑となってコストが高く付くという問題がある。
この発明の目的は、実機に類似した構成の予張力付与装置よりも簡単な構成の装置を使用して、車両の無段変速機として使用されるのにより適正な予張力を付与することができる動力伝達チェーンの製造方法を提供することにある。
この発明による動力伝達チェーンの製造方法は、複数のリンクおよびこれらを連結する複数のピンからなり、無段変速機の1対のプーリ間に巻き掛けられる動力伝達チェーンを製造する方法であって、リンクとピンとを組み合わせて無端状チェーンを形成する工程と、無端状チェーンに予張力を付与する工程とを備えているものにおいて、予張力付与工程は、軸心間距離が変更可能で無端状チェーンが巻き掛けられかつ順方向および逆方向に回転可能な1対のプーリとチェーンの外周を押圧可能な押圧ローラとを有する予張力付与装置を使用し、押圧ローラを離隔させた状態でプーリを順方向に回転させて軸心間距離を大きくする順方向応力付与工程と、プーリを順方向に回転させたままで押圧ローラによってチェーンの外周を押圧する順方向逆屈曲工程と、押圧ローラを離隔させてからプーリを逆方向に回転させる逆方向応力付与工程と、プーリを逆方向に回転させたままで押圧ローラによってチェーンの外周を押圧する逆方向逆屈曲工程とからなるものであることを特徴とするものである。
予張力付与装置は、例えば、軸心間距離が変更可能で無端状チェーンが巻き掛けられる1対のプーリと、プーリを順方向および逆方向に回転させるプーリ駆動手段と、チェーンに所定の張力が付与されるように軸心間距離を変更するプーリ移動手段と、1対のプーリ同士の中間に配置されかつプーリの軸心間をつなぐ線に対して直角の方向に移動可能な押圧ローラと、押圧ローラを回転させる押圧ローラ駆動手段と、チェーンの外周の所定箇所をチェーン径方向内方に押圧するように押圧ローラを移動させる押圧ローラ移動手段とを備えているものとされる。
プーリ径は、特に限定されるものではなく、1対のプーリの径が同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、1対のプーリの径が同じであり、その大きさが無段変速機で得られる最小巻き掛け径と同じか小さいものとされる。
無段変速機では、低速走行時に対応する変速比が最大のアンダー・ドライブ(以下、「U/D」と称す。)と、高速走行時に対応する変速比が最小のオーバー・ドライブ(以下、「O/D」と称す。)との間で変速比が変化する。ピンの動きしたがってリンクの負荷は、巻き掛け径が大きいプーリに沿って回るときよりも巻き掛け径が小さいプーリに沿って回るときに大きなものとなる。
従来の予張力付与は、上記無段変速機のモードに着目して、最小巻き掛け半径および順方向回転で使用条件の最大張力以上の負荷を掛けるものとされていた。しかしながら、動力伝達チェーンは、実車では、逆方向回転でも使用され、かつ、リンクがプーリに沿う方向の屈曲とは逆の方向に屈曲する逆屈曲が発生することがあるため、そのモードでの寿命の低下が想定される。そこで、予張力付与工程において、順方向回転時の通常屈曲条件だけでなく、順方向回転時の逆屈曲、逆方向回転の通常屈曲および逆方向回転の逆屈曲条件においても張力を付与することにより、リンクに広い範囲(実際に使用される条件よりも全ての点で厳しい条件)にわたって応力が付与され、寿命を安定させることができ、耐久性を向上させることができる。また、予張力付与装置は、実機に比べて簡単な構造とすることができ、しかも、短時間での予張力付与が可能となる。
予張力は、リンクに発生する最大主応力がリンクの弾性限界応力以上となる大きさとされる。このようにすることで、予張力によって、リンクが塑性変形し、リンク内部に適正な残留圧縮応力が付与され、疲労耐久性能が向上する。予張力は、プーリの軸心間距離を所定の範囲で変更することで発生させることができ、プーリ軸心間距離の変更範囲は、初期値の0.1%〜15%、好ましくは、0.1%〜10%の範囲とされる。
上記の製造方法は、種々の無段変速機用動力伝達チェーンを製造するのに適しているが、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を連結する前後に並ぶ複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、第1ピンと第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされており、第1ピンおよび第2ピンのうちの一方は、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられ、同他方は、一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定されているものである動力伝達チェーンを製造するのにより適している。
この動力伝達チェーンでは、第1ピンおよび第2ピンの少なくとも一方がプーリと接触して摩擦力により動力伝達する。いずれか一方のピンがプーリと接触するチェーンにおいては、第1ピンおよび第2ピンのうちのいずれか一方は、このチェーンが無段変速機で使用される際にプーリに接触する方のピン(以下では、「第1ピン」または「ピン」と称す)とされ、他方は、プーリに接触しない方のピン(インターピースまたはストリップと称されており、以下では、「第2ピン」または「インターピース」と称す)とされる。
リンクは、例えば、ばね鋼や炭素工具鋼製とされる。リンクの材質は、ばね鋼や炭素工具鋼に限られるものではなく、軸受鋼などの他の鋼でももちろんよい。リンクは、前後挿通部がそれぞれ独立の貫通孔(柱有りリンク)とされていてもよく、前後挿通部が1つの貫通孔(柱無しリンク)とされていてもよい。ピンの材質としては、軸受鋼などの適宜な鋼が使用される。
ピンが前後挿通部に固定される場合の前後挿通部へのピンの固定は、例えば、機械的圧入による挿通部内縁とピン外周面との嵌合固定とされるが、これに代えて、焼き嵌めまたは冷やし嵌めによってもよい。1つの挿通部には、第1ピンと第2ピンとがチェーンの長さ方向に対向するように嵌め合わせられ、このうちのいずれか一方がリンクの挿通部の周面に嵌合固定される。嵌合固定は、挿通部の長さ方向に対して直交する部分の縁(上下の縁)で行われるのが好ましい。この嵌合固定の後、上記の予張力付与工程において予張力が付与されることにより、リンクのピン固定部(ピン圧入部)に均等にかつ適正な残留圧縮応力が高精度に付与される。
この発明の動力伝達チェーンの製造方法によると、従来、予張時に考慮されていなかった順方向回転時の逆屈曲、逆方向回転の通常屈曲および逆方向回転の逆屈曲条件において、張力を付与することにより、車両の無段変速機として使用されるのにより適正な予張力を付与することができ、チェーンの寿命が安定し、耐久性が向上する。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、上下は、図2の上下をいうものとする。
図1は、この発明による方法で製造される動力伝達チェーンの一部を示しており、動力伝達チェーン(1)は、チェーン長さ方向に所定間隔をおいて設けられた前後挿通部(12)(13)を有する複数のリンク(11)と、チェーン幅方向に並ぶリンク(11)同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数のピン(第1ピン)(14)およびインターピース(第2ピン)(15)とを備えている。インターピース(15)は、ピン(14)よりも短くなされ、両者は、インターピース(15)が前側に、ピン(14)が後側に配置された状態で対向させられている。
チェーン(1)は、幅方向同位相の複数のリンクで構成されるリンク列を進行方向(前後方向)に3つ並べて1つのリンクユニットとし、この3列のリンク列からなるリンクユニットを進行方向に複数連結して形成されている。この実施形態では、リンク枚数が9枚のリンク列とリンク枚数が8枚のリンク列2つとが1つのリンクユニットとされている。
図2に示すように、リンク(11)の前挿通部(12)は、ピン(14)が移動可能に嵌め合わせられるピン可動部(16)およびインターピース(15)が固定されるインターピース固定部(17)からなり、後挿通部(13)は、ピン(14)が固定されるピン固定部(18)およびインターピース(15)が移動可能に嵌め合わせられるインターピース可動部(19)からなる。
各ピン(14)は、インターピース(15)に比べて前後方向の幅が広くなされており、インターピース(15)の上下縁部には、各ピン(14)側にのびる突出縁部(15a)(15b)が設けられている。
図2において、符号AおよびBで示す箇所は、チェーン(1)の直線部分においてピン(14)とインターピース(15)とが接触している線(断面では点)であり、AB間の距離がピッチである。
チェーン幅方向に並ぶリンク(11)を連結するに際しては、一のリンク(11)の前挿通部(12)と他のリンク(11)の後挿通部(13)とが対応するようにリンク(11)同士が重ねられ、ピン(14)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に固定されかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に移動可能に嵌め合わせられ、インターピース(15)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に移動可能に嵌め合わせられかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に固定される。そして、このピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動することにより、リンク(11)同士の長さ方向(前後方向)の屈曲が可能とされる。
リンク(11)のピン固定部(18)とインターピース可動部(19)との境界部分には、インターピース可動部(19)の上下の凹円弧状案内部(19a)(19b)にそれぞれ連なりピン固定部(18)に固定されているピン(14)を保持する上下の凸円弧状保持部(18a)(18b)が設けられている。同様に、インターピース固定部(17)とピン可動部(16)との境界部分には、ピン可動部(16)の上下の凹円弧状案内部(16a)(16b)にそれぞれ連なりインターピース固定部(17)に固定されているインターピース(15)を保持する上下の凸円弧状保持部(17a)(17b)が設けられている。
ピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡は、円のインボリュートとされており、この実施形態では、ピン(14)の転がり接触面(14a)が、断面において半径Rb、中心Mの基礎円を持つインボリュート形状を有し、インターピース(15)の転がり接触面(15c)が平坦面(断面形状が直線)とされている。これにより、各リンク(11)がチェーン(1)の直線部分から曲線部分へまたは曲線部分から直線部分へと移行する際、前挿通部(12)においては、ピン(14)が固定状態のインターピース(15)に対してその転がり接触面(14a)がインターピース(15)の転がり接触面(15c)に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながらピン可動部(16)内を移動し、後挿通部(13)においては、インターピース(15)がインターピース可動部(19)内を固定状態のピン(14)に対してその転がり接触面(15c)がピン(14)の転がり接触面(14a)に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながら移動する。
上記の動力伝達チェーン(1)では、ピンの上下移動の繰り返しにより、多角形振動が生じ、これが騒音の要因となるが、ピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動しかつピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡が円のインボリュートとされていることにより、ピンおよびインターピースの転がり接触面がともに円弧面である場合などと比べて、振動を小さくすることができ、騒音を低減することができる。
上記の動力伝達チェーンは、図6に示したCVTで使用されるが、この際、図5に示すように、プーリ軸(2e)を有するプーリ(2)の固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)の各円錐状シーブ面(2c)(2d)にインターピース(15)の端面が接触しない状態で、ピン(14)の端面がプーリ(2)の円錐状シーブ面(2c)(2d)に接触し、この接触による摩擦力により動力が伝達される。ピン(14)とインターピース(15)とは、上述のように、各可動部(16)(19)に案内されて転がり接触移動するので、プーリ(2)のシーブ面(2c)(2d)に対してピン(14)はほとんど回転しないことになり、摩擦損失が低減し、高い動力伝達率が確保される。そして、実線で示した位置にあるドライブプーリ(2)の可動シーブ(2b)を固定シーブ(2a)に対して接近・離隔させると、チェーン(1)の巻き掛け径は、同図に鎖線で示すように、接近時には大きく、離隔時には小さくなる。ドリブンプーリ(3)では、図示省略するが、その可動シーブがドライブプーリ(2)の可動シーブ(2b)とは逆向きに移動し、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が大きくなると、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が小さくなり、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が小さくなると、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が大きくなる。この結果、変速比が1:1である状態(初期値)を基準にして、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が最小で、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が最大であるU/D状態が得られ、また、ドライブプーリ(2)の巻き掛け径が最大で、ドリブンプーリ(3)の巻き掛け径が最小のO/D状態が得られる。
この動力伝達チェーン(1)を製造するには、必要な数のピン(14)およびインターピース(15)を台上に垂直状に保持した後、リンク(11)を1つずつあるいは数枚まとめて圧入することでリンク(11)とピン(14)(15)とを組み合わせて無端状のチェーンを形成した後、さらに、組み立てられたチェーン(1)に予張力が付与される。
圧入は、ピン(14)およびインターピース(15)の上下縁部とピン固定部(12a)およびインターピース固定部(13b)の上下縁部との間において行われており、その圧入代は0.005mm〜0.1mmとされている。
予張力を付与する工程で使用される予張力付与装置を図3および図4に示す。
予張力付与装置(31)は、軸心間距離が変更可能で無端状チェーン(1)が巻き掛けられる駆動プーリ(32)および従動プーリ(33)と、駆動プーリ(32)の軸(32a)を順方向および逆方向に回転させるプーリ駆動手段(34)と、チェーン(1)に所定の張力が付与されるように駆動プーリ(32)の軸(32a)と従動プーリ(33)の軸(33a)との軸心間距離を変更するプーリ移動手段(35)と、駆動プーリ(32)と従動プーリ(33)との中間に配置されかつプーリ(32)(33)の軸心間をつなぐ線に対して直角の方向に移動可能な押圧ローラ(36)と、押圧ローラ(36)の軸(36a)を回転させる押圧ローラ駆動手段(37)と、チェーン(1)の外周の所定箇所をチェーン径方向内方に押圧するように押圧ローラ(36)を移動させる押圧ローラ移動手段(図示略)とを備えている。
駆動プーリ(32)および従動プーリ(33)の径は、U/D状態のドライブプーリの巻き掛け径と同じ(O/D状態のドリブンプーリの巻き掛け径とも同じ)であり、ピン(14)およびインターピース(15)の動きが大きく、チェーン(1)にとって厳しい条件となっている。
予張力付与工程は、上記予張力付与装置(31)を使用して行われ、図3(a)に示すように、押圧ローラ(36)をチェーン(1)から離隔させた状態で、プーリ(32)(33)を順方向(時計方向)に回転させるとともに、軸心間距離を大きくして通常屈曲条件下で応力を付与する順方向応力付与工程と、プーリ(32)(33)を順方向に回転させたままで、図3(b)に示すように、押圧ローラ(36)によってチェーン(1)の外周を押圧してリンク(11)を逆屈曲させる順方向逆屈曲工程と、押圧ローラ(36)を離隔させてからプーリ(32)(33)を逆方向に回転させ(図3(a)の状態でプーリ(32)(33)の回転方向が反時計方向)通常屈曲条件下で応力を付与する逆方向応力付与工程と、プーリ(32)(33)を逆方向に回転させたままで押圧ローラ(36)によってチェーン(1)の外周を押圧(図3(b)の状態でプーリ(32)(33)の回転方向が反時計方向)する逆方向逆屈曲工程とからなる。
上記予張力付与工程によると、順方向応力付与工程だけでなく、順方向逆屈曲工程、逆方向応力付与工程および逆方向逆屈曲工程においても、予張力が付与されることにより、想定される全ての条件下で、ピン(14)とインターピース(15)との転がり接触点が移動し、リンク(11)に均一に負荷が加えられる。張力の大きさは、リンク(11)内部(特にピン固定部(12a)およびインターピース固定部(13b)における圧入部)に発生する最大主応力値がリンク(11)の弾性限界以上でかつ塑性限界以下となるように設定される。これにより、実際に使用される条件よりも全ての点で厳しい条件にわたって応力を付与することができ、リンク(11)内部に適正な残留圧縮応力が付与され、リンク(11)の寿命が安定し、チェーン(1)の耐久性が向上する。
なお、上記予張力付与工程は、図1および図2に示した圧入型チェーン(1)において耐久性向上効果が著しいものとなるが、第1ピンおよび第2ピンの長さが略等しく、両方ともがシーブ面に接触するチェーンにも適用することができ、さらに、第1ピンおよび第2ピンの両方が前後挿通部に対し移動可能に嵌め入れられるチェーンやその他各種タイプの動力伝達チェーンに適用可能である。
図1は、この発明による動力伝達チェーンの製造方法で製造される動力伝達チェーンの1実施形態の一部を示す平面図である。 図2は、リンクの拡大側面図である。 図3は、予張力付与装置を模式的に示す側面図である。 図4は、同一部を切り欠いた平面図である。 図5は、動力伝達チェーンがプーリに取り付けられた状態を示す正面図である。 図6は、無段変速機を示す斜視図である。
符号の説明
(1) 動力伝達チェーン
(2)(3) プーリ
(2a)(3b) 固定シーブ
(2b)(3a) 可動シーブ
(2c)(2d) 円錐状シーブ面
(11) リンク
(12) 前挿通部
(13) 後挿通部
(14) ピン(第1ピン)
(15) インターピース(第2ピン)
(32) 駆動プーリ
(33) 従動プーリ
(36) 押圧ローラ

Claims (1)

  1. 複数のリンクおよびこれらを連結する複数のピンからなり、無段変速機の1対のプーリ間に巻き掛けられる動力伝達チェーンを製造する方法であって、リンクとピンとを組み合わせて無端状チェーンを形成する工程と、無端状チェーンに予張力を付与する工程とを備えているものにおいて、
    予張力付与工程は、軸心間距離が変更可能で無端状チェーンが巻き掛けられかつ順方向および逆方向に回転可能な1対のプーリとチェーンの外周を押圧可能な押圧ローラとを有する予張力付与装置を使用し、押圧ローラを離隔させた状態でプーリを順方向に回転させて軸心間距離を大きくする順方向応力付与工程と、プーリを順方向に回転させたままで押圧ローラによってチェーンの外周を押圧する順方向逆屈曲工程と、押圧ローラを離隔させてからプーリを逆方向に回転させる逆方向応力付与工程と、プーリを逆方向に回転させたままで押圧ローラによってチェーンの外周を押圧する逆方向逆屈曲工程とからなるものであることを特徴とする動力伝達チェーンの製造方法。
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