JP2008031023A - ジルコニアゾル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
経時安定性に優れ、かつ、反射防止膜をはじめとする光学用フィルム等の用途において好適に用いることが出来る、正方晶及び/又は立方晶系の結晶格子構造を有するジルコニアゾル及びその安価で簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】
分散質であるジルコニア(ZrO2)中にアルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)を、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上含有することを特徴とするジルコニアゾル、好ましくは、該ジルコニアゾルが正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造である。
【選択図】なし
Description
チタニア、ジルコニアは高屈折率材料として用いられるが、チタニアは光触媒活性が大きいために、チタニア単独で使用することは難しく、何らかの表面処理を必要とする。
一方、ジルコニアは光触媒活性に乏しく、好適に用いることができる。
又、ジルコニアゾルを光学フィルム等に用いる為には、高屈折率以外にも、透明性に優れる必要があり、分散性に優れたジルコニアゾルが必要となる。これらの光学フィルム以外の材料としても、微粒子かつ分散性に優れたジルコニアゾルは、触媒、電子材料をはじめとする機能性材料においても、高い比表面積かつ超微粒子を利用することで、反応活性に優れ、均一性にすぐれたものになる。
ところで、公知のジルコニアゾルは、非晶質又は単斜晶系のものであり、各種用途に対応するため、現在、正方晶及び/又は立方晶系のジルコニアゾルが待望されている。
しかしながら、特許文献1に記載される「正方または立方型の結晶格子を持つジルコニア系固溶体単結晶超微粒子の分散したゾル」とは、いわゆる、ジルコニアの安定化剤である「イットリア、スカンジウム、希土類元素の少なくとも1種」を含むジルコニア系のゾルであり、正方または立方型の結晶格子を持つ純粋なジルコニアゾルではない。
しかしながら、ジルコニアの安定化剤を含まないものの「70%以上の組合せ型立方晶及び正方晶系結晶格子構造」を持つものであり、具体的には、10〜30%の単斜晶系のジルコニアゾルを含むものである。
又、その製造方法は、ポリエーテル酸ジルコニウム塩を経由する為、反応が複雑となるほか、高温(140〜250℃)・高圧(1〜30バール)下での反応が必要となるため、特殊な設備機器を必要とするという問題点もある。
すなわち、本発明は、
(1)分散質であるジルコニア(ZrO2)中にアルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)を、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上含有することを特徴とするジルコニアゾル。
(2)ジルコニアが正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造であることを特徴とする前記(1)記載のジルコニアゾル。
(3)平均粒子径が5〜30nmであることを特徴とする前記(1)又は前記(2)記載のジルコニアゾル。
(4)60℃以上に加熱したアルカリ金属水酸化物溶液にジルコニウム塩溶液を添加しジルコニウム水酸化物を生成させ、該ジルコニウム水酸化物を水に分散させた後、酸を添加し、加熱・熟成することを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
(5)酸添加量(酸/ZrO2モル比)が0.01〜3.0であることを特徴とする前記(4)記載のジルコニアゾルの製造方法。
(6)80℃以上で24時間以上加熱・熟成することを特徴とする前記(4)又は前記(5)記載のジルコニアゾルの製造方法。
を提供する。
特に、光学フィルム中のフィラーとして用いられる場合に、ジルコニアゾルの平均粒子径が30nm以下と微粒子であり、安定性に優れることから、反射防止膜をはじめとする光学用フィルム等の用途において、好適に用いることが出来る。
なお、本発明において、平均粒子径とは動的光散乱法で測定した粒子径分布の累積頻度が50体積%となる粒子径(D50)をいう。
本発明のジルコニアゾルは、分散質であるジルコニア(ZrO2)中にアルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)を、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上、好ましくは0.3×10−2以上、更に好ましくは0.5×10−2以上、特に好ましくは1.0×10−2以上含有することを特徴とする。
アルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)は、60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱したアルカリ金属水酸化物溶液にジルコニウム塩溶液を添加しジルコニウム水酸化物を生成させる(逆中和)段階で、水酸化ジルコニウムのZr4+の一部にM+(M:アルカリ金属)が置き換わることにより、最終的に分散質であるジルコニア(ZrO2)中に組み込まれているものと考えられる。従って、水洗及び酸洗等を行っても脱離することは殆どない。
アルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)は、分散質であるジルコニア(ZrO2)中に、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上、好ましくは0.3×10−2以上、更に好ましくは0.5×10−2以上、特に好ましくは1.0×10−2以上含有される。
0.2×10−2未満では、ジルコニアゾルが正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造のみとならず、単斜晶系結晶格子構造を持つものが含まれるので好ましくない。
なお、この上限については、ジルコニアゾルが正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造を持つ限りにおいて、特に限定されるものではないが、通常、5.0×10−2、好ましくは3.0×10−2、特に好ましくは2.0×10−2である。
平均粒子径が5nm未満では、ジルコニアゾルの精製及び濃縮が困難であり、30nmを超えるとジルコニアゾルの透明性が低下してしまう為に好ましくない。
又、D99が60nmを超えると、ジルコニアゾルの透明性が低下する共に、無機フィラーとしてジルコニアゾルを用いた際に、可視光域の波長より十分に小さくない為にフィルム化した場合に透明性を損なうため、好ましくない。
一方、本発明のジルコニアゾルの濃度は、特に限定されるものではないが、通常、ZrO2換算で10〜50%である。
10%未満では他の溶媒で希釈を行う場合ジルコニア濃度が低くなり、50%を超えると、ゾルの増粘に伴い安定性を損なうので、好ましくない。
最後に、本発明のジルコニアゾルの分散媒は、特に限定されるものでなく、例えば水及びメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、エーテル等の親水性有機溶媒であってもよく、これらの混合物でも良い。好ましくは、通常、水(純水又はイオン交換水、以下、同様)が用いられる。
なお、分散媒のpHは特に限定されるものではないが、通常、pH=7以下、好ましくはpH=1〜6である。pHが7を超えるとジルコニアの等電点に近くなる為に安定性に欠けるので、好ましくない。
以下、本発明のジルコニアゾルの製造方法について詳細に記載する。
本発明のジルコニアゾルの製造方法は、60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱したアルカリ金属水酸化物溶液にジルコニウム塩溶液を添加しジルコニウム水酸化物を生成させ、該ジルコニウム水酸化物を水に分散させた後、酸を添加し、加熱・熟成することを特徴とする。
先ず、本発明において用いるジルコニウム塩としては、水溶性のものであれば特に限定されず、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物等が例示されるが、後工程での不純物の混入が少ない、硝酸塩及び塩化物が好ましい。
ジルコニウム含有溶液中のZrO2濃度としては、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。5重量%未満では生産効率が悪く、50重量%を超えると中和した場合の粘度が高く、攪拌し難くなり、水酸化物の生成が不均一になり、かつ、濾過性が悪いため好ましくない。
中和剤のアルカリ金属水酸化物(M:Li、Na、K、Rb、Cs)は、MOH(100%換算)/ZrO2(モル比)=2以上であることが好ましい。2未満では、ジルコニウム塩の水溶液の中和が完結しない為に、適当でない。
上限は、特に限定されないが、通常、MOH(100%換算)/ZrO2(モル比)=2.2以上、好ましくは、2.5以上である。なお、5を超えると経済的ではない。
中和剤として用いるアルカリ金属水酸化物水溶液の濃度も特に限定されないが、通常5〜25重量%のものが用いられる。5重量%未満では、アルカリ金属を希釈する為に、大量の水を要する為に、経済的に好ましくない。また、25重量%を超えると、アルカリ金属の溶解度において、再結晶する恐れがあるために、均一なアルカリ金属の水酸化物溶液を得ることが難しいために、好ましくない。
すなわち、「ジルコニウム塩溶液中にアルカリ金属水酸化物溶液を添加する」のではなく、「アルカリ金属水酸化物溶液中にジルコニウム塩溶液を添加する」、いわゆる「逆中和」をすることが第一の特徴であり、更に、「60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱したアルカリ金属水酸化物溶液」を用いることが第二の特徴である。
この両方の条件を満たした時に、最終的に、「分散質であるジルコニア(ZrO2)中にアルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)を、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上、かつ、正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造であることを特徴とするジルコニアゾル」を製造することができる。
なお、アルカリ金属水酸化物水溶液の加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、特殊な反応容器等を使用する必要がないという理由から、できれば、100℃以下の温度が好ましい。
中和が完了した後、濾過を行う。その後、純水を用いて水洗をおこない、溶液中の不純物を除去することが好ましい。
このようにして製造した水酸化ジルコニウム含有ウエットケーキに水を加えて、ZrO2として5〜20重量%の溶液とすることが好ましい。5重量%未満では、生産効率上、経済的ではなく、20重量%を超えると、金属イオン濃度が高くなり、解膠が困難となる。
この水酸化ジルコニウム分散液を適当な時間攪拌することにより、均一とした後、解膠剤として酸を添加する。
解膠剤の添加量としては、酸/ZrO2(モル比)=0.01〜3、さらに好ましくは、0.1〜1.5である。酸/ZrO2(モル比)が、0.01未満では、ジルコニウム水酸化物の解膠が不十分となり、ジルコニアを製造することができない。又、酸/ZrO2(モル比)が、3を超えても量的効果は少なく、経済的ではない。
次に、水酸化ジルコニウムを解膠させるには、80℃以上、好ましくは90℃以上で24時間以上、好ましくは48時間以上加熱・熟成を行う。80℃未満では、水酸化ジルコニウムが解膠されずに沈殿物として残り、24時間未満でも、同様に水酸化物の沈殿物として残り、収率の点から好ましくない。
なお、反応の終了は、溶液が均一な薄い青色で透明になるので、目視で確認することができる。
又、過剰に添加された酸は限外濾過を用いて、容易に除去することが可能であり、ジルコニアの正方晶及び立方晶系結晶格子の安定化に寄与していると考えられるアルカリ金属においても、ジルコニア表面に吸着しているアルカリ金属は除去することが可能である。
一方、水酸化ナトリウム水溶液(100%NaOHとして、187.0g含有)747.9gへ純水を添加し、1400gとし、90℃に加温した。
そして、90℃に加温された水酸化ナトリウム水溶液にオキシ塩化ジルコニウム水溶液を添加し、その後、室温まで冷却を行った。この時の溶液のpHは、13.7であった。
この溶液を濾過し、5000gの純水で洗浄を行い、水酸化ジルコニム中の不純物を除去し、ウエットケーキ651.7gを得た。
このウエットケーキ538.8gをビーカーに入れ、純水を添加し、1000gとした。これを10分間攪拌し、水酸化ジルコニウムを均一に分散させた。その後、解膠剤として、61%硝酸を60.35g添加し、100℃に加温し、72時間攪拌・保持することにより、ジルコニアゾルを得た。得られた溶液は、透明な薄い青色であり、完全にジルコニアゾルになっていることが判った。
得られた、ジルコニアゾルの粒度分布(動的光散乱法)を図1に示す。
これより、粒径が10〜50nmで平均粒径(D50)が約17nmのジルコニアゾルが出来ていることがわかる。さらに、D99において、約44nmであることがわかる。
ジルコニアの一次粒子の形状を透過型電子顕微鏡(TEM)像を図3に示す。
図3より、ジルコニアの一次粒子が粒状であり、かつ分散性に優れた、ジルコニアゾルであることがわかる。
次に、ジルコニアゾルを50℃において乾燥させたジルコニアの粉末X線回折(XRD)の測定をおこなった。その結果を図2に示す。
XRDの測定結果より、正方晶及び立方晶系結晶格子構造を有するジルコニアであることがわかる。又、50℃に乾燥したジルコニア中のNa2O含有量を原子吸光法により測定した結果、ZrO2中のNa2Oは、0.50重量%であり、Na2O/ZrO2(モル比)=1.0×10−2であった。
なお、比較例2で得られたジルコニアの一次粒子の形状を透過型電子顕微鏡(TEM)像を図4に示す。これより、ジルコニアの一次粒子が針状であることが判る。
Claims (6)
- 分散質であるジルコニア(ZrO2)中にアルカリ金属酸化物(M2O、M:アルカリ金属)を、M2O/ZrO2モル比として、0.2×10−2以上含有することを特徴とするジルコニアゾル。
- ジルコニアが正方晶及び/又は立方晶系結晶格子構造であることを特徴とする請求項1記載のジルコニアゾル。
- 平均粒子径が5〜30nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のジルコニアゾル。
- 60℃以上に加熱したアルカリ金属水酸化物溶液にジルコニウム塩溶液を添加しジルコニウム水酸化物を生成させ、該ジルコニウム水酸化物を水に分散させた後、酸を添加し、加熱・熟成することを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
- 酸添加量(酸/ZrO2モル比)が0.01〜3.0であることを特徴とする請求項4記載のジルコニアゾルの製造方法。
- 80℃以上で24時間以上加熱・熟成することを特徴とする請求項4又は請求項5記載のジルコニアゾルの製造方法。
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