JP2008016442A - 光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価かつ高性能で、実用性の高い光電変換素子を提供する。
【解決手段】半導体電極と、対向電極と、前記両極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、前記電解質層が酸化還元対として下記一般式(1)で表される化合物から構成されている。
Figure 2008016442

(式(1)中、Mは有機又は無機カチオンであり、Aは芳香族、非芳香族、複素芳香族又は複素非芳香族の環式化合物である。)
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池などとして好適に用いられる光電変換素子に関するものである。
近年、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子として、種々の太陽電池が提案されている。その中で、1991年にスイスのローザンヌ大学のグレッツェルらによって「Nature」1991,353,p737−740等で発表された色素増感太陽電池は、使用する材料・プロセスが安価であることから低コスト太陽電池としてその実用化が期待されている。
色素増感太陽電池は、一般に導電性基材上に色素を吸着した半導体からなる光電変換層を持つ半導体電極と、該半導体電極に対向して設けられた導電性基材上に触媒層を設けた対向電極と、これら半導体電極と対向電極との間に保持された電解質層から構成されている。
色素増感太陽電池の電解質にはヨウ素系酸化還元対を有機溶媒に溶かしたものが一般的に使用されている。ヨウ素系酸化還元対はイオン伝導度が高く、また酸化状態の色素を還元する速度が速い一方、作用極の導電性ガラス表面や酸化チタン表面での反応性が低いなど、優れた性能を有している。
しかし、ヨウ素の昇華性が高いために素子封止が難しく、高温条件での素子耐久性低下の原因となっている他、ヨウ素は多くの金属に対する高い腐食性を有しているため、素子基板に使用できる金属が限られ、導電性ガラス等の高価な基板を使用しなければならない等の問題がある。さらに、特に大面積素子の場合、高性能化のために基板上に金属集電線を設けることが多いが、その場合、金属集電線の腐食を防ぐために電解液と集電線の接触を防ぐ等の処理が必要であり、作業工程が煩雑になる他、素子の有効面積が低下するなどの問題が生じる。
さらに、ヨウ素系酸化還元対は可視光領域に強い吸収を持ち、イオン性液体など高粘度の溶媒を使用した場合、太陽電池素子として十分に動作するためにヨウ素系酸化還元対濃度を高くする必要があり、それにより、色素の光吸収が阻害され、性能低下の原因となっている他、種々の色素を使用し太陽電池のカラフル性を強調する場合、特に青色素子の場合、ヨウ素の色が妨げとなり素子デザイン上においてもふさわしいとは言えない。
このように、ヨウ素系酸化還元対は酸化還元対としての性能は高いものの、欠点も有しているため、ヨウ素系に替わる酸化還元対が求められており、いくつかの検討がなされている。(例えば、非特許文献1〜5)
非特許文献1〜3にはコバルト錯体を酸化還元対に用いた提案がなされている。微弱光条件下では、ヨウ素系酸化還元対と同等の性能を示すとあるが、分子サイズが大きいために酸化還元対の移動速度が遅く、擬似太陽光照射条件では性能が半分程度に低下する。また、ヨウ素に対してコバルト錯体は高価であり、実用的とは言えない。
非特許文献4〜5には(SCN)/SCN、(SeCN)/SeCNを酸化還元対に用いた提案がなされている。(SCN)/SCNは酸化還元対として動作するものの、ヨウ素系酸化還元対に比べると半分以下の性能である。(SeCN)/SeCNはそれに比べると高い性能を示しているが、安全性に問題があり実用性が高いとは言えない。
その他にヨウ素以外に光電変換素子に使用できる酸化還元対には、Br/Br、Fe(CN) 4−/Fe(CN) 3−、Fe2+/Fe3+、S2−/S 2−、Se2−/Se 2−、V2+/V3+、キノン/ハイドロキノンなどが挙げられるが、性能、安定性、安全性などに問題があり、ヨウ素に匹敵する性能は得られていない。
J.Phys.Chem.B、105,10461−10464(2001) Chem.Eur.J.9,3756−3763(2003) J.Am.Chem.Soc.,124,11215−11222(2002) J.Phys.Chem.B、105,6867−6873(2001) J.Am.Chem.Soc.,126,7164−7165(2004)
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、十分な性能・耐久性を有するヨウ素系酸化還元対よりも非腐食性、透明性の高い酸化還元対を用いた実用性の高い光電変換素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で表される酸化還元対が光電変換素子の酸化還元対として高い性能・安定性を有し、さらに対向電極として導電性高分子触媒を使用することで、高い素子光電変換効率を示す光電変換素子を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の光電変換素子は、半導体電極と、対向電極と、前記両極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、前記電解質層が酸化還元対として下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
Figure 2008016442
(式(1)中、Mは有機又は無機カチオンであり、Aは芳香族、非芳香族、複素芳香族又は複素非芳香族の環式化合物である。)
本発明に係る光電変換素子において、前記環式化合物がチアジアゾール系化合物、ピリジン系化合物、及びフェニレン系化合物から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
本発明に係る光電変換素子において、前記対向電極が前記酸化還元対に対する触媒活性を有す導電性高分子触媒を含有していることが好ましい。
本発明に係る光電変換素子において、前記導電性高分子触媒が3,4−エチレンジオキシチオフェン又はその誘導体の重合物から構成されていることがより好ましい。
本発明の酸化還元対を、色素増感太陽電池素子などの光電変換素子に用いることにより、従来のヨウ素系酸化還元対を使用した素子に匹敵する光電変換効率と安定性を有すると共に、従来のヨウ素系の弱点であった腐食性、透明性の問題を解決することができる。具体的には、本発明の電解液は多くの金属を腐食しないため、金属板を基板に使用できるなど、素子材料の自由度が増加する。さらに、可視光領域に強い吸収を持たないため、素子のデザイン性が向上するほか、高濃度の電解液を使用した場合電解質層が可視光を吸収し色素の光吸収を妨げる現象が起こらないため、実用性の高い光電変換素子を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の光電変換素子10の一例を表す模式断面図である。
図1において、符号1は透明基体、符号2は透明導電膜、符号3は多孔質金属酸化物半導体層、符号4は増感色素、符号5は電解質層、符号6は触媒層、符号7は符号6を担持する電極基材、符号8は電極基体、符号9は対向電極をそれぞれ示す。
図に示すように、透明基体1とその上に形成された透明導電膜2からなる電極基体8の表面に、多孔質金属酸化物半導体層3が形成され、さらに該多孔質金属酸化物半導体3の表面には、増感色素4が吸着されている。そして、本発明の電解質層5を介して、電極基材7の表面に触媒層6が形成された対向電極9が配置され光電変換素子10を形成している。
以下、本発明の光電変換素子10の各構成材料について、好適な形態を説明する。
[透明基体]
電極基体8を構成する透明基体1は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体1の厚さは、光電変換素子10の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度が好ましく、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度が好ましい。
[透明導電膜]
透明導電膜2としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用できる。このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、アンチモンをドープした酸化スズ、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。
また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。
したがって、電極基体8としては、上述の導電性材料のうち少なくとも1種類以上からなる導電材料を、透明基体1の表面に設けて形成することができる。あるいは透明基体1を構成する材料の中へ上記導電性材料を組み込んで、透明基体1と透明導電膜2を一体化して電極基体8とすることも可能である。
透明基体1上に透明導電膜2を形成する方法として、金属酸化物を使用する場合は、ゾルゲル法などの液層法や、スパッタやCVDなどの気相法、分散ペーストのコーティングなどがある。また、不透明な導電性材料を使用する場合は、粉体などを、透明なバインダーなどとともに固着させる方法が挙げられる。
また、透明基体1と透明導電膜2を一体化させるには、透明基体1の成型時に導電性のフィラーとして上記導電膜材料を混合させる方法などがある。
透明導電膜2の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
透明基体1及び透明導電膜2から構成される電極基体8、又は透明基体1と透明導電膜2とを一体化した電極基体8の厚さは、上述のように光電変換素子10の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
[多孔質金属酸化物半導体]
多孔質金属酸化物半導体3としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。
また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素をより多く吸着させるために、当該半導体層は比表面積の大きなものが望ましく、具体的には10〜200m/gが望ましい。また、増感色素の光吸収量を増加させるため、使用する酸化物の粒径に幅を持たせて光を散乱させたり、粒径300〜400nm程度の大きな酸化物半導体粒子を多孔質層の上に反射層として設けたりすることが望ましい。
このような多孔質金属酸化物半導体層3は、特に限定されず既知の方法で透明導電膜2上に設けることができる。例えば、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。
このような半導体層3の厚さは、用いる酸化物により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1μm〜50μm、好ましくは3〜30μmである。
[増感色素]
増感色素4としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体3に電子注入できるものであればよく、一般的に光電変換素子に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。
増感色素4としては、特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)2(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここで、Lは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩、およびカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、また、XはSCN、Cl、CNである。例えばビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体などが挙げられる。
他の色素としては、ルテニウム以外の金属錯体色素、例えば鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、スチリル系色素、エオシン系色素、インドリン系色素などの有機色素が挙げられる。
これらの色素には、金属酸化物半導体3への電子注入効率を向上させるため、該金属酸化物半導体3との結合基を有していることが望ましい。該結合基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基などが望ましい。
また、赤色領域や近赤外領域を吸収する色素と本発明の可視光透明性電解質を組み合わせることにより、青色や透明色の光電変換素子を作製することができ、カラフル性が求められる用途など、素子の使用用途を増大させることができる。
上記色素を溶解するために用いる溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどの窒素化合物、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などが上げられる。溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することができ、半導体表面に十分吸着させるためには、ある程度高濃度である方が望ましい。例えば、4×10−5mol/L以上の濃度が望ましい。
多孔質金属酸化物半導体3へ増感色素4を吸着させる方法は、特には限定されるものではなく、例としては室温条件、大気圧下において、色素を溶解させた溶液中に前記多孔質金属酸化物半導体3を形成させた電極基体8を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時間は使用する半導体、色素、溶媒の種類、色素の濃度により、半導体層3に均一に増感色素4の単分子膜が形成されるよう、適宜調節することが好ましい。なお、吸着を効果的に行うには加熱下での浸漬を行えばよい。
[電解質層]
電解質層5は、本発明においては電解質層5が酸化還元対として下記一般式(1)で表される化合物を含んだものである。
Figure 2008016442
(式(1)中、Mは有機又は無機カチオンであり、Aは芳香族、非芳香族、複素芳香族又は複素非芳香族の環式化合物である。)
Aの具体例としては、C〜C12アリール基、C〜C12ヘテロアリール基、C〜C12ヘテロシクリル基、C〜C30アルキルアリール基を有する化合物が挙げられる。
上記アリール基とは、芳香族単環もしくは多環化合物を指し、例えばフェニル基、ナフチル基などが好ましく使用できる。
上記ヘテロアリール基とは、少なくとも一つのN、O、S等のようなヘテロ原子を有する芳香族単環または多環化合物を指し、例えばフリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリミジニル、ベンジイミダゾリル、キノオキサリニル、ベンゾチアゾリル、ナフチリヂニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、プリニル、キナゾリニル等が好ましく使用できる。
上記ヘテロシクリル基とは、少なくとも一つのN、O、S等のようなヘテロ原子を有する非芳香族の環式化合物を指し、例えば上記に示したヘテロアリール基の飽和誘導体もしくは部分的に不飽和な誘導体が好ましく使用できる。具体例としては、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イミダゾリジニルが挙げられる。
また、これらの化合物は置換基を0〜3個有していても良い。置換基としては、H、OH、F、Cl、Br、I、CF、CN、NO、SOH、C〜C30直鎖型、分岐型、あるいは部分ハロゲン化型アルキル基、C〜C12シクロアルキル基、C〜C12ヘテロシクリル基、C〜Cアルケニル基、C〜C12アリール基、C〜C30アルキルアリール基、C〜C12ヘテロアリール基、C〜C30アルキルへテロアリール基、C−C30アルキルへテロシクリル基、C〜C48アルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cヒドロキシアルキル基、PhP(O)−、PhP−、MeP(O)−、MeP−、PhP(S)−、MeP(S)−、PhP=N−、MeP=N−、C2n−、C2n+1−、C2m+12n−、CH=CHC2n−、CH=CHC−、CH=CHC2n+1−、CH=CHC2n−、CF、C2n+1−、HC2n+1−、CFO−、C2n+1O−、HC2n+1O−、CFS−、HCFS−、HC2n+1S−、ClC2n+1−、ClC2n+1O−、ClC2n+1S−、BrC2n+1−、BrC2n+1O−、BrC2n+1S−、IC2n+1−、IC2n+1O−、IC2n+1S−、CH=CHC2n+1−、CH=CHC2n+1O−、CH=CHC2n+1S−、CHOC2n+1−、CHOC2n+1O−、CHOC2n+1S−、C25OC2n+1−、C25OC2n+1O−、C25OC2n+1S−、CFCH−、CFCHO−、(CFCH−、(CFCHO−、CHF−、CHFO−、CHFS−、CClF−、CClFO−、CClFS−、CClFO−、CClFS−、CCl3−、CCl3O−、CCl−、CClO−、FSOCF−、ClSO(CF)−、SO (CF)−、CO (CF)−、FSO(−)SO(CF)−、CFSO(−)SO(CF)−、C2n+1SO(−)SO(CF)−、FSO(CF)−、ClSO(CF)
−、C2n+1SO(−)(CF)−等が挙げられる。(Phはフェニル基、Meはメチル基を表し、m、nはそれぞれ1から48の整数である。以下同様である)。
またこれらの化合物には−O−、=N−、−S−、=P−、=(P=O)−、−SO−、−SO−などのヘテロ基を含んでいても良い。
さらに、前記Aは上記のうち、チアジアゾール系化合物、ピリジン系化合物、フェニレン系化合物であることが特に好ましい。
これらの化合物は置換基を1〜3個有していても良く、例えば、OH、F、Cl、Br、I、CF、CN、NO、SOH、SO−、C〜Cアルコキシ基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜C12直鎖型あるいは分岐型アルキル基、C〜C12アリール基、C2n+1−、PhP(O)−、PhP−、MeP(O)−、MeP−、PhP(S)−、MeP(S)−、PhP=N−、MeP=N−、C2n−、 C2n+1−、 C2m+12n−、CH=CHC2n−、 CH=CHC−、 CH=CHC2n+1−、 CH=CHC2n−等が挙げられ、中でも、下記一般式のいずれかで示される置換基を有する化合物が特に好ましい。
Figure 2008016442
上記一般式(1)におけるMの具体例としては、正電荷を有したC〜C12ヘテロアリール基、C〜C12ヘテロシクリル基化合物が挙げられる。
これらの化合物は置換基を1〜3個有していても良く、例えば、OH、F、Cl、Br、I、CF、CN、NO、SOH、SO−、C〜Cアルコキシ基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜C12直鎖型あるいは分岐型アルキル基、C〜C12アリール基、C2n+1−、PhP(O)−、PhP−、MeP(O)−、MeP、PhP(S)、MeP(S)、PhP=N−、 MeP=N−、C2n−、C2n+1−、C2m+12n−、CH=CHC2n−、CH=CHC−、CH=CHC2n+1−、CH=CHC2n−等が挙げられる。
さらに、上記一般式(1)におけるMの具体例として、H、Li、K、Na等の無機カチオン、下記一般式のいずれかで表される有機カチオンが挙げられる。
Figure 2008016442
〜R15はそれぞれC〜C20直鎖型あるいは分岐型アルキル基、C〜C12シクロアルキル基、C〜C12ヘテロシクリル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C12アリール基、C〜C20アルキルアリール基、C〜C12ヘテロアリール基を指し、R〜R、R〜R、R〜R11、R12〜R15はそれぞれ同一あるいは異なっていても良い。
また、R〜R15はそれぞれ置換基を1〜3個有していても良く、例えば、OH、F、Cl、Br、I、CF、CN、NO、SOH、SO−、C〜Cアルコキシ基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜C12直鎖型あるいは分岐型アルキル基、C〜C12アリール基、C2n+1−、C2n−、C2n+1−、C2m+12n−、CH=CHC2n−、CH=CHC−、CH=CHC2n+1−、CH=CHC2n−等が挙げられる。
さらに、Mは上記のうち、N位にC〜C12直鎖型あるいは分岐型アルキル基がついた四級化窒素原子を有するイミダゾリウム化合物カチオン、それぞれ独立したC〜C12直鎖型あるいは分岐型アルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム化合物カチオンが特に好ましく使用できる。
上記酸化還元対を溶解させる溶媒としては、酸化還元対を溶解できる化合物であれば特に制限はなく、非水性有機溶媒、常温溶融塩、水やプロトン性有機溶媒などから任意に選択できる。
例えば有機溶媒として、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、バレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル化合物、γ−ブチルラクトンやバレロラクトンなどのラクトン化合物、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、ジオキサンやジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、さらにはジメチルホルムアミドやイミダゾール類などが挙げられ、中でもアセトニトリル、バレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネートなどを好適に用いることができる。
また、上記溶媒としては、イオン性液体、すなわち溶融塩を使用することもできる。イオン性液体としては、「Inorg.Chem」1996,35,p1168−1178、「Electrochemistry」2002,2,p130−136、特表平9−507334号公報、特開平8−259543号公報などに開示されている公知の電池や光電変換素子などにおいて、一般的に使用することができるものであれば特に限定されないが、室温(25℃)より低い融点を有する塩か、または室温よりも高い融点を有しても、他の溶融塩や溶融塩以外の添加物を溶解させることにより室温で液状化する塩が好ましく用いられる。なお、これらはそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
具体的には、溶融塩のカチオンとしては、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム及びこれらの誘導体が好ましく、特にアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、スルホニウムが好適である。
また、溶融塩のアニオンとしては、AlCl 、AlCl などの金属塩化物、PF 、BF 、CFSO 、N(FSO 、N(CFSO 、N(CSO 、F(HF)n、CFCOOなどのフッ素含有物、NO3 、CHCOO、C11COO、CHOSO 、CHOS 、CHSO 、CHSO 、(CHO)PO 、SCNなどの非フッ素化合物、ヨウ素、臭素などのハロゲン化物などが挙げられる。
なお、酸化還元対自身が室温状態で液体の場合は、溶媒を混合せずに使用することもできる。
上記酸化還元対の酸化体と還元体の混合比は特に限定されないが、モル比で酸化体/還元体=0.001〜10が好ましく、より好ましくは0.01〜1である。また、電解質層中の酸化還元対の濃度は通常0.05〜10mol/Lであり、より好ましくは0.1〜5mol/Lである。
前記電解質層5にはさらに支持電解質として、リチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩など、添加剤として、t−ブチルピリジン、n−メチルイミダゾールなどの塩基やグアニジウムチオシアネート等のチオシアネート類を添加することができる。これらの添加剤は電解質層の特性を損ねない程度に添加することができる。また、適当なゲル化剤を添加することで物理的、化学的にゲル化することもできる。
[対向電極]
対向電極9は、電極基材7の表面に触媒層6が形成された構造をしている。該電極基材7は、触媒層6の支持体兼集電体として用いられるため、表面部分に導電性を有していることが好ましい。
このような材質としては、例えば導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモンなどの金属酸化物を用いた場合、透明または半透明であるため増感色素層4への入射光量を増加させることができる。
また、本発明の電解質は従来のヨウ素系電解質に比べて金属に対する腐食性が低いため、金属基板を電極基材7に使用した場合、電解質層5と電極基材7が接触してもほとんど腐食せず、従来よりも素子の長期信頼性が向上すると共に、導電性の高い金属を使用することで特に大面積素子での性能が向上し好ましい。
なお、少なくとも該電極基材7の表面が導電性を有するように処理すれば、例えばガラスやプラスチックなどの絶縁体を用いても構わない。このような絶縁体に導電性を保持させる処理方法としては、上記の導電性材料にて、該絶縁性材料表面の一部もしくは全面を被覆する方法、例えば金属を用いる場合、メッキや電析などの溶液法、また、スパッタ法や真空蒸着等の気相法が挙げられ、金属酸化物を用いる場合はゾルゲル法などが用いることができる。また、上記導電性材料の粉末などを一種もしくは複数用いて絶縁性材料と混和させるなどの方法が挙げられる。
さらに、対向電極9の基材7として絶縁性材料を用いた場合でも、該基材7上に導電性の高い触媒層6を設けることで、該触媒層6が単独で集電体と触媒との双方の機能を果たすことができ、対向電極9として使用することができる。
また、電極基材7の形状は、触媒電極として用いる光電変換素子10の形状に応じて変更することができるため特には限定されず、板状としてもフィルム状で湾曲できるものでも構わない。さらに、電極基材7は透明でも不透明でも構わないが、増感色素層4への入射光量を増加させることができるため、また、場合によっては意匠性が向上できるため透明または半透明であることが望ましい。
電極基材7として一般的には、FTO被膜付ガラスやITO膜付PET、ITO膜付PENフィルムが用いられているが、用いる材料により導電性が異なるため、導電層の厚さについて特には限定されない。例えば、FTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。
また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的に100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。
電極基材7の厚さは、上述のように光電変換素子10の形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
触媒層6としては、電解質中の酸化還元対の酸化体を還元体に還元する還元反応を速やかに進行させることが可能な電極特性を有するものであれば特に限定されないが、塩化白金酸を塗布、熱処理したものや、白金を蒸着した白金触媒電極、活性炭、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブのような炭素材料、硫化コバルトなどの無機硫黄化合物、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子などが使用でき、その中でも導電性高分子触媒が好ましく使用できる。
導電性高分子触媒を構成するモノマーの好ましい具体例としては、下記一般式(2)で示されるチオフェン化合物が挙げられる。
Figure 2008016442
(式(2)中、R16、R17はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、又はホスホニウム基を示し、R16とR17は連結して環を形成していてもよい。)
中でも、チオフェン、テトラデシルチオフェン、イソチアナフテン、3−フェニルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン及びそれらの誘導体などが好ましく使用でき、特に3,4−エチレンジオキシチオフェン、ヒドロキシメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、アミノメチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン等を好ましく使用することができる。なお、チオフェン化合物を1種又は2種以上用いて導電性高分子触媒層6を形成してもよい。
導電性高分子触媒層6を形成するのに用いるモノマーは、重合した膜としての電導度が10−9S/cm以上を示すものが望ましい。
また、導電性高分子触媒層6には、電導度を向上させるためにドーパントを添加することが望ましい。このドーパントとしては、公知の材料が使用できる。
ドーパントの具体例としては、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンアニオン、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、ヘキサフロロアンチモン、テトラフロロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物アニオン、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキル基置換有機スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸等の環状スルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のベンゼンモノまたはジスルホン酸アニオン、2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基1〜3を置換させたナフタレンスルホン酸のアルキル基置換または無置換アニオン、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等のアルキル基置換または無置換のビフェニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸アニオン、置換または無置換の芳香族スルホン酸アニオン、ビスサルチレートホウ素、ビスカテコレートホウ素等のホウ素化合物アニオン、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸アニオン、イミド酸等が挙げられる。ドーパントは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ドーパントの脱離を抑制するため、無機アニオンよりも有機酸アニオンであることが望ましく、熱分解などが起きにくいことが望ましい。また高分子化合物のドーパントよりも低分子化合物のドーパントである方が膜形成後の電気伝導性が高くなるため望ましい。具体的には、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
導電性高分子触媒層におけるドーパントの使用量は、使用するドーパント種により最適値が異なるため特に限定されないが、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜45質量%である。
このようなドーパントは導電性高分子触媒層を形成させる際に、導電性高分子のモノマーと共存させておくことができる。
前記導電性高分子触媒層6は、電極基材7上に形成される。形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性高分子を溶融状態もしくは溶解させた溶液から成膜する方法が挙げられる。
また、より大きな表面積を有する多孔質状態であることが望ましいため、導電性高分子のモノマーを含む溶液と電極基材7を接触させた状態で、モノマーを化学的もしくは電気化学的に酸化重合する方法が挙げられる。
また、導電性高分子粉末を、ペースト状、もしくはエマルジョン状、もしくは高分子溶液およびバインダーを含む混合物形態に処理した後に、該電極基材7上へスクリーン印刷、スプレー塗布、刷毛塗りなどにより形成させる方法も可能である。
前記導電性高分子触媒層6の形成方法としては、前記の中でも電解重合法もしくは化学重合法が好ましく、特に化学重合法が好ましい。化学重合法は、酸化剤を用いて重合モノマーを酸化重合させる方法である。一方、電解重合法は、重合モノマーを含む溶液中で電解酸化を行うことにより金属などの電極上に導電性高分子の膜を形成する方法である。
化学重合法に用いられる酸化剤としては、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素、二酸化塩素、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、亜塩素酸等のハロゲン化物、五フッ化アンチモン、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデン等の金属ハロゲン化物、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価金属塩、硫酸、硝酸、トリフルオロメタン硫酸等のプロトン酸、三酸化硫黄、二酸化窒素等の酸素化合物、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム等のペルオキソ酸またはその塩、あるいはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸またはその塩などがあり、これらの少なくとも1種を用いることができる。
前記の化学重合法は大量生産向きであるものの、芳香族化合物モノマーを含有する溶液中で酸化剤と作用させると、得られる高分子は粒子状もしくは塊状の形態になってしまい、所望の多孔性を発現させ、電極形状に成型することは困難である。したがって、電極基材7を芳香族化合物モノマーもしくは酸化剤のどちらかを含む溶液に浸漬するか、それらに該溶液を塗布した後、続いてもう一方の成分を溶解させた溶液に浸漬もしくは塗布するなどして、前記電極基材7表面で重合が進行するようにし、導電性高分子を形成させることが望ましい。
もしくは、モノマーと重合開始剤を混ぜた溶液に重合速度を低下させる添加剤を加え、室温で重合が起こらない条件下で膜化した後、加熱反応させることで多孔質導電性高分子膜を作製することができる。膜化の方法については特に限定されないが、例としてスピンコート法、キャスト法、スキージ法、スクリーンプリント法などが挙げられる。
重合速度を低下させる添加剤については、公知文献「Synthetic Metals」66,(1994)263によると、重合開始剤が高原子価金属塩、例えばFe(III)塩の場合、Fe(III)塩の酸化電位がpHによって変化するため、塩基を加えることで重合速度を遅くさせることができる。塩基の例としては、イミダゾールやジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
前記モノマーと重合開始剤、添加剤を溶解・混合させる溶媒は用いる化合物を溶解し、電極基材7および重合物を溶かさないものであれば特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ノルマルブタノールなどのアルコール類が挙げられる。
前記モノマーと重合開始剤、添加剤の混合比は用いる化合物、目的とする重合度、重合速度により変化するが、モル比でモノマー:重合開始剤で1:0.3から1:10、重合開始剤:添加剤で1:0.05から1:4の間が好ましい。
また、前記混合溶液を塗布した後加熱重合する場合の加熱条件は用いるモノマー、重合触媒、添加剤の種類およびそれらの混合比、濃度、塗布膜厚などにより異なるが、好適な条件としては空気中加熱で加熱温度が25℃から120℃、加熱時間が1分から12時間の間である。
また、別途作製した導電性高分子粒子分散液やペーストなどを用いて、電極基材7もしくは導電膜付きの電極基材表面に導電性高分子膜を形成後、前記化学重合を行って導電性高分子粒子を成長させる方法を行うこともできる。
対向電極9における触媒層6の厚さは、5nm〜5μmが適当であり、特に好ましくは50nm〜2μmである。
以上説明したような各構成要素材料を準備した後、従来公知の方法で金属酸化物半導体電極と触媒電極とを電解質を介して対向させるように組み上げ、光電変換素子10を完成させる。
以下、本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
〈実施例1〉
[多孔質金属酸化物半導体の作製]
ガラスからなる透明基体1上にフッ素をドープしたSnOからなる透明導電膜を真空蒸着により形成した透明導電膜2上に、以下の方法で多孔質金属酸化物半導体層3を形成した。
透明基体1上に透明導電膜2が形成された電極基体8としてFTOガラス(日本板硝子株式会社製)を用い、その表面に市販の酸化チタンペースト(触媒化成株式会社製、商品名TSP−18NR、粒子サイズ20nm)をスクリーン印刷法で6μm程度の膜厚、5mm×10mm程度の面積で、透明導電膜2側に印刷し、さらにその上に同面積で、市販の酸化チタンペースト(触媒化成株式会社製、商品名TSP−400C、粒子サイズ400nm)をスクリーン印刷法で、4μm程度の膜厚に塗布し、500℃で30分間、大気中で焼成した。その結果、膜厚が10μm程度の酸化チタン膜(多孔質金属酸化物半導体膜3)が得られた。
[増感色素の吸着]
増感色素4として、一般にN719dyeと呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。前記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.4mmol/Lの無水エタノール溶液中に浸漬し、遮光下1晩静置した。その後無水エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。
[電解液の調整]
次に、電解質層5を構成する電解液を調製した。溶媒として3−メトキシプロピオニトリルを用い、それに0.05mol/Lのビス(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)2−ジスルフィド、0.6mol/Lの5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール:テトラブチルアンモニウム塩を溶かすことにより作製した。なお、上記の化合物は市販の材料もしくは市販の材料から公知の方法や下記に示す合成例に従い合成したものを用いた。
[対向電極(対極)の作製]
対向電極9として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下PEDOT)対極を使用した。電極基材7としてFTO被膜付きガラス(旭硝子株式会社製、〜10Ω/□)を用い、有機溶媒中で超音波洗浄した電極基材7に、3,4−エチレンジオキシチオフェン、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ジメチルスルホキシドを1:8:1の重量比でn−ブタノールに溶解させた反応溶液をスピンコート法にて塗布した。スピンコートの回転条件は2000rpmで30秒の条件で行い、溶液における3,4-エチレンジオキシチオフェンの濃度は0.48Mであった。続いて、溶液を塗布した電極基板を110℃に保持した恒温槽に入れ、5分間加熱させることで重合後、メタノールで洗浄することで対向電極9を作製した。作製したPEDOT薄膜の膜厚はそれぞれ約0.3μmであった。
[太陽電池セルの組み立て]
前記のように作製した対向電極9に電気ドリルで1mmφの電解液注入孔を適当な位置に2個設けたのち、前記のように作製した透明導電膜2を具備した透明基体1上の酸化チタン膜3からなる電極基体8(作用極)と、対向電極9の間に熱可塑性シート(ハイミラン1652、三井・デュポンポリケミカル社製、膜厚30μm)を挟み、熱圧着する事により両電極を接着した。次に、前記のように作製した電解液を電解液注入孔から毛管現象にて両電極間に含浸させた後、電解液注入孔上に1mm厚のガラス板を置き、その上にUVシール剤(スリーボンド社製の試作品、31X−101)を塗布し、UV光を100mW/cmの強度で30秒照射することで封止を実施し、太陽電池を作製した。
〈実施例2〉
電解質層5の溶媒として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池を作製した。
〈比較例1〉
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.05mol/Lのヨウ素、0.6mol/Lの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを溶かしたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池を作製した。
〈比較例2〉
電解質層5として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを溶媒として用い、それに0.05mol/Lのヨウ素、0.6mol/Lの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを溶かしたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池を作製した。
〈比較例3〉
対向電極9として、スパッタ法によりITO導電性ガラス上にスパッタ法によりPtを蒸着したPt対極(ジオマテック製)を使用した以外は比較例1と同様に太陽電池を作製した。
〈比較例4〉
対向電極9として、スパッタ法によりITO導電性ガラス上にスパッタ法によりPtを蒸着したPt対極(ジオマテック製)を使用した以外は実施例1と同様に太陽電池を作製した。
[太陽電池の光電変換効率・耐久性評価]
作製した太陽電池の評価を以下の手法で実施した。性能評価には、AMフィルターを具備したキセノンランプのソーラーシュミレーターXES−502S(関西科学機械株式会社製)にて、AM1.5Gのスペクトル調整後、100mW/cmの照射条件下で、ポテンシオスタットによる負荷特性(I−V特性)を評価した。太陽電池の評価値は、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、形状因子FF(−)、変換効率η(%)が挙げられるが、最終的な太陽電池の性能の良否は、変換効率ηの大小で評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2008016442
表1から分かる通り、有機溶媒系、イオン性液体系いずれの場合でも、本発明の酸化還元対を使用した素子は、従来のヨウ素系酸化還元対を使用した素子に迫る光電変換性能を擬似太陽光照射条件で示している事がわかる。非特許文献1〜3で示されているコバルト錯体酸化還元対では、擬似太陽光照射条件での素子性能はヨウ素系の半分程度であり、本発明の酸化還元対の方が優れている。さらに、上記のコバルト錯体は作用極基板であるFTO導電性ガラス表面から電子を受け取る逆電子移動が起こりやすいため、FTO導電性ガラスと多孔質半導体層の間に電解質層と導電性ガラス表面との接触を防ぐため酸化チタン等の緻密な半導体層を設ける必要があるが、本発明の酸化還元対はFTO導電性ガラス上での反応性が低いため、緻密層を設けなくても上記のような高い素子性能を示すことができ、実用性が高い。
さらに、対向電極としてPEDOT電極を使用した実施例1は対向電極としてPt電極を使用した比較例4よりも素子性能が高く、特にFFの値が優れている。これは本発明の酸化還元対に対する触媒活性がPtよりもPEDOTの方が高いためであり、これはインピーダンス測定による界面反応抵抗解析からも確認できる。よって、本発明の酸化還元対とPEDOT等の導電性高分子触媒を併用することで、高い光電変換効率を示す光電変換素子を作製することができる。また、作製した素子は室温、開放状態で2ヶ月間安定であった。
[透過性評価]
5mmol/Lのビス(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)2−ジスルフィド、60mmol/Lの5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール:テトラブチルアンモニウム塩を3−メトキシプロピオニトリルに溶かした溶液(実施例3)と、5mmol/Lのヨウ素、60mmol/Lの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを3−メトキシプロピオニトリルに溶かした溶液(比較例5)を作製し、紫外可視分光光度計(UV−2100、(株)島津製作所製)により吸収スペクトルを測定し比較を行った。その結果を図2に示す。
図2より、本発明の電解質は従来のヨウ素系電解質と比較して可視光吸収領域が少ない事がわかる。また、吸光係数についてもヨウ素に比べて小さいため、太陽電池に組み込んだ場合、実用的な使用濃度(0.5〜2mol/L)においても電解質に着色は見られず、透明電解質層として使用することができる。
[腐食性評価]
市販のガラス基板の表面に銀ペースト(京都エレックス株式会社製、商品名DD−1050)をスクリーン印刷法で10μm程度の膜厚、1mm幅で印刷塗布し、500℃で30分加熱することでガラス基板上に銀線を形成した。銀線上の一部にそれぞれ実施例2、比較例2で使用した電解液とヨウ素系電解液を塗布し、25℃で8時間静置した。その後、電解液をふき取り外観及び銀線端間の抵抗を比較したところ、比較例2で使用したヨウ素系電解液は銀線の腐食および抵抗の上昇が見られたが、実施例2で使用した本発明の電解液は外見および抵抗の変化は見られなかった。
以上のように、本発明の酸化還元対は素子性能、腐食性、透明性の観点で、従来のヨウ素系酸化還元対よりも優れており、本発明の酸化還元対と有機導電性高分子対極を使用することにより、性能、耐久性、コスト、デザイン性に優れた実用性の高い光電変換素子を提供することができる。
〈本発明の合成例〉
本発明の酸化還元対の合成例を以下に示すが、合成法はこれに限定されるものではなく、公知の材料、合成法を使用して作製することができる。
[酸化還元対:還元体の合成]
5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール1モル当量と炭酸カリウム0.5モル当量をメタノールに溶かし、攪拌しながら炭酸カリウムが溶けてなくなるまで(約2.5時間)超音波バス処理を行う。その後、ろ紙を使用して固形物を除き、溶媒をロータリーエバポレーターにより留去し、生じた白色固形物をジクロロメタンで洗浄後、真空乾燥することで5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールカリウム塩を合成した。上記の反応収率は70%であった。
続いて、合成した化合物をアセトンに1モル当量溶かし(濃度:1M)、この溶液にテトラブチルアンモニウムパークロレートをアセトンに1モル当量溶かした溶液(濃度:1M)を混ぜ、約1時間超音波バス処理を行った後、冷凍庫で一晩放置する。その後、ろ過により固形物を除き、溶媒を留去する。生じた白色固体を12時間真空乾燥することで酸化還元対の還元体化合物である5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール:テトラブチルアンモニウム塩を合成した。反応収率は95%であった。
[酸化還元対:酸化体の合成]
上記の手法で作成した5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールカリウム塩1モル当量を水に溶解させた後、ヨウ素0.5モル当量を加え、ヨウ素が溶解するまで溶液を攪拌する。その後、生じた白色沈殿をろ過により採取し、水で洗浄した後、24時間真空乾燥することで酸化還元対の酸化体化合物であるビス(5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル)2−ジスルフィドを得た。反応収率は30%であった。なお、上記各合成例で示した各材料は市販の材料を用いた。
本発明にかかる光電変換素子は、屋内外で使用できる光電変換素子して好適に用いられるものであり、さらに本発明の電解質の特性を生かすことで、特にデザイン性が求められる民生用機器等への利用が可能である。さらに光電変換素子だけでなく、光センサーなどとしても利用することができる。
実施形態の光電変換素子の基本構造を示す模式断面図である。 可視光吸収スペクトル図である。
符号の説明
1・・・透明基体
2・・・透明導電膜
3・・・多孔質金属酸化物半導体(層)
4・・・増感色素
5・・・電解質層
6・・・触媒層
7・・・電極基材
8・・・電極基体
9・・・対向電極
10・・・光電変換素子

Claims (4)

  1. 半導体電極と、対向電極と、前記両極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、前記電解質層が酸化還元対として下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする光電変換素子。
    Figure 2008016442
    (式(1)中、Mは有機又は無機カチオンであり、Aは芳香族、非芳香族、複素芳香族又は複素非芳香族の環式化合物である。)
  2. 前記環式化合物がチアジアゾール系化合物、ピリジン系化合物、及びフェニレン系化合物から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記対向電極が前記酸化還元対に対する触媒活性を有す導電性高分子触媒を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記導電性高分子触媒が3,4−エチレンジオキシチオフェン又はその誘導体の重合物から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
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