JP2007515198A - 容易に挿入可能な骨圧縮インプラント - Google Patents

Abstract

歯冠側端部（４４）及び歯冠側端部（４４）と反対側に位置する歯槽側端部（４２）を備える容易に挿入可能な歯科用インプラントである。インプラント−補綴物界面領域（１６）が歯冠側端部近傍に配される。テーパ状領域（２２）が歯槽側端部近傍に配される。テーパ状領域（２２）の全長にわたって、その各部において形状が異なる螺旋状のねじ山（４１）が配される。該螺旋状のねじ山（４１）は歯槽側から歯冠側の方向で幅が広なり、歯冠側から歯槽側の方向で高さが高くなる。ねじ山（４１）は歯槽側側面（Ａ）、歯冠側側面（Ｃ）、及びこれらを接続する側面（Ｔ）を備える。歯冠側に向けて、ねじ山（４１）の側面（Ｔ）の長さが長くなる一方で、ねじの谷から側面（Ｔ）までの距離は大きくなる。インプラントはまた、骨を徐々に圧縮するテーパ状のコア（４０）、螺旋状タップ部を有するセルフ・ドリリング可能な歯槽側端部（４２）、及び逆テーパ状の歯冠側端部（４４）を備える。

Description

本発明は骨に固定されるインプラントに関し、より詳しくはいくつかの要素を組み合わせてなるねじ状歯科用インプラントに関する。このインプラントは、容易に挿入可能であるとともに挿入時に骨を圧縮する。

従来のねじ状歯科用インプラントは、密度の高い骨に対しての使用に適するように設計されている。例えば米国特許第５，８９７，３１９号に開示されるインプラントは、その歯槽側端部に鋭利な切削用手段を備えるから、密度の高い骨においても容易にセルフ・タップできる。

人体の顎の骨は複雑な解剖学的特徴を有する。部分的或いは完全な無歯顎患者では、下顎及び上顎の前方領域における骨の密度が高いのに比べて、後方領域、特に上顎の後方領域における骨の密度は低い。したがって背の低い歯科用インプラントを使用するか、或いは骨がインプラントの装着に必要な高さになるように移植を行う必要がある。

下顎や上顎及び再生骨などの密度の低い骨において歯科用インプラントを安定させるのは困難である。通常、インプラントを外科的に装着するときに、密度の低い骨を圧縮させることにより、インプラントの安定性を向上させる。骨の圧縮には例えばオステオトームが用いられる。

様々なテーパ形状やねじ山の形状を有するインプラントが知られている。例えば米国特許第５，４２７，５２７号に開示される円錐形状のインプラントは円筒形の骨切り術手術部位に挿入される。これにより、インプラントの歯冠側すなわち最も幅の広い側で骨が圧縮される。

様々なねじ形状を有するインプラントが既知である。最も一般的な形状は米国特許第５，８９７，３１９号に開示されるような左右対称なＶ字型形状である。米国特許第５，４３５，７２３号及び第５，５２７，１８３号は、咬合荷重下での圧力伝達が数学的に最適化されるように、ねじの各点でねじ山の形状が異なるねじを開示している。米国特許第３，７９７，１１３号及び第３，８４９，８８７号は外側にねじに類似した要素を備える歯科用インプラントを開示している。このねじに類似した要素は、インプラントの歯冠側に向いたねじ山の外周面と直角な平面を備える。米国特許第４，９３２，８６８号はインプラントの歯槽側に向いた平坦な表面を有するねじ構造を開示している。このねじのねじ山はインプラントの各点において同じ形状を備えるから、骨の切削や本明細書中に開示されるような骨の圧縮を行うものではない。米国特許第５，００７，８３５号はねじ状の歯科用インプラントを開示している。該インプラントは丸みを帯びたねじ山を備えて、これにより予めねじ切りされた骨部位の壁面に対して径方向に骨を適度に圧縮する力を加える。米国特許第５，６２８，６３０号はインプラント周囲の骨への圧力が最適化されるように歯科用インプラントを成形する方法を開示している。この出願で開示されているインプラントのねじ部は、インプラントの歯槽側端部において鋭利でねじ山が高い形状で、インプラントの歯冠側端部において平坦で角張った形状である。この発明は、咬合荷重を受ける表面領域を制御することを目的としている。米国特許第６，４０２，５１５号は徐々に幅が広くなったねじ山を有するとともに密度の低い骨内での安定性が向上された骨圧縮インプラントを開示している。

インプラントが骨をより強く圧縮するように設計すると、該インプラントの挿入は困難になる。また、この場合、骨を圧縮するインプラントが比較的骨の密度の低い領域にずれる傾向があるため、インプラントの位置を制御することも難しくなる。

米国特許第５，８９７，３１９号 米国特許第５，４２７，５２７号 米国特許第５，４３５，７２３号 米国特許第５，５２７，１８３号 米国特許第３，７９７，１１３号 米国特許第３，８４９，８８７号 米国特許第４，９３２，８６８号 米国特許第５，００７，８３５号 米国特許第５，６２８，６３０号 米国特許第６，４０２，５１５号

したがって密度の低い骨においても安定性が高く、容易に挿入可能であるとともに、平均的な密度の骨および密度の高い骨においても使用可能なインプラントが提供されることが必要である。

本発明は骨内部への挿入が容易で且つ強度の高い骨および強度の低い骨のいずれにも使用可能な骨用ねじに関する。以下では、歯科用インプラントを例に本発明を説明するが、全ての細部にわたって本発明は他の身体領域に対する整形外科的処置にも利用可能である。本発明の一実施形態は密度の低い骨に特に適する歯科用インプラントを提供する。このようなインプラントは強度の高い骨にも使用可能である。このような目的を達するために、本発明に係る歯科用インプラントは、その各点において形状が異なるねじ部を備える。このようなインプラントは、歯冠側端部と歯槽側端部を有する本体を備える。この本体は、その歯槽側端部に隣接してテーパ状コアを備える。このようなコアの断面は非直線状である。該コアは円形オステオームに類似した形状を有するから、同じ傾斜角度を有する通常のテーパ状インプラントと比べて、このようなコアのあるねじ山の歯冠側に隣接する位置におけるコアの直径と、該ねじ山の歯槽側に隣接する位置におけるコアの直径の差は小さい。テーパ状コアの全長にわたって幅可変の螺旋状のねじ山を備える。このねじ山は、歯槽側側面、歯冠側側面、側面、及びインプラントのコアに接するねじの谷を備える。ねじ山の高さは、歯槽側側面及び歯冠側側面によって定められ、ねじ山の幅は、側面の長さによって定められる。ねじ山の幅は、歯冠側端部に向かって大きくなるので、歯槽側端部に隣接する位置でねじ山の幅は最小であり、歯冠側端部に隣接する位置で最大である。ねじ山の高さは、歯槽側端部に向かって高くなるので、歯冠側端部に隣接する位置でねじ山の高さは最小となり、歯槽側端部に隣接する位置において最大となる。好ましくは、インプラントはその長手方向に２つのねじ山を施される。このようなインプラントは２つの円錐形状を有する。第１の円錐形状はねじの外表面の形状であり、第２の円錐形状はねじの内表面すなわちコアの形状である。第１の円錐形状の傾斜角度は第２の円錐形状の傾斜角度より小さい。インプラントはまた、螺旋状骨用タップ部及び傾斜角度の小さいテーパ状の歯冠側領域を備える。

このような実施形態の主要な利点は、上記した問題を解決可能な歯科用イプラントが提供されることである。本発明の歯科用インプラントは、インプラント本体及びねじ部を組み合わせてなる。該ねじ部により、該インプラントが密度の低い骨において安定性を有するとともに、骨へ容易に挿入されることが可能になる。加えて、歯槽側のねじ山が高く形成されるので、インプラントの方向が定められ、インプラントのずれが防止される。

好ましくは、インプラントの歯冠側領域は歯冠側方向に徐々に径が小さくなる。この領域は骨レベルより下方に配されて、骨により覆われる。インプラントがこのように設計されるから、小径のドリルを用いて挿入されることが可能であり、皮質骨が弾力的に拡張することが可能となる。更に、インプラント上方にある骨によって歯茎の美的外観が保たれる。いくつかの好適な実施形態においては、インプラントは１つの部材からなり、骨吸収を防止可能である。本発明はまた、いくつかの新規な補綴学的システムを提供する。このようなシステムは、本発明のインプラントに適すると同時に、その他のインプラントにも適用可能である。

本発明は、歯冠側端部と歯槽側端部を有する本体を備え、前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域が歯冠側ねじ部を備え、前記歯冠側ねじ部、歯冠側コア領域、歯槽側ねじ部及び歯槽側コア領域が歯冠側からこの順に配され、前記歯冠側コア領域のうち最も歯槽側に位置する部分の輪郭線を歯槽側に延長した延長線が前記歯槽側ねじ部を介して前記歯槽側コア領域内部を通ることを特徴とする歯科用インプラントを提供する。

本発明は更に、前記コアが、前記コアの長手方向における少なくとも１つの部分がその各部において幅の異なる螺旋状ねじ部を備え、前記螺旋状ねじ部が歯槽側側面及び歯冠側側面を備え、前記螺旋状ねじ部の幅が前記歯槽側端部近傍において最も狭く、前記歯冠側端部近傍において最も広くなるように、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間の距離により定義される前記螺旋状ねじ部の幅が、前記インプラントの前記少なくとも１つの部分のほぼ全長において次第に広くなることを特徴とする。

本発明は更に、前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域が、異なる形状のねじ山が形成された螺旋状テーパねじ部を前記コアに沿って備え、前記ねじ部が歯槽側側面、歯冠側側面、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面、及び前記コアと接するねじの谷を備え、前記ねじ部のねじ高さが前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する前記側面と前記ねじの谷の間の距離により定義され、前記ねじ部の前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面の長さが、前記歯槽側端部近傍において最も短く、前記歯冠側端部近傍において最も長くなるように、前記歯槽側端部の前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において前記側面が前記歯冠側端部の方向に向けて次第に長くなるように形成され、前記ねじ部の高さが前記歯冠側端部近傍において最も低く、前記歯槽側端部近傍において最も高くなるように、前記インプラントの前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において、前記ねじ高さが前記歯槽側端部に向けて次第に高くなるように形成されることを特徴とする。

本発明は更に、前記ねじ部の前記歯槽側側面が前記コアから棚状に突出した平面を備え、前記ねじの幅が前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間に延出する外周面により更に定義されることを特徴とする。
本発明は更に、前記外周面が前記コアから棚状に突出した前記平面とほぼ直角である平坦な面を備え、前記平坦な面が前記歯槽側端部から前記歯冠側端部に向けて次第に大きくなる幅を有することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部において前記平坦な面が鋭く且つ薄くなることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が丸みを帯びた領域を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部近傍において、前記ねじ部がセルフ・タップ可能であることを特徴とする。
本発明は更に、前記セルフ・タップ可能なねじ部が前記丸みを帯びた領域から離れて位置することを特徴とする。
本発明は更に、前記コア領域の前記輪郭線が平行な直線であることを特徴とする。
本発明は更に、前記コア領域の前記輪郭線が非直線状であることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側側面と前記歯槽側側面を接続する側面が前記インプラントの長軸と平行であることを特徴とする。
本発明は更に、前記インプラントの前記本体がテーパ状で、前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であり、骨を切削できることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が螺旋状タップ部を備え、前記螺旋状タップ部が前記インプラントの一端から他端まで前記インプラントの長さの３分の１以上の長さ延出することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側端部の最も歯冠側端部が歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなり、歯冠側端部の幅が狭いことを特徴とする。

本発明は更に、歯冠側端部と歯槽側端部を有する本体を備え、前記歯槽側端部がコアを備え、前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域が、少なくとも１つの異なる形状のねじ山が形成された螺旋状テーパねじ部を前記コアに沿って備え、前記ねじ部が歯槽側側面、歯冠側側面、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面、及び前記コアと接するねじの谷を備え、前記ねじ部のねじ高さが前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する前記側面と前記ねじの谷の間の距離により定義され、前記ねじ部の前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面の長さが、前記歯槽側端部近傍において最も短く、前記歯冠側端部近傍において最も長くなるように、前記歯槽側端部の前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において前記側面が前記歯冠側端部の方向に向けて次第に長くなるように形成され、前記ねじ部の高さが前記歯冠側端部近傍において最も低く、前記歯槽側端部近傍において最も高くなるように、前記インプラントの前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において、前記ねじ高さが前記歯槽側端部に向けて次第に高くなるように形成されることを特徴とするインプラントを提供する。

本発明は更に、前記ねじ部の前記歯槽側側面が前記コアから棚状に突出した平面を備え、前記ねじの幅が前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間に延出する外周面により更に定義されることを特徴とする。
本発明は更に、前記外周面が前記コアから棚状に突出した前記平面とほぼ直角である平坦な面を備え、前記平坦な面が前記歯槽側端部から前記歯冠側端部に向けて次第に大きくなる幅を有することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部において前記平坦な面が鋭く且つ薄くなることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が丸みを帯びた領域を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であることを特徴とする。
本発明は更に、前記セルフ・タップ可能なねじ部が前記丸みを帯びた領域から離れて位置することを特徴とする。
本発明は更に、前記ねじ部のねじ高さが前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する前記側面がインプラントの長軸と平行であることを特徴とする。
本発明は更に、前記コアがテーパ状であることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部近傍のねじがセルフ・タップ可能であり、骨を切削できることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が螺旋状タップ部を備え、前記螺旋状タップ部が前記インプラントの一端から他端まで前記インプラントの長さの３分の１以上の長さ延出することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側端部の最も歯冠側端部が歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなり、歯冠側端部の幅が狭いことを特徴とする。
本発明は更に、歯冠側端部と歯槽側端部を有する本体を備え、前記歯槽側端部が螺旋状のテーパねじ部を有するテーパ状コアを備え、前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域において前記テーパ状コアの傾斜角度が前記螺旋状のテーパねじ部の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が歯冠側ねじ部を備え、前記歯冠側ねじ部、歯冠側コア領域、歯槽側ねじ部及び歯槽側コア領域が歯冠側からこの順に配され、
本発明は更に、前記歯冠側コア領域のうち最も歯槽側に位置する部分の輪郭線を歯槽側に延長した延長線が前記歯槽側ねじ部を介して前記歯槽側コア領域内部を通ることを特徴とする。
本発明は更に、前記コアの長手方向における少なくとも１つの部分がその各部において幅が異なる螺旋状ねじ部を備え、前記螺旋状ねじ部が歯槽側側面及び歯冠側側面を備え、前記螺旋状ねじ部の幅が前記歯槽側端部近傍において最も狭く、前記歯冠側端部近傍において最も広くなるように、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間の距離により定義される前記螺旋状ねじ部の幅が、前記インプラントの前記少なくとも１つの部分のほぼ全長において次第に広くなることを特徴とする。

本発明は更に、前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域が、異なる形状のねじ山が形成された螺旋状テーパねじ部を前記コアに沿って備え、前記ねじ部が歯槽側側面、歯冠側側面、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面、及び前記コアと接するねじの谷を備え、前記ねじ部のねじ高さが前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する前記側面と前記ねじの谷の間の距離により定義され、前記ねじ部の前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面の長さが、前記歯槽側端部近傍において最も短く、前記歯冠側端部近傍において最も長くなるように、前記歯槽側端部の前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において前記側面が前記歯冠側端部の方向に向けて次第に長くなるように形成され、前記ねじ部の高さが前記歯冠側端部近傍において最も低く、前記歯槽側端部近傍において最も高くなるように、前記インプラントの前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において、前記ねじ高さが前記歯槽側端部に向けて次第に高くなるように形成されることを特徴とする。

本発明は更に、前記ねじ部の前記歯槽側側面が前記コアから棚状に突出した平面を備え、前記ねじの幅が前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間に延出する外周面により更に定義されることを特徴とする。
本発明は更に、前記外周面が前記コアから棚状に突出した前記平面とほぼ直角である平坦な面を備え、前記平坦な面が前記歯槽側端部から前記歯冠側端部に向けて次第に大きくなる幅を有することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部において前記平坦な面が鋭く且つ薄くなることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が丸みを帯びた領域を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であることを特徴とする。
本発明は更に、前記セルフ・タップ可能なねじ部が前記丸みを帯びた領域から離れて位置することを特徴とする。
本発明は更に、前記コア領域の前記輪郭線が平行な直線であることを特徴とする。
本発明は更に、前記コア領域の前記輪郭線が非直線状であることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側側面と前記歯槽側側面を接続する側面が前記インプラントの長軸と平行であることを特徴とする。
本発明は更に、前記インプラントの前記本体がテーパ状で、前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であり、骨を切削できることを特徴とする。
本発明は更に、前記歯槽側端部が螺旋状タップ部を備え、前記螺旋状タップ部が前記インプラントの一端から他端まで前記インプラントの長さの３分の１以上の長さ延出することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側端部の最も歯冠側端部が歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなり、歯冠側端部の幅が狭いことを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が骨と接することを特徴とする。
本発明は更に、前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分のうち幅の広い領域が骨に挿入されているときに、該骨が弾力的に拡張可能であり、前記歯冠側方向にテーパ形状である部分の幅の狭い領域が骨に挿入された後に該骨が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分を覆うように回帰可能となるように、前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が形成されることを特徴とする。
本発明は更に、前記インプラントが１より多いねじ山を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記ねじ山が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分に達していることを特徴とする。
本発明は更に、前記インプラントの前記前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が複数のねじ山を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記インプラントが突出要素を備え、前記突出要素が歯茎から突出するとともに歯科用補綴物と接続可能であることを特徴とする。
本発明は更に、前記突出要素と前記インプラントが一体化されていることを特徴とする。
本発明は更に、前記突出要素が少なくとも１つの領域において回転防止要素を備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記突出要素が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなることを特徴とする。
本発明は更に、前記突出要素が天然歯を模擬した形状を有する幅の広いカラーを備えることを特徴とする。
本発明は更に、前記突出要素が横方向からアバットメントに取り付けられることを特徴とする。

図１は本発明に係るテーパ状の骨圧縮歯科用インプラントの一実施例を示す図である。骨の圧縮とインプラントの挿入並びに固定を可能にするために、この歯科用インプラントは以下の５つの要素を備える。すなわち１）インプラントのコア（４０）、２）ねじ山（４１）、３）初めに骨と接触する最も歯槽側の領域（４２）、４）骨用タップ部（４３）、５）最も歯冠側の領域（４４）を備える。最も歯冠側の領域（４４）は、皮質骨や、時には歯茎に配される。

密度の低い骨の内部で高い安定性を得るには、小径のドリルとテーパ状インプラントを用いることが好ましい。ドリルの径が小さく、インプラントがテーパ状であると、より多くの骨が残存されるとともに圧縮されるので、インプラントはより高い安定性を得られる。しかしながらこのような場合、インプラントの挿入は困難になる。このような場合にはインプラントの挿入路を正確に制御することもまた難しくなる。これは、骨密度の低い領域に向かって滑る傾向をインプラントが有するからである。小径のドリルとテーパ状インプラントを用いて、インプラントを容易に挿入して且つ最終位置を適切に制御するためにはインプラントの５つの要素全てが必要である。

本発明に係るインプラントの新規性を明確にするために、本発明に係るインプラントを図２に示すような通常のテーパ状インプラントと比較する。図２に示すインプラントは、歯冠側端部（１２）及び歯槽側端部（１４）を備える。このインプラントは５つの別個の領域からなる。最も歯冠側の領域は、インプラント−補綴物界面領域（１６）である。歯冠側端部から歯槽側端部の間に、順に、該インプラントは、任意の要素としての機械的係止領域（図示せず）、任意の要素としての円筒形領域（図示せず）、テーパ状領域（２２）、及び骨切断端部領域（２４）を備える。骨切断端部領域（２４）は自ら穿孔並びにねじ切りする。雌ねじ部（２５）は補綴学的要素のアタッチメント内に形成される。

接合領域（１６）はインプラントと補綴学的要素（図示せず）との間の機械的結合部となる。接合領域（１６）はまた、インプラントに回転モーメントを与えるための手段を備える。この回転モーメントにより、インプラントを所望の位置に挿入することが可能になる。接合領域（１６）として、既知の接合面を任意の数用いることができる。既知の接合面としては外面スプライン或いはポリゴン、またはポリゴンやモールス・テーパのような内面幾何学的形状が挙げられる。

任意的な機械的係止領域は傾斜角度の大きなテーパ形状をなすように形成されてもよい。これにより、インプラントが骨切り術手術部位にねじ込まれるとき、不注意からインプラントを過度に深くまで差し込むことが防止される。

コアの形状を図２の断面図に示すねじ山の間にある空間に位置する区画（１０）に示す。全ての既知のテーパ状のインプラントにおいてこれら区画の外縁を結ぶ線（８）は、図２に示すようになる。この形態のインプラントは挿入時に強い抵抗を生む。図３に示すごとく本発明におけるこのような区画を結ぶ線は平行線（５）となる。この形態においては、各区画の下部の直径と、歯槽側に隣り合う区画の上部の直径の差が小さいから、コアが骨を徐々に圧縮することが可能となる。このようにコアによって徐々に圧縮が行われることにより、インプラントを容易に挿入できると同時に、最終的な骨の圧縮の度合いを低下させることがなく、インプラントの安定性も確保される。これは、コアを構成する２つの隣り合う区画の直径の差は図２に示すような通常のインプラントと変わらないからである。このようなコアは、より傾斜角度の大きいテーパ形状を有するコアと同様に骨を圧縮できるので、最終的な骨の圧縮度はむしろ大きくなる。図３に示すごとく、本発明におけるコアの各区画を結ぶ線（５）の角度は、図２に示す通常のテーパ状インプラントにおける線（８）の角度よりも大きい。図３に示すインプラントは、図２に示すインプラント（そのコアの外縁を結ぶ線（８）は図２に示す角度をなす）と同様のテーパ形状をなしているが、図２に示すインプラントと比べて傾斜角度（図３における線（５）のなす角度）の大きいテーパ形状であるインプラントと同程度まで骨を圧縮することが可能である。またこのような骨の圧縮は徐々に行われるので、インプラントの挿入を容易にする。

図３に示すごとく、コアの区画（１０）外縁を結ぶ線（５）は互いに平行な直線である。図３に示す形態は一例に過ぎず、コアの外縁がその他の形状をなすように形成されても同様の機能が得られる。例えば、図４に示す例では、歯科用インプラントは外縁が曲線状のコア区画を有する。ねじ山（６）に対して歯冠側に位置するコア区画（４）の外縁をねじ山まで延長すると線（７）が描かれる。線（７）がねじ山（６）に対して歯槽側に位置するコア区画（３）内部を通過する場合、コアは骨を徐々に圧縮するが、コア外縁の歯槽側領域においてのみ強く骨が圧縮できる。図３に示す好適な実施形態においては、インプラントのコアの外縁を結ぶ線は互いに平行な直線である。このようなインプラントは、コアの外縁部全体において骨を徐々に圧縮するから、より円滑にインプラントが挿入される。

インプラントのねじ山のそれぞれは、好ましくは異なる形状を有する。図５におけるテーパ状領域（２２）の外表面は、新規な形状を有するねじ部（２８）を備える。ねじ部（２８）は段階的に変化する形状を有する。歯槽側端部（１４）において、ねじ部（２８）は傾斜角度が大きくて幅が狭く、高さが高い。これにより、容易にインプラントがねじを切りながら骨内部に進むことが可能になる。ねじ部（２８）のねじの先端は、インプラントの歯冠側端部（１２）に向かって幅広になり高さが低くなる。すなわち断面の水平方向の長さが小さくなる。ねじ部（２８）が徐々に幅が広くなるように形成されているので、歯槽側の鋭利なねじ山によりねじ切りされた密度の低い骨は、ねじ部（２８）の幅の広い部分により圧縮される。骨が圧縮されることによりインプラントの安定性が向上する。ねじ山の高さが歯冠側に向かって小さくなるようにインプラントを形成することにより、インプラントの挿入が容易になるとともに、挿入開始時の方向を保ちながらインプラントを挿入することが可能になる。インプラントの歯冠側端部（１２）から歯槽側端部（１４）に向かって鋭く、薄く且つ高くなるようにねじ部（２８）は形成されている。この実施形態においては、ねじ部（２８）はテーパ状で、インプラントのコアはねじ山と比較して傾斜角度の大きいテーパ形状をなすように形成されている。つまり、歯槽側領域におけるねじ山が高くなっている。この形態は、密度の高い骨に好適に使用可能である。密度の高い骨においては、血流が損なわれることによりインプラントが成功しないことがあるからである。図５に示す新規なインプラントは、十分な間隔で形成された高さのあるねじ山を備える。このような形状により、径の大きなドリルを用いて歯を掘削してインプラントを挿入した後に、スペースが残される。このスペースは、血管の増殖及び骨の再生を促進する。

図６はねじ部（２８）を詳細に示す図である。ねじ部（２８）はその各点において形状の異なるねじ山を有する。すなわちねじ部（２８）の１周Ｔのそれぞれは、ねじ部（２８）のその他の１周Ｔと異なる形状を有する。例えばインプラントは複数周のねじ山を備える。これらねじ山をＴ．ｓｕｂ．１、Ｔ．ｓｕｂ．２、Ｔ．ｓｕｂ．３、．．．Ｔ．ｓｕｂ．Ｎとする。各Ｔは歯槽側側面Ａ、歯冠側側面Ｃ、及びＡとＣを接続する平面Ｆを備える。歯冠側端部（１２）に向けて、Ｆの長さは長くなる。歯槽側端部（１４）に向けて、Ａ及びＣの長さは長くなる。

上述のように、第１回転目のねじ山Ｔ．ｓｕｂ．１は、歯槽側側面Ａ．ｓｕｂ．１、歯冠側側面Ｃ．ｓｕｂ．１、及びＦ．ｓｕｂ．１を備える。第２回転目のねじ山Ｔ．ｓｕｂ．２は、歯槽側側面Ａ．ｓｕｂ．２、歯冠側側面Ｃ．ｓｕｂ．２、及びＦ．ｓｕｂ．２を備える。Ｔ．ｓｕｂ．１、Ｔ．ｓｕｂ．２、Ｔ．ｓｕｂ．３、．．．Ｔ．ｓｕｂ．Ｎについて同様のことがいえる。すなわち、最も幅の狭い表面Ｆ．ｓｕｂ．１が歯槽側端部（１４）に隣接して位置し、最も幅の広い表面Ｆ．ｓｕｂ．Ｎが歯冠側端部（１２）に隣接して位置する。ねじ部（２８）の最も低い側面Ａ．ｓｕｂ．Ｎが歯冠側端部（１２）に隣接して位置し、最も高い側面Ａ．ｓｕｂ．１が歯槽側端部（１４）に隣接して位置する。また、ねじ部（２８）の最も低い側面Ｃ．ｓｕｂ．Ｎが歯冠側端部（１２）に隣接して位置し、最も高い側面Ｃ．ｓｕｂ．１が歯槽側端部（１４）に隣接して位置する。ねじ山の歯槽側端部はインプラントの長軸（９）に対して直角であっても、或いは（図５及び図６に示すごとく）非直角であってもよい。加えてねじ部（２８）の側面を平面として、先端部を丸みを帯びた形状をなすように形成してもよい。この場合、ねじ山の歯冠側端部においてねじ山が最も丸みを帯びるようにする。平面状の側面は、インプラントの軸方向の負荷により引き起こされるインプラントの微小移動を防ぐ。このことは、密度の低い骨において特に重要である。ねじ山の先端部Ｆは平面状であっても丸みを帯びていてもよい。ねじ山の各区画の角度とは、側面Ａと側面Ｃのなす角度をいう。図６に示す例においてはこの角度は約６０度である。骨を鋭角に切除するためには、ねじ山の各区画の角度は、好ましくは３０度から４０度、より好ましくは３５度とする。好ましくは全てのねじ山について、側面Ａ及び側面Ｃのなす角度を一定とする。或いは、歯冠側にむかって側面Ａ及び側面Ｃのなす角度が増加するようにしてもよい。この場合密度の低い骨をより効果的に圧縮できる。また或いは、密度の高い骨を圧縮するときは、歯冠側に向かってこのような角度が減少するようにしてもよい。

図１、図５及び図６に示す実施形態においては、ねじ部（２８）の一部のねじ山にのみ周面Ｆが備えられる。周面Ｆは好ましくは平面状で、ねじ部（２８）の歯槽側端部（１４）に隣接するねじを切るための部分には備えられない。また、歯冠側端部に向けてねじ山の１回転ごとに幅が大きくなるように周面Ｆは形成される。周面Ｆはインプラントの長軸（９）に対して好ましくは平行とするが、長軸（９）に対して傾斜していてもよい。

ねじ山もまたテーパ状である。つまり、ねじ山の先端部を結ぶ線（２３）はインプラントの長軸（９）と平行ではない。ねじ山はテーパ状で且つ歯槽側に向かって高くなるように形成される。これは、インプラントのコアがねじ山より傾斜角度の大きいテーパ形状であるためである。インプラントの歯槽側領域の幅が歯冠側領域と比べて狭いので、小径のドリルを用いてインプラントを挿入することができる。よって、骨を多く削る必要がなくなる。歯槽側の鋭利なねじ山が骨内部の小径の穴に入って骨を切削し始める。次のねじ山は歯冠側から歯槽側の方向で幅が広くなり、すなわちインプラントの幅が広くなるから、骨が圧縮される。しかし、ねじ山の高さは直前のねじ山と比べて低いので、ねじ山はその直前のねじ山が骨内部に形成した進路内を進むことができる。これによりインプラントが骨の密度の低い領域に滑ることが防止される。歯冠側に向けてねじ山の高さを低くすることにより、骨を徐々に圧縮するとともにインプラントを容易に挿入することが可能になる。上述のような徐々に小径となる圧縮コアと、このような徐々に小径となる圧縮ねじ山を組み合わせてもよい。好ましくはインプラントは１条以上のねじを有する。それぞれのねじ山が２倍のステップ（step）を有する２条ねじのインプラントを用いると、１条ねじのインプラントの場合に必要な回転数の半分の回転数で、同じ長さのインプラントを挿入可能である。またこの場合、インプラントの外面を損傷することなくインプラントの安定性を確保できる。

インプラントの最も歯槽側の領域の形態として、２つの形態が考えられる。１つは、平滑な丸みを帯びた形態である。このような形態は、インプラントが上顎洞のシュナイダー膜あるいは下顎神経近傍に配される場合に適する。このような形態により、これらの繊細な組織への損傷が防止される。この形態では、歯槽側端部から一定距離離れた位置からねじ山が形成される。図７Ａ及び図７Ｂに示す第２の実施形態における最も歯槽側の領域は鋭利な刃を備える。この刃は骨を切削して、インプラントの挿入を容易にする。歯科用インプラントの分野では、刃の形状としていくつかの形状が既知である。このような形状の歯槽側領域を備えるインプラントはセルフ・ドリリング・インプラント（self-drilling implant）と呼ばれる。

骨用のタップ部を備えるインプラントは、異なる方法で骨へ挿入される。骨用のタップ部を備えるインプラントを用いると、骨に予めねじ山を切っておく必要がない。骨用のタップ部を備えるインプラントはセルフ・タップ・インプラント（self tapping implant）と呼ばれる。タップ部は直線状、傾斜形状、或いは螺旋状のいずれであってもよい。インプラントの挿入を容易にするためには骨用タップ部螺旋状であることが好ましい。図７に示すタップ部（６０）は、複数のねじ山を横断してインプラントの全長の３分の１以上の長さを有する。好ましくは、タップ部はインプラントの全長の半分以上の長さを有するものとする。タップ部は非直線状であり、インプラントの周囲を取り囲むように形成される。タップ部はインプラントの図７Ａに示す面から図７Ｂに示すもう一方の面まで延出する。一方向からではタップ部の全体を見ることはできない。タップ部のこのような形状はインプラントの挿入を容易にする。よってインプラントが挿入されるときに１つのねじ山の一部分のみが骨を切削するから、インプラント挿入時の抵抗が低減される。上述のねじ山の形状とこのようなタップ部の形状を組み合わせて用いると、インプラントが挿入開始時の進路内を進むことができる。これは前のねじ山が骨内部に形成したスロット内を次のねじ山が進むことになるからである。２条ねじを用いると、より確実にインプラントを挿入開始時の進路内を進めることが可能である。インプラントは１つ若しくはそれ以上、好ましくは２つのタップ部を備える。

インプラントの最も歯冠側に位置する領域はインプラントの挿入の容易さ及び安定性に関係する。この領域は接合領域を有する。結合手段としてはいくつかの手段があるが、例えば図５に示すシングル・ステージ（single-stage）の実施形態における接合領域（１６）のようなスプラインなどが例示できる。接合領域（１６）は複数の面をもつソケット（例えば六角ソケット）を任意的に備える。また、図１に示す実施形態は機械的係止部分を備えないが、代わりに徐々に小径となる部分（１８）を備える。テーパ状部分（１８）はインプラントを挿入する深さ、すなわち移行歯肉カラーが骨から突出する長さを、より自由に選択できるようにする。しかしながらシングル・ステージのインプラントの変更形態においては、歯冠側領域（４４）が第２の傾斜部分（１９）を備えてもよい。この傾斜部分（１９）は係止部分として役立つ。

インプラントの傾斜角度が上述のごとく非常に大きい場合、最も歯冠側の領域は非常に幅が広くなる。このように幅の広い歯冠側領域は密度の低い皮質骨を圧縮するのに適する。皮質骨の密度があまり低くない場合は、このような形態はインプラントの挿入を難しくする。また、歯冠側領域の幅が広いと、インプラント周辺の骨への血流が妨げられることが医学的に立証されている。血流が妨げられると、高い率で骨吸収が起こるから、インプラントが成功しない。皮質骨の密度があまり低くない場合には好ましくは、歯冠側領域の傾斜角度を小さくして、インプラント本体の傾斜角度も小さくすることが好ましい。好ましくは、図８に示すごとく、歯冠側領域のうち最も歯冠側の部分（４８）は逆テーパ状とする。

インプラントは雌ねじ（６３）を備えてもよい。図５に示すごとく、雌ねじ（６３）は補綴学的部分と結合する。骨が細い場合には細いコアを用いなければならないが、コアが非常に細い場合には、コアに雌ねじを切ることはできない。よってインプラントがアバットメントと一体化されることはできない。このような実施形態においては、歯冠側の歯肉縁上部分はインプラントの挿入を容易にするとともに、将来的には補綴学的要素を支持するアバットメントとしても利用可能である。図８はこのような細い領域（７１）を有する実施形態を示す図である。細い領域（７１）は、インプラントのうち骨内部に存在する部分（７２）とアバットメント部分（７３）の間に位置する。アバットメント部分（７３）は、クラウンなどの補綴学的要素との結合が可能になるようにテーパ形状を有する。細い領域（７１）は歯茎とインプラントを密着させるので、骨の損失が防止される。アバットメント領域はその内部或いは外部に回転防止要素（７６）を備えてもよい。このような要素はインプラントの挿入を容易にする。図９は本発明に係るインプラントの別の実施形態を示す図であり、該インプラントはアバットメントと一体化されている。図８に示す実施形態と比べて図９に示すインプラントにおいては細い歯茎領域（７１）が長い。この実施形態では、内部六角形部分（７４）を利用してインプラントが挿入される。図１０は図８及び図９に示す実施形態と類似の実施形態を示す図であるが、アバットメント要素（７３）が幅広であるから、アバットメントを通常の形状にするためには、破線（７７）にしたがって研削を行う必要がある。補綴学的要素の挿入経路に対して傾斜するようにインプラントが配される場合に、この領域はアバットメントの使用を容易にする。図１１は図１０に示す例と類似の例を示す図であるが、この実施形態においてはインプラントのアバットメントを研削する必要は殆どない。図１１に示すインプラントは丸みを帯びたロッド（８０）を備える。ロッド（８０）は歯茎領域（７１）から歯冠側に突出している。アバットメント（８２）は内部孔（８３）を備え、内部孔（８３）はインプラントのロッド（８０）と噛合う。アバットメントをインプラント上に取り付けた後にアバットメントの角度が変更可能となるように、アバットメントは傾斜される。このように角度を変更するためには、ロッド（８０）を中心にアバットメントを回転させる。アバットメント（８２）の適切な位置が決定された後は、アバットメント（８２）はインプラントに接着されてもよい。別の好適な実施形態においては、ロッドはその周囲に回転防止要素（８７）を備える。回転防止要素（８７）はアバットメントの回転防止要素と噛合う。このような実施形態は、アバットメントがインプラントにセメント付けされる間のアバットメントのずれを防止するとともに、インプラントの印象を採取するためにも役立つ。このように採取された印象を用いてアバットメントが製作される。

図１２は別の好適な実施形態を示す図であり、歯冠側テーパ状領域（８５）が骨内部に配されている。このようにすると、領域（８５）上方で骨が成長することが可能である。テーパ状領域（９０）は骨レベル（９１）下方に位置する。歯冠側テーパ状領域（８５）の高さは０．５ｍｍ以上０．４ｍｍ以下とする。好ましくは該高さは１ｍｍ以上３ｍｍ以下であり、多くの場合１．３ｍｍ以上２．５ｍｍ以下である。この高さは、インプラントの直径にしたがって決定される。

以下の２つの理由で、インプラントは１つの部分からなるように形成される。（Ａ）歯冠側領域が細いので、この領域にねじ或いは孔を設けると、インプラントの機械的強度が下がる。（Ｂ）多くの場合、補綴額的要素との接続部分において、インプラントと補綴学的要素の間に微小な間隙が生じる。このような微小な間隙に細菌がコロニーを形成して、毒素を排出すると、骨吸収が起こる。１つの部分からなるインプラントは機械的強度が高い上に、微小な間隙を有さない。

好ましくは、インプラントのねじ山は高いステップを備える。最も一般的なインプランのねじ山は約０．６ｍｍのステップを有する。好ましくは本発明のインプラントは、ステップが１．５ｍｍ以上２．５ｍｍ以下、更に好ましくは２．１ｍｍのねじ山を有する。好ましくは、インプラントは２条ねじを備える。２つのねじ山は異なる点を始点としてインプラント周囲に設けられる。この形態のインプラントでは、一方のねじ山の任意の点と同じ水平高さにおいて、インプラントの反対側は必ずもう１つのねじ山を有する。ねじ山は骨に挿入されると同時にスロットを形成する。どのような骨に対しても、２条ねじは骨内部に２つの対向する緩やかなスロットを形成する。これらスロットにより、骨が容易に拡張されるので、インプラントを挿入しやすくなる。いずれも１．５ｍｍ以上の（好ましくは２．１ｍｍ以上の）ねじ山により骨内部に形成された２つの対向するスロットが、このような骨の拡張を可能にする。通常の０．６ｍｍのねじ山は骨内部にほぼ水平なスロットを形成するので、骨は拡張されず破砕される。上記のようなスロットを用いると、骨は破砕されず、弾力的に拡張される。好ましくはねじ山は歯冠側テーパ状領域（９２）の幅広部分を始点として形成される。この幅広部分が骨に達すると、該幅広部分の幅とほぼ等しい距離を挟む２点の間の骨が該幅広部分と反対の方向に押される。すなわちスロットの間に位置する骨の区画は互いから離れるように移動される。該幅広部分が骨の更に内部に挿入されると、このように移動された骨は元の位置に戻る。歯冠側区画（９０）は歯冠側に向けて小径となるように形成されているから、スロットの間にある骨の区画が元の位置に戻ることが可能になる。歯冠側テーパ状領域（９０）が挿入される部分の骨における全ての点がこのようなプロセスを経る。これは、ねじ山の始点の上部近傍にこの領域が配されるからである。結果として、骨内部にねじ切りされた領域が形成される。好ましくは図１２に示すごとく、歯冠側テーパ状領域（９０）の全長がねじ山を備える。この形態では、幅広部分（９２）は楕円状である。これは、歯冠側テーパ状領域に沿って形成された２条ねじ部分は１方向において直径が小さいからである。骨内部に形成されたスロットにはこのような楕円形状の長径方向で幅広部分（９２）が挿入されるから、幅広部分（９２）を楕円状とするとこの部分を骨内部へ容易に挿入できる。１若しくはそれ以上のねじ山を有する歯冠側テーパ状領域を骨内部に挿入すると、骨が弾力的に拡張されるから、このようなテーパ状領域は、挿入後には骨に覆われるようになる。骨内部の歯冠側テーパ状領域（８５）の高さをインプラントのねじ山ステップの高さとほぼ等しくすると最も効果的である。好ましくは骨内部の歯冠側テーパ状領域（８５）の高さは、ねじ山ステップの高さの半分より高いものとする。

別の好適な実施形態においては、歯冠側テーパ状領域全長にねじ山が形成される。ねじ山はインプラントのねじ山と同様のものとしてもよいが、別の好適な実施形態においては、歯冠側テーパ状領域のねじ山は、インプラントのねじ山よりも小さなねじ山ステップ及びねじ山高さを有する。この領域に小さなねじ山あるいはマイクロ・スレッド（微小ねじ構造）を形成すると、皮質骨に掛かる圧力をより均一に分散できる。

インプラントは予め穿孔された骨切り術手術部位に配されてもよい。このような手術部位は、インプラント本体の外径（すなわちねじ山同士の間の幅の狭い部分の幅）とほぼ同じ大きさであるか、或いはインプラントの外径よりも小さい。インプラントをそれより幅の狭い領域に配すると、骨が更に圧縮され、初期安定性が向上する。穿孔穴は円筒形状或いはテーパ形状のいずれであってもよい。好ましくは該穴は円筒形状として、その直径は骨の密度にしたがって決定する。密度の低い骨に対しては小径の穴を穿孔するか、又は穿孔を行わずにインプラントを挿入する。密度の高い骨に対しては大きな穴を穿孔する。この場合、骨とインプラントのコアの間の空間は血管により満たされるとともに、インプラントはねじ山の高いねじにより固定される。

図１２に示すインプラントは１つの部分からなるインプラントであり、突出要素（８８）を備える。突出要素（８８）は骨レベルから歯茎を介して口腔内に延出する。好ましくはこの突出要素は歯冠側に向けて小径となるように形成されて、差し歯などのクラウンを保持する。突出要素はアバットメントを保持する。好ましくはこのテーパ状突出要素（９３）は任意の種類の回転防止要素を備える。回転防止要素としては図１３Ａ乃至図１３Ｄに示すものが例示できる。図１３Ａは複数の突起部を備える突出要素（９３）を示す。該突起部は複数の嵌合式トランスファ・コーピングと噛合うアンダーカットを有する。図１３Ｂは１若しくは２つの突起部或いはスロットを備える突出要素（９３）を、図１３Ｃはテーパ状のスロットを備える突出要素（９３）を、図１３Ｄは六角形形状の突出要素（９３）を示す。六角形形状以外にもその他の多角形、楕円、星型、スプラインなどの形状を突出要素（９３）が有してもよい。好ましくはアバットメントはこのような回転防止要素と噛合う回転防止要素を備える。アバットメントの回転防止要素を嵌合式トランスファ・コーピングとともに用いて、インプラントの印象採取及び挿入を行ってもよい。マッチング・アバットメントの形状として数種類の形状がある。図１４は完全に解剖学的なアバットメントの例を示す図である。このようなアバットメントは解剖学的歯肉領域（９５）を備える。この解剖学的歯肉領域（９５）は複数の歯の歯肉縁下及び歯肉部分と噛合う。この形状のアバットメントを用いると、クラウンが歯茎から天然歯のように突出することが可能になり、高い審美的効果が得られる。外部形状（９６）は義歯の形状と噛合う形状である。アバットメントは直立していても傾斜していてもよい。傾斜したアバットメントの傾斜角度は、インプラントの長軸及びクラウンの軸のなす角度によって定められる。インプラント及びアバットメント内面の回転防止要素によって傾斜したアバットメントの正確な位置が保たれる。アバットメントの形状はその他の形状に適宜変更可能である。アバットメントは内部ソケット（９７）を備える。内部ソケット（９７）はインプラントの突出要素（９３）と噛合う。図１４Ａは傾斜した中切歯を示す図である。内部ソケット（９７）はアバットメントを貫通している。図１４Ａに示すごとくインプラントの突出要素（９３）がアバットメント外部まで突出している場合は、不要な部分を研磨してもよい。図１４Ｂは直立した小臼歯用のアバットメントの例を示す図である。このアバットメントは内部ソケットを備える。この内部ソケットは歯冠側に開口部を有さない。アバットメントの最も歯槽側の領域が骨レベルから上方に少なくとも０．５ｍｍの位置に固定されるように内部ソケット（９７）は設計される。通常は骨レベルから１ｍｍ以上３ｍｍ以下、好ましくは１．２ｍｍ以上１．７ｍｍ以下の位置にアバットメントの最も歯槽側の領域が配されるようにする。これは、この領域に微小な間隙が形成されて、骨吸収が起こる可能性があるからである。

通常より大型のアバットメントも使用可能である。このようなアバットメントは、図１５に示すような解剖学的歯肉領域を備える。歯科医師或いは歯科口腔技工師によりアバットメントはこのような形状に調節される。図１５Ａは直立した大型アバットメントを示す図であり、図１５Ｂは傾斜した大型アバットメントを示す図である。

別の好適な実施形態においては、イプラントの突出要素（９３）は解剖学的歯肉カラーを保持する。このカラーは複数の歯の歯肉縁下及び歯肉の切開部と嵌合する。突出要素はこのカラーを介して歯冠側に延出する。カラーの高さは変更可能である。つまり、歯肉組織の幅と、審美的要件にしたがって、骨からのカラーまでの距離を変更できる。図１４及び図１５に示すアバットメントに対しては好ましくは、カラーは骨レベルより上に配される。図１６はカラーの一例を示す図である。図１６Ａはカラーを示す側面図であり、図１６Ｂはカラーを示す平面図である。ここでは、カラーはインプラントの突出要素（９３）に取り付けられている。

歯冠側に向けて突出要素の径が小さくなっている場合は、アバットメント及びカラー内部のソケットの大きさを変えることにより、骨からアバットメント或いはカラーまでの距離を調節できる。ソケットが大きいほど、アバットメント或いはカラーをより骨に近く挿入することが可能なる。インプラントの挿入と同時にカラー或いはアバットメントが挿入されてもよい。これによりカラー周囲に歯茎が再生されて、カラーに適切な形状が与えられる。この場合カラー或いはアバットメントはヒーリング・キャップとして役立つ。インプラントはヒーリング・キャップ（healing cap）を備えなくても、或いは通常のヒーリング・キャップを備えてもよい。通常のヒーリング・キャップは円筒形の大型アバットメントと類似の形状を有する。

図１７はアバットメント、カラー、インプラントを１つのアセンブリとした実施形態を示す斜視図である。図１７Ａはインプラントの好適な実施形態を示す図である。図１７Ｂは傾斜したアバットメントの一例を示す図であり、図１７Ｃはアバットメントを備えるインプラントを示す図である。図１７Ｄはカラーを示す斜視図であり、図１７Ｅはカラーを備えるインプラントを示す図である。図１７Ｆは球状アタッチメントを備えるインプラントを示す図である。球状アタッチメントを取り付ける場合は、予め突出要素（９３）の高さが低くされる。アバットメントは骨レベル（９１）から細い領域（９８）を介して上方に配される。このようにすると、歯茎が成長して骨を覆うことが可能になり、骨の口腔内への露出が防止される。アバットメント及びカラーが生体適合性材料或いはセラミック材料からなってもよい。生体適合性材料としては、チタン、ジルコニウム、或いは金が例示できる。

突出要素とアバットメント或いはカラーとの結合を強固にするためにはいくつかの方法が考えられる。アバットメント或いはカラーは突出要素に接着されてもよい。またアバットメントは突出要素と正確に噛合うように製造されてもよい。このようにすると、或る程度の力を加えると、アバットメントが突出要素に緊密に固定される。また、摩擦によりアバットメントのずれが防止される。このような例においては好ましくは、アバットメントは少なくとも１点においてアンダーカットと接する。これにより、クラウン・リムーバを用いて歯科医師がアバットメントを取り除くことが可能になる。別の好適な実施形態においては、アバットメントはロッキング構造を有する。図１８はロッキング構造の例を示す図である。突出要素（９３）は小さなＶ字型切欠き（９９）或いはスロットを備える。アバットメントは小径の穴部（１００）を備え、この穴部（１００）はＶ字型切欠き（９９）と嵌合する。側面からこの穴部（１００）を介して、小型のピンがＶ字型切欠き（９９）内に挿入される。これにより、アバットメントが突出要素に固定されるとともに歯冠側にずれるのが防止される。別の好適な実施形態においては、アバットメントの抜取りを容易にするために、穴部（１００）がねじを備えて、アバットメントが小型のねじによって固定されてもよい。この小型のねじは、側面からノッチ或いはスロット（９９）内に挿入される。図１９は突出要素の更に別の好適な実施形態を示す図であり、該突出要素は複数のフィンガ（１０１）と突出要素の中央部に位置する穴部（１０２）を備える。中空アバットメント（１０３）が突出要素上に載置されて、小型のピンが穴部（１０２）内に挿入される。このときフィンガ（１０１）はアバットメント内面に圧力を加える。したがってアバットメントが突出要素に強固に接続される。別の好適な実施形態においては、突出要素の基部すなわちフィンガが分岐する高さより低い位置に、ねじ部（１０４）が設けられる。この場合、穴部（１００）内部のねじ部（１０４）にはピンの代わりに小型のねじが螺合される。ねじ部（１０４）は穴部（１０２）より僅かに大きな径を有するので、ねじがより深く挿入されるとともに、アバットメントにフィンガがより強く押し付けられる。このような形態においては、アバットメントは容易に抜取り可能である。

図２０は１つの部分からなるインプラントの別の好適な実施形態を示す図であり、アバットメントは横方向から取付け位置に配される。図２０Ａに示すインプラントは、幅の広い領域（１０５）と、この領域の下方に配される幅の狭い領域（９８）を備える。この幅の広い領域（１０５）から背の低い要素（１０６）が突出する。背の低い領域（１０６）の高さは、０．５ｍｍ以上３ｍｍ以下で、好ましくは１ｍｍ以上２ｍｍ以下である。背の低い領域（１０６）はまた、六角形形状の回転防止要素を備える。好ましくは、背の低い領域（１０６）上方に、テーパ状要素（１０７）が配される。図２０Ｂに示すアバットメントは、背の低い要素（１０６）及び幅広でテーパ状要素（１０７）と嵌合するスロットを備える。図２０Ｂはアバットメントのスロットが配されている側面を示す図である。図２０Ｃはアバットメントを示す側面図である。破線（１０８）はアバットメントの一方の側面に貫通するスロットを示す。図２０Ｄは図２０Ｂ及び図２０Ｃに示すアバットメントと図２０Ａに示すインプラントを示す図であり、該アバットメント上に該インプラントが配されている。図２０Ｅは傾斜したアバットメントを備えるインプラントを示す図である。図２０に示すアバットメントは横方向から挿入されてインプラントの回転防止要素（１０６）に嵌合される。幅広のテーパ状要素により、アバットメントの歯冠側へのずれが防止されるが、該アバットメントの横方向への移動は防止されない。横方向への移動を防止するためには以下のような方法がある。（１）適切なキャップ（１０９）をアバットメント頂部に配するか、或いはクラウンを用いる。（２）アバットメントのスロット壁面のうち幅広のテーパ状要素（１０７）下方に位置する部分に穴部（１１５）を穿孔する。幅広のテーパ状要素（１０７）下方において、横方向からこの穴部（１１５）を介して、背の低い要素（１０６）までねじ或いはピンを挿入する。穴部（１１５）の側面は図２０Ｃに示される。（３）穴部（１１５）の間に結紮糸を通すとともに、幅広のテーパ状要素下方の中空部に歯科用充填剤或いは一般的な充填剤を充填する。アバットメントがその全周にスロットを備える場合には、結紮糸がスロットに通されてもよい。（４）アバットメントがインプラント内に密着して嵌合するように製造される。この場合、アバットメントはインプラント内に押し込まれる。

図２０Ｅに示す傾斜したアバットメントのスロットは、図２０Ｅにおけるアバットメントの左側すなわち該アバットメントの傾斜と反対側或いは該アバットメントの右側すなわち傾斜した側のいずれに設けられてもよい。アバットメントの左側にスロットが設けられる場合は、幅広のテーパ状要素（１０７）の左下方に中空部が残され、アバットメントの右側にスロットが設けられる場合は、幅広のテーパ状要素（１０７）の右下方に中空部が残される。或いは、傾斜したアバットメントの傾斜の向きに対してこれ以外の方向にスロットが設けられてもよい。適切なキャップ（１０９）或いはクラウンが用いられる場合には、該中空部は閉塞される。或いは該中空部は歯科用充填材で充填される。適切なキャップ（１０９）或いはクラウンはアバットメントにセメント付けされる。或いは適切なキャップ（１０９）であればアバットメントに摩擦嵌合されることも可能である。好ましくは適切なキャップ（１０９）或いはクラウンはアバットメントにねじ止めされる。図２０Ｅに示す適切なキャップ（１０９）或いはクラウンはねじ切りされた小径の穴部を備える。小型のピン或いはねじをこの穴部を介して中空部（１１１）（或いは穴部が反対方向に穿孔される場合は中空部（１１０））に挿入する。この小型のねじはアバットメント及び適切なキャップをインプラントに固定する。アバットメントの傾斜の方向に対する穴部の位置が異なる少なくとも２種類の傾斜したアバットメントがあるので、ねじ切りされたクラウン或いはブリッジにいずれの方向からねじをねじ込むかを、歯科医師が選択できる。ねじの位置は完成したインプラントの美観に重要な影響を及ぼす。市販される通常のアバットメントでは、インプラントが口腔側に傾斜する場合は口腔側に開口した穴部からねじが挿入される。つまり、クラウンの口腔側の面が穴を備えることになるが、このような穴を覆うことは非常に困難である。横方向からねじを挿入する方法も知られているが、歯科口腔技工学的に極めて困難である。図２０に示す実施形態は横方向からのねじ込みによる修復法を可能にするものである。このような方法は容易に実行可能で、且つ審美的にも優れている。別の好適な実施形態として、図２０Ｂ及び図２０Ｅのアバットメントはその外面に適切なキャップ或いはクラウンの回転を防止するための回転防止構造を備える。これらの実施形態においては、適切なキャップ及びクラウンはその内部にも回転防止構造を備える。このような内部の回転防止構造は、アバットメントの回転防止構造と嵌合する。図２０Ｆは例えば六角形形状を有する回転防止要素（１１３）を備えるアバットメントの実施形態を示す図である。インプラントの幅広のテーパ状要素（１０７）もまた回転防止要素を備えてもよい。好ましくは、要素（１０７）の回転防止要素は、インプラントの背の低い要素（１０６）の回転防止要素と嵌合する。これら２つの回転防止要素は、例えば六角形形状を有する。図２０Ｇはインプラントの別の好適な実施形態を示す図であり、該インプラントは幅広のテーパ状要素（１０７）の代わりに球状要素（１１４）を備える。このような実施形態においては、インプラントは球状アタッチメントとして、着脱可能な補綴物を支持する。この実施形態によると、様々な修復が可能になる。例えばセメント付けされる修復物、ねじ止めされる修復物、着脱自在な修復物による修復が可能である。図２０Ｇに示す実施形態においては、ヒーリング・カップが横方向から挿入される。回復カップはその内部に弾性要素を備え、この弾性要素はインプラントの球状部（１１４）を保持する。これにより適宜力を加えることで、ヒーリング・カップが水平方向に着脱可能となる。図２０に示すインプラントの別の好適な実施形態においては、図１６及び図１７に示す実施形態と同様に該インプラントに横方向から歯肉カラーが取り付けられる。図２０Ｈはアバットメント（或いは適切なキャップ）の別の好適な実施形態を示す図であり、該アバットメント（或いは適切なキャップ）は傾斜面に球状アタッチメントを備える。この形態のアバットメントを利用すると、歯科医師は複数のインプラントそれぞれの球状アタッチメント同士を平行に配置できる。このような配置は通常の修復システムにおいては困難を伴うものである。

回転防止要素（１０６）及び（１０７）を備える突出要素はインプラントの挿入及び適切なトランスファ・コーピングを用いた印象採取のために利用することもできる。この実施形態の利点は、クラウンが所定位置に存在する限りアバットメントが脱落することがないこと、及び傾斜したアバットメント或いは短いアバットメントを用いた場合に突出要素を研削する必要がないことである。尚、上述した実施形態にも研削の必要がないものが挙げられている。図２０はアンダーカット付きの突出要素を備えたインプラントの例を示す図である。このアンダーカットは横方向から取り付けられるアバットメントをインプラントに接続する。

インプラントが回転防止要素を備える実施形態の全てにおいて、アバットメント或いはカラーが対応する回転防止要素を備えることが好ましい。イアバットメントがインプラントに取付け可能であれば、インプラント及びアバットメントが同じ数の突出要素又はスロット或いは同じ角度の回転防止要素を備える必要はない。

上記した全てのアバットメント及びカラーは、異なる高さ、異なる幅、異なる角度を有してもよく、また、骨レベルから異なる高さに配されてもよい。このようなアバットメント及びカラーの歯肉縁下部分および歯肉縁上部分もまた、異なる高さ及び異なる幅を有してもよい。

本発明のインプラントの全てのインプラントは複数の表面を備える。インプラントはマシン表面を備えてもよいが、好ましくは目の粗い表面（例えばTiUnite、Ｓ．Ｌ．Ａ、Osseotite、Hydroxyapatite）或いは成長因子及び活性タンパク質（Ｂ．Ｍ．Ｐ）を有する生体活性表面を備える。好ましくは目の粗い表面はインプラントの骨に埋設される部分に沿って配される。また好ましくは該目の粗い表面はインプラントの幅の狭い領域（９８）まで延出する。

上記の実施形態にしたがうと、密度の低い骨に特に適した歯科用インプラント・フィクスチャが提供される。骨の密度の低い領域としては、下顎後方及び上顎が挙げられる。インプラントはテーパ形状及び独特の雄ねじ形状を有することにより、埋め込み時に高い安定性を有するとともにその挿入が容易である。インプラントは、その上面から下方に１ｍｍ以上３ｍｍ以下にある点を始点として、テーパ形状を有する。雄ねじ部もまたテーパ状であるとともに、インプラントの歯冠側から歯槽側にかけて該雄ねじ部の形状は変化している。つまり、インプラントの歯槽側端部において、ねじ山は幅が狭く高い。このような形状はねじ切りされていない骨にねじ込まれるのに適する。またインプラントの歯冠側端部において、ねじ山は幅が広く丸みを帯びている。このような形状は歯槽側端部にねじによりねじ切りされた骨を圧縮するのに適する。更に、ねじ山はその歯槽側側面にねじ山の外周面と直角である平面を任意で備える。ねじ山はインプラントの歯冠側端部において最も高く、インプラントの歯槽側端部において低い。インプラントの歯冠側端部は任意でフレア状領域を備える。この領域は機械的係止部分として、密度の低い骨にインプラントが過度に深く挿入されるのを防止する。インプラントの歯槽側端部は、丸みを帯びた形状を有するとともに、骨以外の組織と接触する危険を伴うような注意力を要する場面においては、セット・バックするねじ山を備える。インプラントを１つの部材から形成して、歯冠側皮質骨近傍の骨に埋入される領域が歯冠側に向かって小径となるようにしてもよい。

上記した歯冠側領域、コア、ねじ部及び歯槽側領域を全て組み合わせると、挿入が容易で、歯茎への穿孔を最小限に抑制でき、且つ位置決めが容易で、骨内部での安定性が高く、骨内部の歯冠側テーパ状領域の上方に骨を残存させることが可能なインプラントが提供される。この領域上方に骨が存在することで、歯茎が支持されるとともに、歯茎が所望の形状、特に歯と歯の間の歯茎（歯間乳頭）の高さが維持される。歯間乳頭の高さは、審美性にとって極めて重要である。本発明に係るインプラントは小径のドリルで穿孔した穴に挿入可能であり、そのコア及びねじ部がテーパ状で、ねじ山がその各部において異なる形状を有し、その歯冠側領域が逆テーパ状であることから、このように骨が残存されることが可能となる。全ての要素の組み合わせ方及びそれらの配置次第で、優れた審美的効果が得られる。

以上に本発明の実施形態をいくつか例示してきたが、これら実施形態に変更を加えたり構成の一部を置き換えることが可能である。例えば上記した実施形態の一部の構成を対応する構成なしに用いることも可能である。したがって、以下の請求の範囲は、本明細書中に開示した実施形態の範囲に相当するように広く解釈されるべきである。

本発明に係る歯科用インプラントの実施形態を示す側立面図である。 従来のテーパ状歯科用インプラントを示す断面図である。 本発明に係る歯科用インプラントの実施形態を示す断面図であり、該インプラントは段階的圧縮コアを備える。 本発明に係る歯科用インプラントの実施形態を示す断面図であり、該インプラントのコア部分は丸みを帯びた輪郭線を有する。 本発明に係る歯科用インプラントを示す断面図である。 図５に示す歯科用インプラントの部分拡大図である。 本発明に係る歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図である。 図７Ａに示すインプラントの他側を示す側立面図である。 本発明に係る歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該インプラントの歯冠側端部は歯冠側方向に先太の形状を有する。 本発明に係る歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該歯科用インプラントはアバットメントと一体化されている。 本発明に係る歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該歯科用インプラントはアバットメントと一体化されている。 本発明に係る歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該歯科用インプラントは合着のためのアバットメントと一体化されている。 一体型インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該インプラントの歯冠側領域は歯冠側に向けて小径となる。 図１２に示すインプラントとともに使用可能な回転防止要素の一例を示す側立面図である。 図１２に示すインプラントとともに使用可能な回転防止要素の別の例を示す側立面図である。 図１２に示すインプラントとともに使用可能な回転防止要素の別の例を示す側立面図である。 図１２に示すインプラントとともに使用可能な回転防止要素の別の例を示す側立面図である。 図１２に示すインプラントに上方から嵌合する完全に解剖学的であるとともに傾斜したアバットメントを示す側立面図である。 図１２に示すインプラントに上方から嵌合する完全に解剖学的であるとともに傾斜したアバットメントを示す側立面図である。 図１２に示すインプラントに上方から嵌合する直立した大型のアバットメントを示す側立面図である。 図１２に示すインプラントに上方から嵌合する傾斜した大型のアバットメントを示す側立面図である。 図１２に示すインプラントに上方から嵌合する歯肉を模擬した形状を有するカラーを示す図である。 図１６Ａに示すカラーを示す平面図である。 一体型インプラントの別の実施形態を示す斜視図であり、該インプラントの歯冠側領域は歯冠側方向に小径となる。 図１７Ａに示すインプラントに上方から嵌合するアバットメントの別の実施形態を示す斜視図である。 図１７Ｂのアバットメントを備える図１７Ａに示すインプラントを示す斜視図である。 図１７Ａに示すインプラントに上方から嵌合するカラーの別の実施形態を示す斜視図である。 図１７Ａに示すインプラントを示す斜視図であり、該インプラントは図１７Ｄに示すカラーを備える。 図１７Ａに示すインプラントを示す斜視図であり、該インプラントは球状アタッチメントを備える。 ロッキング構造を備えるアバットメントを示す側立面図である。 本発明に係るインプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該インプラントはアバットメントとロックされるロッキング構造を備える。 一体型歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図であり、該インプラントはアバットメントが横方向から挿入可能となるように歯冠側方向に小径となる。 図２０Ａのインプラントに横方向から取り付けられる直立型アバットメントを示す図である。 図２０Ｂのアバットメントを示す側立面図である。 図２０Ｂのアバットメントを備える図２０Ａのインプラントを示す側立面図である。 傾斜したアバットメントを備える図２０Ａのインプラントを示す側立面図である。 外部回転防止要素を備える図２０Ｂのアバットメントを示す斜視図である。 インプラントは球状の歯冠側領域を備えた一体型歯科用インプラントの別の実施形態を示す側立面図である。該球状の歯冠側領域は、アバットメントを横方向から取付け可能にするととともに、球状アタッチメントとして利用可能である。 傾斜した球状アタッチメントを備えるアバットメントを示す側立面図である。

Claims (29)

1. 歯冠側端部と歯槽側端部を有する本体を備える歯科用インプラントであって、
   前記歯槽側端部が螺旋状のテーパねじ部を有するテーパ状コアを備え、
   前記螺旋状のテーパねじ部が前記テーパ状コア周面に配され、
   前記螺旋状のテーパねじ部が前記コアを複数のコア区画に分割しており、
   前記複数のコア区画が歯冠側及び歯槽側においてねじ山により境界され、
   前記コア区画のそれぞれが、前記コア区画と前記コア区画の歯冠側にあるねじ山との境界線に沿って前記テーパ状コアを切断した横断面として定義される歯冠側領域と、前記コア区画と前記コア区画の歯槽側にあるねじ山との境界線に沿って前記テーパ状コアを切断した横断面として定義される歯槽側領域を備え、
   前記本体の前記歯槽側端部がその少なくとも１つの領域における母線の下方への延長線として定義されるコア想像線、同一のコア区画の前記歯冠側領域と前記歯槽側領域を結ぶ線として定義されるコア区画想像線、及び前記ねじ部の外側縁を結ぶ線として定義されるねじ部想像線について、
   前記歯科用インプラントの長軸と前記コア区画想像線のなす角度が前記長軸と前記コア想像線のなす角度より大きく、前記長軸と前記コア想像線のなす角度が前記長軸と前記ねじ部想像線のなす角度より大きいことを特徴とするインプラント。
2. 前記歯槽側端部の少なくとも１つの領域が、異なる形状のねじ山が形成された螺旋状テーパねじ部を前記コアに沿って備え、
   前記ねじ部が歯槽側側面、歯冠側側面、前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面、及び前記コアと接するねじの谷を備え、
   前記ねじ部のねじ高さが前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する前記側面と前記ねじの谷の間の距離により定義され、
   前記ねじ部の前記歯槽側側面と前記歯冠側側面を接続する側面の長さが、前記歯槽側端部近傍において最も短く、前記歯冠側端部近傍において最も長くなるように、前記歯槽側端部の前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において前記側面が前記歯冠側端部の方向に向けて次第に長くなるように形成され、
   前記ねじ部の高さが前記歯冠側端部近傍において最も低く、前記歯槽側端部近傍において最も高くなるように、前記インプラントの前記少なくとも１つの領域のほぼ全長において、前記ねじ高さが前記歯槽側端部に向けて次第に高くなるように形成されることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
3. 前記ねじ部の前記歯槽側側面が前記コアから棚状に突出した平面を備え、前記ねじの幅が前記歯槽側側面と前記歯冠側側面の間に延出する外周面により更に定義されることを特徴とする請求項２記載のインプラント。
4. 前記外周面が前記コアから棚状に突出した前記平面とほぼ直角である平坦な面を備え、
   前記平坦な面が前記歯槽側端部から前記歯冠側端部に向けて次第に大きくなる幅を有することを特徴とする請求項３記載のインプラント。
5. 前記歯槽側端部において前記平坦な面が鋭く且つ薄くなることを特徴とする請求項４記載のインプラント。
6. 前記歯槽側端部が丸みを帯びた領域を備えることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
7. 前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であることを特徴とする請求項８記載のインプラント。
8. 前記セルフ・タップ可能なねじ部が前記丸みを帯びた領域から離れて位置することを特徴とする請求項７記載のインプラント。
9. 前記コア区画想像線が平行線であることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
10. 前記コア区画想像線が非平行線であることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
11. 前記コア区画外側縁が直線状であることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
12. 前記コア区画外側縁が非直線状であることを特徴とする請求項１記載のインプラント。
13. 前記外側縁が前記インプラントの前記長軸と平行であることを特徴とする請求項２記載のインプラント。
14. 前記インプラントの前記本体がテーパ状で、前記歯槽側端部近傍の前記ねじ部がセルフ・タップ可能であり、骨を切削できることを特徴とする請求項２記載のインプラント。
15. 前記歯槽側端部が螺旋状タップ部を備え、
    前記螺旋状タップ部が前記インプラントの一端から他端まで前記インプラントの長さの３分の１以上の長さ延出することを特徴とする請求項２記載のインプラント。
16. 前記歯冠側端部の最も歯冠側部分が歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなり、前記歯冠側端部の幅が狭いことを特徴とする請求項１５記載のインプラント。
17. 前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が骨と接することを特徴とする請求項１６記載のインプラント。
18. 前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分のうち幅の広い領域が骨に挿入されているときに、該骨が弾力的に拡張可能であり、前記歯冠側方向にテーパ形状である部分の幅の狭い領域が骨に挿入された後に該骨が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分を覆うように回帰可能となるように、前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が形成されることを特徴とする請求項１７記載のインプラント。
19. 前記インプラントが１より多いねじ山を備えることを特徴とする請求項１８記載のインプラント。
20. 前記ねじ山が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分に達していることを特徴とする請求項１９記載のインプラント。
21. 前記インプラントの前記前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなる部分が複数のねじ山を備えることを特徴とする請求項１９記載のインプラント。
22. 前記インプラントの前記歯冠側にむけてテーパ状に径が小さくなる領域が微小ねじ構造を備え、
    前記微小ねじ構造が歯槽側端部上のねじ部よりも小さいことを特徴とする請求項１９記載のインプラント。
23. 前記インプラントが突出要素を備え、
    前記突出要素が歯茎から突出するとともに歯科用補綴物と接続可能であることを特徴とする請求項１９記載のインプラント。
24. 前記突出要素と前記インプラントが一体化されていることを特徴とする請求項２３記載のインプラント。
25. 前記突出要素が少なくとも１つの領域において回転防止要素を備えることを特徴とする請求項２４記載のインプラント。
26. 前記突出要素が前記歯冠側に向けてテーパ状に径が小さくなることを特徴とする請求項２５記載のインプラント。
27. 前記突出要素が天然歯を模擬した形状を有する幅の広いカラーを備えることを特徴とする請求項２６記載のインプラント。
28. 前記突出要素が横方向からアバットメントに取り付けられることを特徴とする請求項２３記載のインプラント。
29. 前記突出要素が回転防止要素を備え、
    少なくとも部分的に前記突出要素の径よりも大きい径を有する幅の広い要素が前記突出要素上方に備えられることを特徴とする請求項２８記載のインプラント。
    
    

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