JP2007284414A - テトラカルボン酸又はそのポリエステルイミド、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、有益で新規な脂環式ポリエステルイミドを提供する。
【解決手段】 エステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類を原料としてアミンと反応させて得られる脂環式ポリエステルイミド前駆体をイミド化することにより誘導される脂環式ポリエステルイミドが産業分野において有益な材料となることを見出した。
【選択図】 なし
Description
また近年、特にマイクロプロセッサーの演算速度の高速化やクロック信号の立ち上がり時間の短縮化が情報処理・通信分野で重要な課題になってきているが、そのためには絶縁膜として使用されるポリイミド膜の誘電率を下げることが必要となる。また電気配線長の短縮のための高密度配線および多層基板化にとっても、絶縁膜の誘電率が低いほど絶縁層を薄くできる等の点で有利である。
また芳香族単位を脂環族単位に置き換えてπ電子を減少することも低誘電率化に有効な
手段である(非特許文献3)。
高分子討論会予稿集,53,4115(2004) Macromolecules,24,5001(1991) Macromolecules,32,4933(1999)
第二の要旨は、上記式(1)〜(3)中のAが芳香族基及び/または脂肪族基を有する2価の基であることを特徴とする上記記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類に存する。
第四の要旨は、核水素化トリメリット酸無水物を酸ハライドに変換し、得られた酸ハライドとジオールを塩基性物質の存在下に反応させることを特徴とする上記記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類の製造方法に存する。
第七の要旨は、上記式(1)〜(3)で示されるエステル基含有脂環式テトラカルボン
酸二無水物類とジアミン類を環化イミド化反応させることを特徴とする脂環式ポリエステルイミドの製造方法に存する。
第八の要旨は、上記式(4)で示される脂環式ポリエステルイミド前駆体を環化イミド化反応させることを特徴とする脂環式ポリエステルイミドの製造方法に存する。
第十の要旨は、上記式(5)の構成単位を含む樹脂からなるフィルムに存する。
第十一の要旨は、上記式(5)の構成単位を含む樹脂で製造されたフィルムを用いた液晶用部材に存する。
本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物とは、下記式(1)で表されるような両端が無水物であるものを指し、エステル基含有脂環式テトラカルボン酸類とは、下記式(2)で表されるような一方の端が縮合環を形成し、他方の端がジカルボン酸であるもの、及び下記式(3)で表されるようなテトラカルボン酸を指す。
具体的には、式(1)〜(3)中、Aは任意の2価の基であればよい。本発明の化合物は、2つのシクロヘキサン環とそれをつなぐ2つのエステル基を有するという構造が特徴であり、この構造を有することにより、本発明の脂環式ポリエステルイミド樹脂とした時に高い透明性、高い靭性、高い溶媒溶解性といった物性を得ることができる。つまり、Aの構造が任意の2価の基であっても、本化合物のこれらの物性に関しては大きくは影響を与えない傾向にある。従って、Aの構造は任意の2価の基であれば、特に制限されない。
の場合である。
AとX1、X2、X3、X4、X5及びX6の組み合わせとして好ましい構造としては、Aが環状構造を有する基であり、X1、X2、X3、X4、X5及びX6がそれぞれ独立にハロゲン原子もしくは水素原子で構成されるものである。さらに好ましくはAが環状構造を有する基でX1、X2、X3、X4、X5及びX6がすべて水素原子で構成されるものである。
本発明の脂環式ポリエステルイミド前駆体と脂環式ポリエステルイミドとは、下記式(4)で表されるようなポリエステルイミド前駆体と下記式(5)で表される脂環式ポリエステルイミドを指す。
の結合位置が交換されていてもかまわない。
式(4)および(5)におけるBは任意の2価の基であればよい。本発明の脂環式ポリエステルイミド前駆体(4)と脂環式ポリエステルイミド(5)は、2つのシクロヘキサン環とそれをつなぐ2つのエステル基を有するという構造に特徴があり、この構造を有することにより高い透明性、高い靭性、溶媒溶解性がもたらされる。つまり、Bの構造が任意の2価の基であっても、本化合物のこれらの物性に関しては大きくは影響を与えない傾向にある。従って、Bの構造は2価の基であれば、特に制限されない。
この2価の基の中でも、Bの構造として好ましいものとしては、環状構造を有する基である。環状構造を有する構造とは、Bに芳香族基を含む構造および脂環構造を含む構造をさす。Bに環状構造があると脂環式ポリエステルイミド樹脂とした時の耐熱性および、寸法安定性の向上がもたらされる。また、脂環構造を含む場合には耐熱性を維持しつつ、UV領域の光吸収を低減させることができる、という特徴も得ることができる。
具体的な構造として例を挙げると、芳香族基としてはいずれも2価の基であるフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルホン基、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェニル基、メチレンジフェニル基、イソプロピリデンジフェニル基、3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル基、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル基、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル基などが上げられ、脂環構造としては、シクロヘキシレン基、シクロヘキサンジメチレン基、ジシクロヘキシルエーテル基、メチレンジシクロヘキシル基、デカヒドロナフチレン基等が挙げられる。さらにこれらの基同士が、あるいは他の基と連結基で複数結合された構造となっていてもかまわない。ここで適用可能な連結基の具体的な例としては、メチレン基(−CH2−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−)、ケト基(−C(O)−)、スルホニル基(−SO2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、9,9−フルオレニリデン基などを挙げることができる。なお、上記した2価の環状構造を含む基に関しては、特にその置換位置は問わない。例えばフェニレン基であれば1,4−位で置換すると−B−の構造が直線となるため耐熱性が向上し、線膨張係数が小さくなることが期待され好ましい。一方、フェニレン基において1,3−位で置換した場合には、−B−構造が屈曲し、溶媒に対する溶解性の向上が期待されるので好ましい。従って、置換位置については、必要とされる物性に応じて適宜ふさわしい構造のBを選択することが好ましい。
Rは水素原子、炭素数1から12のアルキル基またはシリル基を表す。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シリル基としては例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、使用可能な例として挙げられる。中でも、脱離能が高いことからトリメチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基が好ましい。
本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類は、例えば芳香環が水素化されたトリメリット酸無水物(以下、核水素化トリメリット酸無水物と称す)とジオールを原料として製造できる。下記に一例としてその製造方法を記載するが、本発明に於いては上記した構造のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類を製造できればよく、その製法は限定されない。
ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
その際採用される温度は、下限が50℃以上、好ましくは120℃以上、上限が250℃以下、好ましくは200℃以下である。
05MPaである。
1,2−ジカルボン酸部分を酸無水物環に変換する方法としては、上記した減圧下に過熱する方法の他に有機酸の酸無水物と処理する方法も採用することができる。その際に使用される有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが上げられるが、過剰に使用した際の除去の容易さから無水酢酸が好適に用いられる。
このようにして得られる酸無水物環を持つ化合物の割合は、通常95モル%以上、好ま
しくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。
次に、こうして得られた核水素化トリメリット酸無水物とジオールからジエステルを合成する。その際のエステル化反応(2分子の核水素化トリメリット酸の4位のカルボキシル基とジオールとの反応)は、通常有機合成的なエステル化反応として知られた反応を任意に採用できる。例えば、カルボン酸とアルコールから直接脱水してエステル化する方法、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略される)や、ジエチルアゾジカルボキシレート/トリフェニルホスフィンの組み合わせなどの脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法、カルボン酸とカルボン酸のアルコールエステルからエステル交換反応させる方法、カルボン酸を酸ハライドに変換した後に塩基性物質の存在下にアルコールと反応させる方法、カルボン酸を酸無水物に変換した後に塩基性物質の存在下にアルコールと反応させる方法、脂環式テトラカルボン酸をエステル交換法により製造する方法(J. Polym. Sci. Part A, 4, 1531−1541(1966))などである。
以下には、一例として酸ハライドに変換する方法について具体的に記述するが、本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類を製造する方法は特にこれに限定されない。また、酸ハライドとする場合の例として、核水素化トリメリット酸無水物を酸クロリド化しこれとジオールから核水素化トリメリット酸無水物のジエステルを製造する方法を取り上げて以下記述するが、酸クロリドの他に酸ブロミド、酸アイオダイドとする方法も全く同様に採用することができる。
また、塩素化剤を用いて核水素化トリメリット酸無水物を塩素化する際、N,N−ジメチルホルムアミドやピリジン等の触媒を用いることもできるが、これらを用いなくても反応に大きな支障はない。触媒の存在により、得られた塩素化物がかえって著しく着色する場合があるので、ポリエステルイミド膜の透明性を重視する用途の場合は生成物の着色に注意が必要で、その場合はこれら触媒を使用しないで製造するのが好ましい。
50モル等量以下の量が使用される。
反応は室温でも行えるが、通常過熱して行う。採用される温度は、下限が30℃、好ましくは50℃、上限は使用する塩素化試剤の還流温度である。
得られた酸塩素化物はヘキサンやシクロヘキサン等の無極性溶媒を用いて再結晶することでより純度を高めることができるが、そのような精製操作を行わなくても通常十分高純度なものが得られるので、場合によってはそのまま次の反応工程に使用しても差し支えない。
する。ここでジオールではなく、ジアミンと反応させてジアミドとし、得られる二酸無水物を原料としてポリイミド化することは反応上は可能ではあるが、最終的に樹脂とした時に、吸水性が高くなる、靭性が低くなるなどの問題が生ずるのでジオールの方が好ましい。
具体的な例を挙げると、例えば、単核の芳香環に2つの水酸基を有するものの例としては、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2−フェニルヒドロキノン等が、ビフェニル構造の両方の核に水酸基を1つずつ持つものの例としては、4,4’−ビフェノール、3,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等が、2個のフェノールもしくは脂環式アルコールが2価の官能基で結合されたものの例としては、4,4’−ジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルスルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール等が、ナフタレン骨格に2つの水酸基を有するものの例としては2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール等が、脂環式骨格に2つの水酸基を有するものの例としては、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−アダマンタンジオール、ジシクロペンタジエンの2水和物等が、鎖状骨格に水酸基を2つ持つものの例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール等が、またこの他のジオールとしてはシクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらのうちより好ましくは、環状骨格を有するジオールが挙げられ、さらにポリマーとしての要求特性の観点から考えると、ヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチルー4,4’−ビフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノ−ル、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンが特に好ましい。またこれらのジオールを2種類以上併用することもできる。
トキシエチル)エーテル等のエーテル溶媒、ピコリン、ピリジン等の芳香族アミン溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のようなケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の様な芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のような含ハロゲン溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のようなアミド系溶媒、ヘキサメチルホスホルアミド等のような含リン溶媒、ジメチルスルホオキシド等のような含イオウ溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のようなエステル系溶媒、1
,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のような含窒素溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等の水酸基を有する芳香族系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明に係るエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物の合成の際、採用される反応温度は下限が−10℃、好ましくは−5℃、より好ましくは0℃、上限は80℃、好ましくは50℃、より好ましくは20℃で行われる。反応温度が80℃よりも高いと一部副反応が起こり、収率が低下する恐れがあり、好ましくない。
反応は通常常圧で行われるが、必要に応じて加圧下、または減圧下でも実施することができる。通常反応雰囲気は、窒素下で行う。
反応容器は密閉型反応容器でも開放型反応容器でもよいが、反応系を不活性雰囲気に保つため、開放型の場合には不活性ガスでシールできるものを用いる。
用される。塩基性物質の量が多すぎると、目的物の精製負荷が大きくなるので好ましくない。
例えば、核水素化トリメリット酸無水物クロリドとジオール反応により得られる反応生成物は、目的物と塩酸塩の混合物である。この混合物から塩酸塩を分離除去するために、沈殿物をクロロホルムや酢酸エチル等で抽出溶解し、分液ロートを用いて有機層を水洗する方法も可能であるが、沈殿物を単に十分水洗するだけでも、塩酸塩を完全に除去することができる。塩酸塩の除去は洗浄液を1%硝酸銀水溶液による塩化銀の白色沈殿の生成の有無をもって分析することにより、容易に判断することができる。この時の塩化物
元素の残留量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
その際採用される温度は、下限が50℃、好ましくは120℃、上限が250℃、好ましくは200℃である。
その際採用される加熱時間は、通常下限が5分、好ましくは10分、上限は特に制限はないが通常は100時間、好ましくは50時間である。
また、加水分解によりエステル基含有脂環式テトラカルボン酸となった場合の再閉環の方法としては、上記した減圧下に過熱する方法の他に有機酸の酸無水物と処理する方法も採用することができる。その際に使用される有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが上げられるが、過剰に使用した際の除去の容易さから無水酢酸が好適に用いられる。
その際、採用される処理温度は下限が0℃、好ましくは20℃、より好ましくは50℃、上限は250℃、好ましくは200℃、より好ましくは150℃で行われる。
その際、必要に応じて溶媒を使用してもかまわない。その際、使用される溶媒には特に限定はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、酢酸、蟻酸、プロピオン酸などのカルボン酸溶媒などが好適に用いられる。これら溶媒は単独で用いてもかまわないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもかまわない。
こうして得られる本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物の純度は例え
ば示差屈折系検出器付液体高速クロマトグラフィ−などの分析で得られるピークの面積比として、通常90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
また、上記した水素化トリメリット酸とジオールのエステル化による本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物の合成収率は精製後で通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。
エステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物の保存は、加水分解による酸無水物環の開環を防ぐために高湿を避けた低温下で保存することが望ましい。具体的には、シール性の良い容器で冷蔵庫にて保管すれば長期間の保存に耐える。また、エステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物に関しては吸湿を防ぐために精製後すぐに次の重合反応に使用してもかまわない。その際の保存期間は、通常100時間以内、さらに好ましくは50時間以内、さらに好ましくは24時間以内である。
エステル基含有脂環式テトラカルボン酸は、特に湿度を管理する必要もなく、室温で長期間保存することができる。
本発明の脂環式ポリエステルイミド前駆体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。通常、重合溶媒中で実質的に等モルのジアミン類とエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物又はそのテトラカルボン酸類を反応させることで、脂環式ポリエステルイミド前駆体を容易に製造することができる。この際エステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
AとX1、X2、X3、X4、X5及びX6の組み合わせとして好ましい構造としては、Aが環状構造を有する基であり、X1、X2、X3、X4、X5及びX6がそれぞれ独立にハロゲン原子もしくは水素原子で構成されるものである。さらに好ましくはAが環状構造を有する基でX1、X2、X3、X4、X5及びX6がすべて水素原子で構成されるものである。
パン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
これらジアミンの中でも芳香族ジアミンとしては、o−、m−、p−フェニレンジアミンなどの単核のフェニレンジアミン化合物、4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフエニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニル化合物が好ましく、中でも入手の容易性や得られる樹脂の物性が良好なことから、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルがより好ましい。脂肪族ジアミンとしては、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンが環構造を有し入手も容易なのでより好ましく、さらには、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンが得られる樹脂の物性が良好なことからより好ましい。
これらジアミンは、重合反応性が高まるので高純度であることが好ましい、通常使用されるジアミンの純度は、95%以上、好ましくは、97%以上、さらに好ましくは99%以上である。
反応はジアミンと式(1)のテトラカルボン酸二無水物を溶媒の存在下に混合して行う。
これらジアミンと酸無水物の反応器への仕込みの方法は任意に選択することができる。例えば、ジアミンを溶媒に溶解しておき、これに式(1)のテトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に添加する方法、逆に、テトラカルボン酸二無水物の溶液にジアミンを徐々に添加する方法、さらには、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物粉末をあらかじめ溶媒を仕込んだ反応器に同時に添加する方法などが採用可能である。中でもジアミンを溶媒に溶解しておきテトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に添加する方法が試剤の溶媒への溶解性から有利に採用される。
反応時間は特に制限なく採用できるが十分な試剤の変換率を達成するためには、下限が10分、好ましくは30分、さらに好ましくは1時間、上限は特に制限はないが反応が終了すれば必要以上に反応時間を延ばす必要はない。例えば、100時間、好ましくは50
時間、さらに好ましくは30時間が採用される。
反応は、進行中攪拌しながら行うのが好ましい。
また、得られる脂環式ポリエステルイミド前駆体の対数粘度は、特に限定されるものではないが、好ましい対数粘度としては、下限が0.3dL/g、好ましくは0.5dL/
g、さらに好ましくは、0.7dL/gである。一方、上限は、5.0dL/gであり、好ましく3.0dL/gであり、より好ましくは2.0dL/gである。対数粘度は、例えばオストワルド粘度計などを用いて測定することができる。
反応時間は特に制限なく採用できるが、下限が10分、好ましくは30分、さらに好ましくは1時間、上限は特に制限はないが、150時間、好ましくは100時間、さらに好ましくは50時間が採用される。
溶媒の使用量は、原料である式(6)から式(8)で表されるテトラカルボン酸誘導体とジアミンの総量の重量濃度が以下の範囲に入るような量の溶媒が使用されるのが好ましい。濃度の下限が0.1重量%、好ましくは1重量%、さらに好ましくは5重量%、上限は特に制限はないものの、テトラカルボン酸二無水物の溶解性の観点から、80重量%、好ましくは50重量%、さらに好ましくは30重量%が採用される。
好ましい。塩基性物質の使用量は、式(6)から式(8)で表されるテトラカルボン酸誘導体中に含まれる酸の量により任意に変えて使用することができる。もちろん、テトラカルボン酸誘導体中に反応により発生する酸が全くないならば塩基性物質を使用しないことも可能である。酸が発生する場合の塩基性物質の使用量は、重合に使用するテトラカルボン酸誘導体のモル数に対して、下限が2倍モル、好ましくは3倍モル、上限が、10倍モル、好ましくは5倍モルである。
このジアミンと式(6)から式(8)で表されるテトラカルボン酸誘導体との重合反応は界面重縮合法でも行うことが可能である。界面重縮合法においては、使用する溶媒に特徴がある。即ち、ジアミンは、3級アミン等の塩基性物質を溶解した水溶液に溶解する。一方、式(6)から式(8)で表されるテトラカルボン酸誘導体(Xが塩素原子の場合)は、水に溶解しない無極性有機溶媒に溶解する。この際使用される無極性溶媒としては、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒や、シクロヘキサンやヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素溶媒が用いられる。
さらに本発明の脂環式ポリエステルイミド前駆体は、式(6)から式(8)で表されるテトラカルボン酸誘導体(Xが水酸基の場合)と等モルのジアミンを用いて、縮合剤の存在下に製造することができる。例えば、縮合剤としてジアミンと等モルの亜リン酸トリフェニルを用い、ピリジンの存在下に直接重縮合することも可能である。また、他の縮合剤としてN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いても同様に直接重縮合可能である。
塩素原子の場合)を上記と同様に低温溶液重縮合することによっても可能である。
本発明における脂環式ポリエステルイミド又はその前駆体は、本発明の特徴である上記一般式(4)〜(5)のユニットが少なくとも1つ以上含有していればよい。具体的には、本発明の脂環式ポリエステルイミドを得る際には、本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類に加えて他の酸二無水物又はテトラカルボン酸を混合し、共重合させても良い。その際使用することができる酸二無水物は特に限定はされないが、例えばピロメリット酸などの1つのベンゼン環を有する芳香族酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、3,3’’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、3,3’,4,4’-ベン
ゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、
ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エ−テル二酸無水物(a−ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル二酸無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二酸無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物(BDCP)、2,2’−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(BDCF)、2,2’−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水
物等の2つのベンゼン環を有する芳香族酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等のナフタレン骨格を有する芳香族酸二無
水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物などのアントラセン骨格を有する芳香族酸二無水物が例として挙げられる。
ロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3‘,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA水添物)、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物などの脂環構造を有するテトラカルボン酸の二無水物などを挙げることができる。
必要に応じて溶液状態の脂環式ポリエステルイミド前駆体を単離することもできる。例えば、脂環式ポリエステルイミド前駆体の溶液を、水や、メタノール、アセトン等の貧溶媒に加えることにより脂環式ポリエステルイミド前駆体を沈澱させ、ろ過などにより得られた固体から溶媒を乾燥などにより除去すれば、脂環式ポリエステルイミド前駆体を粉末として単離できる。なお、必要に応じてこの粉末を上記した反応溶媒などに溶解させれば再び溶液とすることもでき、この操作を繰り返すことにより本発明の脂環式ポリエステルイミド前駆体を精製することもできる。
本発明の脂環式ポリエステルイミドを合成する方法は、(i)脂環式ポリエステルイミド前駆体から得る方法、および(ii)脂環式ポリエステルイミド前駆体を介さずに得る方法が挙げられる。そして、(i)脂環式ポリエステルイミド前駆体から得る方法としては、加熱イミド化法および化学イミド化法がある。ただし、本発明の脂環式ポリエステルイミドの製造方法は、以下に記載される製法に特に制限されることはない。
本発明の脂環式ポリエステルイミドは、上記の方法で得られた脂環式ポリエステルイミド前駆体を環化イミド化反応させることで製造することができる。
この際脂環式ポリエステルイミドの製造可能な形態は、フィルム、粉末、成型体および溶液である。
こうして塗布された塗膜には、溶媒が含まれているので、次に乾燥する。その際に採用される乾燥の温度は、通常下限が20℃、好ましくは40℃、さらに好ましくは、60℃である。一方、上限は、200℃、好ましくは150℃、さらに好ましくは100℃である。
間、好ましくは30時間、さらに好ましくは10時間が採用される。
乾燥は減圧下に行っても良い。その際に採用される減圧度は、通常0.05MPa以下、好ましくは0.01MPa以下、さらに好ましくは0.001MPa以下である。
こうして得られた乾燥された脂環式ポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中高温度加熱してイミド化する。この方法を加熱イミド化と言う。
また、脂環式ポリエステルイミド前駆体のフィルムを、脱水試薬を含有する溶液に浸漬することによって化学イミド化反応を行うことも可能である。この反応は、好ましくは3級アミン存在下で反応を行うことが好ましい。
使用する3級アミンの使用量は、通常下限がアミド酸基の0.1モル倍、好ましくは0.5モル倍、さらに好ましくは1.0モル倍以上、下限は通常30モル倍、好ましくは20モル倍、さらに好ましくは10モル倍である。
また加熱イミド化の別な形態として、脂環式ポリエステルイミド前駆体の重合溶液をそのままあるいは同一の溶媒で適度に希釈した後溶液中で加熱することでも本発明の脂環式ポリエステルイミドの溶液(ワニス)を容易に製造することもできる。
この際の加熱温度は、下限が100℃、好ましくは120℃、さらに好ましくは、150℃である。一方、上限は目的物の着色が起こらない温度であれば自由に設定可能であるが、300℃、好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃で加熱する。この際、環化イミド化反応の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等の共沸溶媒を添加し、これら溶媒とともに生成する水を留去しながら反応を行っても差し支えない。
一方、脂環式ポリエステルイミド前駆体の溶液中に脱水試薬を添加することにより化学イミド化を行うことができる。反応は通常、脱水試薬と塩基性物質の存在下に行う。化学イミド化において使用可能な脱水剤としては、無水酢酸、やトリフルオロ無水酢酸などの低級カルボン酸の酸無水物や、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族ジカルボン酸の無水物、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのアルキルカルボジイミドなどである。その際、使用される脱水試薬の量は脂環式ポリエステルイミド前駆体に含まれるアミド酸のモル数に対して通常下限が1.0モル倍、好ましくは2.0モル倍、さらに好ましくは4.0モル倍であり、上限は特に制限はないが、通常は50モル倍、好ましくは30モル倍、さらに好ましくは20モル倍である。脱水試薬が少なすぎると反応の進行が遅くなり、多すぎると目的物中に残存してしまう、という問題を生ずる。
一方、使用可能な塩基性物質の種類としては特に限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等の有機3級アミン類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機の塩基性物質を用いることができる。中でもピリジンや、トリエチルアミンは安価に入手できる点や液体で溶解性に富むため反応操作が容易になる、という点で好ましい。
上記の方法により得られる脂環式ポリエステルイミドを溶液とし、あるいは反応で得られる溶液に、ベンゾイルクロリドや無水酢酸とピリジンのような試薬を加えて末端アミノ基をアミド基として保護することもできる。こうすると、ポリイミドの着色が防がれ、安定性も向上するので好ましい。
る。一方上限は、500℃、好ましくは400℃、さらに好ましくは350℃で採用可能である。また、その際の反応時間は、通常下限が5分、好ましくは10分、上限は特に制限はないが通常は100時間、好ましくは24時間である。
脂環式ポリエステルイミド前駆体を介さずに得る方法としては、上記式(1)〜(3)のいずれかで表されるエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類を原料としてジアミン類と反応させて直接環化イミド化反応を行い、本発明の脂環式ポリエステルイミドを製造することも可能である。
上記のようにして得られる本発明の脂環式ポリエステルイミドは、これを溶媒に溶解して溶液(ワニス)とすると、これから種々形態を変えた脂環式ポリエステルイミドを容易に製造できる。例えば、大量の貧溶媒中に滴下・濾過すると脂環式ポリエステルイミドを粉末として単離することができる。この際に使用可能な貧溶媒としては特に限定されないが、水、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた特定重合体は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥して粉末とすることが出来る。また、粉末とした脂環式ポリエステルイミドを、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、脂環式ポリエステルイミド中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
液(ワニス)とすることができる。
その際に使用可能な溶媒としては、脂環式ポリエステルイミド前駆体を合成する際に用いた溶媒が使用できる。
さらにこれに加え、塗膜均一性向上を目的として、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒も用いることができる。これら溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いても良い。
このようにして塗布された脂環式ポリエステルイミドはまだ多量の溶媒を含んでいる。そこで、加熱して溶媒を除去する。その際の温度は、通常下限が70℃、好ましくは100℃、さらに好ましくは150℃であり、上限は通常350℃、好ましくは300℃さらに好ましくは250℃である。加熱は、段階的に昇温しても良いし連続的に昇温してもかまわない。これらの工程の雰囲気は、減圧下もしくは不活性雰囲気中でおこなってもよい
。
これらのフィルムは必要に応じてウェットエッチング、ドライエッチング、レーザーアブレーションなどの方法によりパターニングされ所定の形に形成され光部品とすることもできる。このようにして得られる本発明の脂環式ポリエステルイミドを用いたフィルム、光部品等の光学用素子は、複屈折も小さく無色透明であるために、厚膜であってもそれらの物性は極めて良好である。
さらに、本発明の脂環式ポリエステルイミドは、溶媒溶解性に優れるため、その溶液からシートや、繊維などその形態は用途に応じて自由に加工することができる。また、フィルは単層ばかりでなく多層として使用することも可能である。
本発明の脂環式ポリエステルイミドのガラス転移温度Tg(℃)は、通常下限が150℃、好ましくは200℃、さらに好ましくは250℃であり、上限は通常500℃、好ましくは450℃、さらに好ましくは400℃の範囲内であり、高い耐熱性を有する。
また耐熱性を表す別の指標としての5%重量減少温度は、不活性ガス雰囲気では通常350℃以上、好ましくは400℃以上、さらに好ましくは420℃以上、空気雰囲気では、通常、350℃以上、好ましくは380℃以上、さらに好ましくは400℃以上である。
は0.005以下となる。
本発明の脂環式ポリエステルイミドの鉛筆硬度(JIS−K5400)は、通常B〜7Hの範囲内であり、好ましくはH〜4Hの範囲内である。
本発明の脂環式ポリエステルイミドの25℃の水に24時間浸漬した際の吸水率は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
本発明のポリエステルイミドは、溶剤に対して高い溶解性を示す。特に上記した脂環式ポリエステルイミド前駆体を合成する際に用いた溶媒にはよく溶解し、容易に溶液とすることができる。
本発明の脂環式ポリエステルイミドをフィルムとした時の、引っ張り強度は、通常、10MPa以上、好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上である。
本発明の脂環式ポリエステルイミドをフィルムとした時の、引っ張り伸びは、通常下限が0.1%、好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%、上限は、通常150%以下、好ましくは100%以下、さらに好ましくは80%以下である。
本発明の脂環式ポリエステルイミドは、高ガラス転移温度、低複屈折性、無色透明性、低誘電性を同時に満たすものでありこれらの優れたバランスのとれた特性を生かして、半導体分野、光学材料分野、光通信分野、表示装置分野、電気電子機器分野、輸送機器分野、航空宇宙分野などにおける素材として使用できる。例えば、光学材料分野としては、レ
ンズ、回析格子などの精密光部品、ホログラム、CD、MD、DVD、光ディスク等のディスク基板、光学用接着剤、表示装置用途としては、LCD用基板、偏光板用支持フィルム、透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、LCD用接着剤、LCD用スペーサ、LCD用電極基板、カラーフィルター用透明保護膜、カラーフィルター、透明保護膜等、LCD以外の表示材料用途としてはプロジェクター用のスクリーン、プラズマディスプレイ用の基板やフィルム、光学フィルター、有機EL用コーティング材料等、光通信分野や光学素子分野では、光ファイバー、光導波路、光分岐器、光合波器、光スイッチング素子、光変調器、光フィルター、波長分割器、光増幅器、光減衰器、光波長変換器、電気電子機器分野では、絶縁テープ、各種積層板、フレキシブルプリント回路基板、多層プリント回路基板用接着フィルム、プリント回路基板用カバーフィルム、半導体集積回路素子の表面保護膜、電線用被覆剤、などや、フラッシュメモリー、CCD、PD、LD等の光半導体の封止材、半導体分野ではバッファーコート膜、パッシベーション膜、層間絶縁膜等、感光性ポリマーのベースポリマー半導体コーティング剤、アンダーフィル剤、航空宇宙分野では、ソーラーセル、熱制御システム等の特別な航空宇宙用コンポーネントコーティング材等、この他本剤の特性を生かして、太陽電池の被覆材やベースフィルム基材、接着剤、その他のコーティング材料用などが挙げられる。
(1) モノマーの物性値の測定
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計を用い、KBr法にて生成物の赤外吸収スペクトルを測定した。
生成物を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、プロトンの共鳴周波数400MHzNMR分光計を用いてプロトンNMRスペクトルを測定した。
<融点>
示差走査熱量分析装置にて、窒素雰囲気中、昇温速度2℃/分での昇温過程における融解の吸熱ピークより融点を求めた。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にて脂環式ポリエステルイミド前駆体および脂環式ポリエステルイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。
0.5重量%の脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定
により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから脂環式ポリエステルイミド膜のガラス転移温度を求めた。 または、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製
示差走査熱量分析計(DSC6220)を用いて10℃/分で昇温しそのベースラインシフトから求めた。
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、脂環式ポリエステルイミド膜の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−520)を用いて、200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、脂環式ポリエステルイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−520)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、脂環式ポリエステルイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
<複屈折>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、脂環式ポリエステルイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、脂環式ポリエステルイミド膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて、次式により1MHzにおける脂環式ポリエステルイミド膜の誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav 2
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥した脂環式ポリエステルイミド膜(膜厚20〜30μm)を25℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として脂環式ポリエステルイミド膜の線熱膨張係数を求めた。
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリイミド膜の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
(実施例1)
核水素化トリメリット酸無水物の塩素化は以下のように行った。窒素導入菅およびコンデンサー付反応容器中に、核水素化トリメリット酸無水物7.93g(40mmol)を入れ、これに塩化チオニル80mL(1.1mol)を加え、窒素雰囲気中80℃で2時間還流した。その後、反応溶液に無水ベンゼン加え、オイルバス中で溶媒を減圧留去した。更に無水ベンゼンを加えて留去し、残留塩化チオニルを完全に除去した。生成物を室温で15時間真空乾燥し、核水素化トリメリット酸無水物クロリドの白色針状結晶を定量的に得た。
(実施例2)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン1.08g(10mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド19.3gに溶解し、この溶液に実施例1で製造したテトラカルボン酸二無水物粉末4.70g(10mmol)を徐々に加え室温で22時間撹拌して、透明で粘稠な脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。重合は溶質濃度30重量%から開始し、途中溶媒を添加しながら反応し、最終的に17重量%まで希釈した。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定した脂環式ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.34dL/gであり、極めて高重合体であった。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して脂環式ポリエステルイミド前駆体膜を得た。得られたポリエステルイミド前駆体膜の赤外吸収スペクトルを図4に示す。この前駆体膜を基板上、減圧下320℃で1時間熱処理してイミド化を行い、脂環式ポリエステルイミド膜を得た。残留歪を除去するために、基板から膜を剥がして更にガラス転移温度直下の235℃で1時間熱処理し、膜厚30μmの透明なフィルムを得た。このフィルム
の赤外吸収スペクトルを図5に示す。このフィルムは180°折り曲げ試験により、破断せず、靭性を示した。膜物性は、ガラス転移温度253℃と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長312nm、400nmでの透過率72.1%と、極めて高い透明性を示した。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−オキシジアニリン2.00g(10mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド22.3gに溶解し、この溶液に実施例1で製造したテトラカルボン酸二無水物粉末4.70g(10mmol)を徐々に加え室温で22時間撹拌して、透明で粘稠な脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。重合は溶質濃度30重量%から開始し、最終的に13重量%まで希釈した。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定した脂環式ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は2.32dL/gであり、極めて高重合体であった。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して脂環式ポリエステルイミド前駆体膜を得た。得られた脂環式ポリエステルイミド前駆体膜の赤外吸収スペクトルを図6に示す。この前駆体の膜を基板上、減圧下320℃で1時間熱処理してイミド化を行い、脂環式ポリエステルイミド膜を得た。残留歪を除去するために、基板から膜を剥がして更にガラス転移温度直下の218℃で1時間熱処理し、膜厚30μmの透明なフィルムを得た。このフィルムの赤外吸収スペクト ルを図7に示す。このフィルムは180°折り曲げ試験により、破断せず、靭性を示した。膜物性は、ガラス転移温度225℃と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長301nm、400nmでの透過率81.3%と、極めて高い透明性を示した。この樹脂の複屈折は、Δn=0.0005と極めて小さく光学材料に適していることがわかった。誘電率は2.83と比較的低い値であった。更にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、m−クレゾール等の有機溶媒に室温で高い溶解性を示し、加工性が良好であることがわかった。その他の物性として吸水率1.1%、5%重量減少温度は窒素中で428℃、空気中で418℃、線熱膨張係数は76.4ppm/Kであった。なお、実施例3で得られたポリエステルイミドの構造を下記式(11)に示す。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル3.20g(10mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド22.3gに溶解し、この溶液に実施例1で製造したテトラカルボン酸二無水物粉末4.70g(10mmol)を徐々に加え室温で22時間撹拌して、透明で粘稠な脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。重合は溶質濃度30重量%から開始し、最終的に19重量%まで希釈した。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定した脂環式ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.29dL/gであり、高重合体であった。この脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して脂環式ポリエステルイミド前駆体膜を得た。この前駆体の膜を基板上、減圧下350℃で1時間熱処理してイミド化を行い、脂環式ポリエステルイミド膜を得た。残留歪を除去するために、基板から膜を剥がして更にガラス転移温度直下の235℃で1時間熱処理し、膜厚30μmの透明なフィル
ムを得た。このフィルムは180°折り曲げ試験により、破断せず、靭性を示した。膜物性は、ガラス転移温度250℃と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長304nm、400nmでの透過率80.1%と、極めて高い透明性を示した。この樹脂の複屈折は、Δn=0.002と極めて小さく光学材料に適していることがわかった。誘電率は2.67と極めて低い値であった。更にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、m−クレゾール等の有機溶媒に室温で高い溶解性を示し、加工性が良好であることがわかった。その他の物性として吸水率1.29%、5%重量減少温度は窒素中で441℃、空気中で407℃、線熱膨張係数は82.1ppm/Kであった。なお、実施例4で得られたポリエステルイミドの構造を下記式(12)に示す。
実施例2のジアミンを、t−1,4−シクロヘキサンジアミン(10mmol)とした以外は同様の方法で脂環式ポリエステルイミドフィルムを得た。このものの途中前駆体の
固有粘度は1.15dL/gであり高重合体であった。膜物性は、ガラス転移温度243℃と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長263nm、400nmでの透過率70.0%と、極めて高い透明性を示した。この樹脂の複屈折は、Δn=0.0011と極めて小さく光学材料に適していることがわかった。誘電率は2.70と極めて低い値であった。その他の物性として5%重量減少温度は窒素中で408℃、空気中で399℃、線熱膨張係数は90.8ppm/Kであった。なお、実施例5で得られたポリエステルイミドの構造を下記式(13)に示す。
実施例2のジアミンを、t、t−メチレンビスシクロヘキシルアミン(10mmol)とした以外は同様の方法で脂環式ポリエステルイミドフィルムを得た。このものの途中前駆体の固有粘度は1.20dL/gであり高重合体であった。得られた脂環式ポリエステルイミドフィルムの膜物性は、ガラス転移温度210℃と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長271nm、400nmでの透過率68.2%と、極めて高い透明性を示した。この樹脂の複屈折は、Δn=0.00012と極めて小さく光学材料に適していることがわかった。誘電率は2.63と極めて低い値であった。更にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、m−クレゾール等の有機溶媒に室温で高い溶解性を示し、加工性が良好であることがわかった。その他の物性として5%重量減少温度は窒素中で412℃、空気中で391℃、線熱膨張係数は75.0ppm/Kであった。なお、実施例6で得られたポリエステルイミドの構造を下記式(14)に示す。
50mL三つ口フラスコ中にp−フェニレンジアミン0.400g(3.70mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド8.19gに溶解し、この溶液に実施例1で製造したテトラカルボン酸二無水物粉末1.76g(3.74mmol)を加え室温で14時間攪拌して、透明で粘調な脂環式ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。重合は溶質濃度26重量%から開始し、最終的に13重量%まで希釈した。(固有粘度1.53dL/g)その後、N,N−ジメチルアセトアミド9.40gで希釈し、更にピリジン2.34gおよび無水酢酸4.91gを加え50℃で7時間攪拌した。内容物をメタノール150mlに加え、析出した固体をろ過、メタノール洗浄し、100℃で真空乾燥した後、1.65gのポリエステルイミド粉末を得た。フィルム化は、合成したポリエステルイミド粉末をNMPに溶解し(約15重量%)、ガラス基板に塗布した。80℃で1時間乾燥した後、減圧
下200℃で1時間熱処理し、ガラス基板から剥がして膜厚20μmの透明なフィルムを得た。このフィルムの赤外吸収スペクトルを図14に示す。得られた脂環式ポリエステルイミドフィルムの膜物性は、ガラス転移温度230℃(DSC測定値)と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長275nm、400nmでの透過率86.2%と、極めて高い透明性を示した。なお、本実施例で得られたポリエステルイミドの構造は実施例2の式(10)と同じである。
使用するジアミンを4,4‘−オキシジアニリンとした以外は実施例7と同様の方法で脂環式ポリエステルイミドフィルムを得た。このフィルムの赤外吸収スペクトルを図15に示す。得られた脂環式ポリエステルイミドフィルムの膜物性は、ガラス転移温度207℃(DSC測定値)と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長289nm、400nmでの透過率88.0%と、極めて高い透明性を示した。なお、本実施例で得られたポリエステルイミドの構造は実施例3の式(11)と同じである。
(実施例9)
核水素化トリメリット酸無水物クロリド4.99g(23.1mmol)にテトラヒドロフラン10mLを加えて溶解させた。また、1,4−シクロヘキサンジオール1.31g(11.3mmol)およびピリジン1.82g(23.1mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解した。氷浴中で4℃に保持したこの溶液へテトラヒドロフランに溶解した上記核水素化トリメリット酸無水物クロリドの溶液を15分間かけて滴下し、更に16時間室温で撹拌した。析出した白色沈殿を濾別後、水で十分洗浄し、減圧下100℃で5時間乾燥し、白色固体1.97g得た。これを無水酢酸/酢酸(2/3体積比)25mlで再結後、150℃で7時間真空乾燥して0.88g(収率16.4%)で白色粉末を得た。この化合物は示差走査熱量分析により、鋭い吸熱ピーク(融点238℃)を示した。また赤外吸収スペクトルおよびプロトンNMRスペクトルより、得られた生成物は下式(15)の構造の目的とする脂環式テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。その結果をそれぞれ図16、17に示す。本実施例で得られた1,4−シクロヘキサンジオール水素化トリメリット酸ジエステルの構造を下記式(15)に示す。
(実施例10)
使用するテトラカルボン酸二無水物を実施例9で製造したもの、ジアミンを4,4‘−オキシジアニリンとした以外は実施例7と同様の方法でポリエステルイミドを製造した。さらに得られたポリエステルイミドのフィルム化を溶解溶媒としてm−クレゾールを用いた以外は実施例7と同様の方法で行い、脂環ポリエステルイミドフィルムを得た。このフィルムの赤外吸収スペクトルを図18に示す。得られた脂環式ポリエステルイミドフィルムの膜物性は、ガラス転移温度164℃(DSC測定値)と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長288nm、400nmでの透過率85.3%と、極めて高い透明性を示した。なお、実施例10で得られたポリエステルイミドの構造は下記式(16)に示す。
(実施例11)
核水素化トリメリット酸無水物クロリド5.04g(23.1mmol)にテトラヒドロフラン10mLを加えて溶解させた。また、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオール2.74g(11.3mmol)およびピリジン1.82g(23.1mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解した。氷浴中で4℃に保持したこの溶液へテトラヒドロフラン溶解した上記核水素化トリメリット酸無水物クロリドの溶液を10分間かけて滴下し、更に16時間室温で撹拌した。析出した白色沈殿を濾別後、水で十分洗浄した。その後、150℃で7時間真空乾燥して5.52g(収率81.2%)で白色粉末を得た。この化合物は示差走査熱量分析により、鋭い吸熱ピーク(融点329℃)を示した。また赤外吸収スペクトルおよび質量スペクトルより、得られた生成物は下式(17)の構造の目的とする脂環式テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。その結果を図19に示す。また、実施例11で得られたヒドロキノン水素化トリメリット酸ジエステルの構造を下記式(17)に示す。
(実施例12)
使用するテトラカルボン酸二無水物を実施例11で製造したもの、ジアミンをp−フェニレンジアミンとした以外は実施例7と同様の方法でポリエステルイミドを製造した。さらに得られたポリエステルイミドのフィルム化を実施例7と同様の方法で行い、脂環ポリエステルイミドフィルムを得た。このフィルムの赤外吸収スペクトルを図20に示す。得られた脂環式ポリエステルイミドフィルムの膜物性は、ガラス転移温度255℃(DSC測定値)と比較的高い耐熱性およびカットオフ波長299nm、400nmでの透過率74.3%と、極めて高い透明性を示した。なお、実施例12で得られたポリエステルイミドの構造は下記式(18)に示す。
(実施例13)
反応容器中で核水素化トリメリット酸無水物クロリド4.33g(20mmol)に無水テトラヒドロフラン15mLを加え溶解させ、セプタムキャップでシールした。また、別な反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン3.51g(10mmol)およびピリジン3.24mL(40mmol)を無水テトラヒドロフラン12mLに溶解し、セプタムキャップでシールした。氷浴中で0℃に保持したこの溶液を、無水テトラヒドロフラン溶解した上記核水素化トリメリット酸無水物クロリドの溶液にシリンジにて1時間かけて滴下し、更に室温で24時間撹拌して白色沈殿を得た。これを濾別して塩酸塩を除去し、濾液をエバポレータで溶媒留去した。最後に得られた生成物を120℃で24時間真空乾燥して、89.3%の収率で白色粉末を得た。この化合物は示差走査熱量分析により、吸熱ピーク(融点209.5℃)を示した。また赤外吸収スペクトルおよびプロトンNMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(19)に示す構造を有するフルオレニル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。分析結果を図21〜23に示す。また、実施例7で得られたフルオレニル基含有テトラカルボン酸二無水物の構造を下記式(19)に示す。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、p−フェニレンジアミン1.08g(10mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド15mLに溶解した後、この溶液に実施例1に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物に対応するエステル基含有芳香族テトラカルボン酸二無水物粉末4.58g(10mmol)を徐々に加えた。溶液粘度が急激に増加したため、適宜溶媒で希釈して一時間後に52mLを加え希釈した。更に室温で24時間撹拌し、透明、均一で粘稠な芳香族ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定した芳香族ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は5.19dL/gであった。この芳香族ポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得た芳香族ポリエステルイミド前駆体膜を基板上、減圧下250℃で2時間熱イミド化を行った後、残留応力を除去するために基板から剥がして更に350℃で1時間、熱処理を行い、膜厚20μmの芳香族ポリエステルイミド膜を得た。この芳香族ポリエステ
ルイミド膜は如何なる有機溶媒に対しても全く溶解性を示さなかった。膜物性を測定したところ、ガラス転移温は450℃まで未検出であった。またカットオフ波長は369nm、400nmでの透過率22%と、実施例2に記載の脂環式ポリエステルイミドと比較すると透明性が著しく低かった。これはモノマーとしてエステル基含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いたため、UV領域の吸収が大きいことが原因である。この樹脂の複屈折は、Δn=0.219と極めて大きく光学材料に全く適していないことがわかった。誘電率は3.22と比較的高い値であった。その他の物性として吸水率1.4%、5%重量減少温度は窒素中で480.7℃、空気中で463.2℃であった。なお、比較例で得られたポリエステルイミドの構造を下記式(20)に示す。
Claims (11)
- 上記式(1)〜(3)中のAが芳香族基及び/または脂肪族基を有する2価の基であることを特徴とする請求項1に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類。
- 上記式(1)〜(3)中のX1、X2、X3、X4、X5及びX6が水素原子であり、かつAが少なくとも1つの環状構造を含む構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類。
- 核水素化トリメリット酸無水物を酸ハライドに変換し、得られた酸ハライドとジオールを塩基性物質の存在下に反応させることを特徴とする請求項3に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類の製造方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を反応させた後、環化イミド化反応させることを特徴とする、請求項6に記載の脂環式ポリエステルイミドの製造方法。
- 請求項5に記載の脂環式ポリエステルイミド前駆体を環化イミド化反応させることを
特徴とする、請求項6に記載の脂環式ポリエステルイミドの製造方法。 - 環化イミド化反応が、加熱及び/又は脱水試薬を用いて行うことを特徴とする、請求
項7又は8に記載の脂環式ポリエステルイミドの製造方法。 - 請求項6に示す一般式(5)の構成単位を含む樹脂より製造されたフィルム。
- 請求項10に記載のフィルムを用いた液晶用部材。
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