JP2008297362A - エステル基含有テトラカルボン酸二無水物、高靭性を有するポリイミド及びその前駆体 - Google Patents

エステル基含有テトラカルボン酸二無水物、高靭性を有するポリイミド及びその前駆体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を併せ持ち、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、LCD用透明基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用透明基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブルLCD用プラスチック基板としてとして有益なポリイミドとその前駆体、並びに該前駆体の原料となる新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を提供する。
【解決手段】明細書に示す式(1)または(2)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物、式(3)または(4)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド前駆体、式(5)または(6)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド、及び、該ポリイミドを少なくとも一部に含有して成るディスプレー用透明プラスチック基板。
【選択図】なし

Description

本発明は高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を併せ持ち、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブル液晶ディスプレー(LCD)用プラスチック基板として有益なポリイミドとその前駆体、並びに該前駆体の原料となるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物に関する。
現在、液晶ディスプレーにはガラス基板が用いられているが、近年の大画面化の動向に伴い、軽量化および生産性向上の問題が深刻化している。その解決策として重いガラス基板の替わりにより軽量でより成型加工が容易なプラスチック基板の採用が考えられる。もしガラス並に高透明性でしかも十分靭性の高いプラスチック基板があれば、曲げたり丸めたりして収納可能なフレキシブルフィルム液晶パネルが実現可能になる。
しかしプラスチック基板は同時にガラス基板に比べて耐熱性に劣るという欠点を持つ。特にプラスチック基板をフルカラーTFT型液晶パネルに適用する場合、その製造工程上プラスチック基板は200〜220℃の高温に耐えなければならない。しかしながらポリメタクリル酸メチルに代表されるビニルポリマーやポリカーボネートでは透明性は極めて高いものの、ガラス転移温度はそれぞれ100℃前後および150℃と、耐熱性に劣る。ポリエーテルスルホンは透明性および靭性に優れているが、ガラス転移温度は220℃と耐熱性の点で十分とはいえない。耐熱性、透明性および靭性を併せ持つ、フレキシブルLCD用プラスチック基板としての要求特性を満足する材料は未だ知られていないのが現状である。
耐熱性に優れたポリイミド樹脂はその候補として挙げられる。一般にポリイミドは、ピロメリット酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒中で等モル反応させ容易に得られる高重合度のポリイミド前駆体を、膜などに成形し加熱硬化して得られる。
このような全芳香族ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
しかしながら一般に使用される全芳香族ポリイミドは紫外から可視域にかけて強い電子吸収遷移を有するためフィルムの透明性が極端に低いという欠点がある。これはポリイミド鎖における芳香族基を通じた分子内共役および、分子内・分子間電荷移動相互作用によるものである(例えば非特許文献1参照)。ポリイミドフィルムの透明化には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンのどちらか一方あるいは両方のモノマー成分に脂肪族モノマーを使用することが効果的である。これによりポリイミド鎖の分子内共役や電荷移動相互作用が妨げられ、結果としてポリイミド膜およびその前駆体膜の紫外・可視全域での透明性が飛躍的に高まる。化学的、物理的耐熱性の観点から、線状構造のものより環状構造(脂環式)の脂肪族モノマーがしばしば用いられる。
脂環式ジアミンと各種テトラカルボン酸二無水物からポリイミド前駆体を重合する際、重合反応初期において生成した低分子量のアミド酸中のカルボキシル基と未反応のアミノ基との間で架橋的な塩形成が起こる。塩は通常、重合溶媒に対して溶解度が低く、沈殿として反応系から除外されるため、これが全く溶解しない場合は重合が停止することになる。極端な場合、例えばピロメリット酸二無水物とトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンとの組み合わせでは、極めて強固な塩形成のため重合反応が全く進行しないという重大な問題が生じる。ピロメリット酸二無水物の代わりに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下CBDAと称する)を用いた場合も同様である。これは脂肪族ジアミンの塩基性が、通常用いられる芳香族ジアミンに比べてはるかに高いことに由来している(例えば非特許文献2参照)。
脂肪族ジアミンを用いる際、塩形成を回避する方法として界面重合法が開示されている(例えば非特許文献3参照)。この方法はまずテトラカルボン酸二無水物とアルコールを反応させてテトラカルボン酸のジアルキルエステルとし、次いでこれを塩素化して油層に溶解し、これとアルカリ水溶液に溶解した脂肪族ジアミンとを油/水界面で重合させてポリアミド酸のアルキルエステルを得るものである。これを熱イミド化して脂環式ポリイミドを得ることができる。
しかしこの重合方法では製造工程が煩雑でしかも高重合度のポリイミド前駆体を得ることは困難であるばかりかバッチごとの分子量のばらつきも大きくなる。また、界面重縮合法では生産性が低く、実用的でない。更に重大な問題として界面重合法では塩素が発生するので電子材料用途としては好ましくない。
テトラカルボン酸二無水物成分に脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いることによっても、ポリイミドを透明化することが可能である。現在知られている脂環式テトラカルボン酸二無水物として、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4:2,3−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
しかしながら、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を除き、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物のジアミンとの重合反応性は必ずしも十分ではない。重合反応性が低いとポリイミドを高分子量化しにくくなり、分子量が十分でないとポリマー鎖間の絡み合いが不十分となるため、フィルムとした際に十分な膜靭性が得られず、上記産業分野への適用が困難となる恐れがある。
上記のようにCBDAは脂環式テトラカルボン酸二無水物としては例外的に各種芳香族ジアミンと高い重合反応性を示すが、これはCBDAの酸無水物環に蓄積された立体的歪によるものであると考えられている。従って、CBDAの酸無水物基がジアミンと反応して開環するアミド酸形成反応は熱力学的に起こりやすい(即ち重合反応性は高い)が、逆にポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の閉環反応(イミド化反応)は起こりにくくなるという問題がある。このことは、イミド化反応を完結するためにより高温を必要とすることを意味し、ポリイミドフィルムの着色という観点から、CBDAの使用は有利ではない。更にCBDAを用いて得られたポリイミドはCBDAの立体構造に由来して剛直になり、一般の非プロトン性有機溶媒に対して十分な溶解性を示さず、溶液加工性の点でも問題がある。
このように重合時の塩形成を回避するために脂環式ジアミンを使用することは避け、代わりに脂環式テトラカルボン酸二無水物を使用して耐熱性を保持したまま透明で靭性のある可溶性ポリイミドを得ることは容易ではなく、フレキシブルLCD用プラスチック基板としての要求特性を満足する材料は未だ知られていないのが現状である。
核水素化トリメリット酸とハイドロキノンから誘導される下記式(7)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いて各種ジアミンと重合することで、比較的高重合度のポリイミド前駆体を製造する技術が公開されている(例えば特許文献1参照)。このテトラカルボン酸二無水物は、現在知られている脂環式テトラカルボン酸二無水物の中ではCBDAに次ぐ比較的高い重合反応性を示すが、これと各種ジアミンからポリイミド前駆体を重合し、製膜後熱イミド化して得られたポリイミドフィルムの膜靭性(破断伸び)は期待したほどは改善されないという問題があった。
Figure 2008297362
国際公開公報WO2006−129771 Progress in Polymer Science, 26, 259 (2001) High Performance Polymers, 19, 175 (2007) High Performance Polymers, 10, 11 (1998) Macromolecules,32, 4933(1999)
上記のように核水素化トリメリット酸とジオールを組み合わせてエステル基含有テトラカルボン酸を製造する際に、ハイドロキノンの代わりに他のジオールを用いることで、誘導される新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物がポリイミド前駆体の高重合体を与え、しかもこれまでにない高靭性を有する耐熱性透明ポリイミドを与えるならば、上記産業分野に対して極めて有用な新規材料を提供しうるが、そのような脂環式テトラカルボン酸二無水物及びそれから誘導されるポリイミドは知られていないのが現状である。
本発明は高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を併せ持ち、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、LCD用透明基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用透明基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブルLCD用プラスチック基板としてとして有益なポリイミドとその前駆体、並びに該前駆体の原料となる新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を提供するものである。
以上の問題を鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、下記式(5)または(6)で表されるポリイミドが高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を同時に達成することから、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、LCD用透明基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用透明基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブルLCD用プラスチック基板としてこれまでにない有益な材料を提供しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
(式(5)および(6)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。)
即ち本発明の要旨は以下に示すものである。
1.下記式(1)または(2)のいずれかで表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
(式(1)および(2)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。)
2.下記一般式(3)または(4)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド前駆体。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
(式(3)および(4)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。)
3.下記一般式(5)または(6)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
(式(5)および(6)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。)
4.波長400nmにおける光透過率が70%以上である高透明性、ガラス転移温度が200℃以上である耐熱性、引張試験における破断伸びが50%以上である高靭性、非プロトン性有機溶媒に5重量%以上溶解する溶液加工性を共に有する要旨3に記載のポリイミド。
5.要旨3または4のいずれかに記載のポリイミドを少なくとも一部に含有して成るディスプレー用透明プラスチック基板。
本発明によれば、高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を併せ持つポリイミドとその製造方法、およびこれを実現するためのモノマーとしてエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とその製造方法を提供することができる。本発明のポリイミドは、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブル液晶ディスプレー(LCD)用プラスチック基板として極めて有用である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
<エステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物およびこれらの合成方法>
本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、下記式(1)または(2)で表されるものである。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
(式(1)および(2)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。)
上記式(1)および(2)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基である場合、炭素数は1〜10が好ましい。より具体的には、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等が例示される。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基などがあげられる。また、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が上げられる。これらの例中でも上記式(1)および(2)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが、原料の入手のしやすさの点で好ましい。この場合、ハロゲン原子の数、置換位置については特に限定されない。さらに好ましくは上記式(1)〜(2)中のX、X2、X3、X4、X5及びX6がすべて水素原子の場合である。
上記式(2)中、Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。これらの中でPはメチル基、メトキシ基、またはtert−ブチル基であることが原料入手の観点から好ましい。置換基Pの数(n)は1〜4の範囲であるが、原料入手の観点からnは1であることが好ましい。
次に本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。例えば芳香環が水素化されたトリメリット酸無水物(以下、核水素化トリメリット酸無水物と称す)と下記式(8)または(9)で表されるジオールを原料として製造できる。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
式(9)中、Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。
式(9)に示す化合物の具体例としては、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,5‐ジメチル‐ヒドロキノン、2,5‐ジ‐t‐ブチル‐ヒドロキノンなどのアルキルヒドロキノン類、メトキシヒドロキノン、エトキシヒドロキノンなどのアルコキシヒドロキノン類があげられる。中でも、メチルヒドロキノン、2,5‐ジ‐t‐ブチル‐ヒドロキノンが原料の入手性、得られるポリイミドの物性が良好であることから好ましい。
下記に一例としてその製造方法を記載するが、本発明に於いては上記した構造のテトラカルボン酸二無水物を製造できればよく、その製法は限定されない。
核水素化トリメリット酸無水物の製造方法は、公知公用の方法を採用することができ、特に限定されない。シクロヘキサン環上に置換基のある場合、即ち一般式(1)または(2)中のX、X2、X3、X4、X5及びX6がそれぞれ独立に水素原子と異なる置換基である場合においては、あらかじめ置換基の入ったトリメリット酸無水物を原料として核水素化する方法や、核水素化されたトリメリット酸無水物に対して置換基を導入する方法など、特にその製造方法は限定されない。
核水素化トリメリット酸無水物の製造方法の具体例としては、トリメリット酸、又はトリメリット酸無水物を水素化する事で得ることができる。あるいは、トリメリット酸のエステル化物を核水素化し、その後エステル部分を加水分解、分子内脱水して酸無水物化することでも製造することができる。具体的には、例えば米国特許出願公開第US5412108号明細書においてトリメリット酸無水物を核水素化することで製造できることが開示されている。該米国出願公開明細書においては核水素化に使用可能な水素化触媒としてはRh金属がある特定の担体に担持されたRh触媒を用いている事が有利であるとされているが、この他にもPd,Ru,Ni,Ptなどの芳香核を水素化できる金属を使用した触媒であれば特に制限なく使用することができる。これら金属触媒は、担体に担持されていても、金属単独で使用することも可能であり、さらにはこれら金属に必要に応じて他の成分を添加して用いてもよい。
核水素化反応を行うと、通常、シクロヘキサン環上の3つの置換基については4種の立体異性体(光学異性体も含めれば8種)の混合物となる。これらの立体異性体については、合成後の混合物のまま次の反応に使用しても良いし、再結晶化などの精製を行うことによって単一、もしくは特定の異性体の濃度を高めてから使用しても良い。また、特定の異性体を選択的に得る方法としては、例えば、米国特許出願公開第US5412108号明細書に記載の方法などを用いると3つの置換基がすべてシスに制御された生成物を主成分として得ることができる。この場合、すべてシスの異性体の純度は、通常90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
核水素化反応後、水素化触媒の金属が一部溶出することがあるが、用途によっては溶出した金属を除去することが望ましい。溶出した金属は例えば、ゼータ電位フィルターやイオン交換樹脂などを通すことによって除去もしくは減少させることが可能である。こうして得られた水素化トリメリット酸中に含まれる金属量は、通常は1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
トリメリット酸の核水素化反応後の生成物において一部又はすべての1,2−ジカルボン酸無水物環部分が開環して1,2−ジカルボン酸となった場合には、減圧下加熱処理をすることにより1,2−ジカルボン酸部分を酸無水物環に変換しても良い。その際採用される温度は、下限が50℃以上、好ましくは120℃以上、上限が250℃以下、好ましくは200℃以下である。その際採用される減圧度は、下限の制限はなく、上限は0.1MPa、好ましくは0.05MPaである。
1,2−ジカルボン酸部分を酸無水物環に変換する方法としては、上記した減圧下に加熱する方法の他に有機酸の酸無水物と処理する方法も採用することができる。その際に使用される有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられるが、過剰に使用した際の除去の容易さから無水酢酸が好適に用いられる。その際採用される温度は、下限が30℃、好ましくは50℃、上限が200℃、好ましくは150℃である。このようにして得られる酸無水物環を持つ化合物の割合は、通常95モル%以上、好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。
次に、こうして得られた核水素化トリメリット酸無水物と上記ジオールからジエステルを合成する。その際のエステル化反応(2分子の核水素化トリメリット酸の4位のカルボキシル基とジオールとの反応)は、通常有機合成的なエステル化反応として知られた反応を任意に採用できる。例えば、カルボン酸とアルコールから直接脱水してエステル化する方法、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略される)や、ジエチルアゾジカルボキシレート/トリフェニルホスフィンの組み合わせなどの脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法、カルボン酸とカルボン酸のアルコールエステルからエステル交換反応させる方法、カルボン酸を酸ハライドに変換した後に塩基性物質の存在下にアルコールと反応させる方法、カルボン酸を酸無水物に変換した後に塩基性物質の存在下にアルコールと反応させる方法、脂環式テトラカルボン酸をエステル交換法により製造する方法(J.Polym.Sci.PartA,4,1531−1541(1966))などである。上述の方法の中でも、直接脱水する方法とエステル交換法、酸ハライドに変換する方法が、経済性、反応性の点で好ましい。
以下には、一例として酸ハライドに変換する方法について具体的に記述するが、本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物又はそのテトラカルボン酸類を製造する方法は特にこれに限定されない。また、酸ハライドとする場合の例として、核水素化トリメリット酸無水物を酸クロリド化しこれとジオールから核水素化トリメリット酸無水物のジエステルを製造する方法を取り上げて以下記述するが、酸クロリドの他に酸ブロミド、酸アイオダイドとする方法も全く同様に採用することができる。
この方法においては、まず核水素化トリメリット酸無水物クロリドを合成する。その合成法としては、カルボン酸から対応する酸クロリドを合成する通常の方法を用いることができる。具体的な例としては、塩化チオニルを用いる方法、オキザリルクロリドを用いる方法、三塩化リンを用いる方法、安息香酸クロリドなどの他の酸クロリドを使用する方法などがあげられる。中でも過剰に使用した塩素化試剤の留去のしやすさの点から塩化チオニルを用いるのが好ましい。
塩化チオニルを用いて核水素化トリメリット酸無水物クロリドを製造する方法としては例えば、特開2004−203792号公報に開示された方法が知られている。また、塩素化剤を用いて核水素化トリメリット酸無水物を塩素化する際、N,N−ジメチルホルムアミドやピリジン等の触媒を用いることもできるが、これらを用いなくても反応に大きな支障はない。触媒の存在により、得られた塩素化物がかえって著しく着色する場合があるので、ポリイミド膜の透明性を重視する用途の場合は生成物の着色に注意が必要で、その場合はこれら触媒を使用しないで製造するのが好ましい。
使用する塩素化試剤の量は、反応等量、もしくは過剰量が採用されるが、通常下限が1モル等量以上、好ましくは5モル等量以上、さらに好ましくは10モル等量以上である。一方、上限は特に制限はないものの、経済的な観点から100モル等量以下、好ましくは50モル等量以下の量が使用される。反応は室温でも行えるが、通常加熱して行う。採用される温度は、下限が30℃、好ましくは50℃、上限は使用する塩素化試剤の還流温度である。
反応後は、過剰に使用した塩素化試剤を除去する。除去の方法は特に制限されず、蒸留、抽出などが適用できる。蒸留により留去する場合には、より効率をあげるために塩素化試剤と共沸組成物を形成する溶媒を添加して留去してもよい。例えば、塩化チオニルを留去する場合には、ベンゼンやトルエンを添加して共沸留去させることができる。得られた酸塩素化物はヘキサンやシクロヘキサン等の無極性溶媒を用いて再結晶することでより純度を高めることができるが、そのような精製操作を行わなくても通常十分高純度なものが得られるので、場合によってはそのまま次の反応工程に使用しても差し支えない。
また、核水素化トリメリット酸無水物クロリドを製造する方法としては、上記したトリメリット酸の水素化で得られた1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の1,2−ジカルボン酸部分を一度酸無水物環としてから残りのカルボン酸を酸クロリド化する方法の他に、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に直接塩素化剤を作用させて、酸クロリド化と酸無水物化を同時に行うこともできる。その際は、上記した酸クロリド化の際の塩素化試剤の使用量を変える以外は上記した反応条件をそのまま適用できる。塩素化剤の使用量は、通常下限が2モル等量以上、好ましくは5モル等量以上、さらに好ましくは10モル等量以上である。一方、上限は特に制限はないものの、経済的な観点から100モル等量以下、好ましくは50モル等量以下の量が使用される。
核水素化トリメリット酸無水物、ないし1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に塩素化剤を作用させて核水素化トリメリット酸無水物クロリドを製造する際に、溶媒を用いて実施してもよい。その際使用できる溶媒は、使用する塩素化剤および生成物である核水素化トリメリット酸無水物クロリドが溶解し、塩素化剤が反応しない溶媒であれば制限なく使用できる。使用可能な溶媒の例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、等が挙げられる。中でも、溶解性、安定性の点からトルエンや、ヘプタン、テトラヒドロフランが好ましい。これら溶媒は単独で用いてもかまわないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもかまわない。溶媒の使用量は、基質である核水素化トリメリット酸無水物、ないし1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の重量濃度として、通常下限が5重量%、好ましくは10重量%、上限が50重量%、好ましくは40重量%である。
このようにして必要に応じて精製を行って得られる核水素化トリメリット酸無水物クロリドの純度は、通常90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。主な不純物としては、酸無水環が開環したトリカルボン酸の複数のカルボキシル基が酸クロリド化を受けて生成するジ酸クロリド体、トリ酸クロリド体(立体異性体を含む)、触媒としてジメチルホルムアミドを使用した場合はこの分解物や、核水素化トリメリット酸のジメチルアミド体などがあるが、これらの存在量は少ない方が好ましく、通常は、5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
次に、本発明においては、このようにして得られた核水素化トリメリット酸無水物の酸クロリドを式(8)または(9)で表されるジオールと反応させてエステル化し、一般式(1)または(2)に示されるジエステルを合成する。ここでジオールではなく、ジアミンと反応させてジアミドとし、得られるアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を原料としてポリイミド化することは反応上可能ではあるが、最終的に樹脂とした時に、吸水性が高くなるなどの問題が生ずるのでジオールの方が好ましい。本発明の特徴は、この反応の際に式(8)または(9)で表されるジオールを使用することである。これにより得られたエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いることで上記要求特性、特に極めて高い膜靭性を有する透明ポリイミドフィルムを得ることが可能である。
上記ジオールと核水素化トリメリット酸無水物クロリドとの反応における試剤の添加の方法には特に制限がなく任意の添加法が採用できる。例えば、上記ジオールと塩基性物質を溶媒に溶解し、これに溶媒に溶解した上記の核水素化トリメリット酸無水物クロリドをゆっくりと滴下する方法、あるいは、逆に必要に応じて溶媒に溶解した上記の核水素化トリメリット酸無水物クロリド中にジオールと塩基性物質の混合溶液を滴下する方法、核水素化トリメリット酸無水物クロリドとジオールの混合溶液の中へ塩基性物質を滴下する方法、さらには、ジオールの溶液の中に核水素化トリメリット酸無水物クロリドの溶液と塩基性物質の溶液を同時に滴下する、などが採用可能である。
上記の反応では、反応の進行とともに白色沈殿が生じる。これは生成した目的物および副生成物である塩酸塩である。この混合物を濾過により分離後、水で洗浄を繰り返すことで容易に塩酸塩を除去することができる。また、目的物は濾液中にも溶けているので濾液の溶媒を減圧下で留去し、真空乾燥する濾液中からも目的物を回収することができる。更に必要に応じて得られた脂環式テトラカルボン酸二無水物の粗生成物を適当な溶媒で再結晶し、最後に高温で真空乾燥することにより、極めて高純度の脂環式テトラカルボン酸二無水物が得られる。
上記ジオールの使用量は、核水素化トリメリット酸無水物クロリドに対して、通常上限は0.6等量、好ましくは、0.5等量である。これ以上用いるとジオールの1つのみしかエステル化されていないハーフエステルが多く生成するおそれがある。また下限は、0.3等量、好ましくは0.45等量を用いることができる。これ以下になると核水素化トリメリット酸無水物クロリドが反応系内に残り、分離操作が必要となるおそれがある。通常、0.5等量使用される。
核水素化トリメリット酸無水物クロリドとジオールを反応させて該脂環式テトラカルボン酸二無水物を合成する際に使用可能な溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶媒、ピコリン、ピリジン等の芳香族アミン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のようなケトン系溶媒、トルエン、キシレン等のような芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のような含ハロゲン溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のようなアミド系溶媒、ヘキサメチルホスホルアミド等のような含リン溶媒、ジメチルスルホオキシド等のような含イオウ溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のようなエステル系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のような含窒素溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等の水酸基を有する芳香族系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
該テトラカルボン酸二無水物を得る反応における溶質の濃度は、下限が5重量%、好ましくは10重量%、上限が50重量%、好ましくは40重量%で行われる。副反応の制御、沈殿の濾過工程を考慮すると10重量%以上40重量%以下の範囲で行われるのがより好ましい。
本発明に係る脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成の際、採用される反応温度は下限が−10℃、好ましくは−5℃、より好ましくは0℃、上限は80℃、好ましくは50℃、より好ましくは20℃で行われる。反応温度が80℃よりも高いと一部副反応が起こり、収率が低下する恐れがある。また、採用される反応時間は、通常下限が5分、好ましくは10分、上限は特に制限はないが通常は100時間、好ましくは24時間である。
反応は通常常圧で行われるが、必要に応じて加圧下、または減圧下でも実施することができる。通常反応雰囲気は、不活性雰囲気、例えば、窒素下で行う。反応容器は密閉型反応容器でも開放型反応容器でもよいが、反応系を不活性雰囲気に保つため、開放型の場合には不活性ガスでシールできるものを用いる。
塩基性物質は、反応の進行とともに発生する塩化水素を中和するために用いる。この際使用される塩基性物質の種類としては特に限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機の塩基性物質を用いることができる。ピリジンや、トリエチルアミンは安価に入手できる点や液体で溶解性に富むため反応操作が容易になる、という点で好ましい。使用される塩基性物質の量は、核水素化トリメリット酸無水物クロリドに対して通常下限が1.0モル倍、好ましくは1.5モル倍、さらに好ましくは2.0モル倍、上限は特に制限はないが通常は20モル倍、好ましくは10モル倍、さらに好ましくは5モル倍が採用される。塩基性物質の使用量が多すぎると、目的物の精製負荷が大きくなるので好ましくない。
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の精製方法>
例えば、核水素化トリメリット酸無水物クロリドとジオールとの反応により得られる反応生成物は、目的物と副生成物である塩酸塩である。用いた溶媒に対する目的物の溶解度が高い場合、目的物は殆ど反応溶媒に溶解している。一方、塩酸塩はしばしば有機溶媒に対する溶解性が低いため、沈殿として析出する。その場合、反応溶液を濾過して、塩酸塩を濾別するだけで、塩酸塩を容易に分離できるが、塩素成分を完全に除去する場合は目的物をクロロホルムや酢酸エチル等で溶解し、分液ロートを用いて有機層を水洗する方法も可能である。また用いた溶媒に対する目的物の溶解度が低い場合には、生成した目的物の大部分が沈殿として得られるため、目的物と塩酸塩の混合物として得られる沈殿物を単に十分水洗して、塩酸塩のみ溶解・除去する方法も適用できる。水洗操作により、ピリジンも完全に除去することができる。塩酸塩の除去は洗浄液を1%硝酸銀水溶液による塩化銀の白色沈殿の生成の有無をもって分析することにより、容易に判断することができる。この時の塩化物成分の残留量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以下である。
上記水洗操作の際、該テトラカルボン酸二無水物中の酸無水物基は一部加水分解を受けて、カルボン酸に変化するが、これは減圧下で加熱処理をすることにより、一部加水分解して生成したカルボン酸を容易に酸無水物に戻すことができる。その際採用される温度は、下限が50℃、上限が250℃、好ましくは100〜150℃である。その際採用される減圧度は、下限の制限はなく、上限は0.1MPa、好ましくは0.05MPaである。また、その際採用される加熱時間は、通常下限が5分、好ましくは10分、上限は特に制限はないが通常は100時間、好ましくは50時間である。
また、加水分解によりエステル基含有脂環式テトラカルボン酸となった場合の再閉環の方法としては、上記した減圧下に加熱する方法の他に有機酸の酸無水物と処理する方法も採用することができる。その際に使用される有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられるが、過剰に使用した際の除去の容易さから無水酢酸が好適に用いられる。
有機酸の酸無水物との処理時間は、通常下限が5分、好ましくは10分、上限は特に制限はないが通常は100時間、好ましくは24時間である。その際、採用される処理温度は下限が0℃、好ましくは20℃、より好ましくは50℃、上限は250℃、好ましくは200℃、より好ましくは150℃で行われる。その際、必要に応じて溶媒を使用してもかまわない。その際、使用される溶媒には特に限定はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、酢酸、蟻酸、プロピオン酸などのカルボン酸溶媒などが好適に用いられる。これら溶媒は単独で用いてもかまわないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもかまわない。
こうして得られた本発明のテトラカルボン酸二無水物をさらに精製することも可能である。その場合の精製方法としては、再結晶、昇華、洗浄、活性炭処理、カラムクロマトグラフィーなど任意に行うことができる。またこれら精製法を繰り返しても、組み合わせて実施することも可能である。
こうして得られる本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸無水物の純度は例えば示差屈折計検出器付液体高速クロマトグラフィーなどの分析で得られるピークの面積比として、通常95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。不純物として含まれてくるものとしては、ジオールの片方のみがエステル化されたモノエステル体、精製時に閉環剤として無水酢酸などの酸無水物を使用した場合にはこの閉環剤などがある。これらの不純物は、酸無水物構造を1つ分子内に含有していることから、これらのものは、ジアミンと重合する際に重合停止剤として機能するためなるべく脂環式テトラカルボン酸無水物から除去しておく必要がある。また、上記の核水素化トリメリット酸とジオールのエステル化による本発明のテトラカルボン酸二無水物の合成収率は精製後で通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の保存方法>
本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の保存は、加水分解による酸無水物環の開環を防ぐために高湿を避けた低温下で保存することが望ましい。具体的には、シール性の良い容器で冷蔵庫にて保管すれば長期間の保存に耐える。また、吸湿による加水分解を防ぐために精製後すぐに次の重合反応に使用してもかまわない。その際の保存期間は、通常100時間以内、さらに好ましくは50時間以内、さらに好ましくは24時間以内である。
<ポリイミド前駆体およびこれらの製造方法>
本発明のポリイミド前駆体とは、少なくとも一部に下記式(3)または(4)で表される構造を含むポリイミド前駆体を指す。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
式(3)および(4)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。
式(3)および(4)において、X〜X6及びPの具体例、好ましい形態等については、式(1)および(2)と同様である。
式(3)および(4)におけるAは任意の2価の基であればよい。本発明のポリイミド前駆体は、2つのシクロヘキサン環とそれをつなぐ2つのエステル基および剛直なフェニレンまたはビフェニレン残基を含有するという構造に特徴があり、この構造により高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度、高い溶媒溶解性等の優れた特性がもたらされる。つまりAの構造が任意の2価の基であっても、本化合物のこれらの物性に関しては大きくは影響を与えない傾向にある。従ってAの構造は2価の基であれば、特に制限されない。
この2価の基の中でも、Aの構造として好ましいものとしては、環状構造を有する基である。環状構造を有する構造とは、Aに芳香族基を含む構造および脂環基を含む構造をさす。Aに環状構造があるとポリイミド樹脂とした時に物理的、化学的耐熱性が向上する。また、脂環構造を含む場合には耐熱性を維持しつつ、UV領域の光吸収を大幅に低減させることができる、という特徴も得ることができる。具体的な構造として例を挙げると、芳香族基としてはいずれも2価の基であるフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルホン基、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェニル基、メチレンジフェニル基、イソプロピリデンジフェニル基、3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル基、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル基、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル基などが上げられ、脂環構造としては、シクロヘキシレン基、シクロヘキサンジメチレン基、ジシクロヘキシルエーテル基、メチレンジシクロヘキシル基、デカヒドロナフチレン基等が挙げられる。さらにこれらの基同士が、あるいは他の基と連結基で複数結合された構造となっていてもかまわない。ここで適用可能な連結基の具体的な例としては、メチレン基(−CH−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−)、ケト基(−C(O)−)、スルホニル基(−SO2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、9,9−フルオレニリデン基などを挙げることができる。なお、上記した2価の環状構造を含む基に関しては、特にその連結位置は問わない。例えばフェニレン基やビフェニレン基であれば1,4−位で連結すると−A−の構造が直線状となるため耐熱性が向上することが期待される。一方、フェニレン基において1,3−位で置換した場合には、−A−構造が折れ曲がった状態になり、溶媒に対する溶解性の向上が期待される。従って、置換位置については、必要とされる物性に応じて適宜ふさわしい構造のAを選択することが好ましい。
次に本発明のポリイミド前駆体の製造方法について具体的に説明する。まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに本発明の脂環式テトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、室温で1〜72時間攪拌する。芳香族ジアミンを使用する重合系では、モノマー成分トータルの濃度は5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、脂肪族ジアミンを使用する重合系ではモノマー成分トータルの濃度(以下、単にモノマー濃度ということがある)は5〜30重量%、好ましくは7〜20重量%の範囲である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。
芳香族ジアミン系において、上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリイミド前駆体の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる恐れがあり、上記モノマー濃度範囲より高濃度で重合を行うとモノマーが十分溶解しない場合や反応溶液が不均一になりゲル化する場合があり好ましくない。一方脂肪族ジアミン系では、上記モノマー濃度範囲より低濃度で重合すると、重合度低下の恐れがあり、上記モノマー濃度範囲より高濃度では強固な塩が形成され塩が完全に溶解するまでに長い重合反応時間を必要とし、生産性の低下を招く恐れがある。
本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で使用可能な脂肪族ジアミンとしては特に限定されないが、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン、シス−1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で使用可能な芳香族ジアミンとしては特に限定されないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−オキシジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が例として挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、式(1)および(2)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の脂環式テトラカルボン酸二無水物を部分的に使用することができる。共重合可能な脂環式テトラカルボン酸二無水物としては特に限定されないが、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4:2,3−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。これら式(1)および(2)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の脂環式テトラカルボン酸二無水物の含有量は全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜70モル%、好ましくは0〜50モル%の範囲である。
また、ポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、式(1)および(2)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を部分的に使用してもよい。共重合可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ハイドロキノンビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。共重合成分としてこれらを単独あるいは2種類以上用いてもよい。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量は好ましくは全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜30モル%、好ましくは0〜10モル%の範囲である。ジアミン成分として芳香族ジアミンを使用した場合、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物を併用するとポリイミドが著しく着色する恐れがあるため注意を要する。
ジアミンと脂環式テトラカルボン酸二無水物の重合反応の際使用される溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく特にその構造には限定されない。具体的に例示するならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども添加して使用できる。
本発明のポリイミド前駆体はその重合溶液を、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。
本発明に係るポリイミド前駆体の固有粘度は高いほどよいが、少なくとも0.5dL/g以上であることが好ましく、1.0dL/g以上であることがより好ましい。0.5dL/gを下回ると、製膜性が著しく悪くなり、キャスト膜がひび割れる等の問題が生じる恐れがある。
<ポリイミドおよびその製造方法>
本発明のポリイミドとは、少なくとも一部に下記式(5)または(6)で表される構造を含むポリイミドを指す。
Figure 2008297362
Figure 2008297362
式(5)および(6)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。
式(5)および(6)において、X〜X6、P及びAの具体例、好ましい形態等については、式(3)および(4)と同様である。
本発明のポリイミドは、上記の方法で得られたポリイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。この際ポリイミドの使用可能な形態は、フィルム、金属基板/ポリイミドフィルム積層体、粉末、成型体および溶液が挙げられる。
まずポリイミドフィルムを製造する方法について述べる。ポリイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたポリイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200〜400℃、好ましくは250〜350℃で加熱することで本発明のポリイミドフィルムを製造することができる。加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から200℃以上、生成したポリイミドフィルムの熱安定性の観点から400℃以下が好ましい。またイミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
またイミド化反応は、熱処理に代えて、ポリイミド前駆体フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめポリイミド前駆体ワニス中に投入・攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的あるいは完全にイミド化したポリイミドフィルムを作製することもできる。これを更に上記のような温度範囲で熱処理しても差し支えない。
該ポリイミド前駆体の重合溶液をそのままあるいは同一の溶媒で適度に希釈した後150〜200℃に加熱することで、ポリイミド自体が用いた溶媒に溶解する場合、ポリイミドの溶液(ワニス)を容易に製造することができる。ポリイミド自体が用いた溶媒に不溶な場合は、結晶性のポリイミド粉末を沈殿物として得ることができる。この際、イミド化反応の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。イミド化後この反応溶液を大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することもできる。またポリイミド粉末を上記重合溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることもできる。
また、本発明のポリイミドは、上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中高温で反応させることにより、ポリイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することもできる。この際、反応溶液は反応促進の観点から、130〜250℃、好ましくは150〜200℃の範囲に保持するとよい。またポリイミドが用いた溶媒に不溶な場合、ポリイミドは沈殿として得られ、可溶な場合はポリイミドのワニスとして得られる。重合溶媒は特に限定さないが、使用可能な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が例として挙げられるが、より好ましくはm−クレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒が用いられる。これらの溶媒にイミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加することができる。またイミド化触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。反応後、溶液を大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することができる。またポリイミドが溶媒に可溶である場合はその粉末を上記溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
上記ポリイミドワニスを基板上に塗布し、40〜400℃、好ましくは100〜350℃で乾燥するによってもポリイミドフィルムを形成することができる。
或いは、上記のように得られたポリイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することでポリイミドの成型体を作製することができる。
また、その他のイミド化としては、ポリイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して0〜100℃、好ましくは0〜60℃で反応させることにより、ポリイミドの異性体であるポリイソイミドを生成させ、ポリイソイミドをポリイミドへ変換する方法が挙げられる。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリイミド前駆体フィルムを浸漬することによっても可能である。ポリイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより、ポリイミドへ容易に変換することができる。
本発明のポリイミドおよびその前駆体中に、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えることができる。
<物性値>
本発明のポリイミドを各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、特にフレキシブルLCD用プラスチック基板に適用するために、そのガラス転移温度は200℃以上であれば差し支えないが、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。また透明性の指標である波長400nmにおける光透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。またポリイミド膜は膜靭性の指標として180°折曲試験により破断しなければ上記産業分野に適用可能であるが、引張試験において30%以上の破断伸びを有することがより好ましく、50%以上が更に好ましい。複屈折は0.01以下であれば上記光学材料に適用するのに重大な問題がなく好ましいが、0.005以下であることがより好ましい。
また、溶液加工性の観点から、非プロトン性有機溶媒に5重量%以上溶解することが好ましい。ここで、非プロトン性有機溶媒とは、プロトン供与性を有していない有機溶媒であって、極性であっても無極性であってもよい。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
尚、上記物性値は一般的な方法に準じて測定することができる。具体的な手法については、実施例において採用した手法が挙げられる。
本発明のポリイミドは脂環構造を有するため、これを全く含まない全芳香族ポリイミドに比べると長期熱安定性に劣るが、TFT型液晶ディスプレーや半導体チップの作製時に要求される短期耐熱性は充分高く、上記産業分野への応用には全く問題がない。短期耐熱性の指標として5%重量減少温度が窒素雰囲気中で400℃以上であることが好ましく、430℃以上であることがより好ましい。空気雰囲気中での5%重量減少温度は350℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましい。
<用途>
本発明のポリイミドは高い透明性、極めて高い膜靭性、高いガラス転移温度および溶液加工性を併せ持つため、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の保護膜、層間絶縁膜、フレキシブルLCD用プラスチック基板として有用である。特に、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルLCD用プラスチック基板等のディスプレー用透明プラスチック基板、中でもフレキシブルLCD用プラスチック基板として有用である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にてポリイミド前駆体およびポリイミド薄膜の赤外線吸収(FT−IR)スペクトルを測定した。また、合成したエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するためにKBr法によりFT−IRスペクトルを測定した。
H−NMRスペクトル>
合成したエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するために、日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用いて、重水素化ジメチルスルホオキシド中で合成物のH−NMRスペクトルを測定した。
<示差走査熱量分析(融点および融解曲線)>
合成した脂環式テトラカルボン酸二無水物の融点および融解曲線は、ブルカーエイエックス社製示差走査熱量分析装置(DSC3100)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定した
<固有粘度>
0.5重量%のポリイミド前駆体溶液(溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリイミド膜のガラス転移温度(Tg)を求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリイミド膜の線熱膨張係数(CTE)を求めた。
<5%重量減少温度:T 5
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミド膜の初期重量が5%減少した時の温度(T 5)を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<カットオフ波長(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−530)を用いて、200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
<光透過率(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−530)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
<複屈折>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
<誘電率および誘電損失>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリイミド膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×nav 2により1MHzにおけるポリイミド膜の誘電率(εcal)を算出した。
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリイミド膜(膜厚20〜30μm)の乾燥重量を測定後、23℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分をティッシュペーパーで拭き取った後重量を測定し、次式より吸水率(%)を求めた。吸水率(%)=(W−W)/W ×100 (W:乾燥重量、W:浸漬後の重量)
<弾性率、破断伸び、破断強度>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリイミド膜の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
(実施例1)
<エステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(1)で表されるエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物(以下HT44BPと称する)は以下のように合成した。反応容器中で核水素化トリメリット酸無水物クロリド21.7g(100mmol)に無水テトラヒドロフラン97.4mLを加えて溶解させ、セプタムキャップでシールした。また別な反応容器に、4,4’−ビフェノール(以下4,4’−BPと称する)9.31g(50mmol)およびピリジン16.2mL(200mmol)を無水テトラヒドロフラン42mLに溶解し、セプタムキャップでシールした。氷浴中で0℃に保持した核水素化トリメリット酸無水物クロリド溶液へ、上記4,4’−BP溶液をシリンジにて1時間かけて滴下し、更に24時間撹拌した。白色沈殿を濾別後、この沈殿を水で繰り返し洗浄して塩酸塩のみ溶解・除去した。この段階では水洗処理により目的物が一部加水分解して酸無水物基が開環しているので、180℃で12時間真空乾燥して、完全に熱閉環して粗生成物を得た(収率66%)。これを1,4−ジオキサンで再結晶して白色粉末を得た。赤外線吸収(FT−IR)スペクトル(図1)およびプロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトル(図2)より、得られた生成物は目的とするテトラカルボン酸二無水物であることが確認された。示差走査熱量(DSC)曲線(図3)において254.3℃にシャープな吸熱ピーク(融点)が観測されたことから、この再結晶物は極めて高純度であることが示された。生成物は濾液からも溶媒留去することで回収可能であった。
(実施例2)
ジオール成分として4,4’−BPの代わりにメチルハイドロキノンを使用した以外は実施例1に記載の方法に従って式(2)で表されるエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物(以下HTMHQと称する)を合成した。FT−IRスペクトル、H−NMRスペクトルおよびDSC曲線を図4〜図6にそれぞれ示す。図4〜図5より、得られた生成物は目的とするテトラカルボン酸二無水物であることが確認された。また、示差走査熱量曲線(図6)において239.1℃にシャープな吸熱ピーク(融点)が観測されたことから、この再結晶物は極めて高純度であることが示された。
<ポリイミド前駆体の合成、イミド化およびポリイミドの膜物性評価>
(実施例3)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4’−ODAと称する)5mmolをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、この溶液に実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物粉末5mmolを徐々に加え室温で21時間撹拌して、透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。重合は溶質濃度30重量%で開始し、溶液粘度が急激に増加したので攪拌を確保するため最終的に11重量%まで徐々に希釈した。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定性を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定した脂環式ポリイミド前駆体の固有粘度は3.00dL/gと非常に高く、極めて高重合体であった。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥した後、200℃で1時間、更に320℃で1時間、真空中で熱処理して膜厚約20μmの透明なポリイミドフィルムを得た。このフィルムは180°折り曲げ試験により破断せず、可撓性を示した。表1に膜物性を示す。ガラス転移温度(Tg)は228℃であり、高い耐熱性を示した。更にカットオフ波長が305nm、400nmでの光透過率が76.8%と、高い透明性を示した。またこのフィルムは、複屈折Δn=0.0003と極めて低い値を示し光学材料に適していることがわかった。誘電率(εcal)は2.88と比較的低い値であった。5%重量減少温度(T 5)は窒素中で405℃、空気中で393℃、線熱膨張係数(CTE)は76.0ppm/Kであった。また、このポリイミドはDMAcの他、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に対して加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図7に示す。
Figure 2008297362
(実施例4)
ジアミン成分として4,4’−ODAの代わりに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合、製膜、熱イミド化し、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは高Tg、高透明性、高い熱安定性、低複屈折、低誘電率および十分な可撓性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図8に示す。
(実施例5)
ジアミン成分として4,4’−ODAの代わりに4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(以下MBCHAと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合、製膜、熱イミド化し、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは高Tg、高透明性、高い熱安定性、低複屈折、極めて低い誘電率および十分な可撓性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図9に示す。
(実施例6)
ジアミン成分として4,4’−ODAの代わりにTFMBを用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合した。このワニスに化学イミド化試薬(無水酢酸/ピリジン混合溶液、体積比7/3)を滴下して室温で24時間攪拌した。このとき用いた化学イミド化試薬中の無水酢酸量は、ポリイミド前駆体の繰り返し単位に対して10倍モル量である。得られたポリイミドワニスを大量のメタノール中に滴下・濾過・乾燥した。得られたポリイミド粉末をDMAcに再溶解してワニスとし、これをガラス基板に塗付・乾燥後、250℃で1時間熱処理してポリイミド膜を作製し、膜物性を評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムの膜物性は膜靭性以外は実施例4に記載の同化学組成のポリイミドと実質的に同じであり、高Tg、高透明性、高い熱安定性、低誘電率および高い膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に対して室温で可溶であり、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルは実施例4に記載の同化学組成のポリイミドのスペクトルと実質的に同じであった。
(実施例7)
ジアミン成分としてTFMBの代わりにビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(以下BAPSと称する)を用いた以外は、実施例6に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合、化学イミド化、製膜し、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは高Tg、高透明性、高い熱安定性、比較的低い誘電率および極めて高い膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、DMF、DMSOおよびNMPに対して室温で可溶であり、シクロヘキサノンにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図10に示す。
(実施例8)
ジアミン成分としてTFMBの代わりにo−トリジン(以下o−TOLと称する)を用いた以外は、実施例6に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合、化学イミド化、製膜し、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表1に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは極めて高いTg、高透明性、高い熱安定性、比較的低い誘電率および極めて高い膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、DMF、DMSOおよびNMPに対して室温で可溶であり、シクロヘキサノンにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図11に示す。
(実施例9)
ジアミン成分として4,4’−ODA、テトラカルボン酸二無水物成分として、実施例2で合成されたエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物(HTMHQ)を用いて、ポリイミド前駆体を重合し、実施例6に記載した方法に準じて化学イミド化、製膜して、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表2に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは高Tg、高透明性、高い熱安定性、比較的低い誘電率および極めて高い膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、DMF、DMSOおよびNMPに対して室温で可溶であり、シクロヘキサノンにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図12に示す。
Figure 2008297362
(実施例10)
ジアミン成分として4,4’−ODAの代わりにTFMBを用いた以外は実施例9に記載の方法に従ってポリイミド前駆体を重合し、化学イミド化、製膜して、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表2に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは高Tg、高透明性、高い熱安定性、極めて低い誘電率および高い膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、DMF、DMSOおよびNMPに対して室温で可溶であり、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図13に示す。
(実施例11)
ジアミン成分として4,4’−ODAの代わりにo−TOLを用いた以外は実施例9に記載の方法に従ってポリイミド前駆体を重合し、化学イミド化、製膜して、ポリイミドフィルムの膜物性を評価した。表2に膜物性を示す。このポリイミドフィルムは極めて高いTg、高透明性、高い熱安定性、比較的低い誘電率および十分な膜靭性を示した。また、このポリイミドはDMAcの他、DMF、DMSOおよびNMPに対して室温で可溶であり、シクロヘキサノンにも加熱により溶解性を示した。該ポリイミド薄膜(膜厚:約5μm)の赤外線吸収スペクトルを図14に示す。
(比較例1)
テトラカルボン酸二無水物として、式(1)または(2)で表される本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の代わりにビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(以下BTAと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様に重合を行い、固有粘度0.38dL/gのポリイミド前駆体を得た。しかしながらそのキャスト膜は激しくひび割れていたため、良質なポリイミド膜を得ることができず、膜物性評価を実施することができなかった。これは用いたBTAの重合反応性が低く、膜形成に必要な十分高い分子量が得られなかったためである。重合溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)の代わりにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いても同様であった。
(比較例2)
テトラカルボン酸二無水物として、式(1)または(2)で表される本発明のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の代わりに式(7)で表されるエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ポリイミド前駆体を重合し、実施例6に記載した方法により、化学イミド化を行った。しかしながら化学イミド化試薬をポリイミド前駆体ワニスに投入して攪拌している間、反応溶液がゲル化し、均一なポリイミドワニスを得ることができなかった。また、実施例3に記載の方法に従ってポリイミド前駆体ワニスを製膜後、熱イミド化してポリイミドフィルムを作製した。しかしながら得られたポリイミドフィルムは比較的脆弱であり、破断伸びは7%以下であった。
実施例1に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。 実施例1に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。 実施例1に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の示差走査熱量曲線である。 実施例2に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。 実施例2に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物のH−NMRスペクトルである。 実施例2に記載のエステル基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の示差走査熱量曲線である。 実施例3に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例4に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例5に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例7に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例8に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例9に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例10に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 実施例11に記載のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。

Claims (5)

  1. 下記式(1)または(2)のいずれかで表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
    Figure 2008297362
    Figure 2008297362
    (式(1)および(2)中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。)
  2. 下記一般式(3)または(4)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド前駆体。
    Figure 2008297362
    Figure 2008297362
    (式(3)および(4)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。)
  3. 下記一般式(5)または(6)で表される繰り返し単位を少なくとも一部に有するポリイミド。
    Figure 2008297362
    Figure 2008297362
    (式(5)および(6)中、X、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、又はアミド基を表す。Pは炭素数1から6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、その数(n)は1〜4の範囲である。Aは2価の脂肪族基または芳香族基を表す。)
  4. 波長400nmにおける光透過率が70%以上である高透明性、ガラス転移温度が200℃以上である耐熱性、引張試験における破断伸びが50%以上である高靭性、非プロトン性有機溶媒に5重量%以上溶解する溶液加工性を共に有する請求項3に記載のポリイミド。
  5. 請求項3または4のいずれかに記載のポリイミドを少なくとも一部に含有して成るディスプレー用透明プラスチック基板。
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