JP2012236788A - アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物、並びにこれを用いた樹脂 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物のジアステレオマーの一つであるtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物、並びに、これを用いて合成されるポリイミドに関するものである。
ポリイミドは優れた機械特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性を有し、電気・電子材料、特に半導体用電子材料の分野で、フレキシブルプリント配線用基板、層間絶縁膜、及び保護膜として広く利用されている。しかしながら、一般に芳香族ポリイミドは、ジアミン部分と酸無水物部分の電荷移動相互作用により淡黄色〜赤褐色に着色しており、化学構造を起因とした着色を有する。
近年、装置の軽量化、フレキシブル化の観点から、液晶ディスプレー、電子ペーパー、太陽電池等で使用されるガラス基板を代替できる透明樹脂材料が望まれており、優れた機械特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性を有するポリイミドの透明化に関する研究が行われている。
一方、ポリイミドは一般に優れた耐薬品性を有する反面、有機溶媒に不溶である。そのため、ポリイミドフィルムの作製には、有機溶媒に可溶な前躯体のポリアミック酸の状態でフィルムキャストした後、300〜350℃で数時間加熱し、溶媒の乾燥と熱イミド化を同時に行う必要がある。しかしながら、ポリイミドフィルムを保護層として製膜する場合、被保護層にも高い耐熱性が要求されることとなり、被保護層の材質が制限されてしまう。有機溶媒に可溶なポリイミドであれば、熱イミド化工程が不要となり、有機溶媒を蒸発・乾燥させるだけの比較的低い温度での製膜が可能となり、被保護層として選択できる材質の幅は飛躍的に拡大する。また、ポリイミドの製膜を塗布・乾燥で行うことは、意匠性を高める点においても有用である。
無色透明なポリイミドとしては、脂環式構造を有するテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから合成されるポリイミドが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかしながら、有機溶媒への溶解性については未だ十分とは言えなかった。
特許文献4にはtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物及びその製造方法に関する記載があるが、ポリイミド樹脂へ用いた場合の効果については全く知られていない。
本発明は、無色透明で有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを提供することを目的とする。また、該ポリイミドの原料となる新規なアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を積み重ねた結果、trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導される下記一般式(1)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物が、無色透明で有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを合成するモノマーとして有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
(式中、Aは2価の脂肪族基又は芳香族基を表す。)
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして合成されるポリイミドは、無色透明で有機溶媒への溶解性が高いものである。
本発明のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、下記一般式(1)で表されるものである。
(式中、Aは2価の脂肪族基又は芳香族基を表す。)
上記一般式(1)のAとしては、2価の脂肪族基又は芳香族基であれば特に限定されないが、ジアミンから誘導される残基であることが好ましい。ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノシキ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
<アミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法>
次に本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。本発明のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することが可能である。例えば、trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとを反応させることで製造することが可能である。より具体的には、まず、溶媒へ溶解させたtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド溶液中へ、ジアミンと脱酸剤を溶解させた溶液を滴下し、0.5〜8時間攪拌する。反応温度は−50〜20℃で行われるが、反応選択性の観点から、より好ましくは−10〜10℃で行うとよい。trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとの反応比率としては、ジアミン1モルに対してtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドを2モル以上用いて反応させる。反応における溶質の濃度は1〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲で行うとよい。反応終了後、析出した生成物を濾別し、トルエン等の不純物を溶解しうる溶媒で洗浄することで目的のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。目的物はさらに真空乾燥して次のイミド化反応に用いるとよい。この場合、乾燥温度は60〜150℃、生成物の安定性の観点から、より好ましくは80〜120℃で行うよい。
次に本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。本発明のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物から誘導されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することが可能である。例えば、trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとを反応させることで製造することが可能である。より具体的には、まず、溶媒へ溶解させたtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド溶液中へ、ジアミンと脱酸剤を溶解させた溶液を滴下し、0.5〜8時間攪拌する。反応温度は−50〜20℃で行われるが、反応選択性の観点から、より好ましくは−10〜10℃で行うとよい。trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドとジアミンとの反応比率としては、ジアミン1モルに対してtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドを2モル以上用いて反応させる。反応における溶質の濃度は1〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲で行うとよい。反応終了後、析出した生成物を濾別し、トルエン等の不純物を溶解しうる溶媒で洗浄することで目的のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。目的物はさらに真空乾燥して次のイミド化反応に用いるとよい。この場合、乾燥温度は60〜150℃、生成物の安定性の観点から、より好ましくは80〜120℃で行うよい。
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられるtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドは、trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物の4位のカルボン酸をクロリド化することで製造できる。クロリド化には酸クロリドを合成する通常の方法を用いることができ、具体的には、塩化チオニルを使用する方法、三塩化リンを用いる方法が挙げられる。中でも、過剰に用いた塩素化剤を減圧留去で容易に除去できる点で、塩化チオニルを用いるのが好ましい。必要に応じて触媒を使用することもでき、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、イミダゾール等が挙げられる。
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、具体的にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル系溶媒等が挙げられる。中でも溶解性、安定性の点からシクロヘキサノン、ガンマブチロラクトンが好ましい。これら溶媒は単独で用いても構わないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもよい。
本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の製造に用いられる脱酸剤としては、特に限定されないが、具体的には、ピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が挙げられる。中でも反応選択性の点からアリルグリシジルエーテルが好ましい。これら脱酸剤の使用量は酸クロライドに対して1モル等量以上、好ましくは5モル等量以上である。上限は特に制限はないものの、経済的な観点から50モル等量以下、好ましくは10モル等量以下の量が使用される。
本発明によれば、上記のようにして得られた本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして用い、各種ジアミンを反応させることで、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する透明性、溶解性を兼ね備えたポリイミドを製造することが可能である。
(式中、A及びBは、それぞれ独立して、2価の脂肪族基又は芳香族基を表す。)
上記一般式(2)のBとしては、2価の脂肪族基又は芳香族基であれば特に限定されないが、ジアミンから誘導される残基であることが好ましい。ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノシキ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
本発明のポリイミドの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。一般的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンからポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を合成し、次いでイミド化反応を行うことにより製造される。
<ポリイミド前駆体の製造方法>
次にポリイミド前駆体の製造方法について説明するが、本発明は以下の方法に限定されるものではない。まず脱水を行った重合溶媒へ一種又は二種以上のジアミンを溶解し、そこにテトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、1〜100時間、好ましくは2〜50時間攪拌する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃で行うとよい。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応比率はモル比で1:0.8〜1.2が好ましく、高重合度のものが得られる点で1:1に近いほど好ましい。溶液中の全モノマー濃度は、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
次にポリイミド前駆体の製造方法について説明するが、本発明は以下の方法に限定されるものではない。まず脱水を行った重合溶媒へ一種又は二種以上のジアミンを溶解し、そこにテトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、1〜100時間、好ましくは2〜50時間攪拌する。反応温度は−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃で行うとよい。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応比率はモル比で1:0.8〜1.2が好ましく、高重合度のものが得られる点で1:1に近いほど好ましい。溶液中の全モノマー濃度は、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
ポリイミド前駆体の製造で使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、本発明のアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いることが必須であるが、単独で用いてもよいし、既知のテトラカルボン酸二無水物と組み合わせて使用してもよい。組み合わせて使用する場合は、本発明のポリイミドの特性を損なわない範囲で組み合わせてもよいし、あるいは、既知のポリイミドの構造に透明性、溶解性を向上させる目的で本発明のモノマー構造を導入することも可能である。組み合わせて使用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ポリイミド前駆体の製造で使用される重合溶媒としては、特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、ガンマブチロラクトン、ガンマカプロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、クレゾール、クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
<ポリイミドの製造方法>
本発明のポリイミドは、上記のようにして得られるポリイミド前駆体をさらにイミド化することにより得ることができる。イミド化には、一般に高温加熱によりイミド化させる方法と、脱水環化剤を用いて化学的にイミド化させる方法があるが、本発明のポリイミドはいずれの方法を用いても製造することができる。化学的にイミド化させる場合は、上記で得られたポリイミド前駆体溶液にピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン触媒と共に、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の有機酸無水物を添加し、30〜100℃で1〜24時間攪拌することによって、目的のポリイミドを得ることができる。有機酸無水物の使用量は、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1〜10倍が好ましい。また、3級アミン触媒の使用量は有機酸無水物に対して、0.1〜2倍量が好ましい。さらにこのようにして得られたポリイミドは、大量の貧溶媒中へ沈殿させて、洗浄することにより単離することも可能である。
本発明のポリイミドは、上記のようにして得られるポリイミド前駆体をさらにイミド化することにより得ることができる。イミド化には、一般に高温加熱によりイミド化させる方法と、脱水環化剤を用いて化学的にイミド化させる方法があるが、本発明のポリイミドはいずれの方法を用いても製造することができる。化学的にイミド化させる場合は、上記で得られたポリイミド前駆体溶液にピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン触媒と共に、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の有機酸無水物を添加し、30〜100℃で1〜24時間攪拌することによって、目的のポリイミドを得ることができる。有機酸無水物の使用量は、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1〜10倍が好ましい。また、3級アミン触媒の使用量は有機酸無水物に対して、0.1〜2倍量が好ましい。さらにこのようにして得られたポリイミドは、大量の貧溶媒中へ沈殿させて、洗浄することにより単離することも可能である。
上記のようにして得られた本発明のポリイミドは、有機溶媒へ高い溶解性を示す。高い溶解性を示す有機溶媒の具体例としては、モノグライム、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ガンマブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒等が挙げられる。また、本発明のポリイミドを有機溶媒に溶解した場合、溶液は透明性の高いものとして得ることができる。
以下、本発明につき実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
<1H−NMRスペクトル>
合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の分子構造は、日本電子データム社製NMR分光高度計(JNM−AL300)を用い、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解して、1H−NMRを測定することにより確認した。
合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物の分子構造は、日本電子データム社製NMR分光高度計(JNM−AL300)を用い、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解して、1H−NMRを測定することにより確認した。
<還元粘度>
合成したポリイミドの還元粘度は、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。測定試料は、N,N−ジメチルアセトアミドで0.5重量%に調製した溶液を用いた。
合成したポリイミドの還元粘度は、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。測定試料は、N,N−ジメチルアセトアミドで0.5重量%に調製した溶液を用いた。
実施例1
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.0g(32.3mmol)とガンマブチロラクトン14.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へp−フェニレンジアミン1.7g(15.4mmol)、ガンマブチロラクトン17.0g、アリルグリシジルエーテル10.5g(92.3mol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液をトルエン122.5gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で6時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率70%)。図1に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(3)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.0g(32.3mmol)とガンマブチロラクトン14.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へp−フェニレンジアミン1.7g(15.4mmol)、ガンマブチロラクトン17.0g、アリルグリシジルエーテル10.5g(92.3mol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液をトルエン122.5gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で6時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率70%)。図1に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(3)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
実施例2
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.0g(32.4mmol)とシクロヘキサノン14.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.1g(15.4mmol)、シクロヘキサノン31.0g、アリルグリシジルエーテル10.6g(92.6mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。3時間攪拌後、反応液をトルエン105gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で8時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率88%)。図2に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(4)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.0g(32.4mmol)とシクロヘキサノン14.0gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.1g(15.4mmol)、シクロヘキサノン31.0g、アリルグリシジルエーテル10.6g(92.6mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。3時間攪拌後、反応液をトルエン105gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で8時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率88%)。図2に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(4)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
実施例3
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.5g(34.6mmol)とシクロヘキサノン7.5gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル5.3g(16.5mmol)、シクロヘキサノン26.4g、アリルグリシジルエーテル11.3g(99.0mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液をトルエン263gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で12時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率56%)。図3に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(5)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
窒素置換した100mL四口フラスコへtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリド7.5g(34.6mmol)とシクロヘキサノン7.5gを加え溶解させ、A液とした。次に別の容器へ2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル5.3g(16.5mmol)、シクロヘキサノン26.4g、アリルグリシジルエーテル11.3g(99.0mmol)を加え溶解させ、B液とした。次にA液を0〜5℃へ冷却し、5℃を超えないようにB液をA液へゆっくり滴下した。4時間攪拌後、反応液をトルエン263gへ投入し、沈殿物を濾別した。これをトルエンで洗浄後、80℃で12時間真空乾燥して白色粉末を得た(収率56%)。図3に示す1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は下記式(5)で表されるアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを確認した。
実施例4
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.7mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例1で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物10.7mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が16重量%となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に6重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は2.7dL/gであった。
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.7mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例1で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物10.7mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が16重量%となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に6重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は2.7dL/gであった。
実施例5
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル8.9mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例2で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物8.9mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が17.5%濃度となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に12重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は1.4dL/gであった。
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル8.9mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例2で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物8.9mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が17.5%濃度となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に12重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は1.4dL/gであった。
実施例6
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル7.4mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例3で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物7.4mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が16%濃度となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に9.9重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は1.4dL/gであった。
十分に乾燥させた攪拌機付き密閉反応容器へ4,4’−ジアミノジフェニルエーテル7.4mmmolを仕込み、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドを加えて溶解させた。この溶液へ実施例3で合成したアミド基含有脂環式テトラカルボン酸二無水物7.4mmolを加えた。この時の全モノマー濃度が16%濃度となるよう、先に加えたN,N−ジメチルアセトアミドの量を調節した。重合反応の進行により反応溶液の粘度が急激に増加し攪拌が困難となったため、十分な混合状態を維持できるよう同一溶媒で適宜希釈し、最終的に9.9重量%まで徐々に希釈した。室温で20時間攪拌し、透明かつ均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
引き続き、理論脱水量の2倍モルとなる無水酢酸と理論脱水量の1倍モルとなるピリジンを投入し室温で12時間攪拌して化学イミド化を行った。これを大量のメタノールに滴下して析出した固体を単離した。再度メタノールで洗浄後、乾燥して目的とするポリイミドを白色粉末として得た。得られたポリイミドの還元粘度は1.4dL/gであった。
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