JP2007204693A - 粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イソシアネート基末端プレポリマーの有するイソシアネート基の一部を、活性水素基と炭素数が4〜12の炭化水素基とを有する一官能の活性水素基含有化合物の当該活性水素基と反応させるとともに、当該イソシアネート基末端プレポリマーを分散媒(水)中に分散させ、当該イソシアネート基末端プレポリマーの有するイソシアネート基の残部を、水の有する活性水素基と反応させる工程を含み、前記イソシアネート基の一部と反応する一官能の活性水素基含有化合物の有する活性水素基のモル数をx1、前記イソシアネート基の残部と反応する水の有する活性水素基のモル数をx2とするとき、比率(x1/x2)が5〜35/95〜65である。
【選択図】 なし
Description
最近、スラッシュ成形材料として、柔軟性に優れた粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂が採用されている。
また、特許文献1には、イソシアネート基末端プレポリマーの有するイソシアネート基の一部を低分子ポリオールなどと反応させた後、イソシアネート基の残部を水と反応させることも開示されている。
また、分散媒として用いている非水系の有機溶剤は一般的に引火性が高いために、工業的に生産する際には安全性を確保するために高額な設備を必要とするという問題がある。
本発明の他の目的は、耐ブルーミング性にも優れた成形物を得ることができる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を確実に製造することのできる方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、スラッシュ成形用の粉末材料として好適な熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を確実かつ安全に製造することのできる方法を提供することにある。
第2工程:イソシアネート基含有プレポリマーを分散安定剤の存在下で水中に分散させ、イソシアネート基含有プレポリマーの有するイソシアネート基の残部を、水の有する活性水素基と反応させてポリウレタンウレア樹脂の分散液を調製する工程。
第3工程:得られた分散液からポリウレタンウレア樹脂を分離・乾燥して、粉末状の熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製する工程。
また、前記比率〔(x1+x2)/A〕が0.75〜1.5であり、比率(x1/x2)が10〜35/90〜65であることが好ましい。
さらに、第1工程で使用する有機ポリイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
(2)イソシアネート基含有プレポリマーの有するイソシアネート基の残部を、水と反応させることにより、得られる樹脂中にウレア基が導入され、この結果、得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂による成形物に、優れた耐折れ皺性、機械的特性および耐摩耗性が発現される。
(3)一官能活性水素基含有化合物における炭化水素基の炭素数が4〜12であることにより、得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の分子量を確実に制御できるとともに、当該粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂による成形物は、耐ブルーミング性にも優れたものとなる。
(4)非水系の分散媒(有機溶剤)を使用しなくて済むため、安全に、かつ、安価な設備で粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を製造することができる
<イソシアネート基含有プレポリマー>
本発明の製造方法で使用するイソシアネート基含有プレポリマーは、高分子ポリオール、および一官能活性水素基含有化合物とを、有機ポリイソシアネートと反応させることにより得られる。
高分子ポリオールの種類としては特に限定されるものではなく、例えばポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーを開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオールも好適に使用できる。
本発明の製造方法で使用する一官能活性水素基含有化合物は、活性水素基と、炭素数が4〜12の炭化水素基とを有する活性水素基含有化合物である。
本発明の製造方法において、一官能活性水素基含有化合物の有する活性水素基は、イソシアネート基の一部と反応し、最終的に得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の分子量を制御するために用いられるものである。
一官能活性水素基含有化合物の有する「炭化水素基」の炭素数は4〜12とされ、好ましくは4〜11、更に好ましくは4〜9とされる。
一官能活性水素基含有化合物の炭素数が4未満の場合には、得られる樹脂の分子量を制御することができない(比較例9参照)。一方、炭素数が12を超える活性水素基含有化合物を使用する場合には、得られる樹脂による成形物にブルーミングが発生しやすい(比較例8および10参照)。
本発明の製造方法では、水は分散媒であると同時に鎖延長剤の役割も担っている。ここで水の有する活性水素基は、イソシアネート基含有プレポリマーの有するイソシアネート基の残部と反応する。
イソシアネート基含有プレポリマー(イソシアネート基の残部)と、水(活性水素基)との反応は、水中において行われる。
イソシアネート基含有プレポリマーの粘度を下げるために使用できる有機溶剤としては、THF、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEKと略す)、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性の有機媒体が挙げられる。
粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を最終的に得るためには、これらの有機溶剤を樹脂中から除去する必要があり、除去の容易さから、THF、アセトン、MEKが好ましい。この中で、アセトン、MEKが特に好ましい。
イソシアネート基含有プレポリマーの粘度を下げるために使用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ミリスチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレート等のイソフタル酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルテトラヒドロフタレート等のテトラヒドロフタル酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;ジ−n−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ジ−n−ブチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエート等のマレイン酸エステル類;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸エステル類;トリー(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類;テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテート等のピロメリット酸エステル類;トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル類;ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネート等のイタコン酸エステル類;グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエート等のオレイン酸エステル類;グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート等のリシノール酸誘導体;グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート等のステアリン酸エステル類;ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等のその他の脂肪酸エステル類;トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルデシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート等のリン酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールの芳香族モノカルボン酸ジエステル類;トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ジブチルメチレンビスチオグリコレート等のグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート等のグリセリン誘導体;エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシル等のエポキシ誘導体;その他アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等ならびにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
得られる樹脂による成形物に発生する可能性のあるブルーミングや、成形物の低温特性、特に低温での脆性破壊を抑止する観点から、前記ポリアルキレングリコールの芳香族モノカルボン酸ジエステルが好ましい。
また可塑剤の使用量としては、得られる粉末状の熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂に対する割合として、通常30%以下であり、好ましくは25%以下とされている。
なお、水中に高分子のイソシアネート基含有プレポリマーを均一に分散させる観点から、分散安定剤を用いることが好ましい。分散安定剤は、イソシアネート基含有プレポリマーとの親和性の高い部分と、水との親和性の高い部分が一つの分子中に存在する構造を有するものである。
この他に、不飽和結合を有する有機オリゴマーと、親水性の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物が好適なものとして挙げられる。
この有機オリゴマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンモノマーの重合体や、グリコール類や二塩基酸類の一部に不飽和結合含有グリコールあるいは不飽和結合含有ジカルボン酸を用いて製造したポリエステルポリオール、不飽和結合含有グリコールを出発物質に用いて製造したポリエーテルポリオール、数平均分子量2,000以下の水酸基末端のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等と不飽和結合含有ジカルボン酸とのエステル化反応によって得られるポリオール等の他に、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
前記の不飽和結合含有グリコールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。また、不飽和結合含有ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
また、分散安定剤の使用量としては、イソシアネート基含有プレポリマーに対して0.1〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜5質量%とされる。
本発明における一官能活性水素基含有化合物と水との割合としては、一官能活性水素基含有化合物の有する活性水素基のモル数(反応モル数)をx1、水の有する活性水素基のモル数(反応モル数)をx2とするとき、比率(x1/x2)が5/95〜35/65とされる。
この比率(x1/x2)が5/95未満、すなわち一官能活性水素基含有化合物の割合が過小である場合には、過大な分子量の難溶融性物質の形成を抑制することができず、得られる粉末状の熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂には、好適な溶融成形性(特に、レベリング性およびピンホール防止性能)を奏することができない(後述する比較例3参照)。一方、比率(x1/x2)が35/65を超える場合、すなわち一官能活性水素基含有化合物の割合が過大である場合には、得られるポリウレタンウレア樹脂による成形物に、良好な耐折れ皺性や耐摩耗性などを付与することができない(後述する比較例4参照)。
モル比(〔NCO〕/〔OH〕)が1.3未満である場合には、得られるイソシアネート基含有プレポリマーに十分な濃度のNCO基を導入することができず、これを使用して得られるポリウレタンウレア樹脂中に十分な濃度のウレア基を導入することができず、当該樹脂による成形物に、優れた耐折れ皺性、機械的特性および耐摩耗性を付与することができない(後述する比較例1参照)。
一方、モル比(〔NCO〕/〔OH〕)が2.5を超える場合には、得られるイソシアネート基含有プレポリマーにおいて過剰量のNCO基が導入され、これを使用して得られるポリウレタンウレア樹脂中におけるウレア基の濃度が過大となり、副反応による難溶融性物質の生成を抑制することができず、溶融成形性が低下する(後述する比較例2参照)。
第1工程における反応条件としては、低沸点の有機溶剤を併用した場合や、低沸点の一官能活性水素化合物を使用する場合によっても異なるが、40〜110℃で1〜4時間であることが好ましく、更に好ましくは50〜100℃で2〜3時間とされる。
また、分散液を調整する際には、既知の機械式高速撹拌機〔プライミクス(株)製ホモミクサー、(株)ユーロテック製キャビトロン、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーザー、など〕を用いることができる。
反応温度が低過ぎると反応に長時間を要する。一方、反応温度が高過ぎると、水などが蒸発して製造装置に還流装置などの設備が必要となる。
(1)比率〔(x1+x2)/A〕が0.3〜1.2で、かつ、比率(x1/x2)が5/95〜20/80であること、および
(2)比率〔(x1+x2)/A〕が0.75〜1.5で、かつ、比率(x1/x2)が10/90〜35/65であることが特に好ましい。
第3工程は、第2工程で得られた分散液からポリウレタンウレア樹脂を分離・乾燥して、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製する工程である。
具体的には、濾過法またはデカンテーション法により、ポリウレタンウレア樹脂を分散媒から分離し、次いで、常圧または減圧下において、常温または加温して乾燥する。
本発明の製造方法により得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の形状は、流動性(成形加工時の流れ性)のよい真球状である。また、当該粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の安息角は35°以下であることが好ましく、更に好ましくは20°〜33°である。安息角が過大となる場合は、成形加工時の流れ性が悪くなり、成形不良を起こしやすい。
なお、塊状の樹脂を冷凍粉砕することによって製造される粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の安息角は33°を超えるものとなる。
数平均分子量(Mn)が過小である場合には、最終的に得られる成形物に、十分な機械的特性および耐久性を付与することができない。
一方、数平均分子量(Mn)が過大の場合には、好適な溶融成形性を発揮することができない(後述する比較例1〜2、比較例8参照)。
ここに、「ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量(Mn)」は、GPC測定により、超高分子量(Mnが50万以上)のピーク以外のピークから求められる値をいう。
ここに、「ポリウレタンウレア樹脂の重量平均分子量(Mw)」は、GPC測定により、超高分子量のピーク以外のピークから求められる値をいう。
平均粒径が過大である場合には、得られる成形物におけるアンダーカット部やコーナー部にピンホールが生じやすい。
一方、平均粒径が過大である場合には、流れ性や粉切れが悪化して、得られる成形物の肉厚が不均一になりやすい。
ここに、「平均粒径」とは、レーザー式粒度分析計によって測定した粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値をいう。
なお、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の平均粒径は、イソシアネート基含有プレポリマーに前述の有機溶剤、及び/又は、可塑剤を併用することで小さく調節することが可能である。
一般的に、着色剤として入手可能な顔料には、分散性を改善するために顔料分散剤が含まれているケースが多い。
顔料分散剤としては、低分子ポリエチレンや石油樹脂などの樹脂系分散剤;シリカや炭酸カルシウムのような無機系分散剤;シランカップリング剤等が挙げられる。
顔料の添加量は、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂に対して、通常5質量%以下とされ、好ましくは1〜3質量%とされる。
「紫外線吸収剤」としては、ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等]、ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、サリチル酸系[フェニルサリシレート等]、ヒンダードアミン系[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤および紫外線吸収剤の添加量は、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂に対して、通常5質量%以下とされ、好ましくは0.01〜3質量%とされる。
無機系ブロッキング防止剤としては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)、及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂等)が挙げられる。
これらのうち、有機系ブロッキング防止剤が好ましく、ポリ(メタ)アクリレート樹脂やポリスチレン樹脂が特に好ましい。
ブロッキング防止剤の添加量は、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂に対して通常5質量%未満とされ、好ましくは0.1〜3質量%とされる。
本発明の製造方法により得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂は、スラッシュ成形用の粉末材料として好適に使用することができる。
先ず、モールド(金型)に離型剤を塗布した後、この金型を加熱する。ここに、離型剤の塗布は60℃以下で行う。離型剤の塗布方法としては、例えばエアースプレー法、刷毛塗り法などを例示することができる。金型の加熱温度は、通常150〜300℃とされ、好ましくは180〜280℃とされる。加熱方法としては、熱砂加熱法、オイル加熱法などを例示することができる。
その後、加熱オーブンから取り出した金型を水冷法等により冷却し、脱型することによりスラッシュ成形物(例えば、0.7〜2mmの厚さのシート)を得る。
〔調製例1(分散安定剤溶液の調製)〕
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、アジピン酸565gと3−メチルペンタンジオール575gとを仕込み、窒素ガスを流しながら、150℃、常圧の条件で攪拌することによりエステル化反応させ、数平均分子量1000のポリエステルジオールを合成した。
次に、攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量1000mLの反応器に、上記のポリエステルジオール100gと、ジイソノニルアジペート150gを仕込み、窒素ガスを流しながら80℃まで昇温して攪拌した。ここにヘキサメチレンジイソシアネート42gを追加し、80℃で2時間反応させて、イソシアネート基含有プレポリマーを調整した。ここに数平均分子量1000のポリビニルアルコールを200g追加で仕込み、更に80℃で2時間反応させて固形分約70%の分散安定剤溶液を得た。以下、これを「分散安定剤溶液(1)」という。
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、アジピン酸762gと無水マレイン酸49gとエチレングリコール386gとを仕込み、窒素ガスを流しながら、150℃、常圧の条件で攪拌することによりエステル化反応させた。
縮合水が認められなくなった時点で、テトラブチルチタネート0.1gを添加し、反応系内の圧力を徐々に0.07kPaまで減圧するとともに、190℃まで徐々に昇温して反応を継続することによりポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は2,000、ヨウ素価は12.7gI/100gであった。
続いて、攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量500mLの反応器に、上記のポリエステル74gと酢酸ブチル150gとを仕込み、窒素ガスを流しながら110℃まで昇温して、攪拌した。その後、メトキシPEG(重合度7)メタクリレート75gと過酸化ベンゾイル1gとの溶解混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃に昇温して更に2時間反応させることにより、固形分50%の分散安定剤溶液を得た。以下、これを「分散安定剤溶液(2)」という。
(1)第1工程:
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、高分子ポリオールである、1,4−BDとアジピン酸とから得られる数平均分子量1,000のポリエステルジオール(PBA−1000)255.3gと、エチレングリコールと1,4−BDおよびアジピン酸とから得られる数平均分子量2,600のポリエステルジオール(PBEA−2600)255.3g、1,6−HDとイソフタル酸とから得られる数平均分子量1,000のポリエステルジオール(HiP−1000)170.2g、1,6−HDとオルソフタル酸とから得られる数平均分子量1,500のポリエステルジオール(HoP−1500)170.2gを90℃で混合した。
次に上記混合物を65℃まで冷却し、一官能活性水素基含有化合物であるジ−2−エチルヘキシルアミン13.9gを添加後さらに混合し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)139.3gと、ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)0.050gとを添加し、まず65℃で15分、引き続き80〜90℃で3時間にわたり反応させた。
NCO含量が設計値である1.36%になったことを確認し、イソシアネート基含有プレポリマーを得た。
第1工程で得られた上記のイソシアネート基含有プレポリマーを60℃に冷却した後、MEK200gと分散安定剤溶液(1)42.9gを加えて均一に混合して、イソシアネート基含有プレポリマー/分散剤混合液を調整した。
このMEKの量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して20%に相当する量である。また、分散安定剤溶液(1)の量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して3.0%に相当する量である。
次いで配合物の全量を60℃に調節し、60℃の温水(2353g)中に、プライミクス(株)製ホモミクサー(機械式強制分散機)を用いて8000rpmの回転数で2分間混合し分散させた。
この混合分散物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、下記に示す添加剤(i)〜(iv)を添加し、これを温度計、撹拌機を備えた撹拌容器に移し、撹拌しながら80℃で2時間混合し、その後内圧を下げて含水率が0.3%未満になるまで減圧乾燥した。乾燥後、打粉剤「MP1451」(綜研化学(株)製)3.0gを添加・混合し、300μm以上の粒子を分級カットした。さらに下記に示す添加剤(v)と(vi)の混合物(v/vi=15/85)を7.0g添加してヘンシェルミキサーで6000rpmの回転数で2分間撹拌混合することにより、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は真球状であり、安息角は26°であった。
(i) 酸化防止剤:「イルガノックス245」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製),添加量=2.5g。
(ii)紫外線吸収剤:「チヌビン 213」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製),添加量=1.5g。
(iii)光安定剤:「チヌビン 765」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製),添加量=1.5g。
(iv)内部離型剤:「SH200−100,000cs」(東レ・ダウコーニング(株)製),添加量=2.0g。
(v)黒色顔料:カーボンブラック分散顔料「PV−817」〔粉末顔料であるカーボンブラックと顔料分散剤である炭酸カルシウムを40/60の比率で混合したもの〕(住化カラー(株)製)
(vi)白色顔料:酸化チタン分散顔料「PV−7A1301」〔粉末顔料である酸化チタンと顔料分散剤である炭酸カルシウムを70/30の比率で混合したもの〕(住化カラー(株)製)
下記の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
実施例1の第1工程と同様にして、下記表1および表2に示す処方に従って、所定量の高分子ポリオール、一官能活性水素化合物、HDI、触媒を用いてイソシアネート基含有プレポリマー溶液を調整した。
実施例1の第2工程と同様の条件で、第1工程で得られたイソシアネート基含有プレポリマーをMEKおよび分散安定剤溶液(1)を配合した後、該配合物を60℃の温水中に分散させ、その後別の反応容器に移し、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。
下記表1および表2に、使用した水および分散安定剤の量、また、比率〔(x1+x2)/A〕、比率(x1/x2)の値を併せて示す。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、実施例1で用いた添加剤(i)〜(vi)を実施例1と同じ方法で添加混合し、それぞれ粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は、いずれも真球状であり、安息角は26°であった。
*「PBA−1000」:
1,4−BDとアジピン酸とから得られる、数平均分子量1,000のポリエステルジオール。
*「PBEA−2600」:
1,4−BDとエチレングリコールとアジピン酸とから得られる、数平均分子量2,600のポリエステルジオール。
*「PHiP−1000」:
1,6−HDとイソフタル酸とから得られる、数平均分子量1,000のポリエステルジオール。
*「PHoP−1500」:
1,6−HDとオルソフタル酸とから得られる、数平均分子量1,500のポリエステルジオール。
ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)。
*「MEK(有機溶剤)」:
「メチルエチルケトン」(協和発酵ケミカル(株)製)。
*「PL−PB(可塑剤)」:
PEG−400と安息香酸から得られる、ポリエステル系可塑剤(日本ポリウレタン工業(株)製)。
*「D−2EHA(一官能活性水素化合物)」:
「ジ−2−エチルヘキシルアミン」(広栄化学(株)製)。
下記の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
実施例1の第1工程と同様にして、下記表1に示す処方に従って、所定量の高分子ポリオール、一官能活性水素化合物、HDI、触媒、MEK、分散安定剤溶液(1)を用いてイソシアネート基含有プレポリマー溶液を調整した。
第1工程で得られたイソシアネート基含有プレポリマー溶液を、実施例1の第2工程と同様の条件で60℃の温水中に分散させ、その後で別の反応容器に移し、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。
表1に、使用した水および分散安定剤の量、また、比率〔(x1+x2)/A〕、比率(x1/x2)の値を併せて示す。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、実施例1で用いた添加剤(i)〜(vi)を実施例1と同じ方法で添加混合し、それぞれ粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は、いずれも真球状であり、安息角は27°であった。
この比較例1は、一官能活性水素基含有化合物の使用比率〔(x1+x2)/A〕が請求の範囲の下限を下回る例であり、比較例2は同比率が上限を上回る例である。
下記の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
実施例1の第1工程と同様にして、表2に示す処方に従って、所定量の高分子ポリオール、一官能活性水素化合物、HDI、触媒、MEK、分散安定剤溶液(1)を用いてイソシアネート基含有プレポリマー溶液を調整した。
実施例1の第2工程と同様の条件で、第1工程で得られたイソシアネート基含有プレポリマー溶液を60℃の温水中に分散させ、その後で別の反応容器に移し、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。
表2に、使用した水および分散安定剤の量、また、比率〔(x1+x2)/A〕、比率(x1/x2)の値を併せて示す。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、実施例1で用いた添加剤(i)〜(vi)を実施例1と同じ方法で添加混合し、それぞれ粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は、いずれも真球状であり、安息角は26°であった。
この比較例3は、比率(x1/x2)が請求の範囲の下限を下回る例であり、比較例4は同比率が上限を上回る例である。
下記表3に記載した処方に従って、実施例1と同様の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
分散安定剤溶液(2)使用量は、得られるイソシアネート基含有プレポリマーに対して5.0%に、MEKとPL−PB(可塑剤)の量は、いずれも得られるイソシアネート基含有プレポリマーに対して15%としている。
表3に記載した処方に従って、実施例1と同様の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製した。
表4に記載した処方に従って、以下の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製した。
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、実施例1と同様のPBA−1000:254.2gと、PBEA−2600:254.2g、PHiP−1000:169.5g、PHoP−1500:169.5gを90℃で混合した。
液温を65℃まで冷却し、一官能活性水素基含有化合物であるジ−2−エチルヘキシルアミン13.8gを添加後さらに混合し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)138.7gと、ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)0.050gとを添加し、まず65℃で15分、引き続き80〜90℃で3時間にわたり反応させた。
イソシアネート含量が設計値である1.36%となり、反応が完結したことを確認して、イソシアネート基含有プレポリマーを得た。
次いでイソシアネート基含有プレポリマーを60℃に冷却した後、MEK200gと分散安定剤溶液(1)42.9gを加えて均一に混合して、プレポリマー溶液を調整した。
このMEKの量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して20%に相当する量である。また、分散安定剤溶液(1)の量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して3.0%に相当する量である。
60℃に調節した1000gの水中に、ヘキサメチレンジアミン(以下HDAと略す)18.8gをプライミクス(株)製ホモミクサー(機械式強制分散機)を用いて8000rpmの回転数で5分間混合し水中にHDAを分散させた。
次いで第1工程で得られたイソシアネート基含有プレポリマー溶液を60℃に調節し、上記と同じホモミクサー(機械式強制分散機)を用いて、60℃に調節した1333gの水中(別の容器に準備した)に、8000rpmの回転数で10分間混合し、60℃の温水中に分散させた。
上記のHDAの分散液と、イソシアネート基含有プレポリマー溶液の分散液を混合し、反応させた。
この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら70℃で10時間反応させた。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、実施例1で用いた添加剤(i)〜(vi)を実施例1と同じ方法で添加混合し、それぞれ粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は、いずれも真球状であり、安息角は38°であった。
表4に記載した処方に従って、以下の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製した。
HDAと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧で未反応のMEKを除去し、HDAのMEKケチミン化物を得た。
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、実施例1と同様のPBA−1000:254.2gと、PBEA−2600:254.2g、PHiP−1000:169.5g、PHoP−1500:169.5gを90℃で混合した。
液温を65℃まで冷却し、一官能活性水素基含有化合物であるジ−2−エチルヘキシルアミン13.8gを添加後さらに混合し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)138.7gと、ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)0.050gとを添加し、まず65℃で15分、引き続き80〜90℃で3時間にわたり反応させた。
イソシアネート含量が設計値である1.36%となり、反応が完結したことを確認して、イソシアネート基含有プレポリマーを得た。
次いでイソシアネート基含有プレポリマーを60℃に冷却した後、HDAのMEKケチミン化物36.3gと、分散安定剤溶液(1)42.9g、およびMEK177gを加えて均一に混合して、イソシアネート基含有プレポリマー溶液を調整した。
MEKの量は、ケチミン化したものを含めて、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して20%に相当する量である。また、分散安定剤溶液(1)の量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して3.0%に相当する量である。
第1工程で得られたイソシアネート基含有プレポリマー溶液を60℃に調節し、プライミクス(株)製ホモミクサー(機械式強制分散機)を用いて8000rpmの回転数で2分間混合し、60℃に調整した2333gの温水中に分散させた。
この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。
第2工程で得られたポリウレタンウレア樹脂の分散液から固形分(ポリウレタンウレア樹脂)を濾別し、これに、実施例1で用いた添加剤(i)〜(vi)を実施例1と同じ方法で添加混合し、それぞれ粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂約1000gを調製した。得られた樹脂の形状は、いずれも真球状であり、安息角は37°であった。
下記表5に記載した処方に従って、実施例1と同様の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
実施例18ではn−ブタノール(炭化水素基の炭素数4)を、実施例19ではn−オクタノール(炭化水素基の炭素数8)を、実施例20ではラウリルアルコール(炭化水素基の炭素数12)を用いている。
下記表5に記載した処方に従って、実施例1と同様の第1工程乃至第3工程を経て、粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々を調製した。
比較例8ではジトリデシルアミン(炭素数13の炭化水素基が2モル)を、比較例9ではエタノール(炭化水素基の炭素数2)を、実施例10ではテトラデカノール(炭化水素基の炭素数14)を用いている。
実施例1〜20および比較例1〜10により得られた粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々について、下記の項目について測定および評価した。結果を下記表6〜表10に示す。
GPC測定により、難溶融性物質(Mnが50万以上の成分)の割合(測定チャートにおけるピーク面積比率)、難溶融性物質を除いた成分における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めた。測定条件は下記のとおりである。
・測定器:「HLC−8120」(東ソー(株)製)
・カラム:「TSKgel MultiporeHXL-M 」(東ソー(株)製)
粒径=5μm、サイズ=7.8mmID×30cm×4本
・キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
・検出器:視差屈折
・サンプル:THF/n−メチルピロリドン=2/1の1%溶液
・検量線:標準ポリスチレン
レーザー式粒度分析計「マイクロトラック HRA」(日機装(株)製)にて測定した体積分率粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値を求めた。
230℃に加熱した金型に粉末ポリウレタン樹脂を10秒間熱溶融させ、未溶融の粉末を除去し、300℃のオーブン内で45秒間放置した後、水冷するスラッシュ成形により、厚さ1mmの成形シートを作製した。このようにして得られたシートの溶融状態を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:溶融不良は認められない。
「○」:目立たない程度の溶融不良が多少認められる。
「×」:溶融不良がかなり認められる。
上記(3)により得られたシートの表面におけるピンホールの有無および程度を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:ピンホールは認められない。
「○」:目立たない程度のピンホールが多少認められる。
「×」:ピンホールがかなり認められる。
上記(3)により得られたシートの脱型時における変形の有無および程度を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:変形は認められない。
「○」:僅かな変形が認められる。
「×」:明らかに変形が認められる。
上記(3)により得られたシートを、脱型後30秒間放置し、180°折り曲げた状態で30秒間保持し、これを拡開して24時間静置した後、折り曲げられた部分を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:折れ皺は認められない。
「○」:目立たない程度の折れ皺が多少認められる。
「×」:折れ皺が明確に認められる。
上記(3)により得られたシートについて、往復運動平面磨耗試験機を用いて、下記の条件で100往復の試験を行い、シート表面の状態を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
・往復速度=40回/分
・摩擦子:30mm×12mm
・荷重=29.4N
・磨耗材:白綿かなきん3号を5枚積重したもの
「○」:目立たない程度の損傷が多少認められる。
「×」:損傷が顕著に認められる。
上記(3)により得られたシートについて、JIS K 6251〜6252に準じて引張試験および引裂試験を行い、引張強度、破断のびおよび引裂強度を測定した。
上記(3)により得られたシートを50℃の水中に48時間浸漬した後、これを乾燥し、表面におけるブルーミングの有無および程度を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:ブルーミングは認められない。
「○」:ブルーミングが僅かに認められる。
「×」:ブルーミングが顕著に認められる。
各実施例および比較例において、第3工程での濾別が終わった後、濾液である水中にアミンが残留しているか否かを、以下の手法を用いて確認した。
(i) 濾液を10g精秤する。
(ii) 濾液に少量の指示薬を添加し、0.01Nの塩酸で滴定する。
「◎」:アミンの残留が認められない(0.05mol未満/L)。
「×」:アミンの残留が認められる(0.05mol以上/L)。
各実施例および比較例において、第3工程での濾別が終わった後、分離晶(ウェットケーキ)10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100gに90℃で溶解させ、残存するイソシアネート基の有無をFT−IRを用いて確認した。なお、イソシアネート基は、2200cm−1付近に特異的に吸収が現れるため、容易に判別可能である。
「◎」:イソシアネート基の残留が全く認められない。
「×」:イソシアネート基の残留が認められる。
各実施例および比較例において、得られた粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の各々について、高温多湿条件下での粉末のブロッキング(凝集固化)の程度を確認した。
(i) 1000mlのステンレス製カップに500gの粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を仕込む。
(ii) 50℃/95%RHの環境下に48時間放置する。
(iii) サンプルを恒温恒湿槽から取り出し、25℃/50%RHの環境に24時間放置する。
(iv) 粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の流動性を以下の指標により評価した。
「◎」:粉末の流動性は、試験前と変化していない。
「○」:粉末の流動性は、試験前より僅かに低下している。
「×」:粉末がステンレス容器の中で凝集固化しており、粉末の流動性が失われている。
比較例1では、比率(x1+x2)/A(=0.2)が請求範囲未満となっているために、耐折れジワ性や耐磨耗性が許容限度を下回っており、実用的でないことが分かる。
比較例2では、比率(x1+x2)/A(=1.7)が請求範囲を超えているために、得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂の溶融性が許容限度を下回っており、実用的でないことが分かる。
比較例3では、比率x1/x2(=3/97)が請求範囲を下回っているために、得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量が過大となり、結果として溶融性が許容限度を下回るため、実用的でない。
比較例4では、比率x1/x2(=40/60)が請求範囲を超えているために、得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量が過小となり、耐折れジワ性や耐磨耗性が許容限度を下回るため、実用的でない。
比較例5では、イソシアネート基含有プレポリマー溶液を製造する際に添加するPL−PB(可塑剤)の量が好ましい範囲を超えている。このために樹脂の強度が大幅に低下し、この結果として、耐折れジワ性や耐磨耗性が許容限度を下回るため、実用的でない。
比較例6では、実施例1でイソシアネート基含有プレポリマーと反応する水を、同じモル数のHDAに置き換えた比較例である。HDAはイソシアネート基との反応性に富むために、プレポリマーへの練り込みが困難である。このため、まず分散媒である水中にHDAを強制的に分散させた懸濁液を準備し、次いで別容器にイソシアネート基含有プレポリマー溶液が水中に分散した懸濁液を準備し、両者を撹拌混合することでポリウレタンウレア樹脂の分散液を製造した。
この比較例6では、HDAとイソシアネート基含有プレポリマーの反応が不均一に進行するため、高品質の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を得ることができない。具体的には、イソシアネート基含有プレポリマー粒子の表面だけでHDAとの鎖延長反応が進行し、粒子内部では鎖延長反応がほとんど進行しないことが推定できる。これを裏付けるために、第3工程の固液分離工程で取り出した「濾液」中のアミンの量を測定すると、明らかにHDAが残留していることが確認できた。また、「濾過晶」をN,N−ジメチルホルムアミドで溶解し、FT−IRで測定したところ、樹脂中にイソシアネート基が残留していることが確認できた。分散媒中にはHDAが残留し、粒子中にはイソシアネート基が残存しているという事実から、反応が設計通りに完結していないことが明らかである。
さらに、樹脂中の残存イソシアネート基によって、得られた粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂は高温高湿度の環境下で容易に変質し、ブロッキング不良を併発する危険を指摘することができる。
比較例7では、実施例1でイソシアネート基含有プレポリマーと反応する水を、同じモル数のHDAのMEKケチミン化物に置き換えた比較例である。HDAのMEKケチミン化物は、そのままの状態ではイソシアネート基と反応しないため、プレポリマーへの練り込みが可能である。このため、まずイソシアネート基含有プレポリマー溶液を調整する際に予めこの中にHDAのMEKケチミン化物を練りこんだ上で水中に分散/反応させ、ポリウレタンウレア樹脂の分散液を製造した。
この比較例7でも、前記比較例6と同様にHDAの残留が確認されており、反応が設計通りに完結していないことが明らかである。また、分離晶の表面にHDAが僅かでも残留すると、得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の品質が著しく悪化するため、分離晶を充分に洗浄(リンス)することが必要となる。
比較例8の(x1+x2)/Aの値(=0.9)、x1/x2の値(=15/85)は実施例3と同一であるが、一官能活性水素化合物として実施例3で使用したジ−2エチルヘキシルアミンの代わりに、ジ−トリデシルアミンを使用した例である。ジ−トリデシルアミンは、炭素数13の炭化水素基が2モル付加された2級アミンであり、炭素数が本発明の請求範囲上限を超えている。このために、得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂を用いて成形した成形品の耐ブルーミング性が著しく悪化しており、実用的でないことが分かる。
比較例9の(x1+x2)/Aの値(=0.9)、x1/x2の値(=15/85)は実施例3と同一であるが、一官能活性水素化合物として実施例3で使用したジ−2エチルヘキシルアミンの代わりに、エタノール(炭化水素基の炭素数2)を使用した例であり、炭素数が本発明の請求範囲下限を超えている。沸点が低いため、一官能活性水素化合物としてふさわしくない例である。つまり、第一工程で本来イソシアネート基と反応すべきエタノールが蒸発して反応容器内の気相に滞留してしまうために、イソシアネート基含有プレポリマーの反応率がロット毎にばらついてしまい、結果的に得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量を安定的に制御することができない(表10の※1参照)。
比較例10の(x1+x2)/Aの値(=0.9)、x1/x2の値(=15/85)は実施例3と同一であるが、一官能活性水素化合物として実施例3で使用したジ−2エチルヘキシルアミンの代わりに、テトラデカノール(炭化水素基の炭素数14)を使用した例であり、炭素数が本発明の請求範囲上限を超えている。このために、得られた粉末状ポリウレタンウレア樹脂を用いて成形した成形品の耐ブルーミング性が著しく悪化しており、実用的でないことが分かる。
また、反応が完全に完結しているために変質やブロッキングの心配がなく、人体に悪影響のあるアミン化合物やイソシアネート基の残存がないという特長がある。
特に本発明の製造方法により得られる粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂は、スラッシュ成形用の粉末材料として好適である。当該ポリウレタンウレア樹脂によるスラッシュ成形物は、特に自動車の内装材として好適であり、またソファー等の室内家具の表皮材料としても有用である。
Claims (6)
- 以下の第1工程乃至第3工程を含む、粉末状の熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を製造する方法であって、
第1工程において有機ポリイソシアネートと反応する高分子ポリオールの有する活性水素基のモル数をA、イソシアネート基の一部と反応する炭素数4〜12の一官能の活性水素基含有化合物の有する活性水素基のモル数をx1、第2工程においてイソシアネート基の残部と反応する水の有する活性水素基のモル数をx2とするとき、比率〔(x1+x2)/A〕が0.3〜1.5であり、比率(x1/x2)が5/95〜35/65であることを特徴とする粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
第1工程:高分子ポリオールと炭素数が4〜12の炭化水素基とを有する一官能の活性水素基含有化合物とを、有機ポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート基含有プレポリマーを調製する工程。
第2工程:イソシアネート基含有プレポリマーを分散安定剤の存在下で水中に分散させた後、イソシアネート基含有プレポリマーの有するイソシアネート基の残部を、水の有する活性水素基と反応させてポリウレタンウレア樹脂の分散液を調製する工程。
第3工程:得られた分散液からポリウレタンウレア樹脂を分離・乾燥して、粉末状の熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を調製する工程。 - 前記イソシアネート基含有プレポリマー中に、実質的にこれを溶解させることが可能な有機溶剤、及び/又は、可塑剤を含むことを特徴とした請求項1記載の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
- 前記比率〔(x1+x2)/A〕が0.3〜1.2であり、比率(x1/x2)が5/95〜20/80であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
- 前記比率〔(x1+x2)/A〕が0.75〜1.5であり、比率(x1/x2)が10/90〜35/65であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
- 第1工程で使用する有機ポリイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
- スラッシュ成形用の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂を製造することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の粉末状熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂の製造方法。
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