JP4126720B2 - スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。更に詳細には、スラッシュ成形物のブルーミングの少ない、スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スラッシュ成形法は、複雑な形状(アンダーカット、深絞り等)の製品が容易に成形できること、肉厚が均一にできること、材料の歩留まり率が良いことから、近年、自動車の内装材等の用途に広く利用されており、主に軟質のポリ塩化ビニル(以下PVCという)系粉末樹脂がこのような用途に使用されている(例えば特許文献1)。しかし、軟質化されたPVCは低分子量の可塑剤を多量に含有するため、可塑剤の凝固点以下ではソフト感が消失してしまう問題があった。また、長期間の使用において、可塑剤の揮発により車両のフロントガラス等に油膜を形成してガラスに曇り(フォギング)を生じたり、成形物表面への可塑剤の移行による艶消し効果やソフト感の消失、更にはPVCの経時的劣化による黄変の問題があった。上記問題点を解決し、低分子量可塑剤を用いずにソフト感を与えるものとして、PVCに柔軟性のある熱可塑性ポリウレタン樹脂を配合して変性したものが提案されている(例えば特許文献2〜4)。しかし、これらのいずれにおいても主体樹脂がPVCであるため、成形物のガラス曇り(フォギング)の問題は依然として解決されず、また可塑剤の樹脂に対する相溶性が不十分なため顔料の分散性が悪く淡色では色ムラが発生し易いという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−279485号公報
【特許文献2】
特公昭53−29705号公報
【特許文献3】
特公昭59−39464号公報
【特許文献4】
特公昭60−30688号公報
【0004】
このような問題を解決するために、柔軟性に優れた粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂をスラッシュ成形材料に用いることが提案されている。しかしながら、スラッシュ成形用に限らず、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる成形物は、ソフト感や長期耐久性等は良好であるが、経時によりブルーミングが発生しやすく、外観不良の問題があった。そこで、例えば特許文献5では、熱可塑性ポリウレタン樹脂に特定のアクリル樹脂粉末を配合することで、射出成形品や押出成形品の耐ブルーミング性を改良している。また、特許文献6では、熱可塑性ポリウレタン樹脂に特定のエステル化合物を配合することで、耐ブルーミング性を改良している。
【0005】
しかしながら、特許文献5記載の技術では、硬いアクリル樹脂粉末を配合しているため、熱可塑性ポリウレタン樹脂の特性である柔軟性が低下する場合がある。また、特許文献6記載の技術では、経時で成形品が配合したエステル化合物がブリーディングする場合がある。
【0006】
【特許文献5】
特開昭60−18541号公報
【特許文献6】
特開2001−115008号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、アンチブルーミング剤等を配合することなく成形物がブルーミングを起こさず、成型性が良好なスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(2)に示されるものである。
(1)以下の工程からなることを特徴とする、スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法。
第1工程:高分子ポリオールを、高分子ポリオール及びポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない有機溶剤に分散させる工程。
第2工程:分散液中の高分子ポリオールと、有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー分散液を得る工程。
第3工程:分散液中のイソシアネート基末端プレポリマーの一部のイソシアネート基と1,4−ブタンジオールとを反応させる工程。
第4工程:残存する全てのイソシアネート基と1,4−ブタンジオール以外の数平均分子量2,000以下のポリオールとを反応させる工程。
第5工程:液から粉末ポリウレタン樹脂を分離し、乾燥させる工程。
【0009】
(3)第2工程における「有機ポリイソシアネート」がヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、前記(1)のスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
最初に本発明に用いられる原料について説明する。
本発明に用いられる高分子ポリオールの数平均分子量は500〜10,000、好ましくは500〜5,000であり、種類は特に制限はなく、例えばポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられ、これらは単独又は併用して用いられる。
【0011】
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸のジアルキルエステル、酸無水物、酸ハライド等のポリカルボン酸誘導体と、(数平均)分子量500未満の低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールとの反応により得られるものである。
【0012】
ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0013】
(数平均)分子量500未満の低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(以後1,4−BDと略称する)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以後1,6−HDと略称する)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2−ターシャリーブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,4−トリエチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ダイマー酸ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0014】
(数平均)分子量500未満の低分子ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレントリアミン等が挙げられる。
【0015】
(数平均)分子量500未満の低分子アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン等が挙げられる。
また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオールも好適に使用できる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテル・エステルポリオールとしては、上記のポリエーテルポリオールと上記したポリカルボン酸誘導体から製造されるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリカーボネートポリオールとしては、一般には低分子ポリオールとジエチルカーボネートの脱エタノール縮合反応、あるいは低分子ポリオールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、あるいは低分子ポリオールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応等で得られ、この低分子ポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールを得るのに用いられる低分子ポリオールが挙げられる。
【0019】
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基末端ポリブタジエンやその水素添加物、水酸基含有塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0020】
本発明で好ましい高分子ポリオールは、成形物の物性、感触等を考慮すると、数平均分子量1,000〜5,000の、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。
【0021】
本発明に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以後HDIと略称する)、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートの他、その重合体やそのポリメリック体、ウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。本発明では、成形物の耐候性等を考慮すると、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートが好ましく、特にHDIが好ましい。
【0022】
本発明の特徴は、イソシアネート基末端プレポリマーとポリオールとの反応(以後延長反応と略称する)において、まずポリオールに1,4−BDを用い(最初の延長反応)、続いて1,4−BD以外の(数平均)分子量2,000以下のポリオールを用いる(最後の延長反応)ことである。鎖延長反応を1,4−BDの一段反応とした場合や、最後の延長反応に1,4−BDを用いた場合は、ブルーミングが発生しやすい。
【0023】
本発明では、延長反応を最初に1,4−BDを用いた2段反応とすると、ブルーミング発生がなく、得られる樹脂の溶融性低下によるユズ肌等の成形物の外観不良が起こりくく、また、成形物の物性も良好なものが得られやすいので好ましい。
【0024】
最後の延長反応に用いるポリオールとしては、1,4−BD以外の前述のポリエステルポリオールを得るのに用いられる低分子ポリオールの他に、数平均分子量2,000以下のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。最後の延長反応に用いるポリオールは、1,6−HD、数平均分子量500以下のポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール(以後PTMGと略称する)が好ましい。
【0025】
本発明に用いられる、ポリオール及びポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない有機溶剤(以後、分散媒と略称する)は、前記高分子ポリオールがポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のような極性を待ったものが主成分の場合には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、パラフィン系溶媒等の脂肪族有機媒体、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のような脂環族有機媒体、ジオクチルフタレート等のような可塑剤として用いられる有機媒体等のような非極性及び/又は低極性の有機媒体が挙げられ、水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有水素添加ポリブタジエン等のような非極性のものが主成分の場合には、アセトン、メチルエチルケトン等のような極性の有機媒体が挙げられる。
【0026】
なお、分散媒中に、高分子ポリオールを均一に溶解又は分散させる場合は、以下に示す分散剤を用いることが好ましい。
【0027】
この分散剤には、分子内に活性水素基を含有しているタイプ(以後タイプAと略称する)及び含有していないタイプ(以後タイプBと略称する)とに大別される。分散剤の分子骨格は、分散媒中に高分子ポリオールを細分化・均一に分散させるため、高分子ポリオールとの親和性の高い部分と、分散媒との親和性の高い部分が一つの分子中に存在する構造を有するものである。
【0028】
タイプAの分散剤としては、活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物が好適である。
【0029】
タイプBの分散剤としては、(1)活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物、(2)前記の活性水素基含有分散剤の活性水素基にフェニルイソシアネート等のモノイソシアネート、モノカルボン酸等の活性水素基マスク剤を反応させて得られる反応生成物が好適である。
【0030】
活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、グリコール類や二塩基酸類の一部に不飽和結合含有グリコールあるいは不飽和結合含有ジカルボン酸を用いて製造したポリエステルポリオール、不飽和結合含有グリコールを出発物質に用いて製造したポリエーテルポリオール、数平均分子量2,000以下の水酸基末端のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等と不飽和結合含有ジカルボン酸とのエステル化反応によって得られるポリオール等の他に、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。この不飽和結合含有グリコールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。また、不飽和結合含有ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0031】
活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの原料のポリオールとモノオールからなるOH成分と、前述のポリエステルポリオールの原料の二塩基酸とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸を用いたCOOH成分からなるポリエステル、ポリエーテルモノオールと不飽和結合含有ジカルボン酸との脱水反応物や、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0032】
これらの有機オリゴマーの数平均分子量は500〜10,000、特に500〜9,000が好ましい。また、不飽和結合濃度は有機オリゴマー1分子当たり平均10モル以下が好ましい。
【0033】
炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体としては、例えば、1−オクテン、1−又は2−ノネン、1−又は2−デセン、1−又は2−ヘプタデセン、2−メチル−1−ノネン、2−メチル−1−デセン、2−メチル−1−ドデセン、2−メチル−1−ヘキサデセン、2−メチル−1−ヘプタデセン等のビニル、プロペニル又はイソプロペニル基含有脂肪族直鎖型不飽和炭化水素、アクリル酸又はメタクリル酸と2−エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール等の炭素数6以上の脂肪族アルコール又はシクロヘキサノール、ノルボナール、アダマンタノール等の炭素数6以上の脂環族アルコールとのエステル等の他、アクリル酸とポリカプロラクトンジオールとの反応物、例えば、ダイセル化学工業製のプラクセル(登録商標)FA−4等が挙げられる。
【0034】
不飽和結合含有有機オリゴマーとエチレン性不飽和単量体との反応においては制限は特にはないが、通常、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合反応における公知の反応開始剤や、酢酸エチル、シクロヘキサン等の溶剤を用いることができる。
【0035】
更に不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上のエチレン性不飽和単量体との比率は、有機オリゴマー/エチレン性不飽和単量体=100/20〜100/400(質量比)が好ましい。有機オリゴマー100質量部に対するエチレン性不飽和単量体の比率が少なすぎる場合は、分散剤として十分な性能が得られない。また多すぎる場合は、非水分散重合の際、反応系における原料分散のバランスが失われて、分散剤としての効果が十分に発揮できない。
【0036】
次に本発明のスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法における手順を説明する。
【0037】
本発明は、以下の工程からなることを特徴とする粉末ポリウレタン樹脂の製造方法である。
第1工程:高分子ポリオールを、ポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない有機溶剤に分散させる工程。
第2工程:分散液中の高分子ポリオールと、有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー分散液を得る工程。
第3工程:分散液中のイソシアネート基末端プレポリマーの一部のイソシアネート基と1,4−ブタンジオールとを反応させる工程。
第4工程:残存する全てのイソシアネート基と1,4−ブタンジオール以外の数平均分子量2,000以下のポリオールとを反応させる工程。
第5工程:液から粉末ポリウレタン樹脂を分離し、乾燥させる工程。
【0038】
第1工程は、ポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない有機溶剤中に、高分子ポリオールを均一に溶解又は分散させる工程である。分散剤を用いる場合は、高分子ポリオールに対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%用いるとよい。
【0039】
分散媒以外の原料からなる分散相の総和量と分散媒からなる連続相との質量比は、生産効率、製造コストを考慮すると、分散相/連続相=10/90〜80/20となる範囲が好ましく、40/60〜80/20が更に好ましい。
【0040】
第2工程は、分散液中の高分子ポリオールと、有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー分散液を得る工程、すなわちウレタン化反応を行う工程である。
【0041】
この際の水酸基とイソシアネート基の仕込みの際のモル比は、イソシアネート基/水酸基=1.05〜5.0が好ましく、イソシアネート基/水酸基=1.1〜2.0が特に好ましい。
【0042】
第3工程は、分散液中のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基末端プレポリマーと1,4−BDを反応させる工程であり、第4工程は、続いて残存する全てのイソシアネート基と1,4−BD以外の数平均分子量2,000以下の低分子ポリオールとを反応させる工程である。第1、2工程における高分子ポリオールと第3、4工程における全ポリオールとのモル比はポリオール/鎖延長剤=0.1〜5が好ましく、0.5〜3が特に好ましい。また、第3、4工程における全ポリオール中の1,4−BDは70モル%以下が好ましく、更にスラッシュ成型時の成型性や成形物の物性を考慮すると、30〜60モル%が特に好ましい。
【0043】
第2〜第4工程の反応温度は40〜140℃が好ましく、特に60〜120℃が好ましい。また、反応時間は各々1〜10時間が好ましく、特に2〜5時間が好ましい。更に、ウレタン化反応の際、必要に応じて、触媒を用いることができる。触媒としては、通常のウレタン化触媒等が用いられ、例えば、トリエチレンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸鉛、ナフテン酸鉄、オクテン酸銅等を挙げることができる。
【0044】
第5工程は、液から粉末ポリウレタン樹脂を分離し、乾燥させる工程である。具体的操作は、反応後、濾過又はデカンテーションにより樹脂と分散媒を分離し、次いで、常圧又は減圧して、常温又は加温して乾燥することによって、分散液から粉末ポリウレタン樹脂組成物を回収する操作である。
【0045】
このようにして得られるスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の形状は、流動性(成形加工時の流れ性)のよい真球状である。また、得られるスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の安息角は50°以下が好ましく、更に好ましくは10°〜40°である。安息角が上限を越える場合は、成形加工時の流れ性が悪くなり、成形不良を起こしやすい。
【0046】
本発明によって得られるスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の数平均分子量は5,000〜100,000が好ましく、10,000〜50,000が特に好ましい。数平均分子量が小さすぎる場合は、成形物の機械的強度や耐久性が不十分となりやすい。数平均分子量が大きすぎる場合は、成形性が不十分となりやすい。
【0047】
本発明によって得られるスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の平均粒径は1,000μm以下であり、好ましくは10〜500μm、特に好ましくは100〜200μmである。平均粒径が大きい場合はアンダーカットやコーナー部でピンホールが生じやすい。また小さい場合は流れ性や粉切れが悪化して、成形物の肉厚が不均一になりやすい。この「平均粒径」とは、レーザー式粒度分析計にて測定した粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値である。なお粉末ポリウレタン樹脂の平均粒径は、非極性及び/又は低極性の分散媒と、極性の分散媒を併用することで調節可能である。
【0048】
本発明によって得られるスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂には、必要に応じて添加剤、例えば顔料・染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、ラジカル重合開始剤、カップリング剤、難燃剤、無機及び有機充填剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤等を添加することができる。
【0049】
特に有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、金属塩類(硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、燐酸塩等)、金属粉末、カーボンブラック等が挙げられる。顔料の添加量は、粉末ポリウレタン樹脂組成物に対して、通常は0〜5質量%であり、好ましくは1〜3質量%である。
【0050】
酸化防止剤としては、フェノール系[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等]、ビスフェノール系[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等]、リン系[トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト等]及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等]、ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、サリチル酸系[フェニルサリシレート等]、ヒンダードアミン系[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。酸化防止剤、紫外線吸収剤の添加量は、粉末ポリウレタン樹脂組成物に対して、通常は0〜5質量%であり、好ましくは0.01〜3質量%である。
【0051】
ブロッキング防止剤としては特に限定されず、公知の無機系ブロッキング防止剤又は有機系ブロッキング防止剤があり、無機系ブロッキング防止剤としてはシリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性ポリウレタンウレア樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等)が挙げられる。これらのうち好ましいものは無機系ブロッキング防止剤であり、特に好ましいものはシリカである。該ブロッキング防止剤の添加量は、粉末ポリウレタン樹脂組成物に対して、通常は0〜3質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0052】
本発明によって得られたスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂を成形するには、例えば以下に示すスラッシュ成形方法が挙げられる。
【0053】
最初にモールド(金型)に離型剤を60℃以下でエアースプレー、刷毛塗り等の方法で塗布し、この金型を熱砂加熱、オイル加熱等により150〜300℃好ましくは180〜280℃に加熱する。次に金型内に本発明のスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂組成物を仕込み、15〜45秒間保持(粉付け)した後、余剰の該粉末樹脂を除去し、更に通常20〜300秒、好ましくは30〜120秒間、200〜400℃の加熱オーブンに入れて材料の溶融を完結させた後、金型を水冷法等により冷却、脱型することによりスラッシュ成形物(通常0.7〜2mmの厚さのシート)が得られる。また、該シートを取り出すことなく同じ金型内に更にポリウレタンフォーム原液を導入し、発泡させてコア材を形成させた後に脱型することで該スラッシュ成形物からなる表皮層を有する部材(例えば自動車のインストルメントバネル、コンソールボックス、アームレスト等)を製造することができる。ポリウレタンフォームとしては密度が0.02〜0.5g/cm3 の軟質フォーム及び半硬質フォームが挙げられる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によって得られたスラッシュ成形粉末ポリウレタン樹脂からなる成形物は、経時によるブルーミングが起きない。また、添加剤によるブルーミング対策を採用していないので、ブリーディングも起きない。このため長期間に渡って良好な外観を保つものである。更に、機械的物性も良好である。本発明によって得られたスラッシュ成形粉末ポリウレタン樹脂からなる成形物は、特に自動車の内装材として好適であり、またソファー等の室内家具の材料としても有用である。
【0055】
【実施例】
本発明について、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、「%」は「質量%」を意味する。
【0056】
〔分散剤溶液の合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管のついた容量:2,000mlの反応器に、アジピン酸762g、無水マレイン酸49g、エチレングリコール386gを仕込み、窒素ガスを流し攪拌しながら、150℃、常圧でエステル化反応させた。縮合水が出なくなったら、テトラブチルチタネートを0.1g仕込み、反応系内の圧力を徐々に0.07kPaまで減圧し、また、反応温度を190℃まで徐々に加温し、反応を続けた。得られたポリエステルの数平均分子量は2,000、ヨウ素価は12.7gI/100gであった。続いて、上記と同様な容量:500mlの反応器に、上記のポリエステル74g、酢酸ブチル150g仕込んだ。窒素ガスを流しながら110℃になるまで加熱、攪拌した。その後、2−エチルヘキシルメタクリレート75gと過酸化ベンゾイル1gの溶解混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下した。滴下終了後、温度を130℃に加温して更に2時間反応させて、分散剤溶液D−1を得た。分散剤溶液D−1の固形分は50%であった。
【0057】
〔スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の合成〕
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:3Lの反応器に、PES−1を491.6g、PES−2を210.7g、分散剤溶液D−1を21.1g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを226.7g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,4−BDを37.9g仕込み、90℃で2時間反応させた。その後、1,6−HDを33.1g仕込み、90℃でイソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−1を得た。Pow−1の平均粒径は120μmであった。
【0058】
実施例2
実施例1と同様な反応器に、PES−3を792.2g、分散剤溶液D−1を23.8g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを147.9g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,4−BDを21.4g仕込み、90℃で2時間反応させた。その後、1,6−HDを18.7g、PTG−250を19.8g仕込み、90℃でイソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−2を得た。Pow−2の平均粒径は130μmであった。
【0059】
実施例3
実施例1と同様な反応器に、PES−4を673.6g、分散剤溶液D−1を20.2g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを249.3g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,4−BDを45.6g仕込み、90℃で2時間反応させた。その後、EGを31.4g仕込み、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、90℃で粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−3を得た。Pow−3の平均粒径は100μmであった。
【0060】
実施例4
実施例1と同様な反応器に、PES−3を336.9g、PES−5を336.9g、分散剤溶液D−1を20.2g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを259.3g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,4−BDを45.5g仕込み、90℃で2時間反応させた。次にEGを31.4g仕込み、90℃でイソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−4を得た。Pow−4の平均粒径は120μmであった。
【0061】
比較例1
実施例1と同様な反応器に、PES−3を806.1g、分散剤溶液D−1を24.2g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを150.4g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,4−BDを43.5g仕込み、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−5を得た。Pow−5の平均粒径は110μmであった。
【0062】
比較例2
実施例1と同様な反応器に、PES−3を792.2g、分散剤溶液D−1を23.8g、分散媒としてキョーワゾールC−800を1000g仕込み、40℃にて均一に攪拌・分散させた。次いでHDIを147.9g、DOTDLを0.1g仕込み、90℃にて3時間反応させた。次に1,6−HDを18.7g、PTG−250を19.8g仕込み、90℃で2時間反応させた。その後、1,4−BDを21.4g仕込み、イソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末ポリウレタン樹脂組成物Pow−6を得た。Pow−6の平均粒径は120μmであった。
【0063】
【表1】
Figure 0004126720
【0064】
実施例1〜4、比較例1〜2、表1において
PES−1:
1,4−ブタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=1,000
PES−2:
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=1,000
PES−3:
1,4−ブタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
PES−4:
ネオペンチルグリコール/エチレングリコール=9/1(モル比)、アジピン酸/イソフタル酸=1/1(モル比)の混合ジカルボン酸と混合グリコールから得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
PES−5:
1,6−ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール=3/1(モル比)の混合グリコールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
1,4−BD:
1,4−ブタンジオール
1,6−HD:
1,6−ヘキサンジオール
PTG−250:
ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール
数平均分子量=250
EG:
エチレングリコール
HDI:
ヘキサメチレンジイソシアネート
DOTDL:
ジオクチルチンジラウレート
キョーワゾールC−800:
イソオクタン系溶媒、沸点110〜120℃
※キョーワゾール:協和発酵工業の登録商標
【0065】
物性測定
実施例1〜4、比較例1〜2で得たPow−1〜6を、それぞれ220℃に加熱した金型に10秒間接触させ熱溶融後、未溶融の粉末を除去し、350℃のオーブン中で1分間放置した後、水冷して厚さ1mmの成形シートを作成した。得られた成形シートについて下記試験方法により性能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0066】
Figure 0004126720
【0067】
【表2】
Figure 0004126720
【0068】
表2より、鎖延長反応を二段反応にし、かつ1,4−BDを最初の鎖延長反応に用いた実施例の成形物は、樹脂組成にかかわらず、外観や耐薬品性等が良好であり、かつブルームの発生が抑えられた。しかし、鎖延長反応を一段反応にした比較例1や、二段反応であっても1,4−BDを最後の鎖延長反応に用いた比較例2は、成形物にブルームが発生した。

Claims (2)

  1. 以下の工程からなることを特徴とする、スラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法。
    第1工程:高分子ポリオールを、高分子ポリオール及びポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない有機溶剤に分散させる工程。
    第2工程:分散液中の高分子ポリオールと、有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー分散液を得る工程。
    第3工程:分散液中のイソシアネート基末端プレポリマーの一部のイソシアネート基と1,4−ブタンジオールとを反応させる工程。
    第4工程:残存する全てのイソシアネート基と1,4−ブタンジオール以外の数平均分子量2,000以下のポリオールとを反応させる工程。
    第5工程:液から粉末ポリウレタン樹脂を分離し、乾燥させる工程。
  2. 第2工程における「有機ポリイソシアネート」がヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載のスラッシュ成形用粉末ポリウレタン樹脂の製造方法。
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