JP4001444B2 - 粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、及びこれを用いた成形方法、並びにこれを用いた表皮材 - Google Patents

粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、及びこれを用いた成形方法、並びにこれを用いた表皮材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂とカップリング剤処理した微粉末シリカとを含有する粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、及びこれを用いた成形方法、並びにこれを用いた表皮材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の粉末成形用着色熱可塑性ポリウレタン樹脂は、押し出し機に代表される混練り機を使用して着色した熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た後、粉砕機による物理的な方法で微粉末化して製造していた。この方法により得られる着色熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末の形状は不定形であるため、粉体特性が劣り、特に加工時の大きな指標とされている安息角、流下速度については改善が必要であった。すなわち、加熱された金型上を均一に着色樹脂粉末が流動しないため、形成品に欠肉部分や肉厚の不均一が生じていた。
【0003】
不定形粉末ではなく真球状のポリウレタン樹脂粉末を得る技術は、例えば、特開平2−38453号公報、特開平4−202330号公報、特開平8−120041号公報に報告されている。
特開平2−38453号公報には、特定の分散安定剤を用いた非水エマルジョン重合法による粉末成形用ポリウレタン樹脂が記載されている。特開平4−202330号公報には、ポリウレタン樹脂溶液を、特定の分散安定剤を含有する非芳香族有機溶剤中に滴下後、溶剤を分離・除去して得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末が記載されている。特開平8−120041号公報には、水及び分散安定剤の存在下で、イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂とブロックされた鎖伸長剤とを反応させて得られる、粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂が記載されている。
【0004】
近年、製造工程簡略化のため、粉末ポリウレタン樹脂を用いた成形品において、成形と同時に着色も終了させることが求められている。しかしながら、特開平2−38453号公報、特開平4−202330号公報、特開平8−120041号公報には、これらを解決する手段を示唆する記載はない。
【0005】
着色された粉末ポリウレタン樹脂を得る方法としては、例えば特開平2−294317号公報に記載の技術が挙げられる。特開平2−294317号公報には、ポリイソシアネートもしくはポリオールに顔料を混合し、表面活性剤を添加し、不活性有機液に分散させ、微細な非水エマルジョンとして反応させ、次いで、不活性有機液を除去する方法が記載されている。
【0006】
特開平2−294317号公報に記載されている表面活性剤は、オレフィン/ビニルピロリジンもしくはピロリドン共重合体等の非イオン性表面活性剤である。特開平2−294317号公報では、ポリオールを顔料に添加した場合、回収分散媒に対する考慮がなされていないため、一度使用した分散媒は、廃棄するか再処理しなければならず、環境汚染の原因になる。また、ポリイソシアネートに顔料を添加した場合は、通常、ポリイソシアネートの粘度が低いため、顔料を分散させてもその分散安定性が悪く、静置すると顔料が沈降する場合がある。更には、顔料は水分を含有している場合が多いので、ポリイソシアネートの経時安定性に不安がある。
【0007】
前述の通り、粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る方法には大別して、樹脂ペレットを物理的手法で粉砕する方法と、分散剤を介在させることにより樹脂粉末を得る方法とがある。これらの方法で得られる粉末状の熱可塑性ポリウレタン樹脂をスラッシュ成形に供した場合、充分な粉体特性が得られないため、表皮の肉厚がばらつき、表皮風合いの低下、欠肉ピンホール等を生じ、成形性が低下する。
【0008】
これらの点を解決するため、特開平4−255755号公報には、樹脂粉末に粉末シリカを併用する方法が提案されている。この公報には、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(1)と、活性水素含有ポリブタジエン誘導体などを含む原料から誘導されたウレタン樹脂系分散剤(2)と、低分子ポリアミン(3)とから誘導される混濁重合体(A)に、粒径20μm以下の無機系ブロッキング防止剤(B)が添加された熱可塑性樹脂粉末組成物が開示されている。ここで用いられている無機系ブロッキング防止剤の一つとして、ケイ酸ナトリウムと酸との反応により合成される湿式法シリカ、4塩化ケイ素の燃焼加水分解により合成される乾式法シリカ等のシリカ微粉末が開示されており、具体的商品として、富士デヴィソン化学製のサイロイド404(粒径5μm)が挙げられている。
また、特開平6−41419号公報には、粒径500μm以下の粉末状ポリウレタン樹脂(A)100重量部とシリカのエーロゾル(B)0.1重量部とを混合した粉末状ポリウレタン樹脂組成物が開示されており、エーロゾルの具体例として、日本アエロジル製のアエロジルとトクヤマ製のレオロシールが挙げられている。
これらのシリカの併用により、樹脂の耐ブロッキング性が改善され、粉末特性の指標である流下速度や安息角は改善されたが、スラッシュ成形における表皮レベリング性や表皮表面のピンホールについては、依然として未解決であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これらの公知技術で得られるポリウレタン樹脂粉末は、粉末成形用の素材として未だ十分な機能、性能を有しておらず、更なる改良が求められてきた。
本発明の目的は、あらゆる形状の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂をスラッシュ成形用に粉体特性を更に改良すると共に、これを用いた成形方法、及びこれを用いた表皮材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明者等は、鋭意検討した結果、スラッシュ成形に適合した粉末特性を有し、レベリング性がよく、ピンホールのない表皮が得られる粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の(1)〜()である。
(1)下記のA成分とB成分を含有し、B成分の含有量が0.0005〜3.0質量%であること、を特徴とする粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
A成分:下記のa成分、b成分、c成分及びd成分または下記のa成分、b成分、b′成分、c成分及びd成分を非水エマルジョン重合により反応させて得られる、顔料を均一に含有する平均粒径900μm以下の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂(前記b成分の顔料含有量は、A成分に対して、0.5〜50.0質量%である)。
a成分:有機ジイソシアネート類。
b成分:顔料を分散させた、25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール。
b′成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール。
c成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール以外の数平均分子量500〜10,000のイソシアネート反応性化合物。
d成分:数平均分子量500未満の鎖長延長剤。
B成分:カップリング剤で表面処理した平均粒径2.2〜5μmの微粉末シリカ。
【0015】
)前記非水エマルジョン重合を分散安定剤の存在下で行う、()の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【0017】
)(1)〜()のいずれかの粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物をスラッシュ成形すること、を特徴とする成形方法。
【0018】
)(1)〜()のいずれかの粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなる表皮材。
【0020】
このA成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の平均粒径は900μm以下であり、好ましくは50〜600μmである。なお、A成分における「平均粒径」は、レーザー式粒度分析計にて測定した粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値を意味する。平均粒径が900μmを越える場合は、成形加工時の流れ性が悪く、金型絞り模様の転写性が悪くなり、成形不良を起こす。
【0021】
A成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の安息角は、40度以下が好ましく、25度〜37度が更に好ましい。安息角が上限を越える場合は、成形加工時の流れ性が悪くなり、成形不良を起こしやすい。
また、JIS−K−6721の装置を用いて測定される流下速度が25秒以下(75gが流下し終えるまでの時間)の流動性を有していることが好ましい。
【0022】
本発明におけるB成分は、カップリング剤で微粉末シリカを表面処理したものである。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤及びジルコアルミネート系カップリング剤からなる群から選ばれた1種又は2種以上が好ましく、特に、シラン系カップリング剤は品種が多いので選択の幅が大きく、入手が容易であるため好ましい。微粉末シリカとしては、例えば、日本シリカ工業製ニップシールが挙げられ、一般には天然ゴム、合成ゴムの(ホワイトカーボンと称される)高補強性充填剤として用いられている。
微粉末シリカを表面処理するカップリング剤は具体的には、シラン系では、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラブチルチタネート等が挙げられる。
アルミニウム系としては、アルキルアセトアセテート・アルミニウム・ジイソプロピレート等が挙げられる。
ジルコアルミネート系としては、キャベドンケミカル製のキャブコモッド等が挙げられる。
【0023】
B成分:カップリング剤表面処理微粉末シリカの平均粒径は2.2〜5μmである。なお、B成分における「平均粒径」は、コールターカウンターTA−II(コールターエレクトロニクス製)を用いて30μmのアパーチャーテューブにより測定した粒度分布における50%累積パーセントの値である。平均粒径が上限を越える場合は、流動性改善及びブロッキング防止剤としての効果が悪くなる。
カップリング剤処理の方法としては、よく混合されている状態の微粉末シリカに、カップリング剤液をスプレーで均一に付着させた後に乾燥する方法、水又は有機溶剤に分散させスラリー化した微粉末シリカに、攪拌しながらカップリング剤を加え、脱水、乾燥する湿式法などが挙げられる。
B成分:カップリング剤表面処理微粉末シリカの配合量は、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物中で0.0005〜3.0質量%、特に0.1〜2.0質量%であることが好ましい。この量より少ないとブロッキング防止性能が発揮されず、多すぎるとポリウレタン樹脂の特性を減ずるので好ましくない。
【0024】
本発明においては、A成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂は、下記の各成分を非水エマルジョン重合方法により反応させて得られる、顔料を含有する平均粒径900μm以下の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
a成分:有機ジイソシアネート類。
b成分:顔料を分散させた、25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の 芳香環含有ポリエステルポリオール。
又はb成分とb′成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香 環含有ポリエステルポリオール。
c成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエス テルポリオール以外の数平均分子量500〜10,000のイソシアネート反 応性化合物。
d成分:数平均分子量500未満の鎖長延長剤。
顔料を分散させた成分を使用すると、あらかじめ着色された粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂が効率よく得られる。
【0025】
a成分:有機ジイソシアネート類としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、キシリレン−1,2−ジイソシアネート、4,4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、また、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、更に、これらの有機ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体等の、単独あるいは2種類以上の混合物を挙げることができる。本発明で好ましい有機ジイソシアネート類は、得られる粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の耐候性等を考慮すると、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートである。
【0026】
b′成分は、25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環を含有するポリエステルポリオールであり、成分はこの芳香環含有ポリエステルポリオールに顔料を分散させたものである。なお、本発明において「液状」とは、粘度が1,000Pa・s以下であることを意味する。「液状」でない場合、すなわち、粘度が1,000Pa・sを越える場合は、顔料分散が困難になりやすい。
成分又はb成分とb′成分を用いることにより、非水エマルジョン法において、用いる分散媒に顔料が移行することなく、効率よく着色した粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られることになる。粉末ポリウレタン樹脂を製造した後に着色しようとすると、均一に着色しにくくなり、また、分散媒に顔料が移行しやすくなり、分散媒の処理工程が必要となるため、作業効率が低下しやすい。
【0027】
b成分、b′成分における芳香環含有ポリエステルポリオールの芳香環含有量は、0.5〜3.0mmol/gが好ましく、更には0.8〜2.8mmol/gが好ましい。芳香環含有量が下限未満の場合は、顔料の分散が困難になったり、分散後のポリエステルポリオールを非水系分散媒への分散時に、分散媒に顔料が移行しやすいため、その再利用が困難になりやすい。
【0028】
この芳香環含有ポリエステルポリオールの数平均分子量は、500〜6,000、特に1,000〜5,000が好ましい。数平均分子量が500未満の場合は、顔料の分散安定性が乏しくなる。また、10,000を越える場合は、ウレタン化の際の作業性が極めて低下し実用的でない。
【0029】
前記芳香環含有ポリエステルポリオールとしては、例えば、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸(以下、iPAという)、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等、これらの酸無水物、ジアルキルエステル、酸ハライドのいずれかを用いた芳香族ポリカルボン酸と、エチレングリコール(以下、EGという)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(以下、1,4−BDという)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(以下、MPDという)、ネオペンチルグリコール(以下、NPGという)、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ジメチロールヘプタン、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール又はビスフェノールAのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド付加物等の(数平均)分子量500未満の低分子ポリオール、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。
更に、前記芳香環含有ポリエステルポリオールは、上記のように酸成分や低分子ポリオール成分に芳香環を有するポリエステルポリオールと、酸成分にも低分子ポリオール成分にも芳香環を有しないポリエステルポリオールやラクトン環が開環重合したポリエステルポリオールとの混合物であってもよい。芳香環を有しないポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオールとのエステル交換品等も使用することができる。
これらはいずれも、単独或いは2種類以上の混合物として使用できる。
前記芳香環含有ポリエステルポリオールの製造において、酸成分として、アジピン酸(以下、AAという)、セバシン酸、アゼライン酸等や、これらの酸無水物、ジアルキルエステル、酸ハライドのいずれかを用いた脂肪族ポリカルボン酸、特に炭素数5以上かつ奇数個の脂肪族ジカルボン酸を併用し、また、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、MPD、NPG等の側鎖含有低分子ジオールを併用すると、25℃で液状のポリエステルポリオールが得られやすくなるので好ましい。
【0030】
c成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール以外の数平均分子量500〜10,000のイソシアネート反応性化合物としては、前述の芳香環含有ポリエステルポリオール以外のポリエステル系ポリオール、ポリアミド系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエステル系或いはポリアミド系のポリアミンや(ポリ)アミノアルコール等が挙げられる。これらは単独或いは2種類以上の混合物として使用できる。
【0031】
このようなポリエステル系或いはポリアミド系のイソシアネート反応性化合物としては例えば、酸成分としてコハク酸、AA、セバシン酸、アゼライン酸等、これらの酸無水物、ジアルキルエステル、酸ハライドのいずれかを用いた脂肪族ポリカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等、これらの酸無水物、ジアルキルエステル、酸ハライドのいずれかを用いた脂環族ポリカルボン酸と、EG、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、MPD、NPG、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ジメチロールヘプタン、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール等の(数平均)分子量500未満の低分子ポリオール、又はエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン等の(数平均)分子量500未満の低分子ポリアミン、モノエタノールアミン等の(数平均)分子量500未満のアミノアルコール、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール及び/又はエステル交換品等も挙げることができる。
【0032】
d成分:数平均分子量500未満の鎖長延長剤としては、EG、1,2−プロパンジオール、1,4−BD、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、MPD、NPG、メチルオクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられる。
【0033】
顔料としては、公知の無機顔料及び有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、ベンガラ、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウムイエロー、チタンブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0034】
25℃で液状の芳香環含有ポリエステルポリオールに顔料を分散させる方法には、公知の方法を採用することができる。このときに使用する分散機としては、例えば、3本ロールミル、サンドグラインドミル(縦型、横形)、アトライターミル、ボールミル等が挙げられる。本発明において好ましい分散機は3本ロールミルである。
【0035】
本発明における成分中の顔料の含有率は、成分に対して、0.5〜50.0質量%、特に1.0〜45.0質量%が好ましい。顔料濃度が下限未満の場合は、成形品の着色が不十分で、再度の着色工程が必要となりやすい。上限を越える場合は、非水エマルジョン重合時において、分散媒に顔料が移行し、分散媒の再利用が困難になりやすい。
【0036】
本発明におけるA成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂は、例えば非水エマルジョン重合法により合成することができる。この非水エマルジョン重合法には、粒径の制御のため分散安定剤を用いるのが好ましい。この分散安定剤は、目的とする(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂を得るに際し、a〜d成分の総和量に対して1〜30質量%を配合するのが好ましい。
【0037】
本発明において好ましい分散安定剤は、分子内に活性水素基を含有しているもの(イ)と含有していないもの(ロ)とがあり、本発明における粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の構成成分の活性水素基含有化合物を細分化し、分散媒に均一に分散させるため、活性水素基含有化合物との親和性の高い部分と分散媒との親和性の高い部分が一つの分子中に存在する構造である。本発明では、スラッシュ成形加工後の加工品のブリード等を考慮すると、(イ)のほうが好ましい。
【0038】
この活性水素基を含有する分散安定剤(イ)としては、活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物が好適である。
活性水素基を含有しない分散安定剤(ロ)としては、(1)活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物、(2)前記の活性水素基含有分散安定剤の活性水素基にフェニルイソシアネート等のモノイソシアネート、モノカルボン酸等の活性水素基マスク剤を反応させて得られる反応生成物が好適である。
【0039】
この活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、グリコール類や二塩基酸類の一部に不飽和結合含有グリコール或いは不飽和結合含有ジカルボン酸を用いて製造したポリエステルポリオール、不飽和結合含有グリコールを出発物質に用いて製造したポリエーテルポリオール、数平均分子量2,000以下の水酸基末端のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等と不飽和結合含有ジカルボン酸とのエステル化反応によって得られるポリオール等の他に、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。この不飽和結合含有グリコールとしては例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアリルエーテルが挙げられる。また、不飽和結合含有ジカルボン酸としては例えば、マレイン酸、イタコン酸が挙げられる。
【0040】
活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの原料のポリオールとモノオールからなるOH成分と、前述のポリエステルポリオールの原料の二塩基酸とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸からなるCOOH成分とを反応させて得られるポリエステル、ポリエーテルモノオールと不飽和結合含有ジカルボン酸との脱水反応物や、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0041】
これらの有機オリゴマーの数平均分子量は500〜10,000、特に500〜9,000が好ましい。また、不飽和結合濃度は有機オリゴマー1分子当たり平均10モル以下が好ましい。
【0042】
炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体としては、例えば、1−オクテン、1−又は2−ノネン、1−又は2−デセン、1−又は2−ヘプタデセン、2−メチル−1−ノネン、2−メチル−1−デセン、2−メチル−1−ドデセン、2−メチル−1−ヘキサデセン、2−メチル−1−ヘプタデセン等のビニル基、プロペニル基或いはイソプロペニル基含有脂肪族直鎖型不飽和炭化水素、アクリル酸又はメタクリル酸と2−エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール等の炭素数6以上の脂肪族アルコール又はシクロヘキサノール、ノルボナール、アダマンタノール等の炭素数6以上の脂環族アルコールとのエステル等の他、アクリル酸とポリカプロラクトンジオールとの反応物、具体的には、ダイセル化学工業製のプラクセル(登録商標)FA−4等が挙げられる。
【0043】
不飽和結合含有有機オリゴマーとエチレン性不飽和単量体との反応においては特に制限はないが、通常、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合反応における公知の反応開始剤や、酢酸エチル、シクロヘキサン等の溶剤を用いることができる。
更に、不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上のエチレン性不飽和単量体との比率は、有機オリゴマー/エチレン性不飽和単量体=100/20〜100/400(質量比)が好ましい。有機オリゴマー100質量部に対するエチレン性不飽和単量体の反応比率が20質量部未満の場合は、分散安定剤として十分な性能を得にくい。また400質量部を超える場合は、非水エマルジョン重合の際、反応系における原料分散のバランスが失われて、分散安定剤としての効果が十分に発揮されにくい。
【0044】
本発明の(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法には、(1)ワンショット法と(2)プレポリマー法がある。
【0045】
(1)のワンショット法は、b又はbとb′、c、d成分とa成分を一括で反応させる方法である。本発明においては、貧溶媒にb又はbとb′、c、d成分及び好ましくは分散安定剤を分散させておき、これにa成分を仕込んで反応させる。次に液相から分離、乾燥させて、目的とする(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる。
【0046】
この(1)のワンショット法に用いる全イソシアネート基と全活性水素基のモル比は、全イソシアネート基:全活性水素基=1.00:0.80〜1.00:1.20、特に1.00:0.95〜1.00:1.10が好ましい。
【0047】
(2)のプレポリマー法には、(イ)イソシアネート基末端プレポリマー法と(ロ)活性水素基末端プレポリマー法の2つの方法がある。
【0048】
(イ)のイソシアネート基末端プレポリマー法では、一般的にはb又はbとb′、c成分及び好ましくは分散安定剤を貧溶媒に分散させておき、これにa成分の全部を反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。次いで、d成分を仕込んで反応させ、液相から分離し、乾燥させて、目的とする(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる。
【0049】
(ロ)の活性水素基末端プレポリマー法では、b又はbとb′、c、d成分及び好ましくは分散安定剤を貧溶媒に分散させておき、これにa成分の一部を反応させて、活性水素基末端プレポリマーを得る。次いで、残りのa成分を仕込んで反応させ、液相から分離し、乾燥させて、目的とする(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる。
【0050】
このプレポリマー化反応におけるイソシアネート基と活性水素基のモル比は、(イ)イソシアネート基末端のプレポリマー化反応では、イソシアネート基:活性水素基=1.1:1.0〜5.0:1.0、特に1.3:1.0〜3.0:1.0、
(ロ)活性水素基末端のプレポリマー化反応では、イソシアネート基:活性水素基=1.0:1.1〜1.0:5.0、特に1.0:1.3〜1.0:3.0が好ましい。
【0051】
プレポリマー法における最終的な全イソシアネート基と全活性水素基のモル比(トータルの全イソシアネート基と全活性水素基のモル比)は、活性水素基末端プレポリマー法、イソシアネート末端プレポリマー法ともに、全イソシアネート基:全活性水素基=1.00:0.80〜1.00:1.20、特に1.00:0.95〜1.00:1.10が好ましい。
【0052】
ワンショット法におけるウレタン化反応温度、プレポリマー法におけるプレポリマー反応温度や第2段での反応温度は、ウレタン化反応以外の副反応が起きない温度条件、すなわち、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは30〜100℃である。
反応装置としては、攪拌装置の付いた反応釜等が挙げられる。
また、反応を早く進めるため、ウレタン化触媒としてポリウレタンの製造において常用されるジブチルチンジラウレート(以下、DBTDLという)等の金属触媒、トリエチルアミン等の三級アミン触媒等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0053】
本発明では、反応制御の容易さ、得られる(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の加工適性等を考慮すると、前記(2)−(イ)のイソシアネート基末端プレポリマー法が好ましい。
【0054】
前記反応における分散媒としては、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、石油ベンジン、リグロイン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン、ケロシン、石油ナフサ等の脂肪族及び脂環式炭化水素;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等の液状可塑剤;流動パラフィン等の、ポリウレタン樹脂に対する貧溶媒が挙げられる。
【0055】
また、(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の粒径の調節等、必要に応じて分散媒に良溶媒を併用することができる。この良溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサンノン等のケトン系有機溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶媒、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系有機溶媒等が挙げられる。
【0056】
(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造する装置には、公知のあらゆる形式の乳化分散装置が使用できる。
【0057】
上記のような製造方法で得られるA成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の形状は、真珠のような球状である。
【0058】
このようして、A成分:顔料含有粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した後、B成分:微粉末シリカを添加・混合して、本発明の(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が得られる。
B成分の配合により、本発明の(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の粉末特性は、流下速度8〜19秒、安息角20〜35度に調節されるのが好ましい。
【0059】
本発明における(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて他の熱可塑性樹脂を混合して使用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0060】
本発明の(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤等の添加剤を適宜配合することができる。配合方法は、各成分を粉末のままで混合しても良いし、粉末樹脂と各添加剤を溶剤に溶解又は分散させて混合しても良い。
配合方法は公知の方法が適用可能であり、配合装置としてはボールミル、サンドグラインドミル、シェイカー、三本ロール、押出機、ニーダー、エアガン、攪拌機等を使用することができる。
【0061】
本発明の成形方法におけるスラッシュ成形は、例えば、100〜250℃に加熱した金型に粉末状の(着色)熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を入れ、表面レベリング性が均一になるまで30秒〜10分間放置し、その後、金型を冷却し、型温20〜80℃で脱型する、ことによって行われる。
この成形には、具体的には、粉末樹脂組成物の安息角、流下速度等の粉体特性を考慮した金型設計が必要である。
【0062】
本発明の表皮材は、前記特定のカップリング剤により表面改質した微粉末シリカを含有する(着色)熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物から成形されるものであり、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアトリム等の自動車内装用表皮材等に用いることができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例等により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。以下の実施例等において、「部」は全て「質量部」を意味する。
【0064】
使用原料の説明
ポリエステル−1:iPA/AA=1/1(モル比)とEG/NPG=9/1から得られ る芳香環含有ポリエステルポリオール
水酸基価=56mgKOH/g
芳香環含有量=2.16mmol/g
平均官能基数=2
ポリエステル−2:1,4−BDとAAから得られる芳香環非含有ポリエステルポリオー ル
水酸基価=56mgKOH/g
平均官能基数=2
ポリエステル−3:MPDとAAから得られる芳香環非含有ポリエステルポリオール
水酸基価=56mgKOH/g
平均官能基数=2
顔料 :茶色顔料
商品名:NW−36(日弘ビックス製)
分散媒 :パラフィン系溶媒
商品名:シェルゾール71(シェル化学製)
沸点170〜200℃
【0065】
〔分散安定剤の合成〕
合成例1
(1)分子内に不飽和結合を有するポリオールの合成
攪拌機、温度計、留出塔、窒素ガス導入管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリブチレンアジペートポリオール1,000部、及び無水マレイン酸49部を秤量して添加し、窒素ガスを流しながら加熱混合した。
温度を140〜160℃にして反応させ、縮合水を系外に出した後、更に系内を徐々に減圧しながら反応を続け、最終的に190℃、30mmHgの条件で4時間反応させて、反応終了とした。
得られたポリオールの水酸基価は53mgKOH/g、酸価は4.1mgKOH/gであった。このポリオールは数平均分子量2,100で、1分子中に平均1個の二重結合を有するものであった。
【0066】
(2)分散安定剤の合成
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却器を取り付けた500mlの4つ口フラスコに、(1)で合成したポリオール44部及び酢酸ブチル99部を秤量して添加した。窒素ガスを滴下ロートの上部から系内に流しながら加熱混合した。110℃になったとき、滴下ロートからラウリルメタクリレート102部及びベンゾイルパーオキサイド2部の溶解混合物を滴下開始した。
1時間半で滴下終了し、その後130℃で2時間反応させ反応終了とした。
得られた分散安定剤の水酸基価は11mgKOH/gであった。
【0067】
〔顔料を分散させた芳香環含有ポリエステルポリオールの調製〕
調製例1
ポリエステル−1を40部、ポリエステル−3を40部、及び顔料を20部3本ロールミルにて混合し、顔料を分散した芳香環含有ポリエステルポリオールPES−1を得た。PES−1は、25℃で粘度140Pa・Sの流動性を有する粘稠液体であった。
【0068】
〔着色粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂の合成〕
合成例2
高速仕様攪拌モーターの設置してある内容量5Lの4つ口フラスコに、合成例1で得た分散安定剤を182部、100℃に加温したPES−1を100部、100℃に加温したポリエステル−1を333部、ポリエステル−3を333部、1,4−BDを59部、及びDBTDLを0.02部仕込み、均一に混合した後、分散媒を1,000部仕込み、更に高速攪拌を10分間行った。次に、HDIを174部仕込み、120℃に昇温し、4時間反応させた後、遠心脱水機にて分散媒と樹脂とを分離し、減圧乾燥して、平均粒径180μmの茶色に着色した粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂PU−を994部得た。分離濾液には顔料の移行が認められなかった。
【0069】
合成例3
合成例2と同様な反応容器に、合成例1で得た分散安定剤182部、100℃に加温したPES−1を100部、100℃に加温したポリエステル−2を333部、ポリエステル−3を333部、1,4−BDを59部、及びDBTDLを0.02部仕込み、均一に混合した後、分散媒を1,000部仕込み、更に高速攪拌を10分間行った。次に、HDIを174部仕込み、120℃に昇温し、4時間反応させた後、遠心脱水機にて分散媒と樹脂とを分離し、減圧乾燥して、平均粒径160μmの茶色に着色した粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂PU−を994部得た。分離濾液には顔料の移行が認められなかった。
【0070】
合成例4
2軸押し出し機のホッパー付近温度160℃、中間部温度180℃、先端部温度200℃に温度調節し、そのホッパー口より、HDI:348g/min、ポリエステル−1:667g/min、ポリエステル−3:667g/min、PES−1:200g/min、1,4−BG:118g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出させ、ストランドカットにて、着色熱可塑性ポリウレタン樹脂ペレットを得た。樹脂フィード量は120kg/hrである。この樹脂ペレットを冷凍粉砕して、平均粒径250μmの着色粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂PU−を得た。
【0071】
〔微粉末シリカのシランカップリング剤処理〕
調製例2
微粉末シリカ(日本シリカ工業製、Nipsil(登録商標)E−200、平均粒径3.2μm)100部及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製、KBE903)2部を混合機で5分間混合し、110℃で2時間乾燥して、シラン系カップリング剤処理微粉末シリカ−1を得た。
【0072】
調製例3
微粉末シリカ(日本シリカ工業製、Nipsil(登録商標)N300A、平均粒径2.2μm)100部及びN−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製、KBM603)5部を混合機で5分間混合し、110℃で2時間乾燥して、シラン系カップリング剤処理微粉末シリカ−2を得た。
【0073】
実施例1
合成例で得たPU−:100部及び調製例2で得たシラン系カップリング剤処理微粉末シリカ−1:0.5部を混合したものについて、粉末特性(流下速度、安息角、かさ比重、平均粒径)を測定した。この結果を表1に示す。
流下速度、安息角、かさ比重は、JIS−K−6721(1977)の方法に従って測定した。
なお、
流下速度:粉末組成物75gをかさ比重測定用ダンパー付きロート(JIS−K−67 21)に投入し、ホッパーから全量流下するまでの時間を測定。
安息角:粉末組成物75gをかさ比重測定用ダンパー付きロート(JIS−K−672 1)に投入し、ホッパーから全量流下させたときのひろがりと高さから安息角 を算出。
【0074】
実施例2
合成例で得たPU−:100部及び調製例3で得たシラン系カップリング剤処理微粉末シリカ−1:0.5部を混合したものについて、粉末特性(流下速度、安息角、かさ比重、平均粒径)を測定した。この結果を表1に示す。
【0075】
実施例3
合成例で得たPU−:100部及び調製例2で得たシラン系カップリング剤処理微粉末シリカ−2:0.5部を混合したものについて、粉末特性(流下速度、安息角、かさ比重、平均粒径)を測定した。この結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
合成例で得たPU−:100部及びアエロジル200(日本アエロジル製):0.5部を混合したものについて、粉末特性(流下速度、安息角、かさ比重、平均粒径)を測定した。この結果を表1に示す。
【0077】
比較例2
合成例で得たPU−:100部及びミクロマイカMK−200(コープケミカル製):0.5部を混合したものについて、粉末特性(流下速度、安息角、かさ比重、平均粒径)を測定した。この結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0004001444
【0079】
〔スラッシュ成形による表皮材の製造〕
実施例4〜6、比較例3〜4
実施例1〜及び比較例1〜2により得られた(着色)熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を使用し、スラッシュ成形により表皮材(シート)を製造した。
スラッシュ成形方法
縦24cm、横28cm、深さ10cm(金型表面積672cm2 )の金型を220℃にオイル加熱し、60部の(着色)粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を仕込み、オイル中で表面レベリング性が均一化するまで放置した。その後金型を冷却し、型温60℃で脱型した。得られた表皮材(シート)の厚さは約600μmであった。
成形したシートの性能(表皮レベリング性、ピンホールの有無、耐熱性、耐候性)を測定した。その評価結果を表2に示す。
耐熱性:120℃、500時間での測定値。
耐候性:キセノンウエザオメーター、ブラックパネル温度83℃、50サイクルでの 測定値。
表皮レベリング性の評価基準
○:目視により凹凸や波打ちが認められない。
×:目視により凹凸や波打ちが認められる。
【0080】
【表2】
Figure 0004001444
【0081】
この表から、流下速度や安息角で見た粉末特性がほぼ同等であっても、従来のシリカを用いた比較例では、成形品の表皮レベリング性不良や表皮表面のピンホールが発生した。一方、特定カップリング剤処理シリカ微粉末を添加した本発明実施例の場合には、これらが解決できたことが判る。
【0082】
【発明の効果】
本発明の(着色)熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、非水エマルジョン合成法により合成された微粉末着色熱可塑性ポリウレタン樹脂であっても、冷凍粉砕により物理的に微粉末化された着色熱可塑性ポリウレタン樹脂であっても、スラッシュ成形に適合する粉末特性に合わせて成形加工する事が可能となった。
また、ピンホールの発生がなく、表皮レベリング性に優れ、実質的に可塑剤の飛散がないオール(着色)熱可塑性ポリウレタン樹脂表皮材の提供が可能となった。

Claims (4)

  1. 下記のA成分とB成分を含有し、B成分の含有量が0.0005〜3.0質量%であること、を特徴とする粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
    A成分:下記のa成分、b成分、c成分及びd成分または下記のa成分、b成分、b′成分、c成分及びd成分を非水エマルジョン重合により反応させて得られる、顔料を均一に含有する平均粒径900μm以下の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂(前記b成分の顔料含有量は、A成分に対して、0.5〜50.0質量%である)。
    a成分:有機ジイソシアネート類。
    b成分:顔料を分散させた、25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール。
    b′成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール。
    c成分:25℃で液状である数平均分子量500〜10,000の芳香環含有ポリエステルポリオール以外の数平均分子量500〜10,000のイソシアネート反応性化合物。
    d成分:数平均分子量500未満の鎖長延長剤。
    B成分:カップリング剤で表面処理した平均粒径2.2〜5μmの微粉末シリカ。
  2. 前記非水エマルジョン重合を分散安定剤の存在下で行う、請求項記載の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
  3. 請求項1〜のいずれか一項に記載の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物をスラッシュ成形すること、を特徴とする成形方法。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の粉末熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなる表皮材。
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