JP3627232B2 - 耐NOx性ポリウレタン系粉末樹脂の製造方法 - Google Patents

耐NOx性ポリウレタン系粉末樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐NOx性に優れたポリウレタン系粉末樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気中への有機溶剤の放出の規制(VOC規制)が世界的に厳しくなってきている。このため、有機溶剤を用いない成形品、塗料、接着剤等の要望が高まっている。ポリウレタン系樹脂においても例外ではなく、このような要望から、粉末樹脂の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
ポリウレタン系粉末樹脂を製造する方法は、従来より種々提案されている。例えば(1)既に製造されている樹脂を粉砕する方法、(2)非水分散重合による方法、(3)水系エマルジョンによる方法、及び(4)樹脂溶液から樹脂を沈殿させる方法等が既に報告されている。また、このようにして得られたポリウレタン系粉末樹脂に、シリカ等の添加剤を配合して、耐ブロッキング性や流動性を改良したものも既に報告されている。(特開平6−41419号公報等)
【0004】
一方、ポリウレタン樹脂の耐候性向上策として、特許2698575号公報には、特定の紫外線吸収剤、特定の金属化合物、特定の窒素含有化合物の3成分を予め反応成分に添加し、その後反応させる方法が開示されている。この発明の目的は運動靴などの靴底部分の白色の維持を目的としている。この公報によると、前記各成分単独では、白色の維持効果が少ないとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に記載したような特定の紫外線吸収剤や特殊な窒素含有化合物を併用することなく、単一の無機物を添加することによって、耐NOX 性、成形加工性、機械的強度等を有するポリウレタン系粉末樹脂組成物を提供することを目的とする。さらには、従来のポリウレタン樹脂での反応注型や射出成形法ではなく、粉末樹脂の特徴を生かした、例えば粉体塗料、粉体接着剤などの新しい用途を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、活性水素基含有化合物と有機ポリイソシアネートを反応させて粉末状ポリウレタン系樹脂(A)を合成した後、酸化マグネシウムまたは、酸化アルミニウムの金属酸化物(B)を配合することを特徴とする耐NOx性ポリウレタン系粉末樹脂の製造方法である。
【0011】
本発明に用いられる、具体的な原料について、以下に説明する。
本発明における粉末状ポリウレタン系樹脂(A)は、活性水素基含有化合物と有機ポリイソシアネートとの反応によって得られるものである。
【0012】
活性水素基含有化合物は、高分子ポリオールと鎖延長剤に分けられる。本発明では、少なくとも高分子ポリオールを用いることが好ましい。
高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。この高分子ポリオールにおける好ましい数平均分子量は、500〜10,000、更に好ましくは700〜5,000であり、好ましい平均官能基数は1.5〜10.0、更に好ましくは1.9〜3.0である。数平均分子量が上限を越える場合は、粉末樹脂組成物の機械的強度が不十分となりやすい。また、数平均分子量が下限未満の場合は、溶融粘度や溶融温度が高くなりすぎて、作業性が悪くなりやすい。
なお、本発明でいう高分子ポリオールの「数平均分子量」とは、平均官能基数と末端基定量法にて定量した末端基量から算出したものである。
【0013】
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、酒石酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸化合物、それらの酸エステル、酸無水物、酸ハライド等と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ジメチロールヘプタン、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロールあるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下EOと略称する)又はプロピレンオキサイド(以下POと略称する)等のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ペンタエリスリトール、ソルビトール、また、シュークローズ、グルコース、フラクトース等のシュガー系アルコール類等の数平均分子量62〜500の低分子ポリオール、あるいはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン等の数平均分子量62〜500の低分子ポリアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール等の単独、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。更に、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0014】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールに用いた低分子ポリオールを開始剤として、EO、PO、ブチレンオキサイド、アミレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーの単品や混合物から公知の方法により付加重合することで得られる。
【0015】
ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記のポリエーテルポリオールと前記したジカルボン酸、酸無水物、酸ハライド等とから製造される化合物が挙げられる。
【0016】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールとジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応から得られる化合物が挙げられる。
【0017】
鎖延長剤としては、前述の低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコール、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0018】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートリジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、これらの有機ポリイソシアネート用いたカルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基、ウレア基、ビュレット基、アロファネート基、ウレタン基含有の変性ポリイソシアネート等も用いることができる。
本発明では、無黄変タイプの脂肪族及び/又は脂環族イソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0019】
本発明における粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の数平均分子量は、5,000〜200,000が好ましく、特に7,000〜100,000が好ましい。数平均分子量が下限未満の場合、ポリウレタン系樹脂の強度が不足する。また、上限を越える場合は、溶融粘度が大きくなりすぎ、作業性が悪くなる。なお、粉末状ポリウレタン系樹脂の「数平均分子量」は、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定されたものである。
【0020】
本発明における粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の平均粒径は、300μm以下が好ましく、更に好ましくは10〜250μmである。平均粒径が上限を越える場合は、流動性に欠け、ひいては作業性が悪くなりやすい。なお、本発明でいう「平均粒径」は、レーザー式粒度分析計にて測定した粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値である。
【0021】
本発明における粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の130℃における溶融粘度は、1,000〜500,000ポイズが好ましく、更には5,000〜300,000ポイズが好ましい。溶融粘度が上限を越える場合は、作業性が悪くなりやすくなる。また、溶融粘度が下限未満の場合は、一般的にポリウレタン系樹脂の分子量が小さすぎるため、粉末樹脂組成物の機械的強度が不十分であることが多い。
【0022】
本発明に用いられる金属酸化物(B)は、18族型元素周期表(日本化学会編,化学便覧,改訂4版,1993年発行)の2族〜13族の元素の酸価物である。好ましい元素としては、マグネシウム、カルシウムなどの2族、亜鉛などの12族、アルミニウムなどの13族元素が挙げられる。その入手や取り扱いの容易さ等を考慮すると酸化マグネシウムがさらに好ましい。
【0023】
金属酸化物(B)の平均粒径は、1000μm以下が好ましく、更に好ましくは0.01〜80μmである。平均粒径が上限を越える場合は、得られる粉末樹脂組成物の流動性や機械的強度が不十分となりやすい。
【0024】
また、金属酸化物(B)の安息角は、30〜60°が好ましく、更には33〜57°が好ましい。安息角が上限を越えると、粉末樹脂組成物の流動性に欠け、ひいては作業性が悪くなりやすい。
【0025】
本発明における、粉末状ポリウレタン系樹脂(A)と金属酸化物(B)の重量比は、(A)/(B)=100/0.1〜100/10が好ましく、更に好ましくは100/0.5〜100/8である。金属酸化物が少なすぎる場合は、粉末樹脂組成物の耐NOx性が不十分であり、多すぎる場合は、機械的強度が不十分となりやすい。
【0026】
本発明のポリウレタン系粉末樹脂組成物の製造方法は、公知の方法で粉末状ポリウレタン系樹脂(A)を合成した後、金属酸化物(B)を配合するという方法である。この粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、
(1)良溶媒にポリウレタン系樹脂を溶解させた溶液から、貧溶媒中に樹脂を沈殿させる再沈法。
(2)貧溶媒中にてポリウレタン系樹脂を合成する非水エマルジョン重合法による方法。
(3)水系エマルジョンを経由する方法
(4)塊状のポリウレタン系樹脂を(凍結)粉砕し、その後必要に応じて篩処理して所望のものを得る粉砕法。
等が挙げられる。本発明では、最終的なポリウレタン系粉末樹脂組成物の流動性を考慮すると、粒子の形状をそろえやすい再沈法や非水エマルジョン重合法が好ましい。
【0027】
非水エマルジョン重合法や再沈法に用いられる貧溶媒としては、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族炭化水素系有機媒体、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のような脂環族炭化水素系有機媒体、ジオクチルフタレート等のような可塑剤として用いられる有機媒体等が挙げらる。
【0028】
再沈法や非水エマルジョン重合法においては、分散剤を用いると粒子の形状そろえること容易になるので好ましい。この分散剤としては、分子内に活性水素基を含有しているものと、含有していないものとがある。活性水素基を含有するものは、イソシアネート基と反応し、粉末状ポリウレタン系樹脂(A)に取り込まれることになる。分散剤の分子構造は、粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の原料である活性水素基含有化合物との親和性の高い部分と貧溶剤との親和性の高い部分が一つの分子中に存在する構造である。分散剤を用いる効果としては、粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の製造時において、活性水素基含有化合物を細分化し貧溶剤中に均一に分散させることができるため、その結果、粒径のそろった粉末状ポリウレタン系樹脂(A)が得られることになる。
【0029】
この活性水素基を含有する分散剤としては、活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物が好適である。
活性水素基を含有しない分散剤としては、(1)活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと、炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物、(2)前記の活性水素基含有分散剤の活性水素基にフェニルイソシアネート等のモノイソシアネート、モノカルボン酸等の活性水素基マスク剤を反応させて得られる反応生成物が好適である。
【0030】
この活性水素基含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、グリコール類や二塩基酸類の一部に不飽和結合含有グリコールあるいは不飽和結合含有ジカルボン酸を用いて製造したポリエステルポリオール、不飽和結合含有グリコールを出発物質に用いて製造したポリエーテルポリオール、数平均分子量2,000以下の水酸基末端のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等と不飽和結合含有ジカルボン酸とのエステル化反応によって得られるポリオール等の他に、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。この不飽和結合含有グリコールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。また、不飽和結合含有ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0031】
活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの原料のポリオールとモノオールからなるOH成分と、前述のポリエステルポリオールの原料の二塩基酸とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸を用いたCOOH成分からなるポリエステル、ポリエーテルモノオールと不飽和結合含有ジカルボン酸との脱水反応物や、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0032】
これらの有機オリゴマーの数平均分子量は500〜10,000、特に500〜9,000が好ましい。また、不飽和結合濃度は有機オリゴマー1分子当たり平均10モル以下が好ましい。
【0033】
炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体としては、例えば、1−オクテン、1−又は2−ノネン、1−又は2−デセン、1−又は2−ヘプタデセン、2−メチル−1−ノネン、2−メチル−1−デセン、2−メチル−1−ドデセン、2−メチル−1−ヘキサデセン、2−メチル−1−ヘプタデセン等のビニル、プロペニル又はイソプロペニル基含有脂肪族直鎖型不飽和炭化水素、アクリル酸又はメタクリル酸と2−エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール等の炭素数6以上の脂肪族アルコール又はシクロヘキサノール、ノルボナール、アダマンタノール等の炭素数6以上の脂環族アルコールとのエステル等の他、アクリル酸とポリカプロラクトンジオールとの反応物、例えば、ダイセル化学工業社製のプラクセル(登録商標)FA−4等が挙げられる。
【0034】
不飽和結合含有有機オリゴマーとエチレン性不飽和単量体との反応の制限は、特にはないが、通常、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合反応における公知の反応開始剤を用いて、酢酸エチル、シクロヘキサン等の有機溶剤中で反応させると、反応の制御が容易になり好ましい。
更に、不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上のエチレン性不飽和単量体との比率は、有機オリゴマー/エチレン性不飽和単量体=100/20〜100/400(重量比)が好ましい。有機オリゴマー100重量部に対するエチレン性不飽和単量体の比率が20重量部未満の場合は、分散剤として十分な性能が得られない。また400重量部を超える場合は、非水分散重合の際、反応系における原料分散のバランスが失われて、分散剤としての効果が十分に発揮できない。
【0035】
粉末状ポリウレタン系樹脂(A)の製造時における、全イソシアネート基と全活性水素基のモル比は、全イソシアネート基:全活性水素基=1.0:0.8〜1.0:1.2、好ましくは1.0:0.9〜1.0:1.1である。また、反応を早く進めるため、ウレタン化触媒としてポリウレタンの製造において常用されるジブチルチンジラウレート等の金属触媒、トリエチルアミン等の3級アミン触媒等のウレタン化触媒を用いることもできる。反応温度は、30〜120℃が好ましく、更に好ましくは50〜100℃である。
【0036】
粉末状ポリウレタン系樹脂(A)と金属酸化物(B)の配合時期は、ウレタン化反応終了後が好ましい。これは、ウレタン化の前に酸化マグネシウムが存在すると異常反応を起こしやすいからである。また、場合によっては、微量の金属イオンにより樹脂が着色することもあり、好ましくない。
さらに好ましくは、合成に用いた水、溶剤等を除去した粉末状ポリウレタン系樹脂(A)と粉末状の金属酸化物(B)を配合するとよい。
【0037】
粉末状ポリウレタン樹脂(A)の合成後、又は(A)と金属酸化物(B)の配合後に、必要に応じてふるいをかけて、粒径を調節してもよい。
【0038】
このようにして得られたポリウレタン系粉末樹脂組成物は、従来のものと比較して、流動性や耐NOx性に優れているものである。このため、溶融成形品、塗料及び接着剤等に好適に適用できる。
【0039】
まず、本発明の溶融成形品について述べる。
本発明に用いられるポリウレタン系粉末樹脂組成物は、(エアによる)流動性に優れているので、ノズル詰まりしにくく、自動成形加工が容易である。具体的な加工方法としては、プレス成形加工、射出成形加工、押出成形加工、パウダードット加工等、樹脂を溶融させる行程であれば特に制限はない。
プレス成形加工においては、例えば、ポリウレタン系粉末樹脂組成物を型に所定量入れ、一次プレス(例 120℃,60kgf/cm,5分)にて溶融させ、その後、二次プレス(例 150℃,100kgf/cm,5分)にて樹脂成形品を得る、といった手順で成形加工品が得られる。
射出成形加工おいては、射出成形機に前記ポリウレタン系粉末樹脂組成物を仕込み、例えば120℃にて加熱溶融させ、その後、型に打ち込む等で成形品にする、といった手順で成型品が得られる。
【0040】
本発明の塗料や接着剤には、前述のポリウレタン系粉末樹脂組成物に、必要に応じて、溶剤、硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤等の添加剤を適宜配合することができる。配合方法は、各成分を粉末のままで混合してもよいし、ポリウレタン系粉末樹脂組成物と各添加剤を溶剤に溶解又は分散させて混合してもよいし、また、ジオクチルフタレート(可塑剤)のように添加剤が溶解性の乏しい液体の場合は、本発明のポリウレタン系粉末樹脂組成物を添加剤中に分散させてもよい。配合方法は公知の方法が適用可能であり、配合装置としてはボールミル、サンドグラインドミル、シェイカー、三本ロール、押出機、ニーダー、エアガン、攪拌機等を使用することができる。
【0041】
本発明の塗料、接着剤の塗布方法としては、粉体のものであれば静電気電着法、(エアレス)スプレー法、パウダードット法等が挙げられ、溶液にしたものなら刷毛塗布法、ロール塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法等が挙げられる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例等により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。以下の実施例等において、「部」は全て「重量部」を意味し、「%」は全て「重量%」を意味する。
【0043】
〔分散剤溶液の合成〕
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管のついた反応器に、アジピン酸762部、無水マレイン酸49部、エチレングリコール386部を仕込み、窒素ガスを流し攪拌しながら、150℃、常圧でエステル化反応させた。縮合水が出なくなったら、テトラブチルチタネートを0.1部仕込み、反応系内の圧力を徐々に0.5mmHgまで減圧し、また、反応温度を190℃まで徐々に加温し、反応を続けた。得られた水酸基含有ポリエステルの数平均分子量は2,000、ヨウ素価は12.7であった。
続いて、攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却塔及び窒素ガス導入管のついた反応器に、上記のポリエステル75部、酢酸ブチル150部仕込んだ。窒素ガスを流しながら110℃になるまで加熱、攪拌した。その後、2−エチルヘキシルメタクリレート74部と過酸化ベンゾイル1部の溶解混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下した。滴下終了後、温度を130℃に加温して更に2時間反応させて、分散剤溶液を得た。分散剤溶液の固形分は50%であった。
【0044】
〔粉末状ポリウレタン系樹脂の合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた反応器に、ポリオール(1)を74.8部、1,4−ブタンジオール(以下1,4−BDと略称する)を6.7部、分散剤溶液を4.0部、シクロヘキサンを100部仕込み、40℃にて均一に分散させた。次いで、HDIを18.5部仕込んで均一に攪拌した後、ジブチルチンジラウレートを0.01部仕込み、80℃にて5時間反応させた。その後、濾過、乾燥させて、粉末状ポリウレタン系樹脂PU−1を得た。このPU−1の平均粒径は50μm、数平均分子量は38,000、溶融粘度は17,000ポイズ(130℃)であった。
【0045】
合成例2、4〜5
実施例1と同様にして、表1に示す原料、仕込み比で粉末状ポリウレタン系樹脂PU−2、4〜5を合成した。
【0046】
合成例3
実施例1と同様な装置に、ポリオール(3)を61.9部、分散剤溶液を10.0部、シクロヘキサンを100部仕込み、40℃にて均一に溶解させた。次いで、H12MDIを32.4部仕込んで均一に攪拌した後、DBTDLを0.01部仕込み、80℃にて2時間反応させた、その後、1,4−BDを6.3部仕込み、80℃で3時間反応させ、濾過、乾燥させて、粉末状ポリウレタン系樹脂PU−3を得た。このPU−3の平均粒径は20μm、数平均分子量は45,000、溶融粘度は22,000ポイズ(130℃)であった。
【0047】
合成例6
実施例1と同様な装置に、ポリオール(1)を74.7部、1,4−BDを6.7部、分散剤溶液を4.0部、メチルエチルケトンを100部仕込み、40℃にて均一に溶解させた。次いで、HDIを18.6部仕込んで均一に攪拌した後、DBTDLを0.01部仕込み、70℃にて4時間反応させて樹脂溶液を得た。その後、シクロヘキサン2000部を反応器に攪拌しながら仕込み、濾過、乾燥させて、粉末状ポリウレタン系樹脂PU−6を得た。このPU−6の平均粒径は30μm、数平均分子量は56,000、溶融粘度は89,000(130℃)であった。
【0048】
合成例7
ニーダー反応装置に、ポリオール(2)を70.4部、1,4−BDを6.3部仕込み、60℃にて均一に混合した。その後、HDIを23.2部、DBTDLを0.01部仕込み、100℃にて2時間反応させてポリウレタン系樹脂を得た。次いで、この樹脂を冷凍粉砕し、60メッシュのふるいにかけて、粉末状ポリウレタン系樹脂PU−7を得た。このPU−7の平均粒径は100μm、数平均分子量は40,000、溶融粘度は15,000(130℃)であった。
【0049】
【表1】
Figure 0003627232
【0050】
合成例1〜7、表1において
Figure 0003627232
【0051】
〔ポリウレタン系粉末樹脂組成物の調製〕
実施例1〜8、比較例1〜5
表2〜4に示す配合比で混合し、ミキシングシェイカーで十分均一にして、ポリウレタン系粉末樹脂組成物Pow−1〜12を調製した。なお、Pow−13は、PU−7をそのまま用いた。
【0052】
【表2】
Figure 0003627232
【0053】
【表3】
Figure 0003627232
【0054】
実施例1〜8、比較例1〜5、表2〜3において
Figure 0003627232
【0055】
〔成型品評価〕
実施例8〜15、比較例6〜10
Pow−1〜13をプレス成形によって、厚さ1mmのシートを製造した。プレス成形条件は、以下に示す通りである。評価結果をまとめて表4に示す。
プレス成形条件
一次プレス:120℃、60kgf/cm,5分
二次プレス:150℃、100kgf/cm,5分
シート物性評価項目
・引張強度、伸び(JIS K−7331準用)
・耐NOx性試験
NOxガス暴露条件:25℃×60分
【0056】
【表4】
Figure 0003627232
【0057】
〔粉体塗料評価〕
実施例16
Pow−1をそのまま粉体塗料とした。これを流動浸漬法により軟鋼板に粉体塗装した。評価結果をまとめて表6に示す。
軟鋼板サイズ:縦100mm×横40mm×厚1.3mm
塗装手順
1.軟鋼板を加熱炉中で360℃×3分間加熱する。
2.加熱した軟鋼板を、流動槽に4秒間浸漬させる。
3.加熱炉にて、200℃×2分で、後加熱して表面を平滑化する。
4.室温まで放冷する
塗膜評価項目
・180°折り曲げ試験
塗装サンプルを180°折り曲げて、塗膜にクラックの発生状況を肉眼で観察した。
○:クラックの発生なし ×:クラックの発生あり
・耐NOx性試験
NOxガス暴露条件:25℃×60分
【0058】
実施例17〜22、比較例11〜15
Pow−2〜13(PU−8を除く)を、実施例16と同様な方法で評価した。評価結果をまとめて表5に示す。
【0059】
【表5】
Figure 0003627232
【0060】
〔接着剤評価〕
実施例23
不織布にアクリルエマルジョンをロールプリンタを用い、1ドットの面積:約0.3mm、ドット数:70個/cm、塗布量(固形分換算):5g/mになるようにドット状にプリントし、乾燥炉に通した。次にプリントしたアクリル樹脂のタックがなくならないうちに、不織布全体にPow−1を吹き付け、アクリル樹脂がないところに付着したPow−1を除去した。このときのPow−1の塗布量は、8g/mであった。続いて、これを120℃で熱処理して、目付38g/mの接着芯地を得た。
得られた接着芯地を綿ニットからなる表地と重ね、ロールプレス機により130℃×3kgf/cm×10秒の条件でプレスし、接着サンプルを作成した。評価結果をまとめて表6に示す。
接着評価項目
・接着強度
接着サンプルを縦10cm×横5cmにカットし、引張速度10cm/分で180°剥離し、このときの強度を接着強度とした。
・耐NOx性試験
NOxガス暴露条件:25℃×60分
【0061】
実施例24〜29、比較例16〜20
実施例23と同様にして、Pow−2〜13(PU−8を除く)を評価した。評価結果をまとめて表6に示す。
【0062】
【表6】
Figure 0003627232
【0063】
〔耐NOx性試験測定方法(共通)〕
装置:JIS L−0855(1992)に規定される窒素酸化物試験装置及び窒素酸化物発生装置を使用する。
試験操作
(1)各試験片の短辺を放射線状ホルダにクリップで止める。
試験片の1回の収容数は12枚とする。
サンプルサイズは、縦10cm×横4cmとする。
試験片を取り付けた試料ホルダを試験容器内のフレームに固定する。
試験装置には直射日光が当たらないようにする。
(2)窒素酸化物貯蔵器から注射器にて窒素酸化物を50ml抜き取り、試験容器(容量15l)に注入口から窒素酸化物を注入する。
注入したら直ちにプロペラを約270rpmにて回転させ、内部の窒素酸化物を均一にする。
(3)所定時間後、試験装置のふたを開け、各試験片を大気中に取り出し、水洗した後、濾紙の間に挟んで脱水し、そのまま風乾させる。
(4)風乾後、サンプルを色差計により変色の程度を黄変度にて測定する。
黄変度は、窒素酸化物暴露前後におけるΔYIで表し、JIS K−7103(1977)を準用して測定する。
【0064】
【発明の効果】
本発明により、耐NOx性、作業性に優れたポリウレタン系粉末樹脂組成物、並びにそれからなる溶融成形品、塗料及び接着剤の提供が可能となった。

Claims (1)

  1. 活性水素基含有化合物と有機ポリイソシアネートを反応させて粉末状ポリウレタン系樹脂(A)を合成した後、酸化マグネシウムまたは、酸化アルミニウムの金属酸化物(B)を配合することを特徴とする耐NOx性ポリウレタン系粉末樹脂の製造方法。
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