JP3627418B2 - 熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体、これを用いた樹脂成形品の製造方法、並びにそれを用いた接着剤、コーティング剤、及び塗料 - Google Patents

熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体、これを用いた樹脂成形品の製造方法、並びにそれを用いた接着剤、コーティング剤、及び塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる一液で熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体、これを含有する粉末体、これらを用いた樹脂成形品の製造方法、並びにこれらを用いた接着剤、コーティング剤、及び塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気中への有機溶剤の放出の規制(VOC規制)が世界的に厳しくなってきているため、有機溶剤を用いない固形樹脂や水系樹脂を用いる接着剤、コーティング剤、塗料の要望が高まっている。しかし、市場の要望を満足する無溶媒のポリウレタン系樹脂は未だ開発されておらず、その開発が強く要望されている。さらに、VOC規制を克服するとともに、イソシアネートモノマーの毒性を問題視する動きも見られ、遊離のイソシアネートモノマーを含まないポリウレタン系樹脂の開発も望まれている。その一つの方向として、ポリウレタン系の熱可塑性樹脂粉末を用いたスラッシュ成形、コ−ティングや、ポリウレタン系熱可塑性フィルムを用いるホットメルトフィルムや、ヒートラミネートタイプの接着剤が、次第に増加しつつある。
【0003】
有機溶剤を用いないポリウレタン系樹脂には、二成分型ポリウレタン系樹脂、一液湿気硬化ポリウレタン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、水系ポリウレタン系樹脂等があり、それぞれ一長一短がある。
すなわち、二成分型ポリウレタン系樹脂は、通常、架橋構造を持ち耐熱性や耐久性に優れているが、その二成分配合液は系内のイソシアネート基と活性水素基との反応で増粘し最後にはゲル化するため、その可使時間に制限がある。また、配合時における配合比率に配慮を要する。
一液湿気硬化ポリウレタン系樹脂は、通常、基材又は大気中の湿気と反応し硬化する工程を経るため、耐熱性等に優れている。しかし、湿気との反応であるため、反応が遅く機械的強度の発現性に乏しく、かつ、冬場の低温低湿度条件と夏場の高温高湿度条件とでは接着性が異なる等、その接着性が外部条件に左右される欠点がある。さらに、このタイプは、系内にわずかであるが遊離のイソシアネートモノマーを含有し、コーティング時の条件によっては作業環境を悪くするため、局所排気装置等の設置が必要な場合が多い。
熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、射出成形や押出成形が可能で、作業性に優れている。しかし、これは、高分子量であるために溶融時の粘度が大きく、流動させるには大きな力が必要であること、これから得られるフィルムやコーティング層が架橋構造を持たない熱可塑性のものであるため、その使用温度が樹脂の軟化温度以下に制限されること、架橋構造を持たないため耐溶剤性や耐熱性が劣ること等の欠点がある。
水系ポリウレタン系樹脂も無溶剤系としては注目されているが、コーティングした後、有機溶剤より熱容量の大きい水を取り除く必要があり、有機溶剤系のポリウレタン系樹脂より数倍以上の熱エネルギーを必要とすること、また排水処理という別の面での環境問題があること等の欠点がある。
【0004】
次に、粉末ポリウレタン系樹脂の製造方法に関する従来技術について述べる。一般に、樹脂粉末の製造方法としては、(1)既に製造されている樹脂を粉砕する方法、(2)樹脂溶液から樹脂を沈澱させる方法、及び(3)非水分散重合による方法等が既に報告されている。
まず、第一の方法である粉砕法は、粉砕しようとする樹脂が熱可塑性であり、しばしば強靭であるため、有効に粉末化するためには、例えば、液体窒素による樹脂の冷却を含むかなり経費のかかる方法が必要である。また、冷凍粉砕では冷凍剤及び粉砕装置が高価であることに加え、粉砕工程でダストが発生するためその補集装置も必要である。さらに、粉砕された樹脂の形状が真珠のような球状ではなく、また、大きさも不揃いである。このため、成形の際、フロー性が悪く、また成形時にボイドが発生しやすい等の問題がある。
第二の方法である沈澱法には、既製造済みの樹脂を溶剤に溶解させるか、溶液中で樹脂を製造する工程、それに続く、溶媒とは混和するが樹脂は溶解しないか溶解能の小さい、すなわち貧溶媒を加えることにより起こる沈澱工程、さらに溶剤の分離回収、沈澱した粉末樹脂の乾燥工程という流れと、溶液中で樹脂を製造する工程、溶剤を除去する工程、粉砕工程という流れの二通りの方法がある。前者の方法は、沈殿工程による粉末化に注意と熟練を必要とし、後者の方法は、結局は粉砕するので第一の方法と同じ問題がある。
さらに、水系エマルジョンを製造し、このエマルジョンを凝固させて樹脂粉末を製造する方法も提案されているが、この方法を応用できる樹脂の特性は限定されている。なお、特開平7−258379号公報には、第一及び第二の方法によるイソホロンジイソシアネートのウレトジオン変性体を用いた粉体塗料組成物が記載されている。
第三の方法である非水分散重合法としては、界面活性剤、分散剤を用いる粉末ポリウレタン系樹脂の製造方法が公知である(特公昭57−29485号公報、特開平1−245013号公報、特開平2−6519号公報等参照)。この非水分散重合法は、貧溶媒中に原料を溶解もしくは分散させ、その後重合反応させる方法である。原料が溶媒に溶解していても、重合反応後は樹脂が析出することになる。反応後、樹脂と溶媒とを分離回収、沈澱した粉末樹脂の乾燥工程を経て、粉末樹脂が得られる。非水分散重合法によって得られる粉末樹脂は、形状が真珠のような球状であり、また、粒径分布が狭いという特徴がある。しかし、特公昭57−29485号公報及び特開平1−245013号公報記載の粉末ポリウレタン系樹脂は、単なる熱可塑性樹脂であるため、この粉末ポリウレタン系樹脂単独では成形加工後に架橋構造とはならない。また、特開平2−6519号公報記載の粉末ポリウレタン系樹脂は、すでに三次元架橋されたゲルであるため、成形性に乏しい。
【0005】
一方、ウレトジオン基を含有するポリウレタン樹脂はすでに公知である(Kunststoffhandbuch Volume VII P.17,37(1966) 他)。また、ウレトジオン基を含有する化合物は、昇温下でウレトジオン基が解離し、2個のイソシアネート基を再生することも公知である(J. H. Saunders, K. C. Frisch, Polyurethanes Chemistry & Technology Part 1, Interscience Publishers (1962) P113) 。更に、ウレトジオン基含有ポリイソシアネート化合物及びその応用に関する技術も公知である(特公昭57−46447号公報、特開昭58−37022号公報、特公平1−50265号公報、特開昭63−265970号公報、特開平2−620号公報等参照)。粉体塗料、ミラブルゴム硬化剤分野では、ウレトジオン化したトリレンジイソシアネートの技術も古くから公知である。また、最近、イソホロンジイソシアネート系、ジフェニルメタンジイソシアネート系のウレトジオン基含有ポリウレタン樹脂に関する技術も公知となっている。特開平7−316258号公報には、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートから得られるウレトジオン基含有ポリイソシアネートにジオール及び活性水素を一個有する化合物から得られるポリウレトジオンを、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、フッ素ポリオールと混合した粉体塗料組成物が開示されている。しかし、この粉体塗料はウレタン基結合が少ないため、ポリウレタンの特性である耐磨耗性に乏しいものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来公知技術の問題点を解決して、無溶剤系で熱可塑性樹脂並みの優れた成形加工適性を持ち、熱加工後は架橋構造を形成して二成分型ポリウレタン系樹脂並みの優れた機械的強度、耐熱性や耐久性を有し、かつ、遊離のイソシアネートモノマーを発生しない、環境に優しいポリウレタン系球状粉末体、及びその新しい用途を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られるポリウレタン系樹脂、及び分散剤からなる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体である。
【0008】
本発明は、分散剤と共に、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと、数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体である。
【0009】
本発明は、分散剤と共にウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、活性水素基含有化合物を活性水素基過剰の条件で反応させて得られる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体である。
【0010】
本発明は、前記有機ポリイソシアネートが、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体と、これ以外のイソシアネート化合物とを含有する、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体である。
【0011】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体と数平均分子量62〜10,000の活性水素基含有化合物とを、ウレトジオン基/活性水素基=25/100〜100/100(モル比)となる量で配合してなることを特徴とする、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体である。
【0012】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は前記の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体と、ウレトジオン基解離触媒とを含有することを特徴とする、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体である。
【0013】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は前記の各々の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体に熱エネルギーを与えて溶融させ、ウレトジオン基を解離させて、生成するイソシアネート基と活性水素基との反応によって型中で硬化させることを特徴とする、樹脂成形品の製造方法である。
【0014】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は前記の各々の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とする接着剤である。
【0015】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は前記の各々の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とするコーティング剤である。
【0016】
本発明は、前記の各々の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は前記の各々の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とする塗料である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明の「熱硬化可能な」「熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体」とは、ウレトジオン基が解離する温度未満では、熱可塑性樹脂のような挙動を示すが、ウレトジオン基解離温度以上では、熱硬化性樹脂のような挙動を示すものである。すなわち、ウレトジオン基解離温度を境として、それ以下の温度では、繰り返しの溶融加工が可能であるが、一旦ウレトジオン基の解離温度以上になると、三次元架橋反応が起こり、溶融、溶解等ができなくなる。
【0018】
本発明に用いられる有機ポリイソシアネートは、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体と、場合によりこれ以外のイソシアネート化合物とを含有するものである。
この有機ジイソシアネート変性体は、有機ジイソシアネートを変性して、分子内にウレトジオン基とイソシアヌレート基を少なくとも導入した多官能の有機ポリイソシアネートである。
この有機ジイソシアネートとしては、具体的には例えば、公知の2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと略称する)、2,6−TDI、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、キシリレン−1,2−ジイソシアネート、4,4′−ジフェルメタンジイソシアネート(以下4,4′−MDIと略称する)、2,4′−MDI、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと略称する)、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、また、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート(以下HXDIと略称する)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以下H12MDIと略称する)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略称する)等の脂環族ジイソシアネート、更に、これらの有機ジイソシアネートと後述する低分子ポリオールを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。これらのうちでは、HDI、HDIと低分子グリコールからなるプレポリマー、HXDI、又はHXDIと低分子グリコールからなるプレポリマーが、耐候性等に優れているので好ましい。
本発明に用いられる有機ジイソシアネート変性体は、具体的には例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、有機ジイソシアネートに公知のウレトジオン化及びイソシアヌレート化触媒、例えば、トリエチルホスフィン、ジブチルエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリアミルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類あるいはピリジン等の存在下で、通常0〜100℃の反応温度で、好ましくは30〜80℃で、溶剤不存在下、又はポリウレタン工業に常用の不活性溶剤の存在下、また場合によっては、前記反応温度において液状のポリオール類、又はジオクチルフタレート等の可塑剤中で反応させる。次いで、例えば、仕込み時の20〜50モル%のイソシアネート基が反応した時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル、硫黄等の反応停止剤を加えてウレトジオン化触媒を不活性化し、反応を停止させる。このような方法によって、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体、及び原料である有機ジイソシアネート(モノマー)の混合物が得られる。この混合物から原料の有機ジイソシアネート(モノマー)を薄膜蒸留等により取り除くことにより、目的のウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を製造することができる。
本発明においては、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を用いているため、加熱成形加工前には、イソシアヌレート基による一部分岐構造を有し、加熱成形加工後は、加熱溶融と同時にウレトジオン基が解離して生成するイソシアネート基と活性水素基との反応によって、高分子化と架橋構造を導入できる。そのため本発明の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体は、熱可塑性樹脂の特徴である成形加工性と、熱硬化樹脂の特徴である耐熱性、耐溶剤性等の耐久性を兼ね備え得るのである。
【0019】
本発明において有機ジイソシアネート変性体に併用することのできるこれ以外のイソシアネート化合物としては、例えば、先述した有機ジイソシアネート(モノマー)、ポリメリックMDI、クルードTDIのようなポリメリック体類、前記有機ジイソシアネートのウレタン変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体等の単独あるいは2種類以上の混合物を挙げることができるが、本発明の前記有機ジイソシアネート変性体の官能基数が2を越えるものであり、併用することのできるイソシアネート化合物も官能基数が2を越えると、本発明の球状粉末体の製造時にゲル化しやすくなるので、有機ジイソシアネート(モノマー)が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物としては、分子中に2個以上の活性水素基を含有するものが好ましい。具体的には、高分子ポリオール、低分子ポリオール、高分子ポリアミン、低分子ポリアミン、アミノアルコール、水、尿素、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、上記の中から選択した一種又は二種以上を同時に用いてもよい。特にポリウレタン工業で公知のポリオ−ル類が適している。このポリオール類としては、本発明に用いる有機ポリイソシアネートの官能基数が2以上であることから、ポリウレタン系樹脂の製造時のゲル化を防ぐため、2官能の高分子グリコールと低分子グリコールが特に適しており、ジアミンやアミノアルコールも好適である。
なお、本発明でいう「数平均分子量」とは、2官能のもので値が500以下のもの(水を除く)は、末端基定量法にて算出したものであり、その他のもの、すなわち、2官能を越えるもの、末端官能基がないもの、及び値が500を越えるものは、ポリスチレン検量線によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られたものである。
【0021】
前記の高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられ、数平均分子量500〜10,000のものが好ましい。
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、酒石酸、アジピン酸(以下AAと略称する)、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸(以下iPAと略称する)、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のジカルボン酸、それらの酸エステル、酸無水物等と、エチレングリコール(以下EGと略称する)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール(以下1,3−BDと略称する)、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下1,6−HDと略称する)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(以下NPGと略称する)、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ジメチロールヘプタン(以下DMHと略称する)、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロールあるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の数平均分子量62〜500の低分子ポリオール、あるいはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン(以下IPDAと略称する)、ジエチレントリアミン等の数平均分子量62〜500の低分子ポリアミン、モノエタノールアミン(以下MEAと略称する)等のアミノアルコール等の単独、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。さらに、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリ(オキシエチレン)ポリオール、ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール及びこれらのブロック共重合体やランダム共重合体等が挙げられる。
ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記のポリエーテルポリオールと前記したジカルボン酸、酸無水物等とから製造される化合物が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールに用いた低分子ポリオールとジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応から得られる化合物が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加の水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加の水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0022】
前記の低分子ポリオールとしては、具体的には、前記ポリエステルポリオールの原料として挙げた低分子ポリオール類、すなわち、EG、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−HD、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、NPG、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロールあるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、数平均分子量62〜500のものが好ましい。
【0023】
前記の高分子ポリアミンとしては、数平均分子量500〜10,000のポリエーテルの末端がアミノ基となったポリエーテルポリアミン等が挙げられる。
【0024】
前記の低分子ポリアミンとしては、数平均分子量62〜500のエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、IPDA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のジアミン、また、ジエチレントリアミン等のトリアミン等が挙げられる。
【0025】
前記のアミノアルコールとしては、数平均分子量62〜500のMEA、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン等が挙げられる。
【0026】
また、前記のエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等は、一般にポリウレタン工業において公知の活性水素基を含有するものであり、数平均分子量500〜10,000のものが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる前記活性水素化合物の数平均分子量は18〜10,000であるが、特に、62〜5,000のものが好ましい。数平均分子量が大きすぎると、ウレトジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基等の導入量が減少して、ポリウレタン系樹脂の強靭性や強い凝集力が減少し好ましくない。数平均分子量が小さすぎると、ポリウレタン系樹脂の溶融粘度が大きくなる傾向がありシャープな溶融挙動をとることが難しく好ましくない。この数平均分子量は用途により適当に選択する必要があり、耐熱性や凝集エネルギーを高めるには低分子量のものを用いることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる分散剤は、本発明の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体の構成成分の活性水素基含有化合物を細分化し貧溶剤中に均一に分散させると共に、球状粉末体の製造条件とその粒径の調節の容易さの点から、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物である。
【0029】
活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの原料のポリオールとモノオールからなるOH成分と、前述のポリエステルポリオールの原料の二塩基酸とマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸を用いたCOOH成分からなるポリエステル、ポリエーテルモノオールと不飽和結合含有ジカルボン酸との脱水反応物や、ポリブタジエン、ポリイソプレンのようなジエンモノマーの重合体等が挙げられる。
この有機オリゴマーの数平均分子量は500〜10,000、特に500〜9,000が好ましい。また、不飽和結合濃度は有機オリゴマー1分子当たり平均10モル以下が好ましい。
【0030】
炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体としては、例えば、1−オクテン、1−又は2−ノネン、1−又は2−デセン、1−又は2−ヘプタデセン、2−メチル−1−ノネン、2−メチル−1−デセン、2−メチル−1−ドデセン、2−メチル−1−ヘキサデセン、2−メチル−1−ヘブタデセンなどのビニル、プロペニル又はイソプロペニル基含有脂肪族直鎖型不飽和炭化水素、アクリル酸又はメタクリル酸と2−エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコールなどの炭素数6以上の脂肪族アルコール又はシクロヘキサノール、ノルボナール、アダマンタノールなどの炭素数6以上の脂環族アルコールとのエステルなどの他、アクリル酸とポリカプロラクトンジオールとの反応物、例えば、ダイセル化学工業製のプラクセル FA−4等が挙げられる。
【0031】
不飽和結合含有有機オリゴマーとエチレン性不飽和単量体との反応においては制限は特にはないが、通常、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合反応における公知の反応開始剤や、酢酸エチル、シクロヘキサン等の溶剤を用いることができる。
さらに、不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上のエチレン性不飽和単量体との比率は、有機オリゴマー/エチレン性不飽和単量体=100/20〜100/400(重量比)が好ましい。有機オリゴマー100重量部に対するエチレン性不飽和単量体の比率が20重量部未満の場合は、分散剤として十分な性能が得られない。また400重量部を越える場合は、非水分散重合の際、反応系における原料分散のバランスが失われて、分散剤としての効果が十分に発揮できない。
【0032】
本発明の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体の製造は、有機ポリイソシアネート、活性水素基含有化合物、及び分散剤を、イソシアネート基に対して不活性であり、また、反応生成物に対して不溶である有機媒体中に分散、反応させることによって行なうことができる(非水分散重合法)。
具体的な反応方法としては、
(1)活性水素基非含有分散剤と高分子量の活性水素基含有化合物と低分子量の活性水素基含有化合物を一括して有機媒体中に仕込み、その後有機ポリイソシアネートを仕込んで反応させる、
(2)活性水素基非含有分散剤と高分子量の活性水素基含有化合物を一括して有機媒体中に仕込み、その後有機ポリイソシアネートを仕込んで反応させる、
(3)活性水素基非含有分散剤と高分子量の活性水素基含有化合物を有機媒体中に仕込み、その後有機ポリイソシアネートを仕込んで反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを製造し、更に低分子量の活性水素基含有化合物を仕込んで反応させる、
(4)活性水素基非含有分散剤と高分子量の活性水素基含有化合物と有機ポリイソシアネートを有機媒体が存在しない条件で反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを製造した後、有機媒体を仕込んで分散させ、更に低分子量の活性水素基含有化合物を仕込んで反応させる、
等の方法がある。
なお、ウレタン化触媒の仕込みはどの時点でも良いが、原料の全量が全て仕込み終わった時点が好ましい。
【0033】
この有機媒体としては、前記活性水素基含有化合物がポリエステル、ポリエーテルのような極性を待ったものの場合には、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族有機媒体、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のような脂環族有機媒体、ジオクチルフタレート等のような可塑剤として用いられる有機媒体等のような非極性及び/又は低極性の有機媒体が挙げられ、前記活性水素基含有化合物が水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有水素添加ポリブタジエンのような非極性のものの場合には、アセトン、メチルエチルケトン等のような極性の有機媒体が挙げられる。
また、生成する球状粉末体の粒径を調節するには、非極性及び/又は低極性の有機媒体と、極性の有機媒体を併用することが好ましい。この割合は、活性水素基含有化合物が極性を持ったものが主体である場合には、全有機媒体に対して極性の有機媒体は40重量%以下が好ましく、活性水素基含有化合物が非極性のものが主体である場合には、全有機媒体に対して非極性及び/又は低極性の有機媒体は40重量%以下が好ましい。
有機ポリイソシアネート、活性水素基含有化合物、及び分散剤からなる分散相の総和量と有機媒体からなる連続相との重量比は、生産効率、製造コストを考慮すると、分散相/連続相=10/90〜80/20となる範囲が好ましく、40/60〜80/20が更に好ましい。
【0034】
前記の反応系においてはイソシアネート基と活性水素基の当量比率は、最終的にイソシアネート基/活性水素基=50以上で100未満/100の、活性水素基が過剰となる条件である。反応系中において活性水素基が過剰であることは、製造された球状粉末体にイソシアネート基が残存せずに活性水素基含有となるのに必要な条件であり、実際はイソシアヌレート基含量等に起因する有機ポリイソシアネートの平均官能基数とトリオール導入等に起因する活性水素基含有化合物の平均官能基数によって、反応時にゲル化しない条件を決定し、この条件を満たすように配合し、かつウレトジオン基が開裂する温度条件以下に保持し反応させることが重要である。その配合比率はJ.P.Flory、Khun等が理論的に計算しているゲル化理論に従うが、実際は、前記成分に含まれる反応基の反応性比を考慮にいれた配合比で反応させることによって、ゲル化することなく製造できる。
なお、分散剤の配合量は、有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物の総和量に対して0.05〜45重量%が好ましく、0.1〜40重量%が特に好ましい。0.05重量%未満の場合、活性水素基含有化合物が、反応系中に均一に分散せず、球状の粉末体が得にくい。45重量%を越える場合、球状粉末体を用いた成形物や塗膜に、実用に耐えるだけの強度が出にくい。
【0035】
反応温度は、ウレトジオン基が解離しない温度条件、好ましくは30〜100℃で製造する。反応装置としては、非水分散重合反応が達成できる、たとえば攪拌装置の付いた反応釜等が挙げられる。また、反応を早く進めるため、ウレタン化触媒としてポリウレタンの製造において常用されるジブチルチンジラウレート(以下DBTDLと略称する)等の金属触媒やトリエチルアミン等の三級アミン触媒等のウレタン化触媒を用いる事もできる。
【0036】
このようにして得られる熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体は、濾過又はデカンテーションし、次いで常圧又は減圧下で乾燥することによって、分散液から回収される。このポリウレタン系球状粉末体は水酸基末端であり、樹脂中のウレトジオン基と残存活性水素基のモル比がウレトジオン基/活性水素基=25/100〜100/100(モル比)の割合で存在しているのが最適である。さらに、このポリウレタン系球状粉末体の形状は真球状で、その平均粒径は1〜500μと非常に微細であり、かつ、粒径分布の狭いものとなる。
一般の粉砕法で得られる粉末樹脂の形は角張っていて、また、粒径分布も大きいものである。本発明の球状粉末体と、粉砕法で得られた粉末樹脂の流動性を比較すると、本発明の球状粉末体のほうが格段に優れていることがわかる。
なお、本発明でいう「平均粒径」は、レーザー式粒度分析計にて測定した粒径分布カーブにおける50%の累積パーセントの値である。
【0037】
本発明の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体には、更に数平均分子量62〜10,000の活性水素基含有化合物を配合して使用することもできる。このポリウレタン系球状粉末体と追加的に配合され得る活性水素基含有化合物との活性水素基の合計に対するウレトジオン基のモル比は、ウレトジオン基/合計活性水素基=25/100〜100/100が好ましく、特に35/100〜75/100が好ましい。
この活性水素基含有化合物としては、前記の数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物のうち数平均分子量が62〜10,000の化合物を使用することができる。
【0038】
本発明の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体は単独でも、十分な熱エネルギーを与えると、この球状粉末体中のウレトジオン基が解離してイソシアネート基が生成し、系中の活性水素基と反応して硬化するが、熱エネルギー量を少なくするために、ウレトジオン基解離触媒を添加するのが更に好ましい。このウレトジオン基解離触媒としては、エステル化触媒、エステル交換触媒、ウレタン化触媒、ブロックイソシアネート解離触媒、イソシアヌレート化触媒として一般に公知のものを含み、例えば、DBTDL、ジオクチルチンジラウレート等の金属系触媒、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−メチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン−5、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(以下DBUと略称する)等のアミン系触媒、これらアミン系触媒のボラン塩、DBUフェノール塩、DBUオクチル酸塩、DBU炭酸塩等のアミン塩系触媒、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等のカルボン酸塩系触媒、トリエチルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のホスフィン系触媒、ナトリウムメトキシド等のアルコキシド系触媒等が挙げられる。
ウレトジオン基解離触媒の添加量は、熱エネルギーの付与に対するウレトジオン基の解離効率の点から、本発明の球状粉末体100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、特に0.05〜3重量部が好ましい。
【0039】
次に、本発明の樹脂成形品の製造方法について述べる。
本発明の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体は、平均粒径が1〜500μの微細な球状粉末である。このため、エアによる流動性に優れているので、ノズル詰まりしにくく、自動成形加工が容易である。具体的な加工方法としては、プレス成形加工、射出成形加工、押出成形加工等の加工方法の他、パウダードット加工もできる。プレス成形加工においては、例えば、本発明の球状粉末体を型に所定量入れ、一次プレス(例 120℃、60kgf/cm、5分)にて溶融させ、その後、二次プレス(例 150℃、100kgf/cm、5分)にてウレトジオン基を解離させて、生成するイソシアネート基と活性水素基とを反応させて硬化させ、樹脂成形品を得る、といった手順で成形加工品が得られる。射出成形加工おいては、射出成形機に前記球状粉末体を仕込み、例えば120℃にて加熱溶融させ、その後、型に打ち込む等で成形品にして、さらに例えば180℃で後加熱して、ウレトジオン基を解離させて、生成するイソシアネート基と活性水素基とを反応させて硬化させ、最終成形品を得る、といった手順で樹脂成形加工品が得られる。なお、当然のことであるが、成形時にかける熱エネルギーは、この球状粉末体の分解温度以上になるまで加えてはならない。成形加工に必要な具体的な温度範囲は、本発明の球状粉末体の構造、ウレトジオン基解離触媒の有無や配合量によって一概に特定できないが、一般的には80〜250℃が好ましく、更に100℃〜200℃が好ましい。
【0040】
本発明の接着剤、コーティング剤、塗料には、本発明の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系(球状)粉末体に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤等の添加剤を適宜配合することができる。配合方法は、各成分を粉末のままで混合しても良いし、(球状)粉末体と各添加剤を溶剤に溶解又は分散させて混合しても良いし、また、ジオクチルフタレート(可塑剤)のように添加剤が溶解性の乏しい液体の場合は、添加剤に本発明の(球状)粉末体を分散させても良い。配合方法は公知の方法が適用可能であり、配合装置としてはボールミル、サンドグラインドミル、シェイカー、三本ロール、押出機、ニーダー、エアガン、攪拌機等を使用することができる。
【0041】
本発明の接着剤、コーティング剤、塗料は、静電気電着、スプレー、溶液にしたものなら刷毛やロール等によって塗布し、加温、溶融、硬化して、接着層、コーティング層、塗装層を形成する。これに最終的に熱エネルギーを付与してウレトジオン基を解離させて、生成するイソシアネート基と活性水素基との鎖延長及び/又は硬化反応によってポリウレタン系樹脂を形成し、優れた特性を付与することができるとともに、優れた塗布性、加工性も発揮させることができる。なお、本発明の接着剤、コーティング剤、塗料は、ウレトジオン基が残存していても定常的に優れた特性を与える場合には、ウレトジオン基を完全に解離させなくても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体は、熱可塑性樹脂並の成形加工適性を持ち、かつ、熱加工後の成形物は優れた機械的強度等を発揮した。また、本発明の熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体を用いた接着剤、コーティング剤、塗料は、優れた接着性、塗膜性能を発揮した。
【0043】
【実施例】
以下、実施例等により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。以下の実施例等において、「部」は全て「重量部」を意味し、「%」は全て「重量%」を意味する。
【0044】
〔分散剤の合成に使用する不飽和結合含有有機オリゴマーの合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管のついた反応器に、1−オクタノール260部、1,4−BD(1,4−ブタンジオール)761部、無水マレイン酸196部、AA(アジピン酸)1088部を仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。その後、温度を150℃にしてエステル化反応を行い、縮合水を反応系外に流出させた。縮合水が一旦出なくなったところで、テトラブチルチタネートを0.1部添加して、反応温度を徐々に180℃まで昇温した。温度が180℃に達したところで圧力を徐々に0.1Torrまで下げ、エステル化反応を進行させた。縮合水が出なくなったところでエステル化反応を終了し、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−1を得た。
O−1の数平均分子量は、GPCによって測定したところ、2,000であった。また、ヨウ素価は25.4gI/100gであった。
【0045】
合成例2
合成例1と同様な装置に、NPG(ネオペンチルグリコール)564部、1,6−HD(1,6−ヘキサンジオール)639部、イタコン酸260部、iPA(イソフタル酸)1301部を仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。その後、温度を180℃にしてエステル化反応を行い、縮合水を反応系外に流出させた。縮合水が一旦出なくなったところで、テトラブチルチタネートを0.1部添加して、反応温度を徐々に200℃まで昇温した。温度が200℃に達したところで圧力を徐々に0.1Torrまで下げ、エステル化反応を進行させた。縮合水が出なくなったところでエステル化反応を終了し、温度を100℃まで冷却した後、オクタデシルイソシアネートを590部仕込んで反応させ、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−2を得た。
O−2の数平均分子量は3,000、ヨウ素価は16.9gI/100gであった。
【0046】
合成例3
合成例1と同様な装置に、数平均分子量1,000の1,4−BDとAAからなるポリエステルジオール(BA−1000)3,000部と無水マレイン酸196部を仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。その後、温度を150℃にしてエステル化反応を行い、縮合水を反応系外に流出させた。縮合水が一旦出なくなったところで、テトラブチルチタネートを0.1部添加して、反応温度を徐々に180℃にした。温度が180℃に達したところで圧力を徐々に0.1Torrまで下げ、エステル化反応を進行させた。縮合水が出なくなったところでエステル化反応を終了し、温度を100℃まで冷却した後、フェニルイソシアネートを238部仕込んで反応させ、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−3を得た。
O−3の数平均分子量は3,400、ヨウ素価は14.9gI/100gであった。
【0047】
合成例4
合成例1と同様な装置に、数平均分子量400のメトキシポリ(オキシエチレン)グリコール(Me−PEG−400)800部とイタコン酸130部を仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。その後、温度を150℃にしてエステル化反応を行い、縮合水を反応系外に流出させた。縮合水が一旦出なくなったところで、テトラブチルチタネートを0.05部添加して、反応温度を徐々に180℃にした。温度が180℃に達したところで圧力を徐々に0.1Torrまで下げ、エステル化反応を進行させて、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−4を得た。
O−4の数平均分子量は890、ヨウ素価は28.4gI/100gであった。
【0048】
合成例5
合成例3と同様な方法で、表1に示す原料を用いて、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−5を得た。
O−5の数平均分子量は2,480、ヨウ素価は30.8gI/100gであった。
【0049】
合成例6
合成例4と同様な方法で、表1に示す原料を用いて、(活性水素基非含有)不飽和結合含有有機オリゴマーO−6を得た。
O−6の数平均分子量は8,100、ヨウ素価は3.14gI/100gであった。
【0050】
O−1〜6の特性とその使用原料をまとめて表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003627418
【0052】
表1において
Oct−OH :1−オクタノール
HD−PCD−500:1,6−HDとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応 で得られる、数平均分子量500で両末端水酸基含有のポリカ ーボネート
HPVM−2202 :数平均分子量3,600で両末端水酸基含有のポリ(エチレン −ブチレン)
MAH :無水マレイン酸
ICA :イタコン酸
TBT :テトラブチルチタネート
OdI :オクタデシルイソシアネート
PI :フェニルイソシアネート
【0053】
〔分散剤の合成〕
合成例7
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却器、窒素導入管、滴下ロートのついた反応器に、O−1を48部、酢酸ブチルを201部仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。温度が80℃になったところで、滴下ロートからアクリル酸シクロヘキシル147部及び過酸化ベンゾイル6部の溶解混合液を1時間30分かけて滴下した。滴下終了後、温度を100℃にして2時間反応させ、活性水素基非含有分散剤D−1を得た。D−1の固形分は、50%であった。
【0054】
合成例8〜12
合成例7と同様な方法で、表2に示す原料を用いて、活性水素基非含有分散剤D−2〜6を合成した。
【0055】
合成例13
合成例7と同様な装置に、O−6を73部、トルエンを200部仕込み、窒素ガスを流しながら加熱混合した。温度が80℃になったところで、滴下ロートからプラクセルFA−4を104部及び過酸化ベンゾイルを1部の溶解混合液を1時間30分かけて滴下した。滴下終了後、温度を100℃にして2時間反応させた。その後、温度を50℃まで冷却した後、フェニルイソシアネートを22部仕込んで反応させ、活性水素基非含有分散剤D−7を得た。D−7の固形分は、50%であった。
【0056】
D−1〜7の特性とその使用原料をまとめて表2に示す。
【0057】
【表2】
Figure 0003627418
【0058】
表2において
ACH :アクリル酸シクロヘキシル
MO :メタクリル酸オクチル
VL :ビニルラウレート
1−Oct :1−オクテン
AEH :アクリル酸2−エチルヘキシル
ML :メタクリル酸ラウリル
PCL FA−4:プラクセル FA−4
PI :フェニルイソシアネート
BPO :過酸化ベンゾイル
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
【0059】
〔ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体の合成〕
合成例14
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた反応器に、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)3,000部とウレトジオン化及びイソシアヌレート化触媒のトリオクチルホスフィン6部を仕込み、攪拌しながら65〜70℃に加熱し同温度で6時間反応させた。次いでリン酸3.5部を加えて反応を停止させて、イソシアネート基含量=30.3%の淡黄色の反応生成液を得た。この反応生成液から、未反応のHDIを120℃、0.01Torrで薄膜蒸留により除去した。生成物のイソシアネート基含量=18.7%であり、FT−IR及びC13−NMRから、この生成物にはイソシアネート基、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基が存在することが確認された。また、この生成物を180℃に加熱してウレトジオン基を解離させ、当初から存在しているイソシアネート基とウレトジオン基が解離して生成したイソシアネート基の総量を求めたところ、イソシアネート基含量=30.8%であり、よって、ウレトジオン基の解離で生成するイソシアネート基含量は12.1%であった。また、イソシアヌレート基含量=19.2%であった。このウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体をI−1とする。
【0060】
合成例15
合成例14と同様な装置に、HXDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)3,000部とウレトジオン化及びイソシアヌレート化触媒のトリオクチルホスフィン6部を仕込み、攪拌しながら65〜70℃に加熱し同温度で6時間反応させた。次いでリン酸3.5部を加えて反応を停止させて、イソシアネート基含量=30.3%の淡黄色の反応生成液を得た。この反応生成液から、未反応のHXDIを140℃、0.01Torrで薄膜蒸留により除去した。生成物のイソシアネート基含量=15.2%であり、FT−IR及びC13−NMRから、この生成物にはイソシアネート基、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基が存在することが確認された。また、この生成物を180℃に加熱してウレトジオン基を解離させ、当初から存在しているイソシアネート基とウレトジオン基が解離して生成したイソシアネート基の総量を求めたところ、イソシアネート基含量=26.7%であり、よって、ウレトジオン基の解離で生成するイソシアネート基含量は11.5%であった。また、イソシアヌレート基含量=16.6%であった。このウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体をI−2とする。
【0061】
合成例16
合成例14と同様な装置に、HDI2,739部とDMH(ジメチロールヘプタン)261部を仕込み、攪拌しながら70℃にて4時間反応させて、イソシアネート基含量=41.1%の反応生成液を得た。次に、ウレトジオン化及びイソシアヌレート化触媒のトリオクチルホスフィン6部を仕込み、攪拌しながら65〜70℃に加熱し同温度で6時間反応させた。次いでリン酸3.5部を加えて反応を停止させて、イソシアネート基含量=15.4%の淡黄色の反応生成液を得た。この反応生成液から、未反応のHDIを120℃、0.01Torrで薄膜蒸留により除去した。生成物のイソシアネート基含量=15.4%であり、FT−IR及びC13−NMRから、この生成物にはイソシアネート基、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基が存在することが確認された。また、この生成物を180℃に加熱してウレトジオン基を解離させ、当初から存在しているイソシアネート基とウレトジオン基が解離して生成したイソシアネート基の総量を求めたところ、イソシアネート基含量=25.3%であり、よって、ウレトジオン基の解離で生成するイソシアネート基含量は9.9%であった。また、イソシアヌレート基含量=15.8%であった。このウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体をI−3とする。
【0062】
合成例17
合成例14と同様な装置に、HXDI2,847部とNPG153部を仕込み、攪拌しながら70℃にて4時間反応させたところ、イソシアネート基含量=37.0%の反応生成液を得た。次に、ウレトジオン化及びイソシアヌレート化触媒のトリオクチルホスフィン6部を仕込み、攪拌しながら65〜70℃に加熱し同温度で6時間反応させた。次いでリン酸3.5部を加えて反応を停止させて、イソシアネート基含量=25.9%の淡黄色の反応生成液を得た。この反応生成液から、未反応のHXDIを140℃、0.01Torrで薄膜蒸留により除去した。生成物のイソシアネート基含量=13.0%であり、FT−IR及びC13−NMRから、この生成物にはイソシアネート基、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基が存在することが確認された。また、この生成物を180℃に加熱してウレトジオン基を解離させ、当初から存在しているイソシアネート基とウレトジオン基が解離して生成したイソシアネート基の総量を求めたところ、イソシアネート基含量=22.8%であり、よって、ウレトジオン基の解離で生成するイソシアネート基含量は9.8%であった。また、イソシアヌレート基含量=14.2%であった。このウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体をI−4とする。
【0063】
表3にI−1〜4の特性とその使用原料を示す。
【0064】
【表3】
Figure 0003627418
【0065】
〔熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体の合成〕
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた反応器に、1,4−BDとAAから得られる数平均分子量1,000の両末端水酸基含有ポリエステル(BA−1000)を119.1部、1,4−BDを8.6部、D−1を20.0部、シクロヘキサンを190.0部仕込み、40℃にて均一に分散させた。次いで、4,4′−MDIを39.0部、I−1を23.3部仕込んで均一に攪拌した後、DBTDL(ジブチルチンジラウレート)を0.02部仕込み、50℃にて4時間反応させた。その後、濾過、乾燥させて、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体Pow−1を得た。Pow−1の平均粒径は120μであった。
【0066】
実施例2
実施例1と同様な装置に、1,6−HDとAAから得られる数平均分子量1,000の両末端水酸基含有ポリエステル(HA−1000)を95.5部、D−1を80.0部、シクロヘキサンを110.0部仕込み、40℃にて均一に分散させた。次いで、IPDIを38.2部、I−2を10.5部仕込んで均一に攪拌した後、DBTDLを0.02部仕込み、50℃にて2時間反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー分散液を得た。次に、アセトンを30.0部仕込み、更にIPDA(イソホロンジアミン)14.6部、MEA(モノエタノールアミン)1.2部及びイソプロパノール20.0部からなるアミン液を仕込んで、さらに4時間反応させた。その後、デカンテーション、乾燥させて、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体Pow−2を得た。Pow−2の平均粒径は250μであった。
【0067】
実施例3
実施例1と同様な装置に、1,4−BDとAAから得られる両末端水酸基含有で数平均分子量2,000のポリエステル(BA−2000)を128.6部、D−2を4.0部、ノルマルヘキサンを140.0部、酢酸エチルを58.0部仕込み、30〜40℃にて均一に分散させた。次いで、4,4′−MDIを37.4部、I−3を20.4部仕込んで均一に攪拌した後、DBTDLを0.02部仕込み、50℃にて2時間反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー分散液を得た。次に1,3−BDを11.6部仕込み、さらに4時間反応させた。その後、デカンテーション、乾燥させて、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体Pow−3を得た。Pow−3の平均粒径は80μであった。
【0068】
実施例4〜10、比較例1及び2
実施例1と同様な方法で、表4〜6に示す原料を用いて、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体Pow−4〜12を得た。Pow−4〜12の平均粒径は、表4〜6に示す通りである。
【0069】
表4〜6にPow−1〜12の平均粒径とその使用原料をまとめて示す。
【0070】
【表4】
Figure 0003627418
【0071】
【表5】
Figure 0003627418
【0072】
【表6】
Figure 0003627418
【0073】
表4〜6において
HA−5000 :数平均分子量5,000で両末端水酸基含有のポリへキシレ ンアジぺート
HiP−1000 :数平均分子量1,000で両末端水酸基含有のポリへキシレ ンイソフタレート
3MPA−1000 :数平均分子量1,000で両末端水酸基含有のポリ(3−メ チルペンタン)アジぺート
PEG−500 :数平均分子量500のポリ(オキシエチレン)グリコール
PTMG−1000 :数平均分子量1,000のポリ(オキシテトラメチレン)グ リコール
HD−PCD−1000:1,6−HDとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反 応で得られる、数平均分子量1,000で両末端水酸基含有 のポリカーボネート
HPVM−2202 :数平均分子量3,600で両末端水酸基含有のポリ(エチレ ン−ブチレン)
【0074】
〔ウレトジオン基解離温度測定〕
Pow−1〜10を加熱セルを用いたFT−IRにより、ウレトジオン基の解離温度を測定した。なお、ウレトジオン基の解離温度は、ウレトジオン基が消失する温度である。測定結果をまとめて表7に示す。
昇温速度:10℃/分
【0075】
〔溶融温度の測定〕
Pow−1〜10を示差走査熱量測定(DSC測定)により、溶融温度を測定した。測定結果をまとめて表7に示す。
昇温速度:10℃/分
【0076】
【表7】
Figure 0003627418
【0077】
実施例11
100部のPow−1に対してエピコート1002(水酸基含有ビスフェノールA系粉末エポキシ樹脂)10部をシェイカーにてよく混合して、Pow−13を得た。
【0078】
実施例12及び13、比較例3及び4
実施例11において、Pow−1の代わりにPow−2、3、11及び12を用いて、同様にしてPow−14〜17を得た。
【0079】
実施例14
100部のPow−1に対してDBUのフェノール塩1部をシェイカーにてよく混合して、Pow−18を得た。
【0080】
実施例15及び16、比較例5及び6
実施例14において、Pow−1の代わりにPow−2、3、11及び12を用いて、同様にしてPow−19〜22を得た。
【0081】
〔熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体を用いた成形品の製造〕
実施例17〜19、比較例7及び8
Pow−1〜3、11及び12をプレス成形によって、厚さ1mmのシートを製造した。プレス成形条件は、以下に示す通りである。
プレス成形条件
一次プレス:120℃、60kgf/cm、5分
二次プレス:150℃、100kgf/cm、5分
得られたシートについて、JIS K−6301の従って引張強度と伸びを測定した。測定結果をまとめて表8に示す。
【0082】
【表8】
Figure 0003627418
【0083】
〔熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体を含有する接着剤の評価〕
実施例20
Pow−1を綿の布に塗布量:5g/mになるように適用し、ポリエステルの布に貼り合わせた後、フラットプレス機にて、150℃、3kgf/cm、10秒の条件で圧着した。その後、サンプルを1インチ幅にカットして接着サンプルAD−1を得た。
【0084】
実施例21及び22、比較例9〜11
実施例20において、Pow−1の代わりにPow−13、18、11、16、21を用いて、同様にしてAD−2〜6を得た。
【0085】
AD−1〜6を引張速度200mm/分にて、180°剥離試験を行った。測定結果をまとめて表9に示す。
【0086】
【表9】
Figure 0003627418
【0087】
〔熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体を含有するコーティング剤の評価〕
実施例23
30部のPow−1をメチルエチルケトン/トルエン=2/1(重量比)の混合溶剤70部に溶解させた。この樹脂溶液をリン酸亜鉛処理した鋼板にドライで20μ厚になるように塗布した。塗布した後、80℃で1分加温した後、150℃にて2時間硬化させ、コーティングサンプルCO−1を得た。
【0088】
実施例24及び25、比較例12〜14
実施例23において、Pow−1の代わりにPow−13、18、11、16、21を用いて、同様にしてCO−2〜6を得た。
【0089】
CO−1〜6をメチルエチルケトンで湿らせた脱脂綿にて20回擦り付け、表面状態を観察した(ラビングテスト)。測定結果をまとめて表10に示す。
【0090】
【表10】
Figure 0003627418
【0091】
表10において
○:表面が、ほとんど荒れていない。
×:表面が溶剤に侵され、白化や割れ等が認められる。
【0092】
〔熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体を含有する塗料の評価〕
実施例26
Pow−1を用いて粉体クリヤー塗料としての性能を評価した。Pow−1をスプレーガン式静電塗装機により、リン酸亜鉛処理した鋼板に吹き付け、180℃にて1時間焼き付け、サンプルが室温になるまで冷えた後、そのまま24時間放置して、塗膜厚30μの塗装サンプルPA−1を得た。
【0093】
実施例27及び28、比較例15〜17
実施例26において、Pow−1の代わりにPow−13、18、11、16、21を用いて、同様にしてPA−2〜6を得た。
【0094】
PA−1〜6を、JIS K−5400の碁盤目剥離試験により評価した。測定結果をまとめて表11に示す。
【0095】
【表11】
Figure 0003627418

Claims (10)

  1. ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られるポリウレタン系樹脂、及び分散剤からなる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、
    前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体。
  2. 分散剤と共に、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと、数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、
    前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体。
  3. 分散剤と共にウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体を含有する有機ポリイソシアネートと数平均分子量18〜10,000の活性水素基含有化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーに、活性水素基含有化合物を活性水素基過剰の条件で反応させて得られる、熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体であって、
    前記分散剤が、活性水素基非含有で不飽和結合を有する有機オリゴマーと炭素数6以上の側鎖をもつエチレン性不飽和単量体との反応生成物であること、を特徴とする前記熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体。
  4. 前記有機ポリイソシアネートが、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基を有する有機ジイソシアネート変性体と、これ以外のイソシアネート化合物とを含有する、請求項1、2、又は3に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体と数平均分子量62〜10,000の活性水素基含有化合物とを、ウレトジオン基/活性水素基=25/100〜100/100(モル比)となる量で配合してなることを特徴とする、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は請求項5に記載の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体と、ウレトジオン基解離触媒とを含有することを特徴とする、熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は請求項5あるいは6に記載の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体に熱エネルギーを与えて溶融させ、ウレトジオン基を解離させて、生成するイソシアネート基と活性水素基との反応によって型中で硬化させることを特徴とする、樹脂成形品の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は請求項5あるいは6に記載の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とする接着剤。
  9. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は請求項5あるいは6に記載の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とするコーティング剤。
  10. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化可能な平均粒径1〜500μの熱可塑性ポリウレタン系球状粉末体又は請求項5あるいは6に記載の熱硬化可能な熱可塑性ポリウレタン系粉末体を含有することを特徴とする塗料。
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