JP2010070670A - 粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、並びにそれを用いたシート状ポリウレタン樹脂成形物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を構成する粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径が110〜300μmであり、かつ100μm未満の粒子の含有量が40質量%以下、かつ30μm未満の粒子の含有量が5質量%以下、かつ20μm未満の粒子の含有量が2質量%以下であることを特徴とする粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、並びにそれを用いたシート状ポリウレタン樹脂成形物及びその製造方法により解決する。
【選択図】 なし
Description
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、前記(1)〜(4)のいずれかの粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込んで1〜10秒間保持し、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:200〜400℃の加熱オーブン内に、(A)層が付着した金型を30〜120秒間入れて、粉末樹脂の溶融を完結させ、その後加熱オーブンから取り出して金型を冷却した後、成形物を脱型する工程
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、前記(1)〜(4)のいずれかの粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込んで1〜10秒間保持し、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:(A)層が付着した金型を200℃〜300℃にて30〜120秒間自己加熱して粉末樹脂の溶融を完結させ、その後金型を冷却した後、成形物を脱型する工程
一方、体積平均粒径が過小である場合には、流れ性や粉切れが悪化して、得られる成形物の肉厚が不均一になりやすい。
ここに、「体積平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分析計によって測定した粒径分布(体積分布)カーブにおける50%の累積パーセントの値をいう。
・高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、及び一官能活性水素基含有化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(以下、「イソシアネート基末端プレポリマー(I)」という。);
・高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、及び一官能活性水素基含有化合物及び低分子量の二官能活性水素基含有化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(以下、「イソシアネート基末端プレポリマー(II)」という。)を挙げることができる。
一官能の活性水素基含有化合物の有する「炭化水素基」の炭素数は4〜12とされ、好ましくは4〜11、更に好ましくは4〜9とされる。
炭素数が4未満の活性水素基含有化合物を使用する場合には、沸点が低く反応系外へ蒸発しやすいためプレポリマー化反応が不完全となり、得られる樹脂の分子量を制御することができない。一方、炭素数が12を越える活性水素基含有化合物を使用する場合には、得られる樹脂による成形物にブルーミングが発生する。
低分子量の二官能活性水素基含有化合物の具体例としては、高分子ポリオールであるポリエステルポリオールを得るために使用する低分子ポリオールとして例示した化合物を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、1,4−BD及び1,6−HDが好ましい。
(1)公知の方法で塊状重合して得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を冷凍粉砕して(A1)の粉末を得る方法
(2)イソシアネート基末端プレポリマーを溶解しない非水系の分散媒中に分散させて、水と反応させて鎖延長する工程を経て得られるポリウレタン樹脂を分離・乾燥して粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)を得る方法
(3)水中に分散させたイソシアネート基末端プレポリマーを、イソシアネート基末端プレポリマーの有するイソシアネート基の残部を水の有する活性水素基と反応させる工程を経て得られるポリウレタン樹脂を分離・乾燥して粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)を得る方法
これらのうちでは、樹脂の形状が球状であり、粉体流動性が良好なものが得られる(2)及び(3)の方法が好ましい。
成形物の厚みが厚すぎる場合は、軽量化が達成されない。薄すぎる場合は、自動車内装材の表皮層として用いる場合、ポリウレタンフォームから成るコア材由来のボイドの影響を受け、成形物の表面に凹凸が出現して外観不良を招き、意匠性が低下しやすい。更に成形物全体としての機械的特性及び耐久性が不十分となりやすい。
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込み、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:200〜400℃の加熱オーブン内に、(A)層が付着した金型を入れて、粉末樹脂の溶融を完結させ、その後加熱オーブンから取り出して金型を冷却した後、成形物を脱型する工程
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込み、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:(A)層が付着した金型を200℃〜300℃にて自己発熱させて粉末樹脂の溶融を完結させ、その後金型を冷却した後、成形物を脱型する工程
第一工程:1〜10秒が好ましい。
第二工程:30〜120秒が好ましい。
保持時間を調節することにより、成形物の厚さを調整することができる。
[調製例1(分散剤溶液の調製)]
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、アジピン酸762gと無水マレイン酸49gとエチレングリコール386gとを仕込み、窒素ガスを流しながら、150℃、常圧の条件で攪拌することによりエステル化反応させた。
縮合水が認められなくなった時点で、テトラブチルチタネート0.1gを添加し、反応系内の圧力を徐々に0.07kPaまで減圧するとともに、190℃まで徐々に昇温して反応を継続することによりポリエステルジオールを得た。得られたポリエステルジオールの数平均分子量は2,000、ヨウ素価は12.7gI/100gであった。
続いて、攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量500mLの反応器に、上記のポリエステルジオール74gと酢酸ブチル150gとを仕込み、窒素ガスを流しながら110℃まで昇温して、攪拌した。その後、2−エチルヘキシルメタクリレート75gと過酸化ベンゾイル1gとの溶解混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃に昇温して更に2時間反応させることにより、固形分50%の分散剤溶液を得た。以下、これを「分散剤溶液(1)」という。
攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、アジピン酸565gと3−メチルペンタンジオール575gとを仕込み、窒素ガスを流しながら、150℃、常圧の条件で攪拌することによりエステル化反応させ、数平均分子量1,000のポリエステルジオールを合成した。
次に、攪拌機、温度計、留出塔及び窒素ガス導入管を備えた容量1,000mLの反応器に、上記のポリエステルジオール100gとジイソノニルアジペート150gを仕込み、窒素ガスを流しながら80℃まで昇温して攪拌した。ここにヘキサメチレンジイソシアネート42gを追加し、80℃で2時間反応させて、イソシアネート基含有プレポリマーを調整した。ここに数平均分子量1,000のポリビニルアルコールを200g追加で仕込み、更に80℃で2時間反応させて固形分約70%の分散安定剤溶液を得た。以下、これを「分散剤溶液(2)」という。
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、1,4−BDとエチレングリコールとアジピン酸とから得られる数平均分子量2、600のポリエステルジオール282.6gと、1,4−BDとアジピン酸とから得られる数平均分子量1,000のポリエステルジオール201.8gと、1,6−HDとイソフタル酸とから得られる数平均分子量1,500のポリエステルジオール322.9gを80〜100℃で均一に混合した後に、分散剤溶液(1)24.2gと、非水系の分散媒としてイソオクタン「キョーワゾール C−800」(協和発酵ケミカル(株)製)818.2gとを仕込み、75〜98℃で30〜150分間攪拌することにより、高分子ポリオールをイソオクタン中に分散させて、非水系の分散液を調製した。この段階で分散温度や分散時間を適宜調節することで、最終的な粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径を調整することができる。
上記分散液に、一官能の活性水素基含有化合物であるジ−2−エチルヘキシルアミン20.3g、有機ポリイソシアネートとしてHDI159.2gと、ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)0.005gとを添加し、90〜95℃で3時間反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマー(I)の分散液を調製した。
前記イソシアネート基末端プレポリマー分散液(I)に、二官能の活性水素基含有化合物である1,6−HD7.5gを添加し、イソシアネート基末端プレポリマー(I)と80〜90℃にて反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマー(II)の分散液を調製した。
上記のイソシアネート基末端プレポリマー(II)の分散液に、水50.7g〔イソシアネート基末端プレポリマー(II)のイソシアネート基(計算値)の10倍当量に相当〕を添加し、イソシアネート基末端プレポリマー(II)と水とを、65〜70℃にて、イソシアネート基が消費されるまで鎖延長反応させることにより、ポリウレタン樹脂の分散液を調製した。
上記のポリウレタン樹脂の分散液から固形分(ポリウレタン樹脂)を濾別し、これに、下記に示す添加剤(1)〜(4)を添加し乾燥した後に、打粉剤「MP−1451」(綜研化学(株)製)3.0gを添加することにより、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)を調製した。前述の分散条件を適宜変更することで、70〜350μmの体積平均粒径の樹脂を任意に得ることができ、それぞれを表1、2に記載した「A1−1」〜「A1−14」、「A1−16」とした。得られた樹脂の粒子は真球状(短/長=1.0)であり、粒径を変更しても分子量は変動せず、すべてにおいて数平均分子量は29,000であった。
〔添加剤〕
(1)酸化防止剤:「イルガノックス245」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(2) 紫外線吸収剤:「チヌビン213」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(3)光安定剤:「チヌビン765」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(4)内部離型剤:「SH200−300CV」(東レ・ダウコーニング(株)製)、添加量=1.5g。
1,4−BDとエチレングリコールとアジピン酸とから得られる数平均分子量2,600のポリエステルジオール293.2kgと、1,4−BDとアジピン酸とから得られる数平均分子量1,000のポリエステルジオール209.4kgと、1,6−HDとイソフタル酸とから得られる数平均分子量1,500のポリエステルジオール335.1kgとを、24.6kgの1,4−BDと混合して均一なグリコール成分とした。このグリコール成分とHDIとを混合し、流量比100:17.5で、約190℃に温度調節した二軸押出機のホッパーより供給し、混練りと同時に樹脂化を行い、ポリウレタン樹脂を得た。
上記の工程で得られたポリウレタン樹脂をペレタイザーにかけ、ペレットとしたポリウレタン樹脂100部に、調製例3〜17で用いた添加剤と同一の添加剤を、酸化防止剤の配合量として、0.25部、紫外線吸収剤を0.15部、光安定剤を0.15部、内部離型剤を0.25部添加し、約200℃に温度調節した二軸押出機のホッパーより供給し、混練りを行い、ポリウレタン樹脂を得た。
上記のようにして添加剤が加えられたポリウレタン樹脂を液体窒素で−150℃程度に冷却し、衝撃微粉砕機により微粉末化とした。これに流動性を付与するため、樹脂100gに対して、打粉剤「MP−1451」0.4gを添加し、ポリウレタン樹脂表面に均一に付着するように攪拌混合した。その後で700μm以上の粒子を分級除去し、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物「A1−15」を得た。
得られた樹脂組成物の形状は不定形であり、体積平均粒径は300μm、数平均分子量は30,000であった(表2参照)。
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、1,4−BDとエチレングリコールとアジピン酸とから得られる数平均分子量2,600のポリエステルジオール245.5gと、1,4−BDとアジピン酸とから得られる数平均分子量1,000のポリエステルジオール163.7gと、1,6−HDとイソフタル酸とから得られる数平均分子量1,500のポリエステルジオール409.1gを90℃で混合した。
次に上記混合物を65℃まで冷却し、一官能活性水素基含有化合物であるジ−n−ブチルアミン8.8gと、二官能の活性水素基含有化合物である1,4−BD6.5gを添加後更に混合し、HDI160.7gと、ビスマス系触媒「ネオスタン U−600」(日東化成(株)製)0.05gとを添加し、まず65℃で15分、引き続き80〜90℃で3時間にわたり反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマー(III)を得た。
上記のイソシアネート基含有プレポリマー(III)を60℃に冷却した後、MEK199gと分散安定剤(2)42.6gを加えて均一に混合して、イソシアネート基含有プレポリマー/分散剤混合液を調整した。
このMEKの量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して20%に相当する量である。また、分散安定剤溶液(2)の量は、得られたイソシアネート基含有プレポリマーに対して3.0%に相当する量である。
次いで配合物の全量を60℃に調節し、60℃の温水(2,353g)中に、プライミクス(株)製ホモミキサー(機械式強制分散機)を用いて8,000rpmの回転数で2分間混合し分散させた。
この混合分散物を温度計、攪拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、攪拌しながら60℃で10時間反応させた。
上記のポリウレタン樹脂の分散液から固形分(ポリウレタン樹脂)を濾別し、これに、以下に示した添加剤(1)〜(4)を添加し乾燥した後に、打粉剤「MP−1451」(綜研化学(株)製)3.0gを添加することにより、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂「A2」を調製した。得られた樹脂の粒子は真球状(短/長=1.0)であり、体積平均粒径は140μm、数平均分子量は32,000であった(表2参照)。
〔添加剤〕
(1)酸化防止剤:「イルガノックス245」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(2) 紫外線吸収剤:「チヌビン213」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(3)光安定剤:「チヌビン765」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、添加量=2.0g。
(4)内部離型剤:「SH200−100,000cs」(東レ・ダウコーニング(株)製)、添加量=2.0g。
粉体流動性の異なる熱可塑性ポリウレタン樹脂「A1−1」〜「A1−16」及び「A2」を容量9Lのヘンシェルミキサーにそれぞれ1,500g仕込み、次いで、以下の着色顔料「D−1」を0.8%(12g)添加し、それぞれ1,000rpmで30秒間撹拌混合して粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を調整し、夫々を樹脂「PU−0」〜「PU−16」とした(組成及び質量比は表3、4参照)。
住化カラー製カーボンブラック分散顔料「PV−817」667gと、同社製酸化チタン分散顔料「PV−7A1301」333gを、粉体専用リボンミキサーを用いて均一になるまで混合した。
250℃に熱した金型内に、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−3」を仕込んで1秒間保持し、金型を反転させて過剰の粉末材料を除去し、この金型を300℃の加熱炉に入れて30秒間にわたり加熱した後で、加熱炉から取り出した金型を冷却し脱型することで、シート状ポリウレタン樹脂成形物を得た。
この実施例において、使用した粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径は110μmであり、100μm未満の粒子の含有量は40質量%、30μm未満の粒子の含有量は5質量%、20μm未満の粒子の含有量は2質量%である。また、この(A)としてのかさ比重は0.61g/cm3、流下時間は20秒、安息角は35°、耐ブロッキング率は50%である。得られた成形物の所定の数箇所について厚みを測定し、それらの平均値を算出したところ、厚みは0.3mmであり、均一な厚みの成形物であった。また、表5に記載した特性を示し、溶融成形性、表面特性、機械的特性ともに良好であった。成形物の質量は17.9gであり、これは後述する比較例15の厚み1.2mmの成形物に比較して、69%の軽量化に相当した。
粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−4」、「PU−5」、「PU−7」、「PU−8」、「PU−10」、「PU−11」又は「PU−13」〜「PU−15」を各々使用し、実施例12の成形方法における、粉末樹脂を金型に仕込み、反転させて余分な粉末樹脂を除去するまでの保持時間に関して、各々の成形物の厚みを揃えるために保持時間(以後、パウダリング時間と略称する)を調整した。その他の成形工程は実施例12と同様とし、シート状ポリウレタン樹脂成形物を得た。
この実施例において、使用した粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径は110〜300μmであり、100μm未満の粒子の含有量は40質量%以下、30μm未満の粒子の含有量は5質量%以下、20μm未満の粒子の含有量は2質量%以下である。得られた成形物は表5、6に記載した良好な特性を示し、均一な厚みの成形物となった。また後述する比較例15の成形物と比較して軽量化が達成された。
粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−1」又は「PU−16」を各々使用し、実施例12の成形方法において、各々の成形物の厚みを実施例12〜21に揃えるためにパウダリング時間を調整した。その他の成形工程は実施例12と同様とした。
比較例7、12は、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径が110〜300μmの範囲外のものを使用した比較例である。比較例7の場合、「PU−1」は体積平均粒径が小さいために粉体流動性や粉切れが悪く、粉体が金型細部にまで流れずに欠肉が生じ、また均一な厚みで形成させることが困難であり、比較例7では成形物を得ることが困難であった。一方で、体積平均粒径が350μmと大きい「PU−16」を使用した比較例12については、シート状ポリウレタン樹脂成形物が得られたが、ピンホールによる外観不良及び溶融不良による機械的特性や耐久性の低下が確認された。得られた成形物の特性を表5、6に記載した。
粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−2」、「PU−6」、「PU−9」又は「PU−12」を各々使用し、実施例12の成形方法において、各々の成形物の厚みを実施例12〜21に揃えるためにパウダリング時間を調整した。その他の成形工程は実施例12と同様とした。
比較例8〜11は、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の100μm未満の粒子の含有量が40質量%以下、かつ30μm未満の粒子の含有量が5質量%以下、かつ20μm未満の粒子の含有量が2質量%以下の範囲外のものを使用した比較例である。比較例8の場合、「PU−2」の体積平均粒径は110μmであるものの、30μm未満、及び20μm未満の粒子の含有量が範囲外であるため、粉体流動性や粉切れが悪く、比較例7と同様に成形物を得ることが困難であった。比較例9〜11については得られた成形物は表5、6に記載した特性を示し、粉体流動性が悪く、均一な厚みの成形物を得ることが困難であった。
250℃に予備加熱した金型内に、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−0」を仕込んで一定時間パウダリング(成形物の厚みを変化させるため)し、金型を反転させて過剰の粉末材料を除去し、この金型を300℃にて自己発熱で30秒間にわたり加熱した後、金型を冷却し脱型することで、シート状ポリウレタン樹脂成形物を得た。
この実施例において、成形物の厚みは、0.2〜0.8mmである。得られた成形物は表7に記載した良好な特性を示し、後述する比較例15の成形物に比較して軽量化された成形物となった。
粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−0」を各々使用し、実施例22〜26と同様の成形方法により、シート状ポリウレタン樹脂成形物を得た。
比較例13、14は、成形物の厚みが、0.2〜0.8mmの範囲外である場合の比較例である。得られた成形物は表7に記載した特性を示し、成形物の厚みが0.1mmと薄い比較例13は外観不良及び機械的特性や耐久性の低下が確認され、成形物の厚みが0.9mmと厚い比較例14の成形物については、軽量化が不十分であった。
250℃に熱した金型内に、粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)として「PU−0」を仕込んで16秒間保持し、金型を反転させて過剰の粉末材料を除去し、この金型を300℃の加熱炉に入れて30秒間にわたり加熱した後で、加熱炉から取り出した金型を冷却し脱型することで、厚み1.20mmのシート状ポリウレタン樹脂成形物を得た。このシート厚みは、従来技術による成形物と同等水準であり、得られた成形物は表7記載した特性を示し、軽量化が達成されなかった。
粉体流動性に関しては、筒井理化製のかさ比重測定器(JIS−K6720準拠)を用いて粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)のゆるめのかさ比重と、100cm3の(A)が出口内径8mmの測定器を流下する時間を測定した。
安息角に関しては、筒井理化製のかさ比重測定器(JIS−K6720準拠)を用いて、水平面上に上方から100cm3の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を流出させて円錐状に堆積させ、その表面の傾斜角を測定した。
耐ブロッキング性については下記の手順でブロッキング率を測定した。
・上部が開口した直径50mm、高さ130mmの円筒状のスチール缶に約150gの粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を秤量して投入する。
・その上に直径40mm、質量900gのステンレス製の分銅を載せ、80℃の恒温槽に24時間静置する(約7kPaの圧力に相当)。
・分銅を取り外した後で20℃の雰囲気下に2時間静置し、目開き1mmの篩いをパスした(A)の量を秤量する。
・試験後に篩いをパスした量と、試験前の樹脂量との比から百分率を求め、パス率とする。
得られた成形シートの所定の数箇所について厚みを測定し、それらの最大厚みと最小厚みの差を求め、下記の基準に従って評価した。
評価
「5」:厚みの差が0.05mm未満であるもの
「4」:厚みの差が0.05〜0.10mm未満であるもの
「3」:厚みの差が0.10〜0.15mm未満であるもの
「2」:厚みの差が0.15〜0.20mm未満であるもの
「1」:厚みの差が0.20mm以上であるもの
得られたシートの溶融状態を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
評価
「5」:溶融不良がまったく認められないもの
「4」:わずかに溶融不良が認められるが目立たないもの
「3」:わずかであるが溶融不良が明らかに認められるもの
「2」:溶融不良がやや著しいもの
「1」:溶融不良がかなり著しいもの
得られたシートの表面におけるピンホールの有無及び程度をマイクロスコープにより観察し、下記の基準に従って評価した。
評価
「5」:ピンホールがまったく認められないもの
「4」:わずかにピンホールが認められるが目立たないもの
「3」:わずかであるがピンホールが明らかに認められるもの
「2」:ピンホールがやや著しいもの
「1」:ピンホールがかなり著しいもの
シート成形時に、金型から脱型し30秒間放置後、シートを180°折り曲げた状態で30秒間保持し、これを拡開して24時間静置した後、折り曲げられた部分を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
評価
「5」:折れジワがまったく認められないもの
「4」:わずかに折れジワが認められるが目立たないもの
「3」:わずかであるが折れジワが明らかに認められるもの
「2」:折れジワがやや著しいもの
「1」:折れジワがかなり著しいもの
得られた成形シートの裏面に半硬質ポリウレタンフォームを発泡・充填し、シート表面の色差を測定して隠蔽性を評価した。シート厚み1.20mmの比較例15のL、a、b値を標準とし、各サンプルのΔE値をもとに5段階評価した。
評価
「5」: ΔE≦0.5
「4」:0.5<ΔE≦1.5
「3」:1.5<ΔE≦3.0
「2」:3.0<ΔE≦6.0
「1」:6.0<ΔE
得られたシートについて、往復運動平面摩耗試験機を用いて、下記の条件で100往復摩耗を行い、その後の成形シートの状態を目視により観察し、下記の基準に従って評価した。
(条件)
・往復速度 40回/分
・摩擦子 30mm×12mm
・荷重 29.4N
・摩耗材 白綿かなきん3号を5枚積重したもの
評価
「5」:損傷がまったく認められないもの
「4」:わずかに損傷が認められるが目立たないもの
「3」:わずかであるが損傷が明らかに認められるもの
「2」:損傷がやや著しいもの
「1」:損傷がかなり著しいもの
得られたシートについて、JIS K6251、JIS K6252に準じて引張試験を行い、引張強度、破断伸びを測定した。
(条件)
・試験片 ダンベル1号形
・引張速度 200mm/分
Claims (8)
- 粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を構成する粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂(A1)の体積平均粒径が110〜300μmであり、かつ100μm未満の粒子の含有量が40質量%以下、かつ30μm未満の粒子の含有量が5質量%以下、かつ20μm未満の粒子の含有量が2質量%以下であることを特徴とする粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)。
- (A)のかさ比重が0.60g/cm3以上であり、かつ100cm3の(A)が出口内径8mmの漏斗を流下する時間が20秒以下であることを特徴とする請求項1記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)。
- (A)の安息角が35°以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)。
- (A)のブロッキング率を測定した際のパス率が50%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を用いた成形物の厚みが0.2〜0.8mmであることを特徴とするシート状ポリウレタン樹脂成形物。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を用いた成形物の厚みが0.2〜0.8mmであることを特徴とする、請求項5記載のシート状ポリウレタン樹脂成形物の製造方法。
- 次の2工程を経ることを特徴とする、請求項6記載のシート状ポリウレタン樹脂成形物の製造方法。
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、請求項1乃至請求項4記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込んで1〜10秒間保持し、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:200〜400℃の加熱オーブン内に、(A)層が付着した金型を30〜120秒間入れて、粉末樹脂の溶融を完結させ、その後加熱オーブンから取り出して金型を冷却した後、成形物を脱型する工程 - 次の2工程を経ることを特徴とする、請求項6記載のシート状ポリウレタン樹脂成形物の製造方法。
第一工程:200℃〜300℃に予備加熱した金型内に、請求項1乃至請求項4記載の粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)を仕込んで1〜10秒間保持し、金型を反転させて余剰の粉末材料を除去し、金型面に(A)を均一な厚みで付着かつ溶融させる工程
第二工程:(A)層が付着した金型を200℃〜300℃にて30〜120秒間自己加熱して粉末樹脂の溶融を完結させ、その後金型を冷却した後、成形物を脱型する工程
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