JP2007189888A - インバータ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】直流電源ラインの電流センサにより相電流を検出するインバータ装置において、通電補正を小さくし、リップル電流、騒音を低減する。
【解決手段】直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子を備えたインバータ回路と、直流電源とインバータ回路間の電流を検出する電流センサと、インバータ回路にPWM変調の通電により交流電流をモータへ出力させるとともに、通電に補正をして電流センサにより相電流を検出する制御回路とを備え、制御回路は、通電期間が中間の相におけるインバータ回路とモータ間の電流の向きにより、補正を調節する。
【選択図】図31

Description

本発明は、PWM変調を行うインバータ装置の相電流検出方法に関するものである。
従来、この種の相電流検出方法として、直流電源ラインの電流から検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この回路について以下説明する。図34に電気回路図を示す。インバータ装置23の制御回路12は、回転数指令信号(図示せず)等に基づき、接続線18を介しスイッチング素子2を制御してバッテリー1の電力を直流交流変換する。これにより、モータ11の固定子巻線4へ交流電流が供給され、磁石回転子5が駆動される。ダイオード3は、固定子巻線4に流れる電流の循環ルートとなる。スイッチング素子2について、上アームスイッチング素子をU、V、W、下アームスイッチング素子をX、Y、Zと定義する。
電流センサ6の検出電流値は、制御回路12へ送られ、消費電力算出、スイッチング素子2保護等のための判断に用いられ、更に磁石回転子5の位置検出に用いられる。
図35に、U相端子電圧41、V相端子電圧42、W相端子電圧43、中性点電圧29に関し、最大変調10%のDutyとなる正弦波3相変調の波形を示す。図36(a)に、図35の位相105度近辺における1キャリア内(キャリア周期)での上アームスイッチング素子U、V、WのONDutyを中央から均等に振り分け表示している。U相の通電期間を細実線で、V相の通電期間を中実線で、W相の通電期間を太実線で表わしている。通電期間が最大の相を最大通電相(この場合U相)、中間の相を中間通電相(この場合V相)、最小の相を最小通電相(この場合W相)と定義する。
詳細は割愛するが、上アームスイッチング素子U、V、WのON、OFF状態で電流センサ6により検出できる相電流が決定される。即ち、1相のみON時はその相の電流、2相ON時は残りの相の電流が検出可能であり、3相ともON時及び3相ともOOFF時は検出不可となる。そのため、上アームスイッチング素子U、V、WのONを確認することで、検出可能な相電流を知る事ができる。
しかしながら、図36(a)においては、1相のみON時(αで表示)、2相ON時(βで表示)ともに時間が短いため、電流センサ6により相電流を検出できない。その対応の一例を図36(b)に示す。まず、電流センサ6が相電流を検出できるための時間δを決定する。この時間δは、種々の状況においても相電流を検出できるように余裕をもたせた一律の値である。キャリア周期の左側(前半)において、時間αがδとなるように、U相の通電期間を増加させる。また、時間βがδとなるように、W相の通電期間を減少させる。これにより、U相、W相の電流が検出可能となる。各通電期間の下に矢印で示したU,WはそれぞれU相の電流検出可能期間、W相の電流検出可能期間を示している。
このような補正をした場合、補正をしない場合に比べ、キャリア周期内で相電流が変動する。これについて以下説明する、ここで、説明を簡明にするため、モータの固定子巻線4には、インダクタンスLのみが存在し、抵抗Rは0とする。また、キャリア周期での相電流の変化を把握できれば良いので、キャリア周期では殆ど変化しない誘起電圧は考慮しないものとする。また、2〜3の連続するキャリア周期において、PWM変調のための通電は変化がないとする。
図37に補正をしない場合の、2キャリア周期に渡るキャリア周期内でのU相電流iU、V相電流iV、W相電流iWの挙動を示す。2キャリア周期において、PWM変調のための通電は変化がないとし、両キャリア周期の通電は同じにしている。3相ともに通電のない領域においては、図39(イ)の状態であり、各相電流は変化しない。U相のみ通電の領域においては、図39(ロ)の状態であり、U相電流iUは上昇(実線矢印で示す)し、下降(破線矢印で示す)するV相電流iV、W相電流iWの倍変化する。この時、電流は、直線的に変化する。即ち、固定子巻線のインダクタンスをL、直流電圧をE、電流をiとすると、E=Ldi/dtであり、電流iの時間変化率di/dtは定数E/Lとなるためである。U相及びV相が通電の領域においては、図39(ハ)の状態であり、W相電流iWは下降し、上昇するU相電流iU、V相電流iVの倍変化する。3相ともに通電される領域においては、図40(ニ)の状態であり、各相電流は変化しない。
図38に、補正をする場合を示す。左側のキャリア周期には、図36(b)を示す。右側のキャリア周期においては、図36(a)から図36(b)への補正の逆の補正をしている。即ち、図36(b)の補正をキャンセルするために、U相の通電期間を減少させ、W相の通電期間を増加させている。W相のみ通電の領域においては、図40(ホ)の状態であり、W相電流iWは上昇し、下降するU相電流iU、V相電流iVの倍変化する。
図37、図38から明らかなように、補正をしない場合は、各電流が徐々に滑らかに変化している。これに対し、補正をする場合、U相電流iUは増加する途中で、左側のキャリア周期で大きく増加し、右側のキャリア周期で減少する。W相電流iWは減少する途中で、左側のキャリア周期で大きく減少し、右側のキャリア周期で増加している。このように、本来の変調のためには必要なく変動する電流をリップル電流と定義する。補正が大きいほど、リップル電流も大きくなる。上記リップル電流は、この例に限らず他の補正方法でも同様に発生する。なお、右側のキャリア周期終端では、U相電流iU、V相電流iV、W相電流iWともに、補正をしない場合と同じ値になる。即ち、2キャリア周期を通しての相電流の増減は同じであり、PWM変調に変化はない(2キャリア周期を通しての相電圧、相電流に変化はない)。
一方、このような電流センサを一つのみの構成とすることにより、他の方式(例えば、特許文献2、特許文献3参照。これらの方式は、相電流検出のための通電補正は必要なく、リップル電流とそれに起因する騒音振動は発生しない)に比べ、構成部品が減少するため、小型化が図れるとともに、耐振などの信頼性を向上することができる。上アーム及び下アームともにスイッチング素子に流れる最大電流を検出できるので、スイッチング素子及び並列のダイオードを保護することができる。また、電流センサ6により検出される電流は、バッテリー1からの直流電流であるので、バッテリー1からの供給電力演算が容易である。
特開2003−189670号公報(第14頁、第1図、第16頁、第14図) 特開2004−282884号公報(第16頁、第26図) 特開2003−209976号公報(第21頁、第14図)
上記のように、電流センサが一つのみの相電流検出方法においては、電流センサを2個乃至3個用いる他の方式に比べ、構成部品が少ないため、小型化が図れるとともに、耐振などの信頼性を向上することができるなどの利点がある。
然しながら、上記の如く、変調が小さい場合などにおいては、相電流を検出するために通電補正が必要になる。この補正によりリップル電流が発生する。このリップル電流は電
磁力となり、モータの固定子巻線、メカ、ハウジングなどに作用し、騒音(振動)を発生させることとなる。車載用の電動圧縮機においては、小型軽量化するために防音箱を設けることが困難であり、騒音(振動)を低減することは、重要な課題となる。
補正が大きいほど、リップル電流、騒音(振動)も大きくなるため、補正は可能な限り小さくする必要がある。そのため、一律一定ではなく、状況に応じて補正を必要最小限に調節する方法が望まれる。
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、直流電源ラインの電流センサにより相電流を検出するインバータ装置において、通電補正が小さく、リップル電流、騒音(振動)の小さいインバータ装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のインバータ装置は、直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子を備えたインバータ回路と、直流電源とインバータ回路間の電流を検出する電流センサと、インバータ回路にPWM変調の通電により交流電流をモータへ出力させるとともに、通電に補正をして電流センサにより相電流を検出する制御回路とを備え、制御回路は、通電期間が中間の相におけるインバータ回路とモータ間の電流の向きにより補正を調節するものである。この構成により、インバータ回路とモータ間の電流の向きにより補正量を調節選択し、全体として補正を小さくすることができる。即ち、通電期間が中間の相におけるインバータ回路とモータ間の電流の向きにより、相電流を検出するために必要な補正量が異なる。そのため、モータ電流の向きにより補正量を調節し、全体として補正を小さくする。従って、リップル電流、騒音(振動)を小さくできる。
本発明のインバータ装置は、直流電源ラインの電流センサによる相電流検出において、通電補正を最小限に小さくすることが可能であり、リップル電流、騒音を最小限に低減することができる。
第1の発明は、直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子を備えたインバータ回路と、直流電源とインバータ回路間の電流を検出する電流センサと、インバータ回路にPWM変調の通電により交流電流をモータへ出力させるとともに、通電に補正をして電流センサにより相電流を検出する制御回路とを備え、制御回路は、通電期間が中間の相におけるインバータ回路とモータ間の電流の向きにより、補正を調節するものである。この構成により、モータへの電流の向きにより補正量を調節し、全体として補正を小さくできる。従って、リップル電流、騒音(振動)を小さくできる。
第2の発明は、第1の発明のインバータ装置において、補正は、制御回路が、上アームスイッチング素子ひとつもしくはふたつにON信号を出力する時間を、電流センサにより相電流を検出するために最小限必要な時間以上確保することであり、通電期間が中間の相におけるインバータ回路とモータ間の電流の向きにより当該補正を調節するものである。これにより、必要最小限の補正量を選択することができるため、全体として補正を最小にできる。従って、リップル電流、騒音(振動)を最小にできる。
第3の発明は、第1または第2の発明のインバータ装置において、電流の向きは、モータへの電流の位相により判定するものである。制御回路は演算により電流の位相を把握できる。これにより、特段の検出器などを設けることなく、電流の向きを容易に判定できる
第4の発明は、第1または第2の発明のインバータ装置において、電流の向きは、モータへの印加電圧の位相により判定するものである。電流の位相と印加電圧の位相との間には相関関係があり、制御回路は演算により把握できる。また、簡易的に両者の位相は等しいと仮定しても大きな差異は生じない。これにより、電流の向きを容易に判定できる。
第5の発明は、第1乃至第4の発明のインバータ装置において、変調が小さい場合に適用されるものである。電流センサにより相電流を検出するために必要な時間は、変調の大小に関係せず決まる。そのため、変調が小さい場合、変調のための通電に対し、補正量が相対的に大きくなる。従って、補正量低減の効果を大きく得られる。
第6の発明は、第1乃至第4の発明のインバータ装置において、低回転時に適用されるものである。低回転時においては、モータの回転に伴う機械騒音が小さいため、リップル電流に起因する騒音が目立ち易く、本発明の効果が大きい。
第7の発明は、第1乃至第6の発明のインバータ装置において、PWM変調を3相変調とするものである。2相変調に比較し、3相変調においては、電流波形が滑らかで騒音が小さいため、リップル電流に起因する騒音が目立ち易く、本発明の効果が大きい。
第8の発明は、第1乃至第7の発明のインバータ装置において、電動圧縮機のモータを駆動するものである。これにより、長い時間作動するエアコンからの継続的な騒音を低減することができる。
第9の発明は、第8の発明のインバータ装置において、電動圧縮機に搭載されるものである。電動圧縮機に搭載されるインバータ装置は、取付スペースに制約があり小型化が必要で、モータからの振動に対して耐振性が必要であるため、シャント抵抗など1個の電流センサにより電流検出する本インバータ装置は、小型であり耐振性が高く有用である。
第10の発明は、第1乃至第9の発明のインバータ装置において、車両に搭載するものである。車両用においては、搭載スペースに制約があり小型化が必要で、走行による振動に対する耐振性も必要なため、シャント抵抗など1個の電流センサにより電流検出する本インバータ装置は有用である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインバータ装置20とその周辺の電気回路である。インバータ装置20の制御回路7は、電源ラインに設けられた電流センサ6からの電圧により、相電流を検出する。2相分の相電流を検出すれば、残りの相の相電流は、当該2個の電流値から演算できる(固定子巻線4の中性点において、キルヒホッフの電流の法則を適用する)。
これら3相分の電流値に基き、制御回路7は、センサレスDCブラシレスモータ11(以降モータ11と称す)を構成する磁石回転子5による固定子巻線4の誘起電圧を演算し、磁石回転子5の位置検出を行う。そして、この位置検出、回転数指令信号(図示せず)等に基づき、インバータ回路10を構成するスイッチング素子2を制御し、バッテリー1からの直流電圧をPWM変調でスイッチングすることにより、正弦波状の交流電流をモータ11を構成する固定子巻線4へ出力する。
インバータ回路10を構成するダイオード3は、固定子巻線4に流れる電流の循環ルートとなる。スイッチング素子2について、上アームスイッチング素子をU、V、W、下アームスイッチング素子をX、Y、Zと定義し、また、各スイッチング素子U、V、W、X、Y、Zに対応するダイオードを、3U、3V、3W、3X、3Y、3Zと定義する。
電流センサ6は、ホール素子を用いた電流センサ、シャント抵抗など、瞬時ピーク電流が検出できるものであれば良い。また、電源ラインのプラス側に設けても良い。シャント抵抗ならば、小型化耐振性向上が実現し易い。制御回路7は、上アームスイッチング素子U、V、W、下アームスイッチング素子X、Y、Zと、ドライブ回路などを介して接続線18により接続されており、各スイッチング素子を制御している。スイッチング素子2がIGBT、パワーMOSFETの場合はゲート電圧を、パワートランジスタの場合はベース電流を制御する。
次に、電流センサ6にて、相電流を検出する方法について述べる。図2に、最大変調50%の3相変調の波形を、U相端子電圧41、V相端子電圧42、W相端子電圧43、中性点電圧29に関し示す。3相変調においては、変調度が上がるにつれDuty50%を中心に0%と100%の両方向に伸びる。最大変調10%程度の低い場合に、相電流検出のための補正を必要とするが、図面上見易くするために、便宜上、最大変調50%の場合を例に挙げる。
これら端子電圧即ち印加電圧の位相と相電流の位相とは、ほぼ等しいと仮定する。図2において−表示した位相においては、中間通電相V相の電流は、モータ11から流れ出る。モータ11から流れ出る電流の向きを−方向と定義する。+表示した位相においては、中間通電相V相の電流は、モータ11へ流れこむ。モータ11へ流れこむ電流の向きを+方向と定義する。−表示した位相、+表示した位相双方において、最大通電相であるU相は+電流、最小通電相であるW相は−電流である。
図3は、1キャリア内(キャリア周期)での上アームスイッチング素子U、V、W、下アームスイッチング素子X、Y、Zの通電の一例であり、制御回路7から各スイッチング素子を制御するONOFF信号を示す。これは、一般的に、マイコンのタイマ機能により具現化される。この場合、図2において−(マイナス)表示した位相、+表示した位相近辺120度前後での通電である。通電期間として、(a)、(b)、(c)、(d)の4種類がある。
最初に、図2において−表示した位相において考察する。中間通電相V相の電流は、−方向である。U相の電流iUが最大電流になる。通電期間(a)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがOFF、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがONである。図4に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、下アームスイッチング素子Xと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV及びW相電流iWがそれぞれ、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Y及びZへ流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れず検出できない。
通電期間(b)においては、上アームスイッチング素子UがON、下アームスイッチング素子Y、ZがONである。図5に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV及びW相電流iWがそれぞれ、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Y及びZへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、U相の電流iUが流れ検出可能となる。
通電期間(c)においては、上アームスイッチング素子U、VがON、下アームスイッ
チング素子ZがONである。図6に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iVは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Vと並列のダイオードへ流れ出ている。W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、W相の電流iWが流れ検出可能となる。
通電期間(d)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがON、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがOFFである。図7に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV、W相電流iWはそれぞれ、固定子巻線4から上アームスイッチング素子V、Wと並列のダイオードに流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れず検出できない。
図8に、上記図4〜図7に基づき、図2上−表示した位相における直流電流の変化を示す。通電期間(b)においては最大電流であるU相の電流iUが、通電期間(c)においては、W相の電流iWが電流センサ6により検出可能である。
次に、図2において+表示した位相において考察する。中間通電相V相の電流は、+方向である。W相の電流iWが最大電流になる。通電期間(a)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがOFF、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがONである。図9に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVがそれぞれ、下アームスイッチング素子X、Yと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れず検出できない。
通電期間(b)においては、上アームスイッチング素子UがON、下アームスイッチング素子Y、ZがONである。図10に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iVは下アームスイッチング素子Yと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、U相の電流iUが流れ検出可能となる。
通電期間(c)においては、上アームスイッチング素子U、VがON、下アームスイッチング素子ZがONである。図11に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVは、それぞれ、上アームスイッチング素子U、Vから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、W相の電流iWが流れ検出可能となる。
通電期間(d)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがON、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがOFFである。図12に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVは、それぞれ、上アームスイッチング素子U、Vから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Wと並列のダイオードに流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れず検出できない。
図13に、上記図9〜図12に基づき、図2上+表示した位相における直流電流の変化を示す。通電期間(b)においてはU相の電流iUが、通電期間(c)においては、最大電流であるW相の電流iWが電流センサ6により検出可能である。通電期間(b)においてはU相の電流iU、通電期間(c)においてはW相の電流iWが検出されることは、図8と同じである。
上記図4〜図13の考察により、上アームスイッチング素子U、V、WのON、OFF
状態で電流センサ6により検出できる相電流が特定されることが分かる。即ち、1相のみON時はその相の電流、2相ON時は残りの相の電流が検出可能であり、3相ON時及び3相OFF時は検出不可となる。
従って、制御回路7からの各スイッチング素子を制御するONOFF信号と各スイッチング素子のONOFFは、進み遅れなく一致している場合、制御回路7は、各スイッチング素子を制御するONOFF信号に基づき、電流センサ6からの電流信号がどの相電流かを特定でき検出できる。
然しながら、実際には、制御回路7からの各スイッチング素子を制御するONOFF信号と各スイッチング素子のONOFFは、回路特性などにより、一致しない。また、素子の立上がり立下り特性、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子との間のデッドタイムなどがある。そのため、制御回路7が、各スイッチング素子を制御するONOFF信号に基づき、電流センサ6を用いての電流検出タイミング決定、どの相電流かの判定をするにおいて、これらを考慮する必要がある。
以下、これらについて説明する。図3の通電タイミングチャートにデッドタイムを盛り込んだものを、図14に示す。このタイミングチャートにスイッチング素子のON時間tn、OFF時間tfも考慮し、図8、図13に示す直流電流の変化を詳細に考察する。
最初に、図2において−(マイナス)表示した位相において即ち図8に示す直流電流について考察する。中間通電相V相の電流iVは、−方向である。図15に、U相電流iUの下アームから上アームへの移行を示す。上側にスイッチングの時間関係を、下側にその時間関係における回路素子に流れる電流を示す。下アームスイッチング素子XへのOFF信号以前において、電流は図4の状態にある。下アームスイッチング素子XへOFF信号が出された時点で、U相電流iUは下アームスイッチング素子Xと並列のダイオード3Xから固定子巻線4へ流れている。回路図において、上アーム側は機能していないので、省略している。下アームスイッチング素子XのOFF時間tf後においても、上アームスイッチング素子UはOFFであるため、U相電流iUはダイオード3Xから固定子巻線4へ流れている。回路図において、下アームスイッチング素子Xは機能していないので、省略している。
下アームスイッチング素子XへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、上アームスイッチング素子UへON信号が出される。ダイオード3Xに流れるU相電流iUは、上アームスイッチング素子Uへ移行を始め、上アームスイッチング素子UのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図5の状態となる。従って、電流値の検出は、上アームスイッチング素子UへのON信号からtn以降に行う必要がある。
図16に、V相電流iVの下アームから上アームへの移行を示す。下アームスイッチング素子YへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Yへ流れている。V相電流iVは、上アームスイッチング素子Vと並列のダイオード3Vへ移行を始め、下アームスイッチング素子YのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図6の状態となる。デッドタイムtdは短絡防止のため、OFF時間tfより長く設定される。そのため、下アームスイッチング素子YへのOFF信号からデッドタイムtd後には移行完了している。従って、上アームスイッチング素子VへのON信号時点(下アームスイッチング素子YへのOFF信号からデッドタイムtd後)で電流値の検出が可能である。
図17に、W相電流iWの下アームから上アームへの移行を示す。図16のV相電流iVの場合と同様であり、W相電流iWは、上アームスイッチング素子Wと並列のダイオー
ド3Wへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図7の状態となる。そのため、電流検出できない。
図18に、W相電流iWの上アームから下アームへの移行を示す。上アームスイッチング素子WへのOFF信号以前、電流は図7の状態にある。上アームスイッチング素子WへOFF信号が出された時点で、W相電流iWは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Wと並列のダイオード3Wへ流れ出ている。回路図において、下アーム側は機能していないので、省略している。上アームスイッチング素子WのOFF時間tf後においても、下アームスイッチング素子ZはOFFであるため、W相電流iWは固定子巻線4からダイオード3Wへ流れ出ている。回路図において、上アームスイッチング素子Wは機能していないので、省略している。
上アームスイッチング素子WへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、下アームスイッチング素子ZへON信号が出される。ダイオード3Wに流れるW相電流iWは、下アームスイッチング素子Zへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図6の状態となる。従って、電流値の検出は、上アームスイッチング素子WへのOFF信号からtd+tn以降に行う必要がある。
図19に、V相電流iVの上アームから下アームへの移行を示す。図18のW相電流iWの場合と同様であり、下アームスイッチング素子YのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図5の状態となる。従って、U相電流iUの検出は、上アームスイッチング素子VへのOFF信号からtd+tn以降に行う必要がある。
図20に、U相電流iUの上アームから下アームへの移行を示す。上アームスイッチング素子UへOFF信号が出された時点で、U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れている。U相電流iUは、下アームスイッチング素子Xと並列のダイオード3Xへ移行を始め、上アームスイッチング素子UのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図4の状態となる。そのため、電流検出できない。
次に、図2において+表示した位相において即ち図13に示す直流電流について考察する。中間通電相V相の電流iVは、+方向である。図21に、U相電流iUの下アームから上アームへの移行を示す。図15と比較し、U相電流iUの電流の大きさは異なるが、電流の向きは同じであるため、タイミング関係は図15と同じである。下アームスイッチング素子XへのOFF信号以前、電流は図9の状態にある。また、上アームスイッチング素子UのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図10の状態となる。従って、電流値の検出は、上アームスイッチング素子UへのON信号からtn以降に行う必要がある。
図22に、V相電流iVの下アームから上アームへの移行を示す。この場合、図16と比較し、V相電流iVの向きが逆になるため、図16とはタイミング関係が異なる。タイミング関係は、相及び電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、図15、図21と同じである。下アームスイッチング素子YへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは下アームスイッチング素子Yと並列のダイオード3Yから固定子巻線4へ流れている。回路図において、上アーム側は機能していないので、省略している。下アームスイッチング素子YのOFF時間tf後においても、上アームスイッチング素子VはOFFであるため、V相電流iVはダイオード3Yから固定子巻線4へ流れている。回路図において、下アームスイッチング素子Yは機能していないので、省略している。
下アームスイッチング素子YへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、上アームスイッチング素子VへON信号が出される。ダイオード3Yに流れるV相電流iVは、上ア
ームスイッチング素子Vへ移行を始め、上アームスイッチング素子VのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図11の状態となる。従って、電流値の検出は、上アームスイッチング素子VへのON信号からtn以降に行う必要がある。
図23に、W相電流iWの下アームから上アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図17と同じである。W相電流iWは、上アームスイッチング素子Wと並列のダイオード3Wへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図12の状態となる。そのため、電流検出できない。
図24に、W相電流iWの上アームから下アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図18と同じである。下アームスイッチング素子ZのON時間tn後に移行完了する。この時点において図11の状態となる。従って、電流値の検出は、上アームスイッチング素子WへのOFF信号からtd+tn以降に行う必要がある。
図25に、V相電流iVの上アームから下アームへの移行を示す。V相電流iVの向きが逆になるため、図19とはタイミング関係が異なる。タイミング関係は、相及び電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、図20と同じである。上アームスイッチング素子VへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは、上アームスイッチング素子Vから固定子巻線4へ流れている。V相電流iVは、下アームスイッチング素子Yと並列のダイオード3Yへ移行を始め、上アームスイッチング素子VのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図10の状態となる。デッドタイムtdは短絡防止のため、OFF時間tfより長く設定される。そのため、上アームスイッチング素子VへのOFF信号からデッドタイムtd後には移行完了している。従って、上アームスイッチング素子VへのOFF信号からデッドタイムtd時点で電流値の検出が可能である。
図26に、U相電流iUの上アームから下アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図20と同じである。上アームスイッチング素子UのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図9の状態となる。そのため、電流検出できない。
上記図15、図16、図17により、図8(中間通電相V相の電流iVは−方向)におけるキャリア周期内直流電流変化の左側(前半)詳細を、図27に示す。制御回路7の各スイッチング素子を制御するONOFF信号と直流電流の関係である。上アームスイッチング素子UへのON信号から暫くの間、直流電流(U相電流iU)に変化がないが、これは制御回路7からスイッチング素子Uまでのフィルタ回路、ドライブ回路などによる遅延に起因している。下アームスイッチング素子Y、ZへのOFF信号から暫くの間、直流電流に変化がないのも同様である。この遅延時間にスイッチング素子の立ち上がり時間を含め、スイッチング素子のON時間tnとしている。前述のOFF時間tfも同様である。
ここで、上アームスイッチング素子U,V,WのONOFFタイミングを基準にして、電流検出を可能とするための通電補正条件を検討する。電流センサ6で電流が検出され、制御回路7に取り込まれるのに要する時間をtkとする。スイッチング素子UのON信号からスイッチング素子VのON信号の間においては、スイッチング素子ひとつのみ(U)にON信号が出されている。この期間の時間をL1とする。この期間において、スイッチング素子UのON信号からの時間tn、スイッチング素子VのON信号直前の時間tdは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、L1として最小限必要な時間は、td+tn+tkとなる。これをCL1とする。
スイッチング素子VのON信号からスイッチング素子WのON信号の間においては、スイッチング素子ふたつ(U及びV)にON信号が出されている。この期間の時間をL2とする。この期間において、スイッチング素子WのON信号直前の時間tdは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、L2として最小限必要な時間は、td+tkとなる。これをCL2とする。
図18、図19、図20により、図8におけるキャリア周期内直流電流変化の右側(後半)詳細を、図28に示す。同様に、電流検出を可能とするための通電補正条件を検討する。スイッチング素子WのOFF信号からスイッチング素子VのOFF信号の間においては、スイッチング素子ふたつ(U及びV)にON信号が出されている。この期間の時間をR2とする。この期間において、スイッチング素子WのOFF信号からの時間td+tnは、電流検出するのに適当ではない。一方、スイッチング素子VのOFF信号からの時間tdにおいては、デッドタイムtdが電流検出時間tkより大きい場合、電流検出可能である。デッドタイムtdは大型のパワー素子の特性から決まるものであり且つアーム短絡防止のため余裕をもって大きい値にされる。そのため、通常、tdはtkより大きい。従って、電流検出を可能とするために、R2として最小限必要な時間は、td+tnとなる。これをCR2とする。
スイッチング素子VのOFF信号からスイッチング素子UのOFF信号の間においては、スイッチング素子ひとつのみ(U)にON信号が出されている。この期間の時間をR1とする。この期間において、スイッチング素子VのOFF信号からの時間td+tnは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、R1として最小限必要な時間は、td+tn+tkとなる。これをCR1とする。
次に、図21、図22、図23により、図13(中間通電相V相の電流iVは+方向)におけるキャリア周期内直流電流変化の左側詳細を、図29に示す。スイッチング素子UのON信号からスイッチング素子VのON信号の間においては、スイッチング素子Uひとつのみ(U)にON信号が出されている。この期間の時間を前記同様L1とする。この期間において、スイッチング素子UのON信号からの時間tnは、電流検出するのに適当ではない。また、スイッチング素子VのON信号直前の時間tdにおいては、デッドタイムtdが電流検出時間tkより大きければ、電流検出可能である。従って、電流検出を可能とするために、L1として最小限必要な時間は、td+tnとなる。これを前記同様CL1とする。
スイッチング素子VのON信号からスイッチング素子WのON信号の間においては、スイッチング素子ふたつ(U及びV)にON信号が出されている。この期間の時間を前記同様L2とする。この期間において、スイッチング素子VのON信号からの時間tn、スイッチング素子WのON信号直前の時間tdは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、L2として最小限必要な時間は、td+tn+tkとなる。これを前記同様CL2とする。
図24、図25、図26により、図13におけるキャリア周期内直流電流変化の右側詳細を、図30に示す。スイッチング素子WのOFF信号からスイッチング素子VのOFF信号の間においては、スイッチング素子ふたつ(U及びV)にON信号が出されている。この期間の時間を前記同様R2とする。この期間において、スイッチング素子WのOFF信号からの時間td+tnは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、R2として最小限必要な時間は、td+tn+tkとなる。これを前記同様CR2とする。
スイッチング素子VのOFF信号からスイッチング素子UのOFF信号の間においては
、スイッチング素子ひとつのみ(U)にON信号が出されている。この期間の時間を前記同様R1とする。この期間において、スイッチング素子VのOFF信号からの時間tdは、電流検出するのに適当ではない。従って、電流検出を可能とするために、R1として最小限必要な時間は、td+tkとなる。これを前記同様CR1とする。
ここで上記図27、図29での考察に基づき、キャリア周期内の左側において、通電補正を行う場合のフローチャートを図31に示す。ステップ10にて、中間通電相は+電流かどうか即ち電流の向きがモータへ向かう電流かどうか判定する。+電流でなければ(N)即ち−電流ならば、図27によりステップ11にて、CL1をtd+tn+tk、CL2をtd+tkとする。そして、ステップ20へ移る。+電流であれば(Y)、図29よりステップ15にて、CL1をtd+tn、CL2をtd+tn+tkとする。そして、ステップ20へ移る。
中間通電相が+電流かどうかの判定は、ひとつ前のキャリア周期における中間通電相の電流から推定できる。また、制御回路7はキャリア周期単位で相電流を検出しているため、演算によりその位相を把握できている。そのため、相電流を検出すべきキャリア周期における中間通電相の電流が+電流かどうか推定できる。電流の位相に代わり、印加電圧の位相でほぼ近似できるとして代用も可能である。例えば、図2において、位相120度を境に、+電流と−電流が反転する。電流がスイッチング素子に流れているか、並列のダイオードに流れているかにより判定することもできる。
次に、ステップ20にて、当初のPWM変調によるL1の時間がCL1より大きいかどうか判定する。CL1より大きくなければ(N)即ち電流検出できない場合、ステップ21にて、L1の時間を補正し、電流検出できる最小時間CL1まで大きくする。この大きくする量が補正量になる。そして、ステップ30へ移る。CL1より大きければ、そのままステップ30へ移る。
ステップ30にて、当初のPWM変調によるL2の時間がCL2より大きいかどうか判定する。CL2より大きくなければ(N)即ち電流検出できない場合、ステップ31にて、L2の時間を補正し、電流検出できる最小時間CL2まで大きくする。この大きくする量が補正量になる。そして、通電補正を終了する。CL2より大きければ、そのまま通電補正を終了する。
以上のフローにより、2相分の電流(この場合U相電流iUとW相電流iW)が、最小の通電補正により検出できるようになる。他の1相の相電流は前述の演算により求められる。
上記のように、+電流かどうかの判定を行わない場合、CL1、CL2を、少なくともtd+tn+tk以上の値にしなければならない。従って、本発明によれば、中間通電相が−電流の場合CL2はtd+tkであり、中間通電相が+電流の場合CL1はtd+tnであるので、+電流かどうかの判定を行わない場合のtd+tn+tkに比較し小さくできる。この結果、リップル電流、騒音を小さくできる。数値例として、td=2.5μS、tn=2μS、tk=2μSとした場合、L1,L2ともに、69%に低減される(4.5μS/6.5μS)。
また、出力が小さい場合即ち10%程度の変調が小さい場合、キャリア周期が100μS前後(キャリア周波数が10kHz前後)であると、L1、L2は数μSである。そのため、例として、L1、L2が3μSの場合、本発明によれば、CL1もしくはCL2はtd+tkもしくはtd+tnの4.5μS即ち補正は1.5μS(4.5μS−3μS)となる。一方、従来方法であると、CL1もしくはCL2は少なくともtd+tn+t
kの6.5μS即ち補正は3.5μS(6.5μS−3μS)となる。そのため、本発明の場合は補正量が半分以下の43%(1.5μS/3.5μS)に低減される。従って、本発明は、変調が小さい場合(出力が小さい場合)に特に有効である。
上記図31と同様に、図28、図30での考察に基づき、キャリア周期内の右側において、通電補正を行う場合のフローチャートを図32に示す。ステップ51は図28、ステップ55は図30に基づいている。詳細フロー、作用効果などは、図31と同様である。
尚、上記実施の形態において、2相分の電流(U相電流iUとW相電流iW)を検出する場合を示したが、検出する電流の組み合わせ、検出位置(キャリア周期左側右側)、検出電流数(2相分、1相分)など任意である。
前述と同様の考察により、次のように発展させることができる。図28、図29において、デッドタイムtdが電流検出時間tkより大きい場合としたが、この差を考慮すると、tdに代わりtkとできる。即ち、図31ステップ15において、CL1=tn+tk、図32ステップ51において、CR2=tn+tkとできる。図27において、YへのOFF信号からtf以降tdまで、図30において、VへのOFF信号からtf以降tdまでは、電流検出可能である。そのため、tdに代わりtfとできる。即ち、図31ステップ11において、CL2=tf+tk、図32ステップ55において、CR1=tf+tkとできる。また、図31、図32におけるのCL1、CL2、CR1、CR2はそれぞれ遅延時間(制御回路7からスイッチング素子までのフィルタ回路、ドライブ回路などによる遅延)分を削減できる。これらにより、更に補正量を低減できる。
図28、図29において、デッドタイムtdが電流検出時間tkより大きい場合としたが、仮にデッドタイムtdが電流検出時間tkより小さい場合、この場合においても、tdに代わりtkとすれば良い。即ち、図31ステップ15において、CL1=tn+tk、図32ステップ51において、CR2=tn+tkとなる。
電流検出を可能とするための最小限必要な時間について考察したが、電流変化過渡時のリンギングを検出してしまうのを避けるため、電流検出に余裕を持たせ+αした値としても良い。
ステップ11の式の値はステップ55の式の値と同じ、ステップ15の式の値はステップ51の式の値と同じである。そのため、図31のキャリア周期左側での電流検出の場合と図32のキャリア周期右側での電流検出の場合とで、式の値を共有し条件分けして使用すれば制御ソフトを簡素化できる。
中間通電相の上アームスイッチング素子Vが、最大通電相の上アームスイッチング素子Uの後にONする場合を示したが、特殊な補正などに起因して、中間通電相の上アームスイッチング素子Vが先にONする場合においても、基本的な考え方は同じであり適用できる。即ち、図27(中間通電相V相の電流iVは−方向)、図29(中間通電相V相の電流iVは+方向)において、最初に検出可能な電流はU相電流iUからV相電流iVとなる。また、図27においてタイミング関係に変化があり、U相とV相を入れ替えて考察する必要がある。図29においては、U相とV相を入れ替えても、タイミング関係に変化はない。
(実施の形態2)
図33に、電動圧縮機40の右側にインバータ装置20を密着させて取り付けた図を示す。金属製筐体32の中に圧縮機構部28、モータ11等が設置されている。冷媒は、吸入口33から吸入され、圧縮機構部28(この例ではスクロール)がモータ11で駆動さ
れることにより、圧縮される。この圧縮された冷媒は、モータ11を通過する際にモータ11を冷却し、吐出口34より吐出される。
インバータ装置20は電動圧縮機40に取り付けられるように、ケース30を使用している。発熱源となるインバータ回路部10は、低圧配管38を介して低圧冷媒で冷却される。電動圧縮機40の内部でモータ11の巻き線に接続されているターミナル39は、インバータ回路部10の出力部に接続される。保持部35でインバータ装置23に固定される接続線36には、バッテリー1への電源線と回転数信号を送信するエアコンコントローラ(図示せず)との信号線がある。
このようなインバータ装置一体型電動圧縮機では、インバータ装置20が小さいこと、振動に強いことが必要になるので、本発明の実施の形態として好適である。
尚、上記各実施の形態において、低回転時(10Hz前後)においては、モータの回転に伴う機械騒音が小さいため、リップル電流に起因する騒音が目立ち易く、本発明の効果が大きい。直流電源をバッテリーとしたが、これに限るものではなく、商用交流電源を整流した直流電源などでもよい。モータ11をセンサレスDCブラシレスモータとしたが、リラクタンスモータ、誘導モータ等にも適用できる。正弦波駆動以外にも適用できる。また、2相変調においても適用できるが、電流波形が滑らかな3相変調の場合においては、低騒音であるためリップル電流に起因する騒音が目立ち易く、効果が大きい。
以上のように、本発明にかかるインバータ装置は、電流センサが一つのみで小型高信頼性、低騒音低振動であり、相電流の検出、直流電流の検出、スイッチング素子及びダイオードの保護ができるので、各種民生用製品、各種産業用機器に適用できる。負荷としてモータ以外の交流機器にも適用可能である。
本発明の実施の形態1に係るインバータ装置とその周辺の電気回路図 3相変調の最大変調50%における各相の変調を示す波形図 キャリア周期における通電タイミングチャート 中間通電相が−電流の場合における通電期間(a)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(b)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(c)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(d)の電流経路を示す電気回路図 同キャリア周期内で検出される直流電流波形図 中間通電相が+電流の場合における通電期間(a)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(b)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(c)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(d)の電流経路を示す電気回路図 同キャリア周期内で検出される直流電流波形図 デッドタイムを含む通電タイミングチャート 中間通電相が−電流の場合におけるU相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同V相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同V相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同U相電流の上アームから下アームへの移行状態図 中間通電相が+電流の場合におけるU相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同V相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同V相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同U相電流の上アームから下アームへの移行状態図 中間通電相が−電流の場合におけるキャリア周期内左側で検出される直流電流の詳細波形図 同キャリア周期内右側で検出される直流電流の詳細波形図 中間通電相が+電流の場合におけるキャリア周期内左側で検出される直流電流の詳細波形図 同キャリア周期内右側で検出される直流電流の詳細波形図 キャリア周期内左側の通電補正を、中間通電相の電流の向きにより選択するフローチャート キャリア周期内右側の通電補正を、中間通電相の電流の向きにより選択するフローチャート 本発明の実施の形態2に係るインバータ装置一体型電動圧縮機の断面図 電源ラインの電流センサで相電流を検出するインバータ装置とその周辺の電気回路図 3相変調の最大変調10%における各相の変調を示す波形図 相電流検出のための通電補正を示す説明図 通電補正をしない場合の相電流変化説明図 通電補正をする場合の相電流変化説明図 相電流変化説明用の第1の電気回路図 相電流変化説明用の第2の電気回路図
符号の説明
1 バッテリー
2 スイッチング素子
3 ダイオード
4 固定子巻線
5 磁石回転子
6 電流センサ
7 制御回路
10 インバータ回路
11 センサレスDCブラシレスモータ
20 インバータ装置
40 電動圧縮機

Claims (10)

  1. 直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子を備えたインバータ回路と、前記直流電源と前記インバータ回路間の電流を検出する電流センサと、前記インバータ回路にPWM変調の通電により交流電流をモータへ出力させるとともに、前記通電に補正をして前記電流センサにより相電流を検出する制御回路とを備えたインバータ装置において、前記制御回路は、通電期間が中間の相における前記インバータ回路と前記モータ間の電流の向きにより、前記補正を調節する制御を行うことを特徴とするインバータ装置。
  2. 前記補正は、前記制御回路が、前記上アームスイッチング素子ひとつもしくはふたつにON信号を出力する時間を、前記電流センサにより相電流を検出するために最小限必要な時間以上確保することであり、通電期間が中間の相における前記インバータ回路と前記モータ間の電流の向きにより前記補正を調節する請求項1に記載のインバータ装置。
  3. 前記電流の向きは、モータへの電流の位相により判定する請求項1または請求項2に記載のインバータ装置。
  4. 前記電流の向きは、モータへの印加電圧の位相により判定する請求項1または請求項2に記載のインバータ装置。
  5. 前記PWM変調が小さい場合に前記制御が適用される請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  6. 前記モータの低回転時に前記制御が適用される請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  7. 前記PWM変調は3相変調である請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  8. 電動圧縮機のモータを駆動する請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  9. 前記電動圧縮機に搭載される請求項8に記載のインバータ装置。
  10. 車両に搭載される請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
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