JP5228387B2 - インバータ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、直流電源からの直流電流の平均値、実効値を算出するインバータ装置に関するものである。
従来、直流電源からの直流電流の平均値を算出する方法として、直流電源からインバータ装置への電源ラインに電流センサを設け、この直流電流を検出して、抵抗とコンデンサにより積分する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図33にインバータ装置とその周辺の電気回路を示す。インバータ装置22の制御回路14は、回転数指令信号(図示せず)等に基づき、インバータ回路10を構成するスイッチング素子2を制御し、バッテリー1からの直流電圧をPWM変調でスイッチングすることにより、交流電流をモータ11を構成する固定子巻線4へ出力する。スイッチング素子2について、上アームスイッチング素子をU,V,W、下アームスイッチング素子をX,Y,Zと定義する。スイッチング素子2としては、トランジスタ、IGBT等が用いられる。インバータ回路10を構成するダイオード3は、固定子巻線4に流れる電流の還流ルートとなる。
電流センサ6により検出される直流電流値は、オペアンプ15及び抵抗12とコンデンサ13で平均値に変換され、制御回路14へ伝達される。そして、バッテリー1の電圧との積から、インバータ装置22の消費電力の算出に用いられる。消費電力算出は、直流電源であるバッテリー1の負荷即ちインバータ装置22の消費電力のモニタ及び消費電力制限を行う上で不可欠である。
また、電流センサ6により検出される直流電流のピーク値は、オペアンプ15を経由し、制御回路14へ伝達される。そして、スイッチング素子2等を保護するための判断などに用いられる。
特開平7−67248号公報(第5頁、第1図、第2図)
上記直流電源からの直流電流の平均値を算出する方法においては、電流センサとオペアンプ以外に、抵抗とコンデンサによる積分回路、制御回路内マイコンの平均電流入力用A/Dポートが必要であり、小型化、信頼性向上の課題となる。また、抵抗の抵抗値、コンデンサの容量値のばらつき、温度変化が影響する。更には、抵抗とコンデンサによる積分値と実際の平均電流との相関も求めておく必要があり、精度向上の課題となる。また、実効値は検出できない。
インバータ回路と負荷(モータ)との間に、負荷電流(モータの相電流)を検出する電流センサを備えるインバータ装置においては、直流電源からの直流電流は測定できない。そのため、平均電流が求められず、直流電源の消費電力の算出ができない。相電流からモータへの交流電力を演算することはできるが、電流と電圧との位相差、PWM電圧の演算などが必要であり、制御回路を構成するマイコンの演算負担が過大になる。また、交流電力を演算し直流電力の代用とした場合、インバータ装置の消費電力が含まれず不正確になる。
下アームスイッチング素子と直流電源(バッテリー)との間に、相電流を検出するためのシャント抵抗を備えるインバータ装置においては、直流電源からの直流電流は測定できない。そのため、上記と同様の課題が発生する。
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、高い精度で直流電流の平均値、実効値を算出できる、信頼性が高く小型であるインバータ装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のインバータ装置は、直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子とを備えたインバータ回路と、直流電源とインバータ回路間に電流検出器と、スイッチング素子を制御して交流電流をモータへ出力させ、電流センサにより電流を検出する制御回路とを備え、制御回路が、上アームスイッチング素子のうち一つのみにON信号を出力している時間と当該時間に電流検出器により検出される電流値との積、及び、上アームスイッチング素子のうち二つのみにON信号を出力している時間と当該時間に電流検出器により検出される電流値との積とに基づいて、直流電源との間に流れる直流電流の平均値、実効値を算出するに際し、ON信号を出力している時間は実際に出力している時間より所定値小さくして算出するものである。
上記構成により、抵抗とコンデンサによる積分回路、制御回路内マイコンの平均電流入力用A/Dポートを設けるが必要なく、直流電流の平均値、更には実効値の算出が可能となる。従って、高い精度で直流電流の平均値、実効値を算出できる、信頼性が高く小型であるインバータ装置を実現できる。
本発明のインバータ装置は、小型で信頼性が高く、高い精度で直流電流の平均値、実効値を算出できる。
第1の発明は、直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子とを備えたインバータ回路と、直流電源とインバータ回路間に電流検出器と、スイッチング素子を制御して交流電流をモータへ出力させ、電流センサにより電流を検出する制御回路とを備え、制御回路が、上アームスイッチング素子のうち一つのみにON信号を出力している時間と当該時間に電流検出器により検出される電流値との積、及び、上アームスイッチング素子のうち二つのみにON信号を出力している時間と当該時間に電流検出器により検出される電流値との積とに基づいて、直流電源との間に流れる直流電流の平均値を算出するに際し、ON信号を出力している時間は実際に出力している時間より所定値小さくして算出するものである。
上記構成により、抵抗とコンデンサによる積分回路、制御回路内マイコンの平均電流入力用A/Dポートを設けるが必要なく、直流電流の平均値の算出が可能となる。従って、高い精度で直流電流の平均値を検出できる、信頼性が高く小型であるインバータ装置を実現できる。
第2の発明は、第1の発明のインバータ装置において、所定値は、制御回路がスイッチング素子にON信号を出力した後、当該スイッチング素子のONが完了するまでの遅延時間とするものである。これにより、実際の電流の挙動に則しての平均電流算出ができる。
第3の発明は、第2の発明のインバータ装置において、中間通電相の電流の向きがモータから流れ出る方向の場合、上アームスイッチング素子1つのみにON信号を出力している時間を前記遅延時間小さくして算出し、中間通電相の電流の向きがモータへ流れ込む方向の場合、上アームスイッチング素子2つのみにON信号を出力している時間を前記遅延時間小さくして算出するものである。これにより、実際の電流の挙動に則して、更に正確な平均電流算出ができる。
第4の発明は、第1乃至第3の発明のインバータ装置において、上アームスイッチング素子のうち1つのみがONしている時間を下アームスイッチング素子のうち2つのみがONしている時間に、上アームスイッチング素子のうち2つのみがONしている時間を下アームスイッチング素子のうち1つのみがONしている時間に、それぞれ置き換えるものである。これにより、適宜参照が容易な時間を選択することができるので、直流電流の平均値算出が容易になる。
第5の発明は、第1乃至第4の発明のインバータ装置において、直流電源とインバータ回路間の電流検出器に代わり、下アームスイッチング素子と直列に電流検出器が備えられるものである。これにより、電流検出方式の異なるインバータ装置にも、直流電流の平均値算出を適用できる。
第6の発明は、第1乃至第4の発明のインバータ装置において、直流電源とインバータ回路間の電流検出器に代わり、インバータ回路とモータとの間に電流検出器が備えられるものである。これにより、電流検出方式の異なるインバータ装置にも、直流電流の平均値算出を適用できる。
第7の発明は、第1乃至第6の発明のインバータ装置において、直流電流の平均値に代わり実効値を算出するものである。これにより、直流電源の内部抵抗、直流電源ラインの素子による消費電力、発熱などを算出することができる。
第8の発明は、第1乃至第7の発明のインバータ装置において、電動圧縮機のモータを駆動するものである。直流電源からの消費電力を正確に算出できるので、空調の省エネ運転に寄与することができる。
第9の発明は、第8の発明のインバータ装置において、電動圧縮機に搭載されるものである。電動圧縮機に搭載されるインバータ装置は、取付スペースに制約があり小型化が必要で、モータからの振動に対して耐振性が必要である。そのため、抵抗、コンデンサ、マイコンのA/Dポート等は不要であり、小型軽量化信頼性向上に寄与することができる本インバータ装置は有用である。
第10の発明は、第1乃至第9の発明のインバータ装置において、車両に搭載するものである。車両用においては、搭載スペースに制約があり小型化が必要で、走行による振動に対する耐振性も必要である。そのため、抵抗、コンデンサ、マイコンのA/Dポート等は不要であり、小型軽量化信頼性向上に寄与することができる本インバータ装置は有用である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインバータ装置20とその周辺の電気回路である。インバータ装置20の制御回路7は、電源ラインに設けられた電流センサ6からの電圧により電流を検出する。この電流値から相電流値を求める。そして、センサレスDCブラシレスモータ11(以降モータ11と称す)を構成する磁石回転子5による固定子巻線4の誘起電圧を演算し、磁石回転子5の位置検出を行う。この位置検出、回転数指令信号(図示せず)等に基づき、インバータ回路10を構成するスイッチング素子2を制御し、バッテリー1からの直流電圧をPWM変調でスイッチングすることにより、正弦波状の交流電流をモータ11を構成する固定子巻線4へ出力する。
インバータ回路10を構成するダイオード3は、固定子巻線4に流れる電流の循環ルートとなる。スイッチング素子2について、上アームスイッチング素子をU、V、W、下アームスイッチング素子をX、Y、Zと定義し、また、各スイッチング素子U、V、W、X、Y、Zに対応するダイオードを、3U、3V、3W、3X、3Y、3Zと定義する。
電流センサ6は、ホール素子を用いた電流センサ、シャント抵抗など、瞬時ピーク電流が検出できるものであれば良い。また、電源ラインのプラス側に設けても良い。シャント抵抗ならば、小型化耐振性向上が実現し易い。制御回路7は、上アームスイッチング素子U、V、W、下アームスイッチング素子X、Y、Zと、ドライブ回路などを介して接続線18により接続されており、各スイッチング素子を制御している。スイッチング素子2がIGBT、パワーMOSFETの場合はゲート電圧を、パワートランジスタの場合はベース電流を制御する。
以降、電流センサ6に流れる電流とスイッチング素子のONOFFのタイミング関係を調べ、電流の平均値演算について考察する。図2に、最大変調50%の3相変調の波形を、U相端子電圧41、V相端子電圧42、W相端子電圧43、中性点電圧29に関し示す。これら端子電圧即ち印加電圧の位相と相電流の位相とは、ほぼ等しいと仮定する。図2において−表示した位相においては、V相の電流は、モータ11から流れ出る。モータ11から流れ出る電流の向きを−方向と定義する。+表示した位相においては、V相の電流は、モータ11へ流れこむ。モータ11へ流れこむ電流の向きを+方向と定義する。−表示した位相、+表示した位相双方において、U相は+電流、W相は−電流である。
図3は、1キャリア内(キャリア周期)での上アームスイッチング素子U、V、W、下アームスイッチング素子X、Y、Zの通電の一例であり、制御回路7から各スイッチング素子を制御するONOFF信号を示す。これは、一般的に、マイコンのタイマ機能により具現化される。この場合、図2において−(マイナス)表示した位相、+表示した位相近辺120度前後での通電である。キャリア周期内で、通電期間が最大の相を最大通電相(図3の場合U相)、中間の相を中間通電相(図3の場合V相)、最小の相を最小通電相(図3の場合W相)と定義する。通電期間として、(a)、(b)、(c)、(d)の4種類がある。
最初に、図2において−表示した位相において考察する。中間通電相V相の電流は、−方向である。U相の電流iUが最大電流になる。通電期間(a)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがOFF、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがONである。図4に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、下アームスイッチング素子Xと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV及びW相電流iWがそれぞれ、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Y及びZへ流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れない。
通電期間(b)においては、上アームスイッチング素子UがON、下アームスイッチング素子Y、ZがONである。図5に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV及びW相電流iWがそれぞれ、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Y及びZへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、U相の電流iUが流れ検出される。
通電期間(c)においては、上アームスイッチング素子U、VがON、下アームスイッチング素子ZがONである。図6に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iVは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Vと並列のダイオードへ流れ出ている。W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、W相の電流iWが流れ検出される。
通電期間(d)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがON、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがOFFである。図7に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iV、W相電流iWはそれぞれ、固定子巻線4から上アームスイッチング素子V、Wと並列のダイオードに流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れない。
図8に、上記図4〜図7に基づき、図2上−表示した位相における直流電流の変化を示す。通電期間(b)においては最大電流であるU相の電流iUが、通電期間(c)においては、W相の電流iWが電流センサ6に流れる。
次に、図2において+表示した位相において考察する。中間通電相V相の電流は、+方向である。W相の電流iWが最大電流になる。通電期間(a)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがOFF、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがONである。図9に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVがそれぞれ、下アームスイッチング素子X、Yと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れない。
通電期間(b)においては、上アームスイッチング素子UがON、下アームスイッチング素子Y、ZがONである。図10に、このときの電流の流れを示す。U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れ、V相電流iVは下アームスイッチング素子Yと並列のダイオードから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、U相の電流iUが流れる。
通電期間(c)においては、上アームスイッチング素子U、VがON、下アームスイッチング素子ZがONである。図11に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVは、それぞれ、上アームスイッチング素子U、Vから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から下アームスイッチング素子Zへ流れ出ている。よって、電流センサ6には、W相の電流iWが流れる。
通電期間(d)においては、上アームスイッチング素子U、V、W全てがON、下アームスイッチング素子X、Y、Z全てがOFFである。図12に、このときの電流の流れを示す。U相電流iU、V相電流iVは、それぞれ、上アームスイッチング素子U、Vから固定子巻線4へ流れ、W相電流iWは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Wと並列のダイオードに流れ出ている。よって、電流センサ6に電流は流れない。
図13に、上記図9〜図12に基づき、図2上+表示した位相における直流電流の変化を示す。通電期間(b)においてはU相の電流iUが、通電期間(c)においては、最大電流であるW相の電流iWが電流センサ6に流れる。通電期間(b)においてはU相の電流iU、通電期間(c)においてはW相の電流iWが流れることは、図8と同じである。
上記図4〜図13の考察により、上アームスイッチング素子U、V、WのON、OFF状態で電流センサ6に流れる相電流が特定されることが分かる。即ち、1相のみON時はその相の電流、2相ON時は残りの相の電流が流れる。3相ON時及び3相OFF時は流れない。
従って、制御回路7からの各スイッチング素子を制御するONOFF信号と各スイッチング素子のONOFFは、進み遅れなく一致している場合、制御回路7は、電流センサ6からの電流信号と、各スイッチング素子を制御するONOFF信号に基づく当該電流の流れる時間とから、電流の平均値を演算できることが分かる。
然しながら、実際には、制御回路7からの各スイッチング素子を制御するONOFF信号と各スイッチング素子のONOFFは、回路特性などにより、一致しない。また、素子の立上り、立下り特性、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子との間のデッドタイムなどがある。そのため、これらを考慮する必要がある。
以下、これらについて詳細に考察する。図3の通電タイミングチャートにデッドタイムを盛り込んだものを、図14に示す。このタイミングチャートにスイッチング素子のON時間tn、OFF時間tfも考慮し、図8、図13に示す直流電流の変化を以下に示す。
最初に、図2において−(マイナス)表示した位相において即ち図8に示す直流電流について考察する。中間通電相V相の電流iVは、−方向である。図15に、U相電流iUの下アームから上アームへの移行を示す。上側にスイッチングの時間関係を、下側にその時間関係における回路素子に流れる電流を示す。下アームスイッチング素子XへのOFF信号以前において、電流は図4の状態にある。下アームスイッチング素子XへOFF信号が出された時点で、U相電流iUは下アームスイッチング素子Xと並列のダイオード3Xから固定子巻線4へ流れている。回路図において、上アーム側は機能していないので、省略している。下アームスイッチング素子XのOFF時間tf後においても、上アームスイッチング素子UはOFFであるため、U相電流iUはダイオード3Xから固定子巻線4へ流れている。回路図において、下アームスイッチング素子Xは機能していないので、省略している。
下アームスイッチング素子XへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、上アームスイッチング素子UへON信号が出される。ダイオード3Xに流れるU相電流iUは、上アームスイッチング素子Uへ移行を始め、上アームスイッチング素子UのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図5の状態となる。
図16に、V相電流iVの下アームから上アームへの移行を示す。下アームスイッチング素子YへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは、固定子巻線4から下アームスイッチング素子Yへ流れている。V相電流iVは、上アームスイッチング素子Vと並列のダイオード3Vへ移行を始め、下アームスイッチング素子YのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図6の状態となる。デッドタイムtdは短絡防止のため、OFF時間tfより長く設定される。そのため、下アームスイッチング素子YへのOFF信号からデッドタイムtd後には移行完了している。
図17に、W相電流iWの下アームから上アームへの移行を示す。図16のV相電流iVの場合と同様であり、W相電流iWは、上アームスイッチング素子Wと並列のダイオード3Wへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図7の状態となる。
図18に、W相電流iWの上アームから下アームへの移行を示す。上アームスイッチング素子WへのOFF信号以前、電流は図7の状態にある。上アームスイッチング素子WへOFF信号が出された時点で、W相電流iWは固定子巻線4から上アームスイッチング素子Wと並列のダイオード3Wへ流れ出ている。回路図において、下アーム側は機能していないので、省略している。上アームスイッチング素子WのOFF時間tf後においても、下アームスイッチング素子ZはOFFであるため、W相電流iWは固定子巻線4からダイオード3Wへ流れ出ている。回路図において、上アームスイッチング素子Wは機能していないので、省略している。
上アームスイッチング素子WへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、下アームスイッチング素子ZへON信号が出される。ダイオード3Wに流れるW相電流iWは、下アームスイッチング素子Zへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図6の状態となる。
図19に、V相電流iVの上アームから下アームへの移行を示す。図18のW相電流iWの場合と同様であり、下アームスイッチング素子YのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図5の状態となる。
図20に、U相電流iUの上アームから下アームへの移行を示す。上アームスイッチング素子UへOFF信号が出された時点で、U相電流iUは、上アームスイッチング素子Uから固定子巻線4へ流れている。U相電流iUは、下アームスイッチング素子Xと並列のダイオード3Xへ移行を始め、上アームスイッチング素子UのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図4の状態となる。
次に、図2において+表示した位相において即ち図13に示す直流電流について考察する。中間通電相V相の電流iVは、+方向である。図21に、U相電流iUの下アームから上アームへの移行を示す。図15と比較し、U相電流iUの電流の大きさは異なるが、電流の向きは同じであるため、タイミング関係は図15と同じである。下アームスイッチング素子XへのOFF信号以前、電流は図9の状態にある。また、上アームスイッチング素子UのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図10の状態となる。
図22に、V相電流iVの下アームから上アームへの移行を示す。この場合、図16と比較し、V相電流iVの向きが逆になるため、図16とはタイミング関係が異なる。タイミング関係は、相及び電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、図15、図21と同じである。下アームスイッチング素子YへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは下アームスイッチング素子Yと並列のダイオード3Yから固定子巻線4へ流れている。回路図において、上アーム側は機能していないので、省略している。下アームスイッチング素子YのOFF時間tf後においても、上アームスイッチング素子VはOFFであるため、V相電流iVはダイオード3Yから固定子巻線4へ流れている。回路図において、下アームスイッチング素子Yは機能していないので、省略している。
下アームスイッチング素子YへのOFF信号から、デッドタイムtd後に、上アームスイッチング素子VへON信号が出される。ダイオード3Yに流れるV相電流iVは、上アームスイッチング素子Vへ移行を始め、上アームスイッチング素子VのON時間tn後に移行完了する。この時点において、電流は図11の状態となる。
図23に、W相電流iWの下アームから上アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図17と同じである。W相電流iWは、上アームスイッチング素子Wと並列のダイオード3Wへ移行を始め、下アームスイッチング素子ZのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図12の状態となる。
図24に、W相電流iWの上アームから下アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図18と同じである。下アームスイッチング素子ZのON時間tn後に移行完了する。この時点において図11の状態となる。
図25に、V相電流iVの上アームから下アームへの移行を示す。V相電流iVの向きが逆になるため、図19とはタイミング関係が異なる。タイミング関係は、相及び電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、図20と同じである。上アームスイッチング素子VへOFF信号が出された時点で、V相電流iVは、上アームスイッチング素子Vから固定子巻線4へ流れている。V相電流iVは、下アームスイッチング素子Yと並列のダイオード3Yへ移行を始め、上アームスイッチング素子VのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図10の状態となる。デッドタイムtdは短絡防止のため、OFF時間tfより長く設定される。そのため、上アームスイッチング素子VへのOFF信号からデッドタイムtd後には移行完了している。
図26に、U相電流iUの上アームから下アームへの移行を示す。電流の大きさは異なるが、電流の向きが同じであるため、タイミング関係は図20と同じである。上アームスイッチング素子UのOFF時間tf後に移行完了する。この時点において、電流は図9の状態となる。
図27に、上記図15、図16、図17により、図8(中間通電相V相の電流iVは−方向)におけるキャリア周期内での直流電流変化の左側(前半)詳細を示す。制御回路7の各スイッチング素子を制御するONOFF信号と直流電流の関係である。上アームスイッチング素子UへのON信号から暫くの間、直流電流(U相電流iU)に変化がないが、これは制御回路7からスイッチング素子Uまでのフィルタ回路、ドライブ回路などによる遅延に起因している。下アームスイッチング素子Y、ZへのOFF信号から暫くの間、直流電流に変化がないのも同様である。この遅延時間にスイッチング素子の立ち上がり時間を含め、スイッチング素子のON時間tnとしている。前述のOFF時間tfも同様である。
図28に、図18、図19、図20により、図8におけるキャリア周期内直流電流変化の右側(後半)詳細を示す。図29に、図21、図22、図23により、図13(中間通電相V相の電流iVは+方向)におけるキャリア周期内直流電流変化の左側詳細を示す。図30に、図24、図25、図26により、図13におけるキャリア周期内直流電流変化の右側詳細を示す。
上記図27〜図30に示されるように、制御回路7が、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間とU相電流iUとの積と、上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間とW相電流iWとの積との和を、所定時間(キャリア周期の半分など)で割ることにより平均値を算出できる。
しかしながら、制御回路7が、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間と上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間との合計時間は、U相電流iUの流れる時間とW相電流iWの流れる時間との合計時間より長くなっている。これは、上記ON時間tn、OFF時間tfに起因している。また、電流値の検出は、ON時間tn、OFF時間tfが経過し、電流値が安定してから行う必要がある。
従って、平均値の算出においては、制御回路7が、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間と上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間との合計時間を所定値削減する必要がある。これにより、精度を向上できる。
(実施の形態2)
上記所定値としては、図27〜図30において、凡そON時間tn(OFF時間tf)が適当である。図27、図29においては、上アームスイッチング素子のONを基準に、両端が立上り及び立ち下がりになっており、左端右端でそれぞれ、ON時間tn(OFF時間tf)の1/2を削減すると、電流の流れる時間として適切になる。図28、図30においては、上アームスイッチング素子のOFFに代わり下アームスイッチング素子のONを基準にすると、両端が立上り及び立ち下がりになっており、左端右端でそれぞれ、ON時間tn(OFF時間tf)の1/2を削減すると、電流の流れる時間として適切になる。上アームスイッチング素子のOFFと下アームスイッチング素子のONとはデッドタイムtdシフトしているだけである。
(実施の形態3)
中間通電相V相の電流の向きが−方向の場合である図27、図28においては、図から分かるように、上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間はそのままで、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間を、ON時間tn(OFF時間tf)削減すると、電流の流れる時間として適切になる。一方、中間通電相V相の電流の向きが−方向の場合である図29、図30においては、図から分かるように、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間はそのままで、上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間を、ON時間tn(OFF時間tf)削減すると、電流の流れる時間として適切になる。
中間通電相が+電流かどうかの判定は、ひとつ前のキャリア周期における中間通電相の電流から推定できる。また、制御回路7はキャリア周期単位で相電流を検出しているため、演算によりその位相を把握できている。そのため、相電流を検出すべきキャリア周期における中間通電相の電流が+電流かどうか推定できる。電流の位相に代わり、印加電圧の位相でほぼ近似できるとして代用も可能である。例えば、図2において、位相120度を境に、+電流と−電流が反転する。電流がスイッチング素子に流れているか、並列のダイオードに流れているかにより判定することもできる。
(実施の形態4)
図27〜図30において、上アームスイッチング素子U1つのみがONしている時間は、下アームスイッチング素子Y及びZ2つのみがONしている時間に等しい。上アームスイッチング素子U及びV2つのみがONしている時間は、下アームスイッチング素子Z1つのみがONしている時間に等しい。従って、それぞれ置き換えることができる。
(実施の形態5)
図31に本実施の形態におけるインバータ装置とその周辺の回路を示す。U相下アームスイッチング素子Xとアース間にシャント抵抗25、V相下アームスイッチング素子Yとアース間にシャント抵抗26、W相下アームスイッチング素子Zとアース間にシャント抵抗27がそれぞれ設けられている。インバータ装置21の制御回路24は、これら各シャント抵抗からの電圧により、各相の相電流を検出する。
直流電源ラインの電流の平均値を演算するにおいて、図27〜図30における電流値は、上記各シャント抵抗により検出することになる。U相の相電流iUはシャント抵抗25により、W相の相電流iWはシャント抵抗27により、それぞれ検出される。U相の相電流iUがシャント抵抗25により検出できない場合、例えば図5の場合、V相の相電流iV(シャント抵抗26)とW相の相電流iW(シャント抵抗27)との和により求められる。
(実施の形態6)
インバータ回路10とモータ11との間に電流センサを2個設ける場合(図示せず)についても、実施の形態5と同様である。例えばU相とV相に設ける場合、図27〜図30における電流値は、U相の相電流iUは当該電流センサにより検出される。そして、W相の相電流iWは、U相の相電流iUとV相の相電流iV(当該電流センサにより検出される)との和により求められる。
(実施の形態7)
実効値の演算については、電流値を2乗することなど異なるが平均値と同様に算出できる。図27〜図30の例においては、上アームスイッチング素子U1つのみにON信号を出力する時間とU相電流iUの2乗との積と、上アームスイッチング素子U及びV2つのみにON信号を出力する時間とW相電流iWの2乗との積との和を、所定時間(キャリア周期の半分など)で割り、1/2乗することにより実効値を算出できる。
(実施の形態8)
図32に、電動圧縮機40の右側にインバータ装置20を密着させて取り付けた図を示す。金属製筐体32の中に圧縮機構部28、モータ11等が設置されている。冷媒は、吸入口33から吸入され、圧縮機構部28(この例ではスクロール)がモータ11で駆動されることにより、圧縮される。この圧縮された冷媒は、モータ11を通過する際にモータ11を冷却し、吐出口34より吐出される。
インバータ装置20は電動圧縮機40に取り付けられるように、ケース30を使用している。発熱源となるインバータ回路部10は、低圧配管38を介して低圧冷媒で冷却される。電動圧縮機40の内部でモータ11の巻き線に接続されているターミナル39は、インバータ回路部10の出力部に接続される。保持部35でインバータ装置23に固定される接続線36には、バッテリー1への電源線と回転数信号を送信するエアコンコントローラ(図示せず)との信号線がある。
このようなインバータ装置一体型電動圧縮機では、インバータ装置20が小さいこと、信頼性が高いことが必要になる。そのため、本発明の実施の形態として好適である。また、直流電源からの消費電力を正確に算出できるので、空調の省エネ運転に寄与することができる。
尚、上記各実施の形態において、図2における位相120度前後の場合について考察したが、他の場合についても同様に考察できる。平均値、実効値の演算期間をキャリア周期の半分としたが、1周期その他でも良い。直流電源をバッテリーとしたが、これに限るものではなく、商用交流電源を整流した直流電源などでもよい。負荷としてモータの例を示したが、交流電源を用いる各種機器、トランスなどにも適用できる。モータ11をセンサレスDCブラシレスモータとしたが、リラクタンスモータ、誘導モータ等にも適用できる。正弦波駆動以外にも適用できる。また、2相変調においても適用できる。
以上のように、本発明にかかるインバータ装置は、積分回路(抵抗とコンデンサ)、A/Dポート(制御回路内マイコンの平均電流入力用)を設けることなく、高い精度で直流電流の平均値を算出できる。また、小型で信頼性が高いので、各種民生用製品、各種産業用機器、各種移動体用機器に適用できる。負荷としてモータ以外の交流機器にも適用可能である。
本発明の実施の形態1に係るインバータ装置とその周辺の電気回路図 3相変調の最大変調50%における各相の変調を示す波形図 キャリア周期における通電タイミングチャート 中間通電相が−電流の場合における通電期間(a)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(b)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(c)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(d)の電流経路を示す電気回路図 同キャリア周期内で検出される直流電流波形図 中間通電相が+電流の場合における通電期間(a)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(b)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(c)の電流経路を示す電気回路図 同通電期間(d)の電流経路を示す電気回路図 同キャリア周期内で検出される直流電流波形図 デッドタイムを含む通電タイミングチャート 中間通電相が−電流の場合におけるU相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同V相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同V相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同U相電流の上アームから下アームへの移行状態図 中間通電相が+電流の場合におけるU相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同V相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の下アームから上アームへの移行状態図 同W相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同V相電流の上アームから下アームへの移行状態図 同U相電流の上アームから下アームへの移行状態図 中間通電相が−電流の場合におけるキャリア周期内左側直流電流の詳細波形図 同キャリア周期内右側直流電流の詳細波形図 中間通電相が+電流の場合におけるキャリア周期内左側直流電流の詳細波形図 同キャリア周期内右側直流電流の詳細波形図 本発明の実施の形態5に係るインバータ装置とその周辺の電気回路図 本発明の実施の形態8に係るインバータ装置一体型電動圧縮機の断面図 従来の直流電流の平均値を検出するインバータ装置の電気回路図
符号の説明
1 バッテリー
2 スイッチング素子
3 ダイオード
4 固定子巻線
5 磁石回転子
6 電流センサ
7 制御回路(インバータ装置20)
10 インバータ回路
11 センサレスDCブラシレスモータ
20 インバータ装置(直流電源ラインに電流センサ)
21 インバータ装置(下アームに電流検出用シャント抵抗)
24 制御回路(インバータ装置21)
25 電流検出用下アームシャント抵抗(U相)
26 電流検出用下アームシャント抵抗(V相)
27 電流検出用下アームシャント抵抗(W相)
40 電動圧縮機

Claims (8)

  1. 直流電源のプラス側に接続される上アームスイッチング素子とマイナス側に接続される下アームスイッチング素子とを備えたインバータ回路と、前記直流電源と前記インバータ回路間に電流検出器と、前記スイッチング素子を制御して交流電流をモータへ出力させ、前記電流検出器により電流を検出する制御回路とを備えたインバータ装置において、前記制御回路が、上アームスイッチング素子のうち一つのみにON信号を出力している時間と当該時間に前記電流検出器により検出される電流値との積、及び、上アームスイッチング素子のうち二つのみにON信号を出力している時間と当該時間に前記電流検出器により検出される電流値との積とに基づいて、前記直流電源との間に流れる直流電流の平均値を算出するように構成し、当該平均値の算出に用いる前記ON信号を出力している時間は、実際に出力している時間に対し、前記制御回路がスイッチング素子にON信号を出力した後、当該スイッチング素子のONが完了するまでの遅延時間小さくし、当該小さく設定する時間は、中間通電相の電流の向きがモータから流れ出る方向の場合、上アームスイッチング素子1つのみにON信号を出力している時間とし、中間通電相の電流の向きがモータへ流れ込む方向の場合、上アームスイッチング素子2つのみにON信号を出力している時間としたインバータ装置。
  2. 上アームスイッチング素子のうち1つのみがONしている時間を下アームスイッチング素子のうち2つのみがONしている時間に、上アームスイッチング素子のうち2つのみがONしている時間を下アームスイッチング素子のうち1つのみがONしている時間に、それぞれ置き換えた請求項1に記載のインバータ装置。
  3. 前記電流検出器に代わり、下アームスイッチング素子と直列に電流検出器が備えられる請求項1または2に記載のインバータ装置。
  4. 前記電流検出器に代わり、インバータ回路とモータとの間に電流検出器が備えられる請求項1または2に記載のインバータ装置。
  5. 直流電流の平均値に代わり実効値を算出する請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  6. 電動圧縮機のモータを駆動する請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
  7. 前記電動圧縮機に搭載される請求項に記載のインバータ装置。
  8. 車両に搭載される請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載のインバータ装置。
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