JP2007126715A - 高Mn鋼材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.01〜0.5%、Mn:15%を超え40%以下、Cr:0.5%以上10%未満、Al:0.005〜0.10%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.001%以上0.05%未満及びO(酸素):0.003%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、下記の(1)式で定義されるパラメータXが3.0%以下の化学組成を有する鋼材であって、鋼材中に含まれるオーステナイト結晶粒界の厚み方向の平均切片長さが40μm以下であるとともにεマルテンサイト量が体積分率で0.1〜30%の範囲であることを特徴とする高Mn鋼材。
X(%)=30×P+50×(S+N)+300×O ・・・・・・・(1)式
ここで、P、S、N及びOは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
【選択図】なし
Description
X(%)=30×P+50×(S+N)+300×O ・・・・・・・(1)式
ここで、P、S、N及びOは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
C:
Cは、オーステナイトの安定化を通じて、液化ガスタンクなど低温用鋼材に要求される強度を確保するのに有効な元素である。ただし、その含有量が0.01%未満ではこのような効果が乏しく、一方、Cの含有量が0.25%を超えるとCr炭化物がオーステナイト粒界へ析出して、母材の靱性や耐食性、さらには溶接熱影響部の低温靭性が劣化するおそれがある。したがって、C含有量は0.01〜0.25%の範囲とする。好ましい範囲は、0.05〜0.18%である。
Siは、脱酸のために有効な元素であり、また強度上昇に有効な元素である。ただし、0.01%未満では脱酸不足になる可能性があり、また0.5%を超えると延性および靱性の劣化をもたらすおそれがある。したがって、Si含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。好ましい範囲は、0.02〜0.3%である。
Mnは、オーステナイトの安定化を通じて、降伏応力の増加と低温靱性の向上に有効な元素である。ただし、15%以下の含有量では低温靭性の低下が生ずるだけでなく、α’マルテンサイトなどが析出して透磁率が上昇し、非磁性が失われたり、熱伝導度が増加したりする。また、40%を超えると加工性と靱性が劣化する。したがって、Mn含有量は15%を超え40%以下の範囲とする。好ましい範囲は20〜37%であり、さらに好ましい範囲は25〜35%である。
Crは、オーステナイトを安定化し、耐力を向上させる元素である。他の合金元素との関係で含有量が0.5%以上でこの効果がある。ただし、10%以上ではCr炭化物が粒界上に析出しやすくなり靱性を低下させるとともに、溶体化処理等の熱処理が必要になる。したがって、Cr含有量は0.5%以上10%未満の範囲とする。好ましい範囲は、1.5〜7%である。
Alは、鋼の脱酸と結晶粒の微細化による鋼の特性向上の作用を持つ元素である。ただし、0.005%未満では十分な効果が得られず、一方、0.10%を超えると靱性が劣化する。したがって、Al含有量は0.005〜0.10%の範囲とする。好ましい範囲は、0.01〜0.05%である。
P及びSは、ともに熱間加工性を損なう不純物元素である。オーステナイト鋼においては、P及びSの両元素の含有量を同時に低減することにより、単独に低減する場合よりも大きな母材および溶接熱影響部の靭性値の向上効果が得られる。そこで、Pの含有量は0.03%以下、そして、Sの含有量は0.01%以下とする。好ましくは、Pの含有量は0.01%以下、Sの含有量は0.003%以下である。
Nは、オーステナイトの安定化と耐力向上に有効な元素である。オーステナイトの安定化元素としてはCも用いられるが、CはCr炭化物の粒界析出による靱性劣化をもたらすのに対して、Nはこのような悪影響を及ぼさないだけでなく、高Mn鋼においては降伏応力増加効果がCより大きい。また、Nは窒化物形成元素と共存することによって、鋼中に微細な窒化物を分散させるという効果を有する。これらの効果を発現させるためには、Nの含有量は0.001%以上必要である。ただし、0.05%以上となると靱性の劣化が著しくなる。よって、Nは0.001%以上0.05%未満の範囲とする。好ましい範囲は、0.001〜0.03%である。
Oは、製鋼時に不可避的に混入するが、その含有量が多くなると鋼中の内質欠陥等の原因になり、鋼の特性を低下させる。Oの含有量が0.003%を超えると、低温靭性、特に溶接熱影響部の低温靭性が著しく低下するとともに、α’マルテンサイトが生成しやすくなり、透磁率などの磁気特性も劣化しやすくなる。したがって、Oの含有量は0.003%以下とする。好ましくは、0.002%以下である。なお、Oは少ないほどよいが、製造コストを考慮すれば、通常は0.0005%程度まで脱酸すれば十分である。
前述の(1)式、すなわち、X(%)=30×P+50×(S+N)+300×Oで定義されるパラメータX(ここで、P、S、N及びOは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。)は、母材靭性と溶接熱影響部の低温靭性を改善する観点から、特に−196℃におけるシャルピー特性を改善する観点から、その制御が必要なパラメータである。本発明における高Mn鋼材は、主にオーステナイト相からなるため、いわゆる劈開破壊を生じにくい材質ではあるが、劈開破壊を引き起こすα’マルテンサイトの生成、オーステナイト結晶粒界やオーステナイト結晶とεマルテンサイト結晶の境界の強度の低下又は酸・硫化物の生成によって、脆性破壊をもたらす場合がある。
高Mn系の鋼材で低温用材料としての十分低温靭性を付与させるためには、上記のパラメータXを3.0%以下に制御した上で、さらに板厚方向のオーステナイト結晶粒を実質的に細かくすることが極めて重要である。高Mn鋼ではオーステナイト中に板状及び帯状のマルテンサイトが生成するが、これらはオーステナイト粒の大きさによってその長さが決定されることから、オーステナイト結晶の粒径を制御する必要がある。本発明では圧延ままで良好な特性を得ることを目的としていることから、特に板厚方向の結晶組織の微細化を規定したものである。
高Mn鋼材中には、マルテンサイトとして、低合金鋼材に多く見られる体心立方晶(bcc)の結晶構造を有するα’マルテンサイトのほかに、高Mn鋼材に特徴的な六方晶(hcp)の結晶構造を有するεマルテンサイトが含まれている。鋼材中の各マルテンサイトの体積分率は次のようにX線強度を測定することによって、求めることができる。すなわち、通常のX線回折法によって試料のX線回折パターンを測定し、回折パターン上のオーステナイト(fcc)、α’マルテンサイト(bcc)及びεマルテンサイト(hcp)の回折強度比について、異方性による各回折面の強度比を補正することによって、各相の体積分率を計算することができる。
Cuは、オーステナイト地を強化し耐力の上昇に有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が3.0%を超えると加工性を劣化させるので、Cuを含有させる場合は、その含有量は3.0%以下とする。好ましい範囲は0.01〜3.0%であり、より好ましい範囲は0.2〜2.0%である。
Niはオーステナイトの安定化と靱性の向上に有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、10%を超えて含有させてもその効果は飽和するとともに、α’マルテンサイトが生成しやすくなって、溶接部靭性や透磁率が劣化する恐れがある。よって、Niを含有させる場合は、その含有量は10%以下とする。好ましい範囲は0.01〜5%、より好ましい範囲は、0.01〜1%である。
Moは、強度の上昇に効果があるだけでなく、Cr炭化物の粒界析出に起因する靱性の劣化を防止したり、鋼の強度を高めたりするのに有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が3.0%を超えるとその効果は飽和する。よって、Moを含有させる場合は、その含有量は3.0%以下とする。好ましい範囲は0.01〜2%である。
Nbは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.5%を超えると靱性が悪化する。よって、Nbを含有させる場合は、その含有量は0.5%以下とする。好ましい範囲は0.005〜0.5%であり、より好ましい範囲は0.01〜0.2%である。
Vは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が1.0%を超えると靱性が悪化する。よって、Vを含有させる場合は、その含有量は1.0%以下とする。好ましい範囲は0.01〜1.0%であり、より好ましい範囲は0.05〜0.3%である。
Tiは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.8%を超えると靱性が悪化する。よって、Tiを含有させる場合は、その含有量は0.8%以下とする。好ましい範囲は0.005〜0.3%であり、より好ましい範囲は0.008〜0.1%である。
Bは、オーステナイト粒界に偏析することにより粒界破壊を防止し耐力を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.003%を超えると靱性が悪化する。よって、Bを含有させる場合は、その含有量は0.003%以下とする。好ましい範囲は0.0005〜0.003%であり、より好ましい範囲は0.0005〜0.002%である。
Caは、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.01%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、Caを含有させる場合は、その含有量は0.01%以下とする。好ましい範囲は0.0003〜0.01%であり、より好ましい範囲は0.0003〜0.004%である。
Mgは、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.01%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、Caを含有させる場合は、その含有量は0.01%以下とする。好ましい範囲は0.0002〜0.01%であり、より好ましい範囲は0.0002〜0.002%である。
希土類元素(REM)は、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.05%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、REMを含有させる場合は、その含有量は0.05%以下とする。好ましい範囲は0.0002〜0.05%であり、より好ましい範囲は0.0003〜0.001%である。REMを含有させる場合は、LaやCeを主成分とするミッシュメタルを用いてもよい。なお、本発明でいう希土類元素とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、希土類元素の含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
一般に、高Mn鋼は炭素鋼や低合金鋼に比べて熱間加工性が劣るため、適正な条件で圧延を行う必要がある。適正な条件から外れると、鋼片若しくは鋼塊又は鋼板の表面に割れが生じるので、歩留の低下を招く。したがって、鋼片若しくは鋼塊の加熱条件及び圧延条件の厳密な管理が重要である。
上記の(B)の製造条件のうち、熱間圧延の圧延仕上温度を950〜800℃に変更した上で、熱間圧延を施した後の空冷に代えて、750〜600℃の温度範囲を2℃/sec以上の冷却速度にて加速冷却する。このように製造しても、鋼中にεマルテンサイト量が体積%にて0.1〜30%生成するので、強度と破壊抵抗力がともに優れた鋼板が得られる。この鋼板は、LNGタンクスカート材用に適した性質を有している。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.01〜0.5%、Mn:15%を超え40%以下、Cr:0.5%以上10%未満、Al:0.005〜0.10%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.001%以上0.05%未満及びO(酸素):0.003%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、下記の(1)式で定義されるパラメータXが3.0%以下の化学組成を有する鋼材であって、鋼材中に含まれるオーステナイト結晶粒界の厚み方向の平均切片長さが40μm以下であるとともにεマルテンサイト量が体積分率で0.1〜30%の範囲であることを特徴とする高Mn鋼材。
X(%)=30×P+50×(S+N)+300×O ・・・・・・・(1)式
ここで、P、S、N及びOは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。 - Feの一部に代えて、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Mo:3.0%以下、Nb:0.5%以下、V:1.0%以下、Ti:0.8%以下、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下及びREM:0.05%以下から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高Mn鋼材。
- 請求項1又は2で規定される化学組成を有する鋼片又は鋼塊を、950〜1200℃に加熱後、1000〜800℃の温度範囲における累積圧下量が30%以上であってかつ圧延仕上温度を950〜750℃とする熱間圧延を施した後、空冷することを特徴とする高Mn鋼材の製造方法。
- 請求項1又は2で規定される化学組成を有する鋼片又は鋼塊を、950〜1200℃に加熱後、1000〜800℃の温度範囲における累積圧下量が30%以上であってかつ圧延仕上温度を950〜800℃とする熱間圧延を施した後、750〜600℃の温度範囲を2℃/sec以上の冷却速度にて冷却することを特徴とする高Mn鋼材の製造方法。
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