JP6693217B2 - 極低温用高Mn鋼材 - Google Patents
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Description
C:0.001〜0.80%、
Mn:15.0〜35.0%、
S:0.0001〜0.01%、
Cr:0.01〜10.0%、
Ti:0.001〜0.05%、
N:0.0001〜0.10%、
O:0.001〜0.010%
を含有し、
P:0.02%以下、
に制限し、更に、
Si:0.001〜5.0%、
Al:0.001〜5.0%
の一方又は両方を含有し、更に、
Mg:0.01%以下、
Ca:0.01%以下、
REM:0.01%以下
の1種又は2種以上を合計で0.0002%以上含有し、
30C+0.5Mn+Ni+0.8Cr+1.2Si+0.8Mo≧25 ・・・ (式1)
O/S≧1 ・・・ (式2)
を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
オーステナイトの体積率が95%以上であり、
前記オーステナイトの結晶粒径が20〜200μmであり、
前記オーステナイトの結晶粒界における炭化物被覆率が50%以下である
ことを特徴とする極低温用高Mn鋼材。
ただし、Ni、Si、Moを含まない場合、上記(式1)ではこれらの項を0とする。
Nb:0.05%以下、
Ta:0.05%以下、
Zr:0.05%以下、
V:0.10%以下
の1種又は2種類以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の極低温用高Mn鋼材。
(3)更に、質量%で、
Cu:3.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Co:3.0%以下、
Mo:3.0%以下、
W:3.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の極低温用高Mn鋼材。
(4)更に、質量%で、
B:0.010%以下
を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の極低温用高Mn鋼材。
(5)更に、C、Si、Mn、P、S、Al、N、Cr、Cu、Ni、Co、Mo、Wの含有量が、
CI=−2C+0.8Si−0,2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)
+1.5(Cu+Ni+Co)+60N+0.8Al−90P−90S
≧6.5 ・・・ (式3)
を満足することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の極低温用高Mn鋼材。
ただし、Cu、Ni、Co、Mo、Wを含まない場合、上記(式3)ではこれらの項を0とする。
30C+0.5Mn+Ni+0.8Cr+1.2Si+0.8Mo≧25 ・・・ (式1)
大入熱HAZの粒径の粗大化を抑制するためには、Mg、Ca、REMの1種又は2種以上を添加して、鋼中に微細な酸化物や酸硫化物を生成させることが有効である。しかし、本発明者らは、O量に対してS量が過剰になると、酸硫化物の熱的安定性が低下し、高温に加熱されたHAZのオーステナイトの粒成長を抑制し得る有効なピン止め粒子とならないため、下記(式2)を満足する必要があるという知見を得た。
O/S≧1 ・・・ (式2)
Cは、オーステナイトを安定化させ、強度を高める重要な元素であり、0.001%以上を添加する。好ましくは、C量を0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。常温での強度が求められる場合、好適なC量は0.20%以上である。一方、C量が多すぎると、延性破壊の起点となるCr炭化物やセメンタイトの析出により、靱性が低下するため、上限を0.80%以下とする。好ましくはC量を0.70%以下、より好ましくは0.60%以下、更に好ましくは0.50%以下とする。
Mnは、オーステナイトを安定化させるために、15.0%以上を添加する。好ましくはMn量を17.0%以上、より好ましくは20.0%以上、更に好ましくは22.0%以上とする。一方、Mn量が35.0%を超えると、鋼材の耐食性の低下や溶接時のヒューム発生を招き、また、熱間加工性が低下して鋼材の表面に割れを生じる場合があるため、Mn量の上限を35.0%以下とする。好ましくはMn量を33.0%以下、より好ましくは30.0%以下とする。
Crは、オーステナイトを安定化させ、耐食性の向上に寄与し、また、固溶強化によって鋼材の強度を高める元素であり、0.01%以上を添加する。好ましくはCr量を0.10%以上、より好ましくは0.50%以上、更に好ましくは1.0%以上とする。一方、Cr量が10.0%を超えると、Cr炭化物を形成して靭性を劣化させるため、上限を10.0%以下とする。好ましくはCr量を8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、更に好ましくは5.0%以下とする。また、Cr炭化物の析出による応力腐食割れ(SCC)を抑制するためには、Cr≦0.3/C+2を満足するように添加することが好ましい。
Tiは、鋼中のNとTiNを形成する元素であり、TiNは、Ca、Mg、REMの酸化物や酸硫化物を析出核として生成する。Ca、Mg、REMの酸化物や酸硫化物とTiNとの複合析出物は、熱的安定性に優れ、HAZの粒径の粗大化抑制に寄与する。このような効果を得るには、0.001%以上のTiを添加することが必要である。好ましくはTi量を0.005%以上、より好ましくは0.010%以上とする。一方、Tiを過剰に添加すると、粗大なTiNが生成して、靱性を低下させるため、Ti量の上限を0.05%以下とする。好ましくはTi量の上限を0.040%以下、より好ましくは0.030%以下、更に好ましくは0.025%以下とする。
Nは、Ca、Mg、REMの酸化物や酸硫化物とTiNとの複合析出物を形成させて、HAZ靭性を向上させるために、含有量を0.0001%以上とする。また、Nは、オーステナイトの安定化や、特に低温での強化に有効な元素であり、好ましくはN量を0.0010%以上、より好ましくは0.0020%以上、更に好ましくは0.0030%以上とする。一方、N量が0.10%を超えると、強度の上昇や窒化物の影響により、靱性が劣化するため、上限を0.10%以下とする。好ましくはN量を0.03%以下とする。
Oは、Ca、Mg、REMの酸化物や酸硫化物を形成する元素であり、含有量を0.001%以上とする。一方、O量が0.010%を超えると、介在物による靭性の劣化が顕著になるため、上限を0.010%以下とする。好ましくはO量を0.0070%以下、より好ましくは0.0050%以下、更に好ましくは0.0030%以下とする。
Sは不純物であり、含有量が過剰であると、MnSが起点となって延性破壊を助長し、靱性を低下させるため、S量を0.01%以下に制限する。また、S量が過剰であると、Ca、Mg、REMの酸硫化物に過剰にSが固溶して熱的安定性が低下する場合があるため、上限を0.005%以下に制限することが好ましい。より好ましくはS量を0.003%以下、更に好ましくは0.002%以下とする。S量の下限値は、製鋼コストの観点から0.0001%とする。
Pは不純物であり、含有量が過剰であると結晶粒界にPが偏析し、粒界脆化によって靭性が低下するため、P量を0.02%以下に制限する。P量は0.015%以下が好ましく、より好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.008%以下とする。
Si及びAlは、通常、脱酸元素として添加したり、強化のために添加することが多いが、本発明では、Cr炭化物やセメンタイトの生成を抑制するために一方又は両方を添加する。Si及びAlの添加による炭化物の生成の抑制は、本発明者らが得た新たな知見であり、効果を得るために、Si量、Al量の下限を何れも0.001%以上とする。好ましくは、Si量、Al量を単独で、又は、両方の合計で、0.01%以上とする。一方、Si量、Al量の上限は、粗大な介在物の生成による靭性の低下を防止するため、何れも5.0%以下とする。Si量、Al量の好ましい上限は、何れも2.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
Mg、Ca、REMは、微細な酸化物や酸硫化物を形成し、母材やHAZの結晶粒径の粗大化を抑制する重要な元素であり、1種又は2種以上を添加する。効果を得るために、Mg量、Ca量、REM量を単独で、又は、2種以上の合計で、0.0002%以上とする。好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上とする。一方、Mg量、Ca量、REM量の上限は、粗大な介在物の生成による靭性の低下を防止するため、何れも0.010%以下とする。Mg量、Ca量、REM量の好ましい上限は、何れも0.0070%以下であり、より好ましくは0.0050%以下、更に好ましくは0.0040%以下とする。
Nb、Ta、Zr、Vは、炭化物や窒化物を形成し、析出強化によって強度の向上に寄与する元素であり、1種又は2種以上を添加することが好ましい。このうち、Zrは、鋼中にTiNと同様に、Ca、Mg、REMの酸化物や酸硫化物とZrNとの複合析出物を形成して、HAZの粒径の粗大化の抑制にも寄与する。Nb量、Ta量、Zr量、V量の下限は、何れも、0.005%以上が好ましい。一方、Nb量、Ta量、Zr量は0.05%、V量は0.10%を超えると、析出物の粗大化によって靱性が低下することがあるため、Nb量、Ta量、Zr量は何れも0.05%以下、V量は0.10%以下が好ましい。
Cuは、オーステナイトの安定化や強化、更にはCr炭化物やセメンタイトの析出の抑制に寄与する元素であり、0.01%以上の添加が好ましい。より好ましくはCu量を0.10%以上とする。一方、Cu量が3.0%を超えると熱間加工性が劣化することがあるため、上限は3.0%以下が好ましい。より好ましくはCu量を1.0%以下とする。
Ni及びCoは、オーステナイトの安定化や強化、更にはCr炭化物やセメンタイトの析出の抑制に寄与する元素であり、何れも0.01%以上の添加が好ましい。より好ましくはNi量、Co量を、何れも0.10%以上とする。一方、Ni、Coを過剰に添加すると、マルテンサイトが生成し易くなり、溶接部の靭性や透磁率が劣化する恐れがあるため、Ni量、Co量を何れも3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Ni量、Co量を何れも1.0%以下とする。
Mo及びWは、オーステナイトの安定化や強化、更にはCr炭化物やセメンタイトの析出の抑制に寄与する元素であり、何れも0.01%以上の添加が好ましい。より好ましくはMo量、W量を、何れも0.10%以上とする。一方、Mo、Wを過剰に添加しても効果は飽和するので、コストの観点から、Mo量、W量を何れも3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Mo量、W量を何れも1.0%以下、更に好ましくは0.80%以下とする。
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、粒界破壊を防止して靭性や耐力を向上させる元素であり、0.0002%以上の添加が好ましい。より好ましくは、B量を0.0003%以上、更に好ましくは0.0010%以上とする。一方、Bを過剰に含有すると、靱性が低下することがあるため、B量は0.01%以下が好ましい。より好ましくはB量を0.005%以下とする。
30C+0.5Mn+Ni+0.8Cr+1.2Si+0.8Mo≧25 ・・・ (式1)
O/S≧1 ・・・ (式2)
CI=−2C+0.8Si−0,2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)+1.5(Cu+NI+Co)+60N+0.8Al−90P−90S ・・・ (式3)
ただし、Cu、Ni、Co、Mo、Wを含まない場合、上記(式3)ではこれらの項を0とする。
本発明の極低温用高Mn鋼材の金属組織は、極低温環境での脆性破壊を防止するため、オーステナイトの体積率を95%以上とする。オーステナイトの残部は、フェライト、マルテンサイト、ベイナイト、パーライトなどであるが、何れも極低温環境では脆化するため、5%未満に制限することが好ましい。オーステナイトの体積率は100%でもよい。オーステナイトの体積率は、光学顕微鏡による金属組織の観察の他、X線回折法や磁気誘導法によって測定することができる。
一般に、高Mn鋼は炭素鋼や低合金鋼に比べて熱間加工性が劣るため、適正な条件で圧延を行うことが好ましい。適正な条件から外れると、鋼片若しくは鋼塊又は鋼板の表面に割れが生じるので、歩留の低下を招く場合がある。鋼片又は鋼塊は、常法によって溶製し、鋳造することによって得られる。
熱間圧延後に強制冷却を施さない場合は、溶体化処理を施すことが好ましい。溶体化処理では、熱間圧延によって析出したCr炭化物やセメンタイトを鋼中に固溶させるために、加熱温度を950〜1250℃とし、900℃以上の温度から冷却速度を3℃/s以上とし、600℃以下の温度まで冷却することが好ましい。
表1に示す化学組成を有する鋼片を用い、表2に示す製造条件で高Mn鋼材を製造した。それぞれの鋼材(母材)の金属組織を光学顕微鏡で観察し、オーステナイトの体積率(γ体積率)、結晶粒径(γ粒径)を測定した。また、炭化物(Cr炭化物及びセメンタイト)は透過型電子顕微鏡により10000倍の倍率にて20視野観察し、オーステナイトの粒界炭化物被覆率を測定した。また、炭化物の円相当径を測定し、各炭化物の体積を算出して体積率を求めた。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.001〜0.80%、
Mn:15.0〜35.0%、
S:0.0001〜0.01%、
Cr:0.01〜10.0%、
Ti:0.001〜0.05%、
N:0.0001〜0.10%、
O:0.001〜0.010%
を含有し、
P:0.02%以下、
に制限し、更に、
Si:0.001〜5.0%、
Al:0.001〜5.0%
の一方又は両方を含有し、更に、
Mg:0.01%以下、
Ca:0.01%以下、
REM:0.01%以下
の1種又は2種以上を合計で0.0002%以上含有し、
30C+0.5Mn+Ni+0.8Cr+1.2Si+0.8Mo≧25 ・・・ (式1)
O/S≧1 ・・・ (式2)
を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
オーステナイトの体積率が95%以上であり、
前記オーステナイトの結晶粒径が20〜200μmであり、
前記オーステナイトの結晶粒界における炭化物被覆率が50%以下であり、
JIS Z 2241に準拠して室温で測定される母材の引張強度が780MPa以上であり、
JIS Z 2242のVノッチ試験片を用いて測定される−196℃及び−269℃における母材及び溶接熱影響部のシャルピー吸収エネルギーが100J以上である
ことを特徴とする極低温用高Mn鋼材。
ただし、Ni、Si、Moを含まない場合、上記(式1)ではこれらの項を0とする。 - 更に、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ta:0.05%以下、
Zr:0.05%以下、
V:0.10%以下
の1種又は2種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の極低温用高Mn鋼材。 - 更に、質量%で、
Cu:3.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Co:3.0%以下、
Mo:3.0%以下、
W:3.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の極低温用高Mn鋼材。 - 更に、質量%で、
B:0.010%以下
を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の極低温用高Mn鋼材。 - 更に、C、Si、Mn、P、S、Al、N、Cr、Cu、Ni、Co、Mo、Wの含有量が、
CI=−2C+0.8Si−0,2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)
+1.5(Cu+Ni+Co)+60N+0.8Al−90P−90S
≧6.5 ・・・ (式3)
を満足することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の極低温用高Mn鋼材。
ただし、Cu、Ni、Co、Mo、Wを含まない場合、上記(式3)ではこれらの項を0とする。
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