JP7135464B2 - 耐摩耗厚鋼板 - Google Patents
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Description
(1)質量%で、C:0.2~1.6%、Si:0.01~2%、Mn:2.5~30%、Al:0.001~0.3%を含有し、P:0.05%以下、S:0.05%以下に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、CおよびMnの含有量(質量%)が、-13.75C+16.5≦Mn≦-20C+35を満たすことを特徴とする、耐摩耗厚鋼板。
(2)平均粒径が20~300μmであるオーステナイト粒を含むことを特徴とする、(1)に記載の耐摩耗厚鋼板。
(3)質量%で、O:0.0001~0.01%を含有し、Mg:0.0001~0.01%、Ca:0.0001~0.01%、およびREM:0.0001~0.01%のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の耐摩耗厚鋼板。
(4)S含有量が、質量%で0.0001~0.01%であり、OおよびSの含有量(質量%)がO/S≧1.0を満たすことを特徴とする、(3)に記載の耐摩耗厚鋼板。
(5)CおよびMnの含有量(質量%)が、-6.5C+16.5≦Mn≦-20C+35を満たすことを特徴とする、(1)~(4)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(6)質量%で、Cu:3%以下、Ni:3%以下、およびCo:3%以下のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(7)質量%で、Cr:5%以下をさらに含有することを特徴とする、(1)~(6)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(8)質量%で、Mo:2%以下およびW:2%以下のうち1種または2種をさらに含有することを特徴とする、(1)~(7)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(9)質量%で、Nb:0.3%以下、V:0.3%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下、およびTa:0.3%以下のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、(1)~(8)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(10)質量%で、B:0.3%以下をさらに含有することを特徴とする、(1)~(9)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(11)質量%で、N:1%以下をさらに含有することを特徴とする、(1)~(10)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
(12)下記式(i)で表されるCIPが3.2以上であることを特徴とする、(1)~(11)のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
CIP=-1C+0.88Si-0.2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)+1.5(Cu+Ni+Co)+6N+0.8Al-90P+1.5 (i)
式中、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Co、N、AlおよびPは、前記耐摩耗厚鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
Cはオーステナイトを安定化する目的と耐摩耗性を改善する目的で添加する。耐摩耗性の改善のためには、0.2%以上の含有が必要で、特に高い耐摩耗性が必要な場合には0.8%以上含有させる。一方、Cの含有量が1.6%を超えると炭化物が粗大かつ多量に生成するために高い靱性を得ることができない。よって、Cの含有量は1.6%以下とする。
SiおよびAlは、通常、脱酸元素として添加したり、固溶強化のために添加したりすることが多いが、本発明では、CrやFe炭化物の生成を抑制するために添加する。本発明において炭化物の生成を抑制する元素を種々検討し、AlおよびSiを所定量含有させることで炭化物の生成が抑制されることを見出した。具体的には、Siは0.01~2%、好ましくは0.01~1%の範囲で含有させ、Alは0.001~0.3%の範囲で含有させる。0.01%未満のSi含有量および0.001%未満のAl含有量では炭化物生成の抑制効果が得られないからである。一方、2%超のSi含有量および0.3%超のAl含有量では粗大な介在物を発生させる可能性があり、延性および靱性の劣化をもたらすおそれがあるためである。
Mnはオーステナイト安定化元素であり、Cとともにオーステナイトを安定にするために添加する。この目的のためにMnは2.5~30%含有させる。オーステナイト安定化の観点から10%以上含有させることが好ましい。加えて、オーステナイト安定化の観点から、Mnの含有量は、Cの含有量との関係で-13.75C+16.5(%)以上、-20C+35(%)以下(すなわち-13.75C+16.5≦Mn≦-20C+35)とし、特には-13.75C+16.5(%)以上、-20C+30(%)未満(すなわち-13.75C+16.5≦Mn<-20C+30)とする。オーステナイトを安定にする一方で加工誘起マルテンサイト変態も一部に生じるように適切なオーステナイトの安定性を実現するためである。なお、このオーステナイトの安定性が低い場合には初期の組織中にマルテンサイトが多く含まれるために延性や靭性が最良でない場合がある。取り分け延性や靭性を良好に保つには、Mnの含有量は、Cの含有量との関係で-6.5C+16.5(%)以上(すなわち-6.5C+16.5≦Mn)とすることが好ましい。Mnの含有量をCの含有量との関係でこのような範囲に制御することで、初期の組織中に含まれるマルテンサイト、特にはα’マルテンサイトの量を低減することができるので、最終的に得られる厚鋼板の延性および靱性を顕著に改善することが可能となる。なお、オーステナイトの安定化に関するCの影響は非常に大きく、また、Mnは含有量が多いので、鋼板中のCおよびMn以外の添加成分の影響は無視できるほど小さい。したがって、本発明においてMnの含有量はCの含有量との関係において決定すれば十分である。
Pは、一般に不純物として含有され、粒界に偏析し延性や靭性を低下させるので、できるだけ低減することが好ましく、0.05%以下とする。Pの含有量の下限は0%でもよいが、過度なP量の低減は精錬コストの高騰を招くため、0.0001%以上を含有させてもよい。
Sは、不純物であり、過剰に含有させると粒界に偏析したり、粗大なMnSを生成し、延性や靭性を低下させるので、Sの含有量を0.05%以下に制限する。Sの含有量の下限は0%でもよいが、後述するように、Mg、Caおよび/またはREM(希土類金属:Rare-Earth Metal)と鋼中で微細な酸硫化物を生成し、オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、鋼板の靭性、特に溶接熱影響部(HAZ:Heat-Affected Zone)の靭性の向上に有効であるので0.0001%以上を含有させてもよい。なお、本発明において、「酸硫化物」とは、OとSの両方を含有する化合物だけでなく、酸化物および硫化物をも包含するものである。
Oに加えてMg、CaおよびREMのいずれか1種または2種類以上を添加する場合には、Oを0.0001~0.01%の範囲で含有させ、Mg、CaおよびREMのいずれか1種または2種類以上をそれぞれ0.0001~0.01%の範囲で、好ましくは合計0.01%以下の量で含有させる。これは、鋼中にMg、Caおよび/またはREMの酸化物、さらにはこれらの元素と鋼中に含まれ得るSとの間で酸硫化物を生成させ、鋼板、特に鋼板のHAZで結晶粒が粗大にならないようにするためである。Oの含有量は、HAZにおける細粒化による高靭化効果を確実に得るため0.0001%以上とする。一方、0.01%を超えると、酸化物の粗大化や粒界への偏析により延性や靭性が却って低下するので、Oの含有量は0.01%以下とする。これら酸硫化物による粒成長のピン止め効果で得られるHAZのオーステナイトの結晶粒径は、数十μmから300μmであり、どのような溶接条件でも300μmを超えることはない(ただし、鋼板のオーステナイトの結晶粒径が300μmを超える場合を除く。)。このようにHAZを含め鋼材のオーステナイト粒径を300μm以下に制御するために上記元素を添加することが好ましい。また、これらの元素が鋼中のSと結びついて硫化物として析出する場合には、通常、高Mn鋼で多量に生成するMnSの生成を抑制することができる。MnSは圧延時により顕著に延伸し、延性や靭性を著しく低下させるので、上記のピン止め効果とともにこのようなMnSの生成抑制効果を得るために、Mg、CaおよびREMの含有量はそれぞれ0.0001%以上とする。0.0001%未満であると、酸硫化物の量が少なくピン止め効果が得られないからである。一方、Mg、CaおよびREMの含有量はそれぞれ0.01%以下とする。0.01%を超えると、粗大な介在物を発生させる可能性があり、延性および靱性の劣化をもたらすおそれがあるためである。
上記のとおり、Sは、Mg、Caおよび/またはREMと酸硫化物を作り結晶粒の微細化に有効である。したがって、Mg、Caおよび/またはREMとともにSを含有させる場合には、とりわけHAZにおける細粒化による高靭化効果を得るために、Sの含有量は0.0001%以上とする。一方、0.01%以下とすることにより硫化物の粗大化や粒界への偏析が抑制されるので、Sを含有させる場合は、Sの含有量は0.01%以下とすることが好ましい。また、Sと鋼板中に含まれるOの含有量がO/S≧1.0の関係を満たす場合にその効果を最大化することができる。硫化物は酸化物に対して熱的に不安定であるため析出粒子中のSの比率が高まると高温まで安定なピンニング粒子とならない。そこで、鋼板に含有させるOとSの質量比をO/S≧1.0、好ましくはO/S≧1.5、より好ましくはO/S≧2.0とする。このとき酸硫化物の析出状態は最良となり、鋼板のオーステナイトの結晶粒径が150μm未満であれば、HAZにおけるオーステナイト粒の平均粒径を150μm以下とすることができる。
Cu、NiおよびCoは、マトリクスの靭性向上とオーステナイトの安定化のために添加してもよい。これらの元素は微量でも効果を奏するため、特定の下限値は規定しない。好ましくはCu、Ni、Coのいずれか1種または2種以上をそれぞれ0.05%以上、より好ましくは0.1%以上含有させる。但し、それぞれの含有量が3%を超えると靭性向上の効果が飽和し、コストも増加するので、これらの元素を含有させる場合は、各元素の含有量は3%以下、好ましくは1%以下とする。
Crは耐食性や加工硬化特性を向上させる元素で必要に応じて5%まで含有させることができる。一方、5%を超えると粒界炭化物の析出を促進させ靭性を低下させるため、Crを含有させる場合は、Crの含有量を5%以下、好ましくは2.5%以下とする。Crの含有量の下限値は規定しないが、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上とする。
MoとWは、鋼を強化したり、オーステナイト相におけるCの活量を低下させることでオーステナイト粒界に析出するCrやFeの炭化物の析出を抑制し、靭性や延性を改善する効果があるので必要に応じて添加してもよい。これらの元素は微量でも効果を奏するため、それぞれの含有量については特定の下限値は規定しない。ただし、過剰に添加してもその効果は飽和するので、これらの元素を含有させる場合は、MoおよびWの含有量はそれぞれ2%以下、好ましくは1%以下とする。MoおよびWの含有量の下限値は規定しないが、それぞれの含有量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、より一層好ましくは0.1%以上とする。
Nb、V、Ti、ZrおよびTaは、鋼中で炭窒化物などの析出物を作り、これが鋼の凝固時にオーステナイト粒の粗大化を抑制することで靭性の向上効果がある。また、オーステナイト中のCやNの活量を低下させ、セメンタイトやグラファイトなどの炭化物の生成を抑制する。さらに固溶強化や析出強化を通じて鋼の強化にも寄与する。これらの目的からNb、V、Ti、ZrおよびTaのうち1種または2種以上を添加することができる。なお、これらの元素は微量でも効果を奏するため、それぞれの含有量については特定の下限値は規定しない。Nb、V、Ti、ZrおよびTaのそれぞれの含有量は好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Nb、V、Ti、ZrおよびTaについてはそれぞれ0.3%を超えて含有させると、析出物の粗大化が顕著となり延性や靭性が低下する。よって、これらの元素を含有させる場合の含有量はそれぞれ0.3%以下とする。特に、Ti、ZrおよびTaの含有量については、それぞれ0.03%以下とすることが好ましい。また、より好ましくはNb、V、Ti、ZrおよびTaの合計の含有量を0.03%以下とする。
Bは、オーステナイト粒界に偏析することにより粒界破壊を防止し耐力を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。なお、Bは微量でも効果を奏するため、含有量については特に下限値は規定しないが、粒界破壊をより確実に抑制するには、B含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。一方、含有量が0.3%を超えると靱性が悪化する。よって、Bを含有させる場合は、その含有量は0.3%以下とする。
Nは、オーステナイトの安定化と耐力向上に有効な元素である。オーステナイトの安定化元素としてNはCと同等の効果を有し、粒界析出による靱性劣化などの悪影響を及ぼさず、極低温での強度を上昇させる効果がCよりも大きい。また、Nは窒化物形成元素と共存することによって、鋼中に微細な窒化物を分散させるという効果を有する。なお、Nは微量でもこれらの効果を奏するため、含有量について特に下限値は規定しないが、これらの効果を確実に発現させるためには、Nの含有量を0.005%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.007%以上、より一層好ましくは0.01%以上とする。一方、N含有量が1%を超えると靱性の劣化が著しくなるため、Nを含有させる場合は、Nの含有量は1%以下とする。好ましくは、Nの含有量は0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、より一層好ましくは0.03%以下とする。
まず、高Cおよび高Mnオーステナイト鋼の靭性の低下メカニズムについて説明する。当該高Cおよび高Mnオーステナイト鋼ではC量が1%程度と大変高いためにオーステナイト粒界を主体に粒内にも鉄炭化物が多数生成する。これらの炭化物は鉄母相に比較して硬質であるので外力を受けた際に炭化物周囲の応力集中を高め、炭化物間あるいは炭化物周囲に亀裂が生じてやがて破壊に至る。この時、鋼を破壊に至らしめる応力集中は結晶粒径が小さいほど低下する。従って、このような破壊を抑制するためには炭化物を微細化することに加えてオーステナイト結晶粒径を微細化することが大変有効な手段となる。炭化物の成長は大変早く、これを抑制することはなかなか困難だからである。そこで、本発明では、炭化物の生成抑制にも配慮しつつ、基本的にはオーステナイト粒の微細化により靭性の向上が達成される。より具体的には、本発明で規定される化学組成を有する厚鋼板は、金属組織として主としてオーステナイト相を含み、特には体積分率で60%以上、より好ましくは90%以上、または、ほぼもしくは完全に100%のオーステナイト相を含む。ここで、本発明の厚鋼板は、上記のとおり熱間圧延によって製造されるものであるため、後で詳しく説明するように、鋼板中のオーステナイト粒が当該熱間圧延によって微細化されており、よって優れた靱性を有する。本発明によれば、このような熱間圧延により、鋼板中のオーステナイト粒は、好ましくは20~300μm、より好ましくは20~200μm、最も好ましくは20~100μmの平均粒径を有するように制御することができる。なお、本発明の耐摩耗厚鋼板によれば、例えば、溶接によって高温にさらされた場合でさえ、溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の平均粒径を20~300μmの範囲に維持することが可能であり、さらには、上記のように鋼板中のOとSの質量比をO/S≧1.0とすることで、溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の平均粒径を、鋼板のオーステナイトの結晶粒径によるが、150μm以下、あるいは20~150μmの範囲に維持することも可能である。なお、上記の下限値は、本明細書において説明される熱間圧延や酸硫化物等によるピン止め効果で達成可能なレベルを示すものである。但し、炭化物の核生成となるオーステナイト粒界を減じ、炭化物の生成を抑制することで、靭性をさらに向上させる観点からは、オーステナイト平均粒径を20μm以上とすることが好ましい。一方、上記の各上限値は、同様に、本明細書において説明される熱間圧延や酸硫化物等によるピン止め効果でそれぞれ達成可能な値であり、これらの値以下にオーステナイト粒の平均粒径を制御することで-40℃程度までの使用に対して十分な靭性を実現することができる。
Drex=p・D0 q・εr (1)
(1)式に従えば、圧延の塑性歪みをできるだけ大きくして、複数回圧延を行えば所定の結晶粒径を得ることができる。例えば、p=5、q=0.3、r=-0.75のとき、初期粒径すなわち再結晶前の平均結晶粒径を600μmとすると、再結晶後の平均結晶粒径を300μm以下とするには0.056以上、特に再結晶後の平均結晶粒径を100μm以下とするには0.25以上の歪みで圧延することが必要となる。また、再結晶後の平均結晶粒径を20μm以上に維持するには2.1以上の歪みであれば良い。これは、目安であって実際には再結晶後の粒成長や多パス圧延の効果を考慮して微調整する必要があるが、900~1100℃の温度範囲における累積圧下率が50%以上95%以下の熱間圧延により、概ね20μm以上100μm以下のオーステナイト粒の平均粒径を達成することが可能である。
本発明によれば、下記式(i)で表されるCIPが3.2以上であることが好ましい。
CIP=-1C+0.88Si-0.2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)+1.5(Cu+Ni+Co)+6N+0.8Al-90P+1.5 (i)
式中、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Co、N、AlおよびPは、耐摩耗厚鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
例えば、海水中などの腐食環境下では、海水などにより浸食された鋼材表面がさらに土砂などによって削られる現象が生じ得る。このような現象は、腐食作用と摩耗作用の相乗作用によって生じるものであり、腐食摩耗とも呼ばれる。鋼材においてこのような腐食摩耗を抑制し、すなわち腐食環境下における鋼材の耐摩耗性を向上させるためには、一般的には、当該鋼材の耐食性を向上させることが極めて重要である。そこで、本発明者らは、鋼板の耐食性を表す指標として上記式(i)で表されるCIPという指標を使用し、当該CIPが3.2以上の要件を満足するように鋼板中に含まれる各元素の含有量を本発明の範囲内で適切に制御することにより、当該要件を満足しない鋼板と比較して、腐食環境下における耐摩耗性が顕著に改善された耐摩耗厚鋼板を提供することが可能となることを見出した。
2.降伏応力(YS)、引張強度(TS)および伸び(EL):圧延板の幅方向に採取したJIS1号引張試験片を用いて引張試験にて評価した。
3.耐摩耗性:摩耗材として人工硅砂(JIS5号)2+水1を用いた場合のスクラッチング摩耗試験(周速度3.7m/sec、50時間)の摩耗減量を普通鋼(SS400)を基準に評価した。対普通鋼の摩耗量比率は、各鋼の摩耗減量を普通鋼の摩耗減量で除して求めた。
4.靭性:母材の靭性は鋼板の1/4厚位置から長さ方向に採取し、幅方向に亀裂が伝播するような方向にノッチを入れたJIS4号試験片により-40℃での吸収エネルギー(vE-40℃(J))を評価した。加えて、溶接入熱量を約1.7KJ/mmとしたSMAW(被覆アーク溶接)で、板厚中心部でのFL(溶融線)近傍のHAZ部がノッチ位置となるシャルピー試験片の-40℃での吸収エネルギー(vE-40℃(J))を評価した。
5.腐食摩耗性:腐食摩耗性は、摩耗材として硅砂(平均粒径12μm)と海水の混合物(混合比:けい砂30%および海水70%)を用いて、スクラッチング摩耗試験(周速度3.7m/sec、100時間)を行うことにより評価した。より具体的には、得られた腐食摩耗量を、同様に試験した基準材(CIPが-3.0よりも小さいかまたは-4.0以下となる耐摩耗厚鋼板)の腐食摩耗量に対する比(腐食摩耗量比)として評価した。
Claims (10)
- 質量%で、C:0.2~1.6%、Si:0.01~2%、Mn:2.5~30%、Al:0.001~0.3%を含有し、P:0.05%以下、S:0.05%以下に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、CおよびMnの含有量(質量%)が、-13.75C+16.5≦Mn≦-20C+35を満たし、平均粒径が20~300μmであるオーステナイト粒を含むことを特徴とする、耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、O:0.0001~0.01%を含有し、Mg:0.0001~0.01%、Ca:0.0001~0.01%、およびREM:0.0001~0.01%のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐摩耗厚鋼板。
- S含有量が、質量%で0.0001~0.01%であり、OおよびSの含有量(質量%)がO/S≧1.0を満たすことを特徴とする、請求項2に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、Cu:3%以下、Ni:3%以下、およびCo:3%以下のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、Cr:5%以下をさらに含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、Mo:2%以下およびW:2%以下のうち1種または2種を含むさらに含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、Nb:0.3%以下、V:0.3%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下、およびTa:0.3%以下のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、B:0.3%以下をさらに含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 質量%で、N:1%以下をさらに含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
- 下記式(i)で表されるCIPが3.2以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の耐摩耗厚鋼板。
CIP=-1C+0.88Si-0.2Mn+3.3Cr+9(Mo+W/2)+1.5(Cu+Ni+Co)+6N+0.8Al-90P+1.5 (i)
式中、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Co、N、AlおよびPは、前記耐摩耗厚鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
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