JP6645103B2 - 高Mn鋼材及びその製造方法 - Google Patents

高Mn鋼材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6645103B2
JP6645103B2 JP2015197686A JP2015197686A JP6645103B2 JP 6645103 B2 JP6645103 B2 JP 6645103B2 JP 2015197686 A JP2015197686 A JP 2015197686A JP 2015197686 A JP2015197686 A JP 2015197686A JP 6645103 B2 JP6645103 B2 JP 6645103B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
content
steel
steel material
toughness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015197686A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016084529A (ja
Inventor
崇之 加賀谷
崇之 加賀谷
学 星野
学 星野
政昭 藤岡
政昭 藤岡
仁志 古谷
仁志 古谷
哲也 滑川
哲也 滑川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JP2016084529A publication Critical patent/JP2016084529A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6645103B2 publication Critical patent/JP6645103B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、液化ガスを保存するための材料に好適な、高Mn鋼材とその製造方法に関する。
液化天然ガス(沸点:−164℃)など極低温環境下で使用可能な材料としては、従来から5000番系(Al−Mg系)等のアルミニウム合金、SUS304等のNi−Cr系オーステナイト合金や9%Ni鋼板、が使用されてきた。しかしながら、降伏応力が低合金高張力鋼ほど高くないため板厚を厚くせざるを得ないことに加えて、溶接施工性も高くないことや、Niを多量に含有し、材料コストが高いことが問題となっており、安価でかつ強度、溶接性および溶接部靭性に優れた材料が要望されている。タンクの大型化も進み圧力容器材料へ求められる強度は上昇している。
そのため、高価なNiやAlを多用しない低温用材料として、Ni系オーステナイト合金に含まれるNiをMnに置き換えた高Mn系オーステナイト合金が提案され、核融合炉、超伝導発電機やリニアモーターカーで使用される非磁性材料として検討されている。
例えば、特許文献1には、Cを0.5%未満、Mnを16〜40%含有することによって、優れた低温靭性と磁性特性を備えた高Mn鋼が得られることが示されている。特許文献2では、C含有量が0.10%以上、N含有量が0.05%以上でかつC+2Nが1.0%以下となる範囲でMnを26〜30%含有した高Mn鋼が開示されている。
さらに、特許文献3では、10〜30%のMnと10〜25%のCrを含み、X=Ni−30C+0.5Moで表されるパラメータが5.50以上を満足し、かつ0.0005〜0.0050%のCaと0.15〜0.24%のNを含有することによって、4Kという極低温においても高強度と高靭性を有する高Mn鋼が開示されている。特許文献4では、0.01〜0.25%のC、15%超〜40%のMnを含有し、X=30×P+50×(S+N)+300×Oで表わされるパラメータが3.0%以下を満足することによって極低温においても高強度と高靭性を有する高Mn鋼が開示されている。
特公昭59−11661号公報 特公平5−18887号公報 特開平9−41087号公報 特許第4529872号公報
特許文献2及び3に係る高Mn鋼材は、低温で鋼の強度を高めるNを多量に含有させているが、室温での強度は考慮されていない。特許文献1に係る高Mn鋼材は、熱間圧延後に溶体化処理などの再加熱処理を施して製造されるものである。特許文献4に係る高Mn鋼材は、靱性を確保するために、不純物の含有量の制限を必要としている。これらは、低コストで厚肉材に高強度化と優れた母材靭性を具備させることができるものではなく、大型の低温タンク用鋼材として必要な要件を満たすものではなかった。また、タンクの大型化に伴う使用材料の高強度化にも対応できていない。加えて高Mn鋼の靭性に影響を与える炭化物の生成形態に関しても言及されていない。
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであって、熱間圧延後に溶体化処理などの再加熱処理を施すことなく、加速冷却するだけで、室温(25℃)において400MPa以上の降伏応力と、液化天然ガス(沸点:−164℃)や液体窒素(沸点:−196℃)などの使用温度域でも十分な母材靭性を厚肉材においても確保できること、具体的には、−196℃でのJIS4号シャルピー吸収エネルギー値が、母材で50J以上を最大板厚50mmにおいて確保できる高Mn鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、液化ガス貯蔵タンクなどに使用できる高Mn鋼材について検討した。
その結果、鋼材の化学組成に関しては、高Mn鋼をベースに、C、Si、P、S、Ni、Cr、Al、N、などの各合金元素量を適正範囲に規定するだけでなく、X(%)=C+10×Si+2×Nで定義されるパラメータX(ここで、C、Si及びNは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。)を6%以上15%以下に規定し、鋼材中のオーステナイト結晶粒界における炭化物被覆率を適正な範囲に制御することによって、上記目的を達成することができることを見出した。
すなわち、高Mn鋼材の化学組成とオーステナイト結晶粒界における炭化物被覆率を適正な範囲に制御することによって、低温用鋼としての母材の強度と低温靭性値を熱間圧延ままで確保できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.25〜0.75%、Si:0.05〜1.0%、Mn:20%を超え35%以下、Ni:0.1〜7.0%未満、Cr:0.1%以上8.0%未満、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以上0.05%未満を含有し、P:0.04%以下、S:0.02%以下に制限し、残部Feおよび不純物からなり、下記の(1)
式で定義されるパラメータX(%)が6.0〜15.0%であり、結晶粒界における炭化物被覆率が30%以下であることを特徴とする高Mn鋼材。
X(%)=C+10×Si+2×Ni・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
ここで、C、Si及びNiは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:3.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Ti:0.5%以下、B:0.001%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下及びREM:0.05%以下から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の高Mn鋼材。
(3)上記(1)又は(2)に記載の化学組成を有する鋼片又は鋼塊を、950〜1200℃に加熱後、800〜1100℃の温度範囲における累積圧下率が30%以上であってかつ圧延仕上温度を750〜950℃とする熱間圧延を施した後、750℃から600℃までの温度範囲を冷却速度5℃/s以上で冷却し、そのまま放冷することを特徴とする高Mn鋼材の製造方法。
本発明によれば、低温靭性と溶接性だけでなく熱膨張率、透磁率や熱伝導度などの特性にも優れた高Mn鋼材を熱間圧延ままで提供することができる。また、この高Mn鋼材は、LNGタンク内槽材等に用いられるアルミニウム合金、Ni系オーステナイトステンレス鋼、9%Ni鋼材の代替として使用することができるものであって、Ni資源の節約に貢献し、タンク建造コスト低減を可能にするものである。熱間圧延後に溶体化処理などの熱処理を必要とすることなく、室温における降伏応力が400MPa以上、引張強度が800MPa以上であるとともに液体窒素温度(−196℃)における母材シャルピー吸収エネルギーが50J以上である、高Mn鋼材およびその製造方法を提供することができるなど、本発明は産業上の貢献が極めて顕著である。
以下に、本発明に係る高Mn鋼材及びその製造方法について説明する。以下、各化学成分の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
[C:0.25〜0.75%]
Cは、オーステナイトの安定化を通じて、液化ガスタンクなど低温用鋼材に要求される強度を確保するのに有効な元素である。特に、室温における強度を確保するために、C含有量を0.25%以上とする。好ましくはC含有量を0.35%以上とする。一方、Cの含有量が0.75%を超えるとCr炭化物がオーステナイト粒界へ大量に析出して、母材の靱性や耐食性、さらには溶接熱影響部の低温靭性が劣化するおそれがある。したがって、C含有量は0.75%以下とする。好ましくは0.65%以下、より好ましくは0.50%以下とする。
[Si:0.05〜1.0%]
Siは、脱酸のために有効な元素であり、また強度上昇に有効な元素である。ただし、0.05%未満では脱酸不足になる可能性があり、Si含有量を0.05%以上とする。好ましくはSi含有量を0.4%以上とする。また、Si含有量が1.0%を超えると延性および靱性の劣化をもたらすおそれがあるため、1.0%以下とする。好ましくは、Si含有量を0.8%以下とする。
[Mn:20%を超え35%以下]
Mnは、オーステナイトの安定化を通じて、降伏応力の増加と低温靱性の向上に有効な元素である。ただし、20%以下の含有量では降伏応力や低温靭性の低下が生ずるだけでなく、オーステナイトが不安定化し、α’マルテンサイトなどが析出して靭性が劣化するため、Mn含有量を20%超とする。好ましくはMn含有量を23%以上とする。一方、Mn含有量が35%を超えると加工性や溶接性が劣化するため、35%以下とする。好ましくはMn含有量を30%以下、より好ましくは27%以下とする。
[Ni:0.1%以上7.0%未満]
Niはオーステナイトの安定化と靱性の向上に極めて有効な元素であり、Ni含有量を0.1%以上とする。ただし、7.0%以上のNiを含有させてもその効果は飽和するとともに、α’マルテンサイトが生成しやすくなって、溶接部靭性や透磁率が劣化する恐れがあるため、Ni含有量を7.0%未満とする。好ましくはNi含有量を3.0%未満、より好ましくは2.0%以下とする。
[Cr:0.1%以上8.0%未満]
Crは、オーステナイトを安定化し、耐力を向上させる元素である。本発明では、他の合金元素との関係で、Cr含有量が0.1%以上でこの効果が得られる。好ましくはCr含有量を1.0%以上、より好ましくは3.0%以上、更に好ましくは4.0%以上とする。ただし、Cr含有量が8.0%以上になるとCr炭化物が粒界上に析出しやすくなり、靱性を低下させるとともに、溶体化処理等の熱処理が必要になる。したがって、Cr含有量は8.0%未満とする。好ましくは、Cr含有量を6.0%以下とする。
[Al:0.005〜0.10%]
Alは、鋼の脱酸と結晶粒の微細化による鋼の特性向上の作用を持つ元素である。ただし、0.005%未満では十分な効果が得られないため、Al含有量を0.005%以上とする。好ましくはAl含有量を0.01%以上とする。一方、Al含有量が0.10%を超えると靱性が劣化するため、上限を0.10%以下とする。好ましくは、Al含有量を0.05%以下とする。
[P:0.04%以下、S:0.02%以下]
P及びSは、ともに熱間加工性を損なう不純物元素である。オーステナイト鋼においては、P及びSの両元素の含有量を同時に低減することにより、単独に低減する場合よりも大きな母材および溶接熱影響部の靭性値の向上効果が得られる。そこで、Pの含有量は0.04%以下、そして、Sの含有量は0.02%以下に制限する。好ましくは、Pの含有量は0.02%以下、Sの含有量は0.003%以下とする。P及びSの含有量は少ないほど好ましいが、製造コストの観点から、Pの含有量は0.003%以上、Sの含有量は0.001%以上であってもよい。
[N:0.005%以上0.05以下
Nは、オーステナイトの安定化と耐力向上に有効な元素である。オーステナイトの安定化元素としてNはCと同等の効果を有し、粒界析出による靱性劣化などの悪影響を及ぼさず、極低温での強度を上昇させる効果がCよりも大きい。また、Nは窒化物形成元素と共存することによって、鋼中に微細な窒化物を分散させるという効果を有する。これらの効果を発現させるために、Nの含有量を0.005%以上とする。一方、N含有量が0.05になると靱性の劣化が著しくなるため、0.05以下とする。好ましくは、N含有量を0.03%以下とする。
[パラメータX:6.0〜15.0%]
前述の(1)式、すなわち、X(%)=C+10×Si+2×Niで定義されるパラメータXは、母材強度、炭化物生成抑制、母材靭性を改善する観点から、特に−196℃におけるシャルピー特性を改善する観点から、その制御が必要なパラメータである。ここで、パラメータXのC、Si及びNiは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。本発明における高Mn鋼材は、主にオーステナイト相からなるため、いわゆる劈開破壊を生じにくい材質ではあるが、オーステナイトの結晶粒界に析出した炭化物が破壊の起点となりシャルピー特性を低下させる場合がある。
本発明者等は、この点について詳細に検討を行い、上記パラメータXの下限は強度との相関があり、上限は靱性、特に粒界の炭化物を起点とする破壊との相関があることを見出した。そして、上記パラメータXを適正な範囲内に制御することにより、母材強度確保と炭化物生成による靭性低下の抑制との両立に成功した。パラメータXは、強度を確保するために6.0%以上とし、好ましくは7.0%以上とする。一方、パラメータXが15.0%を超えると粒界炭化物によりシャルピー特性が得られないため、15.0%以下とし、好ましくは11.0%以下でとする。
本願発明に係る高Mn鋼材は、耐力向上のため、必要に応じて、さらにCu、Mo、
Nb、V、Ti、B、Ca、Mg及びREMから選択される1種又は2種以上を含有させることができる。以下、これらの任意含有元素について説明する。
[Cu:3.0%以下]
Cuは、オーステナイトを強化し、耐力の上昇に有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が3.0%を超えると加工性を劣化させるので、Cuを含有させる場合は、その含有量は3.0%以下とし、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.7%以下とする。強度を高めるには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
[Mo:3.0%以下]
Moは、強度の上昇に効果があるだけでなく、Cr炭化物の粒界析出に起因する靱性劣化を防止したり、鋼の強度を高めたりするのに有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が3.0%を超えるとその効果は飽和する。よって、Moを含有させる場合は、その含有量は3.0%以下とし、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.0%以下、より一層好ましくは0.8%以下とする。強度を高めるには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
[Nb:0.5%以下]
Nbは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.5%を超えると靱性が悪化する。よって、Nbを含有させる場合は、その含有量は0.5%以下とし、より好ましくは0.2%以下とする。強度を高めるには、Nb含有量を0.005%とすることが好ましく、より好ましくは0.01%とする。
[V:0.5%以下]
Vは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.5%を超えると靱性が悪化する。よって、Vを含有させる場合は、その含有量は0.5%以下とし、より好ましくは0.2%以下とする。強度を高めるために、V含有量を0.01%以上とすることができる。
[Ti:0.5%以下]
Tiは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.5%を超えると靱性が悪化する。よって、Tiを含有させる場合は、その含有量は0.5%以下とし、より好ましくは0.3%以下とする。強度を高めるために、Ti含有量を0.005%以上とすることができる。
[B: 0.001%以下]
Bは、オーステナイト粒界に偏析することにより粒界破壊を防止し、耐力を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.001%を超えると靱性が悪化する。よって、Bを含有させる場合は、その含有量は0.001%以下とする。粒界破壊を抑制するには、B含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
[Ca: 0.01%以下]
Caは、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.01%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる場合があり、Caの含有量は0.01%以下が好ましい。より好ましくはCaの含有量を0.003%以下とする。靱性を向上させるには、Ca含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
[Mg: 0.01%以下]
Mgは、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.01%を超えると清浄度を悪化させ、靱性が失われる場合があり、Mgの含有量は0.01%以下が好ましい。より好ましくはMgの含有量を0.003%以下とする。靱性を向上させるには、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。
[希土類元素(REM): 0.05%以下]
希土類元素(REM)は、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.05%を超えると清浄度を悪化させ、靱性が失われる場合があり、REMの含有量は0.05%以下が好ましい。より好ましくはREMの含有量を0.003%以下とする。靱性を向上させるには、希土類元素(REM)の含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0003%とする。REMを含有させる場合は、LaやCeを主成分とするミッシュメタルを用いてもよい。なお、本発明でいう希土類元素とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、希土類元素の含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
[高Mn鋼材中に含まれるオーステナイト結晶粒界の炭化物被覆率:30%以下]
本発明の高Mn鋼材の金属組織はオーステナイトである。本発明では、熱間圧延後に溶体化処理などの熱処理を施さないため、オーステナイトの結晶粒界(オーステナイト粒界)に炭化物が析出している。高Mn系の鋼材で低温用材料としての十分低温靭性を付与させるためには、上記の被覆率を30%以下に制御することが重要である。高Mn鋼では主にオーステナイト粒界に微細な炭化物が生成するが、これらは硬質相であり破壊の起点となり得ることから、炭化物被覆率を制御する必要がある。炭化物被覆率の下限は低いほど好ましいが、1%以上であってもよく、5%以上であってもよい。鋼材中のオーステナイト粒界炭化物被覆率は組織観察により求めることができる。
このように、本発明に係る高Mn鋼材は、オーステナイト結晶粒界の炭化物を制御することによって、圧延後の熱処理を施すことなく低温域で使用可能な鋼材が得られる。
(B)製造条件について
一般に、高Mn鋼は炭素鋼や低合金鋼に比べて熱間加工性が劣るため、適正な条件で圧延を行う必要がある。適正な条件から外れると、鋼片若しくは鋼塊又は鋼板の表面に割れが生じるので、歩留の低下を招く。したがって、鋼片又は鋼塊の加熱条件及び圧延条件の厳密な管理が重要である。
[加熱温度:950〜1200℃]
まず、鋼片又は鋼塊の加熱温度は、950℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、圧延機に過大な負荷がかかるため、950℃以上とし、好ましくは1000℃以上とする。一方、1200℃を超えて高温に加熱すると、表面の酸化による歩留まりの低下が懸念されるとともに、オーステナイト粒が粗大化してしまい、その後に熱間圧延しても容易に細粒化できなくなるため、1200℃以下とする。
[累積圧下率:800〜1100℃の温度範囲で30%以上]
鋼片又は鋼塊を加熱した後、800〜1100℃の温度範囲における累積圧下率が30%以上の熱間圧延を施す必要がある。これは、鋼片又は鋼塊の鋳造組織を破壊するとともに、鋼材中のオーステナイト粒を細粒化かつ扁平化するためである。800〜1100℃の温度範囲における累積圧下率が30%以上の熱間圧延の効果を更に高め、微細なオーステナイト結晶粒を得るためには、熱間圧延の圧延仕上温度が重要である。累積圧下率は、1100℃での板厚と800℃での板厚との差を、1100℃での板厚で除して求め、百分率で表す。800℃超で熱間圧延を終了する場合は、800℃での板厚を圧延後の板厚として計算する。
[圧延仕上温度:750〜950℃]
熱間圧延の圧延仕上温度は750〜950℃とする必要がある。圧延仕上げ温度が950℃を超えると、圧延後のオーステナイト結晶粒成長が大きくなりすぎるため、所望の微細組織が得られない。一方、圧延仕上温度が750℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、圧延機に過大な負荷がかかる。さらに、圧延集合組織が発達し、鋼板の異方性が大きくなるので好ましくない。
[冷却速度:750〜600℃を5℃/s以上、以後放冷]
この後、析出物の生成を抑制し、低温靭性を高めるために、750℃から600℃までの温度範囲の冷却速度を5℃/s以上とする加速冷却を行う。5℃/s未満の冷却速度では、加速冷却の効果が十分ではなく、特に、オーステナイト結晶粒界の炭化物被覆率が大きくなる。この加速冷却は、圧延組織が変化してしまうと加速冷却の効果が得られないので、750℃以上で加速冷却を開始する必要がある。また、この加速冷却の範囲の下限を600℃とするのは、少なくとも600℃まで冷却すれば所定の加速冷却の効果は得られるからである。加速冷却の停止後はそのまま放冷し、溶体化処理などの再加熱処理を施さないが、600℃以下の温度まで加速冷却を継続しても差し支えない。これにより強度と破壊抵抗力がともに優れた鋼板が得られる。この鋼板は、LNGタンク内槽材に適した性質を有している。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成とパラメータXを有する鋼種1〜38の鋼片を用い、表2に示す製造条件(加熱温度、800〜1100℃の温度範囲における累積圧下率、圧延仕上温度、750℃から600℃までの冷却速度を種々に制御した。)にて板厚10〜50mmの高Mn鋼材を製造した。そして、光学顕微鏡で金属組織を観察して鋼材中に含まれるオーステナイト粒界の炭化物被覆率を測定する(測定値を表2に示す)とともに、母材特性として、引張特性(降伏強度、引張強度)、シャルピー衝撃特性を測定した。得られた測定値を表2に示す。引張特性は、JIS Z 2241に準拠して、室温で引張試験を行い、評価した。シャルピー衝撃特性は、JIS Z 2242に準拠して、−196℃でシャルピー衝撃試験を行い、評価した。
Figure 0006645103
Figure 0006645103
表2から、本発明例に係る高Mn鋼材は、熱間圧延ままで、母材強度、靭性のいずれにおいても優れており、低温材料として優れていることが分かる。
これに対して、本発明で規定する条件を満足しない比較例では、強度、シャルピー特性の一方又は両方において、目的とする特性が得られないことが分かる。
本発明に係る高Mn鋼材は、熱間圧延後に熱処理を施すことなく、熱間圧延ままで提供することができ、LNGタンク内槽材等に用いられるアルミニウム合金、Ni系オーステナイトステンレス鋼、9%Ni鋼材の代替として使用することができるものであって、Ni資源の節約に貢献し、タンク建造コストの低減を可能にするものである。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.25〜0.75%、Si:0.05〜1.0%、Mn:20%を超え35%以下、Ni:0.1%以上7.0%未満、Cr:0.1%以上8.0%未満、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以上0.050%以下を含有し、P:0.04%以下、S:0.02%以下に制限し、残部Feおよび不純物からなり、
    下記の(1)式で定義されるパラメータX(%)が6.0〜15.0%であり、
    結晶粒界における炭化物被覆率が1%以上30%以下であり、
    室温における降伏応力が400MPa以上であり、
    −196℃におけるシャルピー吸収エネルギーが50J以上である高Mn鋼材。
    X(%)=C+10×Si+2×Ni・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
    ここで、C、Si及びNiは鋼材中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:3.0%以下、Mo:3.0%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Ti:0.5%以下、B:0.001%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下及びREM:0.05%以下から選択される1種又は2種以上を含有す、請求項1に記載の高Mn鋼材。
  3. 請求項1又は2に記載の化学組成を有する鋼片又は鋼塊を、950〜1200℃に加熱後、800〜1100℃の温度範囲における累積圧下率が30%以上であってかつ圧延仕上温度を750〜950℃とする熱間圧延を施した後、750℃から600℃までの温度範囲を冷却速度5℃/s以上で冷却し、そのまま放冷して、高Mn鋼材の結晶粒界における炭化物被覆率を1%以上30%以下とし、
    前記高Mn鋼材は、室温における降伏応力が400MPa以上であり、
    −196℃におけるシャルピー吸収エネルギーが50J以上であ高Mn鋼材の製造方法。
JP2015197686A 2014-10-22 2015-10-05 高Mn鋼材及びその製造方法 Active JP6645103B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014215481 2014-10-22
JP2014215481 2014-10-22

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016084529A JP2016084529A (ja) 2016-05-19
JP6645103B2 true JP6645103B2 (ja) 2020-02-12

Family

ID=55972630

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015197686A Active JP6645103B2 (ja) 2014-10-22 2015-10-05 高Mn鋼材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6645103B2 (ja)

Families Citing this family (23)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6693217B2 (ja) * 2015-04-02 2020-05-13 日本製鉄株式会社 極低温用高Mn鋼材
US20170349983A1 (en) * 2016-06-06 2017-12-07 Exxonmobil Research And Engineering Company High strength cryogenic high manganese steels and methods of making the same
CN106435380A (zh) * 2016-10-26 2017-02-22 昆明理工大学 一种微合金化高铝高塑性钢板及其制备方法
WO2018104984A1 (ja) 2016-12-08 2018-06-14 Jfeスチール株式会社 高Mn鋼板およびその製造方法
KR101940874B1 (ko) 2016-12-22 2019-01-21 주식회사 포스코 저온인성 및 항복강도가 우수한 고 망간 강 및 제조 방법
SG11201907930QA (en) * 2017-04-26 2019-09-27 Jfe Steel Corp HIGH-Mn STEEL AND PRODUCTION METHOD THEREFOR
SG11202001418YA (en) * 2017-09-01 2020-03-30 Jfe Steel Corp High-mn steel and production method therefor
SG11202002379QA (en) * 2017-09-20 2020-04-29 Jfe Steel Corp Steel plate and method for manufacturing same
CN107739991A (zh) * 2017-09-22 2018-02-27 河钢股份有限公司 一种不含铜的高强韧超低温环境用高锰钢板及其生产方法
EP3722448B1 (en) * 2017-12-07 2024-03-06 JFE Steel Corporation High-mn steel and method for manufacturing same
JP6590120B1 (ja) * 2018-02-07 2019-10-16 Jfeスチール株式会社 高Mn鋼およびその製造方法
JP6856083B2 (ja) * 2018-03-02 2021-04-07 Jfeスチール株式会社 高Mn鋼およびその製造方法
WO2019168172A1 (ja) * 2018-03-02 2019-09-06 Jfeスチール株式会社 高Mn鋼およびその製造方法
WO2020035917A1 (ja) 2018-08-15 2020-02-20 Jfeスチール株式会社 鋼板およびその製造方法
JP6621572B1 (ja) * 2018-08-23 2019-12-18 Jfeスチール株式会社 ガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤ
CN112566750A (zh) * 2018-08-23 2021-03-26 杰富意钢铁株式会社 气体保护金属极电弧焊用实心焊丝
WO2020044421A1 (ja) 2018-08-28 2020-03-05 Jfeスチール株式会社 鋼板およびその製造方法
KR102628769B1 (ko) 2019-02-12 2024-01-23 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 고Mn강 및 그의 제조 방법
JP7126077B2 (ja) * 2019-03-19 2022-08-26 Jfeスチール株式会社 高マンガン鋼鋳片の製造方法、高マンガン鋼鋼片および高マンガン鋼鋼板の製造方法
US20220275489A1 (en) * 2019-08-21 2022-09-01 Jfe Steel Corporation Steel and method of producing same
CN114302977B (zh) * 2019-08-21 2022-12-06 杰富意钢铁株式会社 钢及其制造方法
CN112281054A (zh) * 2020-09-21 2021-01-29 中国石油天然气集团有限公司 一种SiMnNiMoV系中碳合金钢、钻机吊环及其制造方法
CN114107844B (zh) * 2021-10-12 2022-11-11 广西富川正辉机械有限公司 一种高纯净锰25高锰钢

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5118916A (ja) * 1974-08-09 1976-02-14 Nippon Steel Corp Teionjinseinosugureta oosutenaitokono seizoho
JPS56263A (en) * 1979-06-12 1981-01-06 Sumitomo Metal Ind Ltd High-manganese-content steel for low temperature
JPS5623260A (en) * 1979-08-03 1981-03-05 Sumitomo Metal Ind Ltd High manganese cast steel for low temperature use
JPH0215148A (ja) * 1988-07-02 1990-01-18 Sumitomo Metal Ind Ltd 耐食性に優れた高Mn非磁性鋼
KR101543916B1 (ko) * 2013-12-25 2015-08-11 주식회사 포스코 표면 가공 품질이 우수한 저온용강 및 그 제조 방법
JP6693217B2 (ja) * 2015-04-02 2020-05-13 日本製鉄株式会社 極低温用高Mn鋼材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016084529A (ja) 2016-05-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6645103B2 (ja) 高Mn鋼材及びその製造方法
JP6589535B2 (ja) 低温用厚鋼板及びその製造方法
JP6728779B2 (ja) 低温用厚鋼板及びその製造方法
JP4529872B2 (ja) 高Mn鋼材及びその製造方法
JP6693217B2 (ja) 極低温用高Mn鋼材
JP5880788B2 (ja) 高強度油井用鋼材および油井管
JP5833991B2 (ja) 極低温靱性に優れた厚鋼板
JP6264468B2 (ja) 高強度油井用鋼材および油井管
JPWO2018199145A1 (ja) 高Mn鋼およびその製造方法
JP6018453B2 (ja) 極低温靭性に優れた高強度厚鋼板
JP2017507249A (ja) 表面加工品質に優れた低温用鋼
JP6045256B2 (ja) 高強度高靭性高耐食マルテンサイト系ステンレス鋼
JP2020509207A (ja) 低温靭性及び降伏強度に優れた高マンガン鋼及びその製造方法
JP6856129B2 (ja) 高Mn鋼の製造方法
JP6954475B2 (ja) 高Mn鋼およびその製造方法
JP6018454B2 (ja) 極低温靭性に優れた高強度厚鋼板
JP2012107333A (ja) 高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材
JP6492862B2 (ja) 低温用厚鋼板及びその製造方法
JP2022160634A (ja) 鋼材
JP6947922B2 (ja) 表面品質に優れた低温用高マンガン鋼材及びその製造方法
JP6856083B2 (ja) 高Mn鋼およびその製造方法
KR102387364B1 (ko) 고Mn강 및 그의 제조 방법
JPWO2021117382A1 (ja) 鋼板およびその製造方法
JPWO2019156179A1 (ja) 高Mn鋼およびその製造方法
JP6947330B2 (ja) 鋼およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151014

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180606

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190507

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190617

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190813

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191008

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191223

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6645103

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151