JP6589535B2 - 低温用厚鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液化ガスを保存するための材料に好適な、高Mn鋼材からなる低温用厚鋼板とその製造方法に関する。
液化天然ガス(沸点:−164℃)など極低温環境下で使用可能な材料としては、従来から5000番系(Al−Mg系)等のアルミニウム合金、SUS304等のNi−Cr系オーステナイト合金や9%Ni鋼板、が使用されてきた。しかしながら、降伏応力が低合金高張力鋼ほど高くないため板厚を厚くせざると得ないことに加えて、溶接施工性も高くないことや、Niを多量に含有し材料コストが高いことが問題となっており、安価でかつ強度、溶接性および溶接部靭性に優れた材料が要望されている。タンクの大型化も進み圧力容器材料へ求められる強度は上昇している。
そのため、高価なNiやAlを多用しない低温用材料として、Ni系オーステナイト合金に含まれるNiをMnに置き換えた高Mn系オーステナイト合金が提案され、核融合炉、超伝導発電機やリニアモーターカーで使用される非磁性材料として検討されている。
例えば、特許文献1には、Cを0.5%未満、Mnを16〜40%含有することによって、優れた低温靭性と磁性特性を備えた高Mn鋼が得られることが示されている。特許文献2では、C含有量が0.10%以上、N含有量が0.05%以上でかつC+2Nが1.0%以下となる範囲でMnを26〜30%含有した高Mn鋼が開示されている。
さらに、特許文献3では、10〜30%のMnと10〜25%のCrを含み、X=Ni−30C+0.5Moで表されるパラメータが5.50以上を満足し、かつ0.0005〜0.0050%のCaと0.15〜0.24%のNを含有することによって、4Kという極低温においても高強度と高靭性を有する高Mn鋼が開示されている。特許文献4では、0.01〜0.25%のC、15〜40%のMnを含有し、X=30×P+50×(S+N)+300×Oで表わされるパラメータが3.0%以下を満足することによって極低温においても高強度と高靭性を有する高Mn鋼が開示されている。
特開昭59−011661号公報 特開平5−018887号公報 特開平9−41087号公報 特許第4529872号
これらの従来の技術に係る高Mn鋼材は、Niを多量に含有させる必要があるか、又は圧延後の特殊な熱処理を必要しており、低コストで厚肉材に高強度化と優れた母材靭性を具備させることができるものではなく、大型の低温タンク用鋼材として必要な要件を満たすものではなかった。特許文献4では溶接部靭性についても評価しているが、ノッチ位置が溶接金属50%/HAZ50%部となっており、最脆化部の評価にはなっていない。加えて高Mn鋼のHAZ靭性に影響を与える炭化物の生成形態やHAZ靭性を向上させる手段に関しては言及されていない。
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであって、熱間圧延後に再加熱処理を施すことなく、室温(25℃)において400MPa以上の降伏応力と800MPa以上の引張応力、液化天然ガス(沸点:−164℃)や液体窒素(沸点:−196℃)などの使用温度域でも十分なHAZ靭性を厚肉材においても確保できること、具体的には、HAZを模擬した再現熱サイクル材の−196℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)にて、70J以上を少なくとも板厚50mmまでにおいて確保できる高Mn鋼材からなる低温用厚鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、液化ガス貯蔵タンクなどに使用できる高Mn鋼材について検討した。
その結果、鋼材の化学組成に関しては、高Mn鋼をベースに、C、Si、P、S、Ni、Cr、Al、N、などの各合金元素量を適正範囲に規定するだけでなく、Mn偏析比、圧延前の加熱温度や加熱時間、圧下比、圧延後から冷却開始までの時間を適正範囲に制御することによって、上記目的を達成することができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.30〜0.65%、Si:0.05〜0.30%、Mn:20.00%を超え30.00%以下、Ni:0.10〜3.00%未満、Cr:3.00%以上8.00%未満、Al:0.005〜0.100%、N:0.0050%以上0.0500%未満を含有し、P:0.040%以下、S:0.020%、O:0.0050%以下に制限し、残部Feおよび不純物からなり、Mn濃化部のMn濃度Mnと希薄部のMn濃度(Mn)から算出されるMn偏析比XMn(XMn=Mn/Mn)が1.6以下であり、室温(25℃)における降伏応力が400MPa以上、引張強度が800MPa以上溶接熱影響部を模擬した再現熱サイクルシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)が70J以上であることを特徴とする低温用厚鋼板。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Nb:0.500%以下、V:0.500%以下、Ti:0.500%以下、B:0.0010%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下及びREM:0.0500%以下から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の高Mn鋼材。
(3)上記(1)又は(2)に記載の化学組成を有する鋼片又は鋼塊を、加熱温度(℃)と加熱時間(hr)との積が30000℃・hr以上となる拡散熱処理を施し室温まで冷却し、その後再び加熱した後、圧下比(鋳片厚/製品厚)が5以上20未満で熱間圧延を施した後、75秒以内で冷却を開始し、冷却速度1℃/sec以上で室温まで冷却し、その後の熱処理を施さないことにより、Mn濃化部のMn濃度Mn と希薄部のMn濃度(Mn )から算出されるMn偏析比X Mn (X Mn =Mn /Mn )が1.6以下であり、室温(25℃)における降伏応力が400MPa以上、引張応力が800MPa以上、溶接熱影響部のシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)が70J以上の低温用厚鋼板を得ることを特徴とする低温用厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、低温靭性と溶接性だけでなく熱膨張率、透磁率や熱伝導度などの特性にも優れた高Mn鋼材を熱間圧延ままで提供することができる。また、この高Mn鋼材は、LNGタンク内槽材等に用いられるアルミニウム合金、Ni系オーステナイトステンレス鋼、9%Ni鋼材の代替として使用することができるものであって、Ni資源の節約に貢献し、タンク建造コスト低減を可能にするものである。熱間圧延後に再熱処理を必要とすることなく、室温における降伏応力が400MPa以上、引張強度が800MPa以上であるとともに、液体窒素温度(−196℃)におけるHAZ部を模擬した再現熱サイクル材のシャルピー衝撃吸収エネルギーが70J以上である、高Mn鋼材およびその製造方法を提供することができるなど、本発明は産業上の貢献が極めて顕著である。
Mn偏析比XMnとシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)との関係を示すグラフである。 Mn偏析比XMnと加熱温度(℃)と加熱時間(hr)の積(拡散熱処理の影響)との関係を示すグラフである。 圧下比とシャルピー衝撃吸収エネルギーの関係を示すグラフである。 仕上圧延完了から冷却開始までの搬送時間とシャルピー衝撃吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
以下に、本発明に係る高Mn鋼材及びその製造方法について説明する。以下、各化学成分の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
C:0.30〜0.65%
Cは、オーステナイトの安定化を通じて、液化ガスタンクなど低温用鋼材に要求される強度を確保するのに有効な元素である。特に、室温における強度を確保するために、C含有量を0.30%以上とする。好ましくはC含有量を0.35%以上とする。一方、Cの含有量が0.65%を超えるとCr炭化物がオーステナイト粒界へ多量析出して、母材の靱性や耐食性、さらには溶接熱影響部の低温靭性が劣化するおそれがある。したがって、C含有量は0.65%以下とする。好ましくは、0.50%以下とする。
Si:0.05〜0.30%
Siは、脱酸のために有効な元素であり、また強度上昇に有効な元素である。ただし、0.05%未満では脱酸不足になる可能性があり、Si含有量を0.05%以上とする。好ましくはSi含有量を0.10%以上とする。また、Si含有量が0.30%を超えると延性および靱性の劣化をもたらすおそれがあるため、0.30%以下とする。好ましくは、Si含有量を0.25%以下とする。
Mn:20.00を超え30.00%以下
Mnは、オーステナイトの安定化を通じて、降伏応力の増加と低温靱性の向上に有効な元素である。ただし、20.00%以下の含有量では降伏応力や低温靭性の低下が生ずるだけでなく、オーステナイトが不安定化し、α’マルテンサイトなどが析出して靭性が劣化するため、Mn含有量を20.00%超とする。好ましくはMn含有量を23.00%以上とする。一方、Mn含有量が30.00%を超えると加工性や溶接性が劣化するため、30.00%以下とする。好ましくはMn含有量を27.00%以下とする。
Ni:0.10%以上3.00%未満
Niはオーステナイトの安定化と靱性の向上に極めて有効な元素であり、Ni含有量を0.10%以上とする。ただし、3.00%以上のNiを含有させてもその効果は飽和するとともに、α’マルテンサイトが生成しやすくなって、溶接部靭性や透磁率が劣化する恐れがあるため、Ni含有量を3.00%未満とする。好ましくはNi含有量を2.00%以下とする。
Cr:3.00〜8.00%未満
Crは、オーステナイトを安定化し、耐力を向上させる元素である。本発明では、他の合金元素との関係で、Cr含有量が3.00%以上でこの効果が得られる。好ましくはCr含有量を4.00%以上とする。ただし、Cr含有量が8.00%以上になるとCr炭化物が粒界上に析出しやすくなり、靱性を低下させる。したがって、Cr含有量は8.00%未満とする。好ましくは、Cr含有量を6.00%以下とする。
Al:0.005〜0.100%
Alは、鋼の脱酸と結晶粒の微細化による鋼の特性向上の作用を持つ元素である。ただし、0.005%未満では十分な効果が得られないため、Al含有量を0.005%以上とする。好ましくはAl含有量を0.010%以上とする。一方、Al含有量が0.100%を超えると靱性が劣化するため、上限を0.100%以下とする。好ましくは、Al含有量を0.050%以下とする。
P:0.040%以下、S:0.020%以下
P及びSは、ともに熱間加工性を損なう不純物元素である。オーステナイト鋼においては、P及びSの両元素の含有量を同時に低減することにより、単独に低減する場合よりも大きな母材および溶接熱影響部の靭性値の向上効果が得られる。そこで、Pの含有量は0.040%以下、そして、Sの含有量は0.020%以下に制限する。好ましくは、Pの含有量は0.020%以下、Sの含有量は0.003%以下とする。
N:0.0050〜0.0500%未満
Nは、オーステナイトの安定化と耐力向上に有効な元素である。オーステナイトの安定化元素としてNはCと同等の効果を有し、粒界析出による靱性劣化などの悪影響を及ぼさず、極低温での強度を上昇させる効果がCよりも大きい。また、Nは窒化物形成元素と共存することによって、鋼中に微細な窒化物を分散させるという効果を有する。これらの効果を発現させるために、Nの含有量を0.0050%以上とする。一方、N含有量が0.0500%以上になると靱性の劣化が著しくなるため、0.0500%未満とする。好ましくは、N含有量を0.0300%以下とする。
O:0.0050%以下
Oは、過剰に存在すると粗大な介在物が形成する。介在物個数を増加させ母材の清浄度を低下させ、母材及びHAZ部の靭性を低下させる。よって上限を0.0050%とする。
本発明者等は、この点について詳細に検討を行い、圧延前の拡散熱処理とMn偏析比に相関があり、特にHAZ部の粒界の炭化物を起点とする破壊との相関があること、さらに圧下比、仕上圧延から冷却開始までの時間を適切に制御することにより靭性向上が可能であることを見出した。そして、上記パラメータXMnを適正な範囲内に制御することにより、HAZ部の炭化物生成による靭性低下抑制に成功した。パラメータXMnは、1.6以下とし、好ましくは1.3以下とする。一方、パラメータXMnが1.6を超えると粒界炭化物によりシャルピー特性が得られない。
本願発明に係る高Mn鋼材は、耐力向上のため、必要に応じて、さらにCu、Mo、Nb、V、Ti、B、Ca、Mg及びREMから選択される1種又は2種以上を含有させることができる。以下、これらの任意含有元素について説明する。
Cu:1.00%以下
Cuは、オーステナイトを強化し耐力の上昇に有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が1.00%を超えると加工性を劣化させるので、Cuを含有させる場合は、その含有量は1.00%以下とし、より好ましくは0.70%以下とする。強度を高めるには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Mo:1.00%以下
Moは、強度の上昇に効果があるだけでなく、Cr炭化物の粒界析出に起因する靱性劣化を防止したり、鋼の強度を高めたりするのに有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が1.00%を超えるとその効果は飽和する。よって、Moを含有させる場合は、その含有量は1.00%以下とし、より好ましくは0.80%以下とする。強度を高めるには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
Nb:0.500%以下
Nbは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.500%を超えると靱性が悪化する。よって、Nbを含有させる場合は、その含有量は0.500%以下とし、より好ましくは0.200%以下とする。強度を高めるには、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以上とする。
V:0.500%以下
Vは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.500%を超えると靱性が悪化する。よって、Vを含有させる場合は、その含有量は0.500%以下とし、より好ましくは0.200%以下とする。強度を高めるには、V含有量を0.010%以上とする。
Ti:0.500%以下
Tiは、C及びNと結合して炭窒化物を析出させ、その析出強化によって鋼の耐力を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.500%を超えると靱性が悪化する。よって、Tiを含有させる場合は、その含有量は0.500%以下とし、より好ましくは0.300%以下とする。強度を高めるには、Ti含有量を0.005%以上とする。
B: 0.0010%以下
Bは、オーステナイト粒界に偏析することにより粒界破壊を防止し耐力を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.0010%を超えると靱性が悪化する。よって、Bを含有させる場合は、その含有量は0.0010%以下とする。粒界破壊を抑制するには、B含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
Ca: 0.0100%以下
Caは、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.0100%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、Caを含有させる場合は、その含有量は0.0100%以下とする。靱性を向上させるには、Ca含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Mg: 0.0100%以下
Mgは、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.0100%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、Mgを含有させる場合は、その含有量は0.0100%以下とする。靱性を向上させるには、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。
希土類元素(REM): 0.0500%以下
希土類元素(REM)は、Caと同様に、介在物の球状化作用をもたらし、靱性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が0.0500%を超えると清浄度を悪化させ靱性が失われる。よって、REMを含有させる場合は、その含有量は0.0500%以下とする。靱性を向上させるには、希土類元素(REM)の含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0003%とする。REMを含有させる場合は、LaやCeを主成分とするミッシュメタルを用いてもよい。なお、本発明でいう希土類元素とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、希土類元素の含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
このように、本発明に係る高Mn鋼材は、オーステナイト結晶粒界の炭化物を制御することによって、圧延後の熱処理を施すことなく低温域で使用可能でHAZ靭性良好な鋼材が得られる。
(B)金属組織について
Mn偏析比XMn:1.6以下
一般に、高Mn鋼は炭素鋼や低合金鋼に比べてMn含有量が高く、凝固時に偏析しやすい。前述の(1)式、すなわち、XMn=(XMn=Mn/Mn)で定義されるパラメータXMnは、母材靭性、HAZ靭性を改善する観点から、特にHAZ部の−196℃におけるシャルピー特性を改善する観点から、その制御が必要なパラメータである。ここでMn及びMn0は、それぞれMn濃化部および希薄部のMn濃度である。本発明における高Mn鋼材は、主にオーステナイト相からなるため、いわゆる劈開破壊を生じにくい材質ではあるが、オーステナイトの結晶粒界に析出した炭化物が破壊の起点となりシャルピー特性を低下させる場合がある。XMnを1.6以下とすることでHAZ靭性を確保できることが明らかとなった。図1に偏析比とシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)との関係を示す。
(C)製造条件について
一般に、高Mn鋼は炭素鋼や低合金鋼に比べてMn含有量が高く、凝固時に偏析しやすい。このため拡散熱処理により偏析を低減させる必要がある。また熱間加工性が劣るため、適正な条件で圧延を行う必要がある。適正な条件から外れると、鋼片若しくは鋼塊又は鋼板の表面に割れが生じるので、歩留の低下を招く。したがって、鋼片若しくは鋼塊の拡散熱処理条件、圧延前の加熱条件及び圧延条件の厳密な管理が重要である。
まず、拡散熱処理はMnを拡散させるため加熱温度(℃)と加熱時間(hr)との積が30000℃・hr以上とし、好ましくは35000℃・hr以上とする。拡散熱処理によりMnが拡散するため偏析比が低減する。XMnを1.6以下とするには加熱温度(℃)と加熱時間(hr)との積が30000℃・hr以上とする必要があることが明らかとなった。それらの関係を図2に示す。
鋼片又は鋼塊の加熱温度は、950℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、圧延機に過大な負荷がかかるため、950℃以上とすることが好ましく、より好ましくは1000℃以上とする。一方、1200℃を超えて高温に加熱すると、表面の酸化による歩留まりの低下が懸念されるとともに、オーステナイト粒が粗大化してしまい、その後に熱間圧延しても容易に細粒化できなくなるため、1200℃以下とすることが好ましい。
鋼片又は鋼塊を加熱した後、圧下比が5以上20未満で熱間圧延を施す必要がある。5未満では、鋼片若しくは鋼塊の鋳造組織の破壊が不十分であるとともに、鋼材中のオーステナイト粒を細粒化が不十分であり、靭性に悪影響である。また20を超えることで偏析バンド幅が狭くなり炭化物が連続して析出しやすくなり、靭性に悪影響である。圧下比は、鋳片厚を製品厚で除して求める。圧下比とシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)の関係を図3に示す。
熱間圧延の圧延仕上温度は750〜950℃とすることが好ましい。圧延仕上げ温度が950℃を超えると、圧延後のオーステナイト結晶粒成長が大きくなりすぎるため、所望の微細組織が得られない。一方、圧延仕上温度が750℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、圧延機に過大な負荷がかかる。さらに、圧延集合組織が発達し、鋼板の異方性が大きくなるので好ましくない。
炭化物の生成を抑制し、低温靭性を高めるために、仕上圧延完了してから冷却開始までの時間を75秒以内にする必要がある。75秒を超えると炭化物がしやすくなり、再加熱されるHAZ部における炭化物が粗大化し、HAZ靭性が低下することが明らかとなった。仕上圧延完了から冷却開始までの搬送時間とシャルピー衝撃吸収エネルギーとの関係を図4に示す。
750℃から600℃までの温度範囲の冷却速度を5℃/s以上とする加速冷却を行う。5℃/s未満の冷却速度では、加速冷却の効果が十分ではなく、所望の組織が得られない。この加速冷却は、圧延組織が変化してしまうと加速冷却の効果が得られないので、750℃以上で加速冷却を開始する必要がある。また、この加速冷却の範囲の下限を600℃とするのは、少なくとも600℃まで冷却すれば所定の加速冷却の効果は得られるからである。600℃から室温までの温度範囲の冷却速度は1℃/sec以上とする。なお、600℃以下の温度まで加速冷却を継続しても差し支えない。これにより強度と破壊抵抗力がともに優れた鋼板が得られる。この鋼板は、LNGタンク内槽材に適した性質を有している。尚、圧延ままで炭化物は抑制できているので、その後の熱処理は不要である。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜33の鋼片を用い、表2に示す製造条件(拡散熱処理条件、圧下比、仕上圧延から冷却開始までの時間を種々に制御した。)にて板厚5〜50mmの高Mn鋼材を作製した。そして、鋼材中にMn偏析比を測定した(測定値を表2に示す)。母材特性として引張特性(降伏強度、引張強度)を、HAZ靭性として溶接熱サイクル再現装置を使用して2mmVノッチシャルピー衝撃吸収エネルギーを評価した。得られた測定値を表3に示す。なお溶接再現熱サイクル試験は板厚1/4tからシャルピー試験片を採取し、ピーク温度(最高到達温度)600−850℃にて5秒保持後急冷する条件で行った。評価は、室温(25℃)において降伏応力400MPa未満、引張強度800MPa未満の場合、HAZを模擬した再現熱サイクル材の−196℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)が70J未満の場合を不合格とした。
表3から、本発明例に係る高Mn鋼材は、熱間圧延ままで、母材強度、HAZ靭性のいずれにおいても優れており、低温材料として優れていることが分かる。
これに対して、本発明で規定する条件を満足しない比較例では、母材強度、HAZ靭性の一方又は両方において、目的とする特性が得られないことが分かる。
本発明に係る高Mn鋼材は、熱間圧延後に熱処理を施すことなく、熱間圧延ままで提供することができ、LNGタンク内槽材等に用いられるアルミニウム合金、Ni系オーステナイトステンレス鋼、9%Ni鋼材の代替として使用することができるものであって、Ni資源の節約に貢献し、タンク建造コストの低減を可能にするものである。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.30〜0.65%、Si:0.05〜0.30%、Mn:20.00%を超え30.00%未満、Ni:0.10〜3.00%未満、Cr:3.00%以上8.00%未満、Al:0.005〜0.100%、N:0.0050%以上0.0500%未満を含有し、P:0.040%以下、S:0.020%以下、O:0.0050%以下に制限し、残部Feおよび不純物からなり、Mn濃化部のMn濃度Mnと希薄部のMn濃度(Mn)から算出されるMn偏析比XMn(XMn=Mn/Mn)が1.6以下であり、室温(25℃)における降伏応力が400MPa以上、引張応力が800MPa以上、溶接熱影響部のシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)が70J以上であることを特徴とする低温用厚鋼板。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Nb:0.500%以下、V:0.500%以下、Ti:0.500%以下、B:0.0010%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下及びREM:0.0500%以下から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の低温用厚鋼板。
  3. 請求項1又は2で規定される化学組成を有し、冷却した鋼片又は鋼塊を、加熱温度(℃)と加熱時間(hr)との積が30000℃・hr以上となる拡散熱処理を施し室温まで冷却し、その後再び加熱した後、圧下比(鋳片厚/製品厚)が5以上20未満で熱間圧延を施した後、75秒以内で冷却を開始し、冷却速度1℃/sec以上で室温まで冷却し、その後の熱処理を施さないことにより、Mn濃化部のMn濃度Mn と希薄部のMn濃度(Mn )から算出されるMn偏析比X Mn (X Mn =Mn /Mn )が1.6以下であり、室温(25℃)における降伏応力が400MPa以上、引張応力が800MPa以上、溶接熱影響部のシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE−196)が70J以上の低温用厚鋼板を得ることを特徴とする低温用厚鋼板の製造方法。
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