JP6978613B2 - 極低温用高強度溶接継手の製造方法 - Google Patents

極低温用高強度溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば液化ガス貯槽用タンク等の、極低温環境で使用される高Mn含有鋼材製溶接鋼構造物に係り、とくに高強度で優れた極低温衝撃靭性を有する溶接金属部を形成する高強度溶接継手の製造方法に関する。
近年、環境に対する規制が厳しくなっている。液化天然ガス(以下、LNGともいう)は、硫黄を含まないため、硫化酸化物等の大気汚染物質を発生させないクリーンな燃料と言われ、その需要が増加している。LNGの輸送または保管のために、LNGを輸送または貯蔵する容器(タンク)は、LNGの液化温度である-162℃以下の温度で、優れた極低温衝撃靭性を保持することが求められている。
優れた極低温衝撃靭性を保持することの必要性から、容器(タンク)等の材料用として、従来から、アルミニウム合金、9%Ni鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等が、用いられてきた。しかし、アルミニウム合金は、引張強さが低いため、構造物の板厚を大きく設計する必要があり、また溶接性が悪いという問題がある。また、9%Ni鋼は、溶接材料として高価なNi基材料を用いることが必要なため、経済的に不利となる。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、高価であり、母材強度も低いという問題がある。
このような問題から、LNGを輸送または貯蔵する容器(タンク)用の材料として、最近では、質量%で、Mnを10〜35%程度含有する高Mn含有鋼(以下、高Mn鋼ともいう)の適用が検討されている。高Mn含有鋼は、極低温においても、オーステナイト相であり、脆性破壊が発生せず、またオーステナイト系ステンレス鋼と比較して、高い強度を有するという特徴がある。そこで、このような材料(高Mn含有鋼材)およびこのような材料を安定して溶接できる溶接材料が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、「極低温用高Mn鋼材」が記載されている。特許文献1に記載された「極低温用高Mn鋼材」は、質量%で、C:0.001〜0.80%、Mn:15.0〜35.0%、S:0.0001〜0.01%、Cr:0.01〜10.0%、Ti:0.001〜0.05%、N:0.0001〜0.10%、O:0.001〜0.010%を含有し、P:0.02%以下に制限し、さらに、Si:0.001〜5.00%、Al:0.001〜5.0%の一方又は両方を含有し、更に、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下の1種又は2種以上を合計で0.0002%以上含有し、
30C+0.5Mn+Ni+0.8Cr+1.2Si+0.8Mo ≧ 25 …(式1)、
O/S ≧ 1 …(式2)
を満足し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、オーステナイトの体積率が95%以上であり、前記オーステナイトの結晶粒径が20〜200μmであり、前記オーステナイトの結晶粒界における炭化物被覆率が50%以下である極低温用高Mn鋼材であるとしている。特許文献1に記載された高Mn鋼材では、結晶粒界に生成する炭化物が破壊の起点や亀裂の伝播の経路とならないように、オーステナイト粒径を適切なサイズに制御し、さらに合金元素の添加量やバランス、さらにはS量、O量を適正に調整し、Mg、Ca、REMを添加することにより、オーステナイト粒径を適正に調整し、熱影響部の結晶粒径の粗大化の抑制をも可能にできると、している。
また、特許文献2には、「低温用厚鋼板」が記載されている。特許文献2に記載された「低温用厚鋼板」は、質量%で、C:0.30〜0.65%、Si:0.05〜0.30%、Mn:20.00%超え30.00%未満、Ni:0.10%以上3.00%未満、Cr:3.00%以上8.00%未満、Al:0.005〜0.100%、N:0.0050%以上0.0500%未満を含有し、P:0.0040%以下、S:0.020%以下、O:0050%以下に制限し、残部Feおよび不純物からなり、Mn濃化部のMn濃度MniとMn希薄部のMn濃度Mn0から算出されるMn偏析比XMn(XM=Mni/Mn0)が1.6以下であり、室温(25℃)における降伏応力が400MPa以上、引張応力が800MPa以上、溶接熱影響部のシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE-196)が70J以上である鋼材である、としている。特許文献2に記載された技術によれば、熱間圧延ままで、LNGを輸送または貯蔵する容器(タンク)用の材料として提供できるとしている。
また、特許文献3には、「極低温衝撃靭性に優れた高強度溶接継手部及びこのためのフラックスコアードアーク溶接用ワイヤ」が提案されている。特許文献3に記載されたフラックスコアードアーク溶接用ワイヤは、重量%で、C:0.15〜0.8%、Si:0.2〜1.2%、Mn:15〜34%、Cr:6%以下、Mo:1.5〜4%、S:0.02%以下、P:0.02%以下、B:0.01%以下、Ti:0.09〜0.5%、N:0.001〜0.3%、TiO2:4〜15%、SiO2、ZrO2及びAl2O3のうちから選択された1種以上の合計:0.01〜9%、K、Na及びLiのうちから選択された1種以上の合計:0.5〜1.7%、FとCaのうち1種以上:0.2〜1.5%、残部Fe及びその他の不可避的不純物を含む組成を有するワイヤである。特許文献3に記載されたフラックスコアードアーク溶接用ワイヤを用いて溶接すれば、試験温度:-196℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーが28J以上の優れた低温靭性および常温引張強さが400MPa以上の高強度を有する溶接継手部が効果的に得られ、また、ワイヤ組成をMo:1.5%以上に調整しており、優れた耐高温割れ性を有する溶接継手部を確保できるとしている。
特開2016−196703号公報 特開2017−071817号公報 特表2017−502842号公報
しかしながら、上記した特許文献1、2に記載された高Mn含有鋼材と、特許文献3に記載された溶接材料とを組み合わせて溶接構造物を製造しても、溶接金属部において強度低下や靱性低下が発生し、溶接鋼構造物として、所望の極低温における材料特性(高強度、高靭性)を確保できないという問題があった。本発明者らの検討によれば、高Mn含有鋼材溶接金属部においては、溶接時の熱履歴や鋼材の溶接金属への希釈率(溶け込み度合)や凝固時の偏析等により、元素の再分配が行われて、組織が大きく変化するため、溶接金属部において強度低下や靱性低下が発生するという問題があること知見した。
そこで、本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、極低温用溶接鋼構造物向けとして好適な、高強度と優れた極低温衝撃靭性とを兼備する溶接金属部を有する、高強度溶接継手の製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「高強度」とは、常温降伏応力(0.2%耐力)が400MPa以上であることをいう。また、「優れた極低温衝撃靭性」とは、試験温度:-196℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーvE-196が28J以上であることをいう。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、高Mn含有鋼材用溶接材料を用いて溶接継手を作製し、溶接金属部の組織形態と強度、極低温衝撃靭性との関係を鋭意検討した。その結果、とくに、溶接ビード(1回又は2回以上の溶接パスによって作られる溶接金属の層)を二層以上重ねて置いていく多層溶接の場合には、溶接時の熱履歴による溶接金属の組織変化が重要となることを知見した。溶接時に鋼材、溶接材料の溶接金属への溶け込み度合(希釈率)により、溶接金属の組織変化が生じ、溶接金属部の材料特性(強度、靭性)が、大きく変化することを知見した。とくに、多層溶接の場合には、第1層目の溶接金属への、鋼材の溶け込み度合(希釈率)を所定の範囲に調整することが、所望の溶接金属特性を確保するために重要であることを見出した。
すなわち、鋼材の、溶接金属への溶け込み度合(希釈率)が高い場合には、溶接金属特性は鋼材に多く含まれる成分であるMn、Crの影響を大きく受けることになる。一方、鋼材の、溶接金属への溶け込み度合(希釈率)が低い場合には、溶接金属特性はワイヤにMnおよびCr以外で多く含まれる成分であるNi、Moの影響を大きく受けることになる。このような成分の相違は、凝固過程で形成される凝固組織(デンドライト構造)に大きな影響を与えることになる。溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)が高い場合には、デンドライト構造は密となり溶接金属の強度が上昇するが、溶接割れが発生しやすくなる。一方、溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)が低い場合には、デンドライト構造は疎になり溶接金属の強度が低下し、靭性が向上し、溶接割れは発生しにくくなる。これは、上記したデンドライト構造の違いにより、デンドライトにおけるサブグレイン、転位、析出物等の組織形態が異なったためと考えられる。
このような傾向に鑑みて、本発明者らは、所望の高強度で、優れた極低温衝撃靭性を有する多層溶接金属部を確保するために、第1層目の溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)が35〜60%となるように、溶接条件を調整することが肝要となることを見出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨とするところは、次のとおりである。
(1)極低温用高強度高Mn含有鋼材同士をソリッドワイヤを用いてガスメタルアーク溶接し、多層溶接金属部を形成する極低温用高強度溶接継手の製造方法であって、該極低温用高強度高Mn含有鋼材が、質量%で、C:0.10〜0.70%、Si:0.05〜1.00%、Mn:18〜30%、P:0.030%以下、S:0.0070%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.5〜7.0%、N:0.0050〜0.0500%、O(酸素):0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材組成を有し、該ソリッドワイヤが、質量%で、C:0.2〜0.8%、Si:0.15〜0.90%、Mn:17.0〜28.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.01〜10.0%、Cr:0.4〜4.0%、Mo:0.02〜2.5%、Al:0.1%以下、N:0.12%以下、O(酸素):0.04%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるワイヤ組成を有し、かつ該ソリッドワイヤのMnおよびCrの各含有量が、それぞれ該鋼材のMnおよびCrの各含有量より低く、次(1)式
希釈率(%)=100×{(第1層の溶接金属に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(該ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)}/{(該鋼材に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(該ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)} ……(1)
で定義される該多層溶接金属部における第1層の溶接金属への該鋼材の希釈率が35〜60%となるように、前記ガスメタルアーク溶接の溶接条件を調整することを特徴とする極低温用高強度溶接継手の製造方法。
(2)上記(1)において、前記極低温用高強度高Mn含有鋼材が、前記鋼材組成に加えてさらに、質量%で、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、REM:0.0010〜0.0200%、B:0.0005〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする極低温用高強度溶接継手の製造方法。
(3)上記(1)または(2)において、前記ソリッドワイヤが、前記ワイヤ組成に加えてさらに、質量%で、V:1.0%以下、Ti:1.0%以下およびNb:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする極低温用高強度溶接継手の製造方法。
本発明によれば、極低温環境下で使用される溶接鋼構造物向けとして好適な、高強度でかつ極低温衝撃靭性に優れた多層溶接金属部を有する溶接継手を容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
本発明は、極低温用高強度高Mn含有鋼材同士を、ソリッドワイヤを用いた溶接により多層溶接金属部を形成して接合し溶接継手とする、極低温用溶接鋼構造物向け高強度溶接継手の製造方法である。
まず、使用する鋼材について、説明する。なお、「組成」における「質量%」は、単に「%」と記す。
本発明で使用する鋼材は、質量%で、C:0.10〜0.70%、Si:0.05〜1.00%、Mn:18〜30%、P:0.030%以下、S:0.0070%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.5〜7.0%、N:0.0050〜0.0500%、O(酸素):0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材組成を有する極低温用高強度高Mn含有鋼材とする。鋼材組成の限定理由は、次のとおりである。
C:0.10〜0.70%
Cは、オーステナイト相を安定化させる作用を有する、安価で、重要な元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.70%を超えて含有すると、Cr炭化物が過度に生成され、極低温衝撃靱性が低下する。このため、Cは0.10〜0.70%の範囲に限定した。好ましくは、0.20〜0.60%である。
Si:0.05〜1.00%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して固溶強化により鋼材の高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.00%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、Siは0.05〜1.00%の範囲に限定した。好ましくは、0.07〜0.50%である。
Mn:18〜30%
Mnは、オーステナイト相を安定化させる作用を有する、比較的安価な元素であり、本発明では、高強度と優れた極低温靱性を両立するために重要な元素である。このような効果を得るためには、18%以上の含有を必要とする。一方、30%を超えて含有しても、極低温靱性を向上させる効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。また、30%を超えて多量に含有すると、溶接性、切断性の低下を招くとともに、偏析を助長し、応力腐食割れの発生を助長する。このため、Mnは18〜30%の範囲に限定した。好ましくは、18〜28%である。
P:0.030%以下
Pは、不純物として、粒界に偏析し、応力腐食割れの発生起点となる元素であり、本発明では、可能なかぎり低減することが望ましいが、0.030%以下であれば許容できる。このため、Pは0.030%以下に限定した。好ましくは、0.028%以下であり、さらに好ましくは0.024%以下である。一方、Pを0.002%未満と極端に低減するには、長時間の精錬を必要とし、精錬コストが高騰する。このため、経済的な観点からは、Pは0.002%以上とすることが好ましい。
S:0.0070%以下
Sは、鋼中では、硫化物系介在物として存在し、鋼材、溶接金属の延性、極低温靭性を低下させる。このため、Sは可能なかぎり低減することが望ましいが、0.0070%以下であれば許容できる。好ましくは0.0050%以下である。一方、Sを0.0005%未満と極端に低減するには、長時間の精錬を必要とし、精錬コストが高騰する。このため、経済性の観点から、Sは0.0005%以上とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.07%
Alは、脱酸剤として作用し、鋼材の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.07%を超えて含有すると、溶接時にAlが溶接金属部に混入して、溶接金属の靭性を低下させる。このため、Alは0.07%以下の範囲に限定した。好ましくは、0.02〜0.06%である。
Cr:2.5〜7.0%
Crは、オーステナイト相を安定化させ、極低温靱性の向上および鋼材強度の向上に有効に寄与する元素である。また、微細結晶域を形成させるために効果的な元素である。このような効果を得るためには、Crを2.5%以上の含有を必要とする。一方、7.0%を超えて含有すると、Cr炭化物が生成し、極低温靭性および耐応力腐食割れ性が低下する。このため、Crは2.5〜7.0%の範囲に限定した。好ましくは3.5〜6.5%である。
N:0.0050〜0.0500%
Nは、オーステナイト相を安定化する作用を有する元素であり、極低温靱性の向上に有効に寄与する。このような効果を得るためには、Nは0.0050%以上の含有を必要とする。一方、0.0500%を超えて含有すると、窒化物または炭窒化物が粗大化し、極低温靭性が低下する。このため、Nは0.0050〜0.0500%の範囲に限定した。好ましくは0.0060〜0.0400%である。
O(酸素):0.0050%以下
O(酸素)は、鋼中では酸化物系介在物として存在し、鋼材の極低温靱性を低下させる。このため、O(酸素)はできるだけ低減することが好ましいが、0.0050%以下であれば許容できる。このため、O(酸素)は0.0050%以下の範囲に限定した。好ましくは、0.0045%以下である。一方、O(酸素)を0.0005%未満と極端に低減するには、長時間の精錬を必要とし、精錬コストが高騰する。このため、経済性の観点から、O(酸素)は0.0005%以上とすることが好ましい。
上記した成分が基本の鋼材組成であるが、この基本の鋼材組成に加えてさらに任意成分として、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、REM:0.0010〜0.0200%、B:0.0005〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種を含有する鋼材組成としてもよい。
Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、V、Wはいずれも、オーステナイト相の安定化に寄与するとともに、鋼材の強度向上、極低温靭性の向上にも寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上選択して含有することができる。このような効果を得るためには、Mo、V、Wをそれぞれ0.001%以上含有する必要がある。一方、Mo、V、Wがそれぞれ2.0%を超えて含有すると、粗大な炭窒化物が増加し、破壊の起点となり、極低温衝撃靭性が低下する。このため、含有する場合には、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下に限定することが好ましい。より好ましくは、Mo:0.003〜1.7%、V:0.003〜1.7%、W:0.003〜1.7%であり、さらに好ましくはMo:1.5%以下、V:1.5%以下、W:1.5%以下である。
REM:0.0010〜0.0200%、B:0.0005〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種
REMは、介在物の形態制御を介し、鋼材の靭性向上、さらには延性、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素であり、また、Bは、粒界に偏析し、鋼材の靭性向上に寄与する作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。
REMは、上記した効果を得るためには、0.0010%以上の含有を必要とする。一方、0.0200%を超えて含有すると、非金属介在物量が増加し、靭性、さらには延性、耐硫化物応力割れ性が低下する。このため、含有する場合には、REMは0.0010〜0.0200%の範囲に限定することが好ましい。より好ましくは0.0015〜0.0200%である。
Bは、上記した効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0020%を超えて含有すると、粗大な窒化物や炭化物が増加し、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Bは0.0005〜0.0020%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、Ca、Mg、Ti、Nb、Cuが例示でき、合計で0.05%以下であれば許容できる。
本発明では、上記した高Mn含有鋼材同士を、ソリッドワイヤを用いて溶接して多層溶接金属部を形成し溶接継手とする。
使用するソリッドワイヤは、C:0.2〜0.8%、Si:0.15〜0.90%、Mn:17.0〜28.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.01〜10.0%、Cr:0.4〜4.0%、Mo:0.02〜2.5%、Al:0.1%以下、N:0.12%以下、O(酸素):0.04%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるワイヤ組成を有するソリッドワイヤとする。ワイヤ組成の限定理由は、次のとおりである。
C:0.2〜0.8%
Cは、固溶強化により、溶接金属の強度を上昇させる作用を有するとともに、オーステナイト相を安定化させ、溶接金属の極低温衝撃靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、0.8%を超えて含有すると、炭化物が析出し,極低温衝撃靭性が低下し、さらに、溶接時の高温割れが生じやすくなる。そのため、Cは0.2〜0.8%の範囲に限定した。好ましくは、0.3〜0.7%である。
Si:0.15〜0.90%
Siは、脱酸剤として作用し、Mnの歩留りを高めるとともに、溶融金属の粘性を高める作用を有し、ビード形状を安定的に保持し、スパッタの発生を低減する効果を有する。そのような効果を得るためには、0.15%以上の含有を必要とする。一方、0.90%を超えて含有すると、溶接金属の極低温衝撃靭性の低下を招く。また、Siは、凝固時に偏析し、凝固セル界面に液相を生成して、耐高温割れ性を低下させる。そのため、Siは0.15〜0.90%の範囲に限定した。好ましくは0.20〜0.70%である。
Mn:17.0〜28.0%
Mnは、安価に、オーステナイト相を安定化する元素であり、本発明では17.0%以上の含有を必要とする。Mnが17.0%未満では、溶接金属中にフェライト相が生成し,極低温衝撃靭性の著しい低下を招く。一方、28.0%を超えて含有すると、凝固時に過度のMn偏析が発生し、高温割れを誘発する。そのため、Mnは17.0〜28.0%の範囲に制限した。好ましくは18.0〜23.0%である。
P:0.03%以下
Pは、溶接金属中では、不純物として、結晶粒界に偏析し、高温割れを誘発する元素であり、本発明では、できるだけ低減することが好ましいが、0.03%以下であれば、許容できる。そのため、Pは0.03%以下に限定した。一方、過度の低減は、精練コストの高騰を招く。そのため、Pは0.003%以上に調整することが好ましい。
S:0.03%以下
Sは、溶接金属中では硫化物系介在物MnSとして存在する。MnSは、破壊の発生起点となり、極低温衝撃靭性を低下させるため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.03%以下であれば、許容できる。そのため、Sは0.03%以下に限定した。一方、過度の低減は、精練コストの高騰を招くため、Sは0.001%以上に調整することが好ましい。
Ni:0.01〜10.0%
Niは、オーステナイト粒界を強化するとともに、オーステナイト相を安定化させて、溶接金属の極低温衝撃靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。しかし、Niは高価な元素であり、10.0%を超える含有は、経済的に不利となる。そのため、Niは0.01〜10.0%の範囲に限定した。好ましくは、0.02〜2.0%の範囲である。
Cr:0.4〜4.0%
Crは、極低温ではオーステナイト相を安定化させる元素として作用し、溶接金属の極低温衝撃靭性の向上に寄与する。また、Crは、溶接金属の強度を向上させる作用も有する。また、Crは、溶融金属の液相線温度を高めて、高温割れの発生を抑制する作用を有する。さらに、Crは、溶接金属の耐食性を高めるのにも有効に作用する。このような効果を得るためには0.4%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超えて含有すると、Cr炭化物が生成し、極低温衝撃靭性の低下を招くとともに、さらに、ワイヤ伸線時の加工性が低下する。そのため、Crは0.4〜4.0%の範囲に限定した。好ましくは、1.0〜3.0%である。
Mo:0.02〜2.5%
Moは、固溶強化により強度を増加させる元素であり、そのような効果を得るためには0.02%以上含有することが好ましい。一方、2.5%を超えて多量に含有すると、炭化物が析出し、熱間加工性が低下し、ワイヤの伸線加工など、ワイヤの製造性が低下する。そのため、Moは0.02〜2.5%の範囲に限定した。好ましくは、0.05〜2.0%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、溶融金属の粘性を高め、ビード形状を安定的に保持し、スパッタの発生を低減する重要な作用を有する。また、Alは、溶融金属の液相線温度を高め、溶接金属の高温割れ発生の抑制に寄与する。このような効果は、0.005%以上の含有で顕著となるため、0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.1%を超えて含有すると、溶融金属の粘性が高くなりすぎて、逆に、スパッタの増加や、ビードが広がらず融合不良などの欠陥が増加する。そのため、Alは0.1%以下の範囲に限定した。好ましくは0.005〜0.04%である。
N:0.12%以下
Nは、不可避的に混入する元素であり、0.12%を超えて含有すると、窒化物を形成し、極低温衝撃靱性が低下する。そのため、Nは0.12%以下に限定した。一方、Nは、Cと同様に、溶接金属の強度向上に有効に寄与するとともに、オーステナイト相を安定化し、溶接金属の極低温衝撃靱性を安定的に向上させるため、一定量以上含有させることが好ましい。このような効果は、0.003%以上の含有で顕著となるため、0.003%以上含有させることが好ましい。
O(酸素):0.04%以下
O(酸素)は、不可避的に混入する元素であり、溶接金属中で、Al系酸化物やSi系酸化物を形成し、凝固デンドライドの核として作用したり、凝固組織の粗大化を抑制するピニングとして寄与するため、一定量以上含有することが好ましい。このような効果は、0.005%以上の含有で著しくなるため、0.005%以上含有させることが好ましい。一方、0.04%を超える多量の含有は、酸化物が粗大化する。そのため、O(酸素)は0.04%以下の範囲に限定した。好ましくは0.01〜0.03%である。
上記した成分が、基本のワイヤ組成であるが、この基本のワイヤ組成に加えてさらに、V:1.0%以下、Ti:1.0%以下およびNb:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有するワイヤ組成としてもよい。
V、Ti、Nbはいずれも、炭化物形成元素であり、炭化物を析出させて、溶接金属の強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。
Vは、上記した効果を得るためには、0.02%以上含有することが好ましいが、1.0%を超えて含有すると、炭化物が多量に析出し粗大化して、破壊の発生起点となり、溶接金属の極低温衝撃靭性を低下させる。そのため、含有する場合には、Vは1.0%以下に限定することが好ましい。
Tiは、上記した効果に加えてさらに、溶接金属の凝固セル界面に炭化物を析出させて、高温割れの発生抑制に寄与する。このような効果を得るためには、Tiは0.02%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超えて含有すると、炭化物が粗大化し、破壊の発生起点となるため、溶接金属の極低温衝撃靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Tiは1.0%以下に限定することが好ましい。
Nbは、上記した効果に加えてさらに、溶接金属の凝固セル界面に炭化物を析出させて、溶接金属の高温割れの発生抑制に寄与する。このような効果を得るためにはNbは0.02%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超えて含有すると、炭化物が粗大化し、破壊の発生起点となるため、溶接金属の極低温衝撃靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Nbは1.0%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外のワイヤの残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
ついで、本発明溶接継手の製造方法について説明する。
まず、上記した鋼材組成を有する極低温用高強度高Mn含有鋼材を用意する。そして、用意した鋼材同士が所定の開先形状を形成するように、開先加工を行う。形成する開先形状については、特に限定する必要はなく、溶接鋼構造物用として常用されているV形開先、Y形開先等が例示できる。
ついで、上記開先加工された鋼材同士を、上記したワイヤ組成を有するソリッドワイヤを用いて、溶接して多層溶接金属を形成し、溶接継手とする。
使用するソリッドワイヤは、Mn含有量およびCr含有量が、それぞれ使用する鋼材のMn含有量およびCr含有量より少ないワイヤ組成を有するものとする。使用するソリッドワイヤのMn含有量および/またはCr含有量が、使用する鋼材のMn含有量および/またはCr含有量に比べて多い場合には、溶接金属全体の強度が低下し、また局部的な硬さが増加し、耐溶接割れ性が低下する。そのため、本発明では、Mn含有量およびCr含有量が、使用する鋼材のMn含有量およびCr含有量より少ないワイヤ組成を有するソリッドワイヤを使用する。これにより、形成される溶接金属が、容易に、所望の高強度で、かつ優れた極低温衝撃靭性を有するものになる。
使用する溶接法は、所望の特性を有する多層溶接金属部を形成できればよく、とくに限定する必要はないが、上記した鋼材と上記した溶接材料(ソリッドワイヤ)を用いて、所望の高強度、優れた極低温衝撃靭性を有する溶接金属とするために、ガスメタルアーク溶接とすることが好ましい。
ガスメタルアーク溶接は、「ガスシールドアーク溶接」とも称されており、一般に、溶接材料(溶加材)を電極として用いる「溶極式」(消耗電極式)とタングステン等の非消耗電極を用いる「非溶極式」(非消耗電極式)とに大別することができる。本発明では、特に限定されないが、所望の強度および極低温衝撃靭性を達成する観点から、前記ソリッドワイヤ(溶接材料)を電極として用いる「溶極式」(消耗電極式)で行うことが好ましい。
本発明では、多層溶接金属部における第1層目において、鋼材と溶接材料との混合の割合が所定の比率となるように溶接条件を調整する。
通常、多層溶接では、溶接金属は、鋼材起因の溶接金属(溶湯)と溶接材料起因の溶接金属(溶湯)が混り合って形成される。とくに、多層溶接金属部の第1層では、溶接金属に占める鋼材起因の溶接金属(溶湯)の割合が高くなり、溶接金属の特性を考慮するうえで、重要になる。このため、本発明では、第1層の溶接金属における鋼材の溶け込み度合(希釈率)が所定の範囲となるように調整して、溶接を行うこととした。
本発明では、第1層の溶接金属における鋼材の希釈率は、次(1)式で定義される値を用いるものとする。
希釈率(%)=100×{(第1層の溶接金属に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)}/{(鋼材に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)} ……(1)
ここで用いる「成分元素」は、鋼材、溶接材料(ソリッドワイヤ)に含まれる代表的な元素とすることが好ましい。例えば、本発明では、鋼材および溶接材料ともに含有され、しかも含有量が多いMn、Crとする。含有量が多い元素を使用すれば、それだけ測定精度も高くなる。多層溶接金属部の第1層の溶接金属、溶接される鋼材、および使用される溶接材料(ソリッドワイヤ)の所定の複数の測定位置で、これらの成分元素のいずれか1種について、例えば、EPMAを用いて、当該成分元素の含有量を測定し、それらの平均値を求め、上記(1)式を用いて希釈率を算出する。成分元素の含有量を測定する分析機器は、EPMA以外にも、蛍光X線分析や、化学分析などを用いてもよいことは言うまでもない。
本発明では、多層溶接金属部の第1層の溶接金属における鋼材の希釈率が、35〜60%となるように、溶接条件を調整する。
第1層溶接金属への鋼材の希釈率が35%未満では、溶接金属への鋼材の溶け込みが少なすぎて、溶接金属中のMn、Cr含有量が減少するため、凝固組織(デンドライト)が疎になり、耐溶接割れ性や極低温衝撃靭性は向上するが、溶接金属の強度が低下しすぎる。一方、鋼材の希釈率が高くなると、Mn、Crを多く含む凝固組織(デンドライト)となり、デンドライトが密になり、溶接金属強度が増加するが、溶接割れが発生しやすくなる。とくに、鋼材の希釈率が60%を超えて高くなりすぎると、溶接割れが発生したり、極低温衝撃靱性が低下するなどの問題がある。このため、溶接金属の第1層における鋼材の希釈率は、35〜60%の範囲に限定した。
通常、多層溶接金属部では、第1層の溶接金属において、他の層の溶接金属に比べて鋼材の溶け込み度合(希釈率)が高くなる。溶接金属層数の増加にともない、各層の溶接金属における鋼材の希釈率は減少し、第3層以降の層では、溶接金属の組成は溶接材料(ソリッドワイヤ)とほぼ同じ組成となる。したがって、鋼材の溶け込みが多くなる第1層の溶接金属において、溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)を所定の範囲となるように調整すれば、多層溶接金属部の溶接金属全体の特性を所望の特性に調整することが容易となる。このようなことから、本発明では、第1層の溶接金属において、溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)を所定の範囲となるように調整することにした。
第1層溶接金属への鋼材の溶け込み度合(希釈率)は、鋼材の板厚、開先形状、溶接条件によって、変化する。とくに、溶接条件のうち、溶接入熱量の影響が大きく、溶接入熱量の調整により、鋼材の溶け込み度合(希釈率)を変化させることが可能である。従って、溶接の実施に先立って模擬試験を行い、所望の希釈率が達成できる溶接入熱量を検討しておくことが好ましい。
例えば、予め、実際に溶接する鋼材で、実際に使用する開先形状に近い模擬試験材を作製し、実際に使用する溶接材料を用い、溶接入熱量を変化させて、1パスの試験溶接を100mm以上実施し、第1層を模した溶接金属を得る。得られた溶接金属の中央部でその組成をEPMA等で分析し、希釈率を算出することにより、所望の鋼材の希釈率が達成できる溶接条件(入熱量)を決定しておくことが好ましい。なお、板厚12mm以下の鋼材では、上記した所望の鋼材の希釈率を確保するためには、入熱:2.5kJ/mm以下とすることが好ましい。
つぎに、本発明で使用する高Mn含有鋼材の好ましい製造方法について説明する。
上記した鋼材組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等、常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法等の、常用の鋳造方法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材とする。溶製に際しては、真空脱ガス炉等による2次精錬を実施してもよいことは言うまでもない。得られた鋼素材を、さらに、加熱し、熱間圧延およびその後の冷却を施して、所定寸法の鋼材を得る。その際、鋼素材を加熱温度:1100〜1300℃の範囲の温度で加熱し、仕上圧延終了温度:790〜980℃で熱間圧延を終了し、直ちに冷却等を施すことにより、極低温衝撃靭性に優れた鋼材を得ることができる。また、鋼材特性の調整のために、さらに、焼鈍処理等の熱処理を行ってもよいことは言うまでもない。
また、本発明で使用するソリッドワイヤの好ましい製造方法について説明する。
本発明で使用するソリッドワイヤでは、常用の溶接用ソリッドワイヤの製造方法がいずれも適用できる。例えば、上記したワイヤ組成を有する溶鋼を、電気炉、真空溶解炉等、常用の溶製方法で溶製し、所定形状の鋳型等に鋳造して鋼塊を得る鋳造工程と、得られた鋼塊を、所定温度に加熱する加熱工程と、加熱された鋼塊に、熱間圧延を施し、所定形状の鋼素材(棒状)とする熱延工程と、を順次行い、ついで、得られた鋼素材(棒状)を複数回の冷間圧延(冷間伸線加工)と必要に応じて焼鈍を施して、所望寸法のワイヤとする冷延工程を行う、ことが好ましい。なお、焼鈍は、焼鈍温度:1000〜1200℃で均熱することが好ましい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
真空溶解炉で溶鋼を溶製し、鋳型に鋳造したのち、分塊圧延して表1に示す組成(鋼材組成)のスラブ(肉厚:150mm)とし、鋼素材を得た。次いで、得られた鋼素材を、加熱炉に装入して、1250℃に加熱し、仕上圧延終了温度:850℃とする熱間圧延を施した後、直ちに、水冷処理を施し、板厚:12mmの鋼板(高Mn含有鋼材)を得た。
また、表2に示す組成(ワイヤ組成)の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、鋳造して鋼塊を得た。得られた鋼塊を、加熱炉で1200℃に加熱し、熱間圧延を施し棒状の鋼素材を得た。得られた棒状の鋼素材にさらに、焼鈍を挟んで複数回の冷間圧延を施し、溶接用ソリッドワイヤ(1.2mmφ)を得た。
得られた鋼材(板厚12mm鋼板)を用いて、JIS Z 3111に準拠して、V形開先(開先角度:45°)を形成した。そして、その開先内に、得られた溶接用ソリッドワイヤ(1.2mmφ)を溶接材料として電極に用い、溶極式(消耗電極式)ガスメタルアーク溶接(ガス雰囲気:Ar+20%CO2)を行い、多層(4パス)の溶接金属を形成して、溶接継手を得た。溶接継手の製造に当たっては、表3に示すように、鋼材(鋼板)と溶接材料(ソリッドワイヤ)とを組み合わせた。また、溶接入熱は、表3に示すように0.5kJ/mmから3.5kJ/mmの範囲で変化させ、第1層の溶接金属への鋼材の希釈率を変化させた。
なお、溶接金属の第1層における鋼材(鋼板)の希釈率は、予備的試験を実施して求めた。具体的には、予め、実際に溶接する鋼材で、実際に使用する開先形状を形成し、実際に使用する溶接材料を用い、実際の溶接入熱量で、1パスの試験溶接を100mm以上実施した。得られた溶接金属の中央部でその組成をEPMAで分析し、次(1)式
希釈率(%)=100×{(溶接金属に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)}/{(鋼材に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)} ……(1)
を用いて、希釈率を算出した。ここで、成分元素としては、Mnを用いた。求めた希釈率を表3に示す。
得られた溶接継手から、JIS Z 3111の規定に準拠して、引張試験片(平行部径6mmφ)、およびシャルピー衝撃試験片(Vノッチ:ノッチ位置溶接金属部)を採取し、引張試験、シャルピー衝撃試験を実施し、溶接金属部の強度、極低温衝撃靭性を評価した。
引張試験は、室温で各3本の試験片にて実施し、得られた降伏応力YSの値(0.2%耐力)の平均値で、当該溶接金属の強度を評価した。また、シャルピー衝撃試験は、試験温度:−196℃で各3本の試験片にて実施し、吸収エネルギーvE-196を求め、その平均値で、当該溶接金属の極低温衝撃靭性を評価した。
また、溶接金属部について、光学顕微鏡および実体顕微鏡(倍率:400倍)を用いて溶接割れ(高温割れ)の有無を観察し、耐溶接割れ(高温割れ)性を評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0006978613
Figure 0006978613
Figure 0006978613
本発明例ではいずれも、常温における降伏応力(0.2%耐力)が400MPa以上で、試験温度:−196℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーvE-196が28J以上と、高強度と優れた極低温衝撃靭性を兼備する溶接金属を有する高強度溶接継手が得られた。
一方、本発明の範囲を外れる比較例の溶接継手では、常温における降伏応力(0.2%耐力)が400MPa未満であるか、溶接割れが発生しているか、試験温度:−196℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーvE-196が28J未満であるかして、高強度と優れた極低温衝撃靭性を兼備し耐溶接割れ性に優れた溶接金属が得られなかった。
中でも、Mn含有量またはCr含有量が鋼材のものより多い溶接材料(ソリッドワイヤ)を用いた点のみが本発明の範囲外である比較例の溶接継手12および13では、溶接金属強度が低下するとともに、局部的な硬化部が生じ、溶接割れが発生した。

Claims (3)

  1. 極低温用高強度高Mn含有鋼材同士をソリッドワイヤを用いてガスメタルアーク溶接し、多層溶接金属部を形成する極低温用高強度溶接継手の製造方法であって、
    該極低温用高強度高Mn含有鋼材が、質量%で、
    C:0.10〜0.70%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:18〜30%、
    P:0.030%以下、
    S:0.0070%以下、
    Al:0.01〜0.07%、
    Cr:2.5〜7.0%、
    N:0.0050〜0.0500%、および
    O(酸素):0.0050%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材組成を有し、
    該ソリッドワイヤが、質量%で、
    C:0.2〜0.8%、
    Si:0.15〜0.90%、
    Mn:17.0〜28.0%、
    P:0.03%以下、
    S:0.03%以下、
    Ni:0.01〜10.0%、
    Cr:0.4〜4.0%、
    Mo:0.02〜2.5%、
    Al:0.1%以下、
    N:0.12%以下、および
    O(酸素):0.04%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるワイヤ組成を有し、かつ該ソリッドワイヤのMnおよびCrの含有量が、それぞれ該鋼材のMnおよびCrの含有量より少なく、
    下記(1)式で定義される該多層溶接金属部における第1層の溶接金属への該鋼材の希釈率が35〜60%となるように、前記ガスメタルアーク溶接の溶接条件を調整することを特徴とする極低温用高強度溶接継手の製造方法。

    希釈率(%)=100×{(第1層の溶接金属に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(該ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)}/{(該鋼材に含まれる成分元素の含有量:質量%)−(該ソリッドワイヤに含まれる成分元素の含有量:質量%)} ……(1)
  2. 前記極低温用高強度高Mn含有鋼材が、前記鋼材組成に加えてさらに、質量%で、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、REM:0.0010〜0.0200%およびB:0.0005〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の極低温用高強度溶接継手の製造方法。
  3. 前記ソリッドワイヤが、前記ワイヤ組成に加えてさらに、質量%で、V:1.0%以下、Ti:1.0%以下およびNb:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の極低温用高強度溶接継手の製造方法。
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