JP2007092164A - 伸線性と疲労特性に優れた鋼線材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶鋼処理時のガス撹拌におけるガス流量を、溶鋼1トンあたり0.0005Nm3/min以上0.004Nm3/min以下とすることによって、規定の成分組成を満たすと共に、鋼線材の軸心線を含む任意の断面に存在する下記X組成を満たす圧延方向に垂直な幅が2μm以上の酸化物系介在物であって、下記A組成の上記酸化物系介在物が1個以上20個以下で、かつ下記B組成の上記酸化物系介在物が1個未満である鋼線材を得るようにする。
A組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
20%≦CaO≦50%、かつAl2O3≦30%
B組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
CaO>50%
【選択図】図4
Description
C:0.4〜1.3%(質量%の意味、鋼成分について以下同じ)、
Si:0.1〜2.5%、
Mn:0.2〜1.0%、
Al:0.003%以下(0%を含まない)を含み、
残部Feおよび不可避不純物であり、
鋼線材の軸心線を含む断面に存在する、圧延方向に垂直な幅が2μm以上の酸化物系介在物が、下記X組成を満たす鋼線材において、
X組成:Al2O3+MgO+CaO+SiO2+MnO=100%(質量%の意味、 介在物について以下同じ)とした場合に、
Al2O3+CaO+SiO2≧70%
A組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
20%≦CaO≦50%、かつAl2O3≦30%
B組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
CaO>50%
(a)Ni:0.05〜1%や、
(b)Cu:0.05〜1%および/またはCr:0.05〜1.5%、
(c)Li:0.02〜20ppm、Na:0.02〜20ppm、Ce:3〜100ppm、およびLa:3〜100ppmよりなる群から選択される1種以上
を含むものであってもよい。
X組成:Al2O3+MgO+CaO+SiO2+MnO=100%(質量%の意味) とした場合に、
Al2O3+CaO+SiO2≧70%
・下記A組成を満たす上記酸化物系介在物(この様に、X組成を満たす上記圧延方向に垂直な幅が2μm以上の酸化物系介在物のうち、A組成を満たす酸化物系介在物を、以下、単に「A組成介在物」ということがある)が、鋼線材の軸心線を含む断面100mm2あたり1個以上20個以下であると共に、
・下記B組成を満たす上記酸化物系介在物(この様に、X組成を満たす上記圧延方向に垂直な幅が2μm以上の酸化物系介在物のうち、B組成を満たす酸化物系介在物を、以下、単に「B組成介在物」ということがある)が、鋼線材の軸心線を含む断面100mm2あたり1個未満であるものが、特に伸線性と疲労特性に優れていることを見出した。
A組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
20%≦CaO≦50%、かつAl2O3≦30%
B組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
CaO>50%
Cは、強度の向上に有用な元素であることから0.4%以上含有させる。好ましくは0.5%以上である。しかしC量が過剰になると、鋼が脆化して伸線性が損なわれるので1.3%以下(好ましくは1.2%以下)に抑える。
Siは、脱酸作用を有する元素であり、該作用を発揮させるには0.1%以上含有させる必要がある。好ましくは0.2%以上である。但しSi量が過剰になると、脱酸生成物としてSiO2が多く生成し伸線性が損なわれるので、2.5%以下(好ましくは2.3%以下)に抑える。
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有すると共に、介在物制御作用を有する元素である。これらの作用を有効に発揮させるべくMnを0.2%以上(好ましくは0.3%以上)含有させる。一方、Mn量が過剰になると、鋼材が脆化して伸線性が損なわれるので1.0%以下(好ましくは0.9%以下)に抑える。
Alは介在物制御に有用な元素であり0.001%程度は必要である。しかし、Al含有量が多くなると介在物中のAl2O3濃度が高くなり、断線の原因となる粗大Al2O3が生成する可能性があるので、0.003%以下(好ましくは0.002%以下)に抑える。
Niは、伸線材の靭性を高める効果を発揮する元素であり、該効果を発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましく0.06%以上である。しかしNiを過剰に含有させても上記効果は飽和するだけであるので、1%以下(より好ましくは0.9%以下)とすることが好ましい。
Cu、Crは鋼線の高強度化に寄与する元素であり、Cuは、析出硬化作用により鋼線の強度を高めるのに有用な元素である。Cuの上記効果を発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましく0.06%以上である。しかしCuを過剰に含有させると、結晶粒界に偏析し、鋼材の熱間圧延工程で割れやキズが発生し易くなるので、1%以下(より好ましくは0.9%以下)とすることが好ましい。
これらの元素は、鋼中の非金属介在物をより軟質化する作用を有する。該効果を発揮させるには、Liの場合0.02ppm以上(より好ましくは0.03ppm以上)、Naの場合0.02ppm以上(より好ましくは0.03ppm以上)、Ceの場合3ppm以上(より好ましくは5ppm以上)、Laの場合3ppm以上(より好ましくは5ppm以上)含有させることが好ましい。しかし上記元素を過剰に入れても効果は飽和するだけであるので、Li、Naはそれぞれ20ppm以下(より好ましくは10ppm以下)に抑えるのがよい。またCe、Laはそれぞれ100ppm以下(より好ましくは80ppm以下)に抑えるのがよい。
溶銑予備処理工程において、Pを0.007〜0.020%、Sを0.002〜0.01%にまで低下させた各種溶銑:240tを、冷銑:0〜5tおよび/または屑鋼:0〜4tとともに転炉に装入した。このとき、溶銑、冷銑および屑鋼は、これらの全鉄源の平均P濃度が0.020%以下となるように配合した。転炉にて、所定の濃度にまで脱C吹錬し、その後、取鍋へ出鋼し、取鍋加熱精錬装置にて成分調整(成分については下記表1参照)とスラグ精錬を実施した。尚、取鍋精錬時のスラグは、CaO/SiO2=0.7〜1.7、Al2O3=4〜25%のCaO−SiO2−Al2O3系である。また、取鍋精錬時の撹拌ガスにはArを用い、その流量を溶鋼1tあたり0.0003〜0.012Nm3/minの範囲で変化させた。ガス撹拌時間はいずれも15分以上とした。
X組成:Al2O3+MgO+CaO+SiO2+MnO=100%(質量%の意味、
介在物について以下同じ)とした場合に、
Al2O3+CaO+SiO2≧70%
A組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
20%≦CaO≦50%、かつAl2O3≦30%
B組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
CaO>50%
[評価方法]
5.5mmφ→0.2mmφへ伸線時の断線回数
[伸線方法]
上記5.5mmφの鋼線材の酸化皮膜を塩酸で除去した後、連続伸線機(昭和機械社製:型式 CD−610−7+BD610)で1.2mmφまで乾式伸線を行った。この伸線工程で用いた伸線ダイスの径は、4.8、4.2、3.7、3.26、2.85、2.5、2.2、1.93、1.69、1.48、1.3(いずれも単位:mm)である。また1.2mmφでの線引き速度は400m/minである。伸線に際し、線材の表面には、予めリン酸亜鉛の皮膜処理を行い、潤滑剤はステアリン酸ナトリウム主体のものを用いた。
上記実施例1と同様に、溶銑予備処理、転炉操業、スラグ精錬、連続鋳造、分塊圧延および熱間圧延を行って8mmφの線材を得た後、得られた線材の介在物組成、大きさおよび個数の測定を、上記実施例1と同様の方法で測定した。尚、介在物形態の詳細な測定結果の一例として、No.18の測定結果を表5に、またNo.22の測定結果を表6に示す。その他の例についても同様の測定を行った。
8.0mmφの鋼線材の中村式回転曲げ疲労試験
[試料の調製方法および試験方法]
8.0mmφの線材に、オイルテンパー→歪取焼鈍→ショットピーニング処理→再度歪取焼鈍を施した後、中村式回転曲げ疲労試験機を用いて下記条件で疲労試験を行い、折損率を求めて疲労特性の評価を行った。
試験片長さ:650mm
試験片本数:30本
試験荷重:95.8kgf/mm2(940MPa)
回転速度:4500rpm
試験中止回数:2×107回
折損率の算出式:破損率=折損本数/(全ての供試験片) ×100(%)
Claims (5)
- C:0.4〜1.3%(質量%の意味、鋼成分について以下同じ)、
Si:0.1〜2.5%、
Mn:0.2〜1.0%、
Al:0.003%以下(0%を含まない)を含み、
残部Feおよび不可避不純物であり、
鋼線材の軸心線を含む任意の断面に存在する、圧延方向に垂直な幅が2μm以上の酸化物系介在物が、下記X組成を満たす鋼線材において、
X組成:Al2O3+MgO+CaO+SiO2+MnO=100%(質量%の意味、
介在物について以下同じ)とした場合に、
Al2O3+CaO+SiO2≧70%
下記A組成を満たす上記酸化物系介在物が、上記断面100mm2あたり1個以上20個以下であり、かつ下記B組成を満たす上記酸化物系介在物が、上記断面100mm2あたり1個未満であることを特徴とする伸線性と疲労特性に優れた鋼線材。
A組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
20%≦CaO≦50%、かつAl2O3≦30%
B組成:Al2O3+CaO+SiO2=100%とした場合に、
CaO>50% - 更に他の元素として、
Ni:0.05〜1%を含む請求項1に記載の鋼線材。 - 更に他の元素として、
Cu:0.05〜1%および/またはCr:0.05〜1.5%
を含む請求項1または2に記載の鋼線材。 - 更に他の元素として、
Li:0.02〜20ppm、
Na:0.02〜20ppm、
Ce:3〜100ppm、および
La:3〜100ppm
よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載の鋼線材。 - 前記請求項1〜4のいずれかに記載の鋼線材の製造方法であって、
溶鋼処理時のガス撹拌におけるガス流量を、溶鋼1トンあたり0.0005Nm3/min以上0.004Nm3/min以下とすることを特徴とする伸線性と疲労特性に優れた鋼線材の製造方法。
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