JP2010144225A - 機械構造用鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.13〜0.50%、Si:0.03〜1.00%、Mn:0.20〜2.5%、P≦0.040%、S:0.010%超〜0.030%、Cr:0.05〜2.5%、Al≦0.005%、Ca:≦0.0005%、N≦0.020%、O≦0.0020%を含有し、残部はFeと不純物からなる化学成分を有し、非金属介在物について、酸化物の平均組成が、CaO:10〜60%、Al2O3≦35%、MnO≦35%及びMgO≦15%で、鋼材の長手方向縦断面10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値と硫化物の最大厚さの算術平均の値が、それぞれ、12μm以下及び3.5〜12μmである機械構造用鋼材。
【選択図】なし
Description
(a)鋼のいわゆる「二次精錬」の過程におけるスラグの主要構成成分を主にCaOおよびSiO2とし、さらに、Al2O3が極力少量となるように厳密な制御を行うことで、軟質な酸化物が得られること、さらには、この軟質酸化物は圧下を加えることによって微細化できること、
(b)上記(a)のようにして精錬する方法で製造された鋼の場合、硫化物中にMnOと思われる酸化物が含有されやすくなる傾向があり、この硫化物は従来のAl添加により脱酸処理した軸受鋼中の硫化物とは異なり、圧下によって延伸、分断されることが難しいが、Sの含有量を質量%で、0.010%以下とし、かつ、圧下比、加工温度などの圧下条件を適正に制御すれば、酸化物だけではなく硫化物をも延伸、分断させて微細化することができ、結果として、過酷な使用環境下においても、優れた転動疲労寿命を有する軸受鋼鋼材を得ることができること、
を見出し、特願2007−204872の特許出願で「軸受鋼鋼材およびその製造方法」を提案した。
ただし、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた機械構造用鋼材の断面積で除した値を指し、また、850℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた機械構造用鋼材の断面積で除した値を指す。
C:0.13〜0.50%
Cは、鋼を強化する作用を有する元素であり、0.13%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなって、特に0.50%を超えると、母材の硬さが高くなりすぎて切削時の工具寿命の低下をきたすばかりか、焼割れの原因ともなる。したがって、Cの含有量を0.13〜0.50%とした。なお、C含有量の好ましい下限は0.15%であり、好ましい上限は0.45%である。より一層好ましいC含有量の上限は0.42%である。
Siは、焼入れ性の向上、フェライトの強化、疲労強度の向上に有効な元素であり、0.03%以上含有させなければならない。しかしながら、1.00%を超えてSiを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下をきたす。したがって、Siの含有量を0.03〜1.00%とした。なお、Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、0.15%であればさらに好ましい。また、Si含有量の好ましい上限は0.95%であり、0.90%であればさらに好ましい。
Mnは、焼入れ性の向上、フェライトの強化、疲労強度の向上に有効な元素であり、0.20%以上含有させなければならない。しかしながら、2.5%を超えてMnを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、Mnの含有量を0.20〜2.5%とした。なお、Mn含有量の好ましい下限は0.50%であり、0.60%であればさらに好ましい。また、Mn含有量の好ましい上限は2.3%であり、2.1%であればさらに好ましい。
Pは、不純物として含有される元素である。粒界に偏析しやすく、粒界を脆化させ、特に、その含有量が0.040%を超えると粒界破壊が顕著となる。したがって、Pの含有量を0.040%以下とした。なお、Pの含有量は、0.035%以下であることが好ましく、0.030%以下であればさらに好ましい。
Sは、硫化物を形成して、切削性を向上させるのに有効な元素であり、0.010%を超える量を含有させなくてはならない。しかしながら、Sの含有量が0.030%を超えると、粗大な硫化物が残存するため疲労強度の低下を招いてしまう。したがって、Sの含有量を0.010%を超えて0.030%以下とした。なお、S含有量の好ましい上限は0.028%である。
Crは、焼入れ性を高める作用を有する。Crは、フェライトの強化作用および疲労強度の向上作用も有する。これらの効果を得るためには、0.05%以上のCrを含有させなければならない。しかしながら、2.5%を超えてCrを含有させると、母材の硬さが高くなって切削時の工具寿命の低下をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、Crの含有量を0.05〜2.5%とした。なお、Cr含有量の好ましい下限は0.08%であり、0.10%であればさらに好ましい。また、Cr含有量の好ましい上限は2.3%であり、2.1%であればさらに好ましい。
Alは、好ましくない元素であり、本発明においては、Alは極力少なくする必要がある。したがって、後述するように一次精錬後のAl添加による脱酸処理は行わないし、フラックスを投入して新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する際に用いるフラックスもAl2O3の含有量の少ない、実質的にAlを含有しないものを用いる。しかしながら、Alの含有量が多くなって、特に、0.005%を超えると、Al2O3を主体とする硬質な酸化物の生成量が多くなり、しかも、圧下した後も粗大な酸化物として残存するので、疲労強度が低くなってしまう。したがって、Alの含有量を0.005%以下とした。なお、Alの含有量は0.003%以下であることが好ましく、低ければ低いほどよい。
本発明においては、後述するように、一次精錬で生成したスラグの除滓後に、主成分がCaOであるフラックスを投入して、新たに生成されたスラグと溶鋼を強攪拌する。この際に、Caは軟質な酸化物として、フラックスから鋼中に極微量混入する。ただし、Caの含有量が多くなり、0.0005%を超えると、酸化物組成におけるCaOの割合が高くなりすぎて、粗大な酸化物となってしまう。したがって、Caの含有量を0.0005%以下とした。好ましいCa含有量は、0.0003%以下であり、さらに好ましくは0.0002%以下である。なお、含有されるCaの量の下限値は、特に規定するものではなく、鋼材中の酸化物の平均組成におけるCaOが10%以上であればよい。
Nは、不純物として含有される元素である。このNには、Nb、V、Tiと窒化物や炭窒化物を形成して組織を微細化し、疲労強度を向上させる作用がある。しかしながら、0.020%を超えてNを含有させると、靱性が劣化し、特に、Tiを含有する場合には、粗大な窒化物を生成し、却って疲労強度の低下を招くおそれがある。したがって、Nの含有量を0.020%以下とした。Nの含有量は0.018%以下であることが好ましい。
Oは、好ましくない不純物元素である。Oの含有量が多くなって、特に、0.0020%を超えると、圧下した後に粗大な酸化物として残存し、疲労強度の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0020%以下とした。なお、好ましいO含有量の範囲は0.0015%以下である。
Cuは、焼入れ性を高め、強度を向上する作用を有する。このため、上記の効果を得るためにCuを含有してもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えると、母材の硬さが高くなって、切削時の工具寿命の低下をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、含有させる場合のCuの量を1.0%以下とした。なお、Cu含有量の上限は0.50%とすることが好ましく、0.30%とすれば一層好ましい。一方、前記したCuの効果を確実に得るためには、Cu含有量の下限を0.05%とすることが好ましく、0.07%とすれば一層好ましい。
Niは、焼入れ性を高め、強度を向上する作用を有する。このため、上記の効果を得るためにNiを含有してもよい。しかしながら、Niの含有量が3.0%を超えると、母材の硬さが高くなって、切削時の工具寿命の低下をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、含有させる場合のNiの量を3.0%以下とした。なお、Ni含有量の上限は2.0%とすることが好ましく、1.0%とすれば一層好ましい。一方、前記したNiの効果を確実に得るためには、Ni含有量の下限を0.05%とすることが好ましく、0.07%とすれば一層好ましい。
Moは、焼入れ性を高め、強度を向上する作用を有する。このため、上記の効果を得るためにMoを含有してもよい。しかしながら、Moの含有量が0.50%を超えると、母材の硬さが高くなって、切削時の工具寿命の低下をきたし、さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、含有させる場合のMoの量を0.50%以下とした。なお、Mo含有量の上限は0.30%とすることが好ましく、0.25%とすれば一層好ましい。一方、前記したMoの効果を確実に得るためには、Mo含有量の下限を0.02%とすることが好ましく、0.10%とすれば一層好ましい。
Nbは、窒化物や炭窒化物形成による組織の微細化および炭化物形成によるフェライト強化によって、強度を向上する作用を有する。このため、上記の効果を得るためにNbを含有してもよい。しかしながら、Nbの含有量が0.10%を超えると、粗大な窒化物を形成して疲労強度を低下させ、さらには、母材の硬さが硬くなって切削時の工具寿命の低下をきたす。したがって、含有させる場合のNbの量を0.10%以下とした。なお、Nb含有量の上限は0.070%とすることが好ましく、0.050%とすれば一層好ましい。一方、前記したNbの効果を確実に得るためには、Nb含有量の下限を0.010%とすることが好ましく、0.012%とすれば一層好ましい。
Vは、窒化物や炭窒化物形成による組織の微細化および炭化物形成によるフェライト強化によって、強度を向上する作用を有する。このため、上記の効果を得るためにVを含有してもよい。しかしながら、Vの含有量が0.50%を超えると、粗大な窒化物を形成して疲労強度を低下させ、さらには、母材の硬さが硬くなって切削時の工具寿命の低下をきたす。したがって、含有させる場合のVの量を0.50%以下とした。なお、V含有量の上限は0.45%とすることが好ましく、0.40%とすれば一層好ましい。一方、前記したVの効果を確実に得るためには、V含有量の下限を0.010%とすることが好ましく、0.030%とすれば一層好ましい。
Bは、微量を添加するだけで鋼の焼入れ性を大きく向上させ、強度を向上させることができる元素である。このため、上記の効果を得るためにBを含有してもよい。しかしながら、Bの含有量が0.0050%を超えてもその効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Bの含有量を0.0050%以下とした。なお、B含有量の上限は0.0045%とすることが好ましい。一方、前記したBの効果を確実に得るためには、B含有量の下限を0.0005%とすることが好ましい。
Tiは、窒化物や炭窒化物を形成することにより組織を微細化したり、炭化物を形成することでフェライトを強化し、強度を向上させるのに有効な元素である。このため、上記の効果を得るためにTiを含有してもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.10%を超えると、粗大なTiNを多量に形成して疲労強度を低下させ、さらには、Tiの強化作用によって母材の硬さが硬くなって切削時の工具寿命の低下をきたす。したがって、含有させる場合のTiの量を0.10%以下とした。なお、Ti含有量の上限は0.050%とすることが好ましい。一方、前記したTiの効果を確実に得るためには、Ti含有量の下限を0.005%とすることが好ましい。
(B−1)酸化物の平均組成:
本発明においては、非金属介在物について、先ず、酸化物の平均組成におけるCaO、Al2O3、MnOおよびMgOが、質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下でなければならない。以下、質量%での酸化物の平均組成における含有量を「濃度」ともいう。
酸性酸化物であるSiO2を基本組成とする酸化物は、塩基性であるCaOを含むことにより酸化物の液相線温度が下がり、圧延などの圧下温度域で延性を示すようになる。上記の効果は、酸化物の平均組成におけるCaO濃度が10%以上で得られるが、60%を超えると相対的にSiO2濃度が低下するため却って延性を示さなくなる。したがって、酸化物の平均組成におけるCaO濃度を10〜60%とした。なお、圧延などの圧下温度域で安定した延性が得られるようにするための上記CaO濃度の好ましい上限は50%である。
両性酸化物であるAl2O3の酸化物の平均組成における濃度が35%を超えると、Al2O3(コランダム)相が晶出したり、後述するMgOとともにMgO・Al2O3(スピネル)相が晶出する。これらの固相は硬質で圧延などの圧下でも延伸することなく、晶出した際の厚みを保つ。したがって、酸化物の平均組成におけるAl2O3濃度は35%以下とする必要がある。なお、前記硬質相の生成を安定かつ確実に抑制するための上記Al2O3濃度の好ましい上限は25%である。
MnOは、酸化物としては塩基性を有し、SiO2系の軟質化を助長するので、比較的高い濃度まで許容できる。しかしながら、MnOは鋼が弱脱酸状態の時に安定な、いわゆる「低級酸化物」であり、MnO濃度が高いと鋼中のO(酸素)の含有量も高くなる。すなわち、酸化物の平均組成におけるMnO濃度が35%を超えるとO含有量を0.0020%以下とすることができない場合がある。したがって、酸化物の平均組成におけるMnO濃度を35%以下とした。なお、前述したOの含有量を0.0015%以下にするために、酸化物の平均組成におけるMnO濃度は25%以下とすることが好ましい。
MgOは、塩基性酸化物であり、少量ではSiO2系酸化物の軟質化ができるが、一方でその溶解度が低く、硬質のMgO(ペリクレース)相およびAl2O3とともにMgO・Al2O3(スピネル)相が晶出する。酸化物の平均組成におけるMgOが15%を超えると、上述した硬質相を晶出する蓋然性が高くなる。したがって、酸化物の平均組成におけるMgO濃度を15%以下とした。なお、前記した硬質相の晶出をより確実に抑制するために、酸化物の平均組成におけるMgO濃度は10%以下とすることが好ましい。
酸化物、硫化物の双方ともに、その厚さが大きい場合には、疲労強度の低下を招く。疲労強度に最も影響を及ぼすものは、最大応力位置付近に存在する最も粗大な介在物である。
本発明(1)および(2)の機械構造用鋼材は、例えば、本発明(3)の方法、具体的には、前記(A)項で述べた化学成分からなり、非金属介在物について前記(B−1)項で述べた酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで850℃以下の温度域での圧下比を6以上として圧下することによって、製造することができる。
表1に示す種々の化学組成を有する機械構造用鋼の鋳片1〜29を製造した。
実施例1で作製した鋼3、鋼13、鋼17、鋼26および鋼29の300mm×400mmの鋳片を1250℃で均熱した後、1100〜1050℃の温度域で分塊圧延して160×160mmの鋼片にした。
〔2〕鋼片を860℃に加熱した後、830〜780℃の温度域で棒鋼圧延して、φ65mmの棒鋼を製造、
〔3〕鋼片を800℃に加熱した後、750〜700℃の温度域で棒鋼圧延して、φ65mmの棒鋼を製造、
〔4〕鋼片を1200℃に加熱した後、1100〜1020℃の温度域で棒鋼圧延して、φ110mmの棒鋼を製造、
〔5〕鋼片を860℃に加熱した後、830〜780℃の温度域で棒鋼圧延して、φ110mmの棒鋼を製造。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.13〜0.50%、Si:0.03〜1.00%、Mn:0.20〜2.5%、P:0.040%以下、S:0.010%を超えて0.030%以下、Cr:0.05〜2.5%、Al:0.005%以下、Ca:0.0005%以下、N:0.020%以下およびO:0.0020%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる化学成分を有し、非金属介在物について、酸化物の平均組成におけるCaO、Al2O3、MnOおよびMgOが、質量%で、CaO:10〜60%、Al2O3:35%以下、MnO:35%以下およびMgO:15%以下であるとともに、鋼材の長手方向縦断面10箇所の100mm2の面積中に存在する酸化物の最大厚さの算術平均の値および硫化物の最大厚さの算術平均の値がそれぞれ、12μm以下および3.5〜12μmであることを特徴とする機械構造用鋼材。
- 化学成分が、質量%で、さらに、Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Mo:0.50%以下、Nb:0.10%以下、V:0.50%以下、B:0.0050%以下およびTi:0.10%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼材。
- 請求項1または2に記載の化学成分および酸化物の平均組成を有する鋳片または鋼塊に、全圧下比が15以上となる圧下を加え、しかも、その圧下のうちで850℃以下の温度域での圧下比を6以上として圧下することを特徴とする機械構造用鋼材の製造方法。
ただし、全圧下比とは、鋳片または鋼塊の断面積を最終の圧下によって得られた機械構造用鋼材の断面積で除した値を指し、また、850℃以下の温度域での圧下比とは、前記温度域での圧下前の中間鋼材の断面積を最終の圧下によって得られた機械構造用鋼材の断面積で除した値を指す。 - 鋳片または鋼塊が、一次精錬後に、Al脱酸処理を行わずに、実質的にAlを含有しないフラックスを用いて二次精錬を行い、二次精錬終了後の最終的なスラグの塩基度CaO/SiO2の値が0.8〜2.0で、かつスラグ組成が質量%で、MgO:15%以下、F:10%以下、Al2O3:15%以下になるように制御し、続いて鋳造されたものであることを特徴とする請求項3に記載の機械構造用鋼材の製造方法。
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