JP2014189860A - 疲労強度に優れる鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の化学成分組成を有し、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上である。(a)構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al2O3、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む、(b)上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al2O3+MgO+CaO≦50%、(c)当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下、(d)当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下、(e)当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上
【選択図】図2
Description
鋼中に含まれる酸化物系介在物のうち、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上であることを特徴とする疲労強度に優れる鋼板にある(請求項1)。
(a) 構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al2O3、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む
(b) 当該複合酸化物系介在物中に含有される上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al2O3+MgO+CaO≦50%
(c) 当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下
(d) 当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下
(e) 当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上
脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌することにより、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上が上記条件(b)を満足する複合酸化物系介在物となるよう調整する精錬工程と、
該精錬工程により作製された上記溶鋼を鋳造して鋼塊を得る鋳造工程と、
上記鋼塊を熱間加工することにより、上記複合酸化物系介在物の幅寸法を縮小させるとともに長さを延伸させた状態とした熱延板を得る熱間加工工程と、
上記熱延板を冷間圧延することにより、上記熱間加工工程により延伸させた上記複合酸化物系介在物を複数に破砕分断させた状態とした冷延板を得る冷間圧延工程とを有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法にある(請求項3)。
また、上記製造方法を適用することにより、上記の優れた鋼板を容易に製造することができる。
C:0.30%〜0.80%、
C(炭素)は、鋼板の強度を確保するために0.30%以上含有させる。好ましくはC含有率を0.45%以上とするのがよい。一方、Cは、過剰に添加すると加工性が低下するだけでなく、鋼中に粗大な炭化物を形成して疲労強度低下を招くため、C含有率の上限は0.80%とする。好ましくはC含有率を0.55%以下とするのがよい。
Si(ケイ素)は、脱酸と鋼の強化のために有効な元素であると共に、脱酸により上記特定複合酸化物系介在物を構成するSiO2を生成するために必要な元素である。この効果を発揮するためには0.20%以上のSi添加が必要である。好ましくはSi含有率を0.60%以上がよい。ただしSiを過剰に添加すると複合酸化物組成のうちSiO2の含有率が高くなりすぎ、冷間圧延性の著しい低下を招くとともに、所定の介在物形態を得ることが難しくなるので、Si含有率の上限は1.50%とする。好ましくはSi含有率を1.20%以下とするのがよい。
Mn(マンガン)は、脱酸と鋼の強化のために有効な元素であると共に、脱酸により上記特定複合酸化物系介在物を構成するMnOを生成するために必要な元素である。この効果を発揮するためには0.20%以上のMn添加が必要である。好ましくはMn含有率を0.60%以上がよい。ただしMnを過剰に添加すると鋼の製造性が悪化するとともにコストアップを招く。また、Mn含有率を高くしすぎると、複合酸化物組成のうちMnOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることが難しくなるので、Mn含有率の上限は1.50%とする。好ましくはMn含有率を1.20%以下とするのがよい。
Al(アルミニウム)は、上記特定複合酸化物系介在物を構成するAl2O3を生成しうるために必要な元素である。鋼中にAl2O3を含むためには少なくとも0.001%のAl添加が必要である。ただしAlを過剰に添加しようとすると精錬工程において、Alによる脱酸の影響が大きくなって複合酸化物中のAl2O3+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Al含有率の上限は0.050%とする。好ましくはAl含有率を0.010%以下とするのがよい。
Ti(チタン)の含有率は、疲労特性低下の原因となるTiNなどの硬質介在物の生成を抑制するため含有率を低減する必要があり、0.030%を上限とする。Ti含有率を0.030%以下とすることにより、Nの含有率が高めになった場合でもTiNの生成を抑制することがでる。
Ca(カルシウム)は、Alの酸化物がクラスター状の凝集した酸化物となるのを抑制し、また複合酸化物系介在物を低融点化させる効果がある。この効果を得るためには0.001%以上のCaを添加することが好ましい。ただしCaを過剰に添加しても効果が飽和するだけでなく、Alの含有率によっては、複合酸化物中のAl2O3+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Ca含有率の上限は0.050%とする。好ましくはCa含有率は0.010%以下とするのがよい。
Mg(マグネシウム)は、Alの酸化物がクラスター状の凝集した酸化物となるのを抑制し、また複合酸化物系介在物を低融点化させる効果がある。この効果を得るために、0.001%以上のMgを添加することが好ましい。ただしMgを過剰に添加しても効果が飽和するだけでなく、Alの含有率によっては、複合酸化物中のAl2O3+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Mg含有率の上限値は0.050%とする。より好ましくは、Mg含有率を0.020%以下とするのがよい。
Cr(クロム)は、含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭、窒化)による高強度化も可能となる。好ましくはCr含有率を1.00%以上とするのがよい。ただしCrを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためCr含有率の上限は4.00%とする。より好ましくはCr含有率を3.50%以下とするのがよい。
V(バナジウム)を含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭、窒化)による高強度化も可能となる。好ましくはV含有率を0.20%以上とするのがよい。ただしVを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためV含有率の上限は1.20%とする。より好ましくはV含有率を0.40%以下とするのがよい。
Mo(モリブデン)は、含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭)による高強度化も可能となる。好ましくはMo含有率を0.80%以上とするのがよい。ただしMoを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためMo含有率の上限を2.00%とする。より好ましくはMo含有率を1.20%以下とするのがよい。
上記製造方法は、少なくとも、上記精錬工程と、鋳造工程と、熱間加工工程と、冷間圧延工程とを有する。上記精錬工程では、脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌する。溶鋼の撹拌は、対流による撹拌もしくは不活性ガスを吹き込むことによる強制的な撹拌等により行うことが可能である。また、スラグの塩基度を上記範囲に調整するには、いわゆるSi脱酸処理もしくはSi−Mn脱酸処理により行うことができる。
(f) T(℃)≧−6.29×MnO(%)+1268、(MnO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
(g) T(℃)≧8.00×Al2O3(%)+MgO(%)+CaO(%))+783、Al2O3(%)、MgO(%)、CaO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
電気炉により原料を溶解して成分調整した後、溶鋼中にSiO2とCaOを所定の塩基度となるような割合で混合した粉末を投入してスラグ形成し、溶鋼を十分に撹拌し、生成したスラグとの反応促進を図った後、溶鋼を凝固させて鋼塊を製造した。また、凝固させる直前にサンプル採取し、カントバック分析および化学分析にて材料成分の分析を行った。
上記鋼塊を熱間鍛伸により中間サイズの断面矩形の素材を製造し、表面の酸化スケール層を機械加工により除去した後、ロール径φ200mmの2段圧延機により圧延面を適宜変更しながら所定の断面形状まで熱間圧延した。熱間鍛伸、熱間圧延ともに素材が後述の表2に記載の温度以上となるように加熱処理を行った。具体的には、鍛伸と圧延中に表面温度が後述の表2記載の温度を下回らず、かつ温度変動ができるだけ小さ<なるよう必要に応じて再加熱処理を行いつつ熱間加工した(温度変動は50℃程度)。熱間加工の減面率は、鋼塊の断面積と熱間加工後の熱延板の断面積から算出(酸化スケール層の除去分を考慮して算出)した。ここで、鋼塊から任意に採取したサンプルの断面を鏡面研磨して得た観察面においてSEMのEDS分析を行って介在物組成を把握した。また、熱間加工温度条件も複数通り行い、狙いとする介在物形態制御を行うために最適な条件を調査した。
上記熱間加工後の熱延板表面の酸化スケール層を機械加工により除去し、ロール径φ150mmの2段圧延機により冷間圧延し、板厚1.0mmの鋼板を製造した。但し、一部の試験材については、冷間圧延減面率の違いによる影響を調査するため、板厚を2.0mmとなるように圧延した。
上記製造方法により得られた鋼板よりなる供試材を圧延方向に対し平行に切断し、得られた断面を研磨して観察面とし、SEMにて観察・分析を行って酸化物系介在物の組成を定量化した。この際、SiO2、MnO、Al2O3、MgO、CaOの合計を100%と仮定して、表2に示した。なお、介在物の分析は、各々の介在物毎に行ったが、後述の表3には、得られた複数データ(n=20〜30)の平均値を示した。また、個々の分析結果を基に、条件(b)を具備する複合酸化物の個数の割合を満足率として示した。
・化学成分組成:EDS分析
・円相当径 :SEM像を画像解析して算出
・長径/短径 :SEM像にてそれぞれ測定して算出
・介在物間隔 :SEM像にて測定
冷間圧延により得られた鋼板を用い、板状試験片(JIS Z2241のJIS13B号引張試験片)を準備し、油圧サーボ試験機にて、片振りの1軸引張試験(引張−引張応力下)にて疲労試験を行った。応力振幅の値は一定とし、平均応力値を変化させ試験を行い、繰り返し数が107回以上となる平均応力を疲労限として取り扱った。Al脱酸により製造したほぼ同じ成分からなる基準鋼(熱処理条件、狙い硬さも同じ)と比較して、基準鋼の疲労特性を1.0として、これに対する割合で評価した。
(試料1〜試料12)
試料1〜試料12は、鋼の化学成分組成がほぼ同じものである。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料12を基準(1.0)として評価した。
試料1〜4は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、基本的化学成分、熱処理条件、狙い硬さ等がすべて同一であるにもかかわらず、比較基準としたAl脱酸の試料9と比較して20%を超える疲労強度の改善効果が得られ、一部は30%近い改善効果が得られた。基本成分、熱処理条件、狙い硬さが全く同じという条件で、30%近い疲労強度の向上を達成することは、従来の常識からは容易ではない。このことから、本発明の疲労特性改善効果は極めて大きいと判断することができる。
試料6は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料8は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料10は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料12は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
試料13〜試料21は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SKT4相当鋼)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料21を基準(1.0)として評価した。
試料13は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料21と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料15は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料17は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料19は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料21は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
試料22〜試料30は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SCM440相当)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料30を基準(1.0)として評価した。
試料22は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料30と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料24は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料26は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料28は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料30は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
試料31〜試料39は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SUP6相当鋼)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料39を基準(1.0)として評価した。
試料31は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料39と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料33は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料35は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料37は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料39は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
試料40〜試料47は、試料1の成分を基準にいずれかの成分の含有範囲を本発明範囲外とした例である。前記と同様に疲労試験を行ったが、成分の違いの影響が避けられないため、その影響が小さいと考えられるAl含有率が高い試料45のみ、試料12を基本として疲労特性比を求め、他の試料については疲労破壊の起点が介在物であったかどうかの確認のみを行った。
試料41は、Si含有率が低いため、狙いの介在物組成ができなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料42は、Si含有率が高いため、狙いの介在物組成ができなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料44は、Mn含有率が低いため、狙いの介在物組成できなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料46は、C含有率が低いため、強度が著しく低くなった。疲労強度の比較は未実施である。
試料47は、C含有率が高いため、冷間圧延時に割れが発生した。疲労試験は未実施である。
試料1について、熱間加工後の熱延板における1個の複合酸化物系介在物の形態、及び冷間圧延後の鋼板における破砕分断された複合酸化物系介在物形態を観察した。その結果を、図1及び図2の写真に示す。
次に、上記評価とは別に、Fe−0.35%C−0.3%Si−0.3%Mn−3.1%Cr−0.3%V鋼を用いて、複合酸化物系介在物中のMnO含有率またはAl2O3+MgO+CaOの含有率と熱間加工温度との関係を調べる実験を行った。
なお、SiO2については、MnO、Al2O3+MgO+CaOに比べ、温度による熱間加工性への影響が小さく、条件(b)に示したSiO2が30〜60%の範囲内では、大きな温度依存性が認められないため、図として示していない。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.30%〜0.80%、Si:0.20%〜1.50%、Mn:0.20%〜1.50%、Al:0.001%〜0.050%、Ca:0.001%〜0.050%、Ti:0.030%以下を含有すると共に残部がFeおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有し、
鋼中に含まれる酸化物系介在物のうち、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上であることを特徴とする疲労強度に優れる鋼板。
(a) 構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al2O3、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む
(b) 当該複合酸化物系介在物中に含有される上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al2O3+MgO+CaO≦50%
(c) 当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下
(d) 当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下
(e) 当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上 - 請求項1に記載の鋼板における上記化学成分組成は、上記残部の一部に代えて、さらに、Ca:0.001%〜0.050%、Mg:0.001%〜0.050%、Cr:4.00%以下、V:1.20%以下及びMo:2.00%以下のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板。
- 請求項1又は2に記載の疲労強度に優れる鋼板を製造する方法であって、
脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌することにより、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上が上記条件(b)を満足する複合酸化物系介在物となるよう調整する精錬工程と、
該精錬工程により作製された上記溶鋼を鋳造して鋼塊を得る鋳造工程と、
上記鋼塊を熱間加工することにより、上記複合酸化物系介在物の幅寸法を縮小させるとともに長さを延伸させた状態とした熱延板を得る熱間加工工程と、
上記熱延板を冷間圧延することにより、上記熱間加工工程により延伸させた上記複合酸化物系介在物を複数に破砕分断させた状態とした冷延板を得る冷間圧延工程とを有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。 - 請求項3に記載の製造方法において、上記熱間加工工程は、熱間加工開始から終了までの表面温度Tが以下の条件(f)及び(g)を満足するように行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
(f) T(℃)≧−6.29×MnO(%)+1268、(MnO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
(g) T(℃)≧8.00×Al2O3(%)+MgO(%)+CaO(%))+783、Al2O3(%)、MgO(%)、CaO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値) - 請求項3又は4に記載の製造方法において、上記熱間加工工程は、熱間加工による減面率が99.0%以上の条件で行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
- 請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、上記冷間圧延工程は、冷間圧延による減面率が70%以上の条件で行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
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