JP2014189860A - 疲労強度に優れる鋼板及びその製造方法 - Google Patents

疲労強度に優れる鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】厳しい繰返し負荷応力のかかる部位に安心して使用できる疲労特性に優れた鋼板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】特定の化学成分組成を有し、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上である。(a)構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al23、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む、(b)上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al23+MgO+CaO≦50%、(c)当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下、(d)当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下、(e)当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上
【選択図】図2

Description

本発明は、疲労強度に優れる鋼板及びその製造方法に関する。
例えば、板形状の部品のうち、板ばね等の板形状の一部の部品のように、厳しい繰返し応力が負荷される部位に用いられる部品がある。このような部品に適用される鋼板には、高い疲労強度の確保が要求される。疲労強度に関しては、鋼中における介在物の大きさが小さく、かつ圧延方向に伸びた介在物よりも球状もしくは塊状の介在物が多い状態の方が疲労特性が改善するということが知られている。
しかし、それぞれの用途に適した材料をどのように製造すればよいかは、試行錯誤で行われており、全ての場合について最適手段が公知になっているわけではない。例えば、介在物の存在状態を制御して疲労特性を高める従来技術として特許文献1及び2に記載の技術がある。
特許文献1には、長径/短径が5以上の延伸介在物の個数割合の上限を限定した鋼が記載されている。また、特許文献2には、介在物の個数割合で、50%以上が少なくとも球状、紡錘状の介在物である鋼が示されている。いずれも、低炭素鋼板におけるフランジ性等の板成形性改善を重視したものである。
特開2007−146280号公報 特開2007−77412号公報 特開2004−238710号公報 特開2002−339040号公報
しかしながら、鋼板は、自動車の車体用鋼板等のようにフランジ性等の板成形性が重視される用途に用いられる場合が多く、この場合には疲労特性があまり重視されていない。また、足回り部品に適用され高強度化が要求される鋼板も一部あるが、この高強度化は厳しい繰り返し応力に耐えうる疲労特性を得るというよりも強度を高めることにより板を薄くして軽量化を図ることを目的としたものである。その一方で、板ばねのような厳しい応力が繰返し負荷される部品に用いられる鋼板を対象にして疲労特性改善を試みた例はほとんどみあたらない。
また、一般に、高い応力が繰り返し負荷される部品において、疲労特性を改善するには、硬質な介在物は少なく、かつ小さくすることが良いとされている。そのため、真空再溶解を施したり(特許文献3)、脱ガス設備による精錬を採用することにより(特許文献4)、介在物の低減、微細化が図られている。しかしながら前者は生産性悪化等による製造費用の増加が問題となる場合があり、後者は高負荷応力下で用いられる用途においては脱酸処理による組成制御だけによる改善では十分でない場合がある。
以上のように、板部品に関して硬質かつ粗大な介在物を微細化する取り組みは従来より数多くなされている。しかし、これらの取り組みは、部材の成形性向上を目的としたものや、強度部材以外の用途のものに対するものが多い。また、強度部材に対するものであっても、介在物形状の微細化と書かれている以上の言及がない場合が殆どである。そして、強度部材に対する介在物微細化の取り組みは殆ど無いと言える。
昨今の軽量化・高出力化の流れから、部材の更なる高強度化が要求されつつある。特に自動車における駆動力の伝達や、車重をささえる重要部品等は、厳しい応力が繰り返し負荷され続ける部位であり、高強度と高疲労特性の両方が求められている。このような部位に安心して使用できる鋼板の開発が強く望まれている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、厳しい繰返し負荷応力のかかる部位に安心して使用できる高強度で疲労特性に優れた鋼板及びその製造方法を提供しようとするものであり、より具体的には、通常最も強度の関係が大きいと考えられている成分や熱処理条件を大幅には変更せずに、介在物の組成及び形態の最適化により疲労特性を大幅に改善しようとするものである。
本発明の一態様は、質量%で、C:0.30%〜0.80%、Si:0.20%〜1.50%、Mn:0.20%〜1.50%、Al:0.001%〜0.050%、Ti:0.030%以下を含有すると共に残部がFeおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有し、
鋼中に含まれる酸化物系介在物のうち、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上であることを特徴とする疲労強度に優れる鋼板にある(請求項1)。
(a) 構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al23、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む
(b) 当該複合酸化物系介在物中に含有される上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al23+MgO+CaO≦50%
(c) 当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下
(d) 当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下
(e) 当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上
本発明の他の態様は、上記鋼板を製造する方法であって、
脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌することにより、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上が上記条件(b)を満足する複合酸化物系介在物となるよう調整する精錬工程と、
該精錬工程により作製された上記溶鋼を鋳造して鋼塊を得る鋳造工程と、
上記鋼塊を熱間加工することにより、上記複合酸化物系介在物の幅寸法を縮小させるとともに長さを延伸させた状態とした熱延板を得る熱間加工工程と、
上記熱延板を冷間圧延することにより、上記熱間加工工程により延伸させた上記複合酸化物系介在物を複数に破砕分断させた状態とした冷延板を得る冷間圧延工程とを有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法にある(請求項3)。
上記鋼板は、上記特定の化学成分組成を具備していると共に、上記(a)〜(e)の条件をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上である。このような要件を満たすことにより、上記鋼板は、同一成分で同一熱処理がされているが上記(a)〜(e)のような条件で介在物形態制御を行っていない鋼板と比べた場合に、厳しい繰返し負荷応力のかかる部位に安心して適用することができる。
また、上記製造方法を適用することにより、上記の優れた鋼板を容易に製造することができる。
実施例における、試料1の熱間加工後の介在物の形態を示す図面代用写真。 実施例における、試料1の冷間圧延後の介在物の形態を示す図面代用写真。 実施例における、MnO含有率と熱間加工温度との関係を示す説明図。 実施例における、Al23+MgO+CaO含有率と熱間加工温度との関係を示す説明図。
上記疲労強度に優れる鋼板において、鋼中における上記特定複合酸化物系介在物の個数は、上記のごとく、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上である。なお、ここでいう鋼中の酸化物系介在物とは、必ずしもすべてが酸化物組成である必要はなく、硫化物組成が一部含まれるような介在物も含まれる。そして、ここで、鋼中の全酸化物系介在物の組成及び個数の確認は、鋼板の圧延方向に平行に切断した断面を観察して行う。鋼板の切断位置は幅方向中央とし、観察範囲は厚み方向中央近傍とする。また、その観察は、例えば所定の面積(面積40mm2以上)を観察し、その結果が鋼板全体を代表するものとして判断する。
上記特定複合酸化物系介在物は、上述したごとく、条件(a)〜(e)をすべて満足する酸化物系介在物である。以下に各条件について補足説明する。
条件(a)は、「構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al23、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む」というものである。この条件を満たしていれば、列挙した酸化物以外の酸化物が含有されていてもよい。但し、後述の通り、Si−Mn脱酸後に形成されたスラグの塩基度を所定範囲に制御することにより、介在物組成の大半は、SiO2、MnO、Al23、MgO、CaOからなる組成となる。
条件(b)は、「当該複合酸化物系介在物中に含有される上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al23+MgO+CaO≦50%」というものである。このような組成を有することによって、生成された複合酸化物は比較的低融点となり、熱間加工時に延伸しやすくなるとともに、冷間圧延時に粉砕分断して他の形態的要件を具備しやすくなる。一方、上記範囲の上限、下限を外れた組成となった場合には介在物の融点が高くなって、熱間加工時に延伸しにくくなるとともに冷間圧延時に粉砕分断しにくくなる。そのため、上記特定の範囲に上記特定複合酸化物系介在物の組成を制御することとした。
条件(c)は、「当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下」というものである。円相当径は、SEM観察により得られた画像から各介在物の面積を求めて算出することができる。
条件(d)は、「当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下」というものである。この値も、SEM観察により得られた画像から長径及び短径をそれぞれ求めて算出することができる。
条件(e)は、「当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上」というものである。この距離は、SEM観察により得られた画像から求めることができる。そして、周囲のすべての酸化物系介在物との距離が10μm以上の場合にその複合酸化物系介在物が条件(e)を満たすこととなる。
次に、上記疲労強度に優れる鋼板における化学成分組成の限定理由を説明する。
C:0.30%〜0.80%、
C(炭素)は、鋼板の強度を確保するために0.30%以上含有させる。好ましくはC含有率を0.45%以上とするのがよい。一方、Cは、過剰に添加すると加工性が低下するだけでなく、鋼中に粗大な炭化物を形成して疲労強度低下を招くため、C含有率の上限は0.80%とする。好ましくはC含有率を0.55%以下とするのがよい。
Si:0.20%〜1.50%、
Si(ケイ素)は、脱酸と鋼の強化のために有効な元素であると共に、脱酸により上記特定複合酸化物系介在物を構成するSiO2を生成するために必要な元素である。この効果を発揮するためには0.20%以上のSi添加が必要である。好ましくはSi含有率を0.60%以上がよい。ただしSiを過剰に添加すると複合酸化物組成のうちSiO2の含有率が高くなりすぎ、冷間圧延性の著しい低下を招くとともに、所定の介在物形態を得ることが難しくなるので、Si含有率の上限は1.50%とする。好ましくはSi含有率を1.20%以下とするのがよい。
Mn:0.20%〜1.50%、
Mn(マンガン)は、脱酸と鋼の強化のために有効な元素であると共に、脱酸により上記特定複合酸化物系介在物を構成するMnOを生成するために必要な元素である。この効果を発揮するためには0.20%以上のMn添加が必要である。好ましくはMn含有率を0.60%以上がよい。ただしMnを過剰に添加すると鋼の製造性が悪化するとともにコストアップを招く。また、Mn含有率を高くしすぎると、複合酸化物組成のうちMnOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることが難しくなるので、Mn含有率の上限は1.50%とする。好ましくはMn含有率を1.20%以下とするのがよい。
Al:0.001%〜0.050%、
Al(アルミニウム)は、上記特定複合酸化物系介在物を構成するAl23を生成しうるために必要な元素である。鋼中にAl23を含むためには少なくとも0.001%のAl添加が必要である。ただしAlを過剰に添加しようとすると精錬工程において、Alによる脱酸の影響が大きくなって複合酸化物中のAl23+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Al含有率の上限は0.050%とする。好ましくはAl含有率を0.010%以下とするのがよい。
Ti:0.030%以下、
Ti(チタン)の含有率は、疲労特性低下の原因となるTiNなどの硬質介在物の生成を抑制するため含有率を低減する必要があり、0.030%を上限とする。Ti含有率を0.030%以下とすることにより、Nの含有率が高めになった場合でもTiNの生成を抑制することがでる。
次に、上記疲労強度に優れる鋼板においては、上記必須成分以外に、以下成分を任意添加することで、使用する用途に合わせた成分調整が可能となる。すなわち、上記化学成分組成は、さらに、Ca:0.001%〜0.050%、Mg:0.001%〜0.005%、Cr:4.00%以下、V:1.20%以下及びMo:2.00%以下のうち1種または2種以上を含有することができる(請求項2)。
Ca:0.001%〜0.050%、
Ca(カルシウム)は、Alの酸化物がクラスター状の凝集した酸化物となるのを抑制し、また複合酸化物系介在物を低融点化させる効果がある。この効果を得るためには0.001%以上のCaを添加することが好ましい。ただしCaを過剰に添加しても効果が飽和するだけでなく、Alの含有率によっては、複合酸化物中のAl23+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Ca含有率の上限は0.050%とする。好ましくはCa含有率は0.010%以下とするのがよい。
Mg:0.001%〜0.050%、
Mg(マグネシウム)は、Alの酸化物がクラスター状の凝集した酸化物となるのを抑制し、また複合酸化物系介在物を低融点化させる効果がある。この効果を得るために、0.001%以上のMgを添加することが好ましい。ただしMgを過剰に添加しても効果が飽和するだけでなく、Alの含有率によっては、複合酸化物中のAl23+MgO+CaOの含有率が高くなりすぎ、所定の介在物形態を得ることができなくなるため、Mg含有率の上限値は0.050%とする。より好ましくは、Mg含有率を0.020%以下とするのがよい。
Cr:4.00%以下、
Cr(クロム)は、含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭、窒化)による高強度化も可能となる。好ましくはCr含有率を1.00%以上とするのがよい。ただしCrを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためCr含有率の上限は4.00%とする。より好ましくはCr含有率を3.50%以下とするのがよい。
V:1.20%以下、
V(バナジウム)を含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭、窒化)による高強度化も可能となる。好ましくはV含有率を0.20%以上とするのがよい。ただしVを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためV含有率の上限は1.20%とする。より好ましくはV含有率を0.40%以下とするのがよい。
Mo:2.00%以下、
Mo(モリブデン)は、含有することにより強度向上だけでなく、表面処理(例えば浸炭)による高強度化も可能となる。好ましくはMo含有率を0.80%以上とするのがよい。ただしMoを過剰に添加してもその効果は飽和するだけでなくコストアップを招くためMo含有率の上限を2.00%とする。より好ましくはMo含有率を1.20%以下とするのがよい。
次に、上記製造方法について補足説明する。
上記製造方法は、少なくとも、上記精錬工程と、鋳造工程と、熱間加工工程と、冷間圧延工程とを有する。上記精錬工程では、脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌する。溶鋼の撹拌は、対流による撹拌もしくは不活性ガスを吹き込むことによる強制的な撹拌等により行うことが可能である。また、スラグの塩基度を上記範囲に調整するには、いわゆるSi脱酸処理もしくはSi−Mn脱酸処理により行うことができる。
スラグの塩基度を上記範囲に調整した状態で溶鋼を撹拌することによって、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上が上記条件(a)及び(b)を満足するように調整することができる。なお、上記溶鋼の化学成分組成は、上述した範囲に規制しておく必要がある。一方、上記スラグの塩基度が上記範囲から外れる場合には、酸化物系介在物の組成を所望の状態に調整することが困難となる。
また、上記鋳造工程では、精錬工程により複合酸化物系介在物の成分が狙いの範囲内に調整された状態の溶鋼を連続鋳造または鋳型内で凝固させることにより鋼塊を製造する。ここで、鋼塊とは、連続鋳造により作製された鋳片をも含む概念である。
また、上記熱間加工工程では、上記複合酸化物系介在物の幅寸法を、冷間圧延後の最終寸法に相当する寸法まで縮小させるとともに長さを延伸させた状態とした熱延板を得る。上記鋼塊中の酸化物系介在物は、その径が10μmを超えるものがほとんどであり、通常はおよそ20〜40μmの幅寸法(径)を有しているものが多い。熱間加工工程は、このような大きさの介在物を幅寸法(延伸させる方向(圧延方向等)に対して直交する方向の寸法)が小さくなるよう延伸する。
この工程では、最終形状を板形状とするために、熱間圧延により行うことが好ましいが、熱間加工工程の初期段階において熱間鍛伸などを採用してもよい。熱間圧延を行う場合には、鋼塊を圧延するに当たって、圧下方向を2方向またはそれ以上とし、適宜、圧下方向を変更しながら圧延することが好ましい。具体的には、例えば断面形状が矩形の鋼塊を用いた場合、平行な面が2組存在することとなるが、その2組の面をいずれも圧延する面として利用し、適宜圧延面を変えながら圧延することにより、介在物の幅寸法を縮小することができる。すなわち、広幅の薄板を製造する場合等のように圧下方向を変更せずに圧延すると、圧下される方向の幅寸法は縮小されるが、圧下方向と直交する方向の幅寸法は縮小されない。これでは本願において狙いとする複合酸化物系介在物形状を得ることはできないので注意を要する。
そして、上記複合酸化物系介在物の幅寸法が縮小するように圧延し、かつ、適度な圧下率を採用することによって、最終状態の熱延板では、複合酸化物系介在物の幅寸法が後述の冷間圧延後の円相当径(最終寸法)にほぼ等しい寸法であって圧延方向に長く延伸した状態となる(後述の図1参照)。
また、上記冷間圧延工程では、上記熱延板を冷間圧延することにより、上記熱間加工工程により延伸させた上記複合酸化物系介在物を複数に破砕分断させた状態とした冷延板を得る。すなわち、冷間圧延を施すことにより、上記複合酸化物系介在物はほとんど延伸することなく、破砕分断される。そして、適度な減面率で冷間圧延することにより、上述した条件(c)〜(e)を満足させることができる。
また、上記熱間加工工程は、熱間加工開始から終了までの表面温度Tが以下の条件(f)及び(g)を満足するように行うことが好ましい(請求項4)。
(f) T(℃)≧−6.29×MnO(%)+1268、(MnO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
(g) T(℃)≧8.00×Al23(%)+MgO(%)+CaO(%))+783、Al23(%)、MgO(%)、CaO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
条件(f)は、「T(℃)≧−6.29×MnO(%)+1268」というものである。MnOの含有率は、鋼塊あるいは鋼板中に含有される複合酸化物系介在物における平均値を用いることができる。化学成分組成が同じで、かつ脱酸スラグの塩基度調整及び撹拌方法等の精錬の操業条件が同じ場合には、鋼塊及び最終製品の鋼板に含まれる複合酸化物系介在物の組成は、それほど大きくないばらつき範囲で制御することができる。従って、予め塩基度の調整、撹拌方法等の操業条件と生成される複合酸化物系介在物の組成との関係を測定しておくことによって、実際の操業時においては,溶解、鋳造後熱間加工する前に毎回複合酸化物系介在物の組成を確認しなくても、上記条件(f)を決めることができる。これにより、実操業時のように他の多くの鋼種の鋼塊と同時に加熱した後圧延する場合のような、自由に加熱温度を調整することが難しい場合であっても、事前に加熱条件を決めて操業できるので、問題なく製造することができる。なお、MnO含有率の平均値は、少なくとも50個の複合酸化物系介在物におけるMnO含有率から求めればよい。
条件(g)は、「T(℃)≧8.00×Al23(%)+MgO(%)+CaO(%))+783」というものである。Al23(%)、MgO(%)、CaO(%)の含有率も、鋼塊あるいは鋼板中に含有される複合酸化物系介在物における平均値を用いることができる。そして、上記条件(f)と同様に、予め塩基度の調整、撹拌方法等の操業条件と生成される複合酸化物系介在物の組成との関係を測定しておくことにより、条件(g)を決めることができる。なお、各酸化物含有率の平均値は、少なくとも50個の複合酸化物系介在物における含有率から求めればよい。
これらの条件(f)及び(g)を具備する温度条件を採用することによって、鋼塊中の複合酸化物系介在物の熱間加工時における変形しやすさを最適化することができ、熱間加工により複合酸化物系介在物の長さを十分に延伸させることができ、その後の冷間圧延において狙いとする形態に制御することが容易となる。
また、上記熱間加工工程は、熱間加工による減面率が99.0%以上の条件で行うことが好ましい(請求項5)。上記熱間加工による減面率をこの条件とすることにより、上記複合酸化物系介在物の幅寸法をより確実に冷間圧延後の最終狙い寸法以下とすることが可能となる。
また、上記冷間圧延工程は、冷間圧延による減面率が70%以上の条件で行うことが好ましい(請求項6)。上記冷間圧延による減面率をこの条件とすることにより、上記複合酸化物系介在物の破砕分断をより確実に行うことが可能となる。
なお、上記熱間加工による減面率及び上記冷間加工による減面率の条件は、必須要件ではなく、好ましい条件に過ぎない。上記条件(c)〜(e)すべてを具備する複合酸化物系介在物を得ることができれば、減面率を低くしてもよい。たとえば、熱間加工においては、複合酸化物系介在物の融点が比較的低くかつ加工温度が高めであれば、より低い減面率であっても、十分に複合酸化物系介在物の幅縮小及び長さの延伸を図ることが可能である。
なお、上記条件(a)及び(b)を具備する複合酸化物系介在物組成のうち、融点が平均的な融点(1300℃程度)となるよう組成を制御した場合には、熱間加工による減面率を99.0%以上とすることにより、確実に目的とする寸法まで複合酸化物系介在物を延伸させることができる。また、冷間圧延については、熱間圧延後の延伸状態により、複合酸化物系介在物を破砕分断できる減面率が多少変化するが、減面率を70%以上とすることにより、ほぼ確実に所望の破砕分断を行うことができる。
上記疲労強度に優れる鋼板に係る実施例につき、比較例と共に説明する。本例では、表1に示すごとく、化学成分組成が異なる複数種類(試料1〜47)の鋼材を準備して、後述する製造方法によって鋼板を作製し、各種の評価を実施した。
<精錬工程及び鋳造工程>
電気炉により原料を溶解して成分調整した後、溶鋼中にSiO2とCaOを所定の塩基度となるような割合で混合した粉末を投入してスラグ形成し、溶鋼を十分に撹拌し、生成したスラグとの反応促進を図った後、溶鋼を凝固させて鋼塊を製造した。また、凝固させる直前にサンプル採取し、カントバック分析および化学分析にて材料成分の分析を行った。
<熱間加工工程>
上記鋼塊を熱間鍛伸により中間サイズの断面矩形の素材を製造し、表面の酸化スケール層を機械加工により除去した後、ロール径φ200mmの2段圧延機により圧延面を適宜変更しながら所定の断面形状まで熱間圧延した。熱間鍛伸、熱間圧延ともに素材が後述の表2に記載の温度以上となるように加熱処理を行った。具体的には、鍛伸と圧延中に表面温度が後述の表2記載の温度を下回らず、かつ温度変動ができるだけ小さ<なるよう必要に応じて再加熱処理を行いつつ熱間加工した(温度変動は50℃程度)。熱間加工の減面率は、鋼塊の断面積と熱間加工後の熱延板の断面積から算出(酸化スケール層の除去分を考慮して算出)した。ここで、鋼塊から任意に採取したサンプルの断面を鏡面研磨して得た観察面においてSEMのEDS分析を行って介在物組成を把握した。また、熱間加工温度条件も複数通り行い、狙いとする介在物形態制御を行うために最適な条件を調査した。
<冷間圧延工程>
上記熱間加工後の熱延板表面の酸化スケール層を機械加工により除去し、ロール径φ150mmの2段圧延機により冷間圧延し、板厚1.0mmの鋼板を製造した。但し、一部の試験材については、冷間圧延減面率の違いによる影響を調査するため、板厚を2.0mmとなるように圧延した。
<酸化物系介在物の評価>
上記製造方法により得られた鋼板よりなる供試材を圧延方向に対し平行に切断し、得られた断面を研磨して観察面とし、SEMにて観察・分析を行って酸化物系介在物の組成を定量化した。この際、SiO2、MnO、Al23、MgO、CaOの合計を100%と仮定して、表2に示した。なお、介在物の分析は、各々の介在物毎に行ったが、後述の表3には、得られた複数データ(n=20〜30)の平均値を示した。また、個々の分析結果を基に、条件(b)を具備する複合酸化物の個数の割合を満足率として示した。
さらに、複合酸化物系介在物の形態(条件(c)〜(e))について個々に測定し、得られた複数データ(n=20〜30)の平均値を表3に示した。そして、全条件(a)〜(e)を満足する特定複合酸化物系介在物の個数の割合を求め、90%以上の場合を良好(○)、90%未満の場合を不良(×)として表3に示した。
各評価項目の分析方法等は、次の通りである。
・化学成分組成:EDS分析
・円相当径 :SEM像を画像解析して算出
・長径/短径 :SEM像にてそれぞれ測定して算出
・介在物間隔 :SEM像にて測定
<疲労特性評価>
冷間圧延により得られた鋼板を用い、板状試験片(JIS Z2241のJIS13B号引張試験片)を準備し、油圧サーボ試験機にて、片振りの1軸引張試験(引張−引張応力下)にて疲労試験を行った。応力振幅の値は一定とし、平均応力値を変化させ試験を行い、繰り返し数が107回以上となる平均応力を疲労限として取り扱った。Al脱酸により製造したほぼ同じ成分からなる基準鋼(熱処理条件、狙い硬さも同じ)と比較して、基準鋼の疲労特性を1.0として、これに対する割合で評価した。
<評価結果>
(試料1〜試料12)
試料1〜試料12は、鋼の化学成分組成がほぼ同じものである。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料12を基準(1.0)として評価した。
試料1〜4は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、基本的化学成分、熱処理条件、狙い硬さ等がすべて同一であるにもかかわらず、比較基準としたAl脱酸の試料9と比較して20%を超える疲労強度の改善効果が得られ、一部は30%近い改善効果が得られた。基本成分、熱処理条件、狙い硬さが全く同じという条件で、30%近い疲労強度の向上を達成することは、従来の常識からは容易ではない。このことから、本発明の疲労特性改善効果は極めて大きいと判断することができる。
試料5は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工温度が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料6は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料7は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、冷間圧延の減面率が低く、破砕分断された複合酸化物系介在物の間の間隔が十分にあかなかったためと考えられる。
試料8は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料9は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度が低すぎたためであると考えられる。
試料10は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料11は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度低すぎたためであると考えられる。
試料12は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
(試料13〜試料21)
試料13〜試料21は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SKT4相当鋼)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料21を基準(1.0)として評価した。
試料13は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料21と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料14は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工温度が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料15は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料16は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、冷間圧延の減面率が低く、破砕分断された複合酸化物系介在物の間の間隔が十分にあかなかったためと考えられる。
試料17は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料18は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度が低すぎたためであると考えられる。
試料19は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料20は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度低すぎたためであると考えられる。
試料21は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
(試料22〜試料30)
試料22〜試料30は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SCM440相当)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料30を基準(1.0)として評価した。
試料22は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料30と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料23は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工温度が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料24は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料25は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、冷間圧延の減面率が低く、破砕分断された複合酸化物系介在物の間の間隔が十分にあかなかったためと考えられる。
試料26は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料27は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度が低すぎたためであると考えられる。
試料28は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料29は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度低すぎたためであると考えられる。
試料30は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
(試料31〜試料39)
試料31〜試料39は、鋼の化学成分組成がほぼ同じもの(SUP6相当鋼)である。疲労特性評価は、精錬工程においてAl脱酸を採用した試料39を基準(1.0)として評価した。
試料31は、条件(a)〜(e)をすべて具備する特定複合酸化物系介在物の個数割合が90%以上で本発明の条件をすべて満足する実施例であり、比較基準としたAl脱酸の試料39と比較して20%を超える疲労強度改善効果が得られた。
試料32は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工温度が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料33は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、熱間加工の減面率が低く、熱間加工工程で複合酸化物系介在物が十分に延伸しない状態で冷間加工に送られ、冷間圧延で破砕されたためであると考えられる。
試料34は、複合酸化物系介在物の化学成分組成は問題ないが、形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、冷間圧延の減面率が低く、破砕分断された複合酸化物系介在物の間の間隔が十分にあかなかったためと考えられる。
試料35は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料36は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が低く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度が低すぎたためであると考えられる。
試料37は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったためであると考えられる。
試料38は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態に問題があり、疲労特性の向上が少なかった。これは、鋳造工程でのスラグ塩基度が高く介在物組成制御が不完全であったため及び熱間加工温度低すぎたためであると考えられる。
試料39は、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
(試料40〜試料47)
試料40〜試料47は、試料1の成分を基準にいずれかの成分の含有範囲を本発明範囲外とした例である。前記と同様に疲労試験を行ったが、成分の違いの影響が避けられないため、その影響が小さいと考えられるAl含有率が高い試料45のみ、試料12を基本として疲労特性比を求め、他の試料については疲労破壊の起点が介在物であったかどうかの確認のみを行った。
試料40は、複合酸化物系介在物の化学成分組成及び形態には問題が無いが、Ti含有率が高すぎることにより、TiN介在物起点で破損し、疲労強度が大きく低下した。
試料41は、Si含有率が低いため、狙いの介在物組成ができなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料42は、Si含有率が高いため、狙いの介在物組成ができなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料43は、Mn含有率が高いため、狙いの介在物組成できなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料44は、Mn含有率が低いため、狙いの介在物組成できなかった。疲労強度の比較は未実施である。
試料45は、Al含有率が高く、かつ、鋳造工程における脱酸処理がAl脱酸であったため、アルミナ主体の介在物を基点とした破壊が生じた。
試料46は、C含有率が低いため、強度が著しく低くなった。疲労強度の比較は未実施である。
試料47は、C含有率が高いため、冷間圧延時に割れが発生した。疲労試験は未実施である。
<複合酸化物系介在物の形態観察>
試料1について、熱間加工後の熱延板における1個の複合酸化物系介在物の形態、及び冷間圧延後の鋼板における破砕分断された複合酸化物系介在物形態を観察した。その結果を、図1及び図2の写真に示す。
図1から知られるように、適切な条件で熱間加工を行うことにより、複合酸化物系介在物1が十分に延伸された状態となることがわかる。また、図2から知られるように、適切な条件で冷間圧延を行うことにより、複合酸化物系介在物1が破砕分断されて十分な間隔を明けて配置された状態となることがわかる。
<MnO、Al23+MgO+CaOと熱間加工温度について>
次に、上記評価とは別に、Fe−0.35%C−0.3%Si−0.3%Mn−3.1%Cr−0.3%V鋼を用いて、複合酸化物系介在物中のMnO含有率またはAl23+MgO+CaOの含有率と熱間加工温度との関係を調べる実験を行った。
なお、SiO2については、MnO、Al23+MgO+CaOに比べ、温度による熱間加工性への影響が小さく、条件(b)に示したSiO2が30〜60%の範囲内では、大きな温度依存性が認められないため、図として示していない。
具体的には、上記鋼を用い、脱酸条件とスラグ生成時の塩基度の条件を変化させて、生成される介在物組成を変化させるとともに、熱間加工温度の条件を変化(温度以外の他の圧延条件は試料No.1と同じとした)させて板厚1mmの鋼板を製造した。得られた鋼板の断面を観察し、上記と同様に酸化物系介在物の成分分析と形態の調査を行った。そして、複合酸化物中のMnOとAl23+MgO+CaOの含有率及び熱間加工時の最低温度と介在物形態の関係について調査した結果を図3及び図4に示した。図3は、横軸に熱間加工温度(℃)をとり、縦軸にMnO(%)を取ったものである。図4は、横軸に熱間加工温度(℃)をとり、縦軸にAl23+MgO+CaO(%)を取ったものである。同図中には、複合酸化物系介在物が形態の条件(c)〜(e)を満足する場合を○、満足しない場合を×の符号で表示した。
鋼中で生成させる複合酸化物系介在物は、その組成により融点が変化する。融点が低くなり、熱間加工時の温度が融点に近い温度になると、介在物自体の変形抵抗が低下し、熱間加工時に圧延方向に延伸するとともに幅寸法が小さくなる。図3及び図4は、MnO、Al23+MgO+CaOの含有率が変化したときの熱間加工時の延伸しやすさの変化を示ししている。これらの図から、複合酸化物系介在物の組成を制御した場合の各組成において圧延後に狙いとする介在物形態を得るために適した熱間加工温度条件を知ることができる。
1 複合酸化物系介在物

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.30%〜0.80%、Si:0.20%〜1.50%、Mn:0.20%〜1.50%、Al:0.001%〜0.050%、Ca:0.001%〜0.050%、Ti:0.030%以下を含有すると共に残部がFeおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有し、
    鋼中に含まれる酸化物系介在物のうち、以下の条件(a)〜(e)をすべて満足する特定複合酸化物系介在物の個数が、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上であることを特徴とする疲労強度に優れる鋼板。
    (a) 構成酸化物として、SiO2及びMnOを含み、かつ、Al23、MgO及びCaOのうち少なくとも一種を含む
    (b) 当該複合酸化物系介在物中に含有される上記構成酸化物の合計含有量を質量比で100%としたときに、30%≦SiO2≦60%、かつ、10%≦MnO≦50%、かつ、10%≦Al23+MgO+CaO≦50%
    (c) 当該複合酸化物系介在物の円相当径が10μm以下
    (d) 当該複合酸化物系介在物の長径/短径が2以下
    (e) 当該複合酸化物系介在物の周囲に存在する他の酸化物系介在物との距離が10μm以上
  2. 請求項1に記載の鋼板における上記化学成分組成は、上記残部の一部に代えて、さらに、Ca:0.001%〜0.050%、Mg:0.001%〜0.050%、Cr:4.00%以下、V:1.20%以下及びMo:2.00%以下のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の疲労強度に優れる鋼板を製造する方法であって、
    脱酸処理を施した溶鋼上に塩基度0.5〜1.5となるように調整したスラグを形成させて該溶鋼を撹拌することにより、鋼中の全酸化物系介在物の個数の90%以上が上記条件(b)を満足する複合酸化物系介在物となるよう調整する精錬工程と、
    該精錬工程により作製された上記溶鋼を鋳造して鋼塊を得る鋳造工程と、
    上記鋼塊を熱間加工することにより、上記複合酸化物系介在物の幅寸法を縮小させるとともに長さを延伸させた状態とした熱延板を得る熱間加工工程と、
    上記熱延板を冷間圧延することにより、上記熱間加工工程により延伸させた上記複合酸化物系介在物を複数に破砕分断させた状態とした冷延板を得る冷間圧延工程とを有することを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法において、上記熱間加工工程は、熱間加工開始から終了までの表面温度Tが以下の条件(f)及び(g)を満足するように行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
    (f) T(℃)≧−6.29×MnO(%)+1268、(MnO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
    (g) T(℃)≧8.00×Al23(%)+MgO(%)+CaO(%))+783、Al23(%)、MgO(%)、CaO(%)は、鋼中の上記複合酸化物系介在物における平均値)
  5. 請求項3又は4に記載の製造方法において、上記熱間加工工程は、熱間加工による減面率が99.0%以上の条件で行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、上記冷間圧延工程は、冷間圧延による減面率が70%以上の条件で行うことを特徴とする疲労強度に優れる鋼板の製造方法。
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