JP5783056B2 - 浸炭軸受鋼鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、浸炭軸受鋼鋼材に関し、詳しくは、ベアリング等の機械構造部品に用いられる転動疲労特性(転動疲労寿命)に優れた浸炭軸受鋼鋼材に関する。
浸炭軸受鋼鋼材は「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受に用いられており、近年のエンジンの高出力化および周辺部品の小型化のニーズによって、より一層長い転動疲労寿命が必要とされている。
この要求に対し、鋼材面からの対策としては、一般的に軸受の剥離の原因となるようなAl23に代表される非金属介在物(以下、単に「介在物」ということがある。)の量を極力低減させ、転動疲労寿命の向上を図ることが行われてきた。
鋼材の非金属介在物評価方法としては、例えば、非特許文献1に極値統計処理によるものが提案されている。
しかしながら、例えば、非特許文献2に記載されているように、近年の製鋼技術の進歩により酸化物が小径化した結果、相対的に硫化物のサイズが大きくなる場合があるため、酸化物のみを指標とした対策では、転動疲労寿命のばらつきが大きくなることがある。
そこで、例えば、特許文献1〜4に、転動疲労寿命を向上させるための技術が開示されている。
特許文献1に、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.4〜3.0%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.03%以下、Ni:0.25〜3.5%、Cr:0.3〜5.0%、Al:0.005〜0.050%、O:0.0015%以下、N:0.025%以下であって、必要に応じてさらに、特定量のMo、V、Nb、「sol.B+Ti」、Se、Te、Pb、S、Ca、Biのいずれか1種または2種以上を含有し、残部が実質上Feから成る合金組成を有し、かつ長さが0.5mm以上のアルミナクラスターの存在量が10-3個/mm3以下であることを特徴とする「転動疲労強度に優れた肌焼鋼」が開示されている。
特許文献2に、機械部品に使用される際に鋼材の表面硬さを58HRC以上として用いる機械構造用鋼、軸受鋼などの機械部品用の鋼において、鋼材断面100mm2中の非金属介在物の最大介在物径の測定を30箇所において行い極値統計処理を用いて算出される30000mm2中における硫化物の最大介在物径の予測値√area maxが40μm以下であることを特徴とする「転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼」と、機械部品に使用される際に鋼材の表面硬さを58HRC以上として用いる機械構造用鋼、軸受鋼などの機械部品用の鋼において、鋼材断面100mm2中の非金属介在物の最大介在物径の測定を30箇所において行い極値統計処理を用いて算出される30000mm2中における酸化物、硫化物、窒化物の各介在物の最大介在物径の予測値√area maxのうち最大の値が60μm以下であることを特徴とする「転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼」とが開示されている。
特許文献3に、機械部品に使用する際の鋼の表面硬さが58HRC以上であり、かつ質量割合でOが20ppm以下、Alが0.010%未満を満足する機械構造用鋼であって、介在物径を(縦×横)1/2と定義するとき、その鋼中に存在する検鏡面積3000mm2に存在する最大介在物径を有する酸化物系非金属介在物あるいは15μm以上の介在物径を有する全ての酸化物系非金属介在物の組成が質量%でSiO2:30%以上であることを特徴とする「転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼」と、上記内容に加えてさらに、鋼中に存在する酸化物系非金属介在物のうち、検鏡面積3000mm2中に存在する最大介在物径が70μm以下であることを特徴とする「転がり疲労寿命に優れた機械用部品に使用される鋼」とが開示されている。
特許文献4に、質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、S:0.001〜0.15%、Cr:0.4〜2.0%、Ti:0.05〜0.2%を含有し、Al:0.04%以下、N:0.0050%以下、P:0.025%以下、O:0.0025%以下に制限し、さらに、Mg:0.003%以下、Zr:0.01%以下、Ca:0.005%以下の1種または2種以上を含有し、必要に応じてさらに、特定量のNb、Mo、Ni、V、Bのいずれか1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、AlNの析出量を0.01%以下に制限し、円相当径が20μm超、アスペクト比が3超で硫化物の密度d(個/mm2)と、Sの含有量[S](質量%)とが、d≦1700[S]+20を満足することを特徴とする「冷間加工性、切削性、浸炭焼入れ後の疲労特性に優れた肌焼鋼」およびその製造方法が開示されている。
特開2000−297346号公報 特開2006−63402号公報 特開2008−240019号公報 国際公開第2010/116555号
村上敬宜:金属疲労 微小欠陥と介在物の影響(1993)、〔養賢堂〕 長尾実佐樹ら:Sanyo Technical Report Vol.12(2005)No.1、p.38
前述の特許文献1で開示されている鋼は、硫化物に対して考慮されていないため、粗大な硫化物が存在する可能性があり、優れた転動疲労寿命が得られない場合がある。
特許文献2で開示されている鋼は、硫化物の最大介在物径の予測値を満足するように鋼を製造する方法について具体的に記載されておらず、発明の鋼を得る手段が明確ではない。
特許文献3で開示されている鋼は、延伸した粗大な、酸化物および硫化物が存在している可能性があるため、優れた転動疲労寿命が得られない場合がある。
特許文献4で開示されている鋼は、酸化物に対して考慮されておらず、延伸した粗大な酸化物が存在している可能性があるため、優れた転動疲労寿命が得られない場合がある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、転動疲労寿命に優れた浸炭軸受鋼鋼材を提供することを目的とする。
転がり軸受において欠陥が生じる主な形態は、鋼中に存在する介在物に繰返し荷重が加わり、応力集中によって生じたき裂が繰り返し荷重によって徐々に進展し、最終的に剥離に至ることが挙げられる。
そのため、本発明者らは、転動疲労寿命に及ぼす介在物の影響を調査した。その結果、非特許文献1に示されているように、転動疲労寿命向上のためには、極値統計処理によって予測される最大介在物径である√AREAmax(以下、「予測√AREAmax」ということがある。)を小さくすることが有効であり、その中でも鋼材の長手方向に認められる介在物の長さを短くすることが重要であることを確認した。
そこでさらに、介在物の転動疲労に及ぼす影響を詳細に調査し、その結果下記(a)および(b)の知見を得た。
(a)酸化物および硫化物の組成を制御することによって、すなわち酸化物中に適量のCaOを、硫化物中にCaSを含有するように組成を制御することによって、それぞれの介在物の長さを短くすることができ、このために転動疲労寿命が著しく向上する。
(b)転動疲労寿命は、30箇所で測定した100mm2中の最大酸化物および最大硫化物の平均組成と相関を有する。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)および(2)に示す浸炭軸受鋼鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Al:0.010〜0.050%、Cr:0.4〜2.0%、N:0.010〜0.025%およびO:0.0015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する浸炭軸受鋼鋼材であって、
該鋼材の長手方向縦断面100mm2中の最大酸化物径である酸化物の√AREAmaxと最大硫化物径である硫化物の√AREAmaxの測定をそれぞれ30箇所において行い、極値統計処理を用いて算出される30000mm2中における酸化物の予測最大径である酸化物の予測√AREAmaxが50μm以下であり、硫化物の予測最大径である硫化物の予測√AREAmaxが60μm以下であり、かつ前記30箇所の最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比がそれぞれ、5.0以下であり、
さらに、前記30箇所の最大酸化物の平均組成における質量%での含有量が、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl23であって、CaOとAl23の2元系酸化物、CaO、MgOとAl23の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl23の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl23の4元系酸化物のうちのいずれかからなり、かつ、前記30箇所の最大硫化物の平均組成における質量%での含有量が、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物またはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなる、
ことを特徴とする浸炭軸受鋼鋼材。
(2)Feの一部に代えて、Mo:1.0%以下およびNi:2.0%以下のうちの1種以上を含有する、上記(1)に記載の浸炭軸受鋼鋼材。
本発明でいう鋼材の「長手方向縦断面」とは、鋼材の圧延方向または鍛錬軸に平行に切断した面をいう。
また、本発明でいう酸化物および硫化物の「アスペクト比」とはそれぞれ、酸化物および硫化物の長径(L)と短径(W)の比、すなわちL/Wをいう。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、安定して良好な転動疲労寿命を得ることができる。このため、「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受の素材として用いるのに好適である。
180mm×180mmの鋼片および160mm×160mmの鋼片から実施例の転動疲労試験に用いた素形材を採取した方法を模式的に説明する図である。 実施例において、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材に施した「浸炭焼入れ−焼戻し」のヒートパターンを示す図である。図中の「Cp」は、「炭素ポテンシャル」を表す。「O.Q.」は、「油焼入れ」を表す。焼戻し後の冷却は大気中放冷とし、図では「A.C.」と表記した。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素、酸化物および硫化物の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)鋼材の化学組成:
C:0.05〜0.30%
Cは、本発明の鋼材の強度を左右する重要な元素である。浸炭焼入れしたときの部品の芯部強度(部品の生地の強度)を確保するためには、0.05%以上のCを含有させる必要がある。一方、0.30%を超えるCを含有させると靱性および被削性が低下する。したがって、Cの含有量を0.05〜0.30%とした。Cの含有量は0.15%以上とすることが好ましく、0.18%以上とすれば一層好ましい。また、Cの含有量は0.25%以下とすることが好ましく、0.23%以下とすれば一層好ましい。
Si:0.05〜1.0%
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、また、転動疲労強度の向上にも効果を有する元素である。しかしながら、Siの含有量が0.05%未満では前記の効果が不十分である。一方、Siの含有量が1.0%を超えると、転動疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、靱性および被削性の低下が顕著になる。したがって、Siの含有量を0.05〜1.0%とした。Siの含有量は0.10%以上とすることが好ましく、0.15%以上とすれば一層好ましい。また、Siの含有量は0.70%以下とすることが好ましく、0.35%以下とすれば一層好ましい。
Mn:0.10〜2.0%
Mnは、鋼に固溶して鋼の転動疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める元素である。Mnはさらに、鋼中のSと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。これらの効果を得るためには、0.10%以上のMnを含有させる必要がある。しかし、Mnの含有量が過剰になると焼入れ後の表面硬さが高くなりすぎて、靱性および被削性が低下する。このため、上限を設け、Mnの含有量を0.10〜2.0%とした。焼入れ性および強度を向上させたい場合、Mnの含有量は0.60%以上とすることが好ましい。なお、Mnの含有量は0.90%以下とすることが好ましい。
P:0.05%以下
Pは、鋼中に不純物として混入する元素である。Pを過剰に含有すると、熱間加工性の低下を招く。このため、上限を設け、Pの含有量を0.05%以下とした。好ましいP含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは0.025%以下である。
S:0.008%以下
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.008%を上回ると硫化物中のCa濃度が低下し、延伸した粗大な硫化物を形成しやすくなって、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Sの含有量を0.008%以下とした。Sの含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
Al:0.010〜0.050%
Alは、精錬工程で脱酸を行うために使用する元素であり、また、AlNを形成して結晶粒を微細化する効果を有する元素である。しかし、Alの含有量が0.010%未満では上記効果が不十分である。一方、0.050%を超えてAlを含有させた場合、粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Alの含有量を0.010〜0.050%とした。Alの含有量は、0.020%以上とすることが好ましく、また0.040%以下とすることが好ましい。
Cr:0.4〜2.0%
Crは、鋼の焼入れ性、焼入れ焼戻し後の強度および靱性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を得るためには、0.4%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crを2.0%を超えて含有させると、かえって靱性が低下し、さらには被削性も低下する。したがって、Crの含有量を0.4〜2.0%とした。Crの含有量は0.6%以上とすることが好ましく、また1.5%以下とすることが好ましい。
N:0.010〜0.025%
Nは、Alと結合してAlNを生成し、結晶粒を微細化する働きをする。しかし、Nの含有量が0.010%未満では上記効果が不十分である。一方、0.025%を超えてNを含有させた場合、かえって鋼の強度を低下させる。したがって、Nの含有量を0.010〜0.025%とした。なお、N含有量の上限は0.020%とすることが好ましい。
O:0.0015%以下
Oは、酸化物を生成する元素であるため、極力その含有量を低下させる必要がある。Oの含有量が多くなって、特に0.0015%を上回ると、粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0015%以下とした。Oの含有量は0.0010%以下であることが好ましい。なお、Oの含有量はできる限り少なくすることが好ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、その下限は0.0005%程度となる。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材の化学組成の一つは、上記元素のほか、残部がFeと不純物からなるものである。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材の化学組成の他の一つは、Feの一部に代えて、MoおよびNiのうちの1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素であるMoおよびNiの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Mo:1.0%以下
Moは、鋼の焼入れ性を高めて、転動疲労強度を高める効果を有する。また、Moには、浸炭後の焼入れ処理において、不完全焼入れ層を抑制する効果もある。このため、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が過剰になると、鋼の被削性が低下し、さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、含有させる場合のMoの量に上限を設け、1.0%以下とした。含有させる場合のMoの量は、0.50%以下であることが好ましく、0.30%以下であればさらに好ましい。
一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、Moの含有量は0.02%以上であることが好ましく、0.05%以上であれば一層好ましい。Moの含有量は、0.10%以上であれば極めて好ましい。
Ni:2.0%以下
Niは、転動疲労強度を高める効果を有する。Niには、焼入れ性および靱性を向上させる効果もある。このため、Niを含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が2.0%を超えても上記効果は飽和するので、鋼の製造コストが嵩むばかりである。したがって、含有させる場合のNiの量に上限を設け、2.0%以下とした。含有させる場合のNiの量は、1.8%以下であることが好ましい。
一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、Niの含有量は0.20%以上であることが好ましく、0.40%以上であれば一層好ましい。
上記のMoおよびNiは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は、各元素の含有量がそれぞれの上限値である場合の3.0%であってもよいが、2.1%以下であることが好ましい。
(B)鋼材の長手方向縦断面における酸化物の予測√AREAmaxと硫化物の予測√AREAmaxおよび最大酸化物と最大硫化物の平均アスペクト比:
「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受の素材として用いるために、本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、鋼材の長手方向縦断面100mm2中の最大酸化物径である酸化物の√AREAmaxと最大硫化物径である硫化物の√AREAmaxの測定をそれぞれ30箇所において行い、極値統計処理を用いて算出される30000mm2中における酸化物の予測最大径である酸化物の予測√AREAmaxが50μm以下であり、硫化物の予測最大径である硫化物の予測√AREAmaxが60μm以下で、かつ前記30箇所の最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比がそれぞれ5.0以下でなければならない。
なお、「極値統計処理」による介在物の予測√AREAmaxの評価は、例えば次に示すような手順で行えばよい。
〈1〉棒鋼の長手方向に平行である断面を研磨した後、その研磨面を被検面積として、検査基準面積S0(mm2)を決める。
〈2〉上記S0中で最大の√AREAを有する介在物を選び、その√AREAmax(μm)を測定する。
〈3〉上述した測定を、重複しない場所でn回繰り返して行う。
〈4〉測定した√AREAmaxを小さい順に並べ直し、それを√AREAmax,j(j=1〜n)とする。
〈5〉それぞれのjについて下記の基準化変数yjを計算する。
j=−ln[−ln{j/(n+1)}]。
〈6〉極値統計用紙の座標横軸に√AREAmax、縦軸に基準化変数yをとって、j=1〜nについてプロットし、最小二乗法により近似直線を求める。
〈7〉評価したい面積をS(mm2)、T=(S+S0)/S0として下記の式からyの値を求め、上記の近似曲線を用いて、前記yの値における√AREAmaxを求めれば、これがその評価面積における介在物の予測√AREAmaxである。
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]。
上記の方法で、鋼材の長手方向縦断面100mm2中の最大酸化物について、√AREAmaxの測定を30箇所において行い、極値統計処理を行った際、30000mm2中に予測される酸化物の最大径である予測√AREAmaxが50μmを上回ると、粗大な酸化物によって転動疲労寿命が低下する。なお、酸化物の好ましい予測√AREAmaxは40μm以下である。また、酸化物の予測最大径√AREAmaxは小さければ小さい方が好ましい。
上記の方法で、鋼材の長手方向縦断面100mm2中の最大硫化物について、√AREAmaxの測定を30箇所において行い、極値統計処理を行った際、30000mm2中に予測される硫化物の最大径である予測√AREAmaxが60μmを上回ると、延伸した粗大な硫化物によって転動疲労寿命が低下する。なお、硫化物の好ましい予測√AREAmaxは50μm以下である。また、硫化物の予測最大径√AREAmaxは小さければ小さい方が好ましい。
酸化物径や硫化物径である介在物径√AREAの測定方法に関しては、非特許文献2に記載の光学顕微鏡による測定方法に基づいて測定する。すなわち、まず、光学顕微鏡により、観察している介在物が酸化物か硫化物かを判定する。そして、介在物の長径(L)は、単体または複数からなる群にて存在する介在物の端と端を結んだ最大の長さとし、その長径の方向と平行な線で挟んだ介在物の最大幅を短径(W)とする。また、群にて存在する介在物の場合には、2つ介在物間の距離と小さい方の介在物の√AREAの値とを比較し、小さい方の介在物の√AREAの値が2つの介在物間の距離よりも大きな場合には2つの介在物は一体と判断し、一方、小さい方の介在物の√AREAの値が2つの介在物間の距離よりも小さな場合には2つの介在物は別々の独立した介在物と判断する。
上記30箇所において測定を行った最大酸化物の平均アスペクト比が5.0を超えると、延伸した、または点列状の、粗大な酸化物によって、転動疲労寿命が低下する。また、上記30箇所において測定を行った最大硫化物の平均アスペクト比が5.0を超えると、延伸した粗大な硫化物によって、転動疲労寿命が低下する。したがって、上記30箇所において測定を行った最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比をそれぞれ、5.0以下とした。なお、上記の最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比はそれぞれ、4.0以下であることが好ましい。上記の最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比は、1に近ければ近い方がよい。
なお、例えば、後述の酸化物組成および硫化物組成を得るための製造方法によって、上記の鋼材のL断面における介在物の予測√AREAmaxとアスペクト比の条件を満たすことができる。
(C)鋼材の長手方向縦断面における最大酸化物の平均組成:
「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受の素材として用いるために、本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、上記30箇所において測定を行った最大酸化物の平均組成における質量%での含有量(以下、「濃度」ということがある。)が、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl23であって、CaOとAl23の2元系酸化物、CaO、MgOとAl23の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl23の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl23の4元系酸化物のうちのいずれかからなるものでなければならない。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、鋼材の長手方向縦断面における最大酸化物の平均組成が上記の条件を満たし、そして後述する熱間圧延を施すことによって、長く延伸した、または点列状の、粗大な酸化物の生成が抑制され、優れた転動疲労寿命を確保することが可能になる。
なお、酸化物に関しては、以下の方法で各酸化物の濃度を算出する。
まず、エネルギー分散型分光器(EDS)によって、酸化物中のCa、Mg、Al、Si、Mn、Cr、Fe、Sの含有量を「mol%」で定量する。
ここで、酸化物と硫化物が複合した介在物では、酸化物の構成元素中からSが検出される場合がある。その場合の酸化物濃度の求め方について説明する。
まず、Caに関してはCaSまたはCaOのどちらかで検出される。そして、CaSが存在する状況では熱力学的にMnOは存在しないため、Mnは全てSと結合しているものとする。したがって、酸化物中から[S]が検出される場合、つまり、[S]>[Mn]の場合には、[Mn]はすべてMnSを構成し、Mnの酸化物は存在しないとする。そして、[Mn]に対して余剰な[S]に相当する[Ca]をCaSを構成するCaとし、さらに、CaSを構成するのに余剰な[Ca]をCaO濃度とする。次いで、[Mg]、[Si]および[Al]からそれぞれ、MgO、SiO2およびAl23の濃度を求める。
一方、[S]≦[Mn]の場合には、[S]はすべてMnSを構成しているものとし、[Ca]、[Mg]、[Si]および[Al]からそれぞれ、CaO、MgO、SiO2およびAl23の濃度を求める。
なお、低級酸化物であるFexOおよびCr23については、本発明で規定しているO含有量の範囲ではごく微量しか存在しない。したがって、酸化物中から[Cr]および/または[Fe]が微量ながら検出された場合であっても、検出された[Cr]および[Fe]を除外した元素、すなわち[Ca]、[Mg]、[Si]および[Al]の合計を100%として、各酸化物の濃度を求め、最後に、上記のようにして求めた30個それぞれの試料におけるCaO、MgO、SiO2およびAl23の濃度から、最大酸化物の質量%での平均組成を算出する。
上記において[X]は元素Xの「mol%」単位で定量された値を指す。
以下、本発明で規定する各酸化物について詳しく説明する。
CaO:2.0〜20%
塩基性酸化物であるCaOは、スラグの主要成分の1つであり、脱硫時の媒溶剤として用いられる。前記最大酸化物の平均組成におけるCaO濃度が2.0%以上であれば、長く延伸した、または点列状の、Al23およびMgO・Al23(スピネル)相の生成を抑制する効果が得られる。一方、CaO濃度が20%を上回ると、大型のCaOを主体とする粗大な酸化物が生成されてしまい転動疲労寿命が低下する。したがって、前記最大酸化物の平均組成におけるCaO濃度を2.0〜20%とした。
MgO:0〜20%
MgOは塩基性酸化物であり、溶解度が低いため硬質のMgO(ぺリクレース)相として、さらには、Al23とともにスピネル相として晶出する。これらは点列状の粗大な酸化物となって鋼材中へ残存し、転動疲労寿命を低下させる場合があるため、前記最大酸化物の平均組成におけるMgO濃度に上限を設け、20%以下に制限する。なお、酸化物中にMgOは存在していなくても構わない。このため、酸化物の平均組成におけるMgO濃度を0〜20%とした。
SiO2:0〜10%
酸性酸化物であるSiO2は、スラグの主要成分の1つであり、酸化物中に含有される可能性があり、前記最大酸化物の平均組成において10%までは許容できるものの、10%を上回ると酸化物が延伸して粗大となって、転動疲労寿命が低下する場合がある。なお、酸化物中にSiO2は存在していなくても構わない。したがって、酸化物の平均組成におけるSiO2濃度を0〜10%とした。
なお、前記最大酸化物の平均組成におけるCaO濃度が2.0%以上になると、酸化物の残部であるAl23が、長く延伸したり、点列状になったりすることが抑制される。このため、残部としてのAl23の濃度は、CaOとAl23の2元系酸化物でかつ、CaO濃度が2.0%の場合の98.0%であってもよい。
(D)鋼材の長手方向縦断面における最大硫化物の平均組成:
本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、前記30箇所において測定を行った最大硫化物の平均組成における質量%での含有量が、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物もしくはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなるものでなければならない。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、鋼材の長手方向縦断面における最大硫化物の平均組成が上記の条件を満たし、そして後述する熱間圧延を施すことによって、延伸した粗大な硫化物の生成が抑制されるため、優れた転動疲労寿命を確保できる。
なお、硫化物に関しては、以下の方法で各硫化物の濃度を算出する。
まず、エネルギー分散型分光器(EDS)によって、硫化物中のCa、Mg、MnおよびSの含有量を「mol%」で定量する。ついで、[Ca]、[Mg]、[Mn]からそれぞれ、CaS、MgSおよびMnSの濃度を求める。
最後に、上記のようにして求めた30個それぞれの試料におけるCaS、MgSおよびMnSの濃度から、最大硫化物の質量%での平均組成を算出する。
上記において[X]は元素Xの「mol%」単位で定量された値を指す。
CaS:1.0〜100%
CaSは、脱硫反応によって生成する硫化物である。前記最大硫化物の平均組成におけるCaS濃度が1.0%以上になると、延伸した粗大な硫化物の生成を抑制する効果が得られる。硫化物としてCaSだけが存在しても、つまり、CaS濃度が100%であっても構わない。したがって、前記最大硫化物の平均組成におけるCaS濃度を1.0〜100%とした。
なお、硫化物がCaSとMnSの2元系硫化物、またはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなる場合の前記最大硫化物の平均組成におけるCaS濃度は、100%に近い値であっても構わない。
MgS:0〜20%
精錬段階にて鋼中にMgが取込まれ、硫化物中にMgSが混入する場合がある。前記最大硫化物の平均組成におけるMgS濃度が20%を上回ると、前述した酸化物中のMgO濃度が増加し、点列状の粗大な酸化物の生成を招くため、MgS濃度は20%以下に制限する。なお、硫化物中にMgSは存在していなくても構わない。したがって、前記最大硫化物の平均組成におけるMgS濃度を0〜20%とした。
なお、前記最大硫化物の平均組成におけるCaS濃度が1.0%以上になると、延伸した粗大な硫化物の生成が抑制される。このため、残部としてのMnSの濃度は、CaSとMnSの2元系硫化物の場合には、CaS濃度が1.0%の場合の99.0%であってもよい。また、CaS、MgSとMnSの3元系硫化物の場合には、CaS濃度が1.0%で、MgO濃度が0%に近い値の場合の99.0%に近い値であってもよい。
前述した最大酸化物の平均組成および最大硫化物の平均組成は、例えば、次に述べる製造方法によって得ることができる。
先ず、転炉で酸化精錬を行った後、転炉からの出鋼時にAlを添加して脱酸処理を行い、その後さらに除滓処理を実施する。
次いで、CaO:30〜70%、Al23:5〜40%、SiO2:10%以下(0%を含まない)、MgO:0〜10%、CaF2:0〜30%、CaO/SiO2:6.0以上およびCaO/Al23:1.5〜15.0を含有するスラグを、溶鋼1トン当たり、5〜20kgの範囲で調整し、アーク式加熱装置付き真空溶鋼撹拌装置(以下、「VAD」という。)でArガスによる撹拌および精錬処理を実施して、所定の範囲、つまり、Sが0.008%以下となるまで十分に脱硫処理を行う。次いで、RH真空脱ガス装置(以下、「RH」という。)にて30分程度の処理を行ってO(酸素)の含有量を低減させる。その後、連続鋳造して横断面が300mm×400mmの鋳片にする。
さらに、鋳片を分塊圧延および棒鋼圧延で、圧下比が10以上の熱間圧延を実施する。
なお、上記成分のスラグ組成およびVADでの処理は、酸化物および硫化物の組成制御を目的とするものである。そして、RH真空脱ガス装置における処理は、O(酸素)含有量低減を目的として実施する処理である。
また、圧下比とは鋳片の断面積を最終の圧下によって得られた浸炭軸受鋼鋼材の断面積で除した値を示す。圧下比を10以上とすることにより、安定して、複数からなる群にて存在する酸化物間の距離を大きくし、また延伸した酸化物または硫化物を分断することになって、一体として判断される介在物を低減させることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜25を、次のプロセスによって製造した。
表1中の鋼1〜15および鋼19〜25は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼であり、一方、鋼16〜18は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
Figure 0005783056
先ず、70t転炉で酸化精錬を行った後、転炉からの出鋼時にAlを添加して脱酸処理を行い、その後さらに除滓処理を行った。
次いで、VADにより、Ar雰囲気下で表2に示す条件にスラグを調整し、表3に示す条件でArガスによる撹拌を行った。
その後さらに、RHによる処理を表4に示す時間で実施し、その後、連続鋳造して300mm×400mmの鋳片にした。
上記のようにして得られた鋳片を1250℃で均熱した後、1100〜1050℃の温度域で分塊圧延して表5に示すサイズの鋼片にし、さらにその鋼片を1200℃に加熱した後、1100〜1020℃の温度域で棒鋼圧延して、直径120〜70mmの棒鋼を製造した。
なお、鋼19および鋼20については分塊圧延のみを実施して鋼片とし、棒鋼圧延は行わなかった。
Figure 0005783056
Figure 0005783056
Figure 0005783056
Figure 0005783056
試験番号1〜18および試験番号21〜25の棒鋼と、試験番号19および試験番号20の鋼片を200mmの長さに切断した後、ミクロ試料を採取した。
具体的には、試験番号1〜18および試験番号21〜25の棒鋼については、長手方向縦断面に対して表面と中心の中間位置であるR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)から、10mm×10mmのミクロ試料を30個作製した。
また、試験番号19および試験番号20の鋼片については、T/4部(「T」は鋼片の幅を表す。)から10mm×10mmのミクロ試料を30個作製した。
上記のようにして採取したミクロ試料100mm2中に存在する介在物について、まず、酸化物であるのか硫化物であるのかを調査した。
次いで、酸化物と硫化物の2種類の介在物について、最大の介在物の長径と短径を測定し、√AREAmax=(長径×短径)1/2として、各鋼の30個それぞれについて√AREAmaxを求めた。
また、測定した介在物の長径(L)を短径(W)で除してアスペクト比を求め、酸化物と硫化物のそれぞれについて、30個の最大介在物のアスペクト比を算術平均して、平均のアスペクト比を求めた。
介在物の長径は、単体または複数からなる群にて存在する介在物の端と端を結んだ最大の辺とし、その長径の辺と平行な線で挟んだ介在物の最大幅を短径とした。また、群にて存在する介在物では、隣接する2つの介在物間の距離と小さい方の介在物径√AREAとを比較し、小さい方の介在物径√AREAの値が隣接する2つの介在物間の距離よりも大きな場合には両者は一体と判断し、また小さい方の介在物径√AREAの値が隣接する2つの介在物間の距離より小さな場合には両者が別々の介在物と判断した。
そして、前述の〈1〉〜〈6〉に従い、横軸に√AREAmax、縦軸に基準化変数yをとって極値統計用紙に測定した30個のデータをプロットし、最小二乗法によって近似直線を求めた。
そして、極値統計処理を行い、30000mm2中に存在する酸化物と硫化物の2種類の介在物について、最大介在物の√AREAmaxを予測した。
また、測定した30箇所の最大酸化物と最大硫化物それぞれの平均組成は、前述の方法で調査した。
すなわち、酸化物については、エネルギー分散型分光器(EDS)によって、酸化物を構成する酸化物を構成する元素の量を「mol%」で定量し、前述の方法でCaO、MgO、SiO2およびAl23の濃度を求め、30個それぞれの試料におけるCaO、MgO、SiO2およびAl23の濃度から、最大酸化物の質量%での平均組成を算出した。
硫化物については、エネルギー分散型分光器(EDS)によって、硫化物中のCa、Mg、Mn、Sの含有量を「mol%」で定量し、前述の方法でCaS、MgSおよびMnSの濃度を求め、30個それぞれの試料におけるCaS、MgSおよびMnSの濃度から、最大酸化物の質量%での平均組成を算出した。
また、各鋼について、前記の試験番号1〜18および試験番号21〜25の直径70〜120mmの棒鋼ならびに試験番号19および試験番号20の鋼片を250mmの長さに切断した。
試験番号1〜18の直径70〜120mmの棒鋼の中心から、棒鋼の長手方向が素形材の厚みとなるように、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材をスライスして採取した。また、試験番号19の180mm×180mmの鋼片および試験番号20の160mm×160mmの鋼片については中心偏析の影響を極力避けるため、図1に示すようにT/4部が素形材の中心で、鋼片の長手方向が素形材の厚みとなるように、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材を採取した
上記直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材を、図2に示すヒートパターンで「浸炭焼入れ−焼戻し」した後、素形材の表面をラッピング加工して転動疲労試験片を作製して、転動疲労試験に供した。なお、図2中の「Cp」は、「炭素ポテンシャル」を、また、「O.Q.」は「油焼入れ」を表す。焼戻し後の冷却は大気中放冷とし、図2では「A.C.」と表記した。
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、最大接触面圧5230MPa、繰り返し速度1800cpm(cycle per minute)の条件で、試験数を10として行った。
表6に、転動疲労試験の詳細条件を示す。
Figure 0005783056
転動疲労試験結果は、ワイブル分布確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「転動疲労寿命」として、転動疲労特性を評価した。
表7に、上記各種の調査結果をまとめて示す。
Figure 0005783056
表7に示すように、本発明で規定する条件を全て満たす鋼材を素材とする試験番号1〜15の本発明例の場合、L10寿命は18.4×106以上であって、転動疲労特性に優れていることが明らかである。
これに対して、鋼の化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号16〜18の場合、転動疲労寿命が短い。
すなわち、試験番号16および試験番号17は、鋼16および鋼17のSの含有量がそれぞれ、0.012%および0.010%で、本発明で規定する値を上回っており、また硫化物中のCaS濃度が本発明で規定する値を下回っている。このため、延伸した粗大な硫化物となってしまい、L10寿命がそれぞれ、1.0×106および1.2×106と短い。
試験番号18は、鋼18のO含有量が0.0020%で、本発明で規定する値を上回っている。このため、酸化物が粗大となってしまい、L10寿命が0.8×106と短い。
次いで、鋼の化学組成が本発明で規定する条件を満足しても、酸化物および硫化物の予測√AREAmaxおよび平均のアスペクト比が本発明で規定する条件から外れた試験番号19と試験番号20の場合、転動疲労寿命が短い。
すなわち、試験番号19および試験番号20は酸化物と硫化物の√AREAmaxおよび平均のアスペクト比が本発明で規定する値を上回っている。このため、粗大な酸化物や硫化物の影響によりL10寿命がそれぞれ、1.3×106および1.4×106と短い。
また、鋼の化学組成が本発明で規定する条件を満足しても、最大酸化物の平均組成および最大硫化物の平均組成の少なくとも一方が本発明で規定する条件から外れた試験番号21〜25の場合、転動疲労寿命が短い。
すなわち、試験番号21においては、酸化物中のCaO濃度が本発明で規定する値を上回っている。このため、大型の酸化物が生成してしまい、L10寿命が1.5×106と短い。
試験番号22においては、酸化物中のMgO濃度が本発明で規定する値を上回っている。このため、点列状の酸化物が粗大となってしまい、L10寿命が1.4×106と短い。
試験番号23においては、酸化物中のSiO2濃度が本発明で規定する値を上回っている。このため、延伸した粗大な酸化物となってしまい、L10寿命が2.1×106と短い。
試験番号24においては、硫化物中のCaS濃度が本発明で規定する値を下回っている。このため、硫化物が延伸した粗大な硫化物となってしまい、L10寿命が2.0×106と短い。
試験番号25においては、硫化物中のMgS濃度が本発明で規定する値を上回っている。このため、酸化物中のMgO濃度が上昇し、点列状の酸化物が粗大になってしまい、L10寿命が1.8×106と短い。
本発明の浸炭軸受鋼鋼材は、安定して良好な転動疲労寿命を得ることができる。このため、「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受の素材として用いるのに好適である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Al:0.010〜0.050%、Cr:0.4〜2.0%、N:0.010〜0.025%およびO:0.0015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する浸炭軸受鋼鋼材であって、
    該鋼材の長手方向縦断面100mm2中の最大酸化物径である酸化物の√AREAmaxと最大硫化物径である硫化物の√AREAmaxの測定をそれぞれ30箇所において行い、極値統計処理を用いて算出される30000mm2中における酸化物の予測最大径である酸化物の予測√AREAmaxが50μm以下であり、硫化物の予測最大径である硫化物の予測√AREAmaxが60μm以下であり、かつ前記30箇所の最大酸化物および最大硫化物の平均アスペクト比がそれぞれ、5.0以下であり、
    さらに、前記30箇所の最大酸化物の平均組成における質量%での含有量が、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl23であって、CaOとAl23の2元系酸化物、CaO、MgOとAl23の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl23の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl23の4元系酸化物のうちのいずれかからなり、かつ、前記30箇所の最大硫化物の平均組成における質量%での含有量が、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物またはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなる、
    ことを特徴とする浸炭軸受鋼鋼材。
  2. Feの一部に代えて、Mo:1.0%以下およびNi:2.0%以下のうちの1種以上を含有する、請求項1に記載の浸炭軸受鋼鋼材。
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