WO2018212196A1 - 鋼及び部品 - Google Patents
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Abstract
焼入れ性、靭性、表面起点剥離寿命、及び曲げ疲労強度の全てを改善した鋼、及びこのような鋼を用いて製造された部品を提供すること。 所定の成分を有し、 下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00である。 Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1) [元素]:元素の質量% Fn2=A1/A2 ・・・(2) A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2) A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
Description
本発明は、焼入れ性、靭性、表面起点剥離寿命、及び曲げ疲労強度を改善した鋼、及びこのような鋼を用いて製造された部品に関する。
ベアリング等の機械構造用部品や、等速ジョイント、ハブユニット等の自動車用部品には、高い面圧が繰り返し作用するので、優れた転動疲労特性が求められるが、近年、上記部品には、例えば、自動車の燃費向上やエンジンの高出力化が求められるのに伴い、軽量化、小型化、及び、高応力負荷化の要望が極めて大きくなっており、上記部品の使用環境が過酷なものとなっている。
上記要求に対し、軸受部品の素材については、一般に、転動部品の剥離の原因のAl2O3に代表される非金属介在物(以下、単に「介在物」ということがある。)の量を極力低減して、転動疲労寿命の向上を図ることが行われてきた。
しかし、近年の製鋼技術の進歩により酸化物が小径化した結果、相対的に硫化物のサイズが大きくなり、酸化物のみを指標とする対策では、転動疲労寿命のばらつきが大きくなる場合がある。それ故、最近では、介在物の組成と形態を制御して転動疲労寿命を向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献1には、成分組成が、質量%で、C:0.1%以上0.4%未満、Si:0.02~1.3%、Mn:0.2~2.0%、P:0.05%以下、S:0.010%未満、Cr:0.50~2.00%、Al:0.01~0.10%、Ca:0.0003~0.0030%、O:0.0030%以下及びN:0.002~0.030%と、残部:Fe及び不純物とからなり、0.7≦Ca/O≦2.0及びCa/O≧1250S-5.8であることを特徴とする浸炭軸受用鋼が開示されている。
一方、軸受には、繰り返し曲げ応力が負荷されるので、曲げ疲労強度も求められる。最近では、軸受の曲げ疲労強度を高めるため、粒界酸化層の生成を抑制する試みがなされている。
例えば、特許文献2には、成分組成が、質量%で、C:0.1~0.3%、Si:0.01~0.25%、Mn:0.2~1.5%、S:0.003~0.05%、Cr:0.5~2.0%、Mo:0.1~0.8%、Al:0.01~0.05%、及び、N:0.008~0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のTiは0.005%以下、O(酸素)は0.002%以下、PとSnは合計で0.030%以下であり、かつ、鋼材断面において、A=(1+0.681Si)(1+3.066Mn+0.329Mn2)(1+2.07Cr)(1+3.14Mo)の最小値が13以上であるとともに、断面積1500mm2中での硫化物を除く介在物群の最大長さが30μm以下であることを特徴とする浸炭部品又は浸炭窒化部品用の鋼材が開示されている。
また、特許文献3には、成分組成が、質量%で、C:0.15~0.30%、Si:0.02~1.0%、Mn:0.30~1.0%、S:0.030%以下、Cr:1.80~3.0%、Al:0.010~0.050%及びN:0.0100~0.0250%を含有するとともに、Si、Mn、Cr及びSの含有量が、式(1)Mn/S及び式(2)Cr/(Si+2Mn)で表されるfn1及びfn2の値で、それぞれ、30≦fn1≦150及び0.7≦fn2≦1.1を満たし、残部Fe及び不純物からなり、不純物中のP、Ti、及び、O(酸素)が、それぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%未満、及び、O:0.0015%以下であることを特徴とする肌焼鋼が開示されている。
さらに、特許文献4には、質量%で、C:0.05~0.30%、Si:0.05~1.0%、Mn:0.10~2.0%、P:0.050%以下、S:0.008%以下、Cr:0.4~2.0%、Al:0.010~0.050%、N:0.010~0.025%およびO:0.0015%以下を含有し、残部はFeおよび不純物の化学組成からなる浸炭軸受鋼鋼材の溶製方法であって、工程1:フラックス吹込み処理、工程2:スラグ精錬処理、工程3:溶鋼還流処理の順に取鍋精錬処理を行うことにより、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、CaS:1.0%以上、MgS:0~20%、かつ、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95%以上になるように硫化物系介在物を制御する溶製方法が開示されている。
加えて、特許文献5には、特定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Cr、N及びOを含み、残部がFeと不純物からなり、長手方向縦断面100mm2中の最大酸化物径と最大硫化物径の測定を30箇所について行い、極値統計処理を用いて算出される30000mm2中の酸化物と硫化物の予測√AREAmaxが50μm以下と60μm以下、該30箇所で測定した最大酸化物及び最大硫化物の平均アスペクト比が5.0以下、該30箇所の最大酸化物の平均組成における含有量が、CaO:2.0~20%、MgO:0~20%及びSiO2:0~10%、かつ残部がAl2O3で、特定の2~4元系の酸化物のうちの何れかからなり、該30箇所の最大硫化物の平均組成における含有量が、CaS:100%の1元系硫化物、又はCaS≧1.0%、MgS:0~20%、かつ残部がMnSで、特定の2元系又は3元系の硫化物からなる浸炭軸受鋼鋼材が開示されている。
特許文献1に開示の浸炭軸受用鋼は、粒界酸化層が厚く形成された場合、曲げ疲労強度が低下する可能性がある。特許文献2に開示の浸炭部品又は浸炭窒化部品用の鋼材、及び特許文献3に開示の肌焼鋼は、延伸した粗大な硫化物が存在する場合、優れた転動疲労寿命が得られない可能性がある。従って、特許文献1~3に開示された技術では、焼入れ性、靭性、表面起点剥離離寿命、及び曲げ疲労強度の全ての特性を安定的に実現できない可能性がある。
また、特許文献4、5に開示された技術では、焼入れ性、靭性、表面起点剥離離寿命、及び曲げ疲労強度の全ての特性を安定的に実現できない可能性がある。
本発明は、従来技術の上記現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、焼入れ性、靭性、表面起点剥離離寿命、及び曲げ疲労強度の全てを改善した鋼、及びこのような鋼を用いて製造された部品を提供することにある。
一般に、転動疲労は、鋼材中に存在する介在物に、繰返し荷重が加わり、応力集中によって亀裂が生じ、その後、繰り返し荷重によって亀裂が徐々に進展し、最終的に剥離に至る現象である。
本発明者らは、上記課題を解決するため、種々検討を行った。その結果、下記(a)及び(b)の知見を得るに至った。
(a)硫化物の組成を制御することによって、具体的には、例えば、溶鋼中にCaを添加して、硫化物中に(Mn、Ca)Sを含有するように組成を制御することによって、転動疲労の応力集中源となる粗大な硫化物を分散、小径化することができる。
(b)酸化性元素、なかでも、Cr、Si、及び、Mnの量バランスを適正化することによって、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くすることができ、その結果、高い曲げ疲労強度を確保することができる。
本発明は、上記知見(a)及び(b)に基づいてなされたもので、その要旨は次のとおりである。
[1]成分組成が、質量%で、
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%以下、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00である
ことを特徴とする鋼。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%以下、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00である
ことを特徴とする鋼。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
[2]上記成分組成が、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及びB:0.005%以下の少なくとも1種を含む、[1]に記載の鋼。
[3]上記成分組成が、質量%で、Nb:0.05%以下、及びTi:0.10%以下の少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の鋼。
[4]棒鋼である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の鋼。
[5]表面から500μm以上の深さ領域において、
成分組成が、質量%で、
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00であり、
表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に優れた、ことを特徴とする部品。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
成分組成が、質量%で、
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00であり、
表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に優れた、ことを特徴とする部品。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
[6]上記成分組成が、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及びB:0.005%以下の少なくとも1種を含む、[5]に記載の部品。
[7]上記成分組成が、質量%で、Nb:0.05%以下、及びTi:0.10%以下の少なくとも1種を含む、[5]又は[6]に記載の部品。
[8]中央部において、吸収エネルギーvE20が43J/cm2以上である、[5]~[7]のいずれか1つに記載の部品。
本発明に係る鋼では、所定の成分組成を有するとともに、Cr、Si、Mnのバランスを適正化するとともに、円相当径が所定の値である硫化物系介在物のうち、さらに硫化物中のCaモル数の割合が所定の値である硫化物系介在物の割合を適正化している。このため、本発明に係る鋼では、焼入れ性、靭性、表面起点剥離寿命、及び曲げ疲労強度の全てを改善することができる。
以下、本発明に至る発明者らの知見、並びに、本発明に係る鋼、その製造方法、及び部品の製造方法に関する実施形態(本実施形態)について詳述する。なお、以下では、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
<本発明者らの知見>
本発明者らは、焼入れ性、靭性、表面起点剥離寿命、及び曲げ疲労強度の全てを改善した鋼、及びこのような鋼を用いて製造された部品を提供するため、鋭意、検討した。即ち、本発明者らは、鋼の成分組成の影響、特に、Si、Mn、Cr、及び、Caが、浸炭処理後の浸炭部品の表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に及ぼす影響について調査・検討した。その結果、本発明者らは、曲げ疲労強度、表面起点剥離寿命、焼入れ性及び靭性、について、次の知見を得るに至った。
本発明者らは、焼入れ性、靭性、表面起点剥離寿命、及び曲げ疲労強度の全てを改善した鋼、及びこのような鋼を用いて製造された部品を提供するため、鋭意、検討した。即ち、本発明者らは、鋼の成分組成の影響、特に、Si、Mn、Cr、及び、Caが、浸炭処理後の浸炭部品の表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に及ぼす影響について調査・検討した。その結果、本発明者らは、曲げ疲労強度、表面起点剥離寿命、焼入れ性及び靭性、について、次の知見を得るに至った。
(a)曲げ疲労強度について
浸炭軸受用鋼において、高い曲げ疲労強度を確保するためには、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くする必要があるが、酸化性元素のなかで、特に、Si、Mn、及び、Crにおいて、量バランスを適正化することで、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くすることができる。
浸炭軸受用鋼において、高い曲げ疲労強度を確保するためには、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くする必要があるが、酸化性元素のなかで、特に、Si、Mn、及び、Crにおいて、量バランスを適正化することで、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くすることができる。
具体的には、下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であれば、粒界酸化層及び不完全焼入れ層の層厚を薄くすることができる。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn1:0.20~0.65
Fn1が0.20未満であると、浸炭異常層の層厚が厚くなり、高い曲げ疲労強度を確保することが困難になるので、Fn1は0.20以上とする。好ましくは0.25、さらに好ましくは0.30以上である。一方、Fn1が0.65を超えると、同様に、浸炭異常層の層厚が厚くなり、高い曲げ疲労強度を確保することが困難になるので、Fn1は0.65以下とする。好ましくは0.60、さらに好ましくは0.55以下である。
Fn1が0.20未満であると、浸炭異常層の層厚が厚くなり、高い曲げ疲労強度を確保することが困難になるので、Fn1は0.20以上とする。好ましくは0.25、さらに好ましくは0.30以上である。一方、Fn1が0.65を超えると、同様に、浸炭異常層の層厚が厚くなり、高い曲げ疲労強度を確保することが困難になるので、Fn1は0.65以下とする。好ましくは0.60、さらに好ましくは0.55以下である。
(b)表面起点剥離寿命について
硫化物系介在物は、通常、高温で変形し易いので、熱間加工時に容易に変形して延伸する。延伸した硫化物系介在物は、浸炭軸受部品の使用環境下において疲労起点となり、表面起点剥離寿命が短くなる。それ故、表面起点剥離寿命を延ばすには、高温における硫化物系介在物の変形抵抗を高めることが有効である。
硫化物系介在物は、通常、高温で変形し易いので、熱間加工時に容易に変形して延伸する。延伸した硫化物系介在物は、浸炭軸受部品の使用環境下において疲労起点となり、表面起点剥離寿命が短くなる。それ故、表面起点剥離寿命を延ばすには、高温における硫化物系介在物の変形抵抗を高めることが有効である。
即ち、高温における硫化物系介在物の変形抵抗を高めると、熱間加工時に硫化物系介在物が延伸し難くなり、球状を維持するので、硫化物系介在物が疲労起点となり難い。
Caを含まない硫化物よりもCaを含む硫化物の方が、変形抵抗が大きい。このため、硫化物系介在物にCaを固溶させれば、即ちMnSのMnをCaに置換すれば、結果として高温での変形抵抗が高くなる。MnSのMnがCaに置換された硫化物を(Mn,Ca)Sとする。具体的には、酸素濃度を極力低下させた状態で二次精錬を行い、硫化物介在物を、(Mn,Ca)Sが主となるようにすることで、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有することができる。
このようにCaを固溶させた硫化物系介在物は、熱間加工後でも球状を維持することができるので、アスペクト比(硫化物系介在物の長径/短径)が小さい。具体的には、Caを各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上含む硫化物系介在物は、Caを各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%未満しか含まない硫化物系介在物よりも熱間加工後のアスペクト比が小さく、その9割についてはアスペクト比が3以下である。なお、実験の結果、Caの各硫化物中の総モル数に対する上限値は50モル%であることが判明している。
本発明者らは、上記知見に基づき、浸炭軸受用鋼中の硫化物系介在物が、下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00であれば、硫化物系介在物の熱間加工時の変形抵抗が高くなり、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が延びることを見いだした。
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の
硫化物系介在物の総面積(μm2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の
硫化物系介在物の総面積(μm2)
Fn2(=A1/A2):0.50~1.00
Fn2は、熱間加工後の浸炭軸受用鋼中の硫化物系介在物のアスペクト比に係る指標である。Fn2が0.50以下であれば、熱間加工時、硫化物系介在物が延伸し、熱間加工後の硫化物系介在物のアスペクト比が大きくなる。
Fn2は、熱間加工後の浸炭軸受用鋼中の硫化物系介在物のアスペクト比に係る指標である。Fn2が0.50以下であれば、熱間加工時、硫化物系介在物が延伸し、熱間加工後の硫化物系介在物のアスペクト比が大きくなる。
熱間加工後の硫化物系介在物のアスペクト比が大きくなると、浸炭処理後の浸炭軸受部品の使用環境下で、硫化物系介在物が疲労起点となり、表面起点剥離寿命が短くなるので、Fn2は0.50以上とする。好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上である。Fn2の上限は、定義から1.00である。
(C)焼入れ性及び靱性について
従来、浸炭軸受用の鋼について、曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善しながら、焼入れ性又は靱性を保つことは困難であった。曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善すると、焼入れ性又は靱性が低下する問題点があった。
本発明者らは、所定の成分組成、(1)式及び(2)式を満たす本実施形態に係る鋼が、浸炭処理後の部品において、曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善しながら、焼入れ性及び靱性にも優れていることを見出した。
焼入れ性に優れるとは、焼入れ後、部品の表面から500μm以下においてHRCの硬さが22以上となることをいう。
靱性に優れるとは、中央部において、吸収エネルギーvE20が43J/cm2以上であることをいう。
(C)焼入れ性及び靱性について
従来、浸炭軸受用の鋼について、曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善しながら、焼入れ性又は靱性を保つことは困難であった。曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善すると、焼入れ性又は靱性が低下する問題点があった。
本発明者らは、所定の成分組成、(1)式及び(2)式を満たす本実施形態に係る鋼が、浸炭処理後の部品において、曲げ疲労強度又は表面起点剥離寿命を改善しながら、焼入れ性及び靱性にも優れていることを見出した。
焼入れ性に優れるとは、焼入れ後、部品の表面から500μm以下においてHRCの硬さが22以上となることをいう。
靱性に優れるとは、中央部において、吸収エネルギーvE20が43J/cm2以上であることをいう。
<鋼>
[成分組成]
(必須元素)
C:0.10~0.30%
Cは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼材の芯部の強度及び靭性を高める元素である。また、Cは、浸炭処理後の浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を伸ばす作用をなす元素である。
[成分組成]
(必須元素)
C:0.10~0.30%
Cは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼材の芯部の強度及び靭性を高める元素である。また、Cは、浸炭処理後の浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を伸ばす作用をなす元素である。
Cが0.10%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Cは0.10%以上とする。好ましくは0.13%以上、より好ましくは0.15%以上である。一方、Cが0.30%を超えると、靭性が低下するので、Cは0.30%以下とする。好ましくは0.29%以下、より好ましくは0.28%以下、さらに好ましくは0.25%以下である。
Si:0.01~0.25%
Siは、脱酸剤として機能する他、焼入れ性の向上に寄与する元素である。また、Siは、焼戻し軟化抵抗を高め、高温下での鋼の軟化を抑制する作用をなす元素である。しかし、Siは酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Siは、脱酸剤として機能する他、焼入れ性の向上に寄与する元素である。また、Siは、焼戻し軟化抵抗を高め、高温下での鋼の軟化を抑制する作用をなす元素である。しかし、Siは酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Siが0.01%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Siは0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.06%以上である。一方、Siが0.25%を超えると、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下するので、Siは0.25%以下とする。好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.15%以下である。
Mn:0.20~1.50%
Mnは、脱酸剤として機能する他、焼入れ性の向上に寄与する元素である。しかし、Mnは、Siと同様に酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Mnは、脱酸剤として機能する他、焼入れ性の向上に寄与する元素である。しかし、Mnは、Siと同様に酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Mnが0.20%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Mnは0.20%以上とする。好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.40%以上である。一方、Mnが1.50%を超えると、硬さが上昇して、被削性が著しく低下するとともに、浸炭異常層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が著しく低下するので、Mnは1.50%以下とする。好ましくは1.48%以下、より好ましくは1.30%以下、さらに好ましくは1.10%以下である。
P:0.001~0.015%
Pは、不純物元素であり、結晶粒界に偏析し、鋼の靭性及び浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
Pは、不純物元素であり、結晶粒界に偏析し、鋼の靭性及び浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
Pが0.015%を超えると、鋼の靭性及び浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が著しく低下するので、Pは0.015%以下とする。好ましくは0.013%以下、より好ましくは0.010%以下である。Pは、少ないほうが好ましいが、0.001%未満に低減すると製造コストが上昇するので、Pは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。
S:0.001~0.010%
Sは、不純物元素であり、硫化物を形成し、鋼の靭性と冷間鍛造性を阻害するとともに、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
Sは、不純物元素であり、硫化物を形成し、鋼の靭性と冷間鍛造性を阻害するとともに、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
Sが0.010%を超えると、鋼の靭性と冷間鍛造性が著しく低下するとともに、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が著しく低下するので、Sは0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.005%以下である。Sは、少ないほうが好ましいが、0.001%未満に低減すると、製造コストが上昇するので、Sは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.005%以上である。
Cr:0.50~2.00%
Crは、焼入れ性を高める他、焼戻し軟化抵抗を高め、高温下での鋼の軟化を抑制する作用をなす元素である。しかし、Crは、Si及びMnと同様に酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Crは、焼入れ性を高める他、焼戻し軟化抵抗を高め、高温下での鋼の軟化を抑制する作用をなす元素である。しかし、Crは、Si及びMnと同様に酸化性元素であり、量が増大すると、浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によって選択酸化されて、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が低下する。
Crが0.50%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Crは0.50%以上とする。好ましくは0.70%以上、より好ましくは0.90%以上である。一方、Crが2.00%を超えると、硬さが上昇し、被削性が著しく低下するとともに、浸炭異常層の層厚が厚くなり、曲げ疲労強度が著しく低下するので、Crは2.00%以下とする。好ましくは1.98%以下、より好ましくは1.80%以下、さらに好ましくは1.60%以下である。
Mo:0.10~0.50%
Moは、焼入れ性を高め、浸炭焼入れ後の表面硬さ、硬化層深さ、及び、芯部硬さの向上と、浸炭部品の強度の確保に寄与する元素である。また、Moは、非酸化性元素であるので、浸炭時に粒界酸化層の層厚を厚くせずに、鋼表面を強靭化し、曲げ疲労強度を高める作用をなす元素である。
Moは、焼入れ性を高め、浸炭焼入れ後の表面硬さ、硬化層深さ、及び、芯部硬さの向上と、浸炭部品の強度の確保に寄与する元素である。また、Moは、非酸化性元素であるので、浸炭時に粒界酸化層の層厚を厚くせずに、鋼表面を強靭化し、曲げ疲労強度を高める作用をなす元素である。
Moが0.10%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Moは0.10%以上とする。好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.30%以上である。一方、Moが0.50%を超えると、硬さが上昇し、被削性が著しく低下する。さらに、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が低下する。また、製造コストも上昇するので、Moは0.50%以下とする。好ましく0.48%以下、より好ましくは0.45%以下である。
Al:0.005~0.100%
Alは、鋼を脱酸する作用をなす元素である。Alが0.005%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Alは0.005%以上とする。好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上である。一方、Alが0.100%を超えると、粗大な酸化物が生成し、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が短くなるので、Alは0.100%以下とする。好ましく0.070%以下、より好ましくは0.050%以下である。
Alは、鋼を脱酸する作用をなす元素である。Alが0.005%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Alは0.005%以上とする。好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上である。一方、Alが0.100%を超えると、粗大な酸化物が生成し、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が短くなるので、Alは0.100%以下とする。好ましく0.070%以下、より好ましくは0.050%以下である。
Ca:0.0002~0.0010%
Caは、硫化物系介在物中に固溶して、硫化物系介在物を球状化する作用をなす元素である。また、Caは、高温における硫化物系介在物の変形抵抗を高め、熱間加工時における硫化物系介在物の延伸を抑制して球状を維持し、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を延ばす作用をなす元素である。
Caは、硫化物系介在物中に固溶して、硫化物系介在物を球状化する作用をなす元素である。また、Caは、高温における硫化物系介在物の変形抵抗を高め、熱間加工時における硫化物系介在物の延伸を抑制して球状を維持し、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命を延ばす作用をなす元素である。
Caが0.0002%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Caは0.0002%以上とする。好ましくは0.0003%以上、より好ましくは0.0004%以上である。一方、Caが0.0010%を超えると、粗大な酸化物が生成し、浸炭軸受部品の表面起点剥離寿命が短くなるので、Caは0.0010%以下とする。好ましくは0.0009%以下、より好ましくは0.0008%以下である。
N:0.005~0.025%
Nは、Al、Nb、及び/又は、Tiと結合して、結晶粒の微細化に有効なAlN、NbN、及び/又は、TiNを形成し、曲げ疲労強度の向上に寄与する元素である。
Nは、Al、Nb、及び/又は、Tiと結合して、結晶粒の微細化に有効なAlN、NbN、及び/又は、TiNを形成し、曲げ疲労強度の向上に寄与する元素である。
Nが0.005%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Nは0.005%以上とする。好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.012%以上である。一方、Nが0.025%を超えると、粗大な窒化物が生成して、靭性及び曲げ疲労強度が低下するので、Nは0.025%以下とする。好ましくは0.022%以下、より好ましくは0.020%以下である。
O(酸素):0.0015%以下
O(酸素)は、酸化物を形成し、強度を阻害するとともに、浸炭軸受部品の曲げ疲労強度及び表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
O(酸素)は、酸化物を形成し、強度を阻害するとともに、浸炭軸受部品の曲げ疲労強度及び表面起点剥離寿命を阻害する元素である。
O(酸素)が0.0015%を超えると、強度、浸炭軸受部品の曲げ疲労強度及び表面起点剥離寿命が低下するので、O(酸素)は0.0015%以下とする。好ましく0.0013%以下、より好ましくは0.0010%以下である。O(酸素)は、少ないほうが好ましいが、O(酸素)を0.0001%以下に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
(選択元素)
本実施形態において、鋼の成分組成は、上記元素の他、鋼の特性の向上のため、さらに、質量%で、(a)Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及び、B:0.005%以下の元素群のうちの少なくとも1種、及び、(b)Nb:0.05%以下、及び、Ti:0.10%の元素群のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
本実施形態において、鋼の成分組成は、上記元素の他、鋼の特性の向上のため、さらに、質量%で、(a)Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及び、B:0.005%以下の元素群のうちの少なくとも1種、及び、(b)Nb:0.05%以下、及び、Ti:0.10%の元素群のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
(a)群元素
Cu:0.20%以下
Cuは、焼入れ性を高める作用をなす元素である。Cuが0.20%を超えると、熱間加工性が低下するとともに、鋼コストが上昇するので、Cuは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Cuの添加効果を確実に得る点で、Cuは0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
Cu:0.20%以下
Cuは、焼入れ性を高める作用をなす元素である。Cuが0.20%を超えると、熱間加工性が低下するとともに、鋼コストが上昇するので、Cuは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Cuの添加効果を確実に得る点で、Cuは0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
Ni:0.20%以下
Niは、焼入れ性の向上の他、靭性の向上に寄与する元素である。また、Niは、非酸化性の元素であり、浸炭時に粒界酸化層の層厚を増大せずに、鋼表面を強靭化する作用をなす元素である。
Niは、焼入れ性の向上の他、靭性の向上に寄与する元素である。また、Niは、非酸化性の元素であり、浸炭時に粒界酸化層の層厚を増大せずに、鋼表面を強靭化する作用をなす元素である。
Niが0.20%を超えると、添加効果が飽和し、また、鋼コストが上昇するので、Niは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Niの添加効果を確実に得る点で、Niは0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。
B:0.005%以下
Bは、焼入れ性を高める作用をなす他、焼入れ時、オーステナイト粒界へのPやSの偏析を抑制する作用をなす元素である。Bが0.005%を超えると、BNが生成して、鋼の靭性が低下するので、Bは0.005%以下が好ましい。より好ましくは0.003%以下である。Bの添加効果を確実に得る点で、Bは0.0003%以上が好ましい。より好ましくは0.0005%以上である。
Bは、焼入れ性を高める作用をなす他、焼入れ時、オーステナイト粒界へのPやSの偏析を抑制する作用をなす元素である。Bが0.005%を超えると、BNが生成して、鋼の靭性が低下するので、Bは0.005%以下が好ましい。より好ましくは0.003%以下である。Bの添加効果を確実に得る点で、Bは0.0003%以上が好ましい。より好ましくは0.0005%以上である。
(b)群元素
Nb:0.05%以下
Nbは、Nbは、C及び/又はNと結合し、微細な炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度の向上に寄与する元素である。
Nb:0.05%以下
Nbは、Nbは、C及び/又はNと結合し、微細な炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度の向上に寄与する元素である。
Nbが0.05%を超えると、熱間延性が著しく低下して、熱間圧延や熱間鍛造時、鋼表面に疵が発生し易くなるとともに、鋼の靭性が低下するので、Nbは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.02%以下である。Nbの添加上効果を確実に得る点で、Nbは0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.008%以上である。
Ti:0.10%以下
Tiは、微細な炭化物等を形成して結晶粒を微細化し、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Tiが0.10%を超えると、鋼の靭性及び曲げ疲労強度が低下するので、Tiは0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。Tiの添加効果を確実に得る点で、Tiは0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.010%以上である。
Tiは、微細な炭化物等を形成して結晶粒を微細化し、鋼の強度の向上に寄与する元素である。Tiが0.10%を超えると、鋼の靭性及び曲げ疲労強度が低下するので、Tiは0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。Tiの添加効果を確実に得る点で、Tiは0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.010%以上である。
(残部)
本実施形態に係る鋼の成分組成について、残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼原料(鉱石、スクラップ等)から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素で、本実施形態に係る鋼の特性を阻害しない範囲で許容される元素である。具体的には、Sb、Sn、W、Co、As、Mg、Pb、Bi、及びHがあげられる。なお、Sb、Sn、W、Co、As、Mg、Pb、Bi、及びHは、それぞれ、本願の効果を実現する上で、0.010%、0.10%、0.50%、0.50%、0.005%、0.005%、0.10%、0.10%、及び0.0010%まで含むことを許容できる。
本実施形態に係る鋼の成分組成について、残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼原料(鉱石、スクラップ等)から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素で、本実施形態に係る鋼の特性を阻害しない範囲で許容される元素である。具体的には、Sb、Sn、W、Co、As、Mg、Pb、Bi、及びHがあげられる。なお、Sb、Sn、W、Co、As、Mg、Pb、Bi、及びHは、それぞれ、本願の効果を実現する上で、0.010%、0.10%、0.50%、0.50%、0.005%、0.005%、0.10%、0.10%、及び0.0010%まで含むことを許容できる。
次に、本実施形態に係る鋼の、成分組成に関して、下記式(1)で定義するFn1、及び、本実施形態に係る鋼の、硫化物系介在物に関して、下記式(2)で定義するFn2について詳細に説明する。
なお、本明細書において、硫化物系介在物は、MnS、(Mn,Ca)S、CaS、FeSであると考えられる。FeSの存在量は微量である。計算上FeSを考慮する。
なお、本明細書において、硫化物系介在物は、MnS、(Mn,Ca)S、CaS、FeSであると考えられる。FeSの存在量は微量である。計算上FeSを考慮する。
Fn1:0.20~0.65
本実施形態に係る鋼の成分組成においては、下記式(1)で定義するFn1を0.20~0.65とする。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
なお、式(1)中のかっこ内には元素の質量%が導入される。
本実施形態に係る鋼の成分組成においては、下記式(1)で定義するFn1を0.20~0.65とする。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
なお、式(1)中のかっこ内には元素の質量%が導入される。
Fn1は、浸炭異常層の層厚に係る指標である。Fn1が0.20未満である(Si量が過度に多い)と粒界酸化層等が厚くなる。また、Fn1が0.65を超える(Cr量が過度に多い)と浸炭ガス中の微量のH2O及び/又はCO2によってCrが選択酸化される。このため、これらの場合には、いずれも、浸炭異常層の層厚が増大して、曲げ疲労強度が低下するので、Fn1は0.20以上であり、Fn1は0.65以下である。Fn1は好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上である。Fn1は好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下である。
Fn2:0.50~1.00
本発明鋼の硫化物系介在物については、下記式(2)で定義するFn2を0.50~1.00とする。
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の
硫化物系介在物の総面積(μm2)
本発明鋼の硫化物系介在物については、下記式(2)で定義するFn2を0.50~1.00とする。
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の
硫化物系介在物の総面積(μm2)
Fn2(=A1/A2)は、熱間加工後の硫化物系介在物のアスペクト比に係る指標である。Fn2が0.50未満であると、アスペクト比の大きい硫化物系介在物の割合が大きくなる。
アスペクト比の大きい硫化物系介在物は、浸炭処理後の浸炭軸受部品の使用環境下で疲労起点となり、表面起点剥離寿命を阻害するので、アスペクト比の大きい硫化物系介在物の割合を低減するため、Fn2は0.5以上である。Fn2は好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上である。Fn2は、その定義から1.00以下である。
Fn2は、次の方法で求める。棒状又は線状の鋼の直径を含む圧延方向に平行な断面の表面から1/10d-7/16dの領域を観察対象領域とする。ここでは鋼の直径をdと示す。
圧延方向に平行な断面である観察対象領域をダイヤモンドで鏡面研磨し被検面とする。被検面の硫化物系介在物を、SEM(走査型電子顕微鏡)で特定する。具体的には、500倍の倍率で被検面内の任意の観察領域を100箇所選択する。すなわち観察領域は、観察対象領域を鏡面研磨した被検面の任意の領域を500倍の倍率で観察する領域のことをいう。観察領域の総面積は少なくとも4.0mm2とする。観察領域の総面積は4.0mm2超であっても良い。なお、被検面は、観察領域の総面積が少なくとも4.0mm2を満たす様に作成されていれば足り、被検面自体の大きさは特に特定しない。
各観察領域において、SEMで観察される反射電子像のコントラストに基づいて、硫化物系介在物を特定する。反射電子像では、観察領域がグレースケール画像で表示される。反射電子像内におけるFe母材、硫化物系介在物、酸化物系介在物のコントラストはそれぞれ異なる。
硫化物系介在物を示す明度(複数階調)の数値範囲を、SEM及びEDS(エネルギー分散型X線マイクロアナライザー)によって予め決定しておく。以下、予め硫化物系介在物を示す明度と決定された数値範囲を基準範囲という。観察領域において、明度が基準範囲内の領域を決定する。以下、明度が基準範囲内の領域を硫化物領域という。
図1に、観察領域内のSEM像の明度分布の一例を模式的に示す。図1において、縦軸は観察領域中の面積割合(%)であり、横軸は明度である。図1中、領域R1は、酸化物系介在物の領域を示し、領域R2は硫化物系介在物の領域を示し、領域R3はFe母材の領域を示す。
図1中のB1~B2を明度の基準範囲とし、基準範囲B1~B2の領域を、観察領域から選択する。図2に、観察領域内のSEM像の一例を模式的に示す。図2中、硫化物領域X1~X4は、基準範囲B1~B2の明度を有する領域であり、該領域は、硫化物系介在物の領域に相当する。
図2において、介在物Y1~Y3中の領域Z1~Z3は、酸化物系介在物の領域に相当する。つまり、介在物Y1~Y3は、硫化物系介在物及び酸化物系介在物からなる複合介在物である。
次に、特定された硫化物領域X1~X4の円相当径を算出する。円相当径とは、硫化物領域の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合における円の直径である。硫化物領域X1~X4の円相当径を算出する際、それぞれの硫化物領域内に存在する酸化物系介在物(図2におけるZ1~Z3の領域)の面積を除いて算出する。100箇所の観察領域(総面積4.0mm2)において、算出した円相当径が1.0μm以上となる硫化物領域の総面積(μm2)をA2と定義する。
次に、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積A1を次の方法で求める。上記100箇所の観察領域(総面積4.0mm2)において、円相当径が1.0μm以上の硫化物領域を、EDSにより定量分析する。定量分析した硫化物領域のうち、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有する硫化物系介在物の領域を特定する。
硫化物系介在物中のCaをEDSで定量分析する際、半定量的な分析方法を用いる。観察領域中には、単独の硫化物系介在物が存在するだけではなく、前述のとおり、硫化物系介在物と酸化物系介在物を含む複合介在物も存在する。
SEM像により特定された硫化物領域が複合介在物の硫化物系介在物である場合を想定する。この場合、硫化物系介在物を狙って、EDS装置から電子を入射しても、硫化物系介在物だけでなく、硫化物系介在物に隣接する酸化物系介在物にも入射電子が当る場合がある。
このような場合、分析結果には、硫化物系介在物だけではなく、酸化物系介在物の分析値も含まれる。酸化物系介在物は、Ca酸化物である可能性がある。この問題を避けるため、半定量的な測定方法を採用する。半定量的な測定方法は次のとおりである。以下に示す含有量はモル%である。
EDS定量分析で測定した硫化物系介在物中のS含有量とMn含有量を比較する。EDS定量分析では、介在物毎に介在物の全体が入る領域で測定を行い、5kVの電圧で20nmのビーム直径を用い100nmピッチで行った。
(i)S含有量がMn含有量以下の場合
SはCaと比べてMnとの結合力が強いため、分析した硫化物領域のSは、MnSとして形成されており、Caは含まれていない。つまり(Ca,Mn)Sは存在せず、分析した硫化物領域の面積は(2)式のA1に含まれない。
Mn含有量からS含有量を差し引いた差分値のMn(下記[Mn]*)は、酸化物系介在物に含まれていると算出される。
[Mn]*=Mn含有量―S含有量 ・・・(A)式
(i)S含有量がMn含有量以下の場合
SはCaと比べてMnとの結合力が強いため、分析した硫化物領域のSは、MnSとして形成されており、Caは含まれていない。つまり(Ca,Mn)Sは存在せず、分析した硫化物領域の面積は(2)式のA1に含まれない。
Mn含有量からS含有量を差し引いた差分値のMn(下記[Mn]*)は、酸化物系介在物に含まれていると算出される。
[Mn]*=Mn含有量―S含有量 ・・・(A)式
(ii)S含有量がMn含有量を超える場合
Ca含有量が、下記(B)式の[S]*量より多い場合、[S]*に相当するCaが、(Ca,Mn)Sとして硫化物領域に含まれていると算出される。下記(C)式の[Ca]*量はCaOとして酸化物を形成している。よって、[Ca]*は分析した硫化物領域のモル数から除外される。
Ca含有量が、下記(B)式の[S]*量より少ない場合、[S]*量のSがFeと結合してFeSが形成されている。この場合、Ca含有量は、(Ca,Mn)Sとして硫化物領域に含まれている。
[S]*=S含有量―Mn含有量 ・・・(B)式
[Ca]*=Ca含有量―[S]* ・・・(C)式
Ca含有量が、下記(B)式の[S]*量より多い場合、[S]*に相当するCaが、(Ca,Mn)Sとして硫化物領域に含まれていると算出される。下記(C)式の[Ca]*量はCaOとして酸化物を形成している。よって、[Ca]*は分析した硫化物領域のモル数から除外される。
Ca含有量が、下記(B)式の[S]*量より少ない場合、[S]*量のSがFeと結合してFeSが形成されている。この場合、Ca含有量は、(Ca,Mn)Sとして硫化物領域に含まれている。
[S]*=S含有量―Mn含有量 ・・・(B)式
[Ca]*=Ca含有量―[S]* ・・・(C)式
以上の半定量的な測定方法により、円相当径が1.0μm以上の硫化物領域中のCa含有量を特定する。そして、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物領域の総面積(μm2)を求め、求めた総面積をA1と定義する。A1を算出する場合も、硫化物領域内に存在する酸化物系介在物(図2におけるZ1~Z3の領域)の面積は除いて算出する。
以上の方法により算出した総面積A1及び総面積A2を用いて、Fn2を求める。
本発明の鋼とは、浸炭軸受用の鋼である。通常、棒鋼や線材が浸炭軸受用の鋼として用いられている。一般に流通される棒鋼の直径は16mmから200mmであり、線材の直径は4mmから20mmである。本発明の実施形態に係る鋼を、直径が16mmから200mmの棒鋼、又は直径が4mmから20mm線材と規定しても良い。
本発明の鋼とは、浸炭軸受用の鋼である。通常、棒鋼や線材が浸炭軸受用の鋼として用いられている。一般に流通される棒鋼の直径は16mmから200mmであり、線材の直径は4mmから20mmである。本発明の実施形態に係る鋼を、直径が16mmから200mmの棒鋼、又は直径が4mmから20mm線材と規定しても良い。
<鋼の製造方法>
次に、本発明鋼を製造する製造方法の一例について説明する。
次に、本発明鋼を製造する製造方法の一例について説明する。
上記成分組成を有し、かつ、上記式(1)を満たす溶鋼を連続鋳造して鋳片にする。Caは、Al添加の後にタンディッシュへ挿入前の溶鋼へワイヤー添加する。Al添加後にCa添加することで、粗大なCa酸化物が生成し難くなり、タンディッシュへ挿入前の溶鋼へワイヤー添加することで、溶鋼中で晶出する粗大な(Mn,Ca)S量を低減でき、過飽和に固溶したCaが存在することで、凝固時に微細な(Mn,Ca)Sを晶出しやすくなり、上記式(2)を満たすことが可能となる。なお、微細なCaO、CaSは微細な(Mn,Ca)Sに先立ててできても良い。溶鋼を、造塊法でインゴット(鋼塊)にしてもよい。
鋳片又はインゴットを熱間加工して鋼片を製造する。例えば、分塊圧延により、鋳片又はインゴットを鋼片にする。鋼片を熱間加工して、棒鋼又は線材等の浸炭軸受用鋼材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造(熱間鍛伸等)でもよい。製造した浸炭軸受用鋼材に対し、必要に応じ、焼準処理や球状化焼鈍処理を施してもよい。以上の工程により、浸炭軸受用鋼を製造する。
<部品の製造方法>
本実施形態に係る鋼を用いて部品(例えば、浸炭軸受)を製造する方法の一例は、次のとおりである。即ち、まず、本実施形態に係る鋼を所定の形状に加工して中間品を製造する。加工方法は、例えば、切削加工に代表される機械加工である。
本実施形態に係る鋼を用いて部品(例えば、浸炭軸受)を製造する方法の一例は、次のとおりである。即ち、まず、本実施形態に係る鋼を所定の形状に加工して中間品を製造する。加工方法は、例えば、切削加工に代表される機械加工である。
次に、中間品に対し、浸炭処理を実施する。浸炭処理は、周知の条件で実施すればよい。浸炭処理における焼入れ条件、焼戻し条件を、周知の方法で適宜調整して、部品の表面硬さ、表面C濃度等を適宜調整する。
以上の工程により、(浸炭軸受)部品を製造することができる。本実施形態に係る鋼を用いて周知の浸炭処理により製造した部品は、焼入れ性、靱性、表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に優れるものである。
本実施形態に係る部品の製造方法により得られた部品については、その浸炭層の厚みが表面から0.5~2.0mmとなっている。浸炭層の厚みが0.5mm以上となっていることで、表面起点剥離寿命が向上することができる。一方、2.0mm以上とするためには、浸炭時間が長くなってしまいコストが高くなる。浸炭層の厚みは0.5~2.0mmとなっていることが好ましい。
このようにして得られた部品は、その中央部における吸収エネルギーvE20が43J/cm2以上であり、優れた靭性を有するものである。
部品の形状は、部品の種類により異なるため、一様に部品の形状から中央部を定義することは困難である。そこで、中央部を、部品への形状加工前の浸炭処理後の素材に対して定義する。中央部とは、部品への形状加工前の浸炭処理後の素材において、圧延方向と平行な断面において、表面から2/5Tから3/5Tの範囲を意味する。ここで、Tは素材の厚みを意味する。なお、部品を解析した場合、上記中央部を認定することは可能である。
部品の形状は、部品の種類により異なるため、一様に部品の形状から中央部を定義することは困難である。そこで、中央部を、部品への形状加工前の浸炭処理後の素材に対して定義する。中央部とは、部品への形状加工前の浸炭処理後の素材において、圧延方向と平行な断面において、表面から2/5Tから3/5Tの範囲を意味する。ここで、Tは素材の厚みを意味する。なお、部品を解析した場合、上記中央部を認定することは可能である。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、本発明は種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
[棒鋼の作製]
表1に示す各成分組成を有する溶鋼を、300kg真空溶解炉で製造し、インゴットに鋳造した。インゴットを1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように熱間鍛造して、直径60mmの棒鋼を作製した。
[棒鋼の作製]
表1に示す各成分組成を有する溶鋼を、300kg真空溶解炉で製造し、インゴットに鋳造した。インゴットを1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように熱間鍛造して、直径60mmの棒鋼を作製した。
直径60mmの棒鋼の一部を切断し、切断した棒鋼に熱間鍛造を施して、直径30mmの棒鋼を製造した。これらの棒鋼を1250℃で12時間保持してから室温まで放冷し、さらに、925℃×1時間の加熱保持を行い、次いで、室温まで放冷した。
[棒鋼を用いた各種評価]
焼準後の棒鋼(直径60mm及び直径30mm)を用いて、以下に示すように、介在物評価試験、焼入れ性評価試験、靭性評価試験、表面起点剥離寿命評価試験、及び回転曲げ疲労強度評価試験を行った。
焼準後の棒鋼(直径60mm及び直径30mm)を用いて、以下に示すように、介在物評価試験、焼入れ性評価試験、靭性評価試験、表面起点剥離寿命評価試験、及び回転曲げ疲労強度評価試験を行った。
(介在物評価試験)
介在物評価試験は、次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、棒鋼の圧延方向と平行な面の表面から3.00~13.12mmの位置を観察した。圧延方向と平行な観察面をダイヤモンドで鏡面研磨した。鏡面研磨後の観察面の硫化物系介在物を上述の方法で特定し、各試験番号でのFn2(=A1/A2)を求めた。このFn2に関する結果を、Fn1の計算結果とともに、表2に示す。
介在物評価試験は、次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、棒鋼の圧延方向と平行な面の表面から3.00~13.12mmの位置を観察した。圧延方向と平行な観察面をダイヤモンドで鏡面研磨した。鏡面研磨後の観察面の硫化物系介在物を上述の方法で特定し、各試験番号でのFn2(=A1/A2)を求めた。このFn2に関する結果を、Fn1の計算結果とともに、表2に示す。
(焼入れ性評価試験)
焼入れ性評価試験は、次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、フランジ付きの直径25mm、長さ100mmのジョミニー試験片を、機械加工により作製した。各試験番号の試験片に対し、JIS G 0561(2011)に準拠したジョミニー試験を実施した。なお、焼入れ温度は950℃とし、棒鋼1~32については6時間かけて処理した。
焼入れ性評価試験は、次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、フランジ付きの直径25mm、長さ100mmのジョミニー試験片を、機械加工により作製した。各試験番号の試験片に対し、JIS G 0561(2011)に準拠したジョミニー試験を実施した。なお、焼入れ温度は950℃とし、棒鋼1~32については6時間かけて処理した。
試験後、水冷端から11mm位置での硬さJ11を測定し、測定した硬さJ11で焼入れ性を評価した。硬さ試験は、先端半径0.2 mmかつ先端角120度のダイヤモンド円錐の圧子を使い150 kgfの条件で測定した。硬さJ11がロックウェル硬さHRCで22以上の場合、焼入れ性が高いと判断した(表2中「合格」)。硬さJ11がロックウェル硬さHRCで22未満の場合、焼入れ性が低いと判断した(表2中「不合格」)。この結果を表2に併記する。
(靭性評価試験)
靭性評価試験を次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼に、図3に示すヒートパターンの調質熱処理を施した。具体的には、直径30mmの棒鋼を900℃で4時間保持し、次いで、油焼入れを実施した(図3中「OQ」)。油焼入れ後の棒鋼に、さらに、180℃で2時間保持する焼戻し処理を施し、次いで、空冷した(図3中「AC」)。
靭性評価試験を次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼に、図3に示すヒートパターンの調質熱処理を施した。具体的には、直径30mmの棒鋼を900℃で4時間保持し、次いで、油焼入れを実施した(図3中「OQ」)。油焼入れ後の棒鋼に、さらに、180℃で2時間保持する焼戻し処理を施し、次いで、空冷した(図3中「AC」)。
上記調質熱処理を施した棒鋼から、Vノッチを有するシャルピー試験片をVノッチ側の表面の幅方向中心が1/8D′の位置になるように作製した。各試験番号のシャルピー試験片について、JIS Z 2242(2009)に準拠したシャルピー衝撃試験を室温で実施した。ここでD′は上記調質熱処理を施した棒鋼の直径を示す。
試験で得た吸収エネルギーを、切欠き部の原断面積(試験前の試験片の切欠き部の断面積)で除して、衝撃値vE20(J/cm2)を求めた。衝撃値vE20が43J/cm2以上の場合、靭性が高いと判断した(表2中「合格」)。衝撃値vE20が43J/cm2未満の場合、靭性が低いと判断した(表2中「不合格」)。この結果を表2に併記する。
(表面起点剥離寿命評価試験)
表面起点剥離寿命評価試験を次の方法で実施した。直径60mmの棒鋼から、直径60mm、厚さ5.5mmの円板状の粗試験片を作製した。粗試験片の厚さ(5.5mm)は、棒鋼の長手方向に相当する。
表面起点剥離寿命評価試験を次の方法で実施した。直径60mmの棒鋼から、直径60mm、厚さ5.5mmの円板状の粗試験片を作製した。粗試験片の厚さ(5.5mm)は、棒鋼の長手方向に相当する。
各試験番号の粗試験片に対し、炭素当量が0.8mass%のガス雰囲気中950℃で6時間の浸炭処理後(浸炭条件A)または炭素当量が0.8mass%のガス雰囲気中950℃で3時間の浸炭処理(浸炭条件B)、60℃の油中で焼入れを行い、直ちに150℃で1.5時間焼き戻し後放冷させて、浸炭軸受部品を模擬した試験片を作製した。次いで、作製した試験片の表面を、遊離砥粒(研磨剤)を含んだ状態で摺動運動させ、転がり接触面を微少切削しながら研磨するラッピング加工を実施して転動疲労試験片とした。
スラスト型の転動疲労試験機を用いて、転動疲労試験を実施した。試験時における最大接触面圧を5.0GPaとし、繰返し速度を1800cpm(cycle per minute)とした。試験時に使用した潤滑油には、異物として、ガスアトマイズ粉を混入した。ガスアトマイズ粉は、ビッカース硬さ750Hvの高速度鋼を用いてガスアトマイズにより微細粉末にし、100~180μmの粒度に分級し作成した。ガスアトマイズ粉の混入量は潤滑油に対して0.02%とした。ビッカース硬さは、測定荷重10kgfで任意の5点平均値を用いた。試験時に使用する鋼球として、JIS G 4805(2008)に規定されたSUJ2の調質材を用いた。
転動疲労試験結果をワイブル確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「表面起点剥離寿命」と定義した。異物混入という過酷な使用環境下(本試験)において、L10寿命が7.0×105以上であれば、表面起点剥離寿命に優れると判断した(表2「合格」)。L10寿命が7.0×105未満であれば、表面起点剥離寿命が短いと判断した(表2中「不合格」)。この結果を表2に併記する。
(回転曲げ疲労強度評価試験)
回転曲げ疲労強度評価試験を次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、平行部の直径と長さが、それぞれ、8mmと25mmで、肩部の半径が12mmの小野式回転曲げ疲労試験片を作製した。小野式回転曲げ疲労試験片の長手方向は、棒鋼の長手方向に相当する。
回転曲げ疲労強度評価試験を次の方法で実施した。直径30mmの棒鋼から、平行部の直径と長さが、それぞれ、8mmと25mmで、肩部の半径が12mmの小野式回転曲げ疲労試験片を作製した。小野式回転曲げ疲労試験片の長手方向は、棒鋼の長手方向に相当する。
各試験番号の小野式回転曲げ疲労試験片に浸炭処理すなわち、炭素当量が0.8mass%のガス雰囲気中950℃で6時間の浸炭処理後(浸炭条件A)または炭素当量が0.8mass%のガス雰囲気中950℃で3時間の浸炭処理(浸炭条件B)、60℃の油中で焼入れを行い、直ちに150℃で1.5時間焼き戻し後放冷させて、浸炭軸受部品を模擬した試験片を作製した。
小野式回転曲げ疲労試験における試験本数は各7本とし、通常の方法によって、常温大気中で試験を行い、繰返し数1.0×107まで破断しなかったうちで最も高い応力を「回転曲げ疲労強度」とした。回転曲げ疲労強度が800MPa以上であれば、曲げ疲労強度に優れると判断した(表2中「合格」)。回転曲げ疲労強度が800MPa未満であれば、曲げ疲労強度が劣ると判断した(表2中「不合格」)。この結果を表2に併記する。
そして、以上の試験結果(焼入れ性評価試験、靭性評価試験、表面起点剥離寿命評価試験、及び回転曲げ疲労強度評価試験)の全ての試験が合格の棒鋼1~17について総合評価として「合格」とする一方、これらの試験結果のうちの少なくとも1つが不合格の棒鋼18~32については総合評価として「不合格」とした。この結果を表2に併記する。
表1、2から明らかなように、本願所定の成分を有し、Fn1が0.20~0.65であり、かつ、Fn2が0.50~1.00である、棒鋼1~17について、焼入れ性評価試験、靭性評価試験、表面起点剥離寿命評価試験、及び回転曲げ疲労強度評価試験のいずれについても、優れた結果が得られていることが判る。
これに対し、本願所定の成分、並びに本願所定のFn1(0.20~0.65)及びFn2(0.50~1.00)の少なくとも1つを満たさない棒鋼18~31について、焼入れ性評価試験、靭性評価試験、表面起点剥離寿命評価試験、及び回転曲げ疲労強度評価試験のいずれかについて、優れた結果が得られていないことが判る。以下に、各比較例についての結果を個別具体的に併記する。
棒鋼18については、C濃度が低く、焼入れ性(J11)が小さいために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼19については、C濃度が高いために、靭性が低くなっている。
棒鋼20については、Si濃度が高いために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼21については、Mn濃度が低く、焼入れ性(J11)が小さいために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼22については、Mn濃度が高いために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼23については、Cr濃度が低いために、表面起点剥離寿命と曲げ疲労強度がいずれも低くなっている。
棒鋼24については、Cr濃度が高いために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼25については、Mo濃度が低いために、表面起点剥離寿命と曲げ疲労強度がいずれも低くなっている。
棒鋼26については、Mo濃度が高いために、表面起点剥離寿命が低くなっている。
棒鋼27については、Nb濃度が高いために、靭性が低くなっている。
棒鋼28、29については、Ca濃度が低くFn2が低いために、表面起点剥離寿命が低くなっている。
棒鋼30については、Fn1が低いために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼31については、Fn1が高いために、曲げ疲労強度が低くなっている。
棒鋼32については、本願所定の成分を有し、Fn1が0.20~0.65であり、かつ、Fn2が0.50~1.00であるが浸炭不足であったため、表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度が得られていないことが判る。
Claims (8)
- 成分組成が、質量%で、
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%以下、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00である
ことを特徴とする鋼。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2) - 前記成分組成が、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及びB:0.005%以下の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の鋼。
- 前記成分組成が、質量%で、Nb:0.05%以下、及びTi:0.10%以下の少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の鋼。
- 棒鋼である、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼。
- 表面から500μm以上の深さ領域において、
成分組成が、質量%で、
C :0.10~0.30%、
Si:0.01~0.25%、
Mn:0.20~1.50%、
P :0.001~0.015%、
S :0.001~0.010%、
Cr:0.50~2.00%、
Mo:0.10~0.50%、
Al:0.005~0.100%、
Ca:0.0002~0.0010%、
N :0.005~0.025%、
O :0.0015%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.005%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で定義するFn1が0.20~0.65であり、
下記式(2)で定義するFn2が0.50~1.00であり、
表面起点剥離寿命及び曲げ疲労強度に優れた、ことを特徴とする部品。
Fn1=4.2×[Cr]/(7.0×[Si]+16.0×[Mn])・・・(1)
[元素]:元素の質量%
Fn2=A1/A2 ・・・(2)
A1:4.0mm2の総面積の観察領域における、各硫化物中の総モル数に対し1.0モル%以上のCaを含有し、かつ、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2)
A2:4.0mm2の総面積の観察領域における、円相当径が1.0μm以上の硫化物系介在物の総面積(μm2) - 前記成分組成が、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、及びB:0.005%以下の少なくとも1種を含む、請求項5に記載の部品。
- 前記成分組成が、質量%で、Nb:0.05%以下、及びTi:0.10%以下の少なくとも1種を含む、請求項5又は6に記載の部品。
- 中央部において、吸収エネルギーvE20が43J/cm2以上である、請求項5~7のいずれか1項に記載の部品。
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