JP5783014B2 - 軸受用棒鋼 - Google Patents
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Description
棒鋼の直径方向と試験片の軸方向が平行となるように採取した疲労試験片に対し、Cスケールを用いたロックウェル硬さで、58〜66の範囲に調整するための焼入れおよび焼戻しの熱処理を行い、該疲労試験片を用いて超音波疲労試験を行って破壊し、
その破壊起点介在物が酸化物の場合には、該酸化物は、平均組成が、質量%で、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl2O3であって、CaOとAl2O3の2元系酸化物、CaO、MgOとAl2O3の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl2O3の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl2O3の4元系酸化物のうちのいずれかからなり、
かつ、前記破壊起点介在物が硫化物の場合には、該硫化物は、平均組成が、質量%で、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物もしくはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなる、とともに、
酸化物、硫化物の区別をせずに前記破壊起点介在物の幅と長さを各々、極値統計処理を行った場合の、評価予測体積144mm3中に予測される最大介在物幅Wが20μm以下で、かつ前記評価予測体積144mm3中に予測される最大介在物長さLが800μm以下であり、
さらに、棒鋼の表面からR/2部位置までの最大硬さがビッカース硬さで290以下であること、
を特徴とする冷間鍛造性に優れた軸受用棒鋼。
ただし、「R」は軸受用棒鋼の半径を表す。
C:0.95〜1.2%
Cは、焼入れ時の硬さを確保して転動疲労寿命を向上させる元素であり、0.95%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなって、特に1.2%を超えると、耐摩耗性は向上するものの、棒鋼圧延工程における加熱段階で、粗大な初析セメンタイトが多く分散することになり、冷間鍛造性の悪化を招く。また硬さ増加を招き、切削時の工具寿命の低下、焼割れの原因となる。したがって、Cの含有量を0.95〜1.2%とした。なお、C含有量の好ましい下限は0.97%である。また、好ましい上限は1.1%である。
Siは、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であり、0.15%以上含有させなければならない。しかしながら、0.35%を超えてSiを含有させると、母材の硬さが高くなって鍛造後の切削時の工具寿命の低下を招く。したがって、Siの含有量を0.15〜0.35%とした。なお、Si含有量の好ましい下限は0.20%である。また、好ましい上限は0.32%である。
Mnは、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させるのに有効な元素であり、0.05%以上含有させなければならない。しかしながら、0.5%を超えてMnを含有させると、母材の硬さが高くなって、鍛造後の切削時の工具寿命の低下を招く。さらには、焼割れの原因ともなる。したがって、Mnの含有量を0.05〜0.5%とした。なお、Mn含有量の好ましい下限は0.10%である。また、好ましい上限は0.45%である。
Pは、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命を短くしてしまう。特に、その含有量が0.025%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.025%以下とした。好ましいP含有量の範囲は0.020%以下である。
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.010%を超えると、粗大な硫化物が残存するため冷間鍛造性の劣化や転動疲労寿命を著しく短くしてしまう。したがって、Sの含有量を0.010%以下とした。なお、転動疲労寿命の向上という観点からは、Sの含有量は低ければ低いほど好ましく、好ましい上限は、0.001%である。
Crは、鋼の焼入性を高めるとともに、セメンタイトを熱的に安定化させ、高温域におけるセメンタイトのマトリックス中への固溶を抑止する作用を有する。この効果はCrの含有量が0.80%以上で発揮される。しかしながら、Crの含有量が1.80%を超えると、前記の効果が飽和するだけでなく、最終形状にした後に行う焼入れ処理の際に、焼割れを生じやすくなり、また、耐疲労特性など機械的性質の低下を招く。したがって、Crの含有量を0.80〜1.80%とした。なお、Cr含有量の好ましい下限は0.90%である。また、好ましい上限は1.60%である。
Alは、精錬工程で脱酸を行うために使用する元素であり、0.005%を超えて含有させなければ、Alによる脱酸効果が得られない。しかし、Alの含有量が0.040%を上回ると粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Alの含有量は0.005%を超えて0.040%以下とした。なお、Al含有量の好ましい下限は0.007%である。また、好ましい上限は0.038%である。
Caは、硫化物系介在物中に固溶し、CaSを形成することで、硫化物系介在物の延伸・粗大化を抑制する効果がある。さらに、CaSを形成することで晶出形態が変化するため、硫化物系介在物が均一分散する効果がある。また、酸化物系介在物を形成することで、酸化物系介在物が均一分散する効果があり、これらの効果によって、転動疲労寿命の低下を抑制できる。これらの効果はCaの含有量が0.0003%以上で発揮される。しかしながら、Caの含有量が0.0015%を超えると、前記の効果が飽和するだけでなく、粗大な酸化物系介在物を生成し、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Caの含有量を0.0003〜0.0015%とした。なお、Ca含有量の好ましい下限は0.0004%である。また、好ましい上限は0.0013%である。
Oは、酸化物を生成する元素であり、極力低下させる必要がある。Oの含有量が多くなって、特に0.0010%を上回ると、粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0010%以下とした。Oの含有量は0.0008%以下であることが好ましい。
(B−1)破壊起点介在物が酸化物の場合:
本発明に係る軸受用棒鋼は、棒鋼の直径方向と試験片の軸方向が平行となるように採取した疲労試験片に対し、調質処理を行い、該疲労試験片を用いて超音波疲労試験を行った際の破壊起点介在物が酸化物の場合には、該酸化物は、平均組成が、質量%で、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl2O3であって、CaOとAl2O3の2元系酸化物、CaO、MgOとAl2O3の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl2O3の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl2O3の4元系酸化物のうちのいずれかからなるものでなければならない。以下、質量%での酸化物の平均組成における含有量を「濃度」ともいう。
塩基性酸化物であるCaOは、スラグの主要成分の1つであり、脱硫時の媒溶剤として用いられる。CaO濃度が2.0%以上になると、長く延伸した、または点列状の、Al2O3およびスピネルの生成を抑制する効果が得られる。一方、CaO濃度が20%を上回ると、大型のCaOを主体とする粗大な酸化物が生成されてしまう。したがって、酸化物の平均組成におけるCaO濃度を2.0〜20%とした。
MgOは塩基性酸化物であり、溶解度が低いため硬質のMgO(ペリクレース)相として、さらには、Al2O3とともにMgO・Al2O3(スピネル)相として晶出する。これらは点列状の粗大な酸化物となって鋼材中へ残存し、転動疲労寿命を低下させる場合があるため、MgO濃度に上限を設け、20%以下に制限する。なお、酸化物中にMgOは存在していなくても構わない。このため、酸化物の平均組成におけるMgO濃度を0〜20%とした。
酸性酸化物であるSiO2は、スラグの主要成分の1つであり、酸化物中に含有される可能性があり、10%までは許容できるものの、10%を上回ると酸化物が延伸して粗大となって、転動疲労寿命が低下する場合がある。なお、酸化物中にSiO2は存在していなくても構わない。したがって、酸化物の平均組成におけるSiO2濃度を0〜10%とした。
本発明に係る軸受用棒鋼は、棒鋼の直径方向と試験片の軸方向が平行となるように採取した疲労試験片に対し、調質処理を行い、該疲労試験片を用いて超音波疲労試験を行った際の破壊起点介在物が硫化物の場合には、該硫化物は、平均組成が、質量%で、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物もしくはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなるものでなければならない。以下、質量%での硫化物の平均組成における含有量を「濃度」ともいう。
CaSは、脱硫反応によって生成する硫化物である。CaS濃度が1.0%以上になると、延伸した粗大な硫化物の生成を抑制する効果が得られる。硫化物としてCaSだけが存在しても、つまり、CaS濃度が100%であっても構わない。したがって、硫化物の平均組成におけるCaS濃度を1.0%以上とした。
精錬段階にて鋼中にMgが取込まれ、硫化物中にMgSが混入する場合がある。MgS濃度が20%を上回ると、前述した酸化物中のMgO濃度が増加し、点列状の粗大な酸化物の生成を招くため、MgS濃度は20%以下に制限する。なお、硫化物中にMgSは存在していなくても構わない。したがって、硫化物の平均組成におけるMgS濃度を0〜20%とした。
本発明に係る軸受用棒鋼は、棒鋼の直径方向と試験片の軸方向が平行となるように採取した疲労試験片に対し、調質処理を行い、該疲労試験片を用いて超音波疲労試験を行って破壊し、破壊起点介在物の幅と長さを各々、極値統計処理した場合に、予測最大介在物幅Wが20μm以下で、かつ予測最大介在物長さLが800μm以下でなければならない。
〈2〉そこでn本の超音波疲労試験片について超音波疲労破壊させ、各々の破壊起点介在物の幅と長さを測定する。ここで、i番目(i=1〜n)の超音波疲労試験片で測定した破壊起点介在物の幅をWi(μm)、長さをLi(μm)とする。
〈3〉測定したn本の破壊起点介在物の幅Wi(i=1〜n)と長さLi(i=1〜n)を小さい順に並べ直し、それぞれWj(j=1〜n)とLj(j=1〜n)とする。
〈4〉それぞれのjについて下記の基準化変数yjを計算する。
yj=−ln[−ln{j/(n+1)}]。
〈5〉極値確率用紙の座標横軸にWjを、座標縦軸に基準化変数yjをとって、j=1〜nについてプロットし、最小二乗法により破壊起点介在物の幅についての近似直線を求める。また、同様に極値確率用紙の座標横軸にLjを、座標縦軸に基準化変数yjをとって、j=1〜nについてプロットし、最小二乗法により破壊起点介在物の長さについての近似直線を求める。
〈6〉評価予測体積をV(mm3)、T=(V+V0)/V0として次の式から評価予測体積Vにおける基準化変数yの値を求める。
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]
〈7〉前記〈5〉で求めた破壊起点介在物の幅についての近似直線において、座標縦軸の値が上記yである場合の座標横軸の値が、その評価予測体積Vにおける予測最大介在物幅Wとなる。また、同様に前記〈5〉で求めた破壊起点介在物の長さについての近似直線において、座標縦軸の値が上記yである場合の座標横軸の値が、その評価予測体積Vにおける予測最大介在物長さLとなる。
本発明に係る軸受用棒鋼は、棒鋼の表面からR/2部位置までの最大硬さがビッカース硬さで290以下でなければならない。
被圧下材の加熱温度、
圧下工程中の被圧下材の表面温度、および
圧下比
を適正化すれば、上記の表面からR/2部位置までのセメンタイトの球状化が促進されので、上記部位における最大硬さを安定してビッカース硬さで290以下にすることができる。
本発明に係る軸受用棒鋼は、例えば、次に述べる製造方法によって得ることができる。
〔1〕被圧下材をAe1点〜Aem点の温度域に加熱して圧下を開始すること、
〔2〕圧下工程中の被圧下材の表面温度が、680℃〜(Aem点−30℃)の温度範囲内であること、
〔3〕圧下比が4以上であること。
・次いで、該介在物の任意の5箇所に対して点分析による組成分析を実施(図5参照)。
・超音波疲労試験の評価本数である19本全てに対して、同様の方法で破壊起点介在物の組成分析を実施。
・最後に、酸化物毎または硫化物毎に、得られた組成を算術平均。
Claims (1)
- 質量%で、C:0.95〜1.2%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.05〜0.5%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Cr:0.80〜1.80%、Al:0.005%を超えて0.040%以下、Ca:0.0003〜0.0015%およびO:0.0010%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる化学成分を有する軸受用棒鋼であって、
棒鋼の直径方向と試験片の軸方向が平行となるように採取した疲労試験片に対し、Cスケールを用いたロックウェル硬さで、58〜66の範囲に調整するための焼入れおよび焼戻しの熱処理を行い、該疲労試験片を用いて超音波疲労試験を行って破壊し、
その破壊起点介在物が酸化物の場合には、該酸化物は、平均組成が、質量%で、CaO:2.0〜20%、MgO:0〜20%およびSiO2:0〜10%で、かつ残部がAl2O3であって、CaOとAl2O3の2元系酸化物、CaO、MgOとAl2O3の3元系酸化物、CaO、SiO2とAl2O3の3元系酸化物およびCaO、MgO、SiO2とAl2O3の4元系酸化物のうちのいずれかからなり、
かつ、前記破壊起点介在物が硫化物の場合には、該硫化物は、平均組成が、質量%で、CaS:100%のCaSの1元系硫化物、または、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%で、かつ残部がMnSであって、CaSとMnSの2元系硫化物もしくはCaS、MgSとMnSの3元系硫化物からなる、とともに、
酸化物、硫化物の区別をせずに前記破壊起点介在物の幅と長さを各々、極値統計処理を行った場合の、評価予測体積144mm3中に予測される最大介在物幅Wが20μm以下で、かつ前記評価予測体積144mm3中に予測される最大介在物長さLが800μm以下であり、
さらに、棒鋼の表面からR/2部位置までの最大硬さがビッカース硬さで290以下であること、
を特徴とする冷間鍛造性に優れた軸受用棒鋼。
ただし、「R」は軸受用棒鋼の半径を表す。
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