JP6457601B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受や歯車などの転動部品に関する。特に特定鋼材を用いた転動部品に関する。
転動部品のうち、転がり軸受は、水が潤滑剤等に混入する条件下(非特許文献1〜5)、すべりを伴う条件下(非特許文献6)、通電が起きる条件下(非特許文献7)などで使用されると、水あるいは潤滑剤が分解して水素が発生し、それが鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が起きることがある。水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため(非特許文献8)、接触要素間が油膜で分断される弾性流体潤滑と考えられる条件でも、交番せん断応力が最大になる転がり表層内部辺りに亀裂が発生、伝播して早期剥離に至る。今後、コンパクト化、省エネ化、無人化などに対応するため、転がり軸受の使用条件はますます厳しくなる傾向にあり、耐水素脆性に優れたものが必要になると予想される。転がり軸受よりもすべりが大きい歯車などの転動部品では、同様な早期損傷が起きて然るべきである。
転がり軸受の耐水素脆性を向上させる従来技術として、鋼材にCrを多く添加することで鋼表面に不動態膜を形成し、鋼中への水素の侵入を抑制するものが提案されている(特許文献1)。
特開2000−282178号公報
L. Grunberg, Proc. Phys. Soc. (London), B66 (1953) 153-161. L. Grunberg and D. Scott, J. Inst. Petrol., 44 (1958) 406-410. L. Grunberg, D. T. Jamieson and D. Scott, Philosophical magazine, 8 (1963) 1553-1568. P. Schatzberg and I. M. Felsen, Wear, 12 (1968) 331-342. P. Schatzberg, J. Lub. Tech., 231 (1971) 231-235. K. Tamada and H. Tanaka, Wear, 199 (1996) 245-252. H. Mikami and T. Kawamura, SAE Paper, (2007), No. 2007-01-0113. Y. Matsubara and H. Hamada, Bearing Steel Technology, ASTM STP1465, J. M. Beswick Ed., (2007), 153-166. D. Brooksbank and K. . W. Andrew, J. Iron Steel Inst., June (1968) 595-599 D. Brooksbank and K. . W. Andrew, J. Iron Steel Inst., April (1969) 474-483 長尾彰英,倉本繁,菅野幹宏,白神哲夫,鉄と鋼,86 (2000) 24-31 高井健一,関純一,山内五郎,本間芳和,日本金属学会誌,58 (1994) 1380-1385 高井健一,本間芳和,筒井香,南雲道彦,日本金属学会誌,60 (1996) 1155-1162 横堀寿光,根本剛直,佐藤浩二,山田哲也,機論A,59 (1993) 2120-2127
しかしながら、特許文献1の鋼材では、Crを多く添加することで炭化物が粗大化し、それが応力集中源となって早期剥離が起きることがある。また、不動態膜は水素の拡散を遅くする効果はあるが、発生した水素が鋼表面に吸着するのを促進する効果も併せ持つ。間欠的に使われる転がり軸受であれば、停止時に水素が散逸するため、鋼中への水素の侵入を遅らせることは、早期剥離の防止に有効である。しかしながら、連続して使われるものであれば、不動態膜が多くの水素を吸着する分、鋼中に侵入する水素量が増すため、早期剥離が生じることになる。今後、無人で連続稼動される転がり軸受が増えることが予想され、そのような用途に対しては従来技術では不十分と思われる。また、特殊鋼材はコスト高になり、また海外調達が困難である。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素が内部に集積しにくく、水素脆性を起因とする早期剥離を防止し得る鋼材からなる転動部品を提供することを目的とする。
本発明の転動部品は、鋼材からなる転動要素を有する転動部品であって、上記転動要素の鋼材中に含まれる酸化物系介在物の少なくとも一部がMnSで覆われており、上記転動要素の鋼材中の最大径が3μm以上の上記酸化物系介在物において、その全個数に対するMnSで覆われたものの個数の割合が40%をこえることを特徴とする。なお、本発明において「転動部品」とは、転がり軸受やギヤなど転がり・すべりを行なう要素を含む部品をいう。また、「最大径」とは、酸化物系介在物は略球形であるところ、主にその直径を意味し、任意の方向(例えば、圧延方向)に延伸している場合には、その最大径を意味する。
上記鋼材の成分組成は、C:0.95質量%以上1.1質量%以下、Si:0.35質量%未満、Mn:0.5質量%未満、S:0.025質量%未満、Cr:1.4質量%以上1.6質量%未満、残部が鉄および不純物であることを特徴とする。
上記転動要素は、その表層に窒化処理が施されてなり、表面窒素濃度が0.05〜0.6重量%であることを特徴とする。また、上記転動要素の表面から0.05mm深さの箇所と上記窒素が含まれていない深さの箇所とのビッカース硬度差ΔHVが60以上であることを特徴とする。
上記転動部品が、内輪、外輪、および転動体を有する転がり軸受であって、上記内輪、外輪、および転動体から選ばれる少なくとも1つが上記転動要素であることを特徴とする。
本発明の転動部品は、鋼材からなる転動要素を有する転動部品であり、上記転動要素の鋼材中に含まれる酸化物系介在物の少なくとも一部がMnSで覆われており、転動要素の鋼材中の最大径が3μm以上の酸化物系介在物において、その全個数に対するMnSで覆われたものの個数の割合が40%をこえるので、不可避に含まれる酸化物系介在物の多くを軟らかいMnSで覆うことにより酸化物系介在物の周りに形成される引張応力場を緩和できる。これにより、鋼材内部に水素を集積しにくくし、水素脆性を起因とする早期剥離を防止することができる。
本発明の転動部品の一例である転がり軸受の断面図である。 介在物検査結果の代表例(比較例1および実施例1)を示す写真である。 介在物検査結果の代表例(実施例2および実施例3)を示す写真である。 超音波軸荷重疲労試験片の形状を示す図である。 超音波軸荷重疲労試験結果を示す図である。 急加減速運転パターンを示す図である。 転走面からの深さ方向の断面硬度分布を示す図である。 転走面からの深さ方向の断面窒素濃度分布を示す図である。
転がり軸受等の転動部品における耐水素脆性を向上させるため、その転動要素を構成する鋼材に不可避に含まれる酸化物系介在物に着目した。転動要素にすべりなどで摩耗が生じれば、新生面が形成され、混入した水や潤滑剤が分解し、水素が発生する。発生した水素の一部は、鋼中に侵入する。酸化物系介在物の周りには、引張応力場が形成される(非特許文献9、10)。水素は、引張応力場に集積する性質がある(非特許文献11〜14)。これに対して、酸化物系介在物の多くを(40%をこえる)軟らかいMnS(約150HV)で覆うことで、上記引張応力場を緩和し、水素を集積しにくくした。その結果、耐水素脆性が向上することを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
特に、鋼材中に侵入する水素の中でも、拡散性水素が水素脆性の原因と考えられている。拡散性水素は、結晶粒界などにトラップされていない比較的自由に動き得る水素のことをいう。この拡散性水素は、室温で時間と共に鋼材中から外に放出されるものである。例えば、拡散性水素は、200℃までの加熱で放出される水素と定義でき、非拡散性水素は、200℃をこえる加熱温度ではじめて鋼材中から放出される水素と定義でき、拡散性水素と非拡散性水素との合計量が、鋼材中に侵入した水素の総量である。
転動要素を構成する鋼材中において、酸化物系介在物は不可避的に含まれる。本発明の転動部品では、転動要素の鋼材中の最大径が3μm以上の酸化物系介在物において、その全個数に対するMnSで覆われたものの個数の割合(被覆率)が40%をこえることを必須としている。被覆率を式で表すと以下のとおりとなる。

被覆率(%)=(最大径が3μm以上の酸化物系介在物の中でMnSで覆われた酸化物系介在物の個数)/(最大径が3μm以上の酸化物系介在物の全個数)×100

また、被覆率は高い方が好ましく、50%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。ここで、MnSで覆われているとは、MnSが酸化物系介在物を核として析出し、この酸化物系介在物の周りに巻き付いたような状態をいい、酸化物系介在物の周囲が完全に覆われている場合のみならず一部が覆われている場合を含む。また、MnSは圧延方向に引き伸ばされた線形状である。
被覆率の算出において、対象とする酸化物系介在物を、その最大径が3μm以上のものとしている。最大径が3μm未満の微細な酸化物系介在物の存在状態(MnSの被覆状態)は水素脆性を起因とする早期剥離にほぼ寄与しない。また、最大径が3μm以上の酸化物系介在物は、光学顕微鏡によりその存在状態を容易に測定可能である。
また、対象とする酸化物系介在物の最大径の下限値をより大きくしてもよく、例えば、5μm以上、10μm以上としてもよい。最大径が3μm以上の酸化物系介在物であれば、その最大径の下限値を大きくしても、上記被覆率は略同一となる。
酸化物系介在物のMnSによる被覆率を上記範囲とする製造方法等は特に限定されない。一般的に、鋼材を連続鋳造する際のように冷却速度が速い場合には、酸化物系介在物と軟質介在物であるMnSとが別々に析出し、被覆率は低くなりやすい。一方、鋼材をインゴット鋳造する際のように冷却速度が遅い場合には、酸化物系介在物が軟質介在物であるMnSの析出の核となり、被覆率が高くなりやすい。
本発明の転動部品の転動要素に用いる鋼材の成分組成は、C:0.95質量%以上1.1質量%以下、Si:0.35質量%未満、Mn:0.5質量%未満、S:0.025質量%未満、Cr:1.4質量%以上1.6質量%未満、残部が鉄および不純物であることが好ましい。上記成分組成の詳細を以下に説明する。
C:0.95質量%以上1.1質量%以下
C(炭素)は、鋼材の強度確保に必要な元素である。また、焼入性への影響も大きく、焼入硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上にも寄与する。上記範囲では、これらの効果を十分に得られる。
Si:0.35質量%未満
Si(珪素)は、焼入加熱時にオーステナイト粒成長を抑制するため、本来は積極的に添加したいが、Siの添加により鍛造性、被削性が著しく劣化する。これらの観点より、0.35質量%未満とする。
Mn:0.5質量%未満
Mn(マンガン)は、強度および焼き入れ性の向上に有効に寄与する元素である。また、Mnが過剰であると、粒界に偏析して粒界割れを引き起こすと考えられるため、0.5質量%未満が適当である。
S:0.025質量%未満
S(硫黄)は、鋼材中でMnSを形成する元素である。一方でオーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させ、疲労強度を低下させるおそれもある。これらの観点より、0.025質量%未満とする。
Cr:1.4質量%以上1.6質量%未満
Cr(クロム)は、安定した炭化物を形成し、また焼入性を向上させて、強度、耐摩耗性、疲労強度の向上に寄与する元素である。一方、Crが過剰に含有されれば、鍛造性および被削性が低下する。これらの効果を十分に得るためには、上記範囲が適当である。
上記成分組成を有する鋼材としては、例えば、高炭素クロム軸受鋼SUJ2(JIS規格)、SUJ2相当材である52100(AISIまたはSAE規格)、100Cr6(DIN規格)、GCr15(GSB規格)等に準じたもの挙げられる。上記成分組成を満たす各鋼材であっても、上述の所定の被覆率(%)を満たさないものは本発明の転動部品には使用できない。本発明の転動部品では、上述の所定の被覆率(%)を満たし、かつ、上記成分組成を満たす鋼材を用いることが好ましい。
本発明の転動部品の転動要素に用いる鋼材は、表層に窒化処理を施すことが好ましい。転動要素が内・外輪(軌道輪)である場合には、該軌道輪の転走面に窒化処理を施す。窒化処理は、例えば、850℃の温度でRXガスにアンモニアガスを添加した雰囲気中で行われる。転走面に窒化処理を施して焼入することで、軌道輪が塑性変形しにくくなり、耐水素脆性が向上する。転走面の表面窒素濃度は、0.05〜0.6重量%であることが好ましい。0.05重量%未満では窒化による寿命向上の効果は得られない場合がある。一方、表面窒素濃度が0.6重量%をこえると、Cr炭窒化物が多く生成されるため、焼入性に寄与するCr量が欠乏し、十分な焼入性が確保できないおそれがある。
窒化処理を施して焼入し、その後焼戻する。熱処理(焼入・焼戻条件)は、特に限定されず公知の条件を採用できる。例えば、まず、鋼材をA1点以上の所定の温度に加熱し、所定時間保持する。このとき、鋼材は、RXガスにアンモニアガスを添加した雰囲気中等において加熱し、これにより鋼材表層に窒化処理を施す。その後、鋼材を油中等に浸漬することで、A1点以上の温度からMS点以下の温度に冷却し、焼入硬化工程が完了する。さらに、焼入硬化された鋼材をA1点以下の温度である所定温度に加熱し、所定時間保持した後、例えば室温まで空冷することにより焼戻工程が完了する。以上の工程により、熱処理が完了する。
本発明の転動部品は、転がり軸受や歯車、およびそれらの構成部品である。転動部品は、その潤滑に用いる潤滑油中や、使用雰囲気中に水分が混入・侵入する環境下で用いられる場合が多い。また、転動部品は、その運動形態から、接触要素間で金属接触が起こり、すべりを伴う条件などで使用されるため、鋼材部材表面における金属新生面の露出により水素が鋼材中に侵入しやすい等、水素の影響を受けやすい部品である。
本発明の転動部品の一例である転がり軸受を図1に基づいて説明する。図1は転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この転動体4は、保持器5により保持される。また、必要に応じて、内・外輪の軸方向両端開口部8a、8bがシール部材6によりシールされ、転動体4の周囲にグリース7が封入される。内輪2、外輪3、および転動体4の少なくとも1つが上述の転動要素に該当し、上述の所定鋼材から構成される。
グリース7などの潤滑剤が、内輪2および外輪3と、転動体4との転走面に介在して潤滑される。潤滑剤としては、任意の潤滑油やグリースが使用できる。この潤滑剤中に水分が混入した場合、混入している水や潤滑剤自体の分解により水素が発生し、鋼材中への侵入が促進される。本発明の転動部品(転がり軸受)では、転動要素である内輪や外輪等に耐水素脆性に優れた上述の鋼材を用いるため、潤滑剤中に水分が混入する条件下でも、水素脆性を起因とする早期剥離を効果的に防止できる。
上記転がり軸受において、転動体4は、コスト高になるが、水素脆性を示さない窒化珪素製とすることもできる。また、保持器5は、通電が起きる条件下では、鋼製や銅合金製の金属製保持器の方が、樹脂製保持器よりも水素脆性起因の早期剥離が起きにくい。
転動部品である転がり軸受として玉軸受を例示したが、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などの転がり軸受とすることもできる。
本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
<化学成分分析>
表1に、実施例および比較例の鋼材について、それぞれの化学成分を示す。比較例1の鋼材は連続鋳造により、実施例1〜3の鋼材はインゴット鋳造により、それぞれ製造したものである。表中の被覆率は、後述の介在物検査結果における、酸化系介在物がMnSによって覆われていた割合(%)である。比較例1(従来鋼)と実施例1〜3(開発鋼)とで化学成分自体に大きな違いはないが、被覆率は異なる。
<介在物検査>
介在物検査は、鋼材断面の30mm×30mmの面積(被検面積900mm2)を観察して検出された酸化物系介在物(最大径が3μm以上のもの)のうち、それぞれがMnSで覆われているかを判断した。ここで、鋼材断面(表面)を観察して検出された酸化物系介在物とは、該断面(表面)に露出している酸化物系介在物である。比較例1(上図)および実施例1(下図)の代表例の写真を図2に、実施例2(上図)および実施例3(下図)の代表例の写真を図3に、それぞれ示す。各図において、各サンプル略中央の黒点またはこれが引き伸ばされたものが酸化物系介在物であり、その周囲を覆う薄い線状物がMnSである。
比較例1は4071個中988個(被覆率24%)、実施例1は3985個中1620個(被覆率41%)、実施例2は4103個中2137個(被覆率52%)、実施例3は4267個中4005個(被覆率94%)が、MnSで覆われていた。
<超音波軸荷重疲労試験>
超音波軸荷重疲労試験は、超音波振動により試験片を共振状態にして、繰返し応力を発生させ、試験片の疲労強度を短時間で求めることができる疲労試験である。このため、鋼材中に侵入した水素が散逸する前に疲労させることが可能であり、水素の影響を合理的に評価できる。比較例1および実施例1〜3の鋼材を用いて、図4に示す形状の超音波軸荷重疲労試験片を製作した。なお、図4中の数値単位はmmである。熱処理は、いずれについても、850℃のRXガス雰囲気中で50分加熱して、80℃の油中でずぶ焼入を施した後、180℃で120分の焼戻を施した。
超音波軸荷重疲労試験を開始する前に、鋼中水素量が5mass−ppmとなる電流密度で20時間の陰極電解水素チャージを施し、その後、10分後に試験した(チャージあり)。また、水素チャージなしでの試験も行った(チャージなし)。図5に超音波軸荷重疲労試験結果を示す。図5において、横軸は負荷回数であり、縦軸は応力振幅(MPa)である。比較例1(従来鋼)はチャージすることで、疲労強度が明らかに低下したのに対し、実施例1〜3(開発鋼)は、水素チャージなしよりも若干低下する程度であった。この結果より、実施例1〜3(開発鋼)は比較例1(従来鋼)と比較して、破壊の起点になる酸化物系介在物のまわりに水素が集積しにくい特性を有するといえる。
<スラスト型寿命試験(転がり疲労試験)>
水が混入する転がり接触条件下では水が分解して水素が発生し、それが鋼中に侵入して早期剥離が起きる。そこで、水混入油中での転がり疲労試験を行った。比較例1および実施例1の鋼材を用いて、スラスト軸受51106の内外輪を製作した。それぞれ試験片1(比較例1)と試験片2(実施例1)とする。熱処理は、いずれも850℃のRXガス雰囲気中で50分加熱し、80℃の油でずぶ焼入を施した後、180℃で120分の焼戻を施した。また、実施例1の鋼材については、850℃のRXガス雰囲気中にアンモニアガスを添加したものも製作した。これを試験片3(実施例1+窒化処理)とする。
VG150のポリグリコール系合成油(密度1.073g/cm3、40℃における動粘度150mm2/s、100℃における動粘度23.6mm2/s)に40±0.01重量%の純水を混入した。水混入油作製後、水が蒸発しないように食品包装用の薄いフィルムで封をし、30分以上スターラーで攪拌した後、200mLの水混入油浴中で、上記試験片の内外輪を用いたスラスト軸受51106を回転させる試験を行なった。ここで、ボールは、SUS440C製のものを12個用いた。保持器は12個のボールを等間隔で保持する樹脂製のものを用いた。アキシャル荷重Fa=5.10kNのみを作用させ、0〜2500min-1で内輪を急加減速させた。図6に運転パターンを示す。この荷重条件での弾性ヘルツ接触計算でのレース面と鋼球間の最大接触面圧は2.3GPaである。なお、弾性ヘルツ接触計算では、51106、およびSUS440C製鋼球のヤング率とポアソン比はそれぞれE=204GPa、ν=0.29とした。剥離の検出は振動計で行なった。
試験は、試験片2(実施例1)、試験片3(実施例1+窒化処理)、試験片1(比較例1)のいずれも5個ずつ用意して行なった。剥離は、すべて51106内輪あるいは外輪のレース面に生じ、すべて水素起因の特徴を有する剥離であった。
表2に、各試験片の剥離寿命を2母数ワイブル分布に当てはめて求めたL10、L50、およびワイブルスロープ(形状母数)eを示す。試験片1(比較例1)は、L10=38.5時間であった。それに対し、試験片2(実施例1)はL10=118.8時間であり、試験片1(比較例1)に対して約3倍の長寿命を示した。このことから、本発明の転動部品は、水素脆性起因の早期剥離を起きにくくする効果を有するといえる。また、試験片3(実施例1+窒化処理)は、L10=183.4時間であり、試験片1(比較例1)に対して約5倍の長寿命を示した。このことから、試験片2(実施例1)に窒化処理を加えることで、より水素脆性起因の早期剥離を起きにくくする効果を有するといえる。
試験片3(実施例1+窒化処理)を500℃で1時間焼戻した。図7に試験片3の転走面からの深さ方向の断面硬度分布(ビッカース硬度HV)を示す。測定は、ビッカース硬度計を用い50μm間隔で行なった。図7に示すように、転走表面から0.05mm深さと窒化されていない深さ(0.2mm以上)の箇所との硬度差ΔHVは60であった。
また、図8に同試験片における転走面からの深さ方向の断面窒素濃度分布を示す。測定にはElectron Probe Micro Analyzer(EPMA)を用いて、加速電圧15kV、スポット径2μm、測定間隔2μm、測定時間1sec(秒)で測定した。試験片の転走面側から内部に向かう方向にEPMAによって鋼材中の窒素濃度分布を測定した。図8に示すように、表面窒素濃度は0.05重量%であった。なお、表面窒素濃度における「表面」とは、表面からの深さが0〜0.01mmまでの範囲である。表層の窒素濃度が高くなるほどΔHVは大きくなる。
本発明の転動部品は、水素脆性を起因とする早期剥離を効果的に防止し得るので、転がり軸受や歯車、およびそれらの構成部品として好適に利用できる。
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8a、8b 開口部

Claims (4)

  1. 内輪、外輪、および転動体を有する転がり軸受であって、
    前記内輪、外輪、および転動体から選ばれる少なくとも1つが鋼材からなる転動要素であり、
    前記鋼材が、インゴット鋳造物であり、
    前記鋼材の成分組成は、C:0.95質量%以上1.1質量%以下、Si:0.35質量%未満、Mn:0.5質量%未満、S:0.003質量%以上0.005質量%以下、Cr:1.4質量%以上1.6質量%未満、Ni:0.04質量%以上0.08質量%以下、Mo:0.01質量%以上0.05質量%以下、O:0.0006質量%以上0.0008質量%以下、残部が鉄および不純物であり、かつ、SとOの質量比(S/O)が4.28〜6.25であり、
    前記転動要素の鋼材中に含まれる酸化物系介在物の少なくとも一部がMnSで覆われており、前記転動要素の鋼材中の最大径が3μm以上の前記酸化物系介在物において、その全個数に対するMnSで覆われたものの個数の割合が40%をこえることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記転動要素は、その表層に窒化処理が施されてなり、表面窒素濃度が0.05〜0.6重量%であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  3. 前記転動要素の表面から0.05mm深さの箇所と前記窒素が含まれていない深さの箇所とのビッカース硬度差ΔHVが60以上であることを特徴とする請求項2記載の転がり軸受。
  4. 前記鋼材の成分組成において、SとOの質量比(S/O)が5〜6.25であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の転がり軸受。
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