JP2007084923A - 電気電子機器用Cu−Zn−Sn系合金 - Google Patents

電気電子機器用Cu−Zn−Sn系合金 Download PDF

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Abstract

【課題】Cu−Zn−Sn系合金の疲労特性を改善する。
【解決手段】平均濃度として2〜12質量%のZn、0.1〜1.0質量%のSnを含有し、質量%単位のSnの平均濃度([%Sn])と質量%単位のZnの平均濃度([%Zn])との関係が、 0.5≦[%Sn]+0.16[%Zn]≦2.0に調整され、残部がCu及び不可避的不純物から成る銅合金であり、Zn濃度が[%Zn]の80%以下である層状部位が、合金表面に0.05〜0.5μmの厚みで存在することを特徴とするCu−Zn−Sn系合金であり、表面に20〜200MPaの圧縮残留応力が存在することが好ましく、Ni、Fe、P、Co及びAgの群から選ばれた少なくとも一種を0.005〜0.5質量%の範囲で含有してもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、優れた強度、導電率及び疲労特性を兼ね備え、端子、コネクタ、スイッチ、リレーなどの電気電子部品に好適な銅合金に関し、更に詳細にはCu−Zn−Sn系合金に関するものである。
電気電子機器の各種端子、コネクタ、リレー又はスイッチ等には、製造コストを重視する用途では低廉な黄銅が使用されている。又、ばね性が重視される用途にはりん青銅が使用され、ばね性及び耐食性が重視される用途には洋白が使用されている。これら銅合金は固溶強化型合金であり、合金元素の作用により強度やばね性が向上する反面、導電率や熱伝導率が低下する。
一方、近年、固溶強化型合金に替わり、析出強化型銅合金の使用量が増加している。析出強化型合金は、合金元素をCu母地中に微細化合物粒子として析出させることを特徴とする。合金元素が析出する際に、強度が上昇し、同時に導電率も上昇する。したがって、析出強化型合金は固溶強化型合金に比べ、同じ強度でより高い導電率が得られる。析出強化型合金としては、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Be系合金、Cu−Ti系合金、Cu−Zr系合金等がある。
しかし、析出強化型合金では、合金元素をCu中に一旦固溶させるための高温・短時間の熱処理(溶体化処理)及び合金元素を析出させるための低温・長時間の熱処理(時効処理)が必要であり、その製造プロセスは複雑である。又、合金元素として、Si、Ti、Zr、Be等の活性元素を含有しているため、インゴット品質の作りこみが難しい。したがって、析出強化型合金の製造コストは、固溶強化型合金の製造コストと比べ非常に高い。
一方、固溶強化型合金を改良することにより、必要充分な導電率と強度を有する、低廉な銅合金の開発が進められている。黄銅に代表されるCu−Zn系合金は、製造が容易であり、Znが安価なことも相まって、特に低コストで製造できる合金である。本発明者らは、以前Cu−Zn系合金のZn量を調整した上で少量のSnを添加し、更に金属組織を調整することにより、各種端子等材料として必要充分な導電率、強度及び曲げ加工性を有する合金を開発した(特許文献1)。一般的に必要充分な導電率、強度及び曲げ加工性を下記に記載する。
(A)導電率:35%IACS以上。この導電率は析出強化型合金であるCu−Ni−Si系合金(コルソン合金)の導電率に匹敵する。なお、黄銅(C2600)の導電率は28%IACS、りん青銅(C5210)の導電率は13%IACSである。
(B)引張強さ:410MPa以上。この引張強さは、JIS規格(JIS H3100)により規定された黄銅(C2600)の質別Hの引張強さに相当する。
(C)曲げ性:Good Way(曲げ軸が圧延方向と直行する方向)及びBad Way(曲げ軸が圧延方向と平行な方向)の180度密着曲げが可能なこと。この曲げ試験において割れや大きな肌荒れが発生しなければ、コネクタに施される最も厳しいレベルの曲げ加工が可能となる。
Cu−Zn−Sn系合金自体は、従来から電子部品用に用いられており、その技術は特許文献2〜4等に開示されているが、これら従来合金は上記特性を満足していなかった。一方、本発明者らが開発したCu−Zn−Sn系合金は、黄銅の強度、コルソン合金の導電率、黄銅やコルソン合金と同等以上の曲げ加工性を併せ持つものであり、小型化が進行する電子機器部品の素材として好適な銅合金である。
一方、端子、コネクタ、リレー等の電子部品の金属部材には、部品の動作あるいは部品の着脱に際し、弾性限度内の曲げ応力が繰り返し与えられる。この繰り返し応力により、曲げ部外周表面より疲労クラックが発生し、このクラックが成長して部材の疲労破壊に至る。
一般的には合金の強度を高めると、疲労強度が向上する。又、特許文献5では、りん青銅の疲労特性を改善する方策として、表面に圧縮残留応力を付与する技術を提唱している。
特願2005−207556号明細書 特開平1−162737号公報 特開平2−170954号公報 特開平7−258777号公報 特開2004−218084号公報
近年、端子、コネクタ、スイッチ、リレーなどの小型化に伴い、金属部材に繰り返し付加される応力は増加する傾向にある。又、部品の耐久性に対するニーズも高まっている。
このような背景から、金属素材には、従来にも増して、良好な疲労特性が求められている。
上述した従来技術を適用することにより、Cu−Zn−Sn系合金の疲労特性をある程度まで改善することは可能であるが、金属素材の疲労特性に対する要求はますます高まっており、更なる改善が求められている。
本発明の課題は、新たな手法を用いてCu−Zn−Sn系合金の疲労特性を改善することにより、必要充分な導電率と強度を有し、更に良好な疲労特性をも併せ持つ銅合金を提供することである。
本発明者らは、Cu−Zn−Sn系合金の疲労特性の改善に対し鋭意研究を重ねたところ、所定の条件を満足するいくつかの特定のパラメータを併せ持つCu−Zn−Sn系合金が優れた疲労特性を示すことを見出した。
上記の知見に基づいて完成された本発明は、下記Cu−Zn−Sn系合金を提供する。
(1)平均濃度として2〜12質量%のZn、0.1〜1.0質量%のSnを含有し、質量%単位のSnの平均濃度([%Sn])と質量%単位のZnの平均濃度([%Zn])との関係が、
0.5≦[%Sn]+0.16[%Zn]≦2.0
に調整され、残部がCu及び不可避的不純物から成る銅合金であり、Zn濃度が[%Zn]の80%以下である層状部位が、合金表面に0.05〜0.5μmの厚みで存在することを特徴とするCu−Zn−Sn系合金。
(2)表面に20〜200MPaの圧縮残留応力が存在することを特徴とする(1)に記載のCu−Zn−Sn系合金。
(3)Ni、Fe、P、Co及びAgの群から選ばれた少なくとも一種を0.005〜0.5質量%の範囲で含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のCu−Zn−Sn系合金。
必要充分な導電率と強度及び良好な疲労特性を併せ持ち、電子機器部品の小型化に対応し得る銅合金を低コストで提供することが可能となる。
本発明の限定理由を以下に説明する。
(1)表面のZn濃度
Cu−Zn−Sn系合金を適当な条件で製造すると、合金表面のZn濃度が合金内部のZn濃度より低くなる。この合金表面に存在するZn濃度が低い層を「Zn欠乏層」と称する。本発明者らは、Zn欠乏層に疲労特性を向上させる作用があることを見出し、良好な疲労特性を安定して得るためのZn欠乏層の条件を明らかにした。
疲労クラックは曲げ部外周表面より発生し内部へと進展する。適度な厚みのZn欠乏層を付与すると、表面における局所的な加工硬化が軽減され、これによりクラック発生までの時間が延びると推測された。Zn欠乏層を,「Zn濃度が、合金の平均Zn濃度([%Zn])に対し、80%(0.8×[%Zn])以下の表面層」とした場合、疲労特性を有効に向上させるZn欠乏層の厚みは0.05〜0.5μmであった。すなわち、Zn欠乏層の厚みが、0.05μm以上になると疲労特性が向上したが、0.5μmを超えると却って疲労特性が低下した。より好ましいZn欠乏層の厚みは0.08〜0.3μmであり、良好な疲労特性がより安定して得られた。
Zn欠乏層の厚みを調整するためには、焼鈍条件とその後の酸洗・研磨条件が重要である。まず、軽い酸化性雰囲気で焼鈍を行うことにより、合金中のZnを選択的に酸化させ、高Zn濃度の酸化膜を生成させる。この酸化膜中のZnは、酸化膜下部の母材より供給されるため、酸化膜直下にZn欠乏層が形成される。焼鈍雰囲気の酸化性が強すぎると、ZnだけでなくCuも酸化し、Zn欠乏層が形成されない。一方、酸化性が弱すぎると、高Zn濃度の酸化膜は生成するものの、その厚みが薄いため、充分な厚みのZn欠乏層が形成されない。
焼鈍により高Zn濃度の酸化膜とその直下のZn欠乏層を形成した後、酸洗・研磨を行って酸化膜を除去すると、表面にZn欠乏層が露出する。酸洗・研磨による材料の除去量が多すぎると、Zn欠乏層がなくなってしまう。一方、除去量が少なすぎると、Zn欠乏層が0.5μmを超える、焼鈍で生成した酸化膜が残留し半田濡れ性が劣化する等の不具合が生じる。
(2)表面の残留応力
疲労クラックは曲げ部外周表面より発生し内部へと進展する。金属素材の表面に圧縮残留応力を付与すると、クラックの発生が抑制され、疲労寿命が増大するため好ましい。
表面に20MPa以上の圧縮残留応力を与えると、疲労特性が向上する。一方、圧縮残留応力が200MPaを超えると却って疲労特性が低下する。そこで、圧縮残留応力値を20MPa以上、200MPa以下に規定する。
試料表面の残留応力の調整は、仕上圧延での圧延ロール直径及び1回の通板での加工度を調整することにより達成される。すなわち、ロールの直径を小さくすると、表面の残留応力が引張応力から圧縮応力へと移行し、1回の通板での加工度を小さくすると、表面の残留応力が引張応力から圧縮応力へと移行する。
(3)銅合金の組成
(イ)Zn及びSn濃度
本発明の銅合金は、ZnとSnを基本成分とし、両元素の作用により機械的特性と導電率を作りこむ。Zn濃度の範囲は2〜12質量%、好ましくは5〜10重量%とし、Sn濃度の範囲は0.1〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5重量%とする。Znが2質量%未満であると、強度が不足するとともに、Cu−Zn系合金の特徴である良好な製造性が失われる。Znが12質量%を超えると、Sn濃度を調整しても35%IACS以上の導電率が得られなくなる。Snは圧延の際の加工硬化を促進する作用を持ち、Snが0.1質量%未満であると強度が不足する。一方、Snが1.0質量%を超えると、合金の製造性が低下する。
SnとZnの合計濃度(T)は、次のように調整する。
0.5≦T≦2.0
但し、T=[%Sn]+0.16[%Zn]
ここで、[%Sn]及び[%Zn]はそれぞれ銅合金のSn及びZnの質量%濃度である。Tを2.0以下にすれば35%IACS以上の導電率が得られる。又、Tを0.5以上にすれば、金属組織を適切に調整することにより、410MPa以上の引張強さが得られる。そこで、Tを0.5〜2.0に規定する。
より好ましいTの範囲は0.6〜1.7であり、この範囲に調整することにより、35%IACS以上の導電率と410MPa以上の引張強さがより安定して得られる。
(ロ)Ni、Fe、P、Co及びAg
Znより酸化しにくい元素であれば、強度、耐熱性、耐応力緩和性等を改善する目的で、本発明の合金に添加することができる。このような元素として、Ni、Fe、P、Co及びAgがある。これら元素の合計添加量が0.005質量%未満であると、特性向上の効果が発現しない。一方、上記元素の合計量が0.5質量%を超えると、導電率低下が著しくなる。そこで、合計量を0.005〜0.5質量%に規定する。なお、Ti,Cr,Zr,Al,Si等のZnより酸化しやすい元素の添加は、高Zn濃度の酸化膜の生成を妨げ、その結果としてZn欠乏層が形成されにくくなる。
高周波誘導炉を用い、内径60mm、深さ200mmの黒鉛るつぼ中で2kgの電気銅を溶解した。溶湯表面を木炭片で覆った後、Zn及びSnを添加した。溶湯温度を1200℃に調整した後、溶湯を金型に鋳込み、幅60mm、厚み30mmのインゴットを製造し、以下の工程に従い、厚み0.2mmまで加工した。
(工程1)850℃で3時間加熱した後、厚さ10mmまで熱間圧延(熱延)する。
(工程2)熱間圧延板の表面の酸化スケールをグラインダーで研削、除去する。
(工程3)板厚1.5mmまで冷間圧延(素圧延)する。
(工程4)再結晶焼鈍(中間焼鈍)として、水素中、400℃で30分間加熱し、平均結晶粒径を約3μmに調整する。
(工程5)温度を40℃に調整した20質量%硫酸−3質量%過酸化水素水溶液に10秒間浸漬した後、#1200エメリー紙による機械研磨を行ない、焼鈍で生成した表面酸化膜を除去する。
(工程6)冷間圧延(中間圧延)により、厚み0.285mmまで加工度81%で圧延する。
(工程7)再結晶焼鈍(最終焼鈍)として、水素ガス,0.01vol%酸素−窒素ガス又は空気ガスの気流中、400℃で30分間加熱し、結晶粒径を約3μmに調整する。
(工程8)温度を40℃に調整した20質量%硫酸−3質量%過酸化水素水溶液に種々の時間浸漬した後、#1200エメリー紙による機械研磨を行なう。
(工程9)冷間圧延(仕上圧延)で0.2mmまで加工度30%で圧延する。
仕上圧延では、試料表面の残留応力を調整するために、圧延ロールの直径を50mm、100mm、200mmの三水準で変化させ、又0.285mmから0.2mmまで圧延する際の通板回数を1〜5回の間で変化させた。ロールの直径を小さくし、通板回数を増やす(1回の通板での加工度を小さくする)と残留応力が引張から圧縮に変化する。
加工後の試料について、以下の評価を行った。
(イ)Zn欠乏層の厚み
リフロー後の試料をアセトン中で超音波脱脂した後、GDS(グロー放電発光分光分析装置)により、Znの深さ方向の濃度プロファイルを求めた。測定条件は次の通りである。
・装置:JOBIN YBON社製JY5000RF-PSS型。
・Current Method Program:CNBinteel-12aa-0。
・Mode:設定電力=40W。
・気圧:775Pa。
・電流値:40mA(700V)。
・フラッシュ時間:20s。
・予備加熱(Preburn)時間:2s。
・測定時間:分析時間=30s、サンプリング時間=0.020s/point。
Zn濃度が平均濃度の80%以下の層をZn欠乏層とし、この層の厚みを求めた。図1は後述する表1の発明例2のデータである。発明例2の平均Zn濃度は8.5質量%であり、Znが6.8%(8.5×0.8)以下の層の厚みを求めると0.11μmとなる。なお、最表面でZnが増加しているが、これは室温で生成したごく薄い酸化膜(厚み0.01μm以下)に対応するものであり、この酸化膜は疲労特性に影響しない。
(ロ)残留応力
幅20mm、長さ200mmの短冊形状の試料を、試料の長さ方向が圧延方向と一致するように採取した。塩化第二鉄水溶液を用いて、片面側からエッチングして試料の反りの曲率半径を求め、残留応力を算出した。この測定を表裏両面よりエッチング量を変化させて行い、図2に示すような厚み方向の残留応力分布曲線を得た(須藤一著「残留応力とゆがみ」内田老鶴圃社、(1988)、p.46.)。この曲線より表面及び裏面の残留応力値を求め、両値の平均を表面残留応力値と定義した。
(ハ)引張試験及び導電率測定
JIS Z 2241に準じ、圧延方向に対しその長手方向が平行方向となるように採取したJIS 13B号試験片を使用して、引張試験機(ORIENTEC社製:型式UTM−10T)を用いて室温、引張速度5mm/分の条件で引張試験を実施し、引張強さを求めた。試験は、測定数2回で実施し、その平均値を引張強さの測定値とした。
電気伝導性はJIS H 0505に準拠した四端子法により測定した導電率(%IACS)により評価した。
(ニ)疲労試験
JIS Z2273に準拠し、両振り平面曲げの疲労試験を行った。幅10mmの短冊形状の試料を、試料の長さ方向が圧延方向と一致するように採取した。試料表面に付加する最大応力(σ)は引張強さの70%とした。そして、次式に従い振幅(f)及び支点と応力作用点との距離(L)を設定した。
L=√(3tEf/(2σ))
(t:試料厚み、E:ヤング率(=112 GPa))
試料が破断したときの回数(Nf)を測定した。測定は4回行い、4回の測定でのNfの平均値を求めた。
(実施例1)
Zn欠乏層の厚みが、疲労特性に及ぼす影響を説明する。表1に示す種々の組成のCu−Zn−Sn系合金を、上記製造工程に従い0.2mmまで加工した。最終焼鈍の雰囲気及びその後の酸洗での酸への浸漬時間を変化させることにより、Zn欠乏層の厚みを変化させた。この場合の好ましい最終焼鈍の雰囲気は、0.01vol%酸素−窒素ガス気流であった。
なお、各試料とも最終圧延における圧延ロール直径を50mm、パス回数を4回としたところ、表面の圧縮残留応力は150〜200MPa(本発明の好ましい範囲)となった。
表1の発明例及び比較例1〜9は、Cu−8.5質量%Zn−0.3質量%Sn合金につき、Zn欠乏層の厚みを変化させたものである。発明例及び比較例1〜7では、0.01vol%酸素−窒素ガス気流中で焼鈍を行ったところ、高Zn濃度の酸化膜が生成し、その直下にZn欠乏層が形成された。そして、次工程の酸洗・研磨工程にて酸化膜を除去したところ、表面にZn欠乏層が現出した。酸への浸漬時間を長くするほど、Zn欠乏層は薄くなった。比較例6は酸への浸漬時間が長すぎたためZn欠乏層の厚みが0.05μm未満であり、比較例7は酸への浸漬時間が短すぎたためZn欠乏層の厚みが0.5μmを超えた。この条件では上記工程(8)での酸への好ましい浸漬時間は、5秒を超え45秒未満であった。
比較例8では空気気流中で焼鈍を行ったところ、Znと同時にCuも酸化したため、Zn欠乏層は形成されなかった。又比較例9では水素気流中で焼鈍を行ったところ、高Zn濃度の酸化膜及びその直下のZn欠乏層は生成したものの、その厚さが薄すぎ、酸洗・研磨で表面に現出したZn欠乏層の厚さは、酸への浸漬時間を短めにしたにもかかわらず、0.05μmに満たなかった。
発明例及び比較例1〜9の疲労寿命を見ると、比較例6〜9では100万回に満たないのに対し、Zn欠乏層を0.05〜0.5μmに調整した発明例1〜5は100万回を超えており、明らかな改善効果が認められる。
発明例及び比較例10〜53は、種々の組成のCu−Zn−Sn系合金に対し、発明の効果を検証したものである。上述したCu−8.5質量%Zn−0.3質量%Sn合金の場合と同じことがいえる。
Figure 2007084923

Figure 2007084923
(実施例2)
残留応力が疲労特性に及ぼす影響を説明する。表2に示す種々の組成のCu−Zn−Sn系合金を、上記製造工程に従い0.2mmまで加工した。最終圧延では、圧延ロールの直径及びパス回数を変化させることにより、表面の残留応力を変化させた。なお、各試料とも最終焼鈍を0.01vol%酸素−窒素ガスの雰囲気で行い、その後の酸洗において温度を40℃に調整した20質量%硫酸−3質量%過酸化水素水溶液に30秒間浸漬したところ、Zn欠乏層の厚みは0.1〜0.2μm(本発明範囲)となった。
評価結果を表2に示す。残留応力が圧縮の場合はマイナスの符号をつけ、引張の場合はプラスの符号をつけている。表2の発明例及び比較例54〜62はCu−8.4質量%Zn−0.3質量%Sn合金につき、最終圧延条件を調整し、表面の残留応力を変化させたものである。残留応力が低下する(引張から圧縮になる)に従い疲労寿命が増加している。しかし、残留応力が−200MPa未満であると、疲労寿命が低下している(比較例62)。残留応力が−200〜−20MPa(圧縮)の範囲内に収まった発明例54〜57の疲労寿命は100万回を超え、残留応力が−200〜−20MPa(圧縮)の範囲から外れた比較例58〜62の疲労寿命は100万回未満である。すなわち、表面に適度な圧縮残留応力を与えると疲労寿命が長くなることが示されている。
発明例及び比較例63〜119は、種々の組成のCu−Zn−Sn系合金に対し、発明の効果を検証したものである。上述したCu−8.4質量%Zn−0.3質量%Sn合金の場合と同じことがいえる。
Figure 2007084923

Figure 2007084923
材料表層部のZn濃度分布を示す図である。 板厚方向における残留応力の分布を示す図である。

Claims (3)

  1. 平均濃度として2〜12質量%のZn、0.1〜1.0質量%のSnを含有し、質量%単位のSnの平均濃度([%Sn])と質量%単位のZnの平均濃度([%Zn])との関係が、
    0.5≦[%Sn]+0.16[%Zn]≦2.0
    に調整され、残部がCu及び不可避的不純物から成る銅合金であり、
    Zn濃度が[%Zn]の80%以下である層状部位が、合金表面に0.05〜0.5μmの厚みで存在することを特徴とするCu−Zn−Sn系合金。
  2. 表面に20〜200MPaの圧縮残留応力が存在することを特徴とする請求項1に記載のCu−Zn−Sn系合金。
  3. Ni、Fe、P、Co及びAgの群から選ばれた少なくとも一種を0.005〜0.5質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のCu−Zn−Sn系合金。
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