JP2006291356A - Ni−Sn−P系銅合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度、導電性、曲げ加工性、耐応力緩和特性を同時に改善した、薄肉通電部材やバスバーに好適な銅合金を提供する。
【解決手段】 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、平均析出物間距離が10nm以下、析出物の個数が2500nm2あたり10個以上であるNi−Sn−P系銅合金。この合金は、例えば、580〜850℃に保持後急冷された溶体化状態で375〜570℃の時効処理を受け、その後再結晶温度以上の熱履歴を経ていない組織をもつNi−Sn−P系銅合金。時効処理後には冷間圧延および低温焼鈍を施すことができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット等、電気・電子部品用材料として使用されるNi−Sn−P系銅合金に関する。
近年のエレクトロニクスの発達により、種々の機械の電気配線は複雑化、高集積化が進み、コネクタ等の電気・電子部品は、小型化、軽量化、高信頼性化が進んでいる。このような中、コネクタ用銅合金材料は薄肉化され、また複雑な形状に加工されるため、強度、弾性、導電性、曲げ加工性、プレス成形性が良好であることが求められている。
具体的には、小型化、薄肉化が進むことにより、同一の荷重を受ける材料の断面積が小さくなり、通電量に対する材料の断面積も小さくなる。更に複雑な部品形状に対応するために寸法精度の要求が厳しくなるため、成形加工に対する要求も厳しくなる。これらの要求に対応するため、銅合金に対しては、強度(引張強さ、0.2%耐力等)と曲げ加工性の高度な両立が要求されている。
導電性に関しては、これらの薄肉化の進む電子部品の他、自動車用のバスバー等、大電流を通電する部品でも重要な特性になる。
また、特に自動車用のメス端子等に使用される端子は、エンジンルーム近傍の高温環境で使用されることが多くなっており、高温環境下でもばね性に経時変化が少なくなるように、高い耐応力緩和特性が要求されている。
これに加え、電気・電子部品は用途に応じて接触信頼性を向上させるため、Sn、Ag、Au等、種々のめっきを施して使用されることが多く、また、はんだ付けして使用されることも多い。このため、めっき、はんだに対する密着性が良好であることも重要である。
特許文献1、2には、Cu−1.0Ni−0.9Sn−0.05P合金(CDA C19025)に代表されるNi−Sn−P系銅合金が開示されている。この系の合金は、引張強さ、導電率、曲げ加工性のバランスに優れ、更に耐応力緩和特性に優れるという特徴を有しており、自動車用の小型端子やバスバーをはじめとする各種用途に用いられている。しかしながら、近年の急激な部品の小型化とそれに伴う材料の単位面積にかかる荷重、電流の増大に対応するため、より高いレベルで0.2%耐力の向上、曲げ加工性の向上が求められている。
一般的に伸銅品は、製造工程中の最終の圧延加工率を高くすることにより高い強度を得ることができるが、圧延加工率を高くすると曲げ加工性が低下するという問題がある。すなわち、「強度(引張強さ、0.2%耐力等)」と「曲げ加工性」はトレードオフの関係にある。また、銅合金の強度、ばね性を向上させる手段として添加元素量を増やすことによる固溶強化があるが、添加元素の固溶量が増大すると導電性は低下する。つまり「強度」と「導電率」もトレードオフの関係にある。
特許文献9には、Ni−Sn−P系銅合金の強度、導電率を向上させるために、P量を大量に添加し、溶体化−時効を行うことが記載されている。
特許文献3〜7には、Ni−Sn−P系銅合金の強度、曲げ加工性、導電率等の特性をできるだけ同時に高めるために、冷間圧延−熱処理の繰返し、場合によっては溶体化処理とそれに続く高い加工率での冷間圧延(例えば特許文献4では80%以上の圧下率)と熱処理によりNi−Sn−P系銅合金中のNi−P系析出物を均一かつ微細に析出させる方法や、結晶粒を5μm以下といった微細に制御することにより強度、曲げ加工性、導電率等を高めることが示されている。
特許文献8には、Ni−Sn−P系銅合金の耐応力緩和特性を改善するために、あえてこの合金系でNi−P系析出物の生成を熱処理により抑制する手法が開示されている。
特開平4−154942号公報 特開平4−236736号公報 特開平10−226835号公報 特開2001−262255号公報 特開2001−262297号公報 特開2000−256814号公報 特開2000−129377号公報 特開2002−294368号公報 特開平1−234550号公報
しかしながら昨今では、通電部品の薄肉化・小型化の要求と、複雑形状のものが容易に作れること、すなわち部品の設計自由度の向上に対する要求が、一層厳しいものになってきた。上記従来の技術により、強度と加工性の両立や耐応力緩和特性の付与について改善が図られてきたが、これらをもってしても、昨今の厳しい要求には十分応えられないのが現状である。また、部品のコストを上昇させないためには素材となる銅合金材料の製造性を良好に維持する必要があるが、熱間加工性の改善について、従来、配慮が欠けていた面がある。
本発明はこのような現状に鑑み、「導電性」を従来のNi−Sn−P系銅合金と同等に良好に維持しながら、「強度」、「曲げ加工性」、「耐応力緩和特性」を高レベルでバランスよく兼備し、かつ良好な「熱間加工性」を有する通電部品に好適な銅合金材料を開発し提供しようというものである。
発明者らの詳細な検討の結果、このような目的に叶う銅合金材料は、従来から実績のあるNi−Sn−P系銅合金において実現できることがわかった。この合金系にも、金属組織のコントロール手法を中心に、改善の余地が残っていた。
すなわち本発明では、質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、平均析出物間距離が10nm以下であるNi−Sn−P系銅合金を提供する。析出物の存在密度については、析出物の個数が2500nm2あたり10個以上であることが望ましい。平均結晶粒径は3〜30μmであることが望ましい。上記組織状態を達成するには製造工程および条件の工夫が必要であり、例えば、580〜850℃に保持後急冷された溶体化状態で375〜570℃の時効処理を受け、その後再結晶温度以上の熱履歴を経ていない工程で製造される。ただし、時効処理を受けた後には必要に応じて冷間圧延、あるいはさらに250〜400℃の低温焼鈍を受けていても構わない。
ここで、Zn、Fe、Mn、Mgは任意元素である。元素含有量の下限0%は、通常の銅合金の溶製プロセスにおける分析手法で測定限界以下となる場合である。Ni/(Fe+Mn+Co)≧1の式中の、元素記号の箇所には、質量%で表されたそれぞれの元素の含有量の値が代入される。
また本発明では、特に引張強さが600N/mm2以上の強度、90°W曲げ試験(R=0.1mm、加重1.5Ton)で曲げ部断面に割れが認められない曲げ加工性、および応力緩和率20%以下の耐応力緩和特性を兼ね備えたものを提供する。
ここで、引張強さは長手方向が圧延方向に直角方向のJIS 5号引張試験片を用いてJIS Z2241に準じて測定した値が採用できる。90°W曲げ試験は、CESM002(通信機械工業会 技術標準の規格)に準じた方法で行うことができる。耐応力緩和特性は、EMAS−1011(日本電子材料工業会標準規格)の両端支持式に準拠して測定したものが採用できる。
本発明によれば、通電部品材料に望まれる30%IACS以上の良好な導電性を確保しながら、例えば引張強さ600N/mm2以上、0.2%耐力580N/mm2以上という優れた「強度」、90°W曲げ試験(R=0.1mm、加重1.5Ton)で曲げ部断面に割れが認められないという優れた「曲げ加工性」、および応力緩和率20%以下という優れた「耐応力緩和特性」を同時に具備する銅合金材料が提供可能になった。しかも、この合金は熱間加工性も良好で、製造時の不用意なコスト上昇を伴わない。このようなトレードオフの関係を含む各特性を高レベルで安定的に具備した低廉な銅合金材料は従来存在しなかったものである。したがって本発明は、小型化・薄肉化が進む電気・電子部品用材料や、強度と導電性が要求されるバスバー材料として従来より一層高性能なものを安価に提供するものである。
発明者らは上記の各特性を兼備させるための手段について種々検討を重ねてきた。その結果、Ni−Sn−P系銅合金において、Ni−P系析出物(NiとPの化合物を主体とする析出物)による析出強化と導電性向上効果を積極的に利用することが有利であるとの結論に至った。析出物間距離を10nm以下に保つことで析出物の析出強化への作用を高めることができ、かつ微細分布した析出物のひずみ場が転位を固着することにより、転位の移動を大きく抑制することが可能になる。このような析出物の平均粒子径(長径)は20nm以下であることが好ましい。また、析出物が多く存在した場合により大きな効果を得ることができる。析出物密度で見ると、金属組織観察において析出物の個数が2500nm2あたり10個以上であることが望ましい。析出強化作用が高まれば、仕上冷間圧延を過度に行う必要がなく、また、加工性や耐応力緩和特性にマイナス要因となる強化元素の過剰添加を防止することも可能になる。さらに、微細分布した析出物による転位の移動抑制効果により、耐応力緩和特性を大きく向上することができる。上記析出状態に加え、結晶粒径を3〜30μmに制御することで、各特性のバランスを良好に保つことが可能になる。
ただし、従来と同様の工程で時効処理を行っても本発明の目的は達成できない。それには工夫が必要である。発明者らの詳細な研究によれば、転位密度の少ない溶体化状態において析出物を生成させることにより、上記組織状態が達成されることが明らかになった。また、添加NiおよびP量を適量制御することで、過度の溶体化処理温度の上昇を防ぐとともに、良好な熱間加工性を保つことができ、製造性の低下を招くことなく製造することが可能になる。その結果、従来のNi−Sn−P系銅合金材料と同等の導電性を維持しながら、強度レベルと、曲げ加工性、耐応力緩和特性との高度な両立が実現できるのである。熱間加工性に関しても従来のNi−Sn−P系銅合金材料と同等に良好である。
時効処理後に再結晶温度以上の熱履歴を与えなければ、冷間加工を施しても上記の析出形態は概ね維持され、加工硬化と相まってさらなる強度向上がもたらされる。強度向上のための仕上冷間圧延や元素添加を過度に行う必要がないため、曲げ加工性および耐応力緩和特性の劣化も防止できる。結晶粒径も過度に微細化されることがなく、これは耐応力緩和特性の向上につながる。また、整合性の高い析出物が微細・均一分散した組織状態は、曲げ加工性および耐応力緩和特性の向上に有利である。
本発明の銅合金は、このようにしてトレードオフの関係を含む種々の特性を同時に改善している。これを実現するには各元素の含有量のコントロールおよび製造工程のコントロールが極めて重要である。以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔Ni〕
Niは、Pと共添し、Ni−P系析出物を形成することにより、強度、導電性、曲げ加工性、および耐応力緩和特性の向上に寄与する。また、固溶したNiは、単体および固溶Snとの相互作用により、強度(ばね性)、硬さ、耐応力緩和特性の向上に寄与する。これらの効果を十分に得るにはNi含有量を0.2質量%以上確保する必要がある。ただし、2.5質量%を超えると導電率低下の問題が顕在化するとともに、後述する溶体化処理の適正温度が高くなり生産性を低下させる。したがってNi含有量は0.2〜2.5質量%の範囲にコントロールする必要がある。0.3〜1.8質量%の範囲がより好ましく、0.5〜1.5質量%が一層好ましい。特に自動車用のバスバーやソケット部品等、導電率を重視する場合には、0.3〜0.7質量%のNi含有量とすることが望ましい。
〔P〕
Pは、Niと共添することにより、上述のように強度、導電性、曲げ加工性、および耐応力緩和特性の向上に寄与する。特に、適度のP添加は析出物とCuマトリクスとの整合性を高める上で有利である。また、Pは溶解−鋳造時の脱酸剤としてはたらき、溶湯の酸素濃度低下、耐水素脆化性の向上をもたらす。これらの効果を十分発揮させるためには、0.04質量%以上のP含有が必要である。P含有量が0.04質量%未満では「圧延→焼鈍」の繰り返しで結晶粒を微細化する従来の手法と同等程度の強度−加工性バランスしか得られない。これは、P含有量が少なすぎると本発明の狙いとする析出物のサイズ、分布が得られないためである。
一方、P含有量が0.2質量%を超えると、溶解−鋳造時、あるいは熱間圧延時に割れが発生しやすくなる。また、鋳造時や熱間圧延時に生成する粗大なNi−P析出物の量が多くなり、適切な溶体化処理温度が高くなる。この粗大な析出物が溶体化処理後に残存すると、仮に完全に溶体化を行った場合でも、時効時に析出物が凝集して粗大化することにより曲げ加工性が著しく低下する。また、仮に十分な溶体化を行なった場合でも、Ni−P析出物が結晶粒界で析出しやすくなり、曲げ加工性を低下させる。このため、P含有量は0.2質量%以下である必要があり、0.18質量%以下であることが望ましい。
したがって、Pは0.04〜0.2質量%の範囲で含有させる必要がある。0.05〜0.18質量%がより好ましく、0.06〜0.15質量%が一層好ましい。
〔Ni/P〕
本発明では、NiとPの析出物を利用しているため、Ni/P比を最適化することが望ましい。特にPが過剰に存在すると、めっき密着性、はんだ耐候性の低下を招く。逆に、Niが過多になった場合、導電率の低下や溶体化処理温度の上昇を招く。種々検討の結果、Ni/P比は3〜30の範囲とすることが望ましく、6〜20の範囲がより好ましい。
〔Sn〕
Snは、マトリクス中に固溶し、強度、ビッカース硬さをはじめとする機械特性の向上をもたらす。また、固溶したSnと固溶Ni、Ni−P系析出物の相互作用により、強度(ばね性)、耐応力緩和特性の向上作用が生じる。本発明ではマトリクス中に整合性および均一性が高い状態で分散したNi−P系析出物による優れた析出強化作用を利用するが、これに、SnとNi−P系析出物との相互作用による強化作用が加わり、結果として、顕著な強度上昇作用が発揮される。このようなSnの作用を十分に得るには0.1質量%以上のSn含有量を確保する必要がある。
ただし、多量のSn含有は導電性の低下、熱間加工性の低下を招くので、上限は2.5質量%に規定される。したがってSn含有量は0.1〜2.5質量%の範囲において、用途に応じた機械特性と導電性を考慮して決定される。例えば、自動車用の小型端子等に用いる場合は、0.4〜2.0質量%のSn含有が望ましい。強度−加工性の良好なバランスを重視する場合には0.8〜1.8質量%が好ましい。また、バスバー等の大電流が流れる通電部材など、導電率を重視する用途では0.1〜0.7質量%のとすることが好ましく、0.15〜0.5質量%が一層好ましい。
〔Zn〕
Znは、Ni−Sn−P系銅合金において、機械特性、導電性、耐応力緩和特性を損なうことなく、はんだ耐候性、めっき密着性等の特性を向上させる元素であり、必要に応じて添加することができる。ただし、多量のZn含有は導電性の低下や応力腐食割れ感受性の増大を招くので、Znを添加する場合は5質量%以下の範囲で行う。
〔Fe、Mn、Co〕
Fe、Mn、Coは、Niを置換する形で必要に応じて添加することができる。Cu−Ni−Sn−P合金におけるFe、Mn、Coの添加は、添加したFe、Mn、CoがPとの間で金属間化合物をつくり、場合によってはNiも含めた3元化合物を生成する。これらの化合物は、本発明で必要なNi−P化合物と生成温度が異なるため、再結晶焼鈍を行なった際の粒径制御の妨げになる場合があるが、本発明の方法では溶体化処理を行うことにより、M−P(M−Ni−P、ここでM=Fe、Mn、Co)化合物を溶体化処理時の結晶粒径制御や、時効により析出させることによる耐熱性、耐応力緩和特性、強度の上昇に利用することができる。特にFe、Mn、Coを微量添加することで析出物の形成エネルギーが低くなり、転位密度が低く、核形成サイトが少ない状態での時効においても均一・微細な析出状態を得ることが容易となる。析出物置換量としては、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1であり、過度の添加は析出物の凝集・粗大化を招くため、総添加量がNiに関する本発明の規定範囲を超えないことが必要である。Fe、Mn、Coの含有量はいずれも0.7質量%以下とする必要がある。0.5質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下が一層好ましい。
〔Mg〕
Mgは、Niと置換する形で添加することにより、耐食性の改善や耐応力緩和特性の向上を図ることができる。しかし多量に添加すると曲げ加工性等が低下するので、Mgを添加する場合は0.2質量%以下の範囲で行う。
〔O、H、S〕
O含有量が高いと製造工程中での熱延割れやフラックスの巻き込みといった欠陥の原因になるので、O含有量は50ppm以下であることが望ましい。H含有量が高い場合は膨れ等の欠陥をもたらす可能性が高いので、H含有量は3ppm以下であることが望ましい。Sも熱間圧延時の割れを熱間割れや曲げ加工性の低下をもたらすため、S含有量は20ppmであることが望ましい。
〔析出物間距離〕
Cuマトリクス中に析出したNi−P系析出物は強度および耐応力緩和特性に寄与するが、析出物間距離が10nm以下の場合に析出強化への作用を高めることができ、かつ微細分布した析出物のひずみ場が転位を固着することにより、転位の移動を大きく抑制することが可能になる。この組織状態を達成することで強度および耐応力緩和特性を大きく向上させることが可能になる。析出物間距離が10nm以上の場合はせん断変形応力量が十分でなく上記作用を十分に得ることができず、所望の特性を得ることが難しくなる。析出物間距離は10nm以下であることが望ましく、7nm以下であることがより好ましい。また、析出物の平均粒子径(長径)は20nm以下であることが望ましい。
ここで析出物間距離はTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、300000倍の倍率で3視野観察を行い、観察される析出物の中から無作為に10個の析出物を選択、各析出物から最も近い析出物までの距離(析出物同士の外周間で最も短い距離)を測定し、その距離の平均値を平均析出物間距離とすることができる。また、平均粒子径は、上記無作為に選択した10個の析出物粒子について、画像上に現れている最も長い部分の径を測定し、それらを平均することによって求められる。
〔析出物密度〕
析出量が多い場合に、析出物の強度および耐応力緩和特性に対する寄与をさらに大きくすることができる。単位面積(ここでは2500nm2とする)中の析出物の個数が10個以上であることが望ましく、15個以上であることがより一層望ましい。
ここで、析出物の個数はTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、300000倍の倍率で3視野観察を行い、無作為に選択された50nm×50nmの領域(2500nm2)に含まれる析出物数を測定し、その平均値をとることで求められる。その際、領域内に完全に含まれる析出物を1、領域をまたぐ析出物を0.5として測定を行う。
〔結晶粒径〕
本発明の銅合金では、溶体化処理の後に再結晶を含む熱処理を行わないため、溶体化処理によって結晶粒径が決定される。結晶粒径は要求される特性、製造性に応じて調整することができるが、平均結晶粒径を3μm以下に制御する場合、熱処理前に強加工が必要になり工程設計において制約を受けることになる。また、過度の結晶粒径の微細化は耐応力緩和特性の低下を招く。一方で平均結晶粒径が30μmを超えると強度、加工性の低下を招く。平均結晶粒径が3〜30μmであることが望ましく、4〜20μmの範囲であることがより好ましい。5〜15μmの範囲であることが一層望ましい。
ここで、平均結晶粒径はJIS H0501の求積法に準じて測定した値が採用できる。
〔溶体化処理〕
本発明の銅合金は、前述のように、転位密度の少ない溶体化状態で時効処理を施すことによって製造される。したがって、時効処理前に溶体化処理を行う必要がある。溶体化処理に供するための材料は、通常の銅合金の溶製法に従って得た鋳片に、熱間圧延、冷間圧延を施して用意することができる。その冷間圧延は、途中に中間焼鈍を入れて複数回行うことができる。溶体化処理においては、途中工程で析出したNi−P析出物をマトリクス中に固溶させるとともに、転位密度の低い再結晶組織を得る。本発明では50%以上の溶体化率を確保する必要がある。70%以上の溶体化率とすることがより好ましく、90%以上が一層好ましい。
ここで、溶体化率は、以下のように定義される。
対象材料を850℃(完全に溶体化することができる温度)で30分保持した後、ただちに水冷した際に得られる導電率をa(%IACS)とする。導電率aを有する前記材料から3つのサンプルを作製し、それぞれ450℃×360分保持、500℃×360分保持、550℃×360分保持の熱処理(時効処理に相当)を施したのち導電率を測定する。これらのうち最も値の高いものを導電率b(%IACS)とする。そして、ある溶体化処理(実際の溶体化工程に相当)を行った後の導電率がc(%IACS)になったとする。このとき、導電率がc(%IACS)となった当該溶体化処理の溶体化率は、
溶体化率(%)=(b−c)/(b−a)×100
で表される。
なお、上記導電率は、例えば、フェルスター社製、SIGMATEST D 2.068で測定することができる。
上記所定の溶体化率を確保するための溶体化処理条件は600〜900℃×1〜120秒保持の範囲で設定することができる。溶体化処理温度が高く、保持時間が長い場合、結晶粒の成長・粗大化が進むため、過度の溶体化は所定の強度と曲げ加工性を両立させるためには不利になる。また、溶体化が不十分な場合、最終的に所望の機械特性、曲げ加工性、耐応力緩和特性が得られない。溶体化の最適条件は、Ni、P添加量、Ni/P比により変化するが、例えばNi:0.5〜1.5質量%、P:0.07〜0.15質量%、Ni/P:3〜20の場合には、580〜850℃の温度範囲、好ましくは620〜850℃の温度範囲とすればよく、650〜780℃の範囲が一層好ましい。
溶体化処理を実施する方法としては、結晶粒径の制御の観点からバッチ式ではなく、連続焼鈍酸洗ラインや光輝焼鈍ラインなどの連続式の熱処理方法を用いることが望ましい。この場合、通板条件は板厚、通板速度により変化するが、溶体化後の結晶粒が所定の粒径範囲に収まるように、温度、保持時間を設定する必要がある。具体的には上記所定の温度範囲で1〜120秒程度の保持を行なうことが望ましい。1〜50秒の保持時間とすることがより好ましく、3〜30秒とすることが一層好ましい。
〔時効処理〕
上記のようにして高い溶体化率で溶体化された材料は、転位密度が極めて少なくなっている。本発明の銅合金は、このような状態(溶体化状態)で時効処理を施すことによって得られる。すなわち、溶体化処理後に圧延を施さずに時効処理に供する。このとき、前述のようにマトリクスと整合性の高い析出物が均一性高く微細分散し、強度と、曲げ加工性・耐応力緩和特性の同時向上に極めて有利な金属組織が得られる。
時効処理の温度は375〜570℃の範囲とすることが必要である。時効処理時間は20秒〜20時間の範囲で設定することができる。時効処理の温度が高すぎる場合や時間が長すぎる場合は、析出物とマトリクスとの整合性が低下し、時効処理による硬度の上昇が小さくなり、その後の圧延加工における加工硬化も小さくなる。時効温度が低すぎる場合は析出量が少なくなり、十分な効果が得られない。また、時効処理時間が短すぎる場合は均一に析出物を析出させることが難しくなる。特にバッチ式の熱処理を行う際にコイル状に巻いた状態で処理を行うので、コイルの内側、外側での析出物の形成にバラツキが生じやすく、特性バラツキも発生しやすくなる。望ましい時効処理温度として380〜520℃が挙げられ、400〜470℃が一層好ましい。望ましい時効処理時間として10秒〜10時間が挙げられ、バッチ式では1〜8時間の範囲が好ましい。
〔仕上冷間圧延〕
時効処理を施した後に、仕上冷間圧延を施すことができる。上記の「溶体化処理→時効処理」の工程で得られた特徴的な金属組織状態の場合、再結晶を伴う時効処理を施して得られた従来一般的な金属組織状態と比べ、その後に冷間加工を施した際の加工硬化の程度が大きくなる。このため、再結晶を伴う時効処理を施した場合に比べ、同等の機械特性をより低い仕上冷間圧延の圧延加工率で得ることが可能になり、曲げ加工性や耐応力緩和特性の改善を図る上でも有利となる。また、高い圧延加工率を取ることにより、曲げ加工性は低下するものの、再結晶を伴う時効処理を施した場合では得られない高い強度を得ることが可能になる。
仕上冷間圧延の圧下率は必要とされる強度、曲げ加工性等の特性により設定されるが、15〜80%の範囲であることが望ましい。特に、高い強度と曲げ加工性を両立させる場合には、25〜65%の範囲であることが望ましい。
〔低温焼鈍〕
本発明では、前述の「溶体化処理→時効処理」の工程で得られた特徴的な析出形態が最終製品においても維持されるように、時効処理後には再結晶を伴う熱履歴は付与しない。ただし、いわゆる歪み取りを主目的とする低温焼鈍を実施することは、ばね特性、曲げ加工性、耐応力緩和特性を向上させる上で有効である。低温焼鈍は、連続焼鈍ライン(AP炉、BA炉など)で実施することが一般的であり、250〜600℃×1〜100秒の条件で行なうことが望ましく、280〜400℃×1〜20秒が一層好ましい。また、バッチ式で実施する場合は200〜370℃×0.5〜8時間とすることが望ましく、250〜320℃×1〜5時間が一層好ましい。
〔溶体化処理前の熱間圧延および中間焼鈍〕
前述のように、溶体化処理に供する材料は、熱間圧延、冷間圧延を経て用意することができるが、所定の板厚に調整するためには、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を行う必要が生じる場合がある。熱間圧延や中間焼鈍で析出物の生成をできるだけ抑えておくと、後の溶体化処理をより低温、短時間で行うことができ効率的である。例えば熱間圧延では熱延終了温度を600℃以上、望ましくは650℃以上とし、その後水冷を行うことが望ましい。また中間焼鈍については、保有する設備に応じてバッチ式、連続焼鈍ラインの両方が選択可能であるが、連続焼鈍ラインを使用して550℃以上、望ましくは600℃以上、より望ましくは650℃以上の温度で、1〜180秒、望ましくは3〜60秒加熱保持し、その後水冷することが好ましい。なお、中間焼鈍をバッチ式で行う場合は、450〜600℃好ましくは500〜580℃で1〜8時間保持する条件が採用できる。
表1に示す組成の銅合金を溶解、鋳造し、30×50×200mmの鋳片を得た。いずれも分析の結果、O:50ppm以下、H:3ppm以下、S:20ppm以下であることが確認された。各鋳片を約850℃にて厚さ10mmまで熱間圧延した。熱間圧延終了温度は700℃以上とし、熱間圧延後は直ちに水冷した。その後、表面切削を行なった後、表2に示す工程X、工程Yまたは工程Zにより、最終的に仕上圧延加工率50%で幅50mm、厚さ0.2mmの板材を作製した。ここで、工程Xが本発明の銅合金を得るための適正な条件である。工程Xでは70%以上の溶体化率で溶体化処理を行った後に時効処理を施している。なお、溶体化処理前の焼鈍(中間焼鈍)はバッチ式で行い、焼鈍の後は表面の酸洗・研磨による酸化スケールの除去を行った。
Figure 2006291356
Figure 2006291356
上記の製造工程中で、製造性を確認するため、熱間圧延終了後の板材について目視観察により割れの有無を確認し、割れが認められないか軽微であるため製造上問題ないものを○(良好)、割れが生じたが後工程へ進めることができる程度のものを△(やや不良)、後工程へ進めるのが困難な大きな割れが生じたものを×(不良)と評価した。
また、最終的に得られた板材について、平均結晶粒径、引張強さ、硬さ、導電率の測定を行なった。平均結晶粒径はJIS H0501の求積法に準じて測定した。引張強さはJIS 5号試験片を用いて圧延方向に直角方向の引張試験をJIS Z2241に準拠して行うことにより求めた。硬さはJIS Z2244に準拠しマイクロビッカース硬度計を使用して測定し、測定数3の平均値で示した。導電率はJIS H0505に規定される方法で求めた。これらの結果を表3に示す。なお、いずれの材料も最終圧延前の溶体化処理後の平均結晶粒径、および低温焼鈍後の平均結晶粒径は20μm以下であった。
Figure 2006291356
表1〜3から判るように、組成および製造履歴が適正な本発明例のものは、30%IACS以上の導電率を有するとともに、600N/mm2以上の引張強さ、190HV以上の硬さを具備し、かつ熱間加工性にも優れていた。
表1〜3から判るように、組成および製造履歴が適正な本発明例のものは、30%IACS以上の導電率を有するとともに、600N/mm2以上の引張強さ、190HV以上の硬さを具備し、かつ熱間加工性にも優れていた。また、いずれの材料も粒子径20nm以下の析出物が均一微細に分布した状態であった。
これに対し、比較例No.7はP含有量が本発明の規定を外れたため、本発明で規定する適正な製造履歴を受けても強度レベルが低かった。No.6および9はP含有量が多すぎたために熱間圧延で大きな割れが生じ、後工程へ進めることができなかった。No.10〜14は「冷間圧延→焼鈍」の繰り返しにおける焼鈍により時効処理を兼ねた、従来法によるものである。これらはたとえ組成が適正でも、本発明例のものに比べ強度レベルが低かった。No.15〜16は「溶体化−時効」の製造履歴を経ているが、溶体化および時効条件が適切ではなく、強度レベルが低くなった。
実施例1で得られた低温焼鈍後のサンプルのうち、表4に示すサンプルについてTEM観察を行い、平均析出物間距離、単位面積(50nm×50nm=2500nm2)に含まれる析出物数を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2006291356
組成および製造履歴が適切な本発明のものは、平均析出物間距離が10nm以下であり、単位面積中の析出物の個数も10個以上であった。一方で成分範囲が規定から外れるNo.7および13は製造方法によらず平均析出物間距離が10nm以上になってしまっており、析出物の個数も少ない。また、No.10は成分範囲が規定範囲内であるが、製造方法が適切ではなく、平均析出物間距離が大きい。No.15、16は「溶体化−時効」工程を経て製造されているが、溶体化および時効工程での条件が適切ではなく所望の組織状態が得られていない。
表5に示す組成の銅合金を、溶解、鋳造し、30×50×200mmの鋳片を得た。いずれも分析の結果、O:50ppm以下、H:3ppm以下、S:20ppm以下であることが確認された。各鋳片を約850℃にて厚さ10mmまで熱間圧延した。熱間圧延終了温度は700℃以上とし、熱間圧延後は直ちに水冷した。その後、表面切削を行なった後、表6に示す工程A〜Iのいずれかにより板厚0.2mmの板材を作製した。このうち工程AおよびHが本発明に相当する。工程AおよびHでは70%以上の溶体化率で溶体化処理を行った後に時効処理を施している。また、各工程の焼鈍後には、表面の酸化スケールを除去するために酸洗バフ掛けを行っている。
Figure 2006291356
Figure 2006291356
製造性を確認するため、熱間圧延終了後の板材について目視観察により割れの有無を確認し、実施例1と同様の評価を行った。また、最終的に得られた板材について、平均結晶粒径、引張強さ、0.2%耐力、硬さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率を調べた。
平均結晶粒径、引張強さ、0.2%耐力、硬さ、導電率は、実施例1と同様の試験方法にて求めた。
曲げ加工性は、長手方向が圧延方向に直角垂直となる10mm×40mmの試験片を用いて、CESM002(通信機械工業会 技術標準の規格)に準じた90°W曲げ試験により、試験荷重1.5TonとしてR=0.1mmの治具を用いた場合とR=0.3mmの治具を用いた場合について調べた。曲げ試験後の試験片を樹脂に埋め、断面を光学顕微鏡で観察し、R=0.1mmおよび0.3mmのいずれの場合も割れが認められなかったものを○(良好)、R=0.1mmで割れが見られ、R=0.3mmで割れが認められなかったものを△(やや不良)、R=0.1mm、0.3mm共に割れが認められたものを×(不良)と評価した。
耐応力緩和特性は、EMAS−1011(日本電子材料工業会標準規格)の両端支持式に準拠し、圧延方向に平行方向について試験を行った。試料表面に0.2%耐力の80%にあたる曲げ応力を加え、170℃の恒温槽中で1000時間保持し、曲げぐせを測定した。応力緩和率は下記の式で求めた。
応力緩和率(%)=[Ht/H0]×100
ただし H0:80%の曲げ応力を与えた際の試料高さ(mm)
t:応力を除去した状態での試料高さ(mm)
これらの結果を表7に示す。
Figure 2006291356
表7から判るように、本発明の銅合金は、30%IACS以上の導電率を有するとともに、600N/mm2以上の引張強さ、580N/mm2以上の0.2%耐力、190HV以上の硬さと、良好な曲げ加工性、20%以下の耐応力緩和特性とを兼備し、かつ熱間加工性にも優れていた。なお、No.42は溶体化処理前の中間焼鈍を連続焼鈍として析出を抑制しているので、より低温・短時間の溶体化処理が可能となったものである。No.17、18、20、22、23、24、26、42では、導電率が35%IACS以上あるいは40%IACS以上といった特に高い導電性を有するとともに、600N/mm2以上の引張強さ、580N/mm2以上の0.2%耐力、190HV以上の硬さと、良好な曲げ加工性、20%以下の耐応力緩和特性とを兼備し、かつ熱間加工性にも優れている銅合金を得ることができた。
これに対し、比較例No.28はP含有量が高すぎ、No.30はSn含有量が高すぎたため、いずれも熱間圧延時に大きな割れが発生し、その後の評価を行うことができなかった。No.29はSn無添加であるため、他の合金に比べ強度レベル(すなわち引張強さ、0.2%耐力、硬さ)が低いだけでなく、耐応力緩和特性にも劣った。No.31、32はP含有量が多いため熱間割れが発生したものの、試料の評価は可能なレベルであったため次工程に進み、評価を行った結果、いずれも曲げ加工性が大きく劣っていた。No.33はNi含有量が低すぎたため、強度レベルが低いだけでなく、曲げ加工性、耐応力緩和特性にも劣った。No.34はMg含有量が多すぎたため曲げ加工性が著しく低下した。No.35、41は冷延−焼鈍の工程で作製した試験材であるが、本発明の銅合金よりも強度レベルが低く、かつ曲げ加工性、耐応力緩和特性に劣った。No.36は焼鈍−冷延の工程で作製し、強度不足を補うため80%の仕上冷間圧延を行った試験材であるが、強度の向上は少なく、さらに曲げ加工性、耐応力緩和特性が低下した。No.37は中間焼鈍を省略し、強加工を加えた後に再結晶焼鈍を行なったもの、No.38は熱延材に対して時効処理を行い、その後冷延−焼鈍を行なったものであるが、これらは強度レベルが低いだけでなく、曲げ加工性、耐応力緩和特性にも劣った。No.39は時効温度が高すぎたため本発明の効果が得られず、強度レベル、曲げ加工性、耐応力緩和特性の全ての面で劣っていた。No.40は溶体化処理温度が低すぎたため溶体化率が50%未満となり、溶体化処理後に時効処理を施したにもかかわらず強度レベル、曲げ加工性、耐応力緩和特性に劣った。No.43は溶体化処理温度が高かったため平均結晶粒径が200μm程度となり、曲げ加工性に劣った。No.44はS含有量が高すぎたため、熱間加工割れが発生し、試験材の曲げ加工性も大きく劣った。

Claims (8)

  1. 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、平均析出物間距離が10nm以下であるNi−Sn−P系銅合金。
  2. 析出物の個数が2500nm2あたり10個以上である請求項1に記載のNi−Sn−P系銅合金。
  3. 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、50%以上の溶体化率で溶体化処理された状態で375〜570℃の時効処理を受ける工程を経たNi−Sn−P系銅合金。
  4. 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、580〜850℃に保持後急冷された溶体化状態で375〜570℃の時効処理を受け、その後再結晶温度以上の熱履歴を経ていない組織をもつNi−Sn−P系銅合金。
  5. 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、580〜850℃に保持後急冷された溶体化状態で375〜570℃の時効処理を受け、その後冷間圧延を受けているが再結晶温度以上の熱履歴を経ていない組織をもつNi−Sn−P系銅合金。
  6. 質量%で、Ni:0.2〜2.5%、Sn:0.1〜2.5%、P:0.04〜0.2%、Zn:0〜5%、Fe:0〜0.7%、Mn:0〜0.7%、Co:0〜0.7%、Mg:0〜0.2%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni/(Fe+Mn+Co)≧1を満たす組成をもち、580〜850℃に保持後急冷された溶体化状態で375〜570℃の時効処理を受け、その後冷間圧延と250〜400℃の低温焼鈍を受けた組織をもつNi−Sn−P系銅合金。
  7. 平均結晶粒径が3〜30μmである請求項1〜6のいずれかに記載のNi−Sn−P系銅合金。
  8. 引張強さが600N/mm2以上の強度、90°W曲げ試験(R=0.1mm、加重1.5Ton)で曲げ部断面に割れが認められない曲げ加工性、および応力緩和率20%以下の耐応力緩和特性を兼ね備えた請求項1〜7のいずれかに記載のNi−Sn−P系銅合金。
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