JP2009203510A - 高強度および高導電率を兼備した銅合金 - Google Patents

高強度および高導電率を兼備した銅合金 Download PDF

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Abstract

【課題】従来材よりも高強度かつ高導電率を兼備した銅合金を提供する。
【解決手段】化学組成が質量%で、Ni:0.010〜3.0%、P:0.010〜0.3%、Sn:0.010〜3.0%、Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%を各々含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、マトリックス中にりん化合物からなる析出物が微細に分散した組織を有する。前記析出物を形成するりん化合物中に含まれるNiの原子量N(Ni)に対する、Co,Cr,Ti,Mn,Zr,FeおよびMgの各元素の原子量の合計N(M)の比N/N(Ni)が0.05以上、30以下とされたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケットなどの電気・電子部品用材料として使用される高強度および高導電率を備えた銅合金に関する。
近年のエレクトロニクスの発達により、種々の機械装置の電気配線は複雑化、高集積化が進み、コネクタ等の電気・電子部品は、小型化、軽量化、高信頼性化が進んでいる。このような中、コネクタ用銅合金材料は薄肉化され、また複雑な形状に加工されるため、強度、弾性、導電率、曲げ加工性、プレス成形性が良好であることが求められている。特に、小型化、薄肉化が進むことにより、同一の荷重を受ける材料の断面積が小さくなり、通電量に対する材料の断面積も小さくなるため、高強度および高導電率を兼ね備えることが求められる。また導電率に関しては、これらの薄肉化の進む電子部品の他、自動車用のバスバー等の大電流を通電する部品においても重要な特性になる。
導電性の銅合金のうち、Cu−Ni−Sn−P系合金は、適切な条件で時効処理を施すことにより、Ni−P系化合物が析出し、強度、導電率を同時に向上させることが可能であり、この合金系は耐力、導電率、曲げ加工性のバランスに優れ、更に耐応力緩和特性に優れるという特徴を有しており、自動車用の小型端子やバスバーをはじめとする各種用途に用いられている。
このような合金として、例えば、下記特許文献1,2には、強度、導電率等の特性をできるだけ同時に高めるために、冷間圧延−熱処理の繰返し、場合によっては溶体化処理とそれに続く高い加工率での冷間圧延と熱処理によりNi−P系化合物を均一かつ微細に析出させたCu−Ni−Sn−P系銅合金が示されている。
また、下記特許文献3には、析出物サイズや析出物間距離、析出物の個数を厳密に制御することにより、高強度を達成したCu−Ni−Sn−P系銅合金が示されている。
さらに、下記特許文献4,5,6にはCu−Ni−Sn−P系合金について、副成分として、りん化合物を生成しやすいFe,Cr,Co,Mn,Mgなどを添加することにより、強度その他の特性を向上させた銅合金が示されている。
特開2001−262255号公報 特開2001−262297号公報 特開2006−291356号公報 特開2000−119779号公報 特開2007−31795号公報 特開平4−311544号公報
しかしながら、昨今では通電部品の薄肉化、小型化の要求が一層厳しいものとなり、更なる高強度化が求められている。Ni−P系析出物を積極的に利用した上記従来の技術により、強度と導電率について改善が図られてきたが、析出物のサイズは数nm〜数十nm程度、個数密度は500〜5000個/μm2程度にまで達しており、これ以上の改善を図ることが困難な状況にある。
本発明はかかる問題に鑑み、従来材よりも高強度および高導電率を兼備した銅合金を提供することを目的とする。
本発明者は、導電性を低下させることなく、材料強度を改善するには、析出物を形成するりん化合物の単位析出量あたりの析出強化量を向上させればよいとの着想の下で、りん化合物の析出強化量を向上させる手段を種々研究した結果、りん化合物の組成を制御し、析出物の周囲の整合ひずみを大きくすることにより、高い強度と電導率を兼備させることを知見した。本発明はかかる知見を基に完成したものである。
すなわち、本発明の銅合金は、化学組成が質量%(以下、単に「%」と記載する。)で、
Ni:0.010〜3.0%、
P :0.010〜0.3%、
Sn:0.010〜3.0%、
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%
を各々含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、前記析出物を形成するりん化合物中に含まれるNiの原子量N(Ni)に対する、Co,Cr,Ti,Mn,Zr,FeおよびMgの各元素の原子量の合計N(M)の比N/N(Ni)が、
0.05≦N(M)/N(Ni)≦30
とされたものである。
また、上記基本成分に、A群(Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下)、B群(Ca,Ag,Cd,Be,Au,Ptのうち1種または2種以上:合計で1.0%以下)から1種または2種以上の元素を添加して下記(1) 、(2) の化学組成とすることができる。さらに、これらの化学組成に対して、不純物元素であるHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルは、各元素の合計量で0.1%以下に制限することが好ましい。
(1) 基本成分+A群から1種または2種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B群から1種または2種以上
本発明によれば、耐力500Mpa超を達成した上で良好な導電率を備えた銅合金材料、例えば、耐力が500Mpa超のクラスの銅合金で導電率が50%IACS以上、耐力が550MPa以上のクラスの銅合金で導電率が45%IACS以上という高強度および高導電率を同時に具備する銅合金材料を提供することができる。このため、本発明に係る銅合金は、小型化、薄肉化が進む電気・電子部品用材料や、強度と導電率が要求されるバスバー材料などの素材として好適に利用することができる。
本発明の実施形態に係る銅合金は、マトリックス中にりん化合物からなる析出物が微細に分散したものであり、前記析出物を形成するりん化合物に組成上の特徴があるので、先ず、この点について詳細に説明する。なお、後述する銅合金の化学組成範囲では、前記析出物のサイズは数nm〜50nm程度であり、その個数密度は500〜5000個/μm2程度である。
前記りん化合物(Ni−M−P)は、その中に含まれるNiの原子量N(Ni)に対する、Co,Cr,Ti,Mn,Zr,FeおよびMg(以下、これらの元素をまとめて「M」で表す。)の各元素の原子量の合計N(M)の比N(M)/N(Ni)が、りん化合物の単位析出量あたりの析出強化量を大きくするように、0.05以上、30以下の範囲に制限される。
りん化合物中のN(M)/N(Ni)比が大きいほど、析出物と母相Cuの格子定数の差が大きくなり、析出物の周囲の整合ひずみが大きくなる。この析出物の周囲の整合ひずみは、転位の運動を妨げ、材料を強化する役目を果たす。従って、Ni−M−P系析出物中のN(M)/N(Ni)比が大きいほど、析出物の周囲の整合ひずみが大きくなり、単位析出量あたりの析出強化量が大きくなる。もっとも、N(M)/N(Ni)比が0.05未満と小さすぎると、Ni−P化合物と格子定数がほとんど同じとなるため、従来よりも大きな強度向上効果が期待できない。一方、N(M)/N(Ni)比が30を超えて大きすぎると、析出物と母相の格子定数の差が大きくなり過ぎるため、析出物が整合性を失い、長範囲の整合ひずみ場がなくなり、大きな析出強化は期待できない。このため析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比は下限を0.05、上限を30に制限する。好ましくは、下限を0.5、上限を20とする。より好ましくは、下限を2、上限を15とする。
次に、実施形態に係る銅合金の化学組成について説明する。
Ni:0.010〜3.0%
Niは、Pとの間にNi−P化合物を生成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満の含有では、最適な条件の下で製造しても、析出するりん化合物量やNiの固溶量の絶対量が不足する。また添加Ni量が少ないほど析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比は大きくなり、0.010%未満のNi含有量ではN(M)/N(Ni)比が0.05以下となり、析出物の強度への寄与が小さい。かかる理由により、Ni量の下限を0.010%とする。一方、3.0%を超えて過剰に含有させると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成し、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下する。また3.0%超の添加では析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比が30超となり、析出物の強度への寄与が小さくなる。このため、Ni量の上限を3.0%とする。好ましくは、0.1〜2.0%の範囲とする。
P:0.010〜0.3%
Pは、NiやCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgとの間にりん化合物を析出させ、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満の含有ではりん化合物の析出量が不足するため、P量の上限を0.010%とする。一方、0.3%を超えて過剰に含有させると、りん化合物析出粒子が粗大化し、強度や耐応力緩和特性だけでなく、熱間加工性も低下する。このため、P量の下限を0.3%とする。好ましくは、0.05〜0.2%の範囲とする。
Sn:0.010〜3.0%
Snは、銅合金中に固溶して強度を向上させる。Sn含有量が少ないと、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加するなどして、高強度化を行う必要がある。この場合には、導電率や耐応力緩和特性の若干の低下を伴う。Sn含有量が0.010%未満では、Snが少なすぎて、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加しても強度が低すぎ、これら特性バランスが所望のレベルに達しない。一方、過剰に添加すると導電率が低下し、また熱間加工性が低下する。このため、Snの含有量の下限を0.010%、上限を3.0%とする。好ましくは0.1〜2.0%の範囲とする。
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%
これらの元素は、Pとの間にM−P化合物(既述のとおり、MはCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgの1種または2種以上をまとめて示す。)またはNiを含めたNi−M−P化合物を生成し、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。またM−P、Ni−M−P化合物はNi−P化合物と比較してCu母相との格子定数の差が大きく、析出物の周囲のひずみを大きくするため、析出強化量を大きくすることが可能である。これらの元素は、Niと同様、合計で0.010%未満の含有では析出するりん化合物の絶対量が不足する。またこれらの元素の添加量が少ないほど、析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比は小さくなる。0.010%未満の含有ではN(M)/N(Ni)比が0.05未満となり、析出物の強度への寄与が小さい。このため、これらの元素の合計量の下限を0.010%とする。一方、合計量が1.5%を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成し、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下し、かつ固溶により導電率が低下する。また過剰に添加すると、りん化合物中のN(M)/N(Ni)比が30超となり、析出物の強度への寄与が小さくなる。こんため、これらの元素の合計量の上限を1.5%とする。好ましくは、0.05〜0.8%、より好ましくは0.05〜0.3%の範囲とする。
上記基本成分に対して銅合金の機械的性質をより向上させるために、上記基本成分に、A群(Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下)、B群(Ca,Ag,Cd,Be,Au,Ptのうち1種または2種以上:合計で1.0%以下)から1種または2種以上の元素を添加して下記(1) または(2) の化学組成とすることができる。さらに、不純物元素であるHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルは、各元素の合計量を0.1%以下に制限することが好ましい。
(1) 基本成分+A群から1種または2種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B群から1種または2種以上
Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下
Znは、錫めっきの剥離を防止する。しかし、過剰に添加すると導電率が低下し、また応力腐食割れの感受性の増大を招いてしまう。Siには脱酸剤としての効果がある。しかし、多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、Znの含有量は1%以下に止め、Siの含有量は0.1%以下に止める。
B群の1種または2種以上の元素:合計で1.0%以下
B群の各元素は、結晶粒の粗大化を防止する作用があるが、これらの元素を多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、これらの元素は合計で1.0%以下とする。
Hf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルの各元素:合計で0.1以下
これらの元素は不純物元素であり、少ない程好ましいが、実施形態の成分系では、これらの元素が合計で0.1%以下に止まる限り、機械的性質にさほど影響を与えない。このため、これらの元素は合計量で0.1%以下まで許容される。なお、原料に含まれるこれらの元素の量を管理することにより、常法の製造方法の下で、これらの不純物元素の合計量を0.1%以下に制御することができる。通常の銅合金の原料を使用する場合にはこれらの元素が含まれることは少ないが、原料の一部にこれらの元素を多く含むようなもの、例えばリサイクル品が用いられる場合には取り扱いに注意が必要であり、合計量が0.1%以下となるように成分調整することが肝要である。
次に、実施形態に係る銅合金板の製造方法について以下に説明する。実施形態の銅合金板は、成分組成を調整した銅合金を溶解、鋳造し、その鋳塊を均質化処理(均熱処理)した後、熱間圧延および冷間粗圧延を行い、さらに溶体化焼鈍、最終仕上げ冷間圧延を行うことにより製造される。また、必要に応じて溶体化焼鈍を施した後に時効処理を施することができる。溶体化焼鈍後、あるいはさらに時効処理後の最終仕上げ圧延は、強度と曲げ加工性などの観点から、常法に従って50%以下の圧下率とすればよい。
前記溶解、鋳造、その後の均熱処理、熱間圧延は通常の方法によって行うことができる。熱間圧延については、その入り温度は600℃〜1000℃程度、終了温度は600℃〜850℃程度とされる。熱間圧延後は水冷、または放冷し、その後冷間粗圧延を行う。
前記冷間粗圧延に続いて行う溶体化焼鈍は、700℃〜900℃にて30秒間保持し、その後の冷却速度について650℃までの温度範囲では1℃/sec以上とし、650℃〜300℃の温度範囲では0.1〜1.0℃/secとし、300℃〜室温までの温度範囲では100℃/sec以上の冷却速度にて冷却する。
前記溶体化焼鈍後の冷却速度を上記の範囲としたのは、冷却中にりん化合物を析出させるためである。このときM−P化合物の生成温度域はNi−P化合物の生成温度域より高温である。このため、析出物の生成温度が高温であるほど、Ni−M−P化合物中のN(M)/N(Ni)比が大きくなる。
650℃までの温度範囲において1℃/secよりも冷却速度が小さいと、M−P化合物が生成しやすい650℃以上の高温域に銅合金が保持される時間が長くなる。その結果、高温域で生成が進むM−P化合物の割合が多くなって、Ni−M−P析出物のN(M)/N(Ni)比が30より大きくなってしまう。このため650℃までの温度範囲では冷却速度を1℃/sec以上とする。
300℃〜室温までの温度範囲において100℃/secより冷却速度が小さいと、Ni−P化合物のみが生成しやすい300〜250℃程度の温度域に保持される時間が長くなる。その結果、低温域で生成が進むNi−P化合物の割合が多くなって、Ni−M−P析出物中のN(M)/N(Ni)比が0.05よりも小さくなってしまう。このため300℃〜室温までの温度範囲では冷却速度を100℃/sec以上とする。
また650℃〜300℃の温度範囲において0.1〜1.0℃/secとしたのは、M−P化合物およびNi−P化合物の生成のバランスを取り、N(M)/N(Ni)比が0.05〜30であるNi−M−P析出物を生成するようにするためである。
ところで、従来の銅合金の製造にあたっては、溶体化焼鈍条件に関しては、溶体化を行う温度条件についての検討がなされることはあっても、その後の冷却についてはほとんど考慮されることがなかった。そのため、単純に放冷されるか、或は考慮されたとしても前記特許文献4の実施例に記載されているように、溶体化焼鈍温度から水冷(急冷)される程度であり、冷却速度をその温度範囲において緻密に制御されることはなかった。因みに溶体化焼鈍温度が上記のように700℃〜900℃であったとしても、単純な放冷であれば、少なくとも300℃〜室温までの温度範囲において100℃/secより冷却速度が小さくなるなどのため、Ni−M−P析出物中のN(M)/N(Ni)比が制御できない。また溶体化焼鈍温度から急冷されると650℃〜300℃の温度範囲における冷却速度が速くなりすぎて、やはりNi−M−P析出物中のN(M)/N(Ni)比が制御できない
溶体化焼鈍後においては、強度−導電率バランスを向上させるために時効処理を行うことができる。この際、時効温度および時間には注意が必要である。すなわち時効処理は300℃〜650℃の温度にて2〜10hrの時効を行い、時効後は水冷または放冷を行う。650℃以上の温度で時効を行うと、上記のとおり、M−P化合物の生成のみが顕著に進み、その結果N(M)/N(Ni)比が30よりも大きくなる。また300℃以下の温度の内、250℃以下ではそもそも時効が進まず、300〜250℃の範囲では、Ni−P化合物の生成のみが顕著に進み、その結果N(M)/N(Ni)比が0.05よりも小さくなる。300〜650℃の範囲で時効処理することにより、溶体化処理の冷却時と同様にM−P化合物とNi−P化合物の生成がバランスよく進み、N(M)/N(Ni)比を所望の範囲に制御できる。また時効処理に要する時間は通常の時効処理で採用する2〜10hrでよい。2hrより短すぎると、時効が進まず導電率が低くなり、一方、時効時間が10hrを超えて長すぎると強度が低下するようになる。
この様な時効処理を行った実施形態の銅合金は、耐力が500Mpa超のクラスで導電率が55%IACS以上、また耐力が550MPa以上のクラスで導電率が50%IACS以上、また耐力が600MPa以上のクラスで導電率が45%IACS以上という、極めて優れた高強度、高導電率を兼備する銅合金となる。
上記製造方法により製造された銅合金における析出物のサイズは数nm〜50nm程度で、個数密度は500〜5000個/μm2程度であり、析出物のサイズおよび個数密度については従来の銅合金に比して大差はない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定的に解釈されるものではない。
以下に本発明の実施例を説明する。化学組成、組織中の析出物の組成が異なるように種々のCu−Ni−Sn−P系合金からなる銅合金薄板を製造し、強度、導電率の特性を評価した。具体的な製造工程、評価方法は以下のとおりである。
銅合金をクリプトル炉において大気中にて木炭被覆下で溶解し、鋳造して表1に示す化学組成を有する150mm厚の鋳塊を得た。続いて、965℃で3時間の均熱化処理を行った後、熱間圧延して15mm厚とし、750℃以上で水冷して焼入れた。その後両面を1mmずつ面削して13mm厚とした後、冷間粗圧延を行って厚さ0.8mmとした。
この銅合金板を硝石炉で表2に示す温度で30秒間保持する溶体化焼鈍を行った後、同表に示す種々の冷却条件にて室温まで冷却し、一部のものを除き、同表に示す条件で時効処理を行った。時効処理後、水冷した後、圧下率50%の最終仕上げ圧延を行い、銅合金薄板を製造した。
得られた各試料の銅合金薄板から組織観察片を採取し、以下の要領で析出物中のN(M)/N(Ni)比を求めた。TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて100000倍の倍率で観察を行い、観察される析出物の中から無作為に3個の析出物を選択し、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により構成元素の特性X線を検出し、各元素の原子量を測定した。このようにして測定した原子量に基づいて求めたN(M)/N(Ni)比を表2に併せて示す。なお、いずれの試料においても、析出物のサイズおよび個数密度については、TEMにより観察した結果、従来の銅合金と同等のレベルであることが確認された。
また、前記各銅合金薄板の機械的特性を以下の要領で測定した。各試料の銅合金薄板から試験片長手方向が板材の圧延方向に対し直角方向となるように、機械加工にてJIS5号引張試験片を作製した。そして、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、機械的な特性を測定した。測定結果を表2に併せて示す。なお、表2中には各試料の耐力のほか、硬さ、引張強度も参考として示した。
また、前記各銅合金薄板の導電率を以下の要領で測定した。各試料の銅合金薄板からミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、JIS−H0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により導電率を算出した。この測定結果も表2に併せて示す。
表2より、本発明の実施例である試料No. 1〜18(実施例)は、化学組成および製造条件が適正であるので、析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比が0.05〜30の範囲内に制御されており、その結果、耐力500MPa超の高強度を達成しつつ、優れた導電率を兼備している。もっとも、析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比が比較的大きい試料No. 3,6,11,18並びに同比が比較的小さいNo. 4,5,10は、同比が2〜15のより好ましい範囲内にある試料No. 1,2,7〜9,12〜17に比べて、耐力または導電率がやや低下している。また、同じ成分系でも時効処理を施した試料No. 1,12に比較して、施していないNo. 2,13では、強度、導電率が幾分低下している。また、試料No. 7〜9は、適正成分ではあるものの、PまたはSnが規定範囲の境界付近にあるため、耐力または導電率がやや低下している。
一方、比較例である試料No. 21〜26は本発明組成内の合金組成であるにもかかわらず、No. 21〜24は溶体化後の冷却速度が不適当で、No. 25,26は時効温度が不適当であるため、析出するりん化合物のN(M)/N(Ni)比が0.05未満、または30超となり、耐力または導電率が実施例に比較して低下している。また、比較例の試料No. 27,28,33,34はNiまたはM(Co、Cr、Ti、Mn、Zr、Fe、Mg)の添加量が本発明の範囲外となっているため、製造条件が適正であるにもかかわらず、析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比が0.05未満、または30超となり、耐力または導電率が低下している。また、No. 29〜32は析出するりん化合物中のN(M)/N(Ni)比が0.05〜30の範囲を満足するものの、PまたはSnの添加量が本発明範囲外であるため、耐力または導電率が低下している。
Figure 2009203510
Figure 2009203510

Claims (4)

  1. 化学組成が質量%で、
    Ni:0.010〜3.0%、
    P :0.010〜0.3%、
    Sn:0.010〜3.0%、
    Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.01%〜1.5%
    を各々含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、
    前記析出物を形成するりん化合物中に含まれるNiの原子量N(Ni)に対する、Co,Cr,Ti,Mn,Zr,FeおよびMgの各元素の原子量の合計N(M)の比N(M)/N(Ni)が、
    0.05≦N(M)/N(Ni)≦30
    である、高強度および高導電率を備えた銅合金。
  2. 化学組成が、更に質量%で、Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下を含む、請求項1に記載した銅合金。
  3. 化学組成が、更に質量%で、Ca,Ag,Cd,Be,Au,Ptのうち1種または2種以上:合計で1.0%以下を含む、請求項1または2に記載した銅合金。
  4. 化学組成中のHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルの各元素の合計量が質量%で0.1%以下に制限された、請求項1から3のいずれか1項に記載した銅合金。
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