JP6821290B2 - 電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金 - Google Patents

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本発明は、電子部品、特にコネクタ、バッテリー端子、ジャック、リレー、スイッチ、リードフレーム等に好適な電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金に関する。
従来、一般的に電気・電子機器用材料としては、鉄系材料の他、電気伝導性および熱伝導性に優れるリン青銅、丹銅、黄銅等の銅系材料も広く用いられている。近年、電気・電子機器の小型化、軽量化、高機能化、さらにこれに伴う高密度実装化に対する要求が高まり、これらに適用される銅系材料にも種々の特性が求められている。
部品の小型化に伴って材料の薄肉化が進行しており、材料強度の向上が求められている。リレーなどの用途では疲労特性の要求が高まっており、強度の向上が必要である。また、部品の小型化に伴って、曲げ加工される場合の条件が厳しくなっており、高い強度を持ちながら、なおかつ、曲げ加工性に優れていることが要求されている。
特許文献1では、特に0.2%耐力が980MPa以上、あるいは1000MPa以上という非常に高い強度を有し、かつ導電率30%IACS以上、より好ましくは34%以上を有し、耐応力緩和特性およびプレス加工性も良好であるCu−Ni−Co−Si系銅合金板材が提案されている。特許文献1によれば、この銅合金板材は、鋳片を高温で加熱保持する熱処理1、熱間圧延、冷間圧延、固溶化熱処理と、時効時にCo−Si系化合物の析出を促すための前処理的な熱処理とを含む熱履歴を付与する熱処理2、および低温域で行う時効処理を経て製造される。
特開2014−156623号公報 特開2011−231393号公報 特開2009−007666号公報
ところで、特許文献1に記載によれば、Cu−Ni−Co−Si合金において、時効温度によってNi−Si系化合物、Co−Si系化合物の二種類の化合物による析出物が形成される旨記載されており、組成が異なると析出物が転位に与える影響が異なることが推定される。すなわち析出物の組成によって導入される転位量が異なると考えられる。転位が不均一になることで曲げ加工時の応力が集中し、曲げ加工性が損なわれている可能性がある。
そこで、例えば特許文献2では、異方性の少ない{100}方位(Cube方位)とする結晶粒の割合を増大させることによって、曲げ加工性を向上できると同時に、曲げ加工性の異方性を顕著に改善できる旨記載され、具体的には、銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程の後に行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程の後に圧延率70%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、この第1の冷間圧延工程の後に加熱温度500〜650℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、この中間焼鈍工程の後に圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、この第2の冷間圧延工程の後に溶体化処理を行う溶体化処理工程と、この溶体化処理工程の後に400〜500℃で時効処理を行う時効処理工程を含む方法により実現している。
また、例えば特許文献3では、板表面における{111}面からの回折強度をI{111}、{200}面からの回折強度をI{200}、{220}面からの回折強度をI{220}、{311}面からの回折強度をI{311}、これらの回折強度の中の{200}面からの回折強度の割合をR{200}=I{200}/(I{111}+I{200}+I{220}+I{311})とした場合に、R{200}を一定以上とすることにより、曲げ加工性を改善する技術が記載され、具体的には最終再結晶熱処理の前に、加工組織が完全に再結晶しない程度の中間焼鈍と、それに加えて中間圧延を導入することで実現している。
今後も、コルソン銅合金に高強度かつ高導電に加えて曲げ性も求められること、および一般に強度と曲げ性とは両立が困難であり、信頼性の向上の観点から改善の余地が残されている。
本発明者が鋭意研究した結果、Cu−Ni−Co−Si合金において、結晶粒径のばらつきを抑えることができれば、転位が一様になり、曲げ加工時の応力が分散されることになり、曲げ加工性の向上が期待されるという観点から、最適な溶体化処理条件を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)3.0〜4.5質量%のNi、および0.1〜1.0質量%のCoを含有し、Coに対するNiの濃度(質量%)比(Ni/Co)が3.5〜30になるように調整し、かつ、Siを(Ni+Co)/Si質量比が3〜5となるように含有し、ならびに残部がCuおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な断面において電子後方散乱回折測定を行って、方位差5°以上を結晶粒界とみなしたときの結晶粒径の変動係数が30%以下である電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金。
(2)更にFe、Mg、Sn、Zn、B、P、Cr、Zr、Ti、AlおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種を総計で最大2.5質量%含有する(1)に記載の合金。
(3)粒径が5〜30nmの第二相粒子の個数の平均が、0.5×109個/mm2以上である、(1)または(2)に記載の合金。
(4)圧延方向に平行な方向での0.2%耐力が900MPa以上であり、かつ、導電率が30%IACS以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の合金。
(5)曲げ半径(R)/板厚(t)=1.0としてBadway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)でW曲げ試験したときの曲げ部表面の平均粗さRaが1.0μm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の合金。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の合金を備えた電子部品。
本発明によれば、コルソン銅合金に高強度かつ高導電に加えて、一般に強度の両立が困難である曲げ性も付与された信頼性が向上した電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金が提供される。
以下、本発明に係る電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金の一実施形態について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
(1)基材の組成
先ず、合金組成について説明する。本発明の銅合金は、Cu−Ni−Co−Si合金である。なお、本明細書では、Cu−Ni−Co−Siの基本成分にFe、Mg、Sn、Zn、B、P、Cr、Zr、Ti、AlおよびMnなどのその他の合金元素を添加した銅合金も、包括的にCu−Ni−Co−Si合金と称する。
Niは、後述のCo、Siとともに、Ni−Co−Si系析出物を形成して、銅合金板材の強度と導電性を向上させる効果を有する。Ni含有量が小さすぎる場合には、この効果を十分に発揮させるのが困難である。そのため、Ni含有量は、3.0質量%以上にするのが好ましく、3.2質量%以上にするのが更に好ましく、3.4質量%以上にするのが一層好ましい。一方、Ni含有量が大きすぎると、強度向上効果が飽和するうえ、導電率が低下する。また、粗大な析出物が生成し易く、曲げ加工時の割れの原因になる。そのため、Ni含有量は、4.5質量%以下にするのが好ましく、4.1質量%以下にするのが更に好ましい。
Coは、Ni、Siとともに、Ni−Co−Si系析出物を形成して、銅合金板材の強度と導電性を向上させる効果を有する。Co含有量が小さすぎる場合には、この効果を十分に発揮させるのが困難である。そのため、Co含有量は、0.1質量%以上にするのが好ましく、0.2質量%以上にするのが更に好ましく、0.3質量%以上にするのが一層好ましい。一方、Coの融点はNiよりも高いので、Co含有量が大きすぎると、完全固溶は困難であり、未固溶の部分は強度に寄与しない。そのため、Co含有量は、1.0質量%以下にするのが好ましく、0.8質量%以下にするのが更に好ましい。
また、結晶粒径のばらつきを抑えるという観点から、Ni/Co濃度(質量%)比が3.5〜30、好ましくは5〜15となるように調整しておくとよい。
Siは、Ni、Coとともに、Ni−Co−Si系析出物を生成する。但し、合金中のNi、CoおよびSiは、時効処理によって全てが析出物になるとは限らず、ある程度はCuマトリックス中に固溶した状態で存在する。固溶状態のNi、CoおよびSiは、銅合金板材の強度を若干向上させるが、析出状態と比べてその効果は小さく、また、導電率を低下させる要因になる。そのため、Siの含有量は、一般的には、できるだけ析出物(Ni+Co)2Siの組成比に近づけるのが好ましい。すなわち、(Ni+Co)/Si質量比を、約4.2を中心として3〜5に調整するのが一般的であり、Siは(Ni+Co)/Si質量比がこの範囲となるように添加される。
本発明の銅合金板材には、必要に応じて、Fe、Mg、Sn、Zn、B、P、Cr、Zr、Ti、AlおよびMnなどを添加してもよい。例えば、SnとMgは耐応力緩和特性の向上効果があり、Znは銅合金板材のはんだ付け性および鋳造性を改善する効果があり、Fe、Cr、Mn、Ti、Zr、Alなどは強度を向上させる作用を有する。そのほかに、Pは脱酸効果を有し、Bは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性を向上させる効果を有する。ただし、これら添加元素の量が大きすぎると、製造性が大きく損なわれる。そこで、合計で0〜2.5質量%含有することができる。また、強度、導電率、曲げ性のバランスを考慮すると、上記元素の1種以上を総量で0.2〜1.0質量%含有させることが好ましい。なお、添加元素ごとには、耐応力緩和特性、強度、はんだ付け性、鋳造性、熱間加工性の向上などのバランスを考慮して、合計量を超えない範囲で、Znは0.1質量%以上2.0質量%以下含有させることができ、SnおよびCrは0.1質量%以上1.0質量%以下含有させることができ、Fe、MgおよびMnは0.1質量%以上0.5質量%以下含有させることができ、B、P、Zr、TiおよびAlは0.01質量%以上0.3質量%以下含有させることができる。
(2)結晶粒径
本発明の合金は、結晶粒径の相対的なばらつきが小さいことが特徴である。このばらつきを、以下の方法で測定した平均結晶粒径と標準偏差とから標準偏差/平均粒径×100から算出される変動係数を用いて評価し、この値を30%以下、好ましくは20%以下とする。
なお、析出物の粒径測定は、圧延方向に平行な断面において電子後方散乱回折測定を行って、方位差5°以上を結晶粒界とみなしたときの結晶粒径として行う。
(3)強度および導電率
本発明の合金は、高強度であり、かつ、高導電率であり、電子部品、特にコネクタ、バッテリー端子、ジャック、リレー、スイッチ、リードフレーム等に好適である。
ここで、強度を、引張方向が圧延方向と平行になるように、プレス機を用いてJIS 13B号試験片を作製し、JIS−Z2241に従ってこの試験片の引張試験を行なうことで測定した圧延平行方向の0.2%耐力(YS)として評価する。上述した用途の観点から、0.2%耐力は、900MPa以上であることが好ましく、特に950MPa以上である。
また、導電率を、JIS H 0505に準拠し、4端子法にて測定した導電率(EC:%IACS)として評価する。上述した用途の観点から、この導電率は、30%IACS以上であることが好ましく、特に35%IACS以上である。
(4)曲げ性表面粗さ
本発明においては、曲げ性を、W曲げ試験したときの曲げ部表面の平均粗さRaとして評価する。
すなわち、曲げ半径(R)/板厚(t)=1.0としてBadway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)でW曲げ試験したときの曲げ部表面の平均粗さRaが、小さいほど曲げ加工時の応力が分散され、曲げ加工性の向上が期待される。この観点から、この曲げ部表面の平均粗さRaは1.0μm以下であることが好ましい。
(5)析出物の個数濃度
本発明においては、析出物を制御することにより強度、導電率および曲げ性の改善を課題としている。そこで、その析出物の個数を評価することが好ましい。すなわち、析出物の個数濃度を、粒径が5〜30nmの第2相粒子の個数をカウントし、観察面積で除し、個数濃度(×109個/mm2)を算出し、同様に20視野(各視野1μm×1μm)について算出して、その平均値として評価する。
具体的には、圧延方向に平行な断面を集束イオンビーム(FIB)にて切断することで断面を露出させた後、走査型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社 型式:JEM−2100F)を用いて測定される析出物の個数濃度を求める。この析出物の個数濃度は、十分な強度(0.2%耐力)の確保の観点から、0.5×109個/mm2以上であることが好ましく、さらに1.5×109個/mm2以上であることが好ましい。
ここで、第二相粒子とは、溶解鋳造の凝固過程に生ずる晶出物及びその後の冷却過程で生ずる析出物、熱間圧延後の冷却過程で生ずる析出物、溶体化処理後の冷却過程で生ずる析出物、及び時効処理過程で生ずる析出物のことを言い、通常はCo−Si系、またはNi−Si系の組成をもつが、本発明の場合Ni−Co−Si系の組成をもつことが典型的である。第二相粒子の大きさは、電子顕微鏡による観察で圧延方向に平行な断面を組織観察したとき、析出物に包囲されることのできる最大円の直径として定義される。
(6)用途
本発明に係るCu−Ni−Co−Si合金は、種々の伸銅品、例えば板、条、管、棒及び線に加工することができる。本発明の銅合金は、限定的ではないが、コネクタ、バッテリー端子、ジャック、リレー、スイッチ、リードフレーム等の電子部品材料として好適である。
(7)製造方法
本発明の実施形態に係る電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金は、インゴットの溶解鋳造(工程1)−均質焼鈍、熱間圧延、急冷(工程2)−冷間圧延、溶体化処理(工程3)−時効処理(工程4)を経て製造される。
<インゴット製造>
大気溶解炉を用い、電気銅、Ni、Co、Si等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。Ni、Co、Si以外の添加元素はFe、Mg、Sn、Zn、B、P、Cr、Zr、Ti、Al及びMnからなる群から1種または2種以上を合計で0〜2.5質量%含有するように添加する。
<均質化焼鈍及び熱間圧延>
インゴット製造時に生じる凝固偏析や晶出物は粗大なので均質化焼鈍でできるだけ母相に固溶させて小さくし、可能な限り無くすことが望ましい。これらは曲げ加工性に悪影響を与え、母相に固溶させることにより曲げ割れの防止に効果があるからである。
具体的には、インゴット製造工程後には、900〜1050℃に加熱して3〜24時間均質化焼鈍を行った後に、熱間圧延を実施する。元厚から全体の圧下率が90%までのパスは700℃以上とするのが好ましい。その後、水冷にて室温まで急速に冷却させる。
<冷間圧延および溶体化処理>
その後、加工度(圧下率)50%以上、好ましくは70%以上の条件にて冷間圧延を行った後に、溶体化処理を行う。具体的には、900〜1050℃に加熱して30秒〜10分加熱する。溶体化処理ではNi、Co、Siをはじめとする添加元素を固溶させることを目的としている。そのため、加熱温度や加熱時間に加えて、昇温速度及び冷却速度も制御することが肝要である。溶体化処理前の昇温時において、Coを含有する第2相粒子の析出に影響する600〜700℃の昇温速度は50℃/秒以上に制御する。一方、溶体化処理の後の同温度範囲における冷却速度も50℃/秒以上に制御する。その他の温度領域についても昇温速度及び冷却速度は極力速くすることが好ましい。また、このとき材料に付与する張力を1MPa以上10MPa以下に調整することで、第二相粒子の析出をより都合よく制御することが可能になり、圧延方向に平行な断面において電子後方散乱回折測定を行って、方位差5°以上を結晶粒界とみなしたときの結晶粒径の変動係数を30%以下とすることができ、粒径5〜30nmの析出物の個数濃度を十分に確保でき、十分な強度を付与することを可能にする。
このように、溶体化処理中の600〜700℃における昇温及び冷却速度を速くすることでCo−Si系化合物の析出が抑制され、結果としてNi−Co−Si系化合物の析出物が生成されたものと考えられる。また溶体化処理中の材料の張力を従来の20MPa程度よりも低くすることで高強度化した。このメカニズムは不明であるが、前工程にて冷間圧延を行った場合に導入された歪がこの昇温速度の制御により一様に解放されることで、その後の時効処理によって高強度化したのではないかと考えられる。
<時効処理>
溶体化処理に引き続いて時効処理を行う。材料温度400〜550℃で5〜25時間加熱することが好ましく、材料温度420〜500℃で10〜20時間加熱することがより好ましい。時効処理は、酸化被膜の発生を抑制するためにAr、N2、H2等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
<最終の冷間圧延>
時効処理に引き続いて最終の冷間圧延を行う。最終の冷間加工によって強度を高めることができるが、本発明において意図されるような高強度および曲げ加工性の良好なバランスを得るためには圧下率を15〜45%、好ましくは20〜40%とすることが望ましい。
<歪取焼鈍>
最終の冷間圧延に引き続いて、歪取焼鈍を行う。材料温度350〜650℃で1〜3600秒間加熱することが好ましく、材料温度350〜450℃で1500〜3600秒、材料温度450〜550℃で500〜1500秒、材料温度550〜650℃で1〜500秒間加熱することがより好ましい。
なお、当業者であれば、上記各工程の合間に適宜、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗等の工程を行なうことができることは理解できるだろう。
以下に本発明の実施例(発明例)を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
表1に記載の各添加元素を含有し、残部が銅及び不純物からなる銅合金を、高周波溶解炉にて1300℃で溶製し、厚さ30mmのインゴットに鋳造した。次いで、このインゴットを1000℃で3時間加熱後、板厚10mmまで熱間圧延し、熱間圧延終了後は速やかに冷却した。次いで、表面のスケール除去のため厚さ9mmまで面削を施した後、冷間圧延により厚さ0.120〜0.175mmの板とした。次に950℃で溶体化処理を120秒行った。このときの600〜700℃の温度範囲における昇温速度及び冷却速度、張力は表1の通りである。その後、表1の条件で時効処理、冷間圧延を加え、板厚0.1mmとした。最後に、材料温度400℃で2000秒間の歪取り焼鈍を加えた。
Figure 0006821290
作製した製品試料について、次の評価を行った。評価の結果を表2に示す。
(1)0.2%耐力
引張方向が圧延方向と平行になるように、プレス機を用いてJIS 13B号試験片を作製した。JIS−Z2241に従ってこの試験片の引張試験を行ない、圧延平行方向の0.2%耐力(YS)を測定した。
(2)導電率
JIS H 0505に準拠し、4端子法で導電率(EC:%IACS)を測定した。
(3)曲げ部の表面粗さ
JIS−H3130(2012)に従いW曲げ試験をBadway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)、r/t=1.0(t=0.1mm)で実施し、この試験片の曲げ部の外周表面を観察した。観察方法はレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて曲げ部の外周表面を撮影し、付属のソフトウェアを用いて平均粗さRa(JIS−B0601:2013に準拠)を測定し、比較した。なお、曲げ加工前の試料表面はコンフォーカル顕微鏡を用いて観察したところ凹凸は確認できず、平均粗さRaはいずれも0.2μm以下であった。
曲げ加工後の表面平均粗さRaが1.0μm以下の場合を○、Raが1.0μmを超える場合を×と評価した。
(4)粒径5〜30nmの析出物の個数濃度
圧延方向に平行な断面を集束イオンビーム(FIB)にて切断することで断面を露出させた後、走査型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社、型式:JEM−2100F)を用いて析出物の個数濃度を測定した。
具体的には、加速電圧200kV、観察倍率100万倍とし、粒径が5〜30nmの第2相粒子の個数をカウントし、観察面積で除し、個数濃度(×109個/mm2)を算出した。同様に20視野について測定を行い、その平均値を個数濃度とした。
(5)結晶粒径の変動係数
得られた銅合金材料について、圧延方向に平行な断面を集束イオンビーム(FIB)にて切断することで断面を露出させた後、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子後方散乱回折)測定を行った。
・観察視野:200μm×200μm
・ステップ間隔:0.5μm
結晶粒径の測定にはEBSDに付属のOIM Analysis(Ver.5.3)を用いて結晶粒解析を行った。方位差5°以上を結晶粒界とみなし、平均粒径及び標準偏差を算出し、変動係数(標準偏差/平均粒径×100)を求めた。
Figure 0006821290
発明例1〜24は、いずれも結晶粒径の変動係数も30%以下であり、析出物の粒径の相対的なばらつきが小さく、さらに0.2%耐力が900MPa以上であり、導電率が30%IACS以上であり、曲げ部の表面粗さが1.0μm以下と良好であった。これらの銅合金材料は、高強度、高導電率、高い曲げ加工性のバランスに優れたものであるといえる。
比較例1〜18は、それぞれ第二相粒子の析出を十分に制御できなかったと考えられる具体例である。
比較例1は、溶体化処理時の昇温速度が50℃/sよりも小さく、また、比較例2は、溶体化処理時の冷却速度が50℃/sより小さい具体例である。比較例3、4は、溶体化処理時に合金材料に付与する張力が小さすぎる具体例(比較例3)および大きすぎる具体例(比較例4)である。比較例1〜4はいずれも、結晶粒径の変動係数が大きすぎてしまい、十分な曲げ加工性を発揮させることが難しく、特に比較例3、4ではさらに強度も低いことが分かった。
比較例5、6は、溶体化処理後の時効処理における加熱条件が、400〜550℃から外れる具体例である。その結果、強度に寄与すると考えられる粒径5〜30nmの析出物の個数濃度において十分な量を確保できず、十分な強度を発揮させることが難しく、さらに時効処理の温度が低すぎると十分な導電率を発揮させることも難しいことが分かった。
比較例7は、銅合金の成分中のNi含有量が3.0質量%よりも小さい具体例である。Ni含有量が小さいと、十分な強度を発揮させることが難しいことが分かった。
比較例8は、銅合金の成分中のNi含有量が4.5質量%を超える具体例である。Ni含有量が大きいと、熱間圧延時に割れが生じてしまい、製品が得られなかった。
比較例9は、銅合金にCoが含有されない具体例であり、比較例10は、銅合金の成分中のCo含有量が1.0質量%を超える具体例である。Co含有量が適正な範囲にないと、十分な曲げ加工性を発揮させることが難しいことが分かった。
比較例11、12は、銅合金中の(Ni+Co)/Si質量比が大きすぎる具体例(比較例11)、および小さすぎる具体例(比較例12)である。(Ni+Co)/Si質量比が適正な範囲にないと、粒径5〜30nmの析出物の個数濃度が十分なものとならず、強度および導電率の両方の面から劣るという結果となった。
比較例13、14は、銅合金中の第二相粒子の析出前のNi/Co濃度比が小さすぎる具体例(比較例13)、および大きすぎる具体例(比較例14)である。比較例13、14はいずれも、結晶粒径の変動係数が大きすぎてしまい、十分な曲げ加工性を発揮させることが難しいことが分かった。
比較例15は、Ni、Co、Si以外の第三の添加元素の総量が2.5を超える具体例である。第三の添加元素が多すぎると、結晶粒径の変動係数が大きすぎてしまい、曲げ加工性および導電率において劣るという結果となった。
比較例16〜18は、溶体化処理時に合金材料に付与する張力が大きい具体例である。
比較例18は、特許文献3の態様を代表する具体例である。結晶粒径の変動係数が30%以上となり、粒径5〜30nmの析出物の個数濃度も小さく、十分な強度を発揮させることが難しいことが分かった。
比較例17は、比較例18の条件においてさらに溶体化処理時の冷却速度を50℃/sより小さくし、特許文献2の態様を代表する具体例である。結晶粒径の変動係数が30%以上となり、十分な曲げ加工性を発揮させることが難しいことが分かった。
比較例16は、比較例17の条件においてさらに溶体化処理後の時効処理を所定の範囲よりも低い温度条件で行った、特許文献1の態様を代表する具体例である。この場合においても、結晶粒径の変動係数が30%以上となり、十分な曲げ加工性を発揮させることが難しいことが分かった。

Claims (5)

  1. 3.0〜4.5質量%のNi、および0.1〜1.0質量%のCoを含有し、Coに対するNiの濃度(質量%)比(Ni/Co)が3.5〜30になるように調整し、かつ、Siを(Ni+Co)/Si質量比が3〜5となるように含有し、ならびに残部がCuおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な断面において電子後方散乱回折測定を行って、方位差5°以上を結晶粒界とみなしたときの結晶粒径の変動係数が30%以下であり、粒径が5〜30nmの第二相粒子の個数の平均が、0.5×10 9 個/mm 2 以上である電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金。
  2. 更にFe、Mg、Sn、Zn、B、P、Cr、Zr、Ti、AlおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種を総計で最大2.5質量%含有する請求項1に記載の合金。
  3. 圧延方向に平行な方向での0.2%耐力が900MPa以上であり、かつ、導電率が30%IACS以上である、請求項1又は2に記載の合金。
  4. 曲げ半径(R)/板厚(t)=1.0としてBadway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)でW曲げ試験したときの曲げ部表面の平均粗さRaが1.0μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の合金。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の合金を備えた電子部品。
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