JP5140045B2 - 電子材料用Cu−Ni−Si系合金板又は条 - Google Patents

電子材料用Cu−Ni−Si系合金板又は条 Download PDF

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Description

本発明は電子材料用Cu−Ni−Si系合金板又は条に関し、とりわけリードフレームとして適したCu−Ni−Si系合金板又は条に関する。
リードフレームは半導体デバイスの内部配線として使われる金属の薄板である。リードフレームの材料としては、導電性と熱放散性の観点から従来のFe系素材(Fe−42%Niなど)に代わり銅合金が多用されている。リードフレームに使用される銅合金には、高強度及び高導電率という基本的特性に加えて、繰り返し曲げ加工性、プレス加工性、エッチング性、半田付け性、平坦性及びめっき性等に優れていることが要求される。
従来、このような特性を向上させるべくリードフレーム用の銅合金の製品開発が行われてきた。以下にその例を挙げる。
特公昭62−31059号公報(特許文献1)の請求項1には、Ni:1.0〜3.5wt%、Si:0.2〜0.9wt%、Mn:0.02〜1.0wt%、Zn:0.1〜5.0wt%、Sn:0.1〜2.0wt%、Mg:0.001〜0.01wt%を含有し、さらに、Cr、Ti、Zrのうちから選んだ1種または2種以上を0.001〜0.01wt%含有し、残部実質的にCuからなることを特徴とする半導体用リードフレーム材が開示されている。
該文献の請求項2には、上記のリードフレーム材の製造方法として、上記組成を有する銅合金の鋳塊を熱間圧延後、600℃以上の温度から5℃/秒以上の速度で冷却し、冷間加工後400〜600℃の温度で5分〜4時間の焼鈍を行った後、調質仕上圧延を行ってから、400〜600℃の温度で5〜60秒の短時間の焼鈍を行う方法が開示されている。最終工程の400〜600℃の温度で5〜60秒の短時間の焼鈍は、圧延により低下した伸びを回復させると共に残留応力を低減し、かつ、均一化するためであるとされる。
該文献によれば、上記のリードフレーム材は高い強度及び高いスティフネス強度を有し、さらに、優れた半田の耐熱剥離性を有し、その上、熱間加工性にも優れているとされる。
特開平7−258805号公報(特許文献2)には、Cu−Cr−Zr合金にTi及びFeを添加するか、更にはZn、Sn、In、Mn、P、MgあるいはSiの1種又は2種以上をも添加すると共に、それら各成分の含有量割合を厳密に調整した銅合金を素材とし、その溶体化処理条件を規制して結晶粒径を制御した上で、更に特定条件での冷間加工、時効、最終冷間加工及び最終焼鈍を施すと、強度、導電率、曲げ加工性、ばね特性、Agめっき性、半田接合部の信頼性等の諸性質が一段と改善された材料を得ることができることが記載されている(段落0009)。
そして、その請求項1には、重量割合にてCr:0.05〜0.40%、Zr:0.03〜0.25%、Fe:0.10〜1.80%、Ti:0.10〜0.80%を含有すると共に、「0.10%≦Ti≦0.60%」ではFe/Ti重量比が0.66〜2.6を満足し、また「0.60%<Ti≦0.80%」ではFe/Ti重量比が1.1〜2.6を満足していて残部がCu及び不可避的不純物から成る銅合金の素材に、1)950℃未満の温度での溶体化処理、2)50〜90%の加工度での冷間加工、3)300〜580℃の温度での時効処理、4)16〜83%の加工度での冷間加工、5)350〜700℃の温度での焼鈍をこの順に順次施すことを特徴とする、電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法が記載されている。5)は歪取り焼鈍であり、最終冷間加工の後、ばね性を向上させると共に延性を回復させることが記載されている。
特開2003−286527号公報(特許文献3)は、十分な寸法精度と形状特性を兼ね備えた銅又は銅合金を提供することを目的として、銅又は銅合金をその焼鈍温度で加熱処理したときの、該加熱処理の前後における収縮率が0.01%以下であり、且つ板形状であって急峻度(平坦度を表すパラメータ)が0.5%以下であることを特徴とする銅又は銅合金を開示している(請求項1)。
該銅又は銅合金の製造工程として、一般の銅及び銅基合金と同様にして最終板厚まで圧延後、必要に応じてテンションレベラー等による形状矯正を行い、その後連続焼鈍炉による低温焼鈍を行うが、その際の炉内張力が連続焼鈍炉通板前の材料の0.2%耐力の1.0〜8.5%の範囲で設定し、通板を行うことが記載されている(段落0020)。
また、特開2009−074125号公報(特許文献4)では、良好な強度および導電性を有するとともに、めっき性に優れた電気・電子部品用銅合金及びその製造方法が記載されている。ここには、表面の結晶粒度と介在物の存在がめっき性に大きく影響すること(段落0007)、最終製品の圧延方向に垂直な断面において結晶の厚さ方向の径は1μm以下とすること、圧延方向に垂直な断面において5μm以上の粗大な介在物は1個/cm2以下とすること(段落0033)などが教示されている。当該銅合金の製造方法については、所定の組成を有する銅基合金を鋳造後に、800℃以上950℃以下の温度において熱間圧延し、同時に厚さ方向の結晶粒径を10μm以下に再結晶させた後、350℃以上580℃以下の温度において30分以上24時間以下の時効処理を施し、更に冷間圧延と焼鈍を繰り返す銅合金の製造方法において、再結晶後の加工率が97%以上とすることが記載されている(請求項3等)。また、段落0030には、時効処理後には冷間圧延と550℃以下の温度における歪除去のための焼鈍を繰り返して最終製品に仕上げることが記載されている。
特公昭62−31059号公報 特開平7−258805号公報 特開2003−286527号公報 特開2009−074125号公報
このように、従来は銅合金の製造過程で蓄積された残留応力を最終段階の歪取り焼鈍で除去し、最終的な特性を調整していた。しかしながら、残留応力の軽減とともに強度まで低下してしまうため、残留応力を軽減しながら強度を同時に保つことは困難であった。その対策として、歪取り焼鈍を軽減して残留応力を高くし、強度を保つことも考えられるが、この場合、歪取り焼鈍を軽減したためにばね限界値が低くなり、強度が高くても、内部の転位密度が高い状態で応力を負荷することになるため、プレス加工時に転位が移動できず、塑性変形してしまう。
そこで、本発明は強度、平坦性及びばね限界値のすべてをバランス良く兼備した銅合金板又は条を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、銅合金板又は条を製造する最終段階で行われる歪取り焼鈍の前段階において、残留応力の原因となる操作をできるだけ回避しながら超微細な結晶粒を作り込むと、歪取り焼鈍時には従来技術と比べて少量の残留応力を除去するだけでよいので、歪取り焼鈍後にも結晶粒は大きくならず、且つ大きさのばらつきも少なく、強度を残存させることができることを見出した。また、超微細な結晶粒と低残留応力の相乗効果によってばね限界値も高い次元で実現できることが分かった。このようにして得られた銅合金板又は条は結晶粒径がナノオーダーであり且つ残留応力も小さいという特徴を有する。
上記知見を基に完成した本発明は一側面において、Ni:0.4〜6.0質量%、Si:0.1〜2.0質量%を含有し、残部Cu及び不可避的不純物から構成される電子材料用銅合金板又は条であって、圧延方向に平行な断面における板厚方向の平均結晶粒径(mGS)が200nm以下であり、表面から1μmの深さにおける残留応力の絶対値が100MPa以下である電子材料用銅合金板又は条である。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は一実施形態において、圧延方向に平行な断面において、1μm×1μmの視野中の板厚方向の最小結晶粒径(GSmin)に対する板厚方向の最大結晶粒径(GSmax)の比であるGSmax/GSminが平均で10以下である。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は別の一実施形態において、粒径が10〜1000nmの範囲にある第二相粒子の平均粒径が20〜200nmである。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は更に別の一実施形態において、ばね限界値が400〜900MPaである。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は更に別の一実施形態において、0.2%耐力(YS)が600〜1000MPaである。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は更に別の一実施形態において、更にCr、Co、Mg、Mn、Fe、Sn、Zn、Al及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で2.0質量%まで含有する。
本発明は別の一側面において、本発明に係る銅合金板又は条を加工して得られた電子部品である。
本発明に係る電子部品は一実施形態において、リードフレームである。
本発明に係る銅合金板又は条は、結晶粒が超微細であるために高強度を有することができ、残留応力が小さいために平坦性にも優れている。更に、超微細な結晶粒と低残留応力の相乗効果により高いばね限界値も有している。すなわち、本発明によれば強度、平坦性及びばね限界値のすべてをバランス良く兼備した銅合金板又は条が得られる。
本発明に係る銅合金はコルソン系合金と一般に呼ばれるCu−Ni−Si系合金である。Cu−Ni−Si系合金は析出硬化型銅合金の一種であり、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細なNi−Si系金属間化合物粒子を均一に分散し、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性が向上する。このため、強度、ばね限界値などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導性、熱伝導性が良好な材料が得られる。
<Ni及びSiの添加量>
Ni及びSiは、適当な熱処理を施すことにより金属間化合物としてNi−Si化合物粒子(Ni2Si等)を形成し、導電率を劣化させずに高強度化が図れる。
SiやNi添加量は少なすぎると所望の強度が得られず、多すぎると高強度化は図れるが導電率が著しく低下し、熱間加工性が低下する。また、Ni中には水素が固溶することがあり、溶解鋳造時のブローホールの原因となったりするため、Ni添加量を多くすると中間の加工において破断の原因となる可能性がある。SiはCと反応したり、Oと反応したりするため、添加量が多いと極めて多くの介在物を形成し、曲げの際に破断の原因になる。
そこで、適切なSi添加量は0.1〜2.0質量%であり、好ましくは0.1〜1.5%である。適切なNi添加量は0.4〜6.0質量%であり、好ましくは1.0〜5.0%質量%である。
Ni−Si化合物粒子の析出物は化学量論組成で一般に構成されており、NiとSiの質量比を金属間化合物であるNi2Siの質量組成比(Niの原子量×2:Siの原子量×1)に近づけることにより、すなわちNiとSiの質量比をNi/Si=3〜7、好ましくは3.5〜5とすることにより良好な電気伝導性が得られる。Niの比率が上記質量組成比よりも高いと導電率が低下しやすく、Siの比率が上記質量組成比よりも高いと粗大なNi−Si晶出物により熱間加工性が劣化しやすい。
<その他の元素の添加量>
本発明に係る銅合金板又は条は、Ni及びSiに加えて、Cr、Co、Mg、Mn、Fe、Sn、Zn、Al及びPから選択される1種又は2種以上を合計で1.0質量%含有することができ、必要に応じて2.0質量%まで含有することもできる。以下、各元素の作用及び好適な含有量について説明する。
(1)Cr、Co
Cr、CoはCu中に固溶し、溶体化処理時の結晶粒の粗大化を抑制する。また合金強度が底上げされる。時効処理時にはシリサイドを形成して析出し、強度及び導電率の改善に寄与することもできる。これらの添加元素は導電率をほとんど低下しないことから積極的に添加しても良いが、添加量が多い場合は晶出物の生成量が多くなり、晶出物を起因とする割れが発生しやすい。そこで、Cr及びCoは一方又は両方を合計で1.0質量%まで添加するのがよく、0.005〜1.0質量%添加するのが好ましい。
(2)Mg、Mn
MgやMnはOと反応するため溶湯の脱酸効果が得られる。また、一般的に合金強度を向上させる元素として添加される元素である。最も有名な効果としては応力緩和特性の向上であり、いわゆる耐クリープ特性である。近年、電子機器の高集積化にともない、高電流が流れ、またBGAタイプのような熱放散性が低い半導体パッケージにおいては、熱により素材が劣化する恐れがあり、故障の原因となる。特に、車載する場合はエンジンまわりの熱による劣化が懸念され、耐熱性は重要な課題である。これらの理由で積極的に添加しても良い元素である。ただし、添加量が多すぎると曲げ加工性への悪影響が無視できなくなる。そこで、Mg及びMnは一方又は両方を合計で0.5質量%まで添加するのがよく、0.005〜0.4質量%添加するのが好ましい。
(3)Sn
SnはMgと同様の効果がある。しかしMgと異なり、Cu中に固溶する量が多いため、より耐熱性が必要な場合に添加される。しかしながら、量が増えれば導電率は著しく低下する。よって、Snは0.5質量%まで添加するのがよく、0.1〜0.4質量%添加するのが好ましい。ただし、MgとSnを共に添加するときは導電率への悪影響を抑えるために両者の合計濃度を1.0質量%までとし、好ましくは0.8質量%までとするのが望ましい。
(4)Zn
Znははんだ脆化を抑制する効果がある。ただし、添加量が多いと導電率が低下するので、0.5質量%まで添加するのがよく、0.1〜0.4質量%添加するのが好ましい。
(5)Fe、Al、P
これらの元素も合金強度を向上させることのできる元素である。必要に応じて添加すればよい。ただし、添加量が多いと添加元素に応じて導電率等の特性が悪化するので、0.5質量%まで添加するのがよく、0.005〜0.4質量%添加するのが好ましい。
上記のCr、Co、Mg、Mn、Fe、Sn、Zn、Al及びPは合計で2.0質量%を超えると製造性を損ないやすいので、好ましくはこれらの合計は2.0質量%以下とし、より好ましくは0.5質量%以下とする。
<残留応力>
本発明に係る銅合金板又は条は、残留応力が小さいことが特徴の一つである。残留応力は外力や熱勾配のない状態で素材の内部に存在している応力である。残留応力は熱処理や冷間加工などによる不均一な変形の結果発生する。残留応力が残っていると、平坦な条や板を得ることが困難となる。平坦性が損なわれるとプレス加工したときの寸法精度に悪影響を与える。一般的には圧延材の内部に広く残留応力が分布しており、圧延材の場合はごく表層付近の残留応力の勾配が高いことが多い。
そこで、本発明では表面から1μmの深さにおける残留応力の絶対値を100MPa以下に規定している。残留応力の絶対値は好ましくは50MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下であり、更により好ましくは20MPa以下である。従って、本発明に係る銅合金は、例えば0〜100MPa、典型的には5〜50MPaの残留応力の絶対値を有する。絶対値としたのは、残留応力は引張りと圧縮の二つがあるためであり、その絶対値が小さいほど平坦性が向上する。
本発明において、「表面から1μmの深さにおける残留応力の絶対値」とは以下の方法で測定したものをいうこととする。まず、銅合金板又は条から幅20mm×長さ200mmの大きさの試験板を切り出す。圧延方向を長手方向にする。試験片の片面の表層をエッチング液を用いて徐々に除去しながら、各深さにおける残部試験片の長さ方向(x)及び幅方向(y)の曲率φx、φyを測定する。これを板厚が半分になるまで繰り返し実施する。曲率は試験片の反りを測定することで求める。試験片の反りを円周の一部と考え、この円に相当する半径の逆数を曲率とする。曲率は弦の長さと高さを測定すれば数学的に容易に求められる。その後、エッチング深さaと曲率の関係を図にプロットし、以下の式によって表面からa=1μmのエッチング深さにおける圧延方向(x)の残留応力の絶対値σx(a)を測定する。本方法はTreuting−Read法と呼ばれるよく知られた方法であり、例えば下記の参考文献に記載されている。
参考文献:米谷茂、「残留応力の発生と対策」、株式会社養賢堂、p.54−56、1975年
Figure 0005140045
<平均結晶粒径(mGS)>
本発明に係る銅合金板又は条は、結晶粒が超微細であることも特徴の一つである。超微細な結晶粒を得るためには、圧延加工度を大きくとって大きな歪を与えることで、結晶粒の界面積を増加させ、内部に転位を最大限蓄積させればよい。また、強度が結晶粒の−1/2乗に比例するというホールペッチ則が一般的に成り立つため、超微細な結晶粒であれば、高い強度も得られる。
しかしながら、従来の技術では、高い強度の作り込みと残留応力の原因となる操作の回避との両立が充分ではなく、歪取り焼鈍を実施するまでの製造工程中で残留応力がかなり蓄積されていたため、歪取り焼鈍を残留応力が所望のレベルにまで軽減する加熱条件で実施すると、熱の影響を受けて一部で再結晶が起こり、結晶粒が成長する又は粒界が消失する(又は結晶粒同士が融合する)ことによって、結晶粒が大きくなり、個々の結晶粒の大きさにばらつきも生じていた。一方、結晶粒の成長等を抑制する条件で歪取り焼鈍を実施すると、それまでに蓄積された残留応力が充分に除去されず、いずれにしても問題があった。
本発明に係る銅合金板又は条は、歪取り焼鈍までの製造工程において、残留応力の原因となる操作をできるだけ回避しながら超微細な結晶粒が作り込まれるので、最終段階で行われる歪取り焼鈍においては僅かの残留応力を除去するだけでよい。そのため、歪取り焼鈍の加熱条件を緩和することができ、前段階で作り込んだ超微細な結晶粒を維持しつつ、ばらつきの少ない均一な結晶粒が得られる。
具体的には、本発明に係る銅合金板又は条は、圧延方向に平行な断面における板厚方向の平均結晶粒径(mGS)が200nm以下である。200nmを上限としたのは200nmを超えると、圧延で作り込んだ超微細な結晶粒ではなく、歪取り過多となって一部で再結晶が起こり、結晶粒界が消滅することで大きくなった結晶粒が支配的となるため、強度は低下する傾向にあるからである。高強度を得る上では、平均結晶粒径(mGS)は100nm以下とするのが好ましく、75nm以下とするのがより好ましい。平均結晶粒径(mGS)の下限値には特になく、可能な限り微細な結晶粒とすることが望ましいが、25nm未満の結晶粒は工業的生産が難しくなるため、工業的生産を考慮すると25nm以上とするのが好ましい。
<最大結晶粒径(GSmax)/最小結晶粒径(GSmin)>
金属組織中の結晶粒が混粒、すなわち大きさの比率が異なる結晶粒が混在する場合、そこを起点として割れが生じやすくなる。すると、平均の結晶粒が十分小さいにも関わらず、全体の強度が低くなるという現象が生じ得る。そのため、結晶粒の大きさにばらつきが少なく、粒の揃った超微細な結晶粒が金属組織を占めているのが望ましい。
よって、本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は好ましい一実施形態において、圧延方向に平行な断面において、1μm×1μmの視野中の板厚方向の最小結晶粒径(GSmin)に対する板厚方向の最大結晶粒径(GSmax)の比であるGSmax/GSminが平均で10以下であり、より好ましくは5以下である。
以上のように、本発明においては、結晶粒の大きさを板厚方向の結晶粒径で議論したが、これは本発明に係る銅合金板又は条における結晶粒が冷間圧延によって圧延方向に長く変形し、圧延方向と板厚方向では結晶粒径が大きく異なってしまうことから、測定基準を明確にする趣旨である。
結晶粒の観察には、FIB(Focused ion beam)による断面でのSIM(Scanning Ion Microscope)像、SEM(Sanning Electron Microscope)像、又はTEM(Transmission Electron Microscope)像による明視野像観察が一般的である。これらの5〜50万倍での1視野において、圧延平行方向に延伸した結晶粒を観察する場合は、厚さ方向の結晶粒でのカウント数に比べて、圧延平行方向の結晶粒でのカウント数は少なくなる。すなわち、1視野内で厚さ方向及び圧延平行方向にある特定の線を引いて線内に入る結晶粒の大きさを測定する場合、圧延平行方向よりも厚さ方向にカウントする方が結晶粒の数も多く精度が高くなる。このような結晶粒観察の技法からも、厚さ方向の結晶粒に着目すべきである。
<第二相粒子>
本発明のような析出強化型銅合金では、母相の銅とは異なる組成の粒子である第二相粒子を主に時効処理時に析出させると、これが転位の移動を妨げるので素材の強度が上昇する。析出物が転位の移動の障害となる大きさは一般的に20〜200nm程度であり、実際に透過型電子顕微鏡にて観察すると転位と第二相粒子が絡み合った様子が観察される。
この範囲よりも小さい第二相粒子では、加工中に移動してきた転位によって析出物が分断(カッティング)されてしまうので、強度の上昇が期待できない。カッティングされた析出物の一部は銅中に拡散固溶し、導電率を低下させてしまう。導電率が低くなると大電流が流れたときに温度が上昇してしまう。また、第二相粒子が小さすぎる場合、蓄積される転位が増えすぎて歪取り焼鈍時の強度低下が著しい。従って、析出物は微細であれば良いというものでもなく、20nm程度の大きさが必要である。
200nmよりも第二相粒子が大きい場合は、転位の移動によってカッティングはされないが、転位の移動を抑制する効果は小さく、ほとんどの場合は転位がループを形成して通過してしまう。この場合は、前述のような拡散固溶が無い分、導電率の低下は抑えられる。しかしながら、転位密度の上昇は小さく、強度の上昇は期待できない。
よって、本発明に係る銅合金板又は条の一実施形態においては、粒径が10〜1000nmの範囲にある第二相粒子の平均粒径が20〜200nmである。第二相粒子の平均粒径を斯かる範囲に設定することによって、析出硬化による強度向上の効果を十分に享受することができる。また、斯かる粒径範囲の第二相粒子は転移の移動を抑制することができるので、銅合金板又は条を製造する最終段階で行われる歪取り焼鈍における強度低下を抑制する効果がある。粒径が10〜1000nmの範囲にある第二相粒子の平均粒径は好ましくは20〜150nmである。
本発明において、第二相粒子とは主にシリサイドを指すが、これに限られるものではなく、溶解鋳造の凝固過程に生ずる晶出物及びその後の冷却過程で生ずる析出物、熱間圧延後の冷却過程で生ずる析出物、溶体化処理後の冷却過程で生ずる析出物、及び時効処理過程で生ずる析出物のことを言う。平均粒径を算出する際に使用する第二相粒子の粒径の範囲を10〜1000nmに限定したのは、10nm未満の粒子はカウントするのが困難であり、また、1000nm(1μm)を超える粗大な晶出物や析出物は数が少なく、析出による強度向上効果も小さく、また、偶然混入した粗大な外来物までカウントしかねないからである。
第二相粒子の粒径や個数は、材料の圧延方向に対して平行な断面をエッチング後、FIB(Focused ion beam)によるSIM像、SEM像、又はTEM像により測定することができる。本発明において第二相粒子の粒径とは、かかる条件で粒子観察したときの、該粒子を取り囲む最小円の直径のことを指す。
<0.2%耐力(YS)>
0.2%耐力(YS)を大きくし過ぎると、プレス金型が磨耗しやすくなって量産時に歩留まりが低下しやすい。一方、0.2%耐力を小さくし過ぎると、打ち抜きによる変形が大きく、寸法精度が劣り、プレス加工性が悪くなる。
そのため、本発明に係る銅合金板又は条の一実施形態においては、0.2%耐力(YS)が600〜1000MPaであり、典型的には600〜800MPaである。この程度の0.2%耐力があれば、プレス加工時に良好な打ち抜き性を示すことができる。
<ばね限界値(Kb値)>
ばね限界値は表面の曲げ応力を示すものであり、これが高いとプレス加工時に塑性変形しにくい。ばね限界値と0.2%耐力は相関があると言われているが、単に0.2%耐力が高いだけではばね限界値は高くならない。実際、圧延上がりの材料とその後に歪取り焼鈍を行った材料について0.2%耐力とばね限界値を調査してみると、0.2%耐力が同程度の場合、圧延上がりの材料は歪取り焼鈍を行った材料に比べてばね限界値が低い。圧延材は、内部の転位密度が高い状態で応力を負荷することになるため、プレス加工時に転位が移動できずに塑性変形してしまう。すなわち、転位密度の上昇によって0.2%耐力を高くしたとしても、転位の移動が容易でなければ、ばね限界値は低くなるのである。
そのため、ばね限界値を高くするために、熱処理によって残留歪を回復(内部転位の減少)させることが必要であるが、本発明では歪取り焼鈍の前段階で残留応力の発生を回避しているため、この熱処理を強度に実施しなくとも高いばね限界値が得られる。
また、本発明者は更にばね限界値と結晶粒の大きさに相関があることを見出し、結晶粒の大きさが小さいほどばね限界値が上昇することを見出した。ばね限界値を大きくするためには従来通り歪取り焼鈍によって、残留応力を除去することも必要であるが、結晶粒の微細化も有効だということである。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、これは結晶粒が小さくなるにつれて結晶粒の粒界面積も増加し、この粒界面積が大きいほど粒界すべりを生じさせるための応力が大きくなることによると考えられる。
本発明に係る電子材料用銅合金板又は条は一実施形態において、ばね限界値が400〜900MPaであるが、ばね限界値は好ましくは500MPa以上であり、より好ましくは600MPa以上である。リードフレームにおいては、ばね限界値が大きいほどプレス加工時に塑性変形しにくいので、寸法安定性が向上するというメリットが得られる。またコネクタにおいては、曲げ加工後の接触圧力が大きくなり、コネクタとしての信頼性が向上する。
製造方法
次に本発明に係る銅合金板又は条の製造方法に関して説明する。
本発明に係る銅合金板又は条は一部の工程に工夫を加える他は、コルソン系合金板又は条の慣例の製造工程を採用することで製造可能である。
コルソン系銅合金板又は条の慣例的な製造工程を概説する。まず大気溶解炉を用い、電気銅、Ni、Si等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。その後、熱間圧延を行い、冷間圧延と熱処理を繰り返して、所望の厚み及び特性を有する条や箔に仕上げる。熱処理には溶体化処理と時効処理がある。溶体化処理では、Ni−Si系化合物をCu母地中に固溶させ、同時にCu母地を再結晶させる。溶体化処理を、熱間圧延で兼ねることもある。時効処理では溶体化処理で固溶させたNi及びSiの化合物を微細粒子として析出させる。この時効処理で強度と導電率が上昇する。時効後に冷間圧延を行ない、その後、歪取り焼鈍を行なう。上記各工程の合間には適宜、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗等が行なわれる。
本発明に係る銅合金板又は条を製造する上では、最終段階で行われる歪取り焼鈍の前段階において、高い強度及びばね限界値を作り込みながら残留応力の原因となる操作をできるだけ回避することが重要である。こうすることで、歪取り焼鈍時には僅かの残留応力を除去するだけでよいので歪取り焼鈍後にも所望の強度を残存させることができる。具体的には、本発明に係る銅合金板又は条は一実施形態において、歪取り焼鈍前の残留応力が350MPa以下であり、且つ、0.2%耐力(YS)が750MPa以上である。典型的には、歪取り焼鈍前の銅合金板又は条は、残留応力が200〜350MPaであり、且つ、0.2%耐力(YS)が750〜900MPaである。また、歪取り焼鈍前の圧延方向に平行な断面における板厚方向の結晶粒径は、目標とする結晶粒径と同程度の25〜200nmとするのが通常であり、25〜100nmとするのが好ましく、25〜75nmとするのがより好ましい。実際には、本発明では歪取り焼鈍によって結晶粒径が1〜30%程度増大するので、結晶粒径の最終目標値を考慮しながら歪取り焼鈍前の結晶粒径を調整していくことになる。
歪取り焼鈍の前段階で所望の強度を確保しながら残留応力の発生を抑えるためには、例えば、歪取り焼鈍前の冷間圧延は1パス毎の圧下率をできるだけ小さくするのがよい。1パス毎の圧下率30%以下とするのが好ましく、より好ましくは25%以下であり、更により好ましくは20%以下であり、最も好ましくは15%以下である。1パス毎の圧下率を小さくすることで、発生する残留応力の分布が均一化するという効果もある。ただし、1パス毎の圧下率をあまり小さくすると生産性が悪化するので、発生する残留応力との関係で適宜調節するのがよい。歪取り焼鈍前の冷間圧延全体の圧下率は、時効処理条件や所望する結晶粒径との兼ね合いにもよるが、十分な強度及びばね限界値を得るには一般に50%以上とするのが好ましく、70%以上とするのがより好ましく、90%以上とするのが更により好ましい。
また、最終段階で行われる歪取り焼鈍では昇温速度のコントロールが大切であり、適切な昇温速度にすることで、表面の残留応力が均一に低減され、残留応力の偏在が防止される。その結果、平坦性も向上する。更に、結晶粒の大きさのばらつきも抑えることができる。
昇温速度が高すぎる場合には、材料の形状が担保できない(反りやすい)という問題が生じ得るが、通常の加熱設備ではそこまでの昇温速度は出ないのであまり気にしなくて良い。しかしながら、昇温速度が低すぎる場合には、目標の温度まで到達するまでの時間が長くなるが、結局、歪取り過多となって一部で再結晶が起こり、結晶粒界が消滅することで平均的な結晶粒も大きくなり、結晶粒の大きさにばらつきも生じてしまう。
よって、材料温度が25℃から400℃まで上昇する際の平均昇温速度を50〜200℃/秒とするのが好ましく、80〜100℃/秒とするのがより好ましい。
一方、冷却速度が低すぎる場合にも、冷却中の転位の移動が抑制できず、強度が低下してしまうが、通常は空冷することで十分な冷却速度が確保できる。具体的な冷却速度としては、材料温度が500℃から200℃まで冷却する際の平均冷却速度を10℃/秒以上とするのが好ましく、15℃/秒とするのがより好ましい。このような冷却速度は板厚が0.3mm以下程度であれば空冷で達成できるが、水冷するのがなお良い。ただし、あまり冷却速度を高くしても製品の形状が悪くなるので30℃/秒以下とするのが好ましく、20℃/秒以下とするのがより好ましい。
歪取り焼鈍の保持温度は、高すぎる場合は材料の表面が酸化してしまい、エッチング特性やめっき特性に悪影響を及ぼす一方で、低すぎる場合は残留応力が除去できない。そこで、保持温度は好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃である。保持温度における保持時間は、あまり短いと残留応力を除去できない一方で、あまり長くなると強度の低下が大きくなることから、好ましくは5〜30秒、より好ましくは5〜20秒である。
本発明に係る銅合金板又は条においては、第二相粒子の平均粒径も規定しているが、第二相粒子の微細化手段については当業者に知られた各種の方法を採用すれば達成可能である。以下に例示的な制御方法を記載する。
第二相粒子の粗大化を防止するためには熱間圧延と溶体化処理の条件を制御することが重要である。鋳造時の凝固過程では粗大な晶出物が、その冷却過程では粗大な析出物が不可避的に生成する。そのため、その後の工程においてこれらの第二相粒子を母相中に固溶する必要がある。
熱間圧延は、850℃以上で1時間以上保持後に行うのがよい。固溶しにくいCoやCrを添加した場合にはより高い温度を設定すればよいが、1050℃を超えると材料が溶解する可能性がある。熱間圧延終了時の温度は600℃以上の高い温度で終了してもよいが、後の工程において溶体化が困難となる場合は、より低い温度で終了する方が有効である。熱間圧延終了後の冷却過程では冷却速度をできるだけ速くし、第二相粒子の析出を抑制するのがよい。冷却を速くする方法としては水冷が最も効果的である。
溶体化処理においても同様に、溶体化処理温度を850℃〜1050℃にすることで第二相粒子を固溶することができる。溶体化処理温度が低すぎると固溶不足により強度が低くなり、高すぎると溶解温度に近くなるため材料が破断するおそれがある。
また、溶体化処理後の再結晶粒が大き過ぎると歪取り焼鈍後に最終的に得られる結晶粒の微細化が困難となるため、溶体化処理の時間はなるべく短くし、結晶粒が粗大化しないように急冷(例:水冷)するのが望ましい。
時効処理の条件は析出物の微細化に有用であるとして慣用的に行われている条件で構わないが、析出物が粗大化しないように温度及び時間を設定することに留意する。時効処理の条件の一例を挙げると、350〜650℃の温度範囲で0.5〜50時間であり、より好ましくは400〜600℃の温度範囲で1〜40時間である。なお、時効処理後の冷却速度は析出物の大小にほとんど影響を与えない。
本発明に係る銅合金板又は条はリードフレームの他にも、高い強度及び高い電気伝導性(又は熱伝導性)、更にはばね限界値を両立させることが要求されるコネクタ、ピン、端子、リレー、スイッチ、二次電池用箔材等の電子機器部品に使用することができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
例1
Ni:2.2質量%、Si:0.5質量%、Mg:0.15質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成される銅合金を、高周波溶解炉において1300℃で溶製し、厚さ30mmのインゴットに鋳造した。次いで、このインゴットを1000℃で1時間加熱後、板厚10mmまで熱間圧延し(熱間圧延終了時の材料温度は500℃)、速やかに水中冷却を行った。表面のスケール除去のため厚さ8mmまで面削を施した後、中間の冷間圧延を行った。次に溶体化処理を800℃×1時間の条件で実施した後、室温まで水中冷却した。次にアルゴン雰囲気中において表1に記載の条件で時効処理を施し、厚さ0.15mmまで冷間圧延した。この冷間圧延において、各実施例の総圧下率、及びパス毎の最大圧下率を変化させた(表1)。
この時点では、試験板の0.2%耐力(YS)はいずれも750〜900MPaの範囲にあった(No.28を除く)。No.28はYSが700MPa程度しかなかった。
最後に歪取り焼鈍を実施した。アルゴン雰囲気中で対流型熱処理炉を用いて実施した。この際、試験板温度が25℃から400℃まで上昇する際の平均昇温速度及び保持温度を試験板によって変化させた(表1)。保持温度での保持時間はすべての試験板に対して20秒とした。歪取り焼鈍後の冷却はすべての試験板に対して500℃から200℃まで下降する際の平均冷却速度を15℃/秒として行った。
特性評価は以下の方法で行った。
平均結晶粒径(mGS)については、製品の圧延方向に平行な断面を観察して測定した。具体的には、500mm長さ(板厚は0.15mm)の材料から10mm長さのサンプルを3つ作成し、収束イオンビーム加工装置(FIB:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社SMI3050)により圧延方向に平行な断面組織を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM:株式会社日立製作所HITACHI−H9000)によりそれぞれのサンプルにつき任意の1μm×1μmの1視野を観察して結晶粒を観察した。板厚方向に既知の長さの線分によって完全に切られる結晶粒数を数え、切断長さの平均値を算出し、3視野についての平均値を平均結晶粒径(mGS)とした。
最大結晶粒径(GSmax)/最小結晶粒径(GSmin)については、平均結晶粒径を測定する場合と同様の要領で結晶粒を観察し、任意の1μm×1μmの1視野中に含まれる結晶粒の中で板厚方向に最も結晶粒径の大きい粒子と板厚方向に最も結晶粒径の小さな粒子について結晶粒径の比を求めた。3視野についての平均値をGSmax/GSminとした。
強度については圧延平行方向での引っ張り試験をJIS Z 2241に準拠して行い、引張り強さ(TS)及び0.2%耐力(YS)を測定した。
第二相粒子の平均粒径は、圧延方向に平行な断面に対して、透過型電子顕微鏡(TEM:株式会社日立製作所HITACHI−H9000)により1μm×1μmの視野を10視野観察して粒径が10〜1000nmの範囲にある第二相粒子について、その数及び粒径を求めて算出した。
残留応力は、先述した方法により求めた。
ばね限界値(Kb値)は、JIS H3130に準拠して、繰り返し式たわみ試験を実施し、永久歪が残留する曲げモーメントから表面最大応力を測定した。
Figure 0005140045
Figure 0005140045
No.1〜No.16は本発明例である。これらは、冷間圧延及び歪取り焼鈍の条件が共に適切であったため、残留応力の絶対値が100MPa以下であり、且つ、平均結晶粒径(mGS)が25〜200nmの範囲内であった。更に、強度及びばね限界値が共に良好であった。そのうち、No.6〜No.14では最大結晶粒径(GSmax)/最小結晶粒径(GSmin)も10以下であったため、第二相粒子の平均粒径が同程度であれば、強度が向上していることが分かる。No.14では第二相粒子の平均粒径が小さく、一層の強度向上が見られた。
No.17〜20は、冷間圧延時のパス毎の最大圧下率が大きく、歪取り焼鈍前の残留応力が高かった比較例である。No.17とNo.20では残留応力が所望の値まで低下するように歪取り焼鈍を過剰に行ったところ、結晶粒が大きくなってしまい、強度が不充分となった。No.18は、歪取り焼鈍の温度をNo.17に比べて下げたが、依然として強度と残留応力の良好なバランスが得られなかった。No.19は強度を残すように歪取り焼鈍の温度を更に下げたところ残留応力が高くなってしまい、ばね限界値も小さくなった。
No.21〜29は、歪取り焼鈍の条件が不適切であった比較例である。No.21〜24は、歪取り焼鈍の温度が高いため、残留応力は低下したものの強度まで低下してしまった。これとは逆に、歪取り焼鈍の温度を低くしたNo.25〜29は高強度が得られたが過大な残留応力が残った。
No.30は時効処理温度が高かったため、第二相粒子が過大であった例である。このため、所望の強度及びばね限界値が得られなかった。
No.31は特許文献4に記載の発明と対比するための比較例である。冷間圧延時の総圧下率が高く、歪取り焼鈍前の結晶粒径は微細であったものの、パス毎の最大圧下率が35%と高かったために、残留応力が十分に制御できなかった。その結果、歪取り焼鈍によって残留応力を所望の数値まで低下したときに強度が不十分となってしまった。
No.32及び33は総圧下率が小さかったため、微細な結晶粒が得られず、十分なばね限界値が得られなかった例である。No.32はパス毎の圧下率も35%と高かったために、残留応力も高かった。
例2
合金組成を表2のように変えた他は、No.1と同様の製造条件で各試験板を製造し、同様に特性を調べた。結果を表3に示す。種々の添加元素を加えても本発明の効果が得られることが分かる。
Figure 0005140045
Figure 0005140045

Claims (8)

  1. Ni:0.4〜6.0質量%、Si:0.1〜2.0質量%を含有し、残部Cu及び不可避的不純物から構成される電子材料用銅合金板又は条であって、圧延方向に平行な断面における板厚方向の平均結晶粒径(mGS)が200nm以下であり、表面から1μmの深さにおける残留応力の絶対値が100MPa以下である電子材料用銅合金板又は条。
  2. 圧延方向に平行な断面において、1μm×1μmの視野中の板厚方向の最小結晶粒径(GSmin)に対する板厚方向の最大結晶粒径(GSmax)の比であるGSmax/GSminが平均で10以下である請求項1記載の電子材料用銅合金板又は条。
  3. 粒径が10〜1000nmの範囲にある第二相粒子の平均粒径が20〜200nmである請求項1又は2記載の銅合金板又は条。
  4. ばね限界値が400〜900MPaである請求項1〜3何れか一項記載の銅合金板又は条。
  5. 0.2%耐力(YS)が600〜1000MPaである請求項1〜4何れか一項記載の銅合金板又は条。
  6. 更にCr、Co、Mg、Mn、Fe、Sn、Zn、Al及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で2.0質量%まで含有する請求項1〜5何れか一項記載の銅合金板又は条。
  7. 請求項1〜6何れか一項記載の銅合金板又は条を加工して得られた電子部品。
  8. 電子部品がリードフレームである請求項7記載の電子部品。
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