JP4781145B2 - Cu−Zn−Sn系合金及びCu−Zn−Sn系合金条を用いた端子、コネクタ、またはリレー - Google Patents
Cu−Zn−Sn系合金及びCu−Zn−Sn系合金条を用いた端子、コネクタ、またはリレー Download PDFInfo
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一方、近年、固溶強化型合金に替わり、析出強化型銅合金の使用量が増加している。析出強化型合金は、合金元素をCu母地中に微細化合物粒子として析出させることを特徴とする。合金元素が析出する際に、強度が上昇し、同時に導電率も上昇する。したがって、析出強化型合金は固溶強化型合金に比べ、同じ強度でより高い導電率が得られる。析出強化型合金としては、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Be系合金、Cu−Ti系合金、Cu−Zr系合金等がある。
しかし、析出強化型合金では、合金元素をCu中に一旦固溶させるための高温・短時間の熱処理(溶体化処理)及び合金元素を析出させるための低温・長時間の熱処理(時効処理)が必要であり、その製造プロセスは複雑である。又、合金元素として、Si、Ti、Zr、Be等の活性元素を含有しているため、インゴット品質の作りこみが難しい。したがって、析出強化型合金の製造コストは、固溶強化型合金の製造コストと比べ非常に高い。
(A)導電率:35%IACS以上。この導電率は析出強化型合金であるCu−Ni−Si系合金(コルソン合金)の導電率に匹敵する。なお、黄銅(C2600)の導電率は28%IACS、りん青銅(C5210)の導電率は13%IACSである。
(B)引張強さ:410MPa以上。この引張強さは、JIS規格(JIS H 3100)により規定された黄銅(C2600)の質別Hの引張強さに相当する。
(C)曲げ性:Good Way(曲げ軸が圧延方向と直行する方向)及びBad Way(曲げ軸が圧延方向と平行な方向)の180度密着曲げが可能なこと。この曲げ試験において割れや大きな肌荒れが発生しなければ、コネクタに施される最も厳しいレベルの曲げ加工が可能となる。
IC(220)は最終冷間圧延の圧延加工度(R)によって定まり、Rを高くするとIC(220)は大きくなった。ここで、Rは最終冷間圧延前の厚みをt0、最終冷間圧延後の厚みをtとし、次式で定義される。
R(%)=(t0−t)/t0×100
一方、IS(220)はRだけでなく、最終冷間圧延における種々の圧延条件の影響をも受け、
a.パス回数が少ない(一回のパスでの加工度が高い)ほどIS(220)は低い
b.圧延油の粘度が低いほどIS(220)は低い
c.圧延温度が低いほどIS(220)は低い
ことが判明した。
ZnおよびSn濃度
本発明の銅合金は、ZnとSnを基本成分とし、両元素の作用により機械的特性を作りこむ。Zn濃度およびSn濃度の範囲は、それぞれ2〜12質量%および0.1〜1.0質量%とする。Znが2%を下回ると、Cu−Zn合金の特徴である良好な製造性が失われる。Znが12%を超えると、Sn濃度を調整しても所望の導電率が得られなくなる。Snは圧延の際の加工硬化を促進する作用を持ち、Snが0.1%を下回ると強度が不足する。一方、Snが1.0%を超えると、合金の製造性が低下する。
SnとZnの合計濃度(T)は、次のように調整する。
0.6≦T≦2.0
T=[%Sn]+0.16[%Zn]
ここで、[%Sn]および[%Zn]はそれぞれSnおよびZnの質量%濃度である。Tを2.0以下にすれば35%IACS以上の導電率が得られる。また、Tを0.6以上にすれば、金属組織を適切に調整することにより、410MPa以上の引張強さが得られる。そこで、Tを0.6〜2.0に規定する。
より好ましいTの範囲は1.0〜1.7であり、この範囲に調整することにより、35%IACS以上の導電率と410MPa以上の引張強さがより安定して得られる。
Ni、Fe、P、Co及びAg
Znより酸化しにくい元素であれば、強度、耐熱性、耐応力緩和性等を改善する目的で、本発明の合金に添加することができる。このような元素として、Ni、Fe、P、Co及びAgがある。これら元素の合計添加量が0.005質量%未満であると、特性向上の効果が発現しない。一方、上記元素の合計量が0.5質量%を超えると、導電率低下が著しくなる。そこで、合計量を0.005〜0.5質量%に規定する。
本発明のCu−Zn−Sn系銅合金は、圧延面についての(220)ピーク強度(IS(220))と厚み中央部のエッチング面についての(220)ピーク強度(IC(220))との関係が、IS(220)/IC(220)≦1.2であることを特徴とする。
結晶粒径が同じ場合、製品の強度は最終焼鈍後の冷間圧延のトータル加工度と相関を持つ。また、IC(220)も最終焼鈍後の冷間圧延でのトータル加工度と相関を持つ。すなわち、IC(220)は製品に求められる強度によって決定される。一方、IS(220)は良好な曲げ加工性を得る目的で規定される。
合金A:Cu−8.0質量%Zn−0.3質量%Sn
合金B:Cu−5.0質量%Zn−0.3質量%Sn
高周波誘導炉を用い、内径60mm、深さ200mmの黒鉛るつぼ中で2kgの電気銅を溶解した。溶湯表面を木炭片で覆った後、成分が上記組成になるようにZnおよびSnを添加した。溶湯温度を1200℃に調整した後、溶湯を金型に鋳込み、幅60mm、厚み30mmのインゴットを製造した。これらのインゴットを、以下の工程で厚み0.3mmまで加工した。
(工程1)850℃で3時間加熱した後、厚さ8mmまで熱間圧延する。
(工程2)熱間圧延板の表面の酸化スケールをグラインダーで研削、除去する。
(工程3)板厚1.5mmまで冷間圧延する。
(工程4)再結晶焼鈍(中間焼鈍)として、大気中、400℃で30分間加熱し、結晶粒径を約3μmに調整する。
(工程5)20質量%硫酸−1質量%過酸化水素水溶液による酸洗および#1200エメリー紙による機械研磨を順次行い、焼鈍で生成した表面酸化膜を除去する。
(工程6)冷間圧延(中間圧延)により、実施例表1および表2に示す中間圧延の板厚まで圧延する。
(工程7)再結晶焼鈍(最終焼鈍)として、大気中、400℃で30分間加熱し、結晶粒径を約3μmに調整する。
(工程8)20質量%硫酸−1質量%過酸化水素水溶液による酸洗および#1200エメリー紙による機械研磨を順次行い、焼鈍で生成した表面酸化膜を除去する。
(工程9)冷間圧延(最終圧延)で0.3mmまで圧延する。この最終冷間圧延において、冷間圧延の温度を25℃にして、圧延油の粘度と圧延のパス回数を変え、IC(220)と
IS(220)との比(I(220)比)を変化させた。
引張試験は圧延方向に対しその長手方向が平行になるように採取したJIS 13B号試験片を使用して、引張試験機(ORIENTEC社製UTM−10T)を用いて室温、初期標点距離50mm、引張速度5mm/分の条件で引張強さを求めた。
導電率はJIS H 0505に準拠し、4端子法で測定した。
曲げ試験はBadwayのW曲げ(JIS H 3110)を各種曲げ半径で行い、割れの発生しない最小の曲げ半径比(r(曲げ半径)/t(試験片厚さ))を求めた。試験片の幅は10mmとした。
合金Aおよび合金Bの評価結果を、それぞれ表1および表2、図1および図2に示す。
R/t=0の良好な曲げ加工性が得られた。
一方、比較例である条件E〜Jは圧延油動粘度が高いまたはパス回数が多いことによりI(220)比が1.2を超えたものであり、発明例に対し曲げ加工性が悪化している。
図1(左)は、圧延条件がI(220)比に及ぼす影響を示したものである。パス回数を少なくし、圧延油動粘度を下げることにより、I(220)比を低減できることが示されている。
また、図1(右)はI(220)比が、曲げ加工性に及ぼす影響を示したものである。圧延油動粘度が低いほどI(220)比の値は低くなるが、I(220)比が1.2以下では曲げ性は変化せず、その効果は飽和していることがわかる。表2および図2に示す通り、合金Bにおいても表1、図1と同様のデータが得られた。
Claims (2)
- 平均濃度として2〜12質量%のZn、0.1〜1.0質量%のSnを含有し、質量%単位のSnの平均濃度([%Sn])と質量%単位のZnの平均濃度([%Zn])との関係が、
0.6≦[%Sn]+0.16[%Zn]≦2.0
に調整され、残部がCu及び不可避的不純物から成る銅合金であり、X線回折により圧延面について測定した(220)面のピーク強度(IS(220))と圧延面の片側を厚さ中央部までエッチングで除去し、このエッチング面について測定した(220)面のピーク強度(IC(220))との関係が、
1.11≦IS(220)/IC(220)≦1.2
であることを特徴とする曲げ加工性に優れるCu−Zn−Sn系合金。 - 請求項1記載のCu−Zn−Sn系合金条を用いた端子、コネクタ、またはリレー。
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