上記従来技術を調査したところ、昨今の低コスト化、短納期化の要求水準からみて、露光に使用される光源や光学系の特性と汎用に使用される感光性材料(レジスト等)の特性との間で、その整合性に改善の余地があることがわかった。
マスクレス露光技術に使用される2次元光変調素子には幾つかの種類が知られているが、その内部機構部分は特に繊細な構造をしており、その耐久性や寿命は入射される光の強度だけではなく、入射光の波長にも依存する。従って、マスクレス露光技術に適用されるような光強度領域では、入射波長が短くなるほど光変調素子の誤動作や欠陥の発生率が有意に増大したり、あるいは致命故障発生までの可使期間(寿命)が短くなったりする傾向がある。特に、紫外領域(400nm未満)では、短波長化するほど高速変調時の誤動作が増大したり、あるいは、素子構造によっては寿命が低下したりする(光量子のエネルギーの影響;詳細後述)。そのため、2次元光変調素子へ紫外光源を入射させる場合には露光時間の長時間化と引き換えにその光強度を制限するか、あるいは、紫外光よりも長波長である可視光(400〜800nm)ないし赤外光(800nm超)を入射させる必要がある。
一方、配線形成のための露光技術に使用される感光性材料は、一般に、照射される光の波長が短くなるほど感度が高くなるような組成に設定されており、量産性、作業性の観点から、水銀輝線であるi線(365nm)近傍での安定した高感度が得られ、かつ、可視光領域での感度が低くなるような組成に設定されている。例えば、図1は配線基板製造時に一般的に使用されている感光性樹脂であるドライフィルムレジスト(i線レジスト)の吸光特性の一例を示す図であり、図2はレジストの分光感度特性の一例を示す図である。図1によれば、波長365±15nm領域の紫外光に対する吸光は比較的大きく、かつ波長に対する吸光度の変動は小さい。一方、可視光領域である波長408nmの光に対するレジストの吸光度は波長365nm光(i線)に対する吸光度の1/5程度であって、照射された光の大部分は吸収されることなく透過することがわかる。また図2から、波長365±15nm程度の範囲では波長依存性の少ない比較的大きな感度が得られるが、可視光領域である波長408nmの近傍では感度が低い上、波長変動に対して感度が大きく変動することがわかる。
なお、短波長の光が光変調素子や感光性材料に入射したときの挙動は、光の量子的なエネルギーの観点から説明される。光量子のエネルギーは波長に反比例(E=h/λ;hはプランク定数)するので、波長が短くなるほど光量子エネルギーが大きくなるだけではなく、波長が短くなるほど光量子エネルギーの増大率も大きくなる。従って、短波長(高エネルギー)の光量子を受光すると、光変調光学系では誤動作発生確率が増大しやすくなり、感光性材料では反応性が高まるのである。また、波長が短くなるほど、δE/δλ(波長変化δλに対する光量子エネルギー変化δE)は急激に大きくなるため、光紫外光領域では変調光学系の誤動作発生確率は急増する傾向が現れる。
すなわち、光変調光学系に対しては短波長の紫外光よりも長波長の可視光の方がよく、感光性材料に対しては長波長の可視光よりも短波長の紫外光の方がよい、という問題があり、結果として、露光の高スループット化と高精細化との両立が困難であった。
また、赤外光は波長が長く、従って光量子のエネルギーは小さいので、露光光源として赤外光(赤外線レーザ)を使用する特許文献1においては、所望の光反応率を得るために必要な照射時間が長くなり、あるいは、高出力のレーザ光源を使わざるを得ず、低コスト、短時間露光という目的には合致しにくい。
一方、波長408nm付近の青紫光の光量子エネルギーは赤外光よりも大きいので、半導体レーザを露光光源として使用する技術(特許文献2)においては、特許文献1よりもスループットの改善が期待できる。しかしながら、上述の通り、配線形成用感光性材料の感度はこの波長領域で比較的低く、かつ、この波長領域では僅かな波長変動によって感度が大きく変わるため、プロセスが安定しにくい傾向がある。なお、半導体レーザの出射光は、半導体レーザ素子製造工程におけるバラツキや素子の使用環境(周辺温度)、素子へ投入する電力などの影響を受けて408±5nm程度の範囲で変動する。
一方、特許文献3に使用されるDMDデバイスは、上述の通り、紫外光耐性寿命がかならずしも十分とは言えない。そのため、感光材料の感度が高くなる波長域である紫外光源を使用する場合には低輝度光を使用せざるを得ず、低輝度光での露光であるために時間がかかることは避けられない。一方、DMDデバイスの耐光性を確保できる可視光範囲では高輝度光源を使用できるが、感光材料の感度が低いために露光に時間がかかる。
高輝度光源を使用する技術が特許文献4や特許文献5で提案されているが、相反則不軌あるいは相反則不規と呼ばれる現象のために、光源の高輝度化では期待通りの露光時間短縮効果を生まないことが多い。具体的には、輝度を2倍にしても所要の露光時間は半分にならず、一般に露光時間は2〜3割程度しか短縮されない。光源の高輝度化によるデメリット(消費電力の顕著な増大、機器の発熱、発熱に起因する装置性能の劣化)をも鑑みた実用上のメリットの観点から、光源高輝度化に替わる、さらなる改善技術が求められている。
以上のように、従来技術のいずれにおいても、高スループット化、低コスト化、高精細化を実現する露光装置は得られてない。そこで、本発明の目的は、昨今の低コスト化、短納期化の要求水準を満足する高スループット、低コスト、高精度な露光を実現する露光装置、露光方法並びにそれらを用いたパターン製造方法、配線基板の製造方法を提供することにある。
本発明では上記目的を実現するために、第1の照射光源と、前記第1の照射光源から出射された照射光を所望の露光パターンデータに基づいて変調して所望形状の光束を形成する光変調光学系と、該光変調光学系で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させて描画する結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、前記被露光物の表面であって、前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有する所望の面積に対してエネルギー線を照射するための第2の照射光源とを備えたことを特徴とするマスクレス露光装置を提供する。
また、第1の照射光源と、該第1の照射光源から出射された照射光を所望の露光パターンデータに基づいて所望形状の光束を形成するようにデジタル変調する2次元デジタル光変調素子と、該2次元デジタル光変調素子で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、前記被露光物の表面であって、前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有する所望の面積に対してエネルギー線を照射するための第2の照射光源とを備えたことを特徴とするマスクレス露光装置を提供する。
さらに本発明では、第1の照射光源であるビーム光源と、該第1の照射光源から出射された照射光を所望の露光パターンデータに基づいて所望形状の光束を形成するように変調する光変調光学系と、該光変調光学系で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、前記被露光物の表面であって、前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有する所望の面積に対してエネルギー線を照射するための第2の照射光源とを備えたことを特徴とするマスクレス露光装置を提供する。
本発明ではさらに、紫外線を含有する光を出射する第1の照射光源と、該第1の照射光源から出射された照射光を所望麕光パターンデータに基づいて所望形状の光束を形成するように変調する2次元デジタル光変調素子と、該2次元デジタル光変調素子で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、前記被露光物の表面であって、前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有する所望の面積に対してエネルギー線を照射するための第2の照射光源とを備えたことを特徴とするマスクレス露光装置を提供する。
また、本発明では、紫外線を含有する光を出射する第1の照射光源と、所望の露光パターンデータに基づいて遮光性パターンが描画されているフォトマスクを保持するためのフォトマスク保持機構と、前記フォトマスクを透過した所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、前記被露光物の表面であって、前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有する所望の面積に対してエネルギー線を照射するための第2の照射光源とを備えたことを特徴とする露光装置を提供する。
前記第2の照射光源からの出射光の光軸中心線が、前記第1の照射光源からの出射光の結像領域の端部から前記被露光物の端部までの何れかの領域に配置されることを特徴とする露光装置も本発明の提供する別の1面である。
前記第2の照射光源からの出射光の光軸中心線が、前記第1の照射光源からの出射光結像中心軸と平行に配置されることを特徴とする露光装置も本発明が提供するさらに別の一面である。
本発明の更に別の1面は、前記第2の照射光源からの出射光の光軸中心線が、前記第1の照射光源からの出射光結像中心軸と被露光物表面で交差するように配置されることを特徴とする露光装置を提供する点にある。
本発明では、さらに、被露光物の表面に所望のパターン形状に加工された光束を照射し、しかる後に現像して感光性材料を所望の形状に加工する露光方法において、所望のパターン形状に加工された光束を照射する第1の露光とは別に、第1の露光によって照射される領域を含有する所望の面積内に均一のエネルギー線を照射するために第2の露光の段階を設けることを特徴とする露光方法をも提供する。
さらに本発明は、被露光物の表面に所望のパターン形状に加工された光束を照射し、しかる後に現像して感光性材料を所望の形状に加工する露光方法において、所望のパターン形状に加工された光束を照射する第1の露光照射と、第1の露光によって照射される領域を含有する所望の面積内に均一のエネルギー線を照射する第2の露光照射とを同時に実施することを特徴とする露光方法をも提供する。
さらに、所望のパターン形状に加工された光束を照射する第1の露光照射光源光学系と、第1の露光によって照射される領域を含有する所望の面積内に均一のエネルギー線を照射する第2の露光照射光源光学系とを備えたことを特徴とする露光装置を提供することも本発明の1面である。なお、その際、前記第1の露光照射源光学系と前記第2の露光照射源光学系とが連動制御されることを特徴としてもよい。
本発明で提供する露光装置の別の1面として、第1の照射光源と、該第1の照射光源から出射された第1の照射光を所望の露光パターンデータに基づいて変調する光変調光学系と、該光変調光学系で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、第2の照射光源と、該第2の照射光源から出射された第2の出射光を波長毎に分光する分光光学系とを備えたことを特徴とする。その場合、前記第2の出射光を波長毎に分光する分光光学系は、該分光光学系を通過して分光された光束が、前記第1の照射光源から出射して、変調光学系、結像光学系を通過して前記所望形状の光束が結像・描画された領域を含有するべく配置されていても良い。
第1の照射光源と、該第1の照射光源から出射された第1の照射光を所望の露光パターンデータに基づいて変調する光変調光学系と、該光変調光学系で形成された所望形状の光束を被露光物の表面に結像させる結像光学系と、該結像光学系で結像される所望形状の光束と前記被露光物の表面とを相対的に走査する走査手段と、波長選択手段を有する第2の照射光源とを備えたことを特徴とする露光装置も本発明の提供する技術である。
本発明では、基板上に感光性材料を成膜し、該感光性材料に光化学反応を誘起した後に現像して所望形状のレジストパターンを形成し、該レジストパターンを活用して導体を加工する配線基板の製造方法において、該感光性材料に光化学反応を誘起する工程を所望形状に加工された光束を照射して所望箇所のみの光化学反応を誘起する第1の露光照射の段階と、少なくとも第1の露光照射によって照射される領域を含有するように均一にエネルギー線を照射して第1の露光照射の段階で照射された領域の近傍を含む領域にも光化学反応を誘起する段階に分割したことを特徴とする配線基板の製造方法も提供する。
本発明によれば、昨今の低コスト化、短納期化の要求水準を満足する高スループットかつ低コストで高精細な露光が可能となる。
本発明に係る露光装置及び露光方法並びに配線基板製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。
まず、本発明で用いる感光性材料(i線用感光性材料)は、配線基板製造用に使用されている感光材料であり、配線基板の製造工程において主として350〜450nmの紫外光〜近紫外光を照射されて、いわゆるリソグラフィー加工に供される。本発明に好適な感光材料は、あらかじめフィルム状に加工された、いわゆるドライフィルム状でも良いし、液状でも構わない。フィルム状、液状いずれの場合でも、被露光物(例;配線基板)の表面に所定の方法によって適宜成膜した後に露光を行なう。本発明に好適な感光材料の成膜後の膜厚はおおむね約2マイクロメータ〜100マイクロメータの範囲であり、最小加工寸法(線幅)は1マイクロメータ程度である。感光材料の系統としては、感光性ポリイミド、感光性ベンゾシクロブテン(BCB)、感光性アクリレート、感光性エポキシアクリレート、感光性ポリベンズオキサゾール、感光性カルドアクリレートなどを主成分として含む感光材料が本発明に好適であり、それぞれの材料に応じた適切な処理条件を求めた上で適用する。被露光物の構造や用途によっては、ここに例示された以外の感光性材料の組成でも使用できることは改めて指摘するまでもない。配線製造工程における感光性材料には様々な用途が知られており、具体的にはエッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダレジスト、配線カバーレイなどがあるが、それぞれの用途、目的に応じて条件を最適化すれば、本発明を適用して2マイクロメータ〜1000マイクロメータの加工を実現できる。なお、感光性材料は光に対する反応性の違いからポジ型とネガ型に分類され、本発明の技術はいずれの反応型の感光性材料に対しても適用可能である。本発明においては、精細性の観点ではポジ型、プロセスマージンの観点ではネガ型が好ましいことが多く、高精細画像(最小加工寸法=約1マイクロメータ)の形成が必要な場合にはポジ型へ適用し、汎用用途(加工寸法=10〜1000マイクロメータ)においてはネガ型へ適用すると実用上の最大の効果が得られることが多い。なお、図1および図2は、本発明に係る汎用のネガ型感光性樹脂の吸光特性、分光感度特性の一例である。
本発明に係る露光装置は、マスクレス直接露光技術における材料費節減、リードタイム短縮と高精度位置合わせの特長を活かしながら、さらに、露光時間の短縮を実現するために、図3に示すような2系統の光源を有する。すなわち、第一実施例として図3に示す通り、第1の照射光源1と、第1の照射光源1から出射された照射光のうち有害光線成分を除去する光学的手段4と、その照射光の強度分布や形状を整えるビーム成形光学系8と、整えられた照射光を露光パターンデータに基づいて変調し光束を形成する光変調光学系5と、得られた光束を被露光物10の表面に結像させる結像光学系7と、第1の照射光源とは別に被露光物10にエネルギー線を照射する第2の照射光源2と、被露光物10を載せるステージ11及びそれを制御するステージコントローラ13とを有する走査手段と、を有する。本発明では、第1の照射光源からの選択的パターン描画照射と、第2の照射光源2からの非選択的大面積エネルギー照射とを組み合わせて被露光物10に照射することにより両者の光量が積算され、結果、第1の照射光源からの選択的パターン描画照射における相反則不軌現象は抑制され、従来技術ではなしえなかった露光時間短縮、露光スループット増大を実現している。
以下、本発明の露光装置の各構成部分について具体的に説明するとともに、露光装置の動作について併せて説明する。
第1の照射光源1としては波長405nm程度の近紫外光を出射する近紫外光光源を用いる。近紫外光は高強度光の入射が許容な可視光領域の範囲で最大の光量子エネルギーを持つためである。第1の照射光源1は、本発明における最も好ましい形態においては多数の近紫外半導体レーザ光源を並置して構成されるが、光変調光学系5の紫外耐光性の許容範囲であれば、低強度の紫外線を含む光を出射する光源でも使用できる。変調光学系5の紫外耐光性は変調光学系の内部微細機構部の構造に依存する特性なので変調光学系の種類に依存しているが、発明者の検討によると、変調光学系の表面において300〜400nm範囲の紫外光強度がピーク値で10W/cm2を越えないことが望ましい。変調光学系の表面における紫外光強度がピーク値で10W/cm2を越えると、変調ミラーで反射されなかった光のエネルギーのために変調光学系内部の微細機構部に歪みを生じ、その結果として、誤動作を発生しやすくなったり、熱応力が蓄積して起因の破壊に至ったりする可能性が高まる。なお、波長300nm未満の遠紫外光、電子線、X線などは変調光学系5の誤作動発生率を顕著に増大したり、寿命を短くしたりする可能性が高まるので、これらが取り除かれた光源を使用する。図3では、第1の照射光源1からの出射光から遠紫外光、電子線、X線などの有害光線成分を取り除くための光学的手段4を設けた構造を例示してある。本発明では、有害光線成分除去のために光学的手段4を使用できるが、具体的に例示すると光学フィルターなどが挙げられる。なお、使用する光源の波長等によって光学的手段4は省略してもよい。一方、400nm超の可視光範囲であれば10W/cm2の連続使用も可能であり、瞬間的なピーク強度であれば20W/cm2程度までであれば歪みが蓄積するに至らないので、使用可能である。この条件を満たし、本発明に使用できる低強度の紫外光源を具体的に例示すると、メタルハライドランプや低圧水銀灯、半導体レーザなどが挙げられる。低強度の紫外光源であればここに例示した以外の光源でも使用でき、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプなどの放電ランプやYAG第3高調波などのレーザ光源からの出射光の紫外光強度をフィルターやグレーティング、あるいは、ビームシェーパーやビームデフューザーなどを用いて調整した後に第1の照射光源1として使用してもよい。
第1の照射光源1から出射された照射光は、第1の導光光学要素6a、ビームの光強度分布やビーム形状を整えるためのビーム成形光学系8および第2の導光光学要素6bを経由して、光変調光学系5に入射される。光変調光学系5は変調制御部9にデジタル制御されており、変調制御部9は露光装置全体を制御する主制御部30のサブシステムとして光変調光学系5を制御する。所望の露光パターンデータは、CAD(Computer Aided Design)システム40で設計された後、ネットワーク41を介して主制御部30へ送信され、各種の制御プログラムや演算プログラムを格納した記憶装置31に蓄えられる。
前記ネットワーク41は、公衆通信回線あるいはそれを経由した通信網であっても良く、CADシステム40と本発明による露光装置の設置場所が離れていても構わない。製品が使用される場所、いわゆる消費地の近くに製造拠点を設け、その製造拠点に露光装置を設置することにより、製造拠点と消費地間の製品搬送時間を最短化することができ、その結果として、製品搬送コストの削減に加え、仕掛かり在庫および流通在庫の最小化、販売機会損失の削減、需要即応生産の実現に寄与する。このようなビジネスモデルにおいては、設計拠点に設置されたCADシステム40から製造拠点に設置された露光装置にむけてパターンデータを送信する必要があるが、通常、こうしたデータには製造上のノウハウや営業情報など秘匿すべき情報が多く含まれているので、通信途上で傍受されたり、改竄されたりしないように、あらかじめ特定の手順に則った暗号化処理を施す。なお、通信網を通過する時間を短縮して傍受・改竄の可能性を少なくするために、暗号化に先立ってパターンデータを圧縮してデータ容量を少なくしておくことが望ましく、さらに、ヒューマンエラーによる入力ミスを排除するためにデータ圧縮〜暗号化と暗号解読〜データ復元を自動的に処理するための情報処理装置を設けることが望ましい。
主制御部30は、記憶装置31の他、少なくとも、データ表示部32、入力手段33と接続されており、記憶装置31に格納された制御プログラムや演算プログラムを実行するための演算処理部(図示せず)を備え、変調制御部9およびステージコントローラ13を制御するために、これらのサブシステムとの間の通信手段をも有している。改めて指摘するまでもないが、1ユニットの主制御部30に対して複数ユニットの変調制御部9およびステージコントローラ13が接続されていても良く、複数ユニットが接続されることにより設備投資を抑制しながら生産量を拡大できる可能性が拓ける。
光変調光学系5に入射された光は、上記システム(主制御部30および変調制御部9)によって変調を受け、所望形状の光束となる。なお、図3には記載されていないが、本発明の露光装置は被露光物10、あるいはその表面に形成された特定形状の位置、形状、寸法を計測するために計測手段を備えている。該計測手段によって取得された計測結果は、CADシステム40から送信されて記憶装置31に格納されている所定の数値と比較され、光変調光学系5およびステージ11の動きを微調整するための補正値を算出するために使用される。
本発明では光変調光学系5として最も好ましい形態は、1次元もしくは2次元の反射ミラーアレイであり、具体的にはDMD(Digital Micro−Mirror Device)やGLV(Grating Light Valve)、SLM(Spatial Light Modulator)などが挙げられるが、その他空間光変調装置を使用してもよい。本発明ではこれらの高速動作が可能な光変調素子を使用することによって高速の光変調を達成している。複数の空間変調素子を組み合わせることによって大面積一括の空間変調を実現できるので、必要に応じて、複数の空間変調素子を並置して使用する。図12は複数の空間変調素子を並置してなる光変調光学系5の構造例であり、5個のDMD空間変調素子を千鳥配置したことにより、1個の空間変調素子で変調された光束が結像する領域501aの領域幅L1に対して、5倍の領域幅L2を一括で照射できる。なお、空間変調素子の筐体外形500の幾何形状、光束結像領域501aの幾何形状とステージの走査方向1101との関係などを考慮した上で、光束結像領域の距離が最小となるように空間変調素子の相対的配置を決めることが好ましい。ここでは空間変調素子の筐体外形500の幾何形状が概略円形であり、光束結像領域501aの幾何形状が概略矩形であってその少なくとも1辺がステージの走査方向1101と概略平行であることを考慮して、空間変調素子を千鳥状に配置した例を示している。光束結像領域501aの幾何形状が概略矩形であってその少なくとも1辺がステージの走査方向1101に対して、一定の角度を持たせても良い。具体的な走査角度の一例としては、光束結像領域501aの概略矩形の短辺/長辺の比のアークタンジェントとなる方向を走査角とする例が挙げられる。
光変調光学系5で変調された光束は結像光学系7を経由して、被露光物10の表面に結像(最小寸法は1マイクロメータ程度)される。結像光学系7は様々な光学部品の集合体であり、図3には本発明に好適な光学部品集合体の一例として第1結像レンズ7a、マイクロレンズアレイ7b、回折格子7c、及び第2結像レンズ7dからなる構成を例示しているが、該結像光学系7に要求される最小解像度(1マイクロメータ程度)を実現できる他の光学部品構成で代替することはさし支えない。なお、図3には記載していないが、変調光学系5の微細ミラーがOFF動作の時に発生する迷光を吸収するための吸収構造体を別途設けてある他、吸収構造体からの放熱を促進するための放熱手段を設けることが望ましい。放熱手段を設けることにより、導光光学系6や結像光学系7などへの蓄熱が防止でき、長時間連続運転しても高精度なパターン形成が維持できる。
被露光物10は平面ステージ11上に載せられた状態で露光される。該平面ステージ11はステージコントローラ13によってXY2軸方向に移動(走査)するように設計されており、その移動量や移動速度、移動方向が光変調光学系5の変調動作と連動するように主制御部30で制御される。変調光学系5の変調動作とステージコントローラ13によるステージ走査によって、光変調光学系5で変調された光束は前記被露光物10の表面を相対的に走査することになり、その結果として、所望のパターンが被露光物10の全面に描画される。なお、このパターン描画はいわゆる点描描画であり、多数の光点を少しずつずらして配置することによって全体としてパターンとなるように描画される。その際、被露光物10、あるいはその表面に形成された特定の形状の位置、形状、寸法の測定結果から算出された補正値を使ってステージ11の移動量や移動速度、移動方向、光変調光学系5の変調動作に補正がかけられる。
描画すべきパターンデータは多数の微小点の集合体へ変換され、それぞれの微小点は光変調光学系5の各微細ミラーのON/OFFを制御するためのデジタル信号に変換されて、記憶装置31に格納されている。所定のパターン描画を実施する場合、対応するデジタルデータを記憶装置31から呼び出し、これを演算処理部で処理して、光変調光学系5およびステージ11を制御する制御信号へと変換させる訳であるが、本発明の露光機においては、この一連の処理時間を最短化するために最適化されたデータ転送装置および演算装置が用いられている。このような装置を使用したことにより、生産計画に基づいて指示されるパターンデータを自由に選択でき、多品種混流生産、需要即応生産が実現されている。言うまでもないが、生産計画はERP(Enterprise Resouce Planning)などのシステムと連動していることが望ましい。
このようにして第1の照射光源1によって被露光物10表面の所定の領域に所望のパターンを描画するわけであるが、本発明に係る露光装置では上記したとおり、第2の照射光源2を別途設けて、少なくともこのパターン描画領域を含み、好ましくはさらに一回り大きな領域を第2の照射光源2からの出射光で照射することを特徴とする。なお、第2の照射光源2も主制御部30で制御される。第2の照射光源2は、全出射エネルギー中1%以上100%以下の強度で350〜450nmの範囲の紫外〜近紫外光を含有するエネルギー線を出射できる光源であり、具体的には、メタルハライドランプや低圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプなどの放電ランプ、YAG第3高調波、半導体レーザなどが本発明に好適に使用される。最良の実施形態としては、照射エネルギーの制御が容易な半導体レーザ、あるいは安価かつ保守も容易なメタルハライドランプなどであり、使用目的に併せて消費電力、保守管理、照射量の制御性などを鑑みて選択し、必要に応じて、これらを複数組み合せて使用してもさし支えない。
本発明では、第2の照射光源2として例示されたこれらの光源の中から、被露光物である感光材料の感光特性や形状、光源自身の分光放射特性、第1の照射光源の種類などを考慮すれば最適の組合せを選択できる。但し、被露光物10の品種を変更する毎に光源の組合せを変更するという煩雑な操作を省略するために、被露光物10が第2の照射光源2から受光する放射エネルギーを調整できるような機構を設けておくことが望ましい。具体的には、特定波長の光だけを透過させるような光学フィルターを組み込むためのフィルターフォルダーを設けたり、あるいは、分光するためのグレーティングやプリズムを設けたり、シャッターやスリット、インテグレータなどを着脱できるような鏡筒を設けたりする。
本発明に係る露光装置では、第1の照射光源からの選択的パターン描画照射と、第2の照射光源2からの非選択的大面積均一エネルギー線照射とを組み合せて照射することにより、第1の照射光源からの選択的パターン描画照射における相反則不軌現象を抑制し、その結果として、露光時間短縮、露光スループット増大を実現することができる。本発明による露光方法の詳細については後述するが、本発明にかかる露光装置を使用してネガ型レジスト上にパターン描画(寸法=10〜1000マイクロメータ)し、所定条件にて現像して得られたレジスト形状測定の実験結果の一例を、横軸をパターン描画時間、縦軸をレジスト膜厚として図4に示す。第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射と第2の照射光源2からの非選択的均一エネルギー線照射とを組み合せてパターン形成する場合には、第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射だけでパターン形成する場合と比べて、この実施結果においては所要のパターン描画時間が約1/3まで短縮され、その結果としてスループット3倍化を実現できた。
本発明の最良の形態としては、少なくとも第1の照射光源によって選択的パターン描画照射される領域では第2の照射光源2から受光する光の積算光量が均一になるように配置される。なお、第2の照射光源2から受光する光の積算光量は、被露光物10表面の各点において波長毎に積算された量である。一例として、図5に例示するような露光装置構成においては、第2の照射光源2から出射された光は、被露光物10表面に至るまでの経路に設置された分光手段3によって分光された状態で被露光物10表面に到達する。ある特定の瞬間においては、被露光物10表面上の位置によって各点が受光する光の波長が異なり、さらに言えば、被露光物10表面上の面内各点において第2の照射光源2から受ける光の強度はある特定の瞬間においては必ずしも同一ではない。しかしながら、被露光物10はステージ上に載せられた状態で露光され、該ステージはステージコントローラ13によってXY2軸方向に移動(走査)されるので、時間的な積分を採ることによって各点において第2の照射光源2から受光する光の積算光量は被露光物10の全面にわたって均一となる。なお、、第2の照射光源2から出射された光を分光するための分光手段3は、第2の照射光源2からの出射光との間で為す角を調整するための機構を内蔵することが望ましく、必要に応じて角度を調整することにより、様々な効果が期待できる。例えば、第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射終了から第2の照射光源2からのエネルギー線照射までの時間を調整するように角度調整できる。あるいは、第2の照射光源2からのエネルギー線の短波長成分は第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射と同時に照射され、第2の照射光源2からのエネルギー線の長波長成分は第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射が終了してから照射されるようにも設定できる。
また、本発明の最も望ましい形態においては第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射と第2の照射光源2からの非選択的均一エネルギー線照射とを同時に実施することにより露光時間の短縮を実現できるが、被露光物の形状、サイズなどの点で同時照射が確保されない場合には、必ずしも同時照射しなくてもよい。同時照射しない場合には、第2の照射光源2から受光する光の積算光量の均一性を確保するために、第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射に先だって第2の照射光源2からの非選択的エネルギー線照射を実施してもよいし、第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射が終了した後に追加的に第2の照射光源2からの非選択的エネルギー線照射を実施してもよい。これらの場合には、第2の照射光源2からの非選択的エネルギー線照射は、第1の照射光源1からの選択的パターン描画とは独立に実施されるので、パターン描画に要する時間の短縮に寄与する。具体的には、第1の基板に対して第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射をしている間に、第2の基板に対して第2の照射光源2からの非選択的エネルギー線照射を実施する。このような手順に従って第1の照射光源1と第2の照射光源2とを使い分けて平行処理することにより、描画時間が短縮される。
なお、第2の照射光源2からの出射光の光軸中心線が被露光物上にくるように設置すれば、積算光量の均一性を確保しやすい。また、第2の照射光源2からの出射光光軸中心線を必要に応じて調整できる機構を付加しておくことが望ましい。本発明に好適な光軸中心線を調整できる機構の具体例としては、第2の照射光源2の取り付け部に付加した角度調整機構、第2の照射光源2から被露光物10までの光学経路内に設置したガルバノミラーなどである。なお、第2の照射光源2からの出射光光軸中心線は、第1の照射光源からの出射光光軸中心に対して平行になる場合と、第1の照射光源からの出射光光軸中心線に対して被露光物10表面で交差する場合において、本発明に好適な効果が得られやすい傾向がある。
また、本発明の露光原理では、第1の照射光源1や第2の照射光源2などの光学系とステージ11上のテーブル112に吸着された被露光物10とが相対的に走査される構造になっていればよい。光学系が固定されていてテーブル112と被露光物10が動く構造でもよいが、ステージ11が固定されていて光学系が動く露光装置でも構わない。図13(a)および図13(b)に例示する構成の露光装置を用いて具体的に説明すると以下のようになる。図13はベッド110とコラム113とコラム113に設置された露光ヘッド100、テーブル111からなる露光装置の概略構成例を示す図であり、図13(a)は正面図、図13(b)は側面図である。ステージ11はテーブル11およびテーブル112上に設置された被露光物10を矢印104および矢印105方向に移動制御できる構成となっており、該制御条件および露光ヘッド100から出力される第1の照射光源1と第2の照射光源2などの光学系による露光条件は、共に制御装置200で制御される。被露光物10の矢印104方向への移動と併せて、被露光物10の所望の領域を露光ヘッド100から光束116が出射されて露光が行われる。コラム113はベッド110上で前後動をすることができ、コラム113の動作によって露光ヘッド100も移動する。さらに、ステージ11は矢印104および矢印105に例示される微動をすることができ、コラム113の動きと併せて被露光物10の所望の領域を露光ヘッド100から出射される光束116が照射することを可能にする。露光ヘッド100の動作およびステージ11の動作を制御するために制御装置200が設けられている。なお、図13(a)および図13(b)に例示する露光装置の構成であって、コラム113がベッド110上に固定されていてステージ11およびテーブル111の動きによって被露光物10の所望の領域を露光ヘッド100から出射される光束116が照射するように制御することも可能であることは言うまでもない。
次に、図13で説明した露光ヘッド100は図3および図4で説明した第1の照射光源と第2の照射光源などの光学系でも良いが、他の例について図6と図9を用いて説明する。
本発明に係る露光装置の別の実施形態については、図6に記載の通り、第1の照射光源1と、第2の照射光源2と、被露光物10を載せるステージ11及びそれを制御するステージコントローラ13を有する点で前記した第一実施例と一致するが、第1の照射光源1をビーム光源とし、光変調光学系をビーム走査光学系としたことに特徴を有する。なお、図6にはビーム走査光学系の一例として第1の方向制御ミラー53と第2の方向制御ミラー54からなるガルバノミラー光学系50を例示してあるが、ポリゴンミラーとf−θレンズの組合せからなるビーム走査光学系でも構わない。図6の露光機構成例では第1の照射光源1から出射されたビーム56はフィルタ51、インテグレータ52、第1の方向制御ミラー53、第2の方向制御ミラー54、結像光学系55を経て被露光物10に至る。一方、第2の照射光源2から出射された光束は方向制御ミラー61および結像光学系62を経て被露光物10を照射する。なお、制御部59は生産計画に基づいて生産すべき製品品種および数量を各露光機に指示するための装置である。続いて、露光ヘッド100の第1の照射光源に係わる光学系の他の実施例として図9を用いて説明する。図9は、ポリゴンミラー304とf−θレンズ305の組合せからなるビーム走査光学系の概略構成を例示した概略図である。図9の露光機構成例では、第1の照射光源1としてYAGレーザ第3高調波を用い、第1の照射光源1から出射されたビームは、照明光学系302および音響光学素子303を経由して、ポリゴンミラー304とf−θレンズ305で走査制御されて被露光物10に至る。
高精度かつ高速のビーム走査が必要な場合には、一般にガルバノミラー光学系よりもポリゴンミラーとf−θレンズからなるビーム走査光学系がより好適となりやすい。本実施例で使用される図6や図9に例示される光変調光学系の紫外光耐光性は十分に高いので、第1の照射光源1としては350〜450nmの範囲の紫外〜近紫外光を含有するエネルギー線を出射できる光源が使用できる。具体的には、YAG第3高調波や半導体レーザなどが例示される。走査光学系で走査されたビームは、上記実施例と同様に、結像光学系を経由して被露光物10の表面に結像されるが、最小寸法は10マイクロメータ程度である。被露光物10は平面ステージ11上に載せられた状態で露光され、ステージコントローラ13によってビーム走査光学系の変調動作と連動するように主制御部30で制御されており、これらの機構が連動することによって被露光物10の全面に所望のパターンを描画される。
第1の照射光源からの出射光(ビーム)で描画された領域は、その領域を含む一回り大きな領域全体が第2の照射光源2からの照射光にさらされる。第2の照射光源2は、全出射エネルギー中1%以上100%以下の強度で350〜450nmの範囲の紫外〜近紫外光を含有するエネルギー線を出射できる光源であり、具体的には、メタルハライドランプや低圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプなどの放電ランプ、YAG第3高調波、半導体レーザなどが本発明に好適に使用される。最も好ましくは、照射エネルギーの制御が容易な半導体レーザ、あるいは安価かつ保守も容易なメタルハライドランプなどであり、使用目的に併せて消費電力、保守管理、照射量の制御性などを鑑みて選択し、必要に応じて、第2の照射光源2から受光する光の波長毎に積算された積算光量が均一になるように選択される。
次に、本発明に係る露光装置のさらに別の実施形態について図7を用いて説明する。第一実施例で記載した露光装置との相違点は、光学系の部分であり、第1の照射光源1から出射した光は第1平面鏡253、第2平面鏡254とその間に設けられたインテグレータ255とを経由した後、フォトマスク220を通過することによって、所望のパターン形状からなる光束に変換される。なお、本実施形態における第1の照射光源1は350〜450nmの範囲の紫外〜近紫外光を含有するエネルギー線を出射できる光源でよい。ここで、図7にはフォトマスク220の前後に結像のための結像光学系として、コンデンサレンズ256およびプロジェクションレンズ257を設けた構成が例示されている。本実施例に好適な第1の照射光源1を例示すると、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどである。所望のパターン形状に変換された光束は、上記最良の実施形態における実施例と同様に、平面ステージ11上に載せられた被露光物10の表面に結像される。なお、本実施例においてはパターン描画のためにステージ走査することは必ずしも必要ではないが、第2の照射光源2から受光する光の波長毎に積算された積算光量を均一にする目的でステージ走査する場合がある。第2の照射光源2からのエネルギー線の照射は第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射と必ずしも同期していなくても構わないが、第1の照射光源1からの選択的パターン描画照射と第2の照射光源2からのエネルギー線の照射との時間的間隔は短いことが望ましい。発明者の検討結果によると、本実施例の構成において最も好ましい時間的間隔は10分以内であるが、被露光物(感光性材料)の種類、形状、用途によってはもっと長時間であってもかまわないので、あらかじめ適正な実験により好ましい時間的間隔を確認しておく事が望ましい。
以上、いずれの実施形態での露光装置も光源として、第1の照射光源1と第2の照射光源と2系統の光源を用いたが、光量積算を図る観点から、同様の効果を狙って単一の照射光源を用いた複数回露光を用いてもよい。例えば、第1の照射光源1を用い、DMDなどの光変調光学系を全面ON状態にし、所定の条件で被露光物10の全面露光を行った後、再び、第1の照射光源を用いて、光変調光学系を一部ON状態にしつつ全面露光がされた被露光物10をパターン描画露光してもよい。
次に、本発明に係る露光方法および該露光方法を用いた配線基板の製造方法の実施形態の1例について図8を用いて説明する。まず手始めに、所定形状の被露光物10を用意し、前記被露光物10の表面に感光性材料を成膜する(図8a)。図8に例示された実施形態では、配線基板用のガラスエポキシ基材10aとその表面にあらかじめ成膜されている銅箔10bからなる銅張りガラスエポキシ基板であり、その表面に成膜された感光性材料10cとしては配線基板の製造工程においてリソグラフィー加工に供される材料を使用したが、本発明はここに例示した以外の材料の組合せに対しても適用できる。例えば、既に内層および最外層に配線層が形成された多層配線基板の表面に成膜したソルダレジスト層の露光工程へも適用可能であるし、その他のパターン形成工程、例えば、光造形加工法における金型作製などへも適用可能である。用途、目的を鑑みて、それに対応する被露光物10やその表面に成膜する感光材料の形状、種類を適宜選択するが、本実施形態に好適な感光材料の成膜後の膜厚はおおむね約2マイクロメータ〜100マイクロメータの範囲である。なお、膜厚が薄いほど精細な加工に適しており、最小加工寸法(線幅)は1マイクロメータ程度である。
表面に感光性材料を成膜された被露光物10は、次の工程で、露光装置のステージ11上に配置される(図8b)。なお、本実施例では図3に例示した露光装置を使用したが、これに限らず、目的に応じて適宜の露光装置、例えば、図6あるいは図7に例示された露光装置を選択しても良いし、図13に例示された構成の露光装置でも構わない。被露光物10をステージ11上への移動には適当な搬送手段、例えば基板ハンドラ(図示せず)が使用され、ステージ上の所定の範囲内に固定される。図8に例示したような平坦な被露光物10の場合には、静電チャックや真空チャックなどの固定方法(図示せず)によって簡便かつ確実に固定することが可能である。
ステージ11上に固定された被露光物10には、あらかじめ所定形状のマークが複数箇所に設けられており、本発明の露光機が装備している計測手段が該マーク(図示せず)の位置、形状、寸法などを計測する。該計測手段によって取得された計測結果から、被露光物10のステージ上における固定位置が求められる。本発明の露光機が装備する演算処理部では、該計測結果とCADシステムから送信されて記憶装置31に格納されている所定の数値とを比較し、光変調光学系5およびステージ11の動きを微調整するための補正値を算出する。記憶装置31に格納されている描画すべきパターンのデータは、上記過程にて算出された補正値に基づく補正が施され、変調制御部9およびステージコントローラ13へそれぞれ分配されて、次工程となるパターン描画工程において変調光学系5およびステージ11を連動制御するために使用される。
次の工程では、ステージ11上に固定された被露光物10は、変調光学系5で変調された変調光を受光し、その表面にパターン描画される(図8c)。本発明では、位置選択的なパターン描画の他に、該パターン描画領域を含むように非選択的なエネルギー線照射を実施する。ここで使用されるエネルギー線は、全出射エネルギー中1%以上100%以下の強度で350〜450nmの範囲の紫外〜近紫外光を含有する光線である事が望ましいが、前記パターン描画に重畳させるように照射してもよいし、パターン描画に先だって照射しても良いし、パターン描画終了後に照射しても良い。なお、本発明者の実験によると、位置選択的なパターン描画の照射量と非選択的な全面エネルギー線の照射量の和は、位置選択的なパターン描画のみでパターン形成する場合の照射量と同じか、あるいは少なくても良いことが確認できた。具体的な照射量の一例を示すと、位置選択的パターン描画のみで所望のパターンを無欠陥で得るためには200mJ/cm2必要であったが、位置選択的なパターン描画20mJ/cm2と非選択的な全面エネルギー線の照射20mJ/cm2とを組み合わせても同等の無欠陥のパターンを形成できた。この実験結果は必ずしも完全に説明できてはないが、相反則不帰の一種であると考えている。パターン描画用パターンを描画するための照射を分割実施したことによって相反則不軌が発現し、その結果として、予想外の低照射量で感光材料に所望の反応を誘起したものと推測される。なお、図8にはパターン描画終了後に非選択的照射する工程を一例として例示してある(図8d)。
非選択的照射は位置合わせが不要なので、被露光物10の位置が固定されていない状態や移動中に実施することも容易である。具体的には、被露光物10をステージ11へ搬送、固定する工程の間に照射しても良いし、被露光物10にあらかじめ設けられた所定形状のマークを観察する工程の間に照射しても良いし、補正係数算出処理中に照射しても構わない。本発明では、これらの処理と平行して非選択的な照射をすることにより、スループットが増大する。
パターン描画終了後の被露光物10は、露光装置から搬出され、所定の現像処理を受けてパターンが定着する(図8e)。図8はネガ型エッチングレジストを用いた配線パターン形成概略工程の例であり、図8eの段階ではエッチングレジストパターンが被露光物表面に形成されている。
次の工程では、上記エッチングレジストパターンを鋳型にして導体をエッチングし、不要となったエッチングレジストを所定の処理条件にて除去する。図8fは、レジスト除去された状態の被露光物10の概略断面構造である。ここに示されている通り、エッチングによって導体加工をすると、一般に、導体断面は台形になりやすいという傾向がある。なお、エッチングによらず、めっきレジストで作った鋳型にめっきして導体パターンを形成すると、導体断面は逆台形になりやすいという傾向がある。
導体パターンは、通常、パターン間絶縁と外力からの保護を目的に、配線カバーレイ80を被せられた後に配線として使用される。図8gはカバーレイ80が形成された状態の概略断面図である。
一方、図8eの工程の後、露光装置内からは始めに処理された第1の被露光物(基板)10が取り去られているので、次の基板が搬入され、上記と同様の工程を繰り返すことによって次の配線基板(第2の被露光物)が製造される。第2の被露光物上に描画される選択的パターン描画の形状は第1の被露光物に描画されたパターンと同じであっても良いが、必ずしもその必要はなく、生産計画や需要変動に基づいて指示されたパターンが描画されることが望ましい。図8hには、上記第1の被露光物とは別のパターンを描画する場合に、上記図8cに相当する工程で第2の被露光物が受光するパターン描画の状況の一例を例示した。
図10(a)、(b)は、上記パターン形成工程において光照射される領域を上面から見た様子を示す概略図である。領域400は非選択的な全面エネルギー線照射される領域であり、その内部にパターンとなる101a、101b、101cがある。図10(a)に示すように、領域400を先に照射した後にパターン部101a、101b、101cを照射しても、逆に、図10(b)に示すように、領域400の照射に先立ってパターン部101a、101b、101cを照射しても構わない。図11(a)、(b)は、非選択的エネルギー線照射領域に若干の制限を設けた実施形態であり、領域410の広いエネルギー線照射される領域の内部に最終的にパターンとなる111a、111b、111cがある。図11(a)に示すように、領域410を先に照射した後にパターン部111a、111b、111cを照射しても、逆に、図11(b)に示すように、領域410の照射に先立ってパターン部111a、111b、111cを照射しても構わない。
以上説明した実施の形態によれば、パターン描画におけるスループット向上を目的とした光源高輝度化の限界を突破できる高スループットなパターン描画を実現できる。
1…第1の照射光源、2…第2の照射光源、3…分光手段、4…有害光線成分除去のための光学的手段、5…光変調光学系、6aおよび6b…導光光学要素、7…結像光学系、7a…第1結像レンズ、7b…マイクロレンズアレイ、7c…回折格子、7d…第2結像レンズ、8…ビーム成形光学系、9…変調制御部、10…被露光物、11…ステージ、13…ステージコントローラ、220…フォトマスク、30…主制御部、31…記録装置、32…データ表示部、33…入力手段、40…ネットワーク、41…CADシステム、50…ミラー光学系、51…フィルタ、52…インテグレータ、53…第1の方向制御ミラー、54…第2の方向制御ミラー、55…結像光学系、56…ビーム、59…生産計画制御装置、61…方向制御ミラー、62…結像光学系、255…インテグレータ、256…コンデンサレンズ、257…プロジェクションレンズ、100…露光ヘッド、110…ベッド、111…テーブル、113…コラム、116…光束、200…制御装置、302…照明光学系、303…音響光学素子、304…ポリゴンミラー、305…f−θレンズ、500…空間変調素子の筐体外形、501a…空間変調素子によって変調された光束が結像する領域の1、501b…空間変調素子によって変調された光束が結像する領域の1、501c…空間変調素子によって変調された光束が結像する領域の1、501d…空間変調素子によって変調された光束が結像する領域の1、501e…空間変調素子によって変調された光束が結像する領域の1。