JP2007014916A - 新規固相担体及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 生体関連物質、該生体関連物質と結合可能な化合物、及び支持体を含むマトリックスが表面に形成された固相担体。
【選択図】 なし
Description
このような生体関連物質が固定化された固相担体を製造する方法、即ち、固相担体表面に生体関連物質を固定化する方法については、これまでに幾つかの報告がされている。
また、固相担体であるスライドガラスを、ポリアクリルアミドの膜で被覆したものも市販されている(パーキンエルマー社製 HydroGel Coated Slide)。この製品は、水分を含有し膨潤したポリアクリルアミドゲルを使用するため、乾燥が懸念されるナノリットルオーダーのサンプルを滴下することに適しており、さらにポリアクリルアミドに生体関連物質を吸着するため活性化を不要とする利点を有する。
一方、例えば、非特許文献1には、生体関連物質を固相担体に固定化するにあたって、予め多孔性の形状を持つ固相担体(マイクロチャンネルウェハ)を利用し、表面積を増大させることにより、より多くの生体関連物質を結合させる方法が記載されている。本方法によれば、固相担体表面が平坦な場合よりも、単位面積あたりの生体関連物質の導入量(固定化量)を向上させることができるという利点から、この方法は上記と同様、広範囲な分野に応用されている。
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、固相担体上に、生体関連物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体関連物質が精度良く固定化された固相担体であって、安価で簡便に作製できるものを提供することを目的とする。また、該固相担体の製造方法、該固相担体を含むバイオセンサー、診断デバイス、生体関連物質固定化キット、並びに該固相担体を利用したイムノアッセイ等の測定方法を提供することを目的とする。
(1)生体関連物質、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物、及び支持体を含むマトリックスが表面に形成されていることを特徴とする固相担体
が提供される。
また、この発明の好ましい態様によれば、
(2)生体関連物質が、該生体関連物質と結合可能な化合物によって架橋されていることを特徴とする上記(1)に記載の固相担体、
(3)マトリックス中に空隙を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の固相担体、
(4)マトリックスが、溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、該溶媒を除去することにより形成されるものであることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の固相担体、
(5)溶媒が水であることを特徴とする上記(4)に記載の固相担体、
(6)マトリックスの空隙率が5%以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の固相担体、
(7)マトリックスの膜厚が乾燥状態で20nm以上であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の固相担体、
(8)化合物が、1分子中に2箇所以上の結合官能基を有するものであることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の固相担体、
(9)化合物が高分子化合物であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の固相担体、
(10)化合物が、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の固相担体、
(11)支持体が、約10nm〜100μmの平均径を有する粒子であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の固相担体
が提供される。
(12)溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、該溶媒を除去することによりマトリックスを形成することを特徴とする、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体の製造方法
が提供される。さらに別の態様によれば、
(13)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体を製造するための生体関連物質固定化キットであって、少なくとも支持体と、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物とを含むことを特徴とするキット、
(14)生体関連物質、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物、及び支持体を含むマトリックスが、少なくとも2種以上、固相担体上の別々の領域に配置されていることを特徴とする生体関連物質のアレイ、
(15)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体及び/又は上記(14)に記載のアレイを含むバイオセンサー、
(16)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体及び/又は上記(14)に記載のアレイを含む診断デバイス
が提供される。また、
(17)検体中の少なくとも1種の分析物についてアッセイする方法であって、以下の工程(a)及び(b):
(a)該検体を、該分析物と反応し得る生体関連物質を少なくとも1種含む上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体及び/又は上記(14)に記載のアレイに送達する工程;および
(b)該生体関連物質と該分析物との相互作用、又は、該分析物と反応する標識物質を加えることにより生じる反応を検出することにより、該分析物の存在もしくは量について検出する工程
を有することを特徴とする方法、
(18)少なくとも検体が流体であって、該検体の送達がフローにより行われることを特徴とする上記(17)に記載の方法、
(19)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固相担体及び/又は上記(14)に記載のアレイ上に設けられた参照領域における反応を検出し、アッセイの成否判定、又は、検出された分析物の存在もしくは量の校正を行う工程をさらに有することを特徴とする上記(17)又は(18)に記載の方法、
(20)2種以上の分析物を並行してアッセイするために、さらに以下の工程(c):
(c)少なくとも2種以上の分析物の存在もしくは量と、特定の症状とを関連づける工程
を有することを特徴とする上記(17)〜(19)のいずれかに記載の方法
が提供される。
本発明の固相担体は、生体関連物質が固定化された固相担体(以下適宜、「本発明の生体関連物質固定担体」という)であって、固相担体表面に、マトリックス(以下適宜、「本発明のマトリックス」という)を有する。ここで、本発明のマトリックスは、生体関連物質、上記生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物(以下適宜、「固定化用化合物」という)、及び、支持体を含むマトリックスである。即ち、本発明のマトリックスは、図1に模式的に示すように、生体関連物質と固定化用化合物と支持体とを含み、その骨格が、支持体を核として生体関連物質と固定化用化合物とが支持体に結合し、鎖状、網目状、及び/又は、ブロック状等の形状で結合した構造を有するマトリックスである。なお、図1は、本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体関連物質固定担体の一例の断面を拡大して示す模式図である。また、図1において、塗りつぶされた円形部分が生体関連物質を表わし、線状部分が固定化用化合物を表わし、白抜きの円形部分が支持体を表し、それ以外の空白部が空隙層を表す。
本発明の生体関連物質固定担体は、溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、該溶媒を除去することによりマトリックスを形成させる工程を経て製造される。
固相担体は、表面に本発明のマトリックスを形成するための基体となるものであり、固相担体の表面に本発明のマトリックスを形成したものが、本発明の生体関連物質固定担体である。本発明で用いる固相担体に制限は無く、本発明のマトリックスを形成する対象となるものであれば、任意の材質、形状、寸法のものを用いることができる。
材料で表面を被覆してからマトリックスを形成するようにしても良い。さらに、固相担体とマトリックスとを結合させるために、固相担体に官能基を導入しても良い。その官能基は任意であるが、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アミノアルデヒド基、ヒドラジド基、カルボニル基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、スクシンイミド基、マレイミド等の、化学結合により固相担体とマトリックスとを結合させる官能基が挙げられる。また、本発明の生体関連物質固相担体製造時に溶媒として水を用いる場合には、アルキル基、フェニル基等の疎水相互作用による物理吸着によって固相担体とマトリックスとを結合させる官能基を用いることもできる。
また、これらの固相担体表面において、混合溶液が供給される該固相担体表面の別々の既知の領域の周囲を疎液性(周囲疎液性)表面にしても良い。
また、被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、金属被覆チップ、スライドガラス、ファイバースライド、シート、ピン、マイクロタイタープレート、キャピラリーチューブ、ビーズ等が挙げられる。
支持体は、表面に本発明のマトリックスを形成するための核となるものであり、固相担体の表面に本発明のマトリックスを形成したものが、本発明の生体関連物質固定担体である。本発明で用いる支持体に制限は無く、本発明のマトリックスを形成する対象となるものであれば、任意の材質、形状、寸法のものを用いることができる。
この中でも、特に好ましくはラテックス粒子が用いられる。ラテックス粒子は、材質や粒径等は任意であって、用いる目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリスチレンラテックス、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体、アクリル酸とスチレンの共重合体、スチレンとマレイン酸の共重合体、スチレンとメタクリル酸の共重合体、スチレンとアクリル酸とアルキルアクリレートなどの共重合体、酢酸ビニルとアクリル酸の共重合体等のラテックスが挙げられる。粒径としては、本発明のマトリックスが形成されるものであればいかなる大きさでもよいが、粒径が小さすぎると十分な空隙や膜厚が得られず、大きすぎると十分な膜の強度が得られなくなることがある等の支障をきたすので、用いる条件等に応じて適当なものを選択する。例えば、10nm〜100μm程度であって、好ましくは100nm〜10μmである。また、異なる粒径を有するラテックス粒子を混合して用いることもできる。このようにして条件を調整することにより、形成されるマトリックスの空隙率、膜厚等を最適化することができる。
生体関連物質は、固相担体に固定化する物質であり、その目的に応じて、任意の物質を用いることができる。具体例を挙げれば、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子が挙げられる。また、このほか、例えば細胞等の生体分子以外の物質を生体関連物質として用いることもできる。
分析物は、通常、生体関連物質と特異的に相互作用する物質(以下適宜、「作用物質」という)である。ここで、生体関連物質と作用物質との「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、通常は、共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。ただし、本明細書に言う「相互作用」との用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合としては、配位結合を含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
例えば、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab′)2、Fab′、Fab、レセ
プターや酵素とその派生物、核酸、天然あるいは人工のペプチド、人工ポリマー、糖質、脂質、無機物質あるいは有機配位子、ウイルス、細胞、薬物等が挙げられる。
また、低分子化合物としては、相互作用する能力を有する限り、特に制限はない。機能が未知のものでも、あるいはタンパク質に結合する能力が既に知られているものでも用いることができるが、医薬候補化合物等が好適に用いられる。
また、生体関連物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物(以下適宜、「固定化用化合物」という)は、上記生体関連物質及び/又は支持体と結合しうる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。したがって、固定化用化合物としては、上記生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な官能基(以下適宜、「結合官能基」)を有する化合物を任意に用いることができる。ここで、結合官能基としては、上記の生体関連物質や支持体に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体関連物質の種類や本発明の生体関連物質固定担体の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
以下、生体関連物質との結合について具体的に説明する。結合官能基と結合する生体関連物質としては、例えば、タンパク質、核酸、糖等が挙げられる。
例えば、支持体がラテックス粒子である場合、ラテックス粒子表面に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等と固定化用化合物の結合官能基とが結合する。このとき、アミノ基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としては、スクシンイミド基、エポキシ基等が挙げられる。また、ヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、チオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
固定化用化合物が結合官能基を有する場合、固定化用化合物は、1分子中に通常2箇所以上、好ましくは3箇所以上、生体関連物質及び/又は支持体との結合官能基を有しているものが好ましい。また、該化合物は複数種を混合して用いることもできるが、前記のような複数の結合箇所を有するものを少なくとも1種以上含むことが好ましい。このような構成とすれば、本発明のマトリックスの構造を形成しやすくするためである。具体例を挙げると、1分子中に2箇所以上の結合官能基を有する化合物を用いることにより、濃縮を行なった場合等にマトリックスを確実に形成させることができるようになる。
ックスの構造を様々に設計することができる。例えば、固定化用化合物が有機溶媒に混和できれば、固定化用化合物の合成時に結合官能基を保護することを目的として合成を有機溶媒中で行なうことができるようになる。
また、固定化用化合物は無電荷であることが望ましい。本発明の生体関連物質固定担体を用いて、選択的生体関連物質間相互作用を検出しようとする時、検体中の検出対象物質が支持体及び/又は固定化用化合物と同じ電荷を有していて静電的反発力が過度に強い場合には、生体関連物質との間の特異的な相互作用が妨げられる虞がある。また、検出対象物質と支持体及び/又は固定化用化合物とが反対の電荷を有していた場合、検出対象物質と支持体及び/又は固定化用化合物とが非特異吸着等の非特異的相互作用を生じることが推測されるためである。
固定化用化合物の例としては、例えば、有機化合物、無機化合物、有機無機ハイブリッド材料などが挙げられる。また、固定化用化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
固定化用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、上記の条件を満たす合成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。ただし、通常は、生体関連物質及び/又は支持体と結合することのできるモノマーを有していることが望ましい。また、通常は、合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、親水性モノマーを有していることが好ましい。さらに、好ましくは、上記の生体関連物質及び/又は支持体と結合することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合物を用いることが望ましい。即ち、合成高分子化合物の合成には、少なくともモノマー種として、生体関連物質及び/又は支持体と反応してできるコンジュゲートを形成することができ、且つコンジュゲート間で結合し、鎖状及び/又は網目状、ブロック状等に結合した構造を構築するための結合官能基を有するモノマーと、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーとを用いて共重合させることが好ましい。さらに、合成高分子化合物の溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で疎水性モノマーを共重合してもよい。
−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。
ウムとの混合物であってもよい。
さらに、高分子化合物は加水分解等により合成される高分子を使用しても良い。その具体例としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成されるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
さらに、この他、固定化用化合物として、市販の合成高分子化合物を用いることができる。その具体例を挙げると、日本油脂社製のSUNBRITシリーズ DE−030AS、DE−030CS、DE−030GS、PTE−100GS、PTE−200GS、HGEO−100GS、HGEO−200GSなどが挙げられる。
さらに、固定化用化合物として用いられる有機無機ハイブリッドとしては、例えば、金属コロイドを高分子で被覆したもの(例えば、金、銀、白金等の粒子を保護コロイドで被覆したもの)、クレイに高分子を吸着させたものなどが挙げられる。なお、これらの有機無機ハイブリッドは公知の方法で合成することが可能である(ポリマー系ナノコンポジット、工業調査会、中條澄著などを参照)。 さらに、これらの有機無機ハイブリッドに生体関連物質を結合官能基を修飾することによって、固定化用化合物として用いることもできる。
本発明の生体関連物質固定担体を製造する際には、溶媒の存在下、少なくとも上述した支持体、生体関連物質、及び固定化用化合物を共存させた混合物を固相担体に供給する。
溶媒中において、支持体と生体関連物質と固定化用化合物は溶媒に混和できればその混和状態は任意であり、溶解していても分散していてもよいが、支持体と生体関連物質と固定化用化合物とが安定して結合するためには、生体関連物質及び固定化用化合物は溶解していることが好ましい。支持体は十分に混和、分散されていればよい。
さらに、溶媒に水を用いる場合、水としては、純水のほか、生体物質や固定化用化合物以外の媒質を溶解した水溶液を用いることもできる。その例としては各種緩衝液を挙げることができ、その具体例としては、炭酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、HEPESバッファーなどが挙げられる。
なお、溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
混合物は、溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させたものである。具体的には、上述した溶媒中に、支持体、生体関連物質、及び固定化用化合物が共存している混合物である。また、混合物中において支持体と生体関連物質及び固定化用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。
なお、上記の混合物には、支持体、生体関連物質、固定化用化合物、及び溶媒の他、任意の添加剤を共存させても良い。添加剤の例としては、例えば、塩、酸、塩基、バッファー、グリセリン等の保湿剤、生体関連物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤、変性剤などを挙げることができる。
本発明の生体関連物質固定担体を製造する際には、上述した混合物を、固相担体に供給する。即ち、上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。その具体的な操作は任意であるが、例えば、あらかじめ混合物を用意してその混合物を固相担体に接触させてもよいし、混合物の各成分を別々に用意し、固相担体上でそれらを混合させて混合物を調製し、固相担体に混合物を接触させるようにしてもよい。具体的には、例えば、支持体を含む分散液と生体関連物質を含む溶液(水溶液等)と化合物を含む溶液(水溶液等)とを固相担体上に各々供給した後に固相担体上で両溶液を混合する等により行なうことができる。また、予め混合物を用意しておく場合、供給前の混合物中で後述するコンジュゲート及び/又はマトリックスを作製しておき、その後、混合物を固相担体に供給するようにしても良い。
次いで、固相担体表面に、支持体と生体関連物質と化合物との結合が、該支持体を核として、該生体関連物質及び/又は該支持体に対して該化合物が結合部位によって結合することで形成させることにより、鎖状、網目状、ブロック状等の形状で結合してなるマトリックスを形成させる。混合物を調製すると、混合物中において支持体と生体関連物質と固定化用化合物とが結合し、これら3種類が任意の比率で含まれて構成されるコンジュゲートが生成される。このコンジュゲートは、支持体と生体関連物質と固定化用化合物とが結合したもので、支持体と生体関連物質と固定化用化合物とを溶媒中で混合し、互いの分子を接触させるだけで作製することができる。したがって、固相担体に供給された混合物内には、通常、コンジュゲートが存在している。
本発明の固相担体は、好ましくは、上述のように溶媒の一部もしくは全部を除去することにより形成される空隙をマトリックス中に有するものである。溶媒の除去は、上述のとおり、乾燥により行われることが好ましい。この乾燥の工程を経ることによって、前記コンジュゲートが強固なマトリックスを形成し、さらにマトリックス中に空隙が生成される。
なお、マトリックスを固相担体に十分に固定化するために、混合物の供給後、所定の時間だけ固相担体を静置することが望ましい。静置の時間は任意であるが、通常24時間以下、好ましくは12時間以下が望ましい。すなわち、固相担体に前記混合物を供給した後、一定時間静置して十分にコンジュゲートの形成と担体表面への固定化を促進させてから、乾燥等による溶媒の除去を行えばよい。このような工程を経ることにより、十分な空隙と膜厚を有する本発明のマトリックスが固相担体上に強固に形成された本発明の固相担体を作製することができる。
以上のように、上記の方法は、溶媒中に支持体と生体関連物質と固定化用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、固相担体表面にマトリックスを形成させることができ、これにより、本発明の生体物質固定担体を製造することができる、即ち、固相担体上に生体関連物質を固定化することができるという、非常に簡便な方法である。
例えば、マトリックス中の生体関連物質に、さらに異なる生体関連物質を結合させるようにしても良い。これを利用すれば、生体物質固定担体の製造後、マトリックス中の生体関連物質に特定的に結合するように修飾した別の生体関連物質を後から結合させ、結果として、固相担体に上記の別の生体関連物質を高密度に固定化することができる。具体例を挙げると、生体関連物質としてアビジンを用いて、このアビジンと支持体と固定化用化合物とを結合させてマトリックスを形成し、生体物質固定担体を製造する。その後、ビオチンで修飾した別の生体関連物質を用いて、アビジン−ビオチン相互作用により上記の別の生体関連物質を固定化することができる。また、同様にヒスチジンタグもしくはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ等を介して、生体関連物質を固定することも可能である。
本発明の生体関連物質固定担体は、上述した方法により製造されるものである。また、本発明の生体関連物質固定担体が有するマトリックスは、支持体を核として上記のコンジュゲートが多数結合して構成されたものであり、通常は、図1に示される様な、生体関連物質と固定化用化合物とが鎖状及び/又は網目状、ブロック状に結合した形状を有する構造体である。
ここで、空隙としては、本発明のマトリックス中に立体的に空間が形成されていればよく、マトリックスが有する鎖状、網目状、もしくはブロック状等の形状の間に空間を生じているものである。好ましくは、クラック(裂け目、割れ目)様の空隙、多孔性物質等が有するマイクロポア様の空隙等であるが、これを用いたときに十分な反応性が確保できるものであればいかなるものでも良い。なお、これらの空隙の形状は、例えば、電子顕微鏡等により確認することができる。
空隙率は目的に応じて任意であるが、例えば、マトリックスが乾燥した状態において、SEM又はTEM像の断面図を画像解析することにより得られる空隙率が、5%以上であることが好ましい。画像解析の方法としては、それ自体公知の画像処理方法を適宜選択して応用することができるが、例えば、取得したSEM写真をスキャナーで取り込み、ノイズ除去を行った後に、背景画像を作成してシェーディング補正を行い、粒子領域を設定して設定された閾値において画像を二値化してこれらの面積比を求める方法等が挙げられる。
本発明の生体関連物質固定担体は、生体関連物質が従来よりも多量に精度良く安価に固定化されているものである。
固定化量を増加させるための手法としては、例えば、高濃度の生体関連物質を含む溶液を直接固相担体にスポッティングする方法が繁用されている。しかし、この方法では、滴下された溶液(液滴)が乾燥する過程において、液滴からの蒸気Fluxが場所によって一定ではなく、液滴の外側からのFluxが大きいことが知られている。すなわち、液滴の内部を考えたとき、液滴の中心から端部へ溶液のFluxが生じており、それに伴って溶質である生体関連物質も中心から端部へと流れていくので、溶媒の蒸発に伴って生体関連物質が液滴の端部で析出し、スポット周辺部に局在して高濃度の生体関連物質が固定化され、結果的にリング状のスポットを形成してしまうことが知られている。このリング状のスポットは、特に反応後の測定工程において大きな問題となり、CV値を上昇させて測定精度を低下させる原因のひとつとなる。
さらに例えば、生体関連物質と化合物のみを用いてマトリックスを形成させた場合は、生体関連物質のみを担体に結合させるよりも多くの生体関連物質を固定化可能ではあるが、通常は十分な膜厚や空隙を形成することが難しく、また、スポッティングを行った場合にスポットがリング状になり、十分な精度を得ることが困難である。たとえ多量の生体関連物質を固定化させて十分な膜厚を確保できたとしても、空隙が十分に形成されていないと、膜中に含まれる生体関連物質の反応性が損なわれたり、これと反応すべき作用物質が十分に拡散しなかったりして反応効率が低下することがある。特に、例えば、生体関連物質と検出対象物質の組み合わせとして、抗原と抗体、タンパク質とリガンド等を用いる場合には、これらの間に生じる抗原抗体反応等は微弱な生物学的反応であるので、固定化量が多量であって、さらに固定化された物質の生物学的活性が維持されおり、かつ、反応にあずかれるように表面に露出している必要がある。
上述した生体関連物質固定担体を製造するためには、少なくとも支持体及び固定化用化合物をキット化した生体関連物質固定化キットを用いても良い。該生体関連物質固定化キットを用いれば、固相担体上に上記マトリックスを簡単に作製でき、本発明の生体関連物質固定担体を簡単に製造できるため、生体関連物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化することが可能となる。
また、生体関連物質固定化キットに備えられる固定化用化合物は、上述したものと同様である。また、生体物質固定化キットにおいて、固定化用化合物はどのような状態で備えられていても良く、例えば、任意の溶媒に溶解した溶液、任意の分散媒に分散した分散液、粉末状や塊状の固体など、その存在状態は任意である。
例えば、溶媒をさらに備えていてもよい。溶媒としては、生体関連物質固定担体の製造に用いる溶媒として上述した溶媒と同様である。さらに、生体関連物質固定化キットにおいて、この溶媒は、上記支持体、固定化用化合物と別に備えられていても良く、支持体や固定化用化合物の溶媒や分散媒等として支持体や固定化用化合物と一体に備えられていても良い。
本発明の生体関連物質固定担体は、産業上の広い範囲において用いることが可能である。具体的な用途に制限は無く、任意の用途に用いることができるが、通常は、生体関連物質と、その生体関連物質と特異的に相互作用する作用物質(分析物)との「相互作用」を利用した用途に用いて好適である。
また、例えば、本発明の生体関連物質固定担体は、上記バイオセンサーとしての性質を利用して診断デバイス等に好適に用い得る。診断デバイスの場合には、例えば、抗体、抗原、酵素等のタンパク質や、DNA、RNA等の核酸、薬物や抗生物質等の低分子化合物等を検出対象とすることが多く、その測定方法としては、好ましくは化学発光法、蛍光法、RI法等が用いられる。
以下に、化学発光法を用いて抗原抗体反応を検出する場合を例に挙げて、本発明の生体関連物質固定担体を用いたアッセイ方法についてさらに具体的に説明する。
このとき用いられる酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリ性ホスファターゼ(ALP)等が挙げられ、基質としては、HRPを用いた場合にはルミノール、ALPを用いた場合には1,2−ジオキセタン等が用いられる。
また、この様なアッセイ法は、本発明の生体関連物質固定担体もしくはアレイへの検体等の送達をフローの条件下で行うこともできる。このとき、少なくとも検体が流体であることが好ましく、さらに好ましくは、他の試薬も流体のものを用いる。まず、分析物である抗原に対する抗体(1次抗体)が支持体及び固定化用化合物と共に固定化された生体関連物質固定担体を含むセル(フローセル)を作製し、該セルへ検体等をフローにて送達させて、検体中の該抗原を一定時間反応させる。次に、該フローセルに同じくフローにて洗浄液を送達することにより、未反応の抗原及び抗原以外の共存物質を除去する。その後、該フローセルに酵素により標識された該抗原に対する抗体(標識2次抗体)を含む溶液を、一定時間、同じくフローにて送達することによって反応させる。再度、該フローセルに洗浄液をフローにて送達し、余剰な標識2次抗体を除去して、1次抗体、抗原、酵素標識2次抗体間にサンドイッチを形成させる(サンドイッチ法)。用いられる方法、酵素、検出器等に関しては、前記したものと同様のものが用いられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、実施例の説明において、特に断らない限り、%は重量%を表わす。
まず最初に、本発明の生体関連物質固定担体を作製するための、生体関連物質と結合可能な化合物として、ポリマーA及びBの2種類を合成した。
[製造例1:ポリマーAの合成]
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)0.564重量部とN−アクリロイロキシスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)0.169重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)8.75重量部とをよく混合し、50mLの四つ口フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液をオイルバスにて60℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.008重量部を脱水ジオキサン0.5gに溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、8時間行なった。
得られたポリマーAについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行なった結果、重量平均分子量(Mw)が約86000と見積もられた。
また、得られたポリマーAに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、NMR測定からNAS/NAM=30/70と見積もられた。
モノマーとして、NAM及びNASに代えてジメチルアクリルアミド(DMAA、KOHJIN社製)0.793重量部、及び、NAS 0.338重量部を用い、溶媒である脱水ジオキサンの使用量を18.37重量部とし、重合開始剤であるAIBNの使用量を0.00164重量部とした以外は、製造例1(ポリマーAの合成)と同様にして、ポリマーBを得た。
また、ポリマーBに含まれるNASとDMAAとのモル比(NAS/DMAA)は、NMR測定からNAS/DMAA=43/57と見積もられた。
次に、本発明の生体関連物質固定担体の基体となる固相担体を調製した。
[製造例3:センサチップA]
測定用センサチップには、大きさが縦2.5cm×横2.5cm×厚さ1.2mmの 平滑、平板状プラスチックの基体表面に、厚さ約80nmで金を蒸着した金被覆センサチップを用いた。
この金被覆センサチップを、10mMの16−メルカプトヘキサデカン酸(16−MELCAPTOHEXADECANOIC ACID;ALDEICH社製)エタノール溶液に浸漬させ、60℃で2時間反応させ、表面処理を行なった。反応終了後、金被覆センサチップをエタノール及び脱塩水で洗浄した。この表面処理は、金被覆センサチップ表面に金−チオール結合を介してカルボキシル基を導入するものである。
以下の方法により、本発明の生体関連物質固定担体を作製するための支持体を調製した。
[製造例4:牛血清アルブミン固定化ラテックス]
10%ポリスチレンラテックス水溶液(日本合成ゴム社製、粒径0.101μm)200μLと0.1%牛血清アルブミン(SIGMA社製)、0.15M塩化ナトリウム含有0.1Mリン酸バッファー(pH7.4:以下リン酸希釈バッファー)800μLとを混合し、室温にて30分間、撹拌した後、遠心して上清を除去した後、沈殿物に0.1%牛血清アルブミン(SIGMA社製)、0.15M塩化ナトリウム含有0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)200μLを加え、10%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(支持体)とした。
以下に記載のとおり、本発明の生体関連物質固定担体としてバイオセンサチップ1〜6を調製した。また、比較用バイオセンサチップ1〜4を調製した。
[製造例5:バイオセンサチップ1]
バイオセンサチップ1は、前記センサチップAに、ポリマーA(生体関連物質と結合可能な化合物)、1%マウスIgG(生体関連物質)、及びラテックス(支持体)を混合したものを滴下して固定化させて作製した。
まず、上記10%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(粒径0.101μm:支持体)10μLに、上記ポリマーA(固定化用化合物)を0.1Mのリン酸バッファー(pH7.2)を用いて、1%に調製したポリマーA水溶液10μLと、1%マウスIgG(LAMPiREBIOLOGICAL LABORATORIES社製;生体関連物質)水溶液100μLとを混合し、その混合液0.5μLを、上記センサチップAに滴下し、37℃、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、溶媒を室温にて自然乾燥により15時間乾燥させることにより、マトリックスを形成させた後、3%牛血清アルブミン(SIGMA社製)含有0.5Mエタノールアミン塩酸塩(SIGMA社製,pH8.5)水溶液に30分間振とう下、浸漬させて未反応スクシンイミド基をブロッキングし、さらに、脱塩水を用いて基板を洗浄後乾燥し、本発明の生体物質固定担体としてのバイオセンサチップ1とした。
バイオセンサチップ2は、バイオセンサチップ1と同様にして作製したが、ラテックス濃度を4段階に設定し、バイオセンサチップ2(a)〜(d)の4種類を作製した。
まず、上記牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(粒径0.101μm:支持体)を上記リン酸希釈バッファーを用いて0%、2%、10%、40%にそれぞれ調製した水溶液10μLと上記ポリマーA(固定化用化合物)を上記リン酸バッファーを用いて1%に調製した水溶液10μLとを、上記マウスIgGを上記のリン酸バッファーを用いて1%にそれぞれ調製した水溶液100μLとそれぞれ混合し、その混合液0.5μLを、上記センサチップAに滴下し、37℃、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、製造例5(バイオセンサチップ1の作製)と同様にして自然乾燥、ブロッキング及び洗浄を行ない、バイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのバイオセンサチップを、バイオセンサチップ2とした。
バイオセンサチップ3は、前記センサチップAに、ポリマーA、マウス抗体F(ab’)2(生体関連物質)、及びラテックスを固定化させたものである。ポリマーA及びラテックスはそれぞれ2種類の濃度を設定し、バイオセンサチップ3(a)〜(d)の4種類を作製した。
バイオセンサチップ4の作製は、上記製造例5に記載のバイオチップ1の作製方法と同様にして行ったが、支持体として用いるラテックスとして、2種類の粒径のものを混合して用いた。
ポリスチレンラテックス水溶液として、20%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(日本合成ゴム社製、粒径0.101μm)7.5μLと、40%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(日本合成ゴム社製、粒径3.26μm)2.5μLとの混合ラテックス溶液を用いた。40%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(粒径3.26μm)の作製は、製造例4において20%牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液(日本合成ゴム社製、粒径0.101μm)を作製した方法と同様にして行った。
その他は、製造例5(バイオセンサチップ1の作製)と同様にして、バイオセンサチップ4を作製した。
バイオセンサチップ5は、上記製造例8に記載のバイオチップ4の作製と同様にして行ったが、化合物としては、ポリマーBを用いた。
固定化用化合物として、ポリマーAに代えて前記ポリマーBを用いた他は、すべて製造例8(バイオセンサチップ4の作製)と同様にして、バイオセンサチップ5を作製した。
バイオセンサチップ6は、前記センサチップAに、ポリマーA、抗HBs抗原マウスモノクローナル抗体F(ab’)2(生体関連物質)、及びラテックスを混合したものを用いて作製した。
比較用バイオセンサチップ1は、化合物及び支持体を用いず、1%マウスIgG(生体関連物質)のみを直接前記センサチップAに固定化したものである。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液、ポリマーA水溶液、及びマウスIgG水溶液の混合液の代わりに、1%マウスIgG水溶液(生体関連物質水溶液)0.5μLのみを用いた他は、製造例5(バイオセンサチップ1の作製)と同様にしてバイオセンサチップを作製した。こうして作製したバイオセンサチップを比較用バイオセンサチップ1とした。
比較用バイオセンサチップ2は、支持体を用いず、1%マウスIgG(生体関連物質)及びポリマーAを混合して、前記センサチップAに固定化して作製した。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液、ポリマーA水溶液、及びマウスIgG水溶液の混合液の代わりに、1%ポリマーA水溶液10μLと、1%マウスIgG水溶液100μLとを混合し、その混合液0.5μLを用いて、製造例5(バイオセンサチップ1の作製)と同様にしてバイオセンサチップを作製した。こうして作製したバイオセンサチップを比較用バイオセンサチップ2とした。
比較用バイオセンサチップ3は、化合物を用いず、1%マウスIgG(生体関連物質)及びラテックス溶液(支持体)を混合して、前記センサチップAに固定化して作製した。
10%ポリスチレンラテックス水溶液(日本合成ゴム社製、粒径0.101μm)200μL、0.1%マウスIgG(LAMPiREBIOLOGICAL LABORATORIES社製;生体関連物質)、及び0.15M塩化ナトリウム含有0.1Mリン酸バッファー(pH7.4:以下リン酸希釈バッファー)800μLを混合し、室温にて30分間撹拌した後、遠心して上清を除去した。得られた沈殿物に0.1%牛血清アルブミン(SIGMA社製)、0.15M塩化ナトリウム含有0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)200μLを加え、10%マウスIgG固定化ラテックス溶液とした。
比較用バイオセンサチップ4は、支持体を用いず、抗HBs抗原マウスモノクローナル抗体F(ab’)2(生体関連物質)及びポリマーAを混合して、前記センサチップAに固定化して作製した。
牛血清アルブミン固定化ラテックス溶液とポリマーA水溶液と抗HBs抗原マウスモノクローナル抗体F(ab’)2水溶液との混合液の代わりに、1%に調製したポリマーA水溶液10μLと、1%抗HBs抗原マウスモノクローナル抗体F(ab’)2水溶液100μLとを混合し、その混合液0.5μLを用いた他は、製造例10に記載のバイオチップ6の作製方法と同様にしてバイオセンサチップを作製した。こうして作製したバイオセンサチップを比較用バイオセンサチップ4とした。
製造例5(バイオセンサチップ1)〜8(バイオセンサチップ4)、及び、比較製造例1(比較用バイオセンサチップ1)〜3(比較用バイオセンサチップ3)で作製したバイオセンサチップを用いて、マウスIgG−抗マウスIgG間の抗原抗体反応を検出する化学発光測定を行った。
製造例10及び比較製造例4で作製したバイオセンサチップを用いて、HBs抗原−抗HBs抗体間の抗原抗体反応を検出する化学発光測定を行なった。
検体(分析物、作用物質)としては、組換えHBs抗原(サブタイプadw:自製)を用い、HBs抗原測定用ラベル体としてビオチンでラベル化したウサギ抗HBs抗原F(ab’)2(イムノプローブ社製)を用いた。ウサギ抗HBs抗原F(ab’)2のビオチン化は、実施例1のウサギ抗マウスIgGの代わりにウサギ抗HBs抗原F(ab’)2を用いた以外は全て同様にして作製した。
バイオセンサチップ1と比較用バイオセンサチップ1〜3を用いて測定した化学発光測定結果を表1に示す。これらの結果より、バイオセンサチップ1は比較用バイオセンサチップ1、2、3の何れのチップと比較しても、発光強度が高く、再現性が高い(CV値が小さい)ことが確認された。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下した8スポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例6で作製した支持体濃度が異なるバイオセンサチップ2(a)〜(d)を用いて、支持体濃度の変化による影響を調べた。化学発光測定の結果を表2に示す。
これらの結果より、支持体の濃度が高くなるに従い、発光強度が高く、再現性(CV)が高くなることが確認されたが、濃度が高すぎるとブランク値(ビオチン化抗マウスIgG濃度が0ng/mLのときの発光強度)も上昇してしまうので、最適な支持体濃度が存在することが分かった。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下した8スポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例7で作製したバイオセンサチップ3(a)〜(d)を用いて、支持体の有無及び固定化用化合物の濃度変化による影響を調べた。その化学発光測定の結果を表3に示す。
支持体が存在しない場合、固定化用化合物濃度が高くなるに従い、発光強度が高くなるが、再現性(CV)が低いことが確認された。支持体が存在する場合には、固定化用化合物濃度が高くなるに従って発光強度は若干高くなり、再現性(CV)も良くなることが確認された。これらの結果より、最適な支持体、固定化化合物濃度が存在することが分かった。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下した8スポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例8で作製した粒径の異なるラテックス粒子を用いたバイオセンサチップ4の化学発光測定結果を表4に示す。この結果より、バイオセンサチップ4は、比較用バイオセンサチップ1と比較して発光強度が高く、再現性(CV)が高いことが確認された。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下した8スポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例8で作製したバイオセンサチップ4と製造例9で作製したバイオセンサチップ5を用いて、固定化用化合物がブランク値(ビオチン化抗マウスIgG濃度0ng/mLでの発光強度)に及ぼす影響を調べた。バイオセンサチップ4はポリマーAを用いて作製されたものであり、バイオセンサチップ5はポリマーBを用いて作製されたものである。その化学発光測定結果を表5に示す。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下したすポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例10で作製したバイオセンサチップ6と、比較製造例4で作製した比較用バイオセンサチップ4を用いて、HBs抗原に対する抗原抗体反応(相互作用)の化学発光測定を行なった。その化学発光測定結果を表6に示す。
これによると、バイオセンサチップ6は比較用バイオセンサチップ4と比較して発光強度が高く、再現性(CV)も高いことが確認された。このことにより、生体関連物質や測定系が異なっても本法が有効であることが確認された。
なお、各発光強度はチップ毎にそれぞれの混合液をそれぞれ異なる領域に8ヶ所滴下したすポットの平均値であり、CVは8スポットのCVである。
製造例5で作製したバイオセンサチップ1と、製造例7で作製したバイオセンサチップ3(b)、製造例8で作製したバイオセンサチップ4のマトリックス構造を、上記実施例における評価後にSEMを用いて観察した。また、得られた電子顕微鏡写真を用いて、バイオセンサチップ1の膜厚及び空隙率を算出した。
これらの写真において、白く見える部分がマトリックス骨格である。
図7の断面図から、バイオセンサチップ1の乾燥状態での膜厚を算出した。その結果、バイオセンサチップ1の膜厚は約3μmであった。また、2種類の粒径のラテックスを混合して用いることにより膜厚を変化させたバイオセンサチップ4の断面図を図8から算出したところ、バイオセンサチップ4の膜厚は約9μmであった。
このことから、粒径の異なる粒子を支持体として用いることで、膜厚が異なるバイオセンサチップを作製できることがわかり、任意の膜厚を有するバイオセンサチップを作製できることが示された。
図6のバイオセンサチップ1の断面図、及び、図9のバイオセンサチップ3(b)(支持体10%、固定化用化合物3.8%の場合)の断面図を用いて、イメージプログラマ(MEDIA CYBERNETICS社製:Image-Pro-Plus ver. 4.0)を用いた画像解析を行った。画像の濃淡情報に基づき、それぞれのバイオセンサチップ乾燥状態での空隙率の測定を行った。
上記SEM写真をスキャナーより240DPIで入力した。画像の大きさは1019×764Pixel、較正値 は2.17nm/Pixelであった。
(2−2)画像処理
メディアンフィルタ3×3を5回使用し、ノイズ除去を行った。背景画像を作成(背景画像作成条件:「明るい」「オブジェクト幅・20」)し、シェーディング補正(除算による補正)を行った。
(2−3)面積比の計測
粒子領域を設定して、固定閾値(濃度30%)により画像を二値化し、その後、モルフォロジー処理(接続5×5、1回、穴埋め)により穴の形状を修正し、面積比を計測した。
上記(1)及び(2)の結果から、支持体、固定化用化合物、生体関連物質の濃度を適宜変化させることにより、膜厚や空隙率を適宜変更させることができ、性質の異なるバイオセンサチップを任意に作製できることが示された。
Claims (20)
- 生体関連物質、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物、及び支持体を含むマトリックスが表面に形成されていることを特徴とする固相担体。
- 生体関連物質が、該生体関連物質と結合可能な化合物によって架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の固相担体。
- マトリックス中に空隙を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の固相担体。
- マトリックスが、溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、該溶媒を除去することにより形成されるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の固相担体。
- 溶媒が水であることを特徴とする請求項4に記載の固相担体。
- マトリックスの空隙率が5%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固相担体。
- マトリックスの膜厚が乾燥状態で20nm以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の固相担体。
- 化合物が、1分子中に2箇所以上の結合官能基を有するものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の固相担体。
- 化合物が高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の固相担体。
- 化合物が、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の固相担体。
- 支持体が、約10nm〜100μmの平均径を有する粒子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の固相担体。
- 溶媒の存在下、支持体、生体関連物質、及び該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物を共存させた混合物を固相担体表面に供給した後、該溶媒を除去することによりマトリックスを形成することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体を製造するための生体関連物質固定化キットであって、少なくとも支持体と、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物とを含むことを特徴とするキット。
- 生体関連物質、該生体関連物質及び/又は支持体と結合可能な化合物、及び支持体を含むマトリックスが、少なくとも2種以上、固相担体上の別々の領域に配置されていることを特徴とする生体関連物質のアレイ。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体及び/又は請求項14に記載のアレイを含むバイオセンサー。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体及び/又は請求項14に記載のアレイを含む診断デバイス。
- 検体中の少なくとも1種の分析物についてアッセイする方法であって、以下の工程(a)及び(b):
(a)該検体を、該分析物と反応し得る生体関連物質を少なくとも1種含む請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体及び/又は請求項14に記載のアレイに送達する工程;および
(b)該生体関連物質と該分析物との相互作用、又は、該分析物と反応する標識物質を加えることにより生じる反応を検出することにより、該分析物の存在もしくは量について検出する工程
を有することを特徴とする方法。 - 少なくとも検体が流体であって、該検体の送達がフローにより行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の固相担体及び/又は請求項14に記載のアレイ上に設けられた参照領域における反応を検出し、アッセイの成否判定、又は、検出された分析物の存在もしくは量の校正を行う工程をさらに有することを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
- 2種以上の分析物を並行してアッセイするために、さらに以下の工程(c):
(c)少なくとも2種以上の分析物の存在もしくは量と、特定の症状とを関連づける工程
を有することを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
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