JP4939019B2 - 生体物質が固定化された固相担体、及び生体物質が固定化された固相担体の製造方法、生体物質固定化キット並びにセンサーチップ - Google Patents

生体物質が固定化された固相担体、及び生体物質が固定化された固相担体の製造方法、生体物質固定化キット並びにセンサーチップ Download PDF

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Description

本発明は、生体物質が固定化された固相担体、及び、生体物質が固定化された固相担体の製造方法、それを製造するための生体物質固定化キット並びにセンサーチップに関する。
生体物質が固定化された固相担体は、例えば、医療・診断、遺伝子解析、プロテオミクス、マイクロエレクトロニクス、膜分離等の分野、特に、DNAチップ、蛋白チップ等のバイオチップやセンサーチップの分野へ応用されている。
このように生体物質が固定化された固相担体を製造する方法、即ち、固相担体表面に生体物質を固定化する方法については、これまでに幾つかの報告がされている。
例えば、生体物質を固相担体に固定化するにあたって、まず親水性高分子化合物で固相担体の表面を被覆することで固相担体表面に高分子膜を形成し、その高分子膜を構成する高分子鎖にリガンド等となる生体物質を結合させる方法がある。これにより、固相担体表面を親水性高分子化合物で被覆しない場合よりも、単位面積あたりの生体物質の導入量(固定化量)を向上させることができるという利点から、この方法は、上記のような広範囲の分野に応用されている。
また、例えば、特許文献1には、電荷を有する官能基を導入した親水性高分子膜による被覆方法が記載されている。上述したような固相担体上の高分子膜内にリガンド等の生体物質を固定化する方法では、生体物質の高分子膜に対する浸透のために、高密度に固定化することが困難であった。しかし、特許文献1記載の方法においては、生体物質の表面電荷を高分子膜の電荷を有する官能基の反対電荷になるように溶液のpHを制御することで、静電的相互作用により生体物質の高分子膜への固定化反応を促進させることができ、生体物質を高密度に固定化することが可能になる。
特許文献1記載の方法を利用した製品としては、金で被覆したガラスプレート上にCM−デキストラン膜で表面処理を施したものが市販されている(BIACORE社製 SensorChip CM5)。
また、固相担体であるスライドガラスを、ポリアクリルアミドの膜で被覆したものも市販されている(パーキングエルマー社製 HydroGel Coated Slide)。この製品は、水分を含有し膨潤したポリアクリルアミドゲルを使用するため、乾燥が懸念されるナノリットルオーダーのサンプルを滴下することに適しており、さらにポリアクリルアミドに生体物質を吸着するため活性化を不要とする利点を有する。
さらに、例えば、特許文献2には、ポリウレタンベースのポリマーと生体物質とを有機溶媒中で混合し、さらに縮合剤を混合することによりポリマーを重合させた上で、基板の表面にそれを結合させる方法が記載されている。この方法は、従来の煩雑な方法を使用せず、簡便に生体物質を含有した膜を固相担体表面に形成することができるため、生体物質を簡単に固相担体に固定化することができるという利点を有する。
また、例えば、特許文献3には、固相担体上から活性エステル基を有するモノマーを重合することで、高分子鎖を伸長させることにより、固相担体上にブラシ状の高分子鎖を構築し、その高分子鎖に生体物質を結合する方法が記載されている。本方法によれば、リガンド等の生体物質を固定化できることに加え、高分子鎖を活性化することなく、固相担体上に導入(固定化)することが可能になる。
以上のように、固相担体上に親水性高分子膜を構築するという従来技術は、個々に利点を有している。
米国特許第5242828号明細書 米国特許第6174683号明細書 国際公開第02/056021号パンフレット
しかしながら、上述した特許文献1〜3等に記載の従来の技術では、固相担体上に固定化できる生体物質の導入量が未だ充分ではなく、バイオセンサー等において充分な反応を得ることができなかった。そのため、固相担体上への生体物質の導入量を、生体物質の反応性(活性)を損なわずに、更に増加させる技術が要望されていた。
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、固相担体上に、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体、及び、固相担体上に従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体の製造方法、それを製造するための生体物質固定化キット、並びに、センサーチップを提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、生体物質を含有する溶液と、生体物質と結合可能な官能基を有する化合物を含有する溶液とを含む混合物を固相担体に供給して、固相担体の表面に生体物質及び化合物が結合し、鎖状及び/又は網目状に結合したマトリックスを形成させることにより、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体であって、該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、該固定化用化合物は、1分子中に3点以上の該結合官能基を有し、該固定化用化合物の重量平均分子量が1000以上であり、該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが該結合官能基によって結合した該部分構造繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在することを特徴とする、生体物質固定担体に存する(請求項1)。
{式(A)において、R は該生体物質を表わし、R は該固相担体に直接結合していない該固定化用化合物を表わし、各R ,R はそれぞれ同じであっても異っていても良い。}
これにより、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された生体物質固定担体を提供することができる。また、形成されたマトリックスではリガンドなどの生体物質が三次元的に固定化されているため、該マトリックスは、生体物質を有効に作用させることができる反応場として用いることが可能である。
なお、ここで「主鎖」とはマトリックスの骨格を構成するもので、該生体物質と該固定化用化合物とが結合し、鎖状及び/又は網目状に結合してなるものであり、即ち、該生体物質に対して該固定化用化合物が結合官能基によって結合することで形成されたものである。したがって、マトリックスは該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在する橋架け構造を(少なくとも一部には)有しており、該生体物質及び該固定化用化合物の両方によって、マトリックスの主鎖が構成されている。
たこのとき、該マトリックスが、溶媒の存在下、該生体物質及び該固定化用化合物を共存させた混合物を該固相担体表面に供給して形成されたものであることが好ましい(請求項)。これにより、マトリックスを極めて簡単に製造することが可能となる。
また、該混合物中における、「該生体物質の重量/(該固定化用化合物の重量+該生体物質の重量)」の値は、0.5以上であることが好ましい(請求項)。これにより、該生体物質をより多く固定化することが可能になる。
さらに、該マトリックスの重量に対する該生体物質の重量の割合も、0.5以上であることが好ましい(請求項)。これにより、該固定化用化合物への非特異的吸着を抑制することができる。
さらに、該マトリックスの膜厚は、乾燥状態で5nm以上であることが好ましい(請求項)。該マトリックスの膜厚を上記の範囲とすることにより、固相担体上により多くの生体物質を固定化することができる。
また、該固定化用化合物は無電荷であることが好ましい(請求項)。これにより、生体物質が非特異的相互作用を生じることを抑制することができる。ここで、非特異的相互作用とは、マトリックスを用いて固相担体に固定化された生体物質の所定の相互作用を生じさせようとする場合に、目的とする相互作用以外に生じる相互作用のことをいう。
さらに、該固定化用化合物は、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることが好ましい(請求項)。これにより、本発明の生体物質固定担体の製造時に用いる溶媒の選択の幅を広げることができ、該マトリックスの構造を様々に設計することができる。また、本発明の生体物質が固定化された生体物質固定担体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合には、その用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、用途を広げることができる。
また、該マトリックスに、該生体物質に対して特異的に相互作用することができる作用物質を含む溶液を接触させたときに、該マトリックス中の該生体物質の数に対する該生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比が0.5以上であることが好ましい(請求項)。これにより、生体物質と作用物質との相互作用を従来よりも効率よく生じさせることができる。
らに、この特徴を生かすことにより、上記の生体物質が固定化された生体物質固定担体をセンサーチップに適用することができる。即ち、本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質固定担体を有するセンサーチップに存する(請求項14)。
本発明の更に別の要旨は、固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体の製造方法であって、該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、上記式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが結合官能基によって結合した該部分構造繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在し、該マトリックスを、溶媒の存在下、生体物質及び上記生体物質と結合可能な固定化用化合物を共存させた混合物を固相担体に供給することにより形成することを特徴とする、生体物質固定担体の製造方法に存する(請求項)。これにより、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された生体物質固定担体を得ることができる。また、この製造方法は、固定化したい生体物質と化合物とを混合し、生体物質固定担体に接触させるだけで、上述の効能を有するマトリックスで被覆された生体物質固定担体が得られるという極めて簡便な方法である。
なお、このとき、上記の溶媒は水であることが好ましい(請求項12)。
た該固定化用化合物は、1分子中に2点以上の該結合官能基を有することが好ましい(請求項10)。また該固定化用化合物の重量平均分子量は1000以上であることが好ましい(請求項11)。
本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質が固定化された生体物質固定担体を製造するための生体物質固定化キットであって、上記生体物質と結合可能な固定化用化合物と、上記生体物質及び該固定化用化合物を混和させうる溶媒とを備えることを特徴とする、生体物質固定化キットに存する(請求項13)。これを用いれば、上記の生体物質が固定化された生体物質固定担体を簡単に製造することができる。
本発明の生体物質が固定化された固相担体、及び、生体物質が固定化された固相担体の製造方法、並びに生体物質固定化キットによれば、固相担体上への生体物質の導入量を、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも飛躍的に増加させることができる。
さらに、本発明の生体物質が固定化された固相担体をセンサーチップとして利用すれば、高感度のセンサーチップを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態や例示物などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の生体物質が固定化された固相担体(以下適宜、「本発明の生体物質固定担体」という)は、固相担体表面に、マトリックス(以下適宜、「本発明のマトリックス」という)を有する。ここで、本発明のマトリックスは、生体物質、及び、上記生体物質と結合可能な化合物(以下適宜、「固定化用化合物」という)からなる主鎖を有するマトリックスである。即ち、本発明のマトリックスは、図1(a)〜図1(c)に模式的に示すように、生体物質と固定化用化合物とを含み、その骨格が、生体物質と固定化用化合物とが結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスである。なお、図1(a)〜図1(c)は、本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体物質固定担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。また、図1(a)〜図1(c)において、円形部分が生体物質を表わし、線状部分が固定化用化合物を表わす。
[I.製造方法]
本発明の生体物質固定担体は、溶媒の存在下、生体物質と固定化用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給し、上記固相担体表面に、上記生体物質及び上記化合物からなる主鎖を有するマトリックスを形成させる工程を経て製造される。
(1.固相担体)
固相担体は、表面に本発明のマトリックスを形成するための基体となるものであり、固相担体の表面に本発明のマトリックスを形成したものが、本発明の生体物質固定担体である。本発明で用いる固相担体に制限は無く、本発明のマトリックスを形成する対象となるものであれば、任意の材質、形状、寸法のものを用いることができる。
固相担体の材質の例を挙げると、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル系樹脂等の各種樹脂材料、ガラス、アルミナ、炭素、金属等の無機材料などが挙げられる。なお、固相担体の材質は1種を単独で用いたものでもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用したものであっても良い。
また、固相担体の形状の例を挙げると、平板状、粒子状、繊維状、膜状、シート状などが挙げられる。具体例としては、多数の生体物質を配列させることができるチップ(基板)、クロマトグラフィ担体やラテックス診断薬としてのビーズ、分離膜として利用されている中空糸繊維や多孔質膜などが挙げられる。
さらに、上記固相担体は、そのまま使用してもよいが、何らかの表面処理を施してから表面にマトリックスを形成するようにしても良い。例えば、金属や金属酸化物などの被覆材料で表面を被覆してからマトリックスを形成するようにしても良い。さらに、固相担体とマトリックスとを結合させるために、官能基を固相担体に導入しても良い。その官能基は任意であるが、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アミノアルデヒド基、ヒドラジド基、カルボニル基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、スクシンイミド基等の、化学結合により固相担体とマトリックスとを結合させる官能基が挙げられる。また、本発明の生体物質固相担体製造時に溶媒として水を用いる場合には、アルキル基、フェニル基等の疎液相互作用による物理吸着によって固相担体とマトリックスとを結合させる官能基を用いることもできる。
表面処理の具体例を挙げると、例えば固相担体表面に対して、金で被覆する表面処理を行なった場合には、
などを金表面に固定する処理が挙げられる。ただし、上記の構造式において、n1,n2はそれぞれ独立に2以上の整数を表わす。
また、被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、金属被覆チップ、スライドガラス、ファイバースライド、シート、ピン、マイクロタイタープレート、キャピラリーチューブ、ビーズ等が挙げられる。
(2.生体物質)
生体物質は、固相担体に固定化する物質であり、その目的に応じて、任意の物質を用いることができる。具体例を挙げれば、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子が挙げられる。また、このほか、例えば細胞等の生体分子以外の物質を生体物質として用いることもできる。なお、本発明の生体物質固定担体を分析に用いた場合には、これら生体物質は、検体中の検出対象物質と生体物質との相互作用(結合性等)を測定する際の標的物質となる。
なお、上記の検出対象物質は、通常、生体物質と特異的に相互作用する物質(以下適宜、「作用物質」という)である。ここで、生体物質と作用物質との「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、通常は、共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。ただし、本明細書に言う「相互作用」との用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合としては、配位結合を含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
相互作用の具体例としては、抗原と抗体との間の結合及び解離、タンパク質レセプターとリガンドとの間の結合及び解離、接着分子と相手方分子との間の結合及び解離、酵素と基質との間の結合及び解離、アポ酵素と補酵素との間の結合及び解離、核酸とそれに結合する核酸又はタンパク質との間の結合及び解離、情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合及び解離、糖タンパク質とタンパク質との間の結合及び解離、糖鎖とタンパク質との間の結合及び解離などが挙げられるが、この範囲に限定されるものではない。さらに、例えば、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab′)2、Fab′、Fab、レセ
プターや酵素とその派生物、核酸、天然あるいは人工のペプチド、人工ポリマー、糖質、脂質、無機物質あるいは有機配位子、ウイルス、細胞、薬物等が挙げられる。
また、上記の生体物質の例の中でも、タンパク質としては、タンパク質の全長であっても、結合活性部位を含む部分ペプチドであってもよい。また、アミノ酸配列、及びその機能が既知のタンパク質でも、未知のタンパク質でもよい。これらは、合成されたペプチド鎖、生体より精製されたタンパク質、あるいはcDNAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、精製したタンパク質等でも標的物質として用いることができる。合成されたペプチド鎖は、これに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。これらのうち好ましくは、精製されたタンパク質である。
さらに、核酸としては、特に制限はなく、DNA、RNAの他、アプタマー等の核酸塩基、PNA等のペプチド核酸を用いることもできる。また、塩基配列あるいは機能が、既知の核酸でも、未知の核酸でもよい。好ましくは、タンパク質に結合能力を有する、核酸としての機能及び塩基配列が既知のものか、あるいは、ゲノムライブラリー等から制限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いることができる。
また、糖鎖としては、その糖配列あるいは機能が、既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。好ましくは、既に分離解析され、糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
また、低分子化合物としては、相互作用する能力を有する限り、特に制限はない。機能が未知のものでも、あるいはタンパク質に結合する能力が既に知られているものでも用いることができるが、医薬候補化合物等が好適に用いられる。
なお、生体物質を用意する際、通常は何らかの溶媒に生体物質を溶解又は分散させた溶液や分散液として生体物質を用意するが、この場合に生体物質を希釈させる溶媒や分散媒は、生体物質の活性や構造の安定性等を考慮して調整することが好ましい。
また、生体物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(3.固定化用化合物)
固定化用化合物は、上記生体物質と結合しうる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。したがって、固定化用化合物としては、上記生体物質と結合可能な官能基(以下適宜、「結合官能基」)を有する化合物を任意に用いることができる。ここで、結合官能基としては、上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体物質の種類や本発明の生体物質固定担体の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
結合官能基は、通常、反応性基として共有結合を介して生体物質と結合するものと、非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。共有結合により結合する場合、結合官能基の具体例としては、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基等が挙げられる。
以下、生体物質との結合について具体的に説明する。結合官能基と結合する生体物質としては、例えば、タンパク質、核酸、糖等が挙げられる。
生体物質がタンパク質である場合、タンパク質の表層に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等と固定化用化合物の結合官能基とが結合する。この際、アミノ基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、ヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、チオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
また、生体物質が核酸である場合、核酸の末端に導入されるアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等と固定化用化合物の結合官能基とが結合する。この際、アミノ基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、ヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、チオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
また、生体物質が糖である場合、糖の側鎖に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等と固定化用化合物の結合官能基とが結合する。この際、アミノ基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、ヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、チオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
一方、非共有結合により結合する場合、例えば錯体を形成させて結合させる場合には、結合官能基の具体例としてはボロン酸基などが挙げられる。また、例えば生体物質間相互作用により結合させる場合には、アビジン−ビオチン相互作用などを用いることができ、その時に用いる結合官能基の具体例としてはビオチン基が挙げられる。また、例えば生体物質としてウイルスを結合させる場合、結合官能基の具体例としては糖や多糖が挙げられる。さらに、例えば生体物質が疎液領域を有している場合には、疎液相互作用による物理吸着により結合させるようにしても良い。
また、固定化用化合物が結合官能基を有する場合、固定化用化合物は、1分子中に通常2点以上、好ましくは3点以上の結合官能基を有しているものを少なくとも1種以上含むことが好ましい。本発明のマトリックスの構造を形成しやすくするためである。具体例を挙げると、1分子中に2点以上の結合官能基を有していれば、濃縮を行なった場合などにマトリックスを確実に形成することができるようになる。
ただし、本発明の生体物質固相担体に含まれるマトリックスが、上記の主鎖を形成するためには、固定化用化合物同士の結合が無く、生体物質と固定化用化合物との結合が主であることが好ましい。固定化用化合物同士の結合が存在すると、固定化用化合物同士の集合塊が形成され、効率よく生体物質を結合させられず、さらに、検体を本発明の生体物質固定担体と反応させる際に、望ましい反応効率が得られない虞がある。
また、固定化用化合物同士の結合があるときに、高分子を固定化用化合物に用いた場合、固定化用化合物の内部架橋が起こってしまい、さらに生体物質を固定化しにくくなる。ここで、固定化用化合物同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用、電気的相互作用を除く結合を示す。
このように固定化用化合物同士の結合が無いマトリックスを形成させるためには、固定化用化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、さらに、固定化用化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は具体的には前述したように、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、ボロン酸基、ビオチン基などが挙げられる。結合官能基同士が結合する状況とは、過度の熱を加えることや、強力な紫外線を照射することを示す。
また、マトリックス中に含まれる固定化用化合物同士の結合を調べる方法としては、マトリックス中の生体物質を後述の方法で分解した時に、不溶物が形成されるか、若しくは、基板等の固相担体に固定化用化合物の凝集塊が残ることで判断される。若しくは、マトリックスを熱分解性ガスクロマトグラフィーで分析することにより、固定化用化合物同士の結合を示唆する化合物を検出することで判断される。具体的には、例えば、紫外線照射により生体物質と光反応性基とを有する固定化用化合物を結合させる工程において、固定化用化合物内の光反応性基(例えば、アジド基)により、固定化用化合物同士が結合した場合、光反応性基が関与した結合、若しくは残存光反応性基の存在により、固定化用化合物同士の結合を推測することができる(アフィニティークロマトグラフィー:東京化学同人、著者:松本勲武、別府正敏 P238〜参照)。
さらに、生体物質の活性を維持するためには、生体物質が失活しにくいよう生体物質の官能基及び固定化用化合物の官能基を選択することが好ましい。例えば、タンパク質を固定化するとき、タンパク質の活性部分にチオール基を有している場合には、チオール基以外の基(例えば、アミノ基)を生体物質の結合官能基として選択し、このアミノ基と結合するために、固定化用化合物の結合官能基は、スクシンイミド基、エポキシ基が選択される。
さらに、固定化用化合物としては、通常は、水と混和しうるものを用いることが望ましい。マトリックス作製時に用いる溶媒は任意であるが、通常は、溶媒としては水を用いる。この際、水の存在下で固定化用化合物を生体物質と混合した場合などに固定化用化合物は生体物質に結合するが、そのような場合に生体物質と固定化用化合物とを均一に混合し、結合反応をスムーズに行なわせるためである。なお、本明細書においては、混和の形態としては、溶解していても良いし分散していても良い。
また、固定化用化合物は、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることが好ましい。これにより、固定化用化合物の合成時に用いる溶媒の選択の幅を広げることができ、マトリックスの構造を様々に設計することができる。例えば、固定化用化合物が有機溶媒に混和できれば、固定化用化合物の合成時に結合官能基を保護することを目的として合成を有機溶媒中で行なうことができるようになる。
さらに、固定化用化合物が水と有機溶媒との両方に混和できれば、本発明の生体物質固定担体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合に、その用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、用途を広げることができる。
また、固定化用化合物は無電荷であることが望ましい。固定化用化合物が生体物質と同じ電荷(同符号の電荷)を有していると、静電的反発力により、固定化用化合物と生体物質との結合が妨げられる虞がある。一方、固定化用化合物が生体物質と反対の電荷(逆符号の電荷)を有していると、生体物質と固定化用化合物内の電荷を有する部分とが静電的引力により結合してしまい、固定化用化合物が有している結合官能基に生体物質が効果的に結合することを妨げる虞がある。固定化用化合物と生体物質との静電的引力による結合は、本発明の生体物質固定担体の使用時に用いる溶液のpHや塩などの添加物により、容易に結合が壊れてしまうことが予想され、好ましくない。また、本発明の生体物質固定担体を用いて、選択的生体物質間相互作用を検出しようとする時、アナライトである作用物質が固定化用化合物と同じ電荷を有している場合には、リガンドである生体物質との特異的な相互作用が妨げられる虞があり、また、アナライトと固定化用化合物とが反対の電荷を有していた場合、アナライトと固定化用化合物とが非特異吸着等の非特異的相互作用を生じることが推測されるためである。
なお、固定化用化合物が無電荷であるとは、少なくとも構造式上、非イオン性であれば、当該固定化用化合物は無電荷である。ただし、本発明の生体物質固定担体の製造過程において、結合官能基の加水分解等により、固定化用化合物が電荷をもったとしても、本発明の効果を損なわない限り、このような固定化用化合物は好適にもちいることができる。当該固定化用化合物が溶液中に存在している場合には、少なくとも構造式上、非イオン性であれば、当該固定化用用化合物は無電荷である。ただし、本発明の生体物質担持体の製造過程において、結合官能基の加水分解等により、固定化用化合物が電荷をもったとしても、本発明の効果を損なわない限り、このような固定化用化合物は好適にもちいることができる。
固定化用化合物の例としては、例えば、有機化合物、無機化合物、有機無機ハイブリッド材料などが挙げられる。また、固定化用化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
固定化用化合物として用いられる有機化合物は、低分子化合物でも、高分子化合物でもよい。低分子化合物の具体例としては、グルタルアルデヒド、ジエポキシブタン、ジエポキシヘキサン、ジエポキシオクタン、ビスマレイミドヘキサン、ビススルホスクシミジルスベレイト、ジスクシミジルグルタレイド、エチレングリコールビススクシミジルスクシネイト、スルホエチレングリコールビススクシミジルスクシネイト、スクシミジル4−N−マレイミドメチルシクロヘキサン1−カルボキシレイト、スクシミジル4−N−マレイミドメチルシクロヘキサン1−カルボキシレイト、スルホスルホスクシミジル4−p−マレイミドフェニルブチレイト、スクシミジル4−p−マレイミドフェニルブチレイト、スルホm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシミドエステルなどが挙げられる。
一方、固定化用化合物として高分子化合物を用いる場合、高分子化合物は合成高分子化合物であっても良く、天然高分子化合物であっても良い。
固定化用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、上記の条件を満たす合成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。ただし、通常は、生体物質と結合することのできるモノマーを有していることが望ましい。また、通常は、合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、親水性モノマーを有していることが好ましい。さらに、好ましくは、上記の生体物質と結合することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合物を用いることが望ましい。即ち、合成高分子化合物の合成には、少なくともモノマー種として、生体物質と反応してできるコンジュゲートを形成することができ、且つコンジュゲート間で結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を構築するための結合官能基を有するモノマーと、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーとを用いて共重合させることが好ましい。さらに、合成高分子化合物の溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で疎水性モノマーを共重合してもよい。
合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、等の重合性カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N′−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類、などが挙げられる。
また、合成高分子化合物のモノマーとしては、付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ジシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の脂肪族又は芳香族イソシアナート類、ケテン類、エポキシ基含有化合物類、ビニル基含有化合物類などが挙げられる。また、上記化合物群と反応させるモノマーとしては、活性化水素を有する官能基、具体例としては水酸基又はアミノ基を有する化合物などが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、メチレングリコシド、しょ糖、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンのようなポリオール類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N′−ジイソプロピルメチレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等のポリアミン類;オキシム類などが挙げられる。
さらに、合成高分子化合物には、上記モノマーの他、架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させても良い。多官能性化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド(例えばN−メチロール−p−ビニルベンズアミド等)、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。さらに、上述したモノマーのうち、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジプロペニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコール、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマー類は、架橋剤としても使用することが出来る。
また、前述の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマーとしては、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基等を有するモノマーの例として、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクロレイン、マレイミドアクリレート等が挙げられる。また、結合官能基としてボロン酸基を有するモノマーの例としては、3−アクリルアミドフェニルボロン酸等が挙げられる。さらに、結合官能基としてビオチン基を有するモノマーの例としては、N−アクリロイル−N′−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン等が挙げられる。また、結合官能基として糖や多糖を有するモノマーの例としては、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル等が挙げられる。
さらに、親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸、スルホン酸、スルホン酸ソーダ、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
また、固定化用化合物は、前述のとおり無電荷のものが好ましい。したがって、固定化用化合物として用いる合成高分子化合物を無電荷にする場合、この無電荷の合成高分子化合物に使用するモノマーは無電荷であれば特に限定されないが、具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
また、モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、ここで用いるラジカル系重合開始剤の例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。
さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げられる。なお、個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物であってもよい。
また、合成高分子化合物は、開環重合等で合成される高分子を使用してもよい。その具体例としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、高分子化合物は加水分解等により合成される高分子を使用しても良い。その具体例としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成されるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
また、上述した合成高分子化合物は、化学修飾により、前述の生体物質と結合する官能基を修飾することにより合成してもよい。
さらに、この他、固定化用化合物として、市販の合成高分子化合物を用いることができる。その具体例を挙げると、日本油脂社製のSUNBRITシリーズ DE−030AS、DE−030CS、DE−030GS、PTE−100GS、PTE−200GS、HGEO−100GS、HGEO−200GSなどが挙げられる。
一方、固定化用化合物として天然高分子化合物を用いる場合、その具体例としては、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、でんぷん、セルロース等の多糖類、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク質、DNA、RNA、核酸などが挙げられる。これらの天然化合物は、そのまま使用しても良いし、また、化学修飾してから使用しても良い。
なお、合成高分子化合物及び天然高分子化合物などの高分子化合物を固定化用化合物として用いる場合、その高分子化合物の形態は任意である。例えば、水溶液中で溶解していても良いし、ミセルやエマルションのような会合体や高分子ラテックスのような微粒子状のものでもかまわない。
また、固定化用化合物として用いられる無機化合物としては、例えば、金コロイド等の金属粒子、シリカ等の無機微粒子などが挙げられる。さらに、これらの無機化合物を化学修飾することによって、生体物質と結合する官能基を有する固定化用化合物としても良い。
さらに、固定化用化合物として用いられる有機無機ハイブリッドとしては、例えば、コロイダルシリカに高分子を被覆したもの、金属コロイドを高分子で被覆したもの(例えば、金、銀、白金等の粒子を保護コロイドで被覆したもの)、クレイに高分子を吸着させたものなどが挙げられる。なお、これらの有機無機ハイブリッドは公知の方法で合成することが可能である(ポリマー系ナノコンポジット,工業調査会,中條 澄 著などを参照)。
さらに、これらの有機無機ハイブリッドに生体物質を結合官能基を修飾することによって、固定化用化合物として用いることもできる。
また、固定化用化合物の分子量や構造等は特に制限は無く任意であり、例えば低分子量の化合物を用いても良いが、その場合、固定化しようとする一つの生体物質内で架橋してしまい、マトリックス構造を形成できなくなる虞がある。これを防止する観点からは、固定化用化合物の分子量としては、通常1000以上、好ましくは10000以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下が望ましい。なお、固定化用化合物として合成又は天然の高分子化合物を用いる場合、重量平均分子量が上記範囲に収まることが好ましい。この範囲を下回ると効果的にマトリックスが形成できなくなる虞があるためである。
さらに、固定化用化合物が有する結合官能基の量は、特に限定されず、また、固定化用化合物の種類によって、一概には規定できないが、例えば固定化用化合物として高分子を用いた場合、固定化用化合物に対して、モル%で、通常0.1%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、また、通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。この範囲を下回ると固定化用化合物が生体物質と効率よく結合できない虞があり、上回ると溶媒に混和できなくなる虞があるためである。
(溶媒)
本発明の生体物質固定担体を製造する際には、溶媒の存在下、上述した生体物質と固定化用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給する。この際、固相担体に供給される混合物は、溶媒中に、少なくとも生体物質と固定化用化合物とを含むものである。
溶媒中において、生体物質及び固定化用化合物は溶媒に混和できればその混和状態は任意であり、溶解していても分散していてもよいが、生体物質と固定化用化合物とが安定して結合するためには、生体物質及び固定化用化合物は溶解していることが好ましい。
溶媒は、生体物質と固定化用化合物とが結合する反応媒となるものであり、前記生体物質と固定化用化合物とが混和しうるものであれば他に制限はなく、任意の液体を用いることができる。生体物質及び固定化用化合物の活性や構造の安定性などを考慮して選択することが好ましいが、通常は、溶媒として水を用いる。ここで、溶媒として水を使用できること、即ち、水中で上述した生体物質と固定化用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給し、生体物質固定担体を製造できることは、本発明の優れた利点の一つである。即ち、従来は有機溶媒中で生体物質を固定化する技術はあった(特許文献2等参照)が、水を溶媒として固定化を行なうことはできなかった。しかし、本発明により水の存在下で固定化を行なうことが出来るようになれば、生体物質の活性を保つことが可能となるほか、生体物質及び固定化用化合物それぞれの選択の幅が広がり、適用範囲の拡大が期待できる。
また、溶媒としては、水以外の溶媒を用いても良く、例えば、有機溶媒を用いることができる。さらに、有機溶媒の中でも、両親媒性溶媒、即ち、水に混和しうる有機溶媒が好ましい。
水のほかの溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、THF(テトラヒロドフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジオキサン、アセトニトリル、ピリジン、アセトン、グリセリンなどが挙げられる。
また、これら溶媒に塩を加えても良い。塩の種類は任意であるが、具体例としては、NaCl、KCl、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また、用いる塩の量に制限は無く、用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。
さらに、溶媒に水を用いる場合、水としては、純水のほか、生体物質や固定化用化合物以外の媒質を溶解した水溶液を用いることもできる。その例としては各種緩衝液を挙げることができ、その具体例としては、炭酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、HEPESバッファーなどが挙げられる。
なお、溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(4.混合物)
混合物は、溶媒の存在下、生体物質、及び、上記生体物質と結合可能な官能基を有する化合物を共存させたものである。具体的には、上述した溶媒中に、生体物質と、固定化用化合物とが共存している混合物である。また、混合物中において生体物質及び固定化用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。
前記の混合物中において、生体物質と固定化用化合物との比率は任意である。ただし、「生体物質の重量/(固定化用化合物の重量+生体物質の重量)」の値は、通常0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上が望ましい。生体物質の混合比率が高い場合、図1(a)に示したような固定化用化合物が結合点となった主鎖を有するマトリックスが形成され、逆に、固定化用化合物の混合比率が高い場合には、図2に示すように、生体物質が結合点となった主鎖を有するマトリックスが形成される。この際、生体物質の比率を上記範囲のように大きくすることにより、固定化用化合物への非特異吸着を抑制することが可能となる。なお、図2は、本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体物質固定担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。また、図2において、円形部分が生体物質を表わし、線状部分が固定化用化合物を表わす。
また、溶媒中における生体物質及び固定化用化合物の割合(濃度)も任意であるが、通常0.1g/L以上、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上である。この範囲を下回るとコンジュゲート及びマトリックスが生成しにくくなる虞があるためである。
さらに、この混合物を調製する方法に制限は無く、任意である。例えば、生体物質の溶液(水溶液など)又は分散液と固定化用化合物の溶液(水溶液など)又は分散液とを混合したものでもよく、生体物質の溶液又は分散液と固体状の固定化用化合物とを混合したものでも良く、固体状の生体物質と固定化用化合物の溶液又は分散液とを混合したものでも良く、固体状の生体物質及び固定化用化合物と溶媒とを混合したものでもよい。
なお、上記の混合物には、生体物質、固定化用化合物及び溶媒の他、任意の添加剤を共存させても良い。添加剤の例としては、例えば、塩、酸、塩基、バッファー、グリセリン等の保湿剤、生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤、変性剤などを挙げることができる。
(5.供給)
本発明の生体物質固定担体を製造する際には、上述した混合物を、固相担体に供給する。即ち、上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。その具体的な操作は任意であるが、例えば、あらかじめ混合物を用意してその混合物を固相担体に接触させてもよいし、混合物の各成分を別々に用意し、固相担体上でそれらを混合させて混合物を調製し、固相担体に混合物を接触させるようにしてもよい。具体的には、例えば、生体物質を含む溶液(水溶液等)と化合物を含む溶液(水溶液等)とを固相担体上に各々供給した後に固相担体上で両溶液を混合する等により行なうことができる。また、予め混合物を用意しておく場合、供給前の混合物中で後述するコンジュゲート及び/又はマトリックスを作製しておき、その後、混合物を固相担体に供給するようにしても良い。
(6.マトリックスの形成)
次いで、固相担体表面に、生体物質及び化合物からなる主鎖を有するマトリックスを形成させる。混合物を調製すると、混合物中において生体物質と固定化用化合物とが結合し、コンジュゲートが生成される。このコンジュゲートは、生体物質と固定化用化合物とが結合したもので、生体物質と固定化用化合物とを溶媒中で混合し、互いの分子を接触させるだけで作製することができる。したがって、固相担体に供給された混合物内には、通常、コンジュゲートが存在している。
コンジュゲートは、コンジュゲート同士が集合し、互いが有する生体物質及び固定化用化合物が結合することにより、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスを構成する。したがって、固相担体に供給された混合物を固相担体に接触させることにより、例えば混合物中のコンジュゲートが固相担体表面に集積されたり、混合物中でコンジュゲート同士が結合して生成したマトリックスが固相担体に結合したり、混合物中の生体物質及び固定化用化合物が固相担体表面に結合することによりコンジュゲート及び/又はマトリックスが生成したりすることで、固相担体表面にマトリックスを形成することができる。
ところで、混合物中の溶媒の量が多い場合などにおいては、混合物中にコンジュゲートやマトリックスが生成しにくい、又は、生成しない場合がある。この場合には、混合物を濃縮することで、コンジュゲートを効率的に形成させることができる。もちろん、上記のように固相担体に供給された混合物がコンジュゲート及び/又はマトリックスを含んでいる場合においても、濃縮によりコンジュゲート及び/又はマトリックスを更に生成させるため、濃縮を行なってもよい。
ただし、均一なマトリックスを形成するためには、混合物調製の初期の段階においては、溶媒中で生体物質と固定化用化合物とを均一に混合することが好ましい。したがって、一旦比較的大量の溶媒中に生体物質及び固定化用化合物を共存させ、それを濃縮することによりコンジュゲートを生成させることが好ましい。
また、マトリックスの形成後、溶媒を乾燥除去してもよい。なお、通常は、混合物を乾燥させる過程において混合物は濃縮されるので、濃縮と乾燥とは一連の操作として行なうことができる。
混合物を乾燥、濃縮する方法は任意であるが、例えば、限外濾過、減圧乾燥などが挙げられる。また、このほか、単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を行なうようにしてもかまわない。
混合物を乾燥、濃縮する際の温度条件は任意であるが、生体物質の変性等を避ける観点から、通常25℃以下、好ましくは10℃以下で行なうことが望ましい。
また、混合物を乾燥、濃縮する際の圧力条件も任意であるが、通常常圧以下が望ましい。
さらに、マトリックスを固相担体に固定するには、混合物の供給後、所定の時間だけ固相担体を静置することが望ましい。静置の時間は任意であるが、通常24時間以下、好ましくは12時間以下が望ましい。
(7.その他の工程)
以上のように、上記の方法は、溶媒中に生体物質と固定化用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、固相担体表面にマトリックスを形成させることができ、これにより、本発明の生体物質固定担体を製造することができる、即ち、固相担体上に生体物質を固定化することができるという、非常に簡便な方法である。
ところで、本発明の生体物質固定担体を製造する際には、上記の工程のほかの工程を行なってもよい。
例えば、マトリックス中の生体物質に、さらに異なる生体物質を結合させるようにしても良い。これを利用すれば、生体物質固定担体の製造後、マトリックス中の生体物質に特定的に結合するように修飾した別の生体物質を後から結合させ、結果として、固相担体に上記の別の生体物質を高密度に固定化することができる。具体例を挙げると、生体物質としてアビジンを用いて、このアビジンと固定化用化合物とを結合させてマトリックスを形成し、生体物質固定担体を製造する。その後、ビオチンで修飾した別の生体物質を用いて、アビジン−ビオチン相互作用により上記の別の生体物質を固定化することができる。また、同様にヒスチジンタグもしくはグルタチオン−S−トランスフェラーゼを介して、生体物質を固定することも可能である。
[II.生体物質固定担体]
本発明の生体物質固定担体は、上述した方法により製造されるものである。また、本発明の生体物質固定担体が有するマトリックスは、上記のコンジュゲートが多数結合して構成されたものであり、通常は、生体物質と固定化用化合物とが鎖状及び/又は網目状に結合したゲル状構造体である(図1,2参照)。
さらに、本発明のマトリックスは、上記の生体物質及び固定化用化合物からなる主鎖を有する構造体である。なお、ここで本発明のマトリックスの主鎖はマトリックスの骨格を構成するもので、具体的には生体物質と固定化用化合物とが互いに結合してなるものであり、詳しくは、生体物質に対して固定化用化合物が結合官能基によって結合し、その構造の繰り返しによって鎖状及び/又は網目状の構造を形成されたものである。
よって、本発明のマトリックスは、通常、下記式(A)で表わされる部分構造を2以上有する。
{上記式(A)において、R1は生体物質を表わし、R2は固相担体に直接結合していない固定化用化合物を表わし、各R1,R2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。}
即ち、本発明のマトリックスは、上記式(A)のように生体物質と固定化用化合物とが結合した部分構造が、直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体である。具体的には、上記式(A)のR1はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR2に結合し、R2はそれぞれ独立
に他の1又は2以上のR1に結合している。ただし、本発明のマトリックスは、例えば生
体物質R1同士や固定化用化合物R2同士が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。ここで、R1同士やR2同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用等の物理的相互作用による結合を示す。
したがって、本発明のマトリックスは、固定化用化合物同士の間には生体物質が存在し、また、生体物質同士の間には固定化用化合物が存在する橋架け構造を少なくとも一部に有しており、生体物質及び化合物の両方によって、マトリックスの主鎖が構成されている。よって、本発明のマトリックスは、その作製時に系内に生体物質及び固定化用化合物の両方が存在する際に形成される。
このように、本発明のマトリックスは、生体物質及び化合物の両方によって形成されたマトリックス骨格を有しているため、生体物質の比率を高めることが可能であり、したがって、本発明の生体物質固定担体では、従来よりも多量の生体物質を固定化することができる。なお、従来技術による高分子膜では、予め固相担体上に形成された高分子鎖によって主鎖が形成されていて、その主鎖に対して生体物質が枝状(グラフト状)に結合した構造となっている。したがって、生体物質の固定化量は所定の上限値で制限され、多量の生体物質の固定化を行なうことはできなかった。
マトリックスが生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を有していることは、例えば、以下の方法により確認することができる。
本発明のマトリックスは、上述したような生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を有しているため、その構成要素である生体物質の結合を分解することにより構造が崩壊する。これを利用し、マトリックスの生体物質のみを分解するようにすれば、生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を確認することができる。即ち、固定化用化合物の少なくとも一部は生体物質を介して固相担体に固定化されているため、固定化用化合物を分解しないようにしながら生体物質を分解した場合、本発明のマトリックスでは、固定化用化合物のうち、固相担体に対して生体物質を介して固定化されていた部分は固相担体から脱離する。
したがって、具体的には、固定化用化合物が分解されず生体物質のみが分解を受ける酵素やその他の薬品により生体物質を分解し、この処理により固相担体から脱離した物質を調べること、又は、固相担体表面に残留している物質を調べることにより、生体物質構成要素以外のマトリックスを構成する化合物を特定できる。マトリックスが生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を有していれば、脱離した物質のなかに固定化用化合物が検出される。また、固相担体表面には、固定化用化合物は検出されないか、検出されたとしてもその量は減少している。
一方、マトリックスが従来の方法による高分子膜を利用したものであれば、主鎖が高分子鎖であるため、生体物質が分解されても高分子膜(即ち高分子鎖)は全て固相担体に残り、脱離した物質のなかには生体物質構成要素は検出されるが、固定化用化合物に相当する高分子鎖は検出されないことになる。この違いにより、生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖の有無を確認することができ、本発明のマトリックスであるか否かを特定することができる。
上記の方法で用いる、生体物質を分解するための酵素や薬品は、用いた生体物質や固定化用化合物の種類に応じて任意のものを適当に用いればよい。その具体例を挙げると、生体物質が核酸である場合、例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素などが挙げられる。
また、生体物質がタンパク質である場合、例えば、微生物プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、レンネット、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素、臭化シアン、2−ニトロ−5−チオシアン安息香酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げられる。
さらに、生体物質が脂質である場合、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼA2等の脂質分解酵素などが挙げられる。
また、生体物質が糖である場合、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。
なお、生体物質を分解するための酵素や薬品は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、例示物の中でも、生体物質だけでなく固定化用化合物も分解する虞があるものは、上記の主鎖の確認が正確に行なえなくなる虞があるため、使用は避けるべきである。
また、生体物質の分解、及び、分解後に固相担体上に残留している物質を確認する場合、その具体的な確認方法は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、水晶振動子マイクロバランス(QCM)、電子顕微鏡、エリプソメトリーなどによる測定によって確認することができる。
さらに、生体物質分解後に固相担体から脱離した物質の分析する場合、その具体的な分析方法は任意であるが、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析(MS)、赤外分光法、核磁気共鳴法(NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、吸光度測定、蛍光測定などが挙げられる。また、分析に際しては、各測定手法を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
マトリックスの膜厚は任意であるが、マトリックスが乾燥した状態において、SEM又はTEMで測定した膜厚が、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。膜厚が小さすぎると、マトリックスが剥がれやすくなる虞があると共に、マトリックスの膜厚を均一にすることが難しく、さらに、再現性良く生体物質の固定化を行なうことが困難になる場合があるためである。
さらに、マトリックス中において、含有される生体物質の比率に制限は無いが、通常は、より多量の生体物質が含有されていることが望ましい。具体的には、「(生体物質の重量)/(マトリックスの重量)」で表される、マトリックスの重量に対する生体物質の重量の比率は、通常0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である。生体物質の比率がこの範囲を下回る場合、構成されるマトリックス中の固定化用化合物を十分に生体物質で覆うことができなくなり、固定化用化合物への非特異吸着を起こす虞がある。
なお、上記の生体物質の比率を測定する方法は特に限定されないが、例えば、マトリックスに含まれる生体物質を酵素や薬品等を用いて分解し、生体物質及び固定化用化合物由来の物質をそれぞれ各種の方法で定量すればよい。生体物質の分解及び測定方法は、上述したのと同様の方法を用いることができる。
また、通常は、固定化した生体物質が活性を失っていないことが望ましい。具体的には、マトリックスに、生体物質に対して特異的に相互作用することができる作用物質を含む溶液を接触させたときに、マトリックス中の生体物質の数に対する、生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比(以下適宜、「反応数比率」という)が、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であることが望ましい。上述したように、本発明のマトリックスを用いれば固相担体に対して大きい濃度(固相担体の単位表面当たりの量;surface concentration)で生体物質を固定化することができるが、反応数比率を前記範囲のように高くすることにより、固定化した生体物質を有効に用いることができる。なお、この反応数比率は、生体物質及び作用物質がそれぞれ生体分子及び作用分子等の分子である場合、それぞれの分子数の比として求めることができる。また、反応数比率は、例えばSPR(表面プラズモン共鳴)法あるいはQCM(水晶発振子マイクロバランス)法などにより測定することができる。
[III.効果]
本発明の生体物質固定担体を用いれば、生体物質を従来よりも多量に固定化することができる。例えば特許文献1〜3のような従来技術では、固相担体表面に形成された高分子膜(ポリマー膜)に生体物質を結合させていた。しかし、この場合、ポリマー鎖で形成された主鎖に対して、生体物質が高分子鎖の先端に結合したり高分子鎖にグラフト状に結合したりすることで、生体物質を固相担体に結合させていたため、主鎖としてポリマー鎖を形成させる必要があり、固定化する生体物質に対して一定以上のポリマーを使用しなくてはならず、生体物質の固定化量に限界があった。
これに対し、本発明においては、生体物質と高分子との両方によって形成されたマトリックス骨格(上記の主鎖に相当)を有するマトリックスを形成させ、このマトリックスを利用して固相担体に生体物質を固定化したため、マトリックス中における生体物質の比率を高めることができる(即ち、固定化用化合物の比率を小さくすることができる)。したがって、生体物質を固定化するに際して、従来のような限界は無く、生体物質を従来よりも多く、即ち、固相担体表面に対して高密度に固定化することが可能である。
また、本発明の生体物質固定担体は、簡単な方法で製造できることも利点のひとつである。従来の方法では、生体物質を高密度に固定化するためには多くの手間を要していた。具体的には、従来は、固相担体上にあらかじめ高分子膜を形成し、その高分子膜に生体物質を固定化して固相担体上にリガンドを含んだマトリックスを構築していた。しかし、これらの方法では、固相上に高分子膜を作製する際に、高分子の分子量や固相担体への導入密度を適切にコントロールする必要があり、操作が非常に煩雑であり再現性良く固定化を行なうことが困難であった。特に、特許文献3の方法では、固相担体表面からブラシ状に高分子鎖を構築することが技術的に難しく、大量生産には不向きであった。
これに対し、本発明の生体物質固定担体は、溶媒中に生体物質と固定化用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、固相担体状にマトリックスを形成させること、即ち、生体物質を固定化することができる、非常に簡単に製造可能なものである。また、特許文献2記載の技術のように、生体物質固定担体の製造に用いる溶媒を有機溶媒に限定され、それにより使用できる生体物質を制限されることがないため、固定化する生体物質の選択範囲を広げることが可能となる。
さらに、本発明の生体物質固定担体に形成されたマトリックスでは、生体物質を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定することができる。したがって、生体物質と、それと特異的に相互作用する作用物質との相互作用等に最適な反応場を構築することができる。これにより、例えば本発明の生体物質固定担体を上記の相互作用を利用したセンサに用いた場合、そのセンサの検出感度を高めることができる。
上記の最適な反応場を構築することができる理由は、本発明の発明者らか推察するところ、以下のとおりである。即ち、従来の高分子膜で表面処理した固相担体に後から生体物質を固定化する方法では、膜の表面に生体物質が偏ってしまい、高分子膜中に作用物質が進入できる空隙がなくなってしまう。さらに、主鎖が親水性ポリマーのみで構築される従来の技術では、親水性ポリマー鎖が排除体積効果及びポリマー鎖の運動により、生体物質への作用物質の接近を妨げることが推測される(生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法−BIACOREを中心に,編集 永田和宏・半田宏,発行所 シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社,第258頁、医療用高分子材料の開発と応用,シーエムシー,第19頁)。しかしながら、本発明の生体物質固定担体に形成されたマトリックスでは、生体物質を固相担体上に三次元的にほぼ均一な状態で固定することができ、さらに、本発明の技術を用いることにより、マトリックスの構造は高分子膜中で作用物質が充分反応できる空隙が形成されていると推察され、これにより、最適な反応場を構築できるようになっていると考えられる。
また、本発明の生体物質固定担体に形成されたマトリックスは、膜厚を任意に制御することができる。従来技術では、通常は、マトリックスの膜厚をサブミクロンレベルから数ミクロンレベルまで、任意にコントロールすることが難しかった。しかし、本発明によればマトリックスの膜厚を上記のような精密なレベルで制御することが可能であり、マトリックス構造の設計の自由度を高めることができる。
例えば、SPRによる相互作用観察を行なう場合には、観察対象を固定するために用いる膜の膜厚は200nm〜300nm程度が最適であると考えられる。また、例えば、医療用器具、再生医療担体の表面処理を行なう場合、充分な強度及び被覆を実現させるためには、その表面処理に用いる膜にはミクロオーダーの膜厚が要求される。さらに、例えばDDS(ドラッグデリバリーシステム)のための薬剤の表面処理を行なう場合には、ドラッグリリースの制御のためには、その表面処理に用いる膜を任意に膜厚を制御することが要求される。このように、生体物質の固定化に何らかの膜を利用する場合には、その膜厚制御が重要な点のひとつであったが、従来は膜厚制御が困難であった。しかし、本発明によれば、その用途に応じた膜厚を、混合物の濃度、量、反応条件(温度や時間等)などを調製することにより、任意に制御することができる。
さらに、本発明の生体物質固定担体では、生体物質と作用物質とを相互作用させるべく本発明の生体物質固定担体を使用した場合に、生体物質以外のマトリックス構成要素に起因する非特異的相互作用を抑制することができる。マトリックス中における生体物質の比率を高め、非特異的相互作用の要因となる生体物質以外の物質の比率を抑制することができるからである。
また、特に、固定化用化合物として無電荷のものを用いた場合には、電荷により生じる非特異的相互作用をより一層抑制することも可能となる。即ち、例えば特許文献1記載の方法においては、高分子膜が電荷を有しているために、用いる緩衝溶液のpHやイオン強度が生体物質の反応に大きく影響し、さらに、電荷を有するタンパク質は静電気的相互作用による非特異吸着を避けられなかった(ナノテクノロジー基礎シリーズ バイオナノテクノロジー 堀池靖浩・片岡一則(共編)第186頁を参照)。しかし、固定化用化合物として無電荷のものを用いれば、そのようなことはなく、特定の相互作用を選択的に生じさせることが可能となる。
[IV.生体物質固定化キット]
上述した生体物質固定化担体を製造するため、生体物質を固相担体に固定化するために用いるもの、即ち、上述した固定化用化合物や、生体物質及び固定化用化合物を混和させうる溶媒を、キット化した生体物質固定化キットを用いても良い。即ち、生体物質固相担体を製造するため、固定化用化合物と、生体物質及び固定化用化合物を混和させうる溶媒とを備える生体物質固定化キットを用意するようにしてもよい。生体物質固定化キットを用いれば、生体物質固定担体を簡単に製造できる、即ち、固相担体上に上記マトリックスを簡単に作製できるため、生体物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化することが可能となる。
生体物質固定化キットに備えられる固定化用化合物は、上述したものと同様である。また、生体物質固定化キットにおいて、固定化用化合物はどのような状態で備えられていても良く、例えば、任意の溶媒に溶解した溶液、任意の分散媒に分散した分散液、粉末状や塊状の固体など、その存在状態は任意である。
また、生体物質固定化キットに備えられる溶媒も、生体物質固定担体の製造に用いる溶媒として上述した溶媒と同様である。さらに、生体物質固定化キットにおいて、この溶媒は、上記固定化用化合物と別に備えられていても良く、固定化用化合物の溶媒や分散媒等として固定化用化合物と一体に備えられていても良い。
さらに、生体物質固定化キットには、必要に応じて他の要素が備えられていても良い。
例えば、マトリックスの製造を促進する試薬などをさらに備えていても良い。具体例としては、固定化用化合物としてポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸のカルボニル基を活性させるために1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(略称:EDC)を試薬として備えるようにしてもよい。
[V.用途]
本発明の生体物質固定担体は、産業上の広い範囲において用いることが可能である。具体的な用途に制限は無く、任意の用途に用いることができるが、通常は、生体物質と、その生体物質と特異的に相互作用する作用物質との「相互作用」を利用した用途に用いて好適である。
例えば、本発明の生体物質固定担体は、生体物質と相互作用する作用物質を検出するバイオセンサーとして好適に使用できる。上記のバイオセンサーは、例えば、いわゆるDNAアレイ若しくはDNAチップ、または、プロテインアレイ若しくはプロテインチップ等と呼ばれる、DNAまたはタンパク質を固定化したセンサーチップを用いて、相互作用を解析するものであるが、本発明の生体物質固定担体は、このセンサーチップに適用することができる。即ち、センサーチップに生体物質を固定化する場合に、上述した方法によりセンサーチップ本体にマトリックスを形成して、センサーチップを本発明の生体物質固定担体として用いることができる。
このように、本発明の生体物質固定担体を適用することができるバイオセンサーの具体例としては、蛍光法、化学発光法、RI法、SPR(表面プラズモン共鳴)法、QCM(水晶発振子マイクロバランス)法、ピエゾ方式カンチレバー法、レーザー方式カンチレバー法、質量分析法、電気化学的方法によるセンサーなどが挙げられる。この中でも、SPR法およびQCM法による検出は、簡便に検体を無標識で分析することができるため、好適に用いられる。
SPR法は、表面プラズモン波を誘起させるために、センサーチップの表面は、金属で被覆されているのが好ましい。金属としては、表面プラズモン波を誘起しうるものであればよく、金、銀、銅、アルミニウムおよびこれらを含む合金などが挙げられる。なかでも、感度や安価な点では銀が好ましく、安定性の面では金が好ましい。金属層は、蒸着、スパッタリング、メッキ、その他のコーティングなどによって形成され、その厚さは、通常20nm以上、好ましくは30nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは160nm以下程度である。
これらSPR法やQCM法に本発明の生体物質固定担体を適用する場合、センサーチップ本体の表面にマトリックスを強固に結合するためには、センサーチップ本体の表面が官能基を有していることが好ましい。この場合、官能基は任意であるが、例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アミノアルデヒド基、ヒドラジド基、カルボニル基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、スクシンイミド基等が挙げられる。
さらに、本発明の生体物質固定担体は、DDS(ドラッグデリバリーシステム)のための薬剤の表面処理、再生医療担体の表面処理、人工臓器の表面処理、カテーテルなどの表面処理等に適用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、実施例の説明において、特に断らない限り、%は重量%を表わす。
[ポリマー(固定化用化合物)の合成]
[製造例1:ポリマーAの合成]
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)0.564重量部とN−アクリロイロキシスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)0.169重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)8.75重量部とをよく混合し、50mLの四つ口フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液をオイルバスにて60℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.008重量部を脱水ジオキサン0.5gに溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、8時間行なった。
重合後、ポリマーが生成した溶液は、0.5Lのジエチルエーテル(国産化学株式会社製)に滴下することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、ポリマーAを得た。
得られたポリマーAについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行なった結果、重量平均分子量(Mw)が約86000と見積もられた。
また、得られたポリマーAに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、NMR測定からNAS/NAM=30/70と見積もられた。
[製造例2:ポリマーBの合成]
モノマーとして、NAM及びNASに代えてジメチルアクリルアミド(DMAA、KOHJIN社製)0.793重量部、及び、NAS 0.338重量部を用い、溶媒である脱水ジオキサンの使用量を18.37重量部とし、重合開始剤であるAIBNの使用量を0.00164重量部とした以外は、製造例1(ポリマーAの合成)と同様にして、ポリマーBを得た。
得られたポリマーBについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC測定を行なった結果、重量平均分子量(Mw)が約26000と見積もられた。
また、ポリマーBに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、NMR測定からNAS/NAM=43/57と見積もられた。
[製造例2’:ポリマーCの合成]
モノマーとして、NAMを1.13重量部、NASを0.33重量部、溶媒である脱水ジオキサンを18.03重量部とし、重合開始剤であるAIBNの使用量を0.0016重量部とした以外は、製造例1(ポリマーAの合成)と同様にして、ポリマーCを得た。
[センサチップの表面処理]
[製造例3:SPRセンサチップA]
SPR用センサチップには、大きさが縦2.5cm×横2.5cm×厚さ1.2mmの平板状ポリカーボネート製の基体表面に、溝ピッチ約870nm、溝深さ約40nmの回折格子を有し、さらにその基体表面に厚さ約80nmで金を蒸着した金被覆センサチップを用いた。
この金被覆センサチップを、10mMの16−メルカプトヘキサデカン酸(16−MERCAPTOHEXADECANOIC ACID;ALDRICH社製)エタノール溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させ、表面処理を行なった。反応終了後、金被覆センサチップをエタノールで洗浄した。この表面処理は、金被覆センサチップ表面に金−硫黄結合を介してカルボキシル基を導入するものである。
次に、0.1MのN−ヒドロキシスクシイミド(NHS、和光純薬工業社製)水溶液1mLと0.4Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC、同仁化学研究所製)水溶液1mLとを混合し、さらに脱塩水18gで希釈した溶液に、カルボキシル基を導入した金被覆センサチップを浸漬させ15分間反応させた。ここで得られた、カルボキシル基を導入されたSPRセンサチップをSPRセンサチップAとした。
[製造例4:平滑金被覆基板]
グレーティングが形成されていない以外は製造例3(SPRセンサチップAの表面処理)で用いたものと同様に形成された金被覆基板に、製造例3(SPRセンサチップAの表面処理)と同様の表面処理を行なった。ここで得られた平滑金被覆基板を、平滑金被覆基板Bとした。
[測定用センサチップの作製]
[製造例5:SPRバイオセンサチップ1]
上記ポリマーA(固定化用化合物)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調製したポリマーA水溶液10μLと、1%マウスIgG(LAMPREBIOLOGICAL LABORATORIES社製,Mw=150kDa;生体物質)水溶液100μLとを混合し、その混合液1μLを、上記SPRセンサチップAに滴下し、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、1Mエタノールアミン塩酸塩(SIGMA社製,pH8.5)水溶液に15分間浸漬させて未反応スクシンイミド基をブロッキングし、さらに、脱塩水を用いて基板を洗浄した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ1とした。
[製造例6:SPRバイオセンサチップ2]
固定化用化合物として、ポリマーAに代えて上記ポリマーBを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ2とした。
[製造例7:SPRバイオセンサチップ3]
固定化用化合物の水溶液であるポリマーA水溶液の濃度を1%とし、生体物質の水溶液としてマウスIgG水溶液の代わりに豚由来−アルブミン(p−SAシグマ社製,Mw=約60kDa;生体物質)を上記のHEPESバッファーを用いて5%に調整したp−SA水溶液100μLを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ3とした。
[製造例8:濃度依存SPRバイオセンサチップ]
上記ポリマーA(固定化用化合物)を、10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製して、マウスIgG(生体物質)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製し、同じ濃度のポリマーA水溶液10μLとマウスIgG水溶液100μLとをそれぞれ混合し、各混合液1μLを、上記SPRセンサチップAにそれぞれ滴下し、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして自然乾燥、ブロッキング及び洗浄を行ない、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、濃度依存SPRバイオセンサチップとした。
[製造例9:電子顕微鏡観察用チップ]
縦15mm、横15mm、厚さ2mmのシリコンラバーに、直径10mmの貫通孔を形成し、上記平滑金被覆基板Bの上に密着させた。また、別途、上記ポリマーAを10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調製したポリマーA水溶液10μLと1%マウスIgG水溶液100μLとを混合し、シリコンラバーを密着させた電子顕微鏡観察用チップBの貫通孔にこの混合液100μLを満たした。その後、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、シリコンラバーを取り除き、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にしてブロッキング及び洗浄を行ない、金被覆基板を作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としての金被覆基板を、電子顕微鏡観察用チップとした。
[製造例10:蛍光測定用バイオセンサチップA]
シリコンラバーの寸法を縦2.5cm、横2.5cm、厚さ0.5mmとし、貫通孔の直径を0.5mmとした他は、製造例9(電子顕微鏡観察用チップの作製)と同様にして、金被覆基板を作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としての金被覆基板を、蛍光測定用バイオセンサチップAとした。
[製造例11:マトリックス主鎖確認用チップ]
固定化用化合物の水溶液であるポリマーA水溶液の濃度を0.3%とし、生体物質の水溶液の濃度を0.3%とした他は製造例5と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、マトリックス主鎖確認用チップとした。
[製造例12:成分分析用チップ]
上記平滑金被覆基板Bの上に、固定化用化合物としてポリマーCを用い、基板に混合物を1μLずつ40スポットした以外は製造例5と同様にして、成分分析用チップを作製した。
[製造例13:プリズム型SPRバイオセンサチップ]
基板として、MultiSPRinter Au Chip(TOYOBO社製)に、製造例3と同様の表面処理を行なった。ここで得られた基板をプリズム型SPRセンサチップとした。さらに、この平滑なプリズム型SPRセンサチップの上に、ポリマーAの濃度及びマウスIgGの濃度を各0.3%とした以外は、製造例5と同様にして、本発明の生体物質固定担体を作製した。これをプリズム型SPRバイオセンサチップとする。
[比較製造例1:比較SPRバイオセンサチップ2D]
ポリマーA水溶液とマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、1%マウスIgG水溶液(生体物質水溶液)1μLを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にしてSPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製したSPRバイオセンサチップを比較SPRバイオセンサチップ2Dとした。
[比較製造例2:濃度比較SPRバイオセンサチップ]
マウスIgG(Mw=約150kDa;生体物質)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて、0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製し、各1μLを上記SPRセンサチップAに滴下し、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、固定化、自然乾燥、ブロッキング、洗浄を行ない、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製したSPRバイオセンサチップを濃度比較SPRバイオセンサチップとした。
[比較製造例3:ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップ]
製造例3で用いたのと同様の金被覆センサチップ(表面処理前のもの)を、10mMの2−MERCAPTOETHYLAMINE(SIGMA社製)水溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させた。反応終了後、この金被覆センサチップを脱塩水で洗浄した。この表面処理は、金被覆センサチップ表面に金−硫黄結合を介してアミノ基を導入するものである。ここで得られた、アミノ基を導入された金被覆センサチップをSPRセンサチップBとした。
次に、25mLの脱塩水に1.25gのポリアクリル酸(平均分子量250000 ポリサイエンス社製)と24mgのEDCとを溶解させた溶液に、SPRセンサチップBを浸漬させ1時間反応させた。反応終了後チップを脱塩水で洗浄した。この処理は、金表面上のアミノ基とポリアクリル酸のカルボキシル基とをEDCにより縮合させることによりアミド結合を形成させ、ポリアクリル酸を金表面(センサチップの表面)に固定化するものである。ここで得られた、ポリアクリル酸で表面処理された金被覆センサチップをSPRセンサチップCとした。
1%に調製したマウスIgG水溶液(生体物質水溶液)1μLを、上記SPRセンサチップCに滴下し、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。固定化後、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、ブロッキング、洗浄を行ない、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製したSPRバイオセンサチップをポリアクリル酸SPRバイオセンサチップとした。なお、この方法は、固相担体を高分子膜で予め被覆し、生体物質をその高分子膜に固定化するという従来技術に基づく手法である。
[比較製造例4:蛍光測定用バイオセンサチップB]
ポリマーA水溶液とマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、1%マウスIgG水溶液(生体物質水溶液)を用いた他は、製造例10(蛍光測定用バイオセンサチップAの作製)と同様にして、金被覆基板を作製した。こうして作製した金被覆基板を蛍光測定用バイオセンサチップBとした。
[比較製造例5:比較プリズム型SPRバイオセンサーチップ]
ポリマーAとマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、0.3%マウスIgG水溶液を用いた他は、製造例13(プリズム型SPRバイオセンサチップの作製)と同様にして、比較プリズム型SPRバイオセンサーチップを作製した。
[実施例1:蛍光測定]
製造例10で作製した蛍光測定用バイオセンサチップA及び比較製造例4で作製した蛍光測定用バイオセンサチップBを用いて、抗原抗体反応(相互作用)の蛍光測定を行なった。
検体(作用物質)にはCy5でラベル化したウサギ血清アンチマウス−Fab′(イムノプローブ社製、Mw=約50kDa)を用いた。この検体のラベル化は次のようにして行なった。まず、CyDyeTM Cy5 monofunctional reactive dye 1 vial(amersham pharmacia biotech社製)に1mg/mLのウサギ血清アンチマウス−Fab′1mLを加え、常温にて30分間反応させた。また、NAP−5 Column(Amersham Bioscience社製)を用いて、ゲル濾過により未反応のラベル化試薬を除去し、これにより、検体としてCy5ラベル化ウサギ血清アンチマウス−Fab′を得た。
上記のラベル化したウサギ血清アンチマウス−Fab′を用いて調製した10μg/mL Cy5 ラベル化ウサギ血清アンチマウス−Fab′溶液2mLに、金基板を浸し、常温にて10分間反応させ、MilliQ水にて金基板を洗浄後、乾燥させた。これをGenePix 4000A Microarray scanner(Amersham Bioscience社製)に装填し、波長650nmの蛍光を測定した。
その結果、蛍光測定用バイオセンサチップAの蛍光強度(平均値)と蛍光測定用バイオセンサチップBの蛍光強度との比は11919:250であった。これにより、本発明の実施例である蛍光測定用バイオセンサチップAを用いた場合の蛍光は、従来例である蛍光測定用バイオセンサチップBを用いた場合に比べ、およそ48倍に向上することが確認された。
また、図3(a),(b)に、蛍光測定時の蛍光観察写真を表わす図面代用写真を示す。図3(a)は蛍光測定用バイオセンサチップAを写したもの、図3(b)は蛍光測定用バイオセンサチップBを映したものである。なお、図3(a),(b)において、白い部分が蛍光を発している部分である。
[実施例2:QCM測定]
製造例1で合成したポリマーAを10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調整したポリマーA(固定化用化合物)水溶液10μLと、製造例5で用いたのと同様のマウスIgGを用いて1%に調整したマウスIgG(生体物質)水溶液100μLとを混合して混合液(混合物)を調製した。また、別途、製造例5でSPRバイオセンサチップ1を作製したのと同様に表面処理したQCM用チップを用意した。このQCM用チップの表面に、上記の混合液を3μL滴下し、30分間固定化した。その後自然乾燥にて溶媒を除去し、さらに1Mのエタノールアミンにてブロッキングを施し、QCMバイオセンサチップを作製した。その後、QCMバイオセンサチップを10μg/mLのウサギ血清アンチマウス−Fab′(Mw=約50kDa;作用物質) HEPES10mM溶液に1時間浸した。この際、上記の操作の各段階におけるの吸着挙動を、Initium社製QCM AFFINIX Qで測定した。具体的には、表面処理後(即ち、表面処理を行なった後混合液を滴下する前)、マトリックス形成後(即ち、混合液の滴下後ウサギ血清アンチマウス−Fab′溶液に浸す前)、及びアナライト反応後(即ち、ウサギ血清アンチマウス−Fab′溶液に浸した後)のそれぞれについて測定を行なった。なお、測定はすべて空気中で水分を乾燥させたものを測定値とした。その結果を表1に示す。
マトリックス形成後と表面処理後との間の振動数の変化量は−42690.3Hzであり、このことから、QCMバイオセンサチップに固定化された生体物質(マウスIgG)の固定量は約25.6μg/cm2と算出される。
また、アナライト反応後とマトリックス形成後との振動数の変化量は−9306.1Hzであり、このことから、QCMバイオセンサチップにおける作用物質の単位面積当たりの反応量は約5.6μg/cm2と算出される。
したがって、反応数比率は、
反応数比率
=(5.6/50kDa)/(25.6/150kDa)
=0.66
と見積もられる。これにより、QCMバイオセンサチップにおいても、マトリックスに、生体物質に対して検出液(作用物質を含む溶液)を接触させたときに、マトリックス中の生体物質の数(分子数)に対する生体物質と相互作用した作用物質の数(分子数)の比(反応数比率)が0.5以上であることが確認された。
[実施例3:SPR測定]
製造例5で作製した上記SPRバイオセンサチップ1、及び、製造例6で作製した上記SPRバイオセンサチップ2に、それぞれアナライト(検体)として10μg/mLウサギ血清アンチマウス−Fab′(イムノプローブ社製、Mw=約50kDa)を用い、Bufferには10mM HEPESバッファーを用いて、SPRにより、抗体抗原反応(相互作用)の測定を行なった。また、実施例3に対する比較として、比較製造例1で作製した比較SPRバイオセンサチップ2Dを用い、同様にして抗体抗原反応の測定を行なった。
なお、測定装置としては、グレーティング型のSPR測定装置FLEX CHIPSTM Kinetic Analysis System(HTS Biosystems Inc.)を用いた。また、測定は、測定開始から2分間は10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液し、その後、8分間10μg/mL ウサギ血清アンチマウス−Fab′(アナライト)を送液し、最後に15分間10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液することにより行なった。さらに、送液速度はすべて、500μL/minとした。
測定結果を図4,図5にそれぞれ示す。
図4,5から分かるように、本発明の生体物質固定担体であるSPRバイオセンサチップ1,2を用いてSPR測定を行なった場合、従来の方法により生体物質を固定化した比較SPRバイオセンサチップ2Dを用いた場合に比べ、SPRシフト量が大きくなる。
また、測定前の共鳴角、及び、検体を流し終えた時と測定初期との共鳴角の差を、表2に示す。
さらに、上記SPRセンサチップA(即ち、生体物質を固定化する前のセンサチップ)を用いて同様の測定を行ない、そのSPRセンサチップAの共鳴角と、SPRバイオセンサチップ1,2及び比較バイオセンサチップ2Dそれぞれの共鳴角との差を算出した。この共鳴角の差も、表2に示す。これから、SPRバイオセンサチップ1,2には比較バイオセンサチップ2Dよりも多量の生体物質が固定化されていることが分かる。
ここで、マトリックスが全て生体物質であると仮定すると、マトリックス中の生体物質の数(分子数)に対する、生体物質と相互作用した作用物質の数(分子数)の比(反応数比率)は、
反応数比率
=(420mdeg/50kDa)/(1500mdeg/150kDa)
=0.84
と算出される。
なお、ここではマトリックスが全て生体物質であると仮定したが、実際には、マトリックスには生体物質のみで無く固定化用化合物も含まれているので、反応数比率は算出された値(0.84)よりも大きくなると考えられる。これにより、マトリックスに、生体物質に対して検体(作用物質を含む溶液)を接触させたときに、マトリックス中の生体物質の数(分子数)に対する生体物質と相互作用した作用物質の数(分子数)の比(反応数比率)が0.5以上であることが確認された。
同様にして、SPRバイオセンサチップ2では、その反応数比率は0.96と算出される。SPRバイオセンサチップ1と同様、実際の反応数比率は算出された値(0.96)よりも大きくなると考えられ、これにより、SPRバイオセンサチップ2においても、マトリックスに、生体物質に対して検出液(作用物質を含む溶液)を接触させたときに、マトリックス中の生体物質の数(分子数)に対する生体物質と相互作用した作用物質の数(分子数)の比(反応数比率)が0.5以上であることが確認された。
[実施例4:非特異的相互作用の検証]
製造例5で作製したSPRバイオセンサチップ1と製造例7で作製したSPRバイオセンサチップ3とが同じ基板上に設けられたセンサチップを作製し、このセンサチップを用いて、検体として実施例1で用いたウサギ血清アンチマウス−Fab′と、ウサギ血清アンチ豚−SA(イムノプローブ社製,Mw=約150kDa)とを用いて、それぞれに対する特異吸着および非特異吸着の検出をSPRにて測定した。
具体的には、測定開始から2分間は10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液し、その後、8分間検体として、10μg/mLウサギ血清アンチマウス−Fab′を送液し、その後15分間10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液し、さらに8分間検出液として、100μg/mLウサギ血清アンチ豚−SAを送液し、最後に15分間10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液した。なお、送液速度はすべて、500μL/minとした。また、測定装置は、実施例3と同様のものを用いた。この結果を図6に示す。
SPRバイオセンサチップ1にとってはアンチ豚−SAとの相互作用は非特異的相互作用となり、SPRバイオセンサチップ3にとってはアンチマウス−Fab′との相互作用は非特異的相互作用となる。したがって、非特異的相互作用が生じた場合には、検体を流して測定を行なっている場合に、それらの非特異的相互作用によるSPRシフトが測定されるはずである。しかし、図6によれば、そのような非特異的相互作用によるSPRシフトはほとんど測定されず、これにより、SPRバイオセンサチップ1,3を用いた場合には非特異的相互作用がほとんど生じていないことが確認された。
[実施例5:マトリックスの膜厚についての検証]
製造例8で作製した濃度依存SPRバイオセンサチップの、別々の濃度の混合液を用いてマトリックスを形成した各部分における、マトリックスの固定量を、それぞれSPRによって測定した。測定されるSPRシフト量が大きいほど、固定量が大きいことを表わす。なお、測定装置としては、実施例3で用いたのと同様のSPR測定装置を用いた。SPR測定の結果得られた、SPRシフト量と、濃度依存SPRバイオセンサチップの作製に用いた混合液の濃度との関係を図7に示す。
また、比較のため、比較製造例2で作製した濃度比較SPRバイオセンサチップについても同様に、別々の濃度のマウスIgG水溶液を用いて固定化した各部分における、マウスIgGの固定量を、それぞれSPRにより測定した。測定されるSPRシフト量が大きいほど、固定量が大きいことを表わす。この結果得られた、SPRシフト量と、濃度比較SPRバイオセンサチップの作製に用いたマウスIgG水溶液の濃度との関係についても、図7に示す。
図7から、生体物質(マウスIgG)のみを固定化した濃度比較SPRバイオセンサチップの場合、その固定量はSPRシフト量としておよそ200mdeg程度で飽和することが分かる。
これに対して、本発明の生体物質固定担体である濃度依存SPRバイオセンサチップでは、マトリックス形成に用いた混合液の濃度の増加とともに、線形でSPRシフト量が増加している。このことから、マトリックス形成に用いる混合液(混合物)の濃度によって、マトリックスの膜厚の制御が可能であることが確認された。このことは、用途に応じて、マトリックスの膜厚を精密なレベルで制御し、なおかつ自由に設計できることを示している。
[比較例1:ポリアクリル酸被膜]
センサチップとして、比較製造例3で作製したポリアクリル酸SPRバイオセンサチップを用いた他は、実施例3と同様にして、抗体抗原反応をSPR測定により検出した。
測定結果を図8に示す。図8より、ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップを用いた本比較例のSPR測定においては、SPRシフト量は、実施例3で測定したSPRバイオセンサチップ1,2を用いて測定したものよりも小さい。これは、従来のような、固相担体表面を被覆した親水性高分子化合物の高分子鎖に生体物質を結合させる方法よりも、本発明の生体物質固体担体を用いた方が、大きな相互作用が生じていることを表わす。このことから、SPRバイオセンサチップ1,2には、ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップよりも多量の生体物質が固定化されていることが分かる。
また、測定前の共鳴角、及び、検体を流し終えた時と測定初期との共鳴角の差を、表3に示す。
さらに、上記SPRセンサチップB,C(即ち、生体物質を固定化する前のセンサチップ)を用いて同様の測定を行ない、そのSPRセンサチップBの共鳴角と、SPRセンサチップC及びポリアクリル酸SPRバイオセンサチップそれぞれの共鳴角との差を算出した。この共鳴角の差も、表3に示す。
したがって、反応数比率は、実施例3と同様に計算すると、
反応数比率
=(70.75mdeg/50kDa)/{(740mdeg−260mdeg)/150kDa}
=0.44
と見積もられる。これは、実施例3のSPRバイオセンサチップ1,2の反応数比率(0.84,0.96)よりもはるかに小さい値であり、これにより、本発明の生体物質固定担体は、従来技術よりも生体物質と作用物質との反応性に優れることが確認された。
[実施例7]
製造例9で作製した電子顕微鏡観察用チップの断面を、SEMにより観察した。観察されたSEM断面写真を表わす図面代用写真を図9に示す。
図9からは、乾燥状態での膜厚が約3μmあることがわかる。
また、図9において、白く見える部分がマトリックス骨格である。
[実施例8]
予め、実施例3と同様の測定装置を用いて、製造例11で作製したマトリックス主鎖確認用チップ、及び、マトリックス主鎖確認用チップのバックグラウンドであるSPRセンサチップAのSPR測定を行なった。
また、生体物質のみを分解する酵素の水溶液として、トリプシン(Wako社製)0.5%、炭酸アンモニア1%、尿素2M、塩化カルシウム1mMを溶解したpH8.0の酵素水溶液を調製した。この酵素水溶液5μLをマトリックス主鎖確認用チップに接触させ、飽和蒸気圧下37℃で12時間静置し、マトリックス主鎖確認用チップを蒸留水で洗浄する、という操作を2回繰り返し、生体物質の分解を行なった。その後、実施例3と同様の測定装置を用いて、SPR測定を行なった。
SPR測定の結果を図10に示す。
図10に表わされたように、酵素分解前は共鳴角が約20.8degreeであったものが、酵素分解後には共鳴角は約18.6degreeとなっている。マトリックス形成前のバックグラウンドの共鳴角が約18.5degreeであること、及び、バックグラウンドと酵素分解後との測定結果がほぼ一致していることから、酵素分解により、マトリックスを構成する生体物質及び固定化用化合物の両方が固相担体であるSPRセンサチップAからほぼ全て脱離したことが分かる。したがって、形成されていたマトリックスは、生体物質及び固定化用化合物からなる主鎖を有する本発明のマトリックスであったことが確認された。
[実施例9]
製造例12で作製した成分分析用チップ上のマトリックスを塩酸で加水分解し、生じたアミノ酸量からIgGを定量した。さらに、加水分解物中のポリアクリル酸量から、ポリマーAを定量した。
具体的には、成分分解用チップの生体物質構造体を、6N塩酸、150℃、1hrで加水分解した。その後、塩酸を減圧乾燥し、加水分解物を1%アンモニア水に溶かし、遠心分離(10000rpm、3分)で不溶分を除いた。この加水分解溶液を減圧乾燥後、0.1%アンモニア水1mLに溶かし、100μLをアミノ酸分析、400μLをPAA(ポリアクリル酸)分析に用いた。
(アミノ酸分析試料)
上記の加水分解溶液100μLを減圧乾燥し、0.02N塩酸500μLに溶かした。これを遠心式限外ろ過(MWCO:10000、マイクロコンYM−10)し、ろ液10μLをアミノ酸分析した。
なお、アミノ酸分析は、以下の表4の条件で行なった。
(ポリアクリル酸分析試料)
上記の加水分解溶液400μLを遠心式限外ろ過(MWCO:10000)で濃縮し、1%アンモニア水400μLで希釈した。この限外ろ過による希釈−濃縮操作を6回繰り返して低分子成分を除いた。高分子成分を1%アンモニア水で回収し、減圧乾燥してからポリアクリル酸(PAA)分析に供した。
なお、PAA分析(反応熱分解GCMS)は、以下の表5の条件で行なった。
その結果、マウスIgGは390μg、ポリマーCは16.9μg検出され、生体物質構造体中に含まれる生体物質の比率「生体物質の重量/(固定化用化合物の重量+生体物質の重量)」は0.958となり、マトリックスに含まれる生体物質の重量の比率が極めて高いことが示された。
[実施例10]
製造例13で作製した上記プリズム型SPRバイオセンサーチップにアナライト(検体)として50μg/mLウサギ血清アンチマウスFab’を用い、バッファーには10mM HEPESバッファーを用いて、SPRにより、抗体抗原反応(相互作用)の測定を行なった。また、実施例10に対する比較として、比較製造例5で作製した比較プリズム型バイオセンサーチップを用い、同様にして抗体抗原反応の測定を行なった。
なお、測定装置としてはプリズム型のSPR測定装置MultiSPRinterTM(TOYOBO社製)を用いた。また、測定は、測定開始から3分30秒間は10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液し、その後、10分間50μg/mLウサギ血清アンチマウスFab’(アナライト)を送液し、最後に5分間10mM HEPESバッファー(pH7.4)を送液することにより行なった。さらに、送液速度は全て100μL/minとした。
測定結果を図11に示す。図11から分かるように、本発明の生体物質固定担体であるプリズム型SPRバイオセンサーチップは、従来方法より、生体物質を固定化した比較プリズム型SPRバイオセンサーチップを用いた場合よりも、抗体抗原反応は約7倍のシグナルを観測した。
本発明の生体物質固定担体、本発明の生体物質固定担体の製造方法、生体物質固定化キット、並びに、センサーチップは、産業上の任意の分野に用いることができるが、中でも、例えば生体物質間相互作用解析用センサーチップや生体適合性が求められる医療材料の表面処理などに好適に用いられる。
図1(a)〜図1(c)はいずれも、本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体物質固定担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。 本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体物質固定担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。 本発明の実施例1において観察された蛍光観察写真を表わす図面代用写真であり、(a)は蛍光測定用バイオセンサチップAを写したもの、(b)は蛍光測定用バイオセンサチップBを映したものである。 本発明の実施例3において、SPRバイオセンサチップ1及び比較バイオセンサチップ2Dを用いてSPR測定を行なった結果を示すグラフである。 本発明の実施例3において、SPRバイオセンサチップ2及び比較バイオセンサチップ2Dを用いてSPR測定を行なった結果を示すグラフである。 本発明の実施例4において、SPRバイオセンサチップ1,3を用いてSPR測定を行なった結果を示すグラフである。 本発明の実施例5において、SPRシフト量と、濃度依存SPRバイオセンサチップの作製に用いた混合液の濃度との関係、及び、SPRシフト量と、濃度比較SPRバイオセンサチップの作製に用いたマウスIgG水溶液の濃度との関係を表わすグラフである。 比較例1において、ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップを用いてSPR測定を行なった結果を示すグラフである。 本発明の実施例7において観察されたSEM断面写真を表わす図面代用写真である。 本発明の実施例8において、マトリックス構造確認用チップの酵素分解前後及びバックグラウンドについてSPR測定を行なった結果を示すグラフである。 本発明の実施例10においてSPRにより測定した抗体抗原反応の測定結果を表わすグラフである。

Claims (14)

  1. 固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体であって、
    該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、
    該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、
    該固定化用化合物は、1分子中に3点以上の該結合官能基を有し、
    該固定化用化合物の重量平均分子量が1000以上であり、
    該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが該結合官能基によって結合した該部分構造が繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在する
    ことを特徴とする、生体物質固定担体。
    {式(A)において、Rは該生体物質を表わし、Rは該固相担体に直接結合していない該固定化用化合物を表わし、各R,Rはそれぞれ同じであっても異っていても良い。}
  2. 該マトリックスが、
    溶媒の存在下、該生体物質及び該固定化用化合物を共存させた混合物を該固相担体表面に供給して形成された
    ことを特徴とする、請求項1に記載の生体物質固定担体。
  3. 該混合物中における、「該生体物質の重量/(該固定化用化合物の重量+該生体物質の重量)」の値が0.5以上である
    ことを特徴とする、請求項2に記載の生体物質固定担体。
  4. 該マトリックスの重量に対する該生体物質の重量の割合が0.5以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
  5. 該マトリックスの膜厚が、乾燥状態で5nm以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
  6. 該固定化用化合物が無電荷である
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
  7. 該固定化用化合物が、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
  8. 該マトリックスに、該生体物質に対して特異的に相互作用することができる作用物質を含む溶液を接触させたときに、該マトリックス中の該生体物質の数に対する該生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比が0.5以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
  9. 固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体の製造方法であって、
    該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、
    該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、
    該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが結合官能基によって結合した該部分構造が繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在し、
    該マトリックスを、
    溶媒の存在下、生体物質及び該固定化用化合物を共存させた混合物を固相担体に供給することにより形成する
    ことを特徴とする、生体物質固定担体の製造方法。
    {式(A)において、Rは該生体物質を表わし、Rは該固相担体に直接結合していない該固定化用化合物を表わし、各R,Rはそれぞれ同じであっても異っていても良い。}
  10. 該固定化用化合物は、1分子中に2点以上の該結合官能基を有する
    ことを特徴とする、請求項9に記載の生体物質固定担体の製造方法。
  11. 該固定化用化合物の重量平均分子量は1000以上である
    ことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の生体物質固定担体の製造方法。
  12. 上記溶媒が水である
    ことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の生体物質固定担体の製造方法。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体物質固定担体を製造するための生体物質固定化キットであって、
    該生体物質と結合可能な固定化用化合物と、
    該生体物質及び該固定化用化合物を混和させうる溶媒とを備える
    ことを特徴とする、生体物質固定化キット。
  14. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体物質固定担体を有する
    ことを特徴とする、センサーチップ。
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