JP4939019B2 - 生体物質が固定化された固相担体、及び生体物質が固定化された固相担体の製造方法、生体物質固定化キット並びにセンサーチップ - Google Patents
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Description
このように生体物質が固定化された固相担体を製造する方法、即ち、固相担体表面に生体物質を固定化する方法については、これまでに幾つかの報告がされている。
また、固相担体であるスライドガラスを、ポリアクリルアミドの膜で被覆したものも市販されている(パーキングエルマー社製 HydroGel Coated Slide)。この製品は、水分を含有し膨潤したポリアクリルアミドゲルを使用するため、乾燥が懸念されるナノリットルオーダーのサンプルを滴下することに適しており、さらにポリアクリルアミドに生体物質を吸着するため活性化を不要とする利点を有する。
以上のように、固相担体上に親水性高分子膜を構築するという従来技術は、個々に利点を有している。
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、固相担体上に、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体、及び、固相担体上に従来よりも多量の生体物質が固定化された固相担体の製造方法、それを製造するための生体物質固定化キット、並びに、センサーチップを提供することを目的とする。
これにより、生体物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の生体物質が固定化された生体物質固定担体を提供することができる。また、形成されたマトリックスではリガンドなどの生体物質が三次元的に固定化されているため、該マトリックスは、生体物質を有効に作用させることができる反応場として用いることが可能である。
さらに、該マトリックスの重量に対する該生体物質の重量の割合も、0.5以上であることが好ましい(請求項4)。これにより、該固定化用化合物への非特異的吸着を抑制することができる。
また、該固定化用化合物は無電荷であることが好ましい(請求項6)。これにより、生体物質が非特異的相互作用を生じることを抑制することができる。ここで、非特異的相互作用とは、マトリックスを用いて固相担体に固定化された生体物質の所定の相互作用を生じさせようとする場合に、目的とする相互作用以外に生じる相互作用のことをいう。
なお、このとき、上記の溶媒は水であることが好ましい(請求項12)。
また該固定化用化合物は、1分子中に2点以上の該結合官能基を有することが好ましい(請求項10)。また該固定化用化合物の重量平均分子量は1000以上であることが好ましい(請求項11)。
さらに、本発明の生体物質が固定化された固相担体をセンサーチップとして利用すれば、高感度のセンサーチップを提供することができる。
本発明の生体物質が固定化された固相担体(以下適宜、「本発明の生体物質固定担体」という)は、固相担体表面に、マトリックス(以下適宜、「本発明のマトリックス」という)を有する。ここで、本発明のマトリックスは、生体物質、及び、上記生体物質と結合可能な化合物(以下適宜、「固定化用化合物」という)からなる主鎖を有するマトリックスである。即ち、本発明のマトリックスは、図1(a)〜図1(c)に模式的に示すように、生体物質と固定化用化合物とを含み、その骨格が、生体物質と固定化用化合物とが結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスである。なお、図1(a)〜図1(c)は、本発明のマトリックスの構造を説明するため、本発明の生体物質固定担体の一例の表面近傍を拡大して示す模式図である。また、図1(a)〜図1(c)において、円形部分が生体物質を表わし、線状部分が固定化用化合物を表わす。
本発明の生体物質固定担体は、溶媒の存在下、生体物質と固定化用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給し、上記固相担体表面に、上記生体物質及び上記化合物からなる主鎖を有するマトリックスを形成させる工程を経て製造される。
固相担体は、表面に本発明のマトリックスを形成するための基体となるものであり、固相担体の表面に本発明のマトリックスを形成したものが、本発明の生体物質固定担体である。本発明で用いる固相担体に制限は無く、本発明のマトリックスを形成する対象となるものであれば、任意の材質、形状、寸法のものを用いることができる。
また、被覆処理を行なってもよい固相担体の具体例としては、金属被覆チップ、スライドガラス、ファイバースライド、シート、ピン、マイクロタイタープレート、キャピラリーチューブ、ビーズ等が挙げられる。
生体物質は、固相担体に固定化する物質であり、その目的に応じて、任意の物質を用いることができる。具体例を挙げれば、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子が挙げられる。また、このほか、例えば細胞等の生体分子以外の物質を生体物質として用いることもできる。なお、本発明の生体物質固定担体を分析に用いた場合には、これら生体物質は、検体中の検出対象物質と生体物質との相互作用(結合性等)を測定する際の標的物質となる。
プターや酵素とその派生物、核酸、天然あるいは人工のペプチド、人工ポリマー、糖質、脂質、無機物質あるいは有機配位子、ウイルス、細胞、薬物等が挙げられる。
また、低分子化合物としては、相互作用する能力を有する限り、特に制限はない。機能が未知のものでも、あるいはタンパク質に結合する能力が既に知られているものでも用いることができるが、医薬候補化合物等が好適に用いられる。
また、生体物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
固定化用化合物は、上記生体物質と結合しうる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。したがって、固定化用化合物としては、上記生体物質と結合可能な官能基(以下適宜、「結合官能基」)を有する化合物を任意に用いることができる。ここで、結合官能基としては、上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体物質の種類や本発明の生体物質固定担体の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
生体物質がタンパク質である場合、タンパク質の表層に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等と固定化用化合物の結合官能基とが結合する。この際、アミノ基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、ヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、チオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
また、固定化用化合物同士の結合があるときに、高分子を固定化用化合物に用いた場合、固定化用化合物の内部架橋が起こってしまい、さらに生体物質を固定化しにくくなる。ここで、固定化用化合物同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用、電気的相互作用を除く結合を示す。
さらに、固定化用化合物が水と有機溶媒との両方に混和できれば、本発明の生体物質固定担体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合に、その用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、用途を広げることができる。
固定化用化合物として用いられる有機化合物は、低分子化合物でも、高分子化合物でもよい。低分子化合物の具体例としては、グルタルアルデヒド、ジエポキシブタン、ジエポキシヘキサン、ジエポキシオクタン、ビスマレイミドヘキサン、ビススルホスクシミジルスベレイト、ジスクシミジルグルタレイド、エチレングリコールビススクシミジルスクシネイト、スルホエチレングリコールビススクシミジルスクシネイト、スクシミジル4−N−マレイミドメチルシクロヘキサン1−カルボキシレイト、スクシミジル4−N−マレイミドメチルシクロヘキサン1−カルボキシレイト、スルホスルホスクシミジル4−p−マレイミドフェニルブチレイト、スクシミジル4−p−マレイミドフェニルブチレイト、スルホm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシミドエステルなどが挙げられる。
固定化用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、上記の条件を満たす合成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。ただし、通常は、生体物質と結合することのできるモノマーを有していることが望ましい。また、通常は、合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、親水性モノマーを有していることが好ましい。さらに、好ましくは、上記の生体物質と結合することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合物を用いることが望ましい。即ち、合成高分子化合物の合成には、少なくともモノマー種として、生体物質と反応してできるコンジュゲートを形成することができ、且つコンジュゲート間で結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を構築するための結合官能基を有するモノマーと、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーとを用いて共重合させることが好ましい。さらに、合成高分子化合物の溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で疎水性モノマーを共重合してもよい。
さらに、高分子化合物は加水分解等により合成される高分子を使用しても良い。その具体例としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成されるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
また、上述した合成高分子化合物は、化学修飾により、前述の生体物質と結合する官能基を修飾することにより合成してもよい。
さらに、これらの有機無機ハイブリッドに生体物質を結合官能基を修飾することによって、固定化用化合物として用いることもできる。
本発明の生体物質固定担体を製造する際には、溶媒の存在下、上述した生体物質と固定化用化合物とを共存させた混合物を固相担体に供給する。この際、固相担体に供給される混合物は、溶媒中に、少なくとも生体物質と固定化用化合物とを含むものである。
溶媒中において、生体物質及び固定化用化合物は溶媒に混和できればその混和状態は任意であり、溶解していても分散していてもよいが、生体物質と固定化用化合物とが安定して結合するためには、生体物質及び固定化用化合物は溶解していることが好ましい。
水のほかの溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、THF(テトラヒロドフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジオキサン、アセトニトリル、ピリジン、アセトン、グリセリンなどが挙げられる。
また、これら溶媒に塩を加えても良い。塩の種類は任意であるが、具体例としては、NaCl、KCl、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また、用いる塩の量に制限は無く、用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。
なお、溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
混合物は、溶媒の存在下、生体物質、及び、上記生体物質と結合可能な官能基を有する化合物を共存させたものである。具体的には、上述した溶媒中に、生体物質と、固定化用化合物とが共存している混合物である。また、混合物中において生体物質及び固定化用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。
本発明の生体物質固定担体を製造する際には、上述した混合物を、固相担体に供給する。即ち、上述した混合物を固相担体に接触した状態にさせる。その具体的な操作は任意であるが、例えば、あらかじめ混合物を用意してその混合物を固相担体に接触させてもよいし、混合物の各成分を別々に用意し、固相担体上でそれらを混合させて混合物を調製し、固相担体に混合物を接触させるようにしてもよい。具体的には、例えば、生体物質を含む溶液(水溶液等)と化合物を含む溶液(水溶液等)とを固相担体上に各々供給した後に固相担体上で両溶液を混合する等により行なうことができる。また、予め混合物を用意しておく場合、供給前の混合物中で後述するコンジュゲート及び/又はマトリックスを作製しておき、その後、混合物を固相担体に供給するようにしても良い。
次いで、固相担体表面に、生体物質及び化合物からなる主鎖を有するマトリックスを形成させる。混合物を調製すると、混合物中において生体物質と固定化用化合物とが結合し、コンジュゲートが生成される。このコンジュゲートは、生体物質と固定化用化合物とが結合したもので、生体物質と固定化用化合物とを溶媒中で混合し、互いの分子を接触させるだけで作製することができる。したがって、固相担体に供給された混合物内には、通常、コンジュゲートが存在している。
混合物を乾燥、濃縮する方法は任意であるが、例えば、限外濾過、減圧乾燥などが挙げられる。また、このほか、単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を行なうようにしてもかまわない。
また、混合物を乾燥、濃縮する際の圧力条件も任意であるが、通常常圧以下が望ましい。
以上のように、上記の方法は、溶媒中に生体物質と固定化用化合物とが共存した混合物を固相担体に接触させるだけで、固相担体表面にマトリックスを形成させることができ、これにより、本発明の生体物質固定担体を製造することができる、即ち、固相担体上に生体物質を固定化することができるという、非常に簡便な方法である。
例えば、マトリックス中の生体物質に、さらに異なる生体物質を結合させるようにしても良い。これを利用すれば、生体物質固定担体の製造後、マトリックス中の生体物質に特定的に結合するように修飾した別の生体物質を後から結合させ、結果として、固相担体に上記の別の生体物質を高密度に固定化することができる。具体例を挙げると、生体物質としてアビジンを用いて、このアビジンと固定化用化合物とを結合させてマトリックスを形成し、生体物質固定担体を製造する。その後、ビオチンで修飾した別の生体物質を用いて、アビジン−ビオチン相互作用により上記の別の生体物質を固定化することができる。また、同様にヒスチジンタグもしくはグルタチオン−S−トランスフェラーゼを介して、生体物質を固定することも可能である。
本発明の生体物質固定担体は、上述した方法により製造されるものである。また、本発明の生体物質固定担体が有するマトリックスは、上記のコンジュゲートが多数結合して構成されたものであり、通常は、生体物質と固定化用化合物とが鎖状及び/又は網目状に結合したゲル状構造体である(図1,2参照)。
即ち、本発明のマトリックスは、上記式(A)のように生体物質と固定化用化合物とが結合した部分構造が、直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体である。具体的には、上記式(A)のR1はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR2に結合し、R2はそれぞれ独立
に他の1又は2以上のR1に結合している。ただし、本発明のマトリックスは、例えば生
体物質R1同士や固定化用化合物R2同士が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。ここで、R1同士やR2同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用等の物理的相互作用による結合を示す。
本発明のマトリックスは、上述したような生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を有しているため、その構成要素である生体物質の結合を分解することにより構造が崩壊する。これを利用し、マトリックスの生体物質のみを分解するようにすれば、生体物質と固定化用化合物とからなる主鎖を確認することができる。即ち、固定化用化合物の少なくとも一部は生体物質を介して固相担体に固定化されているため、固定化用化合物を分解しないようにしながら生体物質を分解した場合、本発明のマトリックスでは、固定化用化合物のうち、固相担体に対して生体物質を介して固定化されていた部分は固相担体から脱離する。
また、生体物質がタンパク質である場合、例えば、微生物プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、レンネット、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素、臭化シアン、2−ニトロ−5−チオシアン安息香酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げられる。
また、生体物質が糖である場合、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。
なお、生体物質を分解するための酵素や薬品は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、例示物の中でも、生体物質だけでなく固定化用化合物も分解する虞があるものは、上記の主鎖の確認が正確に行なえなくなる虞があるため、使用は避けるべきである。
さらに、生体物質分解後に固相担体から脱離した物質の分析する場合、その具体的な分析方法は任意であるが、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析(MS)、赤外分光法、核磁気共鳴法(NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、吸光度測定、蛍光測定などが挙げられる。また、分析に際しては、各測定手法を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
本発明の生体物質固定担体を用いれば、生体物質を従来よりも多量に固定化することができる。例えば特許文献1〜3のような従来技術では、固相担体表面に形成された高分子膜(ポリマー膜)に生体物質を結合させていた。しかし、この場合、ポリマー鎖で形成された主鎖に対して、生体物質が高分子鎖の先端に結合したり高分子鎖にグラフト状に結合したりすることで、生体物質を固相担体に結合させていたため、主鎖としてポリマー鎖を形成させる必要があり、固定化する生体物質に対して一定以上のポリマーを使用しなくてはならず、生体物質の固定化量に限界があった。
上述した生体物質固定化担体を製造するため、生体物質を固相担体に固定化するために用いるもの、即ち、上述した固定化用化合物や、生体物質及び固定化用化合物を混和させうる溶媒を、キット化した生体物質固定化キットを用いても良い。即ち、生体物質固相担体を製造するため、固定化用化合物と、生体物質及び固定化用化合物を混和させうる溶媒とを備える生体物質固定化キットを用意するようにしてもよい。生体物質固定化キットを用いれば、生体物質固定担体を簡単に製造できる、即ち、固相担体上に上記マトリックスを簡単に作製できるため、生体物質を固相担体上へ簡単且つ大量に固定化することが可能となる。
例えば、マトリックスの製造を促進する試薬などをさらに備えていても良い。具体例としては、固定化用化合物としてポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸のカルボニル基を活性させるために1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(略称:EDC)を試薬として備えるようにしてもよい。
本発明の生体物質固定担体は、産業上の広い範囲において用いることが可能である。具体的な用途に制限は無く、任意の用途に用いることができるが、通常は、生体物質と、その生体物質と特異的に相互作用する作用物質との「相互作用」を利用した用途に用いて好適である。
[製造例1:ポリマーAの合成]
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)0.564重量部とN−アクリロイロキシスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)0.169重量部と、溶媒である脱水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)8.75重量部とをよく混合し、50mLの四つ口フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液をオイルバスにて60℃に昇温し、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.008重量部を脱水ジオキサン0.5gに溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、8時間行なった。
重合後、ポリマーが生成した溶液は、0.5Lのジエチルエーテル(国産化学株式会社製)に滴下することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、ポリマーAを得た。
また、得られたポリマーAに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、NMR測定からNAS/NAM=30/70と見積もられた。
モノマーとして、NAM及びNASに代えてジメチルアクリルアミド(DMAA、KOHJIN社製)0.793重量部、及び、NAS 0.338重量部を用い、溶媒である脱水ジオキサンの使用量を18.37重量部とし、重合開始剤であるAIBNの使用量を0.00164重量部とした以外は、製造例1(ポリマーAの合成)と同様にして、ポリマーBを得た。
また、ポリマーBに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、NMR測定からNAS/NAM=43/57と見積もられた。
モノマーとして、NAMを1.13重量部、NASを0.33重量部、溶媒である脱水ジオキサンを18.03重量部とし、重合開始剤であるAIBNの使用量を0.0016重量部とした以外は、製造例1(ポリマーAの合成)と同様にして、ポリマーCを得た。
[製造例3:SPRセンサチップA]
SPR用センサチップには、大きさが縦2.5cm×横2.5cm×厚さ1.2mmの平板状ポリカーボネート製の基体表面に、溝ピッチ約870nm、溝深さ約40nmの回折格子を有し、さらにその基体表面に厚さ約80nmで金を蒸着した金被覆センサチップを用いた。
グレーティングが形成されていない以外は製造例3(SPRセンサチップAの表面処理)で用いたものと同様に形成された金被覆基板に、製造例3(SPRセンサチップAの表面処理)と同様の表面処理を行なった。ここで得られた平滑金被覆基板を、平滑金被覆基板Bとした。
[製造例5:SPRバイオセンサチップ1]
上記ポリマーA(固定化用化合物)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調製したポリマーA水溶液10μLと、1%マウスIgG(LAMPREBIOLOGICAL LABORATORIES社製,Mw=150kDa;生体物質)水溶液100μLとを混合し、その混合液1μLを、上記SPRセンサチップAに滴下し、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、1Mエタノールアミン塩酸塩(SIGMA社製,pH8.5)水溶液に15分間浸漬させて未反応スクシンイミド基をブロッキングし、さらに、脱塩水を用いて基板を洗浄した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ1とした。
固定化用化合物として、ポリマーAに代えて上記ポリマーBを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ2とした。
固定化用化合物の水溶液であるポリマーA水溶液の濃度を1%とし、生体物質の水溶液としてマウスIgG水溶液の代わりに豚由来−アルブミン(p−SAシグマ社製,Mw=約60kDa;生体物質)を上記のHEPESバッファーを用いて5%に調整したp−SA水溶液100μLを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、SPRバイオセンサチップ3とした。
上記ポリマーA(固定化用化合物)を、10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製して、マウスIgG(生体物質)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製し、同じ濃度のポリマーA水溶液10μLとマウスIgG水溶液100μLとをそれぞれ混合し、各混合液1μLを、上記SPRセンサチップAにそれぞれ滴下し、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして自然乾燥、ブロッキング及び洗浄を行ない、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、濃度依存SPRバイオセンサチップとした。
縦15mm、横15mm、厚さ2mmのシリコンラバーに、直径10mmの貫通孔を形成し、上記平滑金被覆基板Bの上に密着させた。また、別途、上記ポリマーAを10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調製したポリマーA水溶液10μLと1%マウスIgG水溶液100μLとを混合し、シリコンラバーを密着させた電子顕微鏡観察用チップBの貫通孔にこの混合液100μLを満たした。その後、飽和水蒸気圧下で30分間固定化させた。その後、溶媒を自然乾燥により蒸発させた後、シリコンラバーを取り除き、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にしてブロッキング及び洗浄を行ない、金被覆基板を作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としての金被覆基板を、電子顕微鏡観察用チップとした。
シリコンラバーの寸法を縦2.5cm、横2.5cm、厚さ0.5mmとし、貫通孔の直径を0.5mmとした他は、製造例9(電子顕微鏡観察用チップの作製)と同様にして、金被覆基板を作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としての金被覆基板を、蛍光測定用バイオセンサチップAとした。
固定化用化合物の水溶液であるポリマーA水溶液の濃度を0.3%とし、生体物質の水溶液の濃度を0.3%とした他は製造例5と同様にして、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製された本発明の生体物質固定担体としてのSPRバイオセンサチップを、マトリックス主鎖確認用チップとした。
上記平滑金被覆基板Bの上に、固定化用化合物としてポリマーCを用い、基板に混合物を1μLずつ40スポットした以外は製造例5と同様にして、成分分析用チップを作製した。
基板として、MultiSPRinter Au Chip(TOYOBO社製)に、製造例3と同様の表面処理を行なった。ここで得られた基板をプリズム型SPRセンサチップとした。さらに、この平滑なプリズム型SPRセンサチップの上に、ポリマーAの濃度及びマウスIgGの濃度を各0.3%とした以外は、製造例5と同様にして、本発明の生体物質固定担体を作製した。これをプリズム型SPRバイオセンサチップとする。
ポリマーA水溶液とマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、1%マウスIgG水溶液(生体物質水溶液)1μLを用いた他は、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にしてSPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製したSPRバイオセンサチップを比較SPRバイオセンサチップ2Dとした。
マウスIgG(Mw=約150kDa;生体物質)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて、0.1%、0.2%、0.5%及び1.0%にそれぞれ調製し、各1μLを上記SPRセンサチップAに滴下し、製造例5(SPRバイオセンサチップ1の作製)と同様にして、固定化、自然乾燥、ブロッキング、洗浄を行ない、SPRバイオセンサチップを作製した。こうして作製したSPRバイオセンサチップを濃度比較SPRバイオセンサチップとした。
製造例3で用いたのと同様の金被覆センサチップ(表面処理前のもの)を、10mMの2−MERCAPTOETHYLAMINE(SIGMA社製)水溶液に浸漬させ、室温で12時間反応させた。反応終了後、この金被覆センサチップを脱塩水で洗浄した。この表面処理は、金被覆センサチップ表面に金−硫黄結合を介してアミノ基を導入するものである。ここで得られた、アミノ基を導入された金被覆センサチップをSPRセンサチップBとした。
ポリマーA水溶液とマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、1%マウスIgG水溶液(生体物質水溶液)を用いた他は、製造例10(蛍光測定用バイオセンサチップAの作製)と同様にして、金被覆基板を作製した。こうして作製した金被覆基板を蛍光測定用バイオセンサチップBとした。
ポリマーAとマウスIgG水溶液との混合液の代わりに、0.3%マウスIgG水溶液を用いた他は、製造例13(プリズム型SPRバイオセンサチップの作製)と同様にして、比較プリズム型SPRバイオセンサーチップを作製した。
製造例10で作製した蛍光測定用バイオセンサチップA及び比較製造例4で作製した蛍光測定用バイオセンサチップBを用いて、抗原抗体反応(相互作用)の蛍光測定を行なった。
検体(作用物質)にはCy5でラベル化したウサギ血清アンチマウス−Fab′(イムノプローブ社製、Mw=約50kDa)を用いた。この検体のラベル化は次のようにして行なった。まず、CyDyeTM Cy5 monofunctional reactive dye 1 vial(amersham pharmacia biotech社製)に1mg/mLのウサギ血清アンチマウス−Fab′1mLを加え、常温にて30分間反応させた。また、NAP−5 Column(Amersham Bioscience社製)を用いて、ゲル濾過により未反応のラベル化試薬を除去し、これにより、検体としてCy5ラベル化ウサギ血清アンチマウス−Fab′を得た。
製造例1で合成したポリマーAを10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を用いて1%に調整したポリマーA(固定化用化合物)水溶液10μLと、製造例5で用いたのと同様のマウスIgGを用いて1%に調整したマウスIgG(生体物質)水溶液100μLとを混合して混合液(混合物)を調製した。また、別途、製造例5でSPRバイオセンサチップ1を作製したのと同様に表面処理したQCM用チップを用意した。このQCM用チップの表面に、上記の混合液を3μL滴下し、30分間固定化した。その後自然乾燥にて溶媒を除去し、さらに1Mのエタノールアミンにてブロッキングを施し、QCMバイオセンサチップを作製した。その後、QCMバイオセンサチップを10μg/mLのウサギ血清アンチマウス−Fab′(Mw=約50kDa;作用物質) HEPES10mM溶液に1時間浸した。この際、上記の操作の各段階におけるの吸着挙動を、Initium社製QCM AFFINIX Qで測定した。具体的には、表面処理後(即ち、表面処理を行なった後混合液を滴下する前)、マトリックス形成後(即ち、混合液の滴下後ウサギ血清アンチマウス−Fab′溶液に浸す前)、及びアナライト反応後(即ち、ウサギ血清アンチマウス−Fab′溶液に浸した後)のそれぞれについて測定を行なった。なお、測定はすべて空気中で水分を乾燥させたものを測定値とした。その結果を表1に示す。
また、アナライト反応後とマトリックス形成後との振動数の変化量は−9306.1Hzであり、このことから、QCMバイオセンサチップにおける作用物質の単位面積当たりの反応量は約5.6μg/cm2と算出される。
反応数比率
=(5.6/50kDa)/(25.6/150kDa)
=0.66
と見積もられる。これにより、QCMバイオセンサチップにおいても、マトリックスに、生体物質に対して検出液(作用物質を含む溶液)を接触させたときに、マトリックス中の生体物質の数(分子数)に対する生体物質と相互作用した作用物質の数(分子数)の比(反応数比率)が0.5以上であることが確認された。
製造例5で作製した上記SPRバイオセンサチップ1、及び、製造例6で作製した上記SPRバイオセンサチップ2に、それぞれアナライト(検体)として10μg/mLウサギ血清アンチマウス−Fab′(イムノプローブ社製、Mw=約50kDa)を用い、Bufferには10mM HEPESバッファーを用いて、SPRにより、抗体抗原反応(相互作用)の測定を行なった。また、実施例3に対する比較として、比較製造例1で作製した比較SPRバイオセンサチップ2Dを用い、同様にして抗体抗原反応の測定を行なった。
図4,5から分かるように、本発明の生体物質固定担体であるSPRバイオセンサチップ1,2を用いてSPR測定を行なった場合、従来の方法により生体物質を固定化した比較SPRバイオセンサチップ2Dを用いた場合に比べ、SPRシフト量が大きくなる。
さらに、上記SPRセンサチップA(即ち、生体物質を固定化する前のセンサチップ)を用いて同様の測定を行ない、そのSPRセンサチップAの共鳴角と、SPRバイオセンサチップ1,2及び比較バイオセンサチップ2Dそれぞれの共鳴角との差を算出した。この共鳴角の差も、表2に示す。これから、SPRバイオセンサチップ1,2には比較バイオセンサチップ2Dよりも多量の生体物質が固定化されていることが分かる。
反応数比率
=(420mdeg/50kDa)/(1500mdeg/150kDa)
=0.84
と算出される。
製造例5で作製したSPRバイオセンサチップ1と製造例7で作製したSPRバイオセンサチップ3とが同じ基板上に設けられたセンサチップを作製し、このセンサチップを用いて、検体として実施例1で用いたウサギ血清アンチマウス−Fab′と、ウサギ血清アンチ豚−SA(イムノプローブ社製,Mw=約150kDa)とを用いて、それぞれに対する特異吸着および非特異吸着の検出をSPRにて測定した。
製造例8で作製した濃度依存SPRバイオセンサチップの、別々の濃度の混合液を用いてマトリックスを形成した各部分における、マトリックスの固定量を、それぞれSPRによって測定した。測定されるSPRシフト量が大きいほど、固定量が大きいことを表わす。なお、測定装置としては、実施例3で用いたのと同様のSPR測定装置を用いた。SPR測定の結果得られた、SPRシフト量と、濃度依存SPRバイオセンサチップの作製に用いた混合液の濃度との関係を図7に示す。
これに対して、本発明の生体物質固定担体である濃度依存SPRバイオセンサチップでは、マトリックス形成に用いた混合液の濃度の増加とともに、線形でSPRシフト量が増加している。このことから、マトリックス形成に用いる混合液(混合物)の濃度によって、マトリックスの膜厚の制御が可能であることが確認された。このことは、用途に応じて、マトリックスの膜厚を精密なレベルで制御し、なおかつ自由に設計できることを示している。
センサチップとして、比較製造例3で作製したポリアクリル酸SPRバイオセンサチップを用いた他は、実施例3と同様にして、抗体抗原反応をSPR測定により検出した。
測定結果を図8に示す。図8より、ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップを用いた本比較例のSPR測定においては、SPRシフト量は、実施例3で測定したSPRバイオセンサチップ1,2を用いて測定したものよりも小さい。これは、従来のような、固相担体表面を被覆した親水性高分子化合物の高分子鎖に生体物質を結合させる方法よりも、本発明の生体物質固体担体を用いた方が、大きな相互作用が生じていることを表わす。このことから、SPRバイオセンサチップ1,2には、ポリアクリル酸SPRバイオセンサチップよりも多量の生体物質が固定化されていることが分かる。
さらに、上記SPRセンサチップB,C(即ち、生体物質を固定化する前のセンサチップ)を用いて同様の測定を行ない、そのSPRセンサチップBの共鳴角と、SPRセンサチップC及びポリアクリル酸SPRバイオセンサチップそれぞれの共鳴角との差を算出した。この共鳴角の差も、表3に示す。
反応数比率
=(70.75mdeg/50kDa)/{(740mdeg−260mdeg)/150kDa}
=0.44
と見積もられる。これは、実施例3のSPRバイオセンサチップ1,2の反応数比率(0.84,0.96)よりもはるかに小さい値であり、これにより、本発明の生体物質固定担体は、従来技術よりも生体物質と作用物質との反応性に優れることが確認された。
製造例9で作製した電子顕微鏡観察用チップの断面を、SEMにより観察した。観察されたSEM断面写真を表わす図面代用写真を図9に示す。
図9からは、乾燥状態での膜厚が約3μmあることがわかる。
また、図9において、白く見える部分がマトリックス骨格である。
予め、実施例3と同様の測定装置を用いて、製造例11で作製したマトリックス主鎖確認用チップ、及び、マトリックス主鎖確認用チップのバックグラウンドであるSPRセンサチップAのSPR測定を行なった。
また、生体物質のみを分解する酵素の水溶液として、トリプシン(Wako社製)0.5%、炭酸アンモニア1%、尿素2M、塩化カルシウム1mMを溶解したpH8.0の酵素水溶液を調製した。この酵素水溶液5μLをマトリックス主鎖確認用チップに接触させ、飽和蒸気圧下37℃で12時間静置し、マトリックス主鎖確認用チップを蒸留水で洗浄する、という操作を2回繰り返し、生体物質の分解を行なった。その後、実施例3と同様の測定装置を用いて、SPR測定を行なった。
図10に表わされたように、酵素分解前は共鳴角が約20.8degreeであったものが、酵素分解後には共鳴角は約18.6degreeとなっている。マトリックス形成前のバックグラウンドの共鳴角が約18.5degreeであること、及び、バックグラウンドと酵素分解後との測定結果がほぼ一致していることから、酵素分解により、マトリックスを構成する生体物質及び固定化用化合物の両方が固相担体であるSPRセンサチップAからほぼ全て脱離したことが分かる。したがって、形成されていたマトリックスは、生体物質及び固定化用化合物からなる主鎖を有する本発明のマトリックスであったことが確認された。
製造例12で作製した成分分析用チップ上のマトリックスを塩酸で加水分解し、生じたアミノ酸量からIgGを定量した。さらに、加水分解物中のポリアクリル酸量から、ポリマーAを定量した。
具体的には、成分分解用チップの生体物質構造体を、6N塩酸、150℃、1hrで加水分解した。その後、塩酸を減圧乾燥し、加水分解物を1%アンモニア水に溶かし、遠心分離(10000rpm、3分)で不溶分を除いた。この加水分解溶液を減圧乾燥後、0.1%アンモニア水1mLに溶かし、100μLをアミノ酸分析、400μLをPAA(ポリアクリル酸)分析に用いた。
上記の加水分解溶液100μLを減圧乾燥し、0.02N塩酸500μLに溶かした。これを遠心式限外ろ過(MWCO:10000、マイクロコンYM−10)し、ろ液10μLをアミノ酸分析した。
なお、アミノ酸分析は、以下の表4の条件で行なった。
上記の加水分解溶液400μLを遠心式限外ろ過(MWCO:10000)で濃縮し、1%アンモニア水400μLで希釈した。この限外ろ過による希釈−濃縮操作を6回繰り返して低分子成分を除いた。高分子成分を1%アンモニア水で回収し、減圧乾燥してからポリアクリル酸(PAA)分析に供した。
なお、PAA分析(反応熱分解GCMS)は、以下の表5の条件で行なった。
製造例13で作製した上記プリズム型SPRバイオセンサーチップにアナライト(検体)として50μg/mLウサギ血清アンチマウスFab’を用い、バッファーには10mM HEPESバッファーを用いて、SPRにより、抗体抗原反応(相互作用)の測定を行なった。また、実施例10に対する比較として、比較製造例5で作製した比較プリズム型バイオセンサーチップを用い、同様にして抗体抗原反応の測定を行なった。
Claims (14)
- 固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体であって、
該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、
該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、
該固定化用化合物は、1分子中に3点以上の該結合官能基を有し、
該固定化用化合物の重量平均分子量が1000以上であり、
該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが該結合官能基によって結合した該部分構造が繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在する
ことを特徴とする、生体物質固定担体。
- 該マトリックスが、
溶媒の存在下、該生体物質及び該固定化用化合物を共存させた混合物を該固相担体表面に供給して形成された
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体物質固定担体。 - 該混合物中における、「該生体物質の重量/(該固定化用化合物の重量+該生体物質の重量)」の値が0.5以上である
ことを特徴とする、請求項2に記載の生体物質固定担体。 - 該マトリックスの重量に対する該生体物質の重量の割合が0.5以上である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。 - 該マトリックスの膜厚が、乾燥状態で5nm以上である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。 - 該固定化用化合物が無電荷である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。 - 該固定化用化合物が、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。
- 該マトリックスに、該生体物質に対して特異的に相互作用することができる作用物質を含む溶液を接触させたときに、該マトリックス中の該生体物質の数に対する該生体物質と相互作用した上記作用物質の数の比が0.5以上である
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体物質固定担体。 - 固相担体表面にマトリックスを有する生体物質固定担体の製造方法であって、
該マトリックスは、生体物質と、該生体物質と結合可能な固定化用化合物とからなる主鎖を有すると共に、式(A)で表わされる部分構造を2以上有し、
該固定化用化合物は、該生体物質と結合可能な結合官能基を有し、
該主鎖は、該生体物質と該固定化用化合物とが結合官能基によって結合した該部分構造が繰り返しによって鎖状及び/又は網目状に結合してなり、該固定化用化合物同士の間には該生体物質が存在し、また、該生体物質同士の間には該固定化用化合物が存在し、
該マトリックスを、
溶媒の存在下、生体物質及び該固定化用化合物を共存させた混合物を固相担体に供給することにより形成する
ことを特徴とする、生体物質固定担体の製造方法。
- 該固定化用化合物は、1分子中に2点以上の該結合官能基を有する
ことを特徴とする、請求項9に記載の生体物質固定担体の製造方法。 - 該固定化用化合物の重量平均分子量は1000以上である
ことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の生体物質固定担体の製造方法。 - 上記溶媒が水である
ことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の生体物質固定担体の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体物質固定担体を製造するための生体物質固定化キットであって、
該生体物質と結合可能な固定化用化合物と、
該生体物質及び該固定化用化合物を混和させうる溶媒とを備える
ことを特徴とする、生体物質固定化キット。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体物質固定担体を有する
ことを特徴とする、センサーチップ。
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