JP5030036B2 - 生体成分固定化ポリマー組成物および三次元架橋体 - Google Patents
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川口春馬 監修:ナノ粒子・マイクロ粒子の最先端技術、シーエムシー出版、東京(2004)
(2)該組成物より形成される三次元架橋体
(3)該三次元架橋体より形成される生体成分固定化膜、粒子および器材
本発明は、ホスホリルコリン基とフェニルボロン酸基を同時に含有するビニル系ポリマーの製造方法であって、ホスホリルコリン基を含有するモノマーとボロン酸基を有するモノマーを溶液状態で混合し、ラジカル発生剤の存在下にてラジカル重合反応をすることにより製造することができる。なお適宜、第三のモノマーを添加して、生成するポリマーの性質を調製しても差し支えない。ホスホリルコリン基とフェニルボロン酸基を同時に含有するビニル系ポリマーは、下記一般式(1):
で示される構造をとることを特徴としている。
2.多価水酸基を有する化合物の製造方法
構造の安定した三次元架橋体を短時間で製造するために好適である。この際の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した際に、ポリエチレンオキシドを標準物質として換算でき、その範囲は、1,000〜10,000,000であり、好ましくは5,000〜1,000,000、さらに三次元架橋体の生成能力と、水系媒体への溶解性の観点から10,000〜600,000であることが望ましい。
4.生体成分の固定化方法
フラスコに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPCと略記する)53gを秤量し、エタノール300gを仕込み、かき混ぜながら容器内をアルゴンで置換した。次いでp−ビニルフェニルボロン酸(p−VPBと略記する)4.4g、n−ブチルメタクリレート(BMAと略記する)13gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.49gを添加し全体が均一になるようにかき混ぜた。密栓をした後、60℃に加温し、48時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/クロロホルム(8/2)混合溶液6000ml中に滴下して固形のポリマーを得た。収量は50g、収率は71%であった。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記のポリマーのIR分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、フェニル基に由来する赤外吸収が3600cm−1に、エステル結合に由来する赤外吸収が1730cm−1に、ホスホリルコリン基に由来する赤外吸収が1200〜1100cm−1に確認できた。NMRの測定結果よリポリマー中の各モノマーユニットの組成はMPC/p−VPB/BMA=0.58/0.11/0.31(モル分率)であった。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、ポリエチレンオキシドの標準物質を利用して計算した。その結果、数平均分子量で39,000であった。
試験管にMPC5.3gを秤量し、エタノール25gを仕込み、かき混ぜながら容器内を窒素で置換した。次いでm−ビニルフェニルボロン酸(m−VPBと略記する)0.44g、BMA1.3gおよび2,2’−アゾビスインブチロニトリル0.049gを添加し、さらにTHF5gを入れて全体が均一になるように窒素雰囲気下にてかき混ぜた。その後試験管を封管した。これを60℃に加温し、24時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/クロロホルム(9/1)混合溶液500ml中に滴下して固形のポリマーを得た。収量は4.2g、収率は60%であった。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記のポリマーのIR分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、フェニル基に由来する赤外吸収が3600cm−1に、エステル結合に由来する赤外吸収が1730cm−1に、ホスホリルコリン基に由来する赤外吸収が1200〜1100cm−1に確認できた。NMRの測定結果よりポリマー中の各モノマーユニットの組成はMPC/m−VPB/BMA=0.60/0.27/0.13(モル分率)であった。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、ポリエチレンオキシドの標準物質を利用して計算した。その結果、数平均分子量で52,000であった。
試験管に2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(APCと略記する)1.69gを秤量し、エタノール20gを仕込み、かき混ぜながら容器内を窒素で置換した。次いでp−VPB148mg、BMA426mgおよび過酸化ベンゾイル23.4mgを添加し、さらにN,N−ジメチルホルムアミド1.90gを入れて全体が均一になるように窒素雰囲気下にてかき混ぜた。その後、試験管を溶封し、オイルバスにて70℃に加温し、12時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/クロロホルム(8/2)混合溶液200ml中に滴下して固形のポリマーを得た。収量は1.81g、収率は80%であった。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記のポリマーのIR分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、フェニル基に由来する赤外吸収が3600cm−1に、エステル結合に由来する赤外吸収が1730cm−1に、ホスホリルコリン基に由来する赤外吸収が1200〜1100cm−1に確認できた。NMRの測定結果よりポリマー中の各モノマーユニットの組成はAPC/p−VPB/BMA=0.70/0.21/0.09(モル分率)であった。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、ポリエチレンオキシドの標凖物質を利用して計算した。その結果、数平均分子量で64,000であった。
試験管にAPC1.69gを秤量し、エタノール30gを仕込み、かき混ぜながら容器内を窒素で置換した。次いでm−VPB148mg、BMA426mgおよび過酸化ベンゾイル23.4mgを添加し、さらにN,N−ジメチルホルムアミド1.90gを入れて全体が均一になるように窒素雰囲気下にてかき混ぜた。その後、試験管を溶封し、オイルバスにて65℃に加温し、8時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/クロロホルム(8/2)混合溶液100ml中に滴下して固形のポリマーを得た。収量は1.36g、収率は60%であった。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記のポリマーのIR分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、フェニル基に由来する赤外吸収が3600cm−1に、エステル結合に由来する赤外吸収が1730cm−1に、ホスホリルコリン基に由来する赤外吸収が1200〜1100cm−1に確認できた。NMRの測定結果よりポリマー中の各モノマーユニットの組成はAPC/m−VPB/BMA=0.60/0.27/0.13(モル分率)であった。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、ポリエチレンオキシドの標準物質を利用して計算した。その結果、数平均分子量で47,000であった。
p−VPBの替わりにm−アクリルアミドフェニルボロン酸(以下APBと略す)5.7gを使用した以外は実施例1と同じ操作にて、ポリマーを得た。収量は41.5g、収率は58%であった。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記のポリマーのIR分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、フェニル基に由来する赤外吸収が3600cm−1に、エステル結合に由来する赤外吸収が1730cm−1に、ホスホリルコリン基に由来する赤外吸収が1200〜1100cm−1に確認できた。NMRの測定結果よりポリマー中の各モノマーユニットの組成はMPC/APB/BMA=0.61/0.20/0.19(モル分率)であった。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより求め、ポリエチレンオキシドの標準物質を利用して計算した。その結果、数平均分子量で81,000であった。
実施例1〜5で得られたポリマーを水に溶解し、所定濃度のポリマー水溶液を調製した。一方、ポリビニルアルコール(PVAと略記する。)を温水で溶解し、水溶液を調製した後、所定の濃度に水で希釈した。これらを室温で混合することにより、三次元架橋体を調製した。混合による三次元架橋体形成の写真を図1に、各濃度における三次元架橋体形成結果を表1に示す。液体から三次元架橋体となり、媒体を含んだまま固体(ゲル)状態となることがわかる。また、三次元架橋体はポリマー濃度、混合組成を変化させた場合でも生成できる。ここでは、判定基準に以下の官能指標を定めた。
○ :液体全体が流動性を失い、ポリマーの三次元架橋体が完全に生成する。
△ :一部分の液体が残存し、三次元架橋体が部分的に生成する。
× :液体状態を維持し、三次元架橋体の生成が認められない。
実施例6で得られた三次元架橋体を凍結乾燥して観察試料を作成し、その断面を走査電子顕微鏡にて観察した。結果を図2に示す。多孔質の三次元架橋体となっていることがわかる。また孔径は約1μmであった。
実施例1で得られたポリマー5%水溶液を24穴のマルチウェルプレートに入れ、これにマウス線維芽細胞L929を含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。24時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。結果を図3に示す。細胞は球状を維持していることがわかる。これより三次元架橋体内部へのL929細胞の固定化が可能である。
実施例1で得られたポリマー5%水溶液を24穴のマルチウエルプレートに入れ、これにマウス急性骨髄性白血病細胞HL60を含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。24時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのHL60細胞の固定化が可能であった。
実施例1で得られたポリマー5%水溶液を24穴のマルチウエルプレートに入れ、これにマウス線維芽細胞NIH3T3を含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。24時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのNIH3T3細胞の固定化が可能であった。
実施例1で得られたポリマー5%水溶液を24穴のマルチウエルプレートに入れ、これにヒト臍帯血管内皮細胞HUVECを含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール2.5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。24時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのHUVEC細胞の固定化が可能であった。
実施例1で得られたポリマー5%水溶液を12穴のマルチウエルプレートに入れ、これにマウス胚線維芽細胞STOを含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール2.5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。48時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのSTO細胞の固定化が可能であった。
実施例2で得られたポリマー5%水溶液を6穴のマルチウエルプレートに入れ、これにラット褐色細胞PC12を含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。48時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのPC12細胞の固定化が可能であった。
実施例2で得られたポリマー5%水溶液を24穴のマルチウエルプレートに入れ、これにマウス由来マクロファージ様細胞株RAW264を含む細胞培養液を添加し、混合した。次いで、等量となるようにポリビニルアルコール5%水溶液と混合して三次元架橋体を得た。これを、5%二酸化炭素を含む雰囲気下、37℃にて培養した。48時間後に取り出し、細胞の状態を位相差顕微鏡にて観察した。細胞は球状を維持していた。これより三次元架橋体内部へのRAW264細胞の固定化が可能であった。
ポリビニルアルコールの5%水溶液をポリエステル樹脂のフィルムに展開し、乾燥させることで表面に厚さ300μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜に抗ヤギIgGヒツジ抗体を含む緩衝液をスポットにより展開した。蛍光化合物(FITC)にて標識したヤギIgGを含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。このことは、三次元架橋体内部で抗原抗体反応が進行していることを示している。これよりタンパク質が三次元架橋体内に固定化できることが示された。
ポリビニルアルコールの5%水溶液をポリエステル樹脂のフィルムに展開し、乾燥させることで表面に厚さ300μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの2.5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜にマウス白血病阻害因子(LIF)を含む緩衝液をスポットにより展開した。これに蛍光化合物(FITC)にて標識した抗マウスLIF抗体を含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。これよりLIFが三次元架橋体内に固定化できることが示された。
ポリビニルアルコールの2.5%水溶液をポリエステル樹脂のフィルムに展開し、乾燥させることで表面に厚さ150μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜にマウス繊維芽細胞成長因子(FGF)を含む緩衝液をスポットにより展開した。続いて蛍光化合物(FITC)にて標識した抗マウスFGF抗体を含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。これよりFGFが三次元架橋体内に固定化できることが示された。
ポリビニルアルコールの5%水溶液をナイロンフィルムに展開し、乾燥させることで表面に厚さ300μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜にマウス上皮細胞成長因子(EGF)を含む緩衝液をスポットにより展開した。これに蛍光化合物(FITC)にて標識した抗マウスEGF抗体を含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。これよりEGFが三次元架橋体内に固定化できることが示された。
ポリビニルアルコールの5%水溶液を細胞培養用のポリスチレンシャーレに展開し、乾燥させることで表面に厚さ300μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜に骨形成因子(BMP)を含む緩衝液をスポットにより展開した。これに蛍光化合物(FITC)にて標識した抗マウスBMP抗体を含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。これよりBMPが三次元架橋体内に固定化できることが示された。
ポリビニルアルコールの5%水溶液をガラス基板に展開し、乾燥させることで表面に厚さ300μmの膜を作成する。これに実施例1で得られたポリマーの5%水溶液を滴下して、ゆっくり攪拌して三次元架橋体を形成させた。この膜にマウス神経細胞成長因子(NGF)を含む緩衝液をスポットにより展開した。これに続いて蛍光化合物(FITC)にて標識した抗マウスNGF抗体を含む緩衝液を滴下することにより、蛍光性のスポットが観察できた。これよりNGFが三次元架橋体内に固定化できることが示された。
Claims (9)
- ポリビニルアルコールとホスホリルコリン基とフェニルボロン酸基を同時に含有するビニル系ポリマーからなる組成物。
- ポリビニルアルコールとホスホリルコリン基とフェニルボロン酸基を同時に含有するビニル系ポリマーの組成物より形成される三次元架橋体。
- ホスホリルコリン基とフェニルボロン酸基を同時に含有するビニル系ポリマーが、下記一般式(1):
で示されるものである請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の三次元架橋体。 - 請求項1記載の組成物および請求項2記載の三次元架橋体を含む膜。
- 請求項1記載の組成物および請求項2記載の三次元架橋体からなる粒子。
- 請求項1記載の組成物および請求項2記載の三次元架橋体からなる表面を持つ器材。
- 生体成分として細胞、タンパク質、核酸を包括固定化した請求項4の三次元架橋膜。
- 生体成分として細胞、タンパク質、核酸を包括固定化した請求項5の三次元架橋体からなる粒子。
- 生体成分として細胞、タンパク質、核酸を包括固定化した請求項6の三次元架橋体からなる表面を持つ器材。
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