JP5044777B2 - 細胞固定化基材被覆膜用材料 - Google Patents

細胞固定化基材被覆膜用材料 Download PDF

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Description

本発明は、細胞固定化基材被覆膜用材料に関し、特に肝細胞の機能誘導に有利に働く細胞固定化基材被覆膜用材料に関する。
肝臓は500種類以上の代謝反応(化学反応)を行っているとされている。このような肝臓の機能を総合的に人工的な装置で補うことは中長期的にみても極めて困難であり、生態の肝細胞を利用するしかないと考えられている。しかし、現在細胞培養に用いられているポリマーは細胞が機能するために適当な環境を提供しているとは言い難い。
下記の特許文献1には、ガラクトースを提示する化合物に、糖鎖構造特異的に、かつ、密度依存的に、肝臓細胞の代謝活性を向上させる機能があるため、この化合物を培養液に添加することで、肝臓細胞培養が効果的に行えることが記載されている。
また、下記の特許文献2には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体及び/又は2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有成分の共重合体を含むタンパク質吸着防止剤が記載されている。
特開2002−027977号公報 特開平07−083923号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されている化合物を用いた培養方法では、化合物に特異的に接着する細胞のみでなく、他の細胞まで接着するという問題があった。また、特許文献2に記載されているタンパク質吸着防止剤は、分析法などに用いられるタンパク質の吸着防止を図るものであり、肝細胞の培養に用いることは想定していない。
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、ある特定の物質(タンパク質、細胞など)のみを特異的に結合し、他のタンパク質などとの非特異的な相互作用を制御する細胞固定化基材被覆膜用材料を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、共重合体中に、タンパク質の変性、細胞の活性を惹起せず、優れた生体適合性を有する構成単位と、末端部に、特定の細胞に特異的に結合するリガンドである糖を有する構成単位を含むことにより、特定の物質のみを培養することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」ともいう。)から誘導される構成単位(A)と、疎水性のエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位(B)と、糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位(C)と、の共重合体を含む細胞固定化基材被覆膜用材料。
本発明の細胞固定化基材被膜形成用材料は、共重合体中に、上記構成単位(A)、(B)及び(C)を含有している。下記構造式(1)に示す2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンから誘導される構成単位が有するホスホリルコリン基は、細胞膜の構造に類似しているため、タンパク質の吸着、変性を起こしにくく、細胞の粘着及び活性化を抑制することができる。また、糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位を含むことにより、糖鎖に特異的に結合する細胞のみを培養することができる。また、疎水性の置換基を有する構成単位を含むことにより、水に不溶な被覆膜とすることができ、細胞培養に好適に用いることができる。
(2) 前記糖鎖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、フコース、キシロース、シアル酸及びこれらの誘導体を含む(1)記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
この態様によれば、糖鎖は、上述した糖により形成されているため、上記糖に対応する細胞を特異的に結合することができる。
(3) 前記構成単位(B)が、メタクリル酸n−ブチル(以下、「BMA」ともいう。)から誘導される構成単位である(1)または(2)記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
この態様によれば、構成単位(B)が、メタクリル酸n−ブチルであるため、容易に共重合体に含ませることができる。
(4) 前記構成単位(A)と、前記構成単位(B)と、のモル比が、0.5:9.5から5:5である(1)から(3)いずれか記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
この態様によれば、構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比を上記範囲としているため、疎水性の細胞固定化基材被覆膜用材料を形成することができ、細胞培養に好適に用いることができる。
(5) 前記構成単位(C)の含有量は、前記共重合体における全構成単位において0.5モル%以上30モル%以下である(1)から(4)いずれか記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
この態様によれば、構成単位(C)を共重合体における全構成単位において上記範囲内としているため、糖に対応する細胞を特異的に結合することができる。
(6) 前記共重合体の平均分子量が5,000以上1,000,000以下である(1)から(5)いずれか記載の細胞固定化基材被覆用材料。
この態様によれば、共重合体の平均分子量が上記範囲内であるため、安定性に優れた被覆膜を形成することができる。
本発明によれば、本発明の細胞固定化基材被覆膜用材料を用いて、細胞を培養することにより、構成単位(C)の末端部に有する糖と特異的に結合する細胞のみを培養することができる。また、糖とレセプターとの相互作用を介してのみ粘着しているため、スフェロイド(球状集合体)を形成している。したがって、通常の培養よりも生存期間が長く、長期にわたり安定して機能を発揮する細胞を培養することができる。さらに、本発明の細胞固定化基材被覆膜用材料を用いて、生体肝機能を代替する装置の構築を期待することができる。
本発明の細胞固定化基材被膜用材料は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンから誘導される構成単位(A)と、疎水性のエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位(B)と、糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位(C)との共重合体を含んでいる。以下それぞれの構成単位について説明する。
[構成単位(A)]
構成単位(A)は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンから誘導される構成単位である。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、生体膜を構成するリン脂質ポリマーと同じ極性を持ち、タンパク質の変性や細胞の活性を惹起せず優れた生体適合性を持つポリマーである。
構成単位(A)の含有量は、共重合体における全構成単位において、5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、10モル%以上30モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以上25モル%以下である。構成単位(A)の含有量を上記範囲とすることで、本発明の被覆用材料を用いて形成した細胞固定化基材上への細胞の粘着を防止することができる。
[構成単位(B)]
構成単位(B)は、疎水性のエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位であり、本発明の細胞固定化基材被覆用材料が疎水性を有し、水に不溶となれば、特に限定せずに用いることができる。構成単位(B)としては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸n−ブトキシメチル、メタクリル酸ニトリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸1,3,5トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、スチレン、メチルスチレンなどから誘導される構成単位を挙げることができる。この中でも、共重合体を容易の合成することができる点からアクリル酸n−ブチルであることが好ましい。
構成単位(B)の含有量は、構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比が0.5:9.5から5:5であることが好ましい。より好ましくは、0.5:9.5から3:7であり、さらに好ましくは1:9から3:7である。上記範囲とすることで、疎水性の細胞固定化基材被覆用材料を形成することができるため、水中での培養に好適に用いることができる。構成単位(B)の含有量が少ないと、被覆用材料が親水性となり、培養に用いることができないため好ましくない。
[構成単位(C)]
構成単位(C)は、糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物から誘導される構成単位である。糖鎖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、フコース、キシロース、シアル酸などの糖により形成されている。この糖鎖の先端にある糖は、培養する細胞の種類により適宜選択することができる。糖に特異的に結合する細胞としては、「糖鎖工学」糖鎖工学編;産業調査会(1992)に記載されている細胞を用いることができる。
また、エチレン性不飽和化合物としては、特に限定されずに、末端に糖鎖を誘導することができれば、特に限定せずに用いることができる。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチルなどのメタクリル酸エステル、メタクリル酸ヒドラジド、2−アミノエチルメタクリル酸などのメタクリル酸アミノアルキルなどを挙げることができる。この中でも特に、メタクリル酸ヒドラジド、メタクリル酸2−アミノエチルなどの窒素原子を含む置換基を有することが好ましい。
糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物の合成方法としては、例えば、次のようにして合成することができる。糖鎖のカルボン酸誘導体を脱水アルコールに溶かし、25℃から50℃の温度、減圧の条件下、脱水を行い、酸性の先駆をラクトンに変換する。次にエチレン性不飽和化合物、または、エチレン性不飽和化合物の誘導体を添加し、室温で反応させることにより、糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物を合成する。
また、構成単位(C)の含有量は、共重合体における全構成単位において0.5モル%以上30モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5モル%以上10モル%以下であり、さらに好ましくは0.5モル%以上3モル%以下である。この範囲とすることで、糖に対応する細胞を特異的に結合することができる。
本発明の細胞固定化基材被膜用材料に含まれる共重合体の平均分子量は、5,000以上1,000,000以下であることが好ましい。より好ましくは、10,000以上500,000以下であり、さらに好ましくは100,000以上300,000以下である。上記範囲とすることで、安定性に優れた被覆膜を形成することができる。
[共重合体の重合方法]
共重合体の合成方法としては、上記成分を所定のモル比で溶媒に溶解し、重合開始剤を加え、50から80℃、特に好ましくは60から80℃において10から50時間重合させるのが好ましい。
重合反応に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はこれらの混合物等を挙げることができる。
また、重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されるものではない。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過硫酸塩又は過硫酸−亜硫酸水素塩等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、共重合体100質量部に対して、0.1から1.0質量部が好ましく、更に0.25から0.75質量部が好ましい。
本発明の細胞固定化基材被覆膜用材料は、培養用のプレートに被覆することより、特定の細胞を培養する培養素材として好適に用いることができる。プレートなどへの被覆方法としては、特に制限されず、本発明の材料を溶媒の溶解させた溶液中に浸漬し、乾燥させることで、被覆膜を形成することができる。溶媒としては、本発明の材料を溶解させることができれば特に限定されず、例えば、エタノールなどを用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
<合成例1>
(2−ラクトビオンアミドエチルメタクリレート(LAMA)の合成)
ガラクトースを持つ2−ラクトビオンアミドエチルメタクリレートの合成を行った。合成は、以下の反応式により行った。
50℃で脱水メタノール(関東化学(株)製)150mL中へラクトビオン酸(和光純薬工業(株)製)25.0gを溶かし、エバポレーションにて脱水メタノールを除去した。ラクトビオン酸の酸性の先駆がラクトンに完全に変換されるまで、この反応を2回繰り返し、ラクトビオノラクトン20gを合成した。この時、触媒として少量のトリフルオロ酢酸(関東化学(株)製)を添加した。
次に、このラクトビオノラクトン10.0g(29.4mmol)をメタノールに40℃で溶かし、室温まで冷却した。その後、2−アミノメチルメタクリル酸塩酸塩(ポリサイエンス(株)製)10.0g(60.4mmol)、トリエチルアミン(関東化学(株)製)10.0mL、ヒドロキノンモノメチルエーテル(半井化学薬品(株)製)0.25gを添加し、5時間攪拌した後、溶媒を留去、2−プロパノール(関東化学(株)製)で再沈殿を行い、2−ラクトビオンアミドエチルメタクリレート(LAMA)20gを合成した。
(共重合体の合成)
モノマー濃度を1.0Mとし、MPC(日本油脂(株)製)20mol%、BMA79.5mol%、LAMA0.5mol%となるように、エタノール(関東化学(株)製)0.92mL、ジメチルスルホキシド(DMSO)(和光純薬工業(株)製)0.03mL、純水0.05mLの混合溶液に溶解した。なお、BMAは、メタクリル酸ブチルに重合禁止剤として、t−ブチルカテコールを加え、減圧蒸留(b.p.55℃/15mmHg)したものを使用した。次に、重合開始剤として、2−2’アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(関東化学(株)製)0.5mMを加え、60℃、10.5時間重合させ、下記に示す共重合体(2)(以下、「PMBL」ともいう。)を合成した。得られた共重合体をエタノールで2日透析、水で2日透析を行い凍結乾燥にて精製を行った。
<合成例2〜4>
実施例1と同様の方法により、LAMAのmol%を、1.0mol%(合成例2)、3.0mol%(合成例3)、2.5mol%(合成例4)とし、共重合体を合成した。MPC、BMAの濃度、溶媒の濃度は表1の組成により合成を行った。
<合成例5>
モノマー濃度を1.0Mとし、MPC30mol%、BMA70mol%となるようにエタノール1.0mLに溶解し、AIBN0.5mMを重合開始剤として加え、60℃5時間重合させた。共重合体をエーテル/クロロホルム(1/1)で再沈殿し精製した。
<合成例6>
MPC50mol%、BMA50mol%となるように添加した以外は比較例1と同様の方法により合成した。
合成例1から6の構成単位のモル比、溶媒の組成比を表1に示す。MPCはDMSOに溶解せず、LAMAはエタノールに溶解しないため、モノマーの仕込み量により、溶媒の組成比を調節した。
なお、共重合体の組成は、LAMAはNMR解析、アントロン硫酸法にて、MPCはリンの定量により測定した。各測定方法について、以下に示す。
合成例1のNMR解析のチャートを図1に示す。図1よりLAMAが合成できていることが確認できる。なお、図1に記載されている記号は、上記化学式(2)に記載されている置換基の記号に対応する。
(糖の定量:アントロン硫酸法)
合成例1から4の共重合体12.5mgを10mLメスフラスコに入れ、エタノール(関東化学(株)製)でメスアップした。その溶液を1mL試験管に採取して120℃で乾固させた。次にアントロン(関東化学(株)製)を0.2質量%となるように溶かした濃硫酸(関東化学(株)製)2mLを加え、よく撹拌し室温で5〜6分放置した。溶液は、緑色を呈し、さらにしばらくすると青緑色になる。この吸収極大波長620nmの吸光度を紫外可視吸光度計(V−500;日本分光(株)製)にて測定した。
また、10mMのLAMAを0、10、20、40、80、120mL採取して同様に吸光度を測定し、検量線とし、構成単位の組成比を算出した。
(リンの定量)
各サンプル6mgを10mLメスフラスコに入れ、エタノールでメスアップした。その溶液を50mL試験管に採取して120℃で乾固させた。次に、70%過塩素酸260mLを加えて180℃、20分間加熱分解した。冷却後、蒸留水1900mL、モリブテン酸アンモニウム水溶液400mL、アスコルビン酸水溶液400mLを加えて100℃の湯浴で5分間加湿して発色させ吸光度を紫外可視吸光度計(V−500;日本分光(株)製)にて測定した。
また、1.0mMリン酸水素二ナトリウム水溶液を0、10、20、40、80、120mL採取して同様に吸光度を測定し、検量線とし、PMBの構成単位の組成比を算出した。
≪細胞固定化基材被覆膜の形成≫
<実施例1>
ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)(アルドリッチ(株)製)の10%トルエン溶液を作り、テフロン(登録商標)製の型に流し込み一晩乾燥させ、PBMAの膜を得た。PBMA膜を合成例1の共重合体0.5質量%エタノール溶液に浸漬した後、乾燥させ、PBMA膜上にPMBLの被膜を形成した。
<実施例2、3、比較例1>
合成例2共重合体を用いた被膜を実施例2、合成例3を実施例3、合成例5を比較例1とした以外は、実施例1と同様の方法により形成した。
<比較例2>
実施例1と同様にPBMAの膜を形成し、PMBLの被膜を形成しなかったものを比較例2とした。
(試験例1:膜表面解析)
膜表面解析として、水の接触角測定及び、X線光電子分光計測定を行い、被覆状態を確認した。X線光電子分光計測定は光電子の放出角を90°として行った。接触角の結果を表2に、実施例1、比較例1、2のX線光電子分光の表面解析の結果を図2に示す。
MPCが含まれている合成例5のポリマーを被覆した比較例1において、後退接触角が減少しており、PBMA膜の比較例2に比べ表面が親水化していることが確認できた。また、PMBLを被覆した実施例1から3の表面の接触角はいずれも等しく、被覆状態が同様であることが確認できた。また、図2の表面解析の結果より、実施例1において、比較例1と同様に、リン(P)と窒素(N)のピークが確認できたことより、表面にMPCの存在が確認された。
(試験例2:細胞粘着試験)
プラスチックシートを24ウェル培養用プレートにひき、その上に直径1.4cmに打ち抜いた実施例1から3、及び、比較例1、2の膜をセットし、シリコンリングで固定した。150mMのPBS(DULBECCO’S PHOSPHATE BUFFRED SALINE)を、各ウェルに1mL加え、クリーンベンチ内でUV滅菌を1晩(17時間)行った。滅菌後、PBSを取り除き、予め前培養していたHepG2(ヒト肝癌細胞)をトリプトシン処理し、懸濁液とした(2×10cells/mL、D−MEM)。細胞懸濁液を各ウェル内に1mLずつ分注した(2×10cells/well)。5%CO、37℃インキュベーター内で24、96時間培養した。培養後、シリコンリングを除き、D−MEM(37℃)で3回洗浄し、粘着していない細胞を除いた。各ウェルに、TritonX−100(ナカライテスク(株)製)の0.1質量%PBS溶液500μL加え、1分間軽くピペッティングし、新しい1.5mLチューブに移した。その後、遠心(5000rpm、5分)し、上清を50μLずつ96ウェルプレートに分注した。それらに発色液(LDH−細胞毒性テストワコー;和光純薬(株)製)を50μLずつ加え、25℃の恒温槽中で20〜40分間反応させた。反応停止液を各ウェルに100μLずつ分注し、反応を停止させた。
また、検量線を作成するために培養用プレート(6ウェル)に懸濁液(2×10cells/mL)を2mLずつ分注し、5%CO、37℃インキュベーター内で24、96時間培養した。培養後、D−MEM(37℃)で洗浄し、6ウェルの内、3ウェルにトリプシンを加え細胞を接がした後、血球計測板での細胞数測定を行なった。残りのウェルは上述した、実施例、比較例と同様に発色させ、検量線とした。マイクロプレートリーダー(Plate Reader Model450;BioRad(株)製)により570nmの吸光度を測定した。培地の交換は1日目に行い、その後3日置きに行った。
24時間後、96時間後の細胞粘着数を図3に、細胞の増殖率を表3に示す。細胞の増殖率は、96時間後の細胞粘着数÷24時間の細胞粘着数を増殖率とした。
図3より、比較例1では、粘着数が少ないのに対し、実施例1から3では、LAMAの含有量に従い、粘着数が増加していることが確認できた。また、表3より、増殖率は、実施例3では、比較例2の約1.6倍を示した。
膜上での細胞の増殖の形を走査型電子顕微鏡(SEM)(SEM−5400;日本電子(株)製)にて確認した。結果を図4に示す。
24時間後では、実施例2と比較例2とで差がなく増殖していた。168時間経過後は形状に差がみられ、比較例2では培地により吸着した細胞接着性タンパク質による細胞粘着をしていて、伸展して増殖していた。これに対し、実施例2では肝細胞であるHepG2が、ガラクトースとアシアロ糖タンパク質レセプター(ASGPR)の相互作用を介してのみ粘着しているため、スフェロイド(球状集合体)を形成していることが確認できた。スフェロイドは、通常の培養よりも生存期間が長く、最大直径も大きい。また、アルブミン産生量などの肝機能が長期にわたり安定して行われる。したがって、本発明の細胞固定化基材被覆膜用材料を用いて、生体肝機能を代替する装置の構築を期待することができる。
合成例1のNMR解析のチャート図である。 X線光電子分光の表面解析のチャート図である。 試験例2における細胞粘着数を示す図である。 試験例2の試験後の細胞形状のSEM写真である。

Claims (6)

  1. 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(A)と、疎水性のエチレン性不飽和化合物(B)と、培養する細胞と特異的に結合する糖鎖を付加したエチレン性不飽和化合物(C)と、の共重合体を含む前記培養する細胞を固定化するための細胞固定化基材被覆膜用材料。
  2. 前記糖鎖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、フコース、キシロース、シアル酸及びこれらの誘導体を含む請求項1記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
  3. 前記培養する細胞が肝細胞であり、前記構成単位(B)がメタクリル酸n−ブチル、前記構成単位(C)が2−ラクトビオンアミドエチルメタクリレートである請求項1記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
  4. 前記構成単位(A)と、前記構成単位(B)と、のモル比が、0.5:9.5から5:5である請求項1から3いずれか記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
  5. 前記構成単位(C)の含有量は、前記共重合体における全構成単位において0.5モル%以上30モル%以下である請求項1から4いずれか記載の細胞固定化基材被覆膜用材料。
  6. 前記共重合体の平均分子量が5,000以上1,000,000以下である請求項1から5いずれか記載の細胞固定化基材被覆用材料。
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