JP4729709B2 - ポリマー膜固定化基板、その製造方法、及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、基板にポリマー膜を固定したポリマー膜固定化基板、及び、エレクトロスプレーディポジション法(ESD法)を用いたポリマー膜固定化基板の製造方法に関する。また本発明は、生体分子固定化基板、及びバイオセンシングデバイスに関する。
特定の生体分子を検出する目的で使用されるバイオセンシングデバイス(バイオセンサー)の開発においては、より高速かつ高感度な検出能を有するものが求められている。この検出能を決定づける構成要素として、タンパク質やDNA等の生体分子を固定化(担持)した基板(生体分子固定化基板)が特に重要であり、従来より、その構造、物性及び製法等については頻繁に研究開発の対象となってきた。
生体分子固定化基板の製法としては、例えば、インクジェット法やエレクトロスプレーディポジション法(特許文献1)などを利用した方法がよく知られている。また、近年では、振動子によって効率的に霧化した生体分子溶液を静電気力によって基板上に堆積させ固定化する製法も知られている(特許文献2)。
しかし、いずれの方法で得られた基板も、目的物質の検出シグナル(S)と非特異的吸着によるバックグラウンドノイズ(N)との比(以下、S/N比)の値が十分であるとは言えず、より高い検出感度を実現するためには限界があった。
これに対し、本発明者は、予め特定のポリマーで基板表面を被覆処理しておく方法を見出した。具体的には、生体分子と結合し得る側鎖を有する部分と、非特異物質の吸着を抑制する側鎖を有する部分とを併せ持った特定のポリマーにより、予め基板をコーティングしておき、その後このポリマー膜の表面に生体分子を担持する(結合させる)方法である。この方法によれば、従来に比べ、非特異的吸着によるノイズ(N)を低減することができる。ところがこの方法では、ポリマーのコーティングを、ディップ法などの均一平面状の膜を形成する方法で行っていたため、ポリマー膜に対して効率的に十分量の生体分子を担持させることはできなかった。そのため、目的物質の検出シグナル(S)は大きく低下し、S/N比は従来と同程度かそれ以下であった。これを改善するため、例えば、エッチング等により、ポリマー膜の表面に2次元的及び3次元的に規則性のある微細な凹凸を付与する後処理をして、担持効率の改良が図られていた。
しかしながら、ポリマー膜の表面処理が別途必要となれば、コスト高となり生産性にも乏しい。また将来的に、次々と高い検出感度が要求されるようになることは必至である。そのため、ノイズ(N)の低減だけでなく、検出シグナル(S)についても効果的に増大させ、S/N比の値をより一層大きくすることが重要である。それには、ポリマー膜への担持効率をさらに高め、高濃度で生体分子を保持させることが必要と考えられる。
国際公開第98/58745号パンフレット 特開2003-136005号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、生体分子結合能を有するポリマーが固定された基板であって、ポリマー膜に対して生体分子を高効率かつ高濃度で担持させ得るポリマー膜固定化基板を提供すること、及び、当該基板を容易に且つ低コストで製造し得る方法を提供することにある。さらに本発明では、当該基板に生体分子を担持させた生体分子固定化基板、及び、このような生体分子固定化基板を含むバイオセンシングデバイスを提供することも課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、生体分子結合能を有するポリマーを基板表面に固定化する方法として、エレクトロスプレーディポジション法(ESD法)を用いれば、上記課題を解決し得るポリマー膜固定化基板が容易に得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 生体分子を固定化し得る官能基を含有するポリマーが基板に固定されてなるポリマー膜固定化基板であって、当該ポリマー膜の表面がランダムな凹凸形状を有する、前記基板。
本発明のポリマー膜固定化基板において、生体分子を固定化し得る官能基としては、例えば、p-ニトロフェニルエステル基、ヒドロキシスクシンイミド基、活性エステル基、エポキシ基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ここで、当該官能基は、前記ポリマー中に1〜30重量%含有され得る。
本発明のポリマー膜固定化基板としては、例えば、前記ポリマーがさらにリン脂質極性基を含有するものが挙げられ、リン脂質極性基としては、例えば、下記式(2)で示されるものが挙げられる。ここで、当該極性基は、前記ポリマー中に5〜40重量%含有され得る。
Figure 0004729709
(式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、同一又は異なって、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
本発明のポリマー膜固定化基板としては、例えば、前記ポリマーが下記式(3)で示されるものが挙げられる。
Figure 0004729709
〔式中、R1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立して、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
R2a、R2b及びR2cは、それぞれ、-X1a-R3a、-X1b-R3b及び-X1c-R3cで示される基を表し、
ここでX1a、X1b及びX1cは、それぞれ独立して、同一又は異なって、置換基を有していてもよいフェニル基又は-C(O)-、-C(O)O-、-O-若しくは-S-で示される基を表し、
R3aは、下記式(2):
Figure 0004729709
(式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、同一又は異なって、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で示される基を表し、
R3bは、次式(4):
-(CH2)j-R7 (4)
(式中、jは2〜18の整数を表し、R7は水素原子又はOR7'(R7'は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。)を表す。)
で示される基を表し、
R3cは、下記式(1):
Figure 0004729709
(式中、kは1〜10の整数を表す。)
で示される基を表し、
a1は0.10〜0.95、b1は0.03〜0.70、c1は0.01〜0.30を表す。〕
ここで、上記式(3)で示されるポリマーとしては、例えば、下記式(5)で示されるものが挙げられる。
Figure 0004729709
(式中、a2は0.10〜0.95、b2は0.03〜0.70、c2は0.01〜0.30を表す。)
(2) 上記(1)に記載の基板のポリマー膜の表面に生体分子を担持させてなる、生体分子固定化基板。
本発明の生体分子固定化基板において、前記生体分子としては、例えば、タンパク質、核酸及び糖質からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
(3) 上記(2)に記載の基板を含む、バイオセンシングデバイス。
本発明のバイオセンシングデバイスは、例えば、免疫診断、又はタンパク質若しくは核酸の分離及び分析に用いることができる。
(4) 生体分子を固定化し得る官能基を含有するポリマーを、エレクトロスプレーディポジション法により基板の表面に堆積させることを特徴とする、ポリマー膜固定化基板の製造方法。
本発明の製造方法において、前記ポリマーとしては、例えば、さらにリン脂質極性基を含有するものが挙げられる。
(5) 上記(4)に記載の製造方法により得られるポリマー膜固定化基板。
本発明によれば、生体分子を高効率かつ高濃度で担持させることができるポリマー膜固定化基板、及びその製造方法を提供することができる。さらに、このポリマー膜固定化基板を用いた生体分子固定化基板を提供することができる。この生体分子固定化基板を用いたバイオセンシングデバイスは、目的物質の検出シグナル(S)が飛躍的に向上したものであるため、S/N比の値が大きく、非常に優れた検出感度を発揮するものである。そのため、例えば医療分野やバイオテクノロジー関連の研究分野などにおいて、極めて有用である。
また、本発明のポリマー膜固定化基板は、前述の通り、生体分子を効率よく担持させ得る表面形状を有している。そのため、従来公知の反応条件はもとより、従来は採用されていなかった温和な反応条件下であっても容易に生体分子を担持させることができる。さらに、微小領域に生体分子を担持させる場合(スポッティング等)であっても、高分解能かつ高濃度で行うことができる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.ポリマー膜固定化基板の製造方法
本発明のポリマー膜固定化基板の製造方法は、生体分子結合能を有するポリマー(後述)を、エレクトロスプレーディポジション法(以下、ESD法)により基板の表面に堆積させることを特徴とする。当該ポリマーをこのように堆積させることで、基板表面に膜状に固定することができる。
(1) ポリマー
本発明において使用されるポリマーは、前述したように、生体分子を固定化し得る官能基を含有するポリマーである。
生体分子を固定化し得る官能基としては、限定はされず、タンパク質や核酸等の各種生体分子と化学的あるいは物理的に結合し得る公知のすべての官能基を含むが、例えば、p-ニトロフェニルエステル基、ヒドロキシスクシンイミド基、活性エステル基、エポキシ基、カルボキシル基及びアミノ基などが好ましく挙げられ、なかでもp-ニトロフェニルエステル基がより好ましい。これら官能基は、前記ポリマー中に1種のみ含有されていてもよいし2種以上含有されていてもよく、限定はされない。
上記p-ニトロフェニルエステル基としては、限定はされないが、例えば、下記式(1)で示されるものが好ましく挙げられる。
Figure 0004729709
〔式中、kは1〜10(好ましくは2〜4、より好ましくは2)の整数を表す。〕
生体分子を固定化し得る官能基は、前記ポリマー中に1〜30重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは20〜30重量%である。当該官能基の含有割合が上記範囲内であれば、効率的かつ十分に生体分子を担持し得るポリマー膜固定化基板を得ることができる。
本発明においては、前記ポリマーがさらにリン脂質極性基を含有するものであることが好ましい。リン脂質極性基を含有することにより、目的物質以外の非特異的吸着を効果的に防止し、バックグラウンドノイズ(N)を低減させることができる。そのため、目的の検出シグナルとの比(すなわちS/N比)の値を向上させることができ、感度の高いセンシングデバイスを得ることができる。
リン脂質極性基としては、限定はされず、オキシエチルホスホリルコリン基、オキシブチルホスホリルコリン基、オキシヘキシルホスホリルコリン基、オキシデシルホスホリルコリン基及びオキシエトキシエチルホスホリルコリン基、ホスホリルエタノールアミン基、ホスホリルセレン基などの公知のすべての基を含むが、例えば、下記式(2)で示される官能基などが好ましく挙げられる。
Figure 0004729709
〔式中、nは2〜12(好ましくは2〜4、より好ましくは2)の整数を表し、mは2〜4(好ましくは2)の整数を表し、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、同一又は異なって、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。〕
リン脂質極性基は、前記ポリマー中に5〜40重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは20〜30重量%である。当該極性基の含有割合が上記範囲内であれば、効率的かつ十分に非特異的吸着を防止し得るポリマー膜固定化基板を得ることができる。
本発明においては、前記ポリマーとしては、上述した生体分子を固定化し得る官能基とリン脂質極性基とを共に含有するものが特に好ましい。すなわち、タンパク質やDNA等の生体分子と結合し得る側鎖を有する部分と、目的物質以外の非特異的吸着を抑制する側鎖を有する部分とを併せ持ったポリマーが特に好ましい。このようなポリマーとしては、限定はされないが、例えば、下記式(3)で示されるコポリマー等が好ましく例示できる。
Figure 0004729709
ここで、式中、R1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立して、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
R2a、R2b及びR2cは、それぞれ、-X1a-R3a、-X1b-R3b及び-X1c-R3cで示される基を表し、
ここでX1a、X1b及びX1cは、それぞれ独立して、同一又は異なって、置換基を有していてもよいフェニル基又は-C(O)-、-C(O)O-、-O-若しくは-S-で示される基(好ましくは-C(O)-又は-C(O)O-)を表し、
R3aは、前述した式(2)で示される基を表し、
R3bは、次式(4):
-(CH2)j-R7 (4)
〔式中、jは2〜18(好ましくは3)の整数を表し、R7は水素原子又はOR7'(好ましくは水素原子)を表す。ここで、R7'は脂肪族炭化水素基(アルキル基及びアルケニル基等)又は芳香族炭化水素基(フェニル基等)を表す。〕
で示される基を表し、
R3cは、前述した式(1)で示される基を表す。
ここで、上記式(3)のコポリマー中、下記式(3a):
Figure 0004729709
で示される構成単位は、ホスホリルコリン基(PC基)を含有する側鎖(R2a、詳しくはR3a)を有するものである。
ホスホリルコリン基(PC基)は、生体膜の主成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン)の極性基と同様の構造を有する極性基である。ホスホリルコリン基がポリマーに含有されることにより、生体膜の表面が有する極めて良好な生体適合性、特に生体分子の非吸着性、及び非活性化特性が付与され、各種分子に対する非特異的吸着を効果的に抑制することができる。
ホスホリルコリン基を含む極性基としては、限定はされないが、例えば、オキシエチルホスホリルコリン基、オキシブチルホスホリルコリン基、オキシヘキシルホスホリルコリン基、オキシデシルホスホリルコリン基及びオキシエトキシエチルホスホリルコリン基等が挙げられるが、中でもオキシエチルホスホリルコリン基が好ましい。
式(3a)で示される構成単位は、限定はされないが、2−メタクリロイルオキシホスホリルコリン由来の構成単位であることが好ましく、なかでも、下記式(3a')で示される「2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン」由来の構成単位がより好ましい。
Figure 0004729709
この2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、“Kazuhiko Ishihara, Tomoko Ueda, and Nobuo Nakabayashi, Polymer Journal, 22, 355-360 (1990)”に記載の方法等により調製することができ、また、その他の2−メタクリロイルオキシホスホリルコリンについても、当該方法及び常法に基づいて容易に調製できる。
また、上記式(3)のコポリマー中、下記式(3b):
Figure 0004729709
で示される構成単位は、前記の通り、式(4)で示される基(R3b)を含有する側鎖(R2b)を有するものである。
なお、式(4)中のjの値については、2未満の場合、式(3)のポリマーの疎水性及びガラス転移温度が低下するおそれがある。また、式(3b)の構成単位の分組成割合が高くなると、著しく膨潤して強度が低下するおそれがある。
式(3b)で示される構成単位は、限定はされないが、各種メタクリル酸エステル由来の構成単位であることが好ましく、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシプロピル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、及びメタクリル酸2−ブトキシエチル等に由来する構成単位が好ましく、中でも、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ヘキシルに由来する構成単位がより好ましい。なお、これらメタクリル酸エステルは、常法により容易に調製できる。
さらに、上記式(3)のコポリマー中、下記式(3c):
Figure 0004729709
で示される構成単位は、前記の通り、式(1)で示されるp-ニトロフェニルオキシカルボニル(ポリ)オキシエチレン基(R3c)を含有する側鎖(R2c)を有するものである。
式(3c)で示される構成単位は、限定はされないが、p-ニトロフェニルオキシカルボニル(ポリ)オキシエチレンメタクリレート(MEONP)由来の構成単位であることが好ましく、なかでも、下記式(3c')で示される「p-ニトロフェニルオキシカルボニルジオキシエチレンメタクリレート」由来の構成単位がより好ましい。
Figure 0004729709
当該p-ニトロフェニルオキシカルボニルジオキシエチレンメタクリレートについては、“T. Konno, J. Watanabe, and K. Ishihara, Conjugation of Enzymes on Polymer Nanoparticles Covered with Phosphorylcholine Groups, Biomacromolecules, 5, 342-347 (2004)”に記載の方法等により調製することができ、また、その他のMEONPについても、当該方法及び常法に基づいて容易に調製できる。
本発明においては、式(3)のコポリマーにおける各モノマー構成単位は、個々に、ポリマー鎖中での位置や配置順序等を任意にとり得る。なお、式(3)のコポリマーは、式(3)中に示されている構成単位(式(3a),(3b),(3c))以外にさらに他の構成単位も含む四元系以上のコポリマーであってもよい。
上記式(3)において、a1、b1及びc1は、コポリマーを構成する全構成単位の合計数(1とする)に対する各構成単位数の割合を示す値である。但し、a1、b1及びc1の合計値(a1+b1+c1)は、1を超えないものとする。
具体的には、a1は、0.10〜0.95の値を表し、好ましくは0.20〜0.40である。a1の値がこの範囲内であることにより、タンパク質等の非特異的吸着を効果的に抑制することができる。その結果、バイオセンシングデバイス等に用い得る生体分子固定化基板とした場合に、非特異的吸着によるバックグラウンドノイズ(N)を低減でき、S/N比の値を大きくすることができる。ここで、S/N比とは、目的物質の検出シグナル(S)と非特異的吸着によるノイズ(N)との比を意味する。S/N比が大きいことは、感度が高いことを意味し、効率的に目的物質を検出することができる。
b1は、0.03〜0.70の値を表し、好ましくは0.30〜0.60である。b1の値がこの範囲内であることにより、ポリマー膜の表面形状を所望の形状(ランダムな凹凸形状)にするのを容易化できる。その結果、ポリマー膜表面の所望の領域内に、生体分子等の親和性物質をより高濃度で結合させることができる。これにより、バイオセンシングデバイス等に用い得る生体分子固定化基板とした場合に、目的物質の検出シグナル(S)を増強させ、S/N比の値を大きくする(すなわち、感度をより高くする)ことができる。
c1は、0.01〜0.30の値を表し、好ましくは0.10〜0.20である。c1の値がこの範囲内であるときは、活性エステル基(式(1)の基中の「-COO-C6H4-NO2」)との置換反応により、ポリマー膜に生体分子等の親和性物質を容易に且つ十分量結合させることができる。ここで、親和性物質としては、上記活性エステル基中のカルボニル基と結合し得るアミノ基を有する物質であることが好ましく、例えば、このようなアミノ基を分子内に有するタンパク質(抗体タンパク質、レセプタータンパク質等)、核酸、及び糖などが挙げられる。
本発明において、上記(3)で示されるポリマーの具体例としては、下記式(5)で示されるポリマーが好ましく挙げられる。なお、式(5)中、a2、b2及びc2の値は、それぞれ、式(3)中のa1、b1及びc1と同様である。
Figure 0004729709
本発明で使用されるポリマーの製法は、所定の官能基や極性基を有するモノマーを含むモノマー成分を、反応溶媒中、開始剤の存在下で、重合反応させ、その後、必要に応じて再沈等を行う方法が好ましい。
当該モノマー成分としては、限定はされず、所望の構成成分となるよう適宜選択及び調製することができるが、例えば、前述したp-ニトロフェニルオキシカルボニル(ポリ)オキシエチレンメタクリレート(MEONP)等の生体分子を固定化し得る官能基を有するモノマーを含有するものが好ましく、前述した2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等のリン脂質極性基を有するモノマーをさらに含有するものがより好ましい。また、これらモノマー成分においては、さらに各種メタクリル酸エステルを含むものも好ましい。モノマー成分におけるモノマー組成比は、得られるポリマー中の、各モノマー由来の構成成分の割合や各官能基及び極性基等の含有割合を考慮して適宜設定することができる。
反応溶媒としては、モノマー成分が溶解し得るものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム及びこれらの混合溶媒等が好ましく挙げられる。また、開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤であれば、いずれを用いてもよく、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びアゾビスマレノニトリル等の脂肪族アゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウム等の有機過酸化物などが好ましく挙げられる。
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量は、1万〜500万程度であればよく、好ましくは数万〜数十万である。当該分子量が上記範囲内であると、容易にナノないしマイクロメータースケールのポリマー粒子の状態で基板上に堆積させることができる等の効果が得られる。
(2) 基板
本発明において使用される基板は、基板表面に堆積させたポリマーの電荷を逃す、すなわちアースすることができる点で、電気伝導性を有する基板(電導性基板)が好ましい。電導性基板としては、各種金属板のように基板全体が電導性を有するものであってもよいし、非電導性基板の表面を電導性物質で処理して電導性を有するようにしたものであってもよく、限定はされない。前者の例としては、金、アルミニウム、銅、銀、白金等の金属基板が挙げられ、後者の例としては、ITOガラス、アルミ被覆PET、金蒸着ポリイミドシート、スパッタ(金、白金、銅)ガラス/アルミナ等が挙げられる。
また、使用できる基板は、平面的な表面を有するものに限らず、複雑な立体形状の表面を有するものであってもよい。さらに基板は、板状体のように固形物でもよく、フィルムのように可撓性を有するものでもよい。
(3) ESD法
本発明は、前述の通り、ESD法により、生体分子結合能を有するポリマーを基板に固定する方法である。以下、本発明で行うESD法の概略について説明し、併せて本発明で適用される条件等について例示する。
ESD法は、エレクトロスプレー現象、すなわち先端の尖ったチューブに高電圧を加えることで電界集中により液体がスプレーされる現象を利用した方法である。
ESD法の概略について図1に示す。すなわち、まず、ポリマー溶液2が収められたシリンジポンプ8及びキャピラリー3と、これに対向する基板6(対向電極)に対して、高電圧電源1により数千〜数万ボルト程度の電圧が印加される。これにより、キャピラリー3の先端において、電界集中の効果により強力な電界が発生し、溶液表面に荷電イオンが集まる。そして、静電気的引力がポリマー溶液2の表面張力を超えると、キャピラリー3の先端で、溶液2が円錐状に変形し、コーン4(Taylor Cone)が形成される。その後、このコーン4の先端が引き伸ばされ、溶液が表面張力を打ち破り、霧状のジェット51となる。ジェットは強く帯電しているため、静電気力の反発により分裂し、さらに微細なスプレー状の液滴52となる(クーロン爆発)。この液滴52では、短時間のうちに溶媒成分の蒸発乾燥が進む。液滴52は、静電気的引力により基板6に引き寄せられ、基板6上に堆積して固定化され、その結果、ポリマー膜固定化基板7が得られる。また、基板6の表面への液滴5の堆積パターン(膜形状)は、絶縁体マスクや補助電極を用いて、所望の形状(例えば、スポット状、線状)に制御することができる。ESD法は、上述した堆積固定原理を利用した方法であるため、パターン形成において高い分解能を発揮することができ、またバッチ式に多数の固定化基板7を製造できる点でも、極めて優れた成膜法であると言える。なお、本発明において、ESD法の詳細は、国際公開第98/58745号パンフレットに記載の技術内容を全て参照することができる。
本発明において、ESD法を行う際の電源電圧は、限定はされないが、5〜50kVが好ましく、より好ましくは10〜30kVである。電源電圧がこの範囲内であると、表面形状がランダムな凹凸形状であり、しかもナノないしマイクロメーターレベルの凹凸形状を有するポリマー膜を、容易に形成することができる。また、ポリマー溶液の送液速度は、限定はされないが、例えば0.1μl/s程度が好ましい。送液速度と送液時間を適宜調整することにより、基板に形成するポリマー膜の厚さをナノないしマイクロメーターレベルで制御することができる。
(4) ポリマー膜固定化基板
本発明のポリマー膜固定化基板は、前記ポリマーが基板に固定されており、当該ポリマー膜の表面がランダムな凹凸形状を有することを特徴とするものである。また、本発明のポリマー膜固定化基板は、上述した製造方法により得ることができるが、これに限定はされない。
ここで、「ランダムな凹凸形状」とは、上記ポリマー膜の表面が、全体として2次元的及び3次元的に多数の凸部と凹部とが混在して形成された表面形状を意味し、凹部と凸部との配列の規則性は不問である。本発明においては、例えば、粒径が100nm〜10μm程度、場合により1〜5μm程度のポリマー粒子が、基板上に海島状に存在することにより形成された表面形状が好ましい。この場合、凸部を構成する個々のポリマー粒子は、球形や楕円球形等の規則性のある形状であってもよいし、それらが延伸又は圧縮された規則性の無い任意の形状であってもよく、また、ポリマー粒子は互いに一部融合して繋がった状態となっていてもよい。一方、凹部は、ポリマーの堆積量が他の部分より相対的に少ないことによって形成されたものでもよいし、海島状の場合によくみられるように、ポリマーが存在する箇所と存在しない箇所があることによって結果的にポリマーが存在しない箇所が凹部を形成するものでもよい。従って、本発明でいうポリマー膜は、基板上の所望の領域内が完全にポリマーで覆われた「連続膜」に限らず、ポリマーで覆われていない部分が少なくとも一部存在する「不連続膜」も含むものとする。
以上のようなポリマー膜の表面形状は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)等により、容易に確認することができる。なお、ポリマー溶液に基板を浸漬させてポリマー膜を形成した場合(Dip corting)は、SEMやTEM等を用いても上述したようなランダムな凹凸形状を確認することはできない。
本発明のポリマー膜固定化基板において、ポリマー膜の厚みは、限定はされないが、100nm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。ここで、ポリマー膜の厚みとは、基板表面からポリマー膜の凸部上端までの最大幅を意味する。
また、本発明のポリマー膜固定化基板は、必要により、ポリマー膜を基板から剥離することもできる。剥離は、形成されたポリマー膜に、別途処理(生体分子の担持処理など)を施した後にすることもできる。ポリマー膜を剥離する場合は、ポリマー膜を架橋剤(EDTA及びPVP等)で処理したり、予め基板表面に架橋剤を塗布しておけばよい。
2.バイオセンシングデバイス
前述した本発明のポリマー膜固定化基板は、その表面に生体分子を担持させてなる生体分子固定化基板として用いることができる。また、この生体分子固定化基板は、バイオセンシングデバイスの構成成分として用いることができる。
(1) 生体分子固定化基板
本発明の生体分子固定化基板は、ポリマー膜固定化基板のポリマー膜の表面に生体分子を担持させてなるものである。
生体分子としては、限定はされないが、例えば、抗体タンパク質及びレセプタータンパク質等の各種タンパク質のほか、核酸、並びに糖などを好ましく挙げることができる。特に、抗体タンパク質やレセプタータンパク質を担持させた場合は、被験試料中の所望の生体分子を検出するために用いることができ、医療分野やバイオテクノロジー関連の研究分野において極めて有用である。担持させる生体分子と検出目的の生体分子との組合せとしては、例えば、アビジンとビオチン、酵素と基質、抗体と抗原などの組合せが挙げられる。
また本発明においては、生体分子以外の機能性分子であっても上記と同様にポリマー膜表面に担持させることができ、生体分子あるいはそれ以外の各種分子を検出目的とすることもできる。
ここで、「担持」とは、ポリマー膜表面への付着、吸着及び物理的結合による固定には限られず、化学的結合での固定なども含むあらゆる固定態様を意味するが、なかでも化学的結合が好ましい。具体的には、担持させる生体分子が、例えば、ポリマー膜中の活性エステル基(前記式(1))等と化学反応した結合が好ましい。
生体分子をポリマー膜表面に担持させる方法は、限定はされず、公知の各種成膜方法を採用することができる。例えば、インクジェット法、ESD法及び前記特許文献2(特開2003-136005号公報)に記載の方法、並びに静電塗装装置、スポッティング装置又はコーティング装置を用いた方法等が挙げられる。
生体分子の担持パターンは、限定はされず、生体分子固定化基板の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、スポット状又は線状等のように所望のパターンに制御して担持させてもよいし、パターンを制御せずに広範囲に担持させてもよい。前者の場合は、マスクを用いて担持させてもよいし、インクジェット法等のパターン制御可能な担持方法を採用してもよい。
本発明の生体分子固定化基板に用いるポリマー膜固定化基板は、前述した通り、ポリマー膜の表面がランダムな凹凸形状を有するものであるため、ポリマー膜の表面が、ディップ法等による平面状又は曲面状である場合や、従来の後処理を施した表面である場合と比較しても、格段に表面積が大きいものである。そのため、生体分子を高密度で担持することができ、その結果、極めて感度の高い基板となる。また、このランダムな凹凸形状は、前記の通り、SEMやTEMで確認できるレベルの微細なものであるため、担持領域が極めて微小な場合であっても、容易に高い分解能で生体分子を担持させることができる。さらに、ポリマー膜は、活性エステル基(前記式(1))等の生体分子を固定化し得る官能基を含むことから、生体分子は、基板に直接担持させる場合に比べ、より温和な条件で容易に担持させることができる。そのため、担持させる生体分子の活性を効果的に保持することができ、生体分子固定化基板は、より一層高感度となる。
(2) バイオセンシングデバイス
本発明のバイオセンシングデバイスは、上記生体分子固定化基板を含むものである。よって、本発明のバイオセンシングデバイスは、生体分子固定化基板のみからなるものであってもよいし、生体分子固定化基板を一構成成分として含むものであってもよく、限定はされない。
本発明のバイオセンシングデバイスは、光学的な検出システムに利用するものであってもよいし、電気的な検出システムに利用するものであってもよく、限定はされない。これらの例としては、免疫診断等に用い得るELISA用の一次抗体を固定した生体分子固定化基板(二次抗体、酵素、発色基質等を含んでいてもよい)、タンパク質や核酸等の分離及び分析をし得るマイクロアレイ(DNAチップ、プロテインチップ等)、並びに酵素を固定化した酵素センサー(グルコースセンサーやアルコールセンサー等)などが挙げられる。
本発明のバイオセンシングデバイスは、医療診断用に好ましく用いることができる。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<方法>
1.ポリマーの合成
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPC)を0.886g、n-ブチルメタクリレート(以下、BMA)1.28g、p-ニトロフェニルオキシカルボニルジオキシエチレンメタクリレート(本実施例においては、MEONP)1.02g、α-α'アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.025gを、それぞれ、エタノール中に添加して、全量15mlの溶液とした。溶液中の各モノマーのモル比は、MPC:BMA:MEONP=20:60:20であり、モノマー全体の濃度は1Mである。また、AIBNの濃度は0.01Mである。
得られた溶液を、5分間アルゴン置換して冷却した。その後、封管して60oCのオイルバスに入れ、6時間保持して重合反応を行った。重合後の再沈は、クロロホルム:ジエチルエーテル=2:8の溶媒300mlで行った。得られたpoly [ (MPC) -co- (BMA) -co- (MEONP) ](以下、PMBN)の組成比を1H-NMRで確認したところ、MPC:BMA:MEONP=22:65:13であった。以上の結果を表1に示す。
Figure 0004729709
2.導電性基板の作製
ポリイミドシート(厚さ75μm カプトン 東レデュポン社製)の表面に、スパッタリング装置(SCOTT-C3 アルバック機工社製)を用いてAuを蒸着し、導電性基板を作製した。スパッタリング条件は、アルゴン雰囲気下 0.6 Pa、100W、60秒とした。
3.ESD法を用いたポリマーコーティング
導電性基板の表面に、PMBNの5wt%エタノール溶液をESD装置(esprayer, fuence社製)にてスプレーし、ポリマー膜を形成した。印加電圧は 10kV、20kV、30kVでそれぞれ行った。
一方、対照として、PMBNの0.2wt%エタノール溶液を96ウェルタイタープレート(nunc社製)にディップコーティングしたポリマー膜を用いた。
4.ELISAでの評価
ESD法(30kV)により得られたポリマー膜固定化基板(PMBN ESD coating)は、直径6mmの円形にカットし、96ウェルタイタープレート(nunc社製)のウェル底部に装着して、以下の(1)〜(6)の手順でELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を行った。ディップ法によりポリマー膜をコーティングした(PMBN Dip coating)ウェルに関しても、以下の(1)〜(6)の手順でELISAを行った。
(1) 一次抗体の固定化
ポリマー膜固定化基板を装着したウェルに、抗-甲状腺刺激ホルモン(TSH) マウスIgG(一次抗体)の10μg/mlトリス塩酸緩衝溶液(pH8)を150μl滴下し、25oCで24時間保持し、ポリマー膜表面に一次抗体を固定した。
(2) 未反応活性エステル基の不活性化
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて3回洗浄後、アミノエタノールの0.01Mリン酸緩衝溶液(pH8)を300μl滴下し、4oCで24時間保持し、ポリマー膜(PMBN)中の未反応の活性エステル基(具体的には「-COO-C6H4-NO2」)を加水分解した。
(3) 抗原‐抗体反応
さらにPBSにて3回洗浄後、ヒトTSHの0μIU/ml PBS溶液(バックグラウンド用)及び10μIU/ml PBS溶液(目的シグナル用)を、それぞれ150μl滴下し、25oCで2時間保持した。
(4) ビオチン化二次抗体との反応
Tween20の0.1%PBS溶液で3回洗浄後、ビオチン化抗-TSH IgGが0.03μg/ml、ウシ血清アルブミン(BSA)が1wt%のPBS溶液を150μl滴下し、25oCで1時間保持した。
(5) 酵素標識スプレプトアビジンとのアフィニティ反応
Tween20の0.1% PBS溶液で3回洗浄後、ストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼが0.16μg/ml、BSAが1wt%のPBS溶液を150μl滴下し、25oCで10分保持した。
(6) 酵素反応による定量
Tween20の0.1%PBS溶液で3回洗浄後、基質液(SUMILONペルオキシダーゼ用発色キットT、住友ベークライト社製)を100μl滴下し、25oCで20分保持した。その後、停止液100μlを加えた。プレートリーダー(Wallac1420 ARVOsx、パーキンエルマー社製)で450nmの吸光度測定を行った。
なお、さらに別の対照として(BSA Blocking:従来法)、96ウェルタイタープレートにポリマー膜固定化基板を装着しない以外は上記(1)と同様に一次抗体を固定化し、その後、BSAの1wt% PBS溶液を300μl添加して4oCで24時間保持し、PBSにて3回洗浄後、上記(3)〜(6)と同様にして、ELISAを行った。
<結果>
1.ポリマー膜表面の観察
ESD法により印加電圧を10kVでスプレーして得られた基板について、ポリマー膜の表面を、SEM(倍率:約5000倍)により観察したところ、粒径1〜2μmの多数の楕円形粒子が海島状に存在するランダムな凹凸形状が確認された(図2(B))。また、20kV及び30kVの印加電圧でスプレーした場合のポリマー膜の表面は、10kVの場合より、潰れたり互いに一部融合した様々な形状の粒子が海島状に存在するランダムな凹凸形状が確認された(図2(C)(D))。
一方、ディップ法により得られた基板について、ポリマー膜の表面を同様に観察したところ、上記のようなランダムな凹凸形状は全く確認されず、平面状であった(図2(A))。
2.ELISAの結果
PMBN ESD Coating (30kV)と、対照とするPMBN Dip coating及びBSA BlockingについてのELISAの結果を図3に示した。
PMBN ESD Coatingでは、ノイズ(N)(Back ground)が非常に低く抑えられ、しかも目的シグナル量(S)(Signal)が高い値を示した。その結果、S/N比の値が非常に大きく、極めて高い検出感度であることが示された。
BSA Blockingでは、目的シグナル量(S)は高い値を示したが、ノイズ(N)も高い値を示した。その結果、S/N比は、PMBN ESD Coatingの場合に比べて1/2程度の値となった。
PMBN Dip coatingでは、ノイズ(N)は非常に低く抑えられているが、目的シグナル量(S)も低い値であった。その結果、S/N比の値は従来法であるBSA Blockingの場合と同程度の小さい値となった。
ESD装置及びESD法の概念図である。 ポリマー膜表面のSEM観察結果を示す写真である。(A)はディップ法によりコーティングしたポリマー膜であり、(B),(C),(D)はESD法によりコーティングしたポリマー膜である。 ELISAの結果とS/N比を示すグラフである。
符号の説明
1 高電圧電源
2 ポリマー溶液
3 キャピラリー
4 コーン(Taylor Cone)
51 ジェット
52 スプレーされたポリマー液滴
6 電動性基板(対向電極)
7 ポリマー膜固定化基板
8 シリンジポンプ

Claims (9)

  1. 生体分子を固定化し得る官能基を含有するポリマーが基板に固定されてなるポリマー膜固定化基板であって、当該ポリマーが下記式(3)で示されるものであり、かつ、当該ポリマー膜の表面がランダムな凹凸形状を有することを特徴とする、前記基板。
    Figure 0004729709
    〔式中、R 1a 、R 1b 及びR 1c は、それぞれ独立して、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
    R 2a 、R 2b 及びR 2c は、それぞれ、-X 1a -R 3a 、-X 1b -R 3b 及び-X 1c -R 3c で示される基を表し、
    ここでX 1a 、X 1b 及びX 1c は、それぞれ独立して、同一又は異なって、置換基を有していてもよいフェニル基又は-C(O)-、-C(O)O-、-O-若しくは-S-で示される基を表し、
    R 3a は、下記式(2):
    Figure 0004729709
    (式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R 4 、R 5 及びR 6 は、それぞれ独立して、同一又は異なって、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
    で示される基を表し、
    R 3b は、次式(4):
    -(CH 2 ) j -R 7 (4)
    (式中、jは2〜18の整数を表し、R 7 は水素原子又はOR 7 ’(R 7 ’は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。)を表す。)
    で示される基を表し、
    R 3c は、下記式(1):
    Figure 0004729709
    (式中、kは1〜10の整数を表す。)
    で示される基を表し、
    a 1 は0.10〜0.95、b 1 は0.03〜0.70、c 1 は0.01〜0.30を表す。〕
  2. 前記ポリマーが下記式(5)で示されるものである、請求項記載の基板。
    Figure 0004729709
    (式中、a2は0.10〜0.95、b2は0.03〜0.70、c2は0.01〜0.30を表す。)
  3. 請求項1又は2記載の基板のポリマー膜の表面に生体分子を担持させてなる、生体分子固定化基板。
  4. 前記生体分子がタンパク質、核酸及び糖質からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項記載の基板。
  5. 請求項又は記載の基板を含む、バイオセンシングデバイス。
  6. 免疫診断、又はタンパク質若しくは核酸の分離及び分析に用いるものである、請求項記載のデバイス。
  7. 生体分子を固定化し得る官能基を含有するポリマーを、エレクトロスプレーディポジション法により基板の表面に堆積させるポリマー膜固定化基板の製造方法であって、当該ポリマーが下記式(3)で示されるものであることを特徴とする、前記方法
    Figure 0004729709
    〔式中、R 1a 、R 1b 及びR 1c は、それぞれ独立して、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
    R 2a 、R 2b 及びR 2c は、それぞれ、-X 1a -R 3a 、-X 1b -R 3b 及び-X 1c -R 3c で示される基を表し、
    ここでX 1a 、X 1b 及びX 1c は、それぞれ独立して、同一又は異なって、置換基を有していてもよいフェニル基又は-C(O)-、-C(O)O-、-O-若しくは-S-で示される基を表し、
    R 3a は、下記式(2):
    Figure 0004729709
    (式中、nは2〜12の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、R 4 、R 5 及びR 6 は、それぞれ独立して、同一又は異なって、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
    で示される基を表し、
    R 3b は、次式(4):
    -(CH 2 ) j -R 7 (4)
    (式中、jは2〜18の整数を表し、R 7 は水素原子又はOR 7 ’(R 7 ’は脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。)を表す。)
    で示される基を表し、
    R 3c は、下記式(1):
    Figure 0004729709
    (式中、kは1〜10の整数を表す。)
    で示される基を表し、
    a 1 は0.10〜0.95、b 1 は0.03〜0.70、c 1 は0.01〜0.30を表す。〕
  8. 前記ポリマーが下記式(5)で示されるものである、請求項7記載の方法。
    Figure 0004729709
    (式中、a 2 は0.10〜0.95、b 2 は0.03〜0.70、c 2 は0.01〜0.30を表す。)
  9. 請求項又は記載の方法により得られるポリマー膜固定化基板。
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