JP2011099706A - 生体物質構造体粒子固定化担体 - Google Patents

生体物質構造体粒子固定化担体 Download PDF

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Abstract

【課題】生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有できる生体物質構造体により構成された、粒径のそろったコロイド粒子及びそれを含む組成物が表面に固定化された平板状担体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造される。また、これにより製造された生体物質構造体を、担体の表面に塗布もしくは滴下することにより製造される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生体物質を含有する粒子が表面に固定化された平板状担体およびその製造方法に関するものである。
生体物質を含む構造体(以下、「生体物質構造体」ということがある。)は、例えば、医療・診断、遺伝子解析、プロテオミクスに用いることができ、特に、アフィニティー精製及び医薬作用解析ツールなどとして用いて好適である。このような生体物質構造体として、特許文献1において示される、生体物質及び当該生体物質と結合可能な化合物を含有してなる生体物質構造体は、多量の生体物質をその反応性を維持したままで含有できるため、それ以前の技術に比べて非常に有用である。
また、特許文献2には、水溶液中で1または複数の高分子から形成される高分子粒子が記載されている。ここで、高分子としてはイムノグロブリンまたはインスリンを用いている。この高分子微粒子は1μm未満から10μmまでの直径であり、総じて粒径は大きく、また、その均一性についての記載は無く、架橋剤には、主に低分子化合物であるグルタルアルデヒドを使用している。
非特許文献1には酵素架橋粒子が記載されている。この酵素架橋粒子は、はじめに0.1〜1μmの粒径を持つ酵素沈殿物から作製するものであるが、このままでは溶解してばらばらになってしまうため、次にグルタルアルデヒドのような架橋剤を用いて作製される。粒径は1〜100μmの範囲で制御可能ではあるが、粒径が比較的大きく、また、粒径分布(均一性)に関しての記述は無い。
特許文献3には、低分子架橋剤であるグルタルアルデヒドを用いてマクロな粒子を作製し、その表面に抗体もしくは抗原を導入し、懸濁状態で得られる粒子が記載されている。この粒子は溶液中から粒子のみを分離精製する点で有用であるが、攪拌等が必要であり工程が煩雑になる。
また、非特許文献2には、Poly(NAM−co−NAS)を使用し、カタラーゼ、リボヌクレアーゼとのコンジュゲートを作製する技術が記載されているが、微粒子が生成したという記述はなく、ゲルが生成し沈殿してしまう。さらに、非特許文献3において、水に溶解しないポリマーmaleic anhydride-alt-methyl vinyl ether(MAMVE)を用いたコンジュゲートの例が示されているが、ここでも微粒子が生成したという記述は無い。特許文献4及び5には、抗体、酵素、デキストランのコンジュゲートが記載されている。また、特許文献4には、直鎖構造にすることで細胞に進入しやすくし、細胞がより免疫染色しやすくなることが記載されている。
特許文献6には、架橋剤を用い作製したコンジュゲートをプレートの塗布に用いることでタンパク質の固定化量が増大し高感度化を実現したとある。タンパク質のコンジュゲートを高感度用の塗布剤として用いた好例である。但し、2、3、4量体を最適とし、それ
ら以上に多量化したものは用いておらず、製造等の点から無駄が生じる虞がある。非特許文献4には、アビジン、ビオチンからなる多量体を用いたABC法による増感法は免疫染色の場合に有効とある。しかしながら、用事調整のため毎回溶液を調液する必要があり取扱が煩雑になる虞がある。
国際公開第2006/038456号パンフレット 特許公開第2007/297633号パンフレット 特開平7−318561号公報 特表2007−513334号公報 特表平6−509167号公報 米国特許第6638728号公報
Biocatalysis and Biotransformation, 2005, 23(3/4): 141-147 Applied Biochemistry and Biotechnology, 1985, 11, 269-277. Bioconjugate Chem., 2001, 12, 972-979. VECTASTAIN ABCシステム 実験マニュアル(第5版) フナコシ株式会社
特許文献1に記載の生体物質構造体は、その用途によっては微粒子状にして取り扱うことが望まれる場合がある。特許文献1においては減圧等による濃縮でゲル粒子を作製していたが、濃度の程度を制御することが困難なため、反応速度をコントロールすることが困難であり、大きなゲル粒子が形成された。このように特許文献1記載の方法では、ゲル粒子の大きさを制御することが難しく、1μm以下の生体物質構造体の微粒子で、粒径が揃ったものを作製することは困難であった。粒径を1μm以下にすることができると、粒子はコロイド粒子として振る舞うようになり、ブラウン運動のため沈降しなくなる。また、自由に水中を動くため、生体物質構造体をバイオセンサーに使用する場合にアナライトと反応しやすくなる。
また、生体物質構造体の品質の安定性、並びに、診断、遺伝子解析及びプロテオミクス等の分野で検査に用いる場合には、検査結果の信頼性を高めるためには、生体物質構造体を粒子状に形成した場合には、単分散であること、つまり、溶液中での粒径がそろっていることが望まれる。
さらに、センサー表面に生体物質が固定化されたバイオセンサーにおいて感度を向上させるためには、より多くの生体物質をセンサー表面に固定化することが望ましい。この場合、ポリマーとタンパク質とのコンジュゲートがセンサー表面の表面処理剤として使用されることがあるが、直鎖状のコンジュゲートを表面に垂直に立たせた状態で固定化することは難しく、一般的には表面に寝たような状態で固定化される。もし、コンジュゲートが微粒子の状態であれば、生体物質の固定化量をさらに増加させることが可能となる。また、この場合に粒径が均一であれば、信頼性の高いコーティングを実現可能である。さらに、粒子径をコントロールすることができれば、大きな粒子による散乱を避けることが可能となり、光を用いた検出系で使用することが可能となる。
バイオセンサーとして化学発光法による検出を行う場合は、表面のコンジュゲートが厚すぎると、溶液中の基質がコンジュゲートの内部に入っていかず、感度が低下することが一般に知られている。そのため、生体物質の固定化量を増やしながらも、当該のコンジュゲートが物質移動を妨げないことが必要となる。コンジュゲートが膜のようなものではなく、微粒子の集まりとすることにより、この問題を解決することが出来る。
また、特許文献1に記載の生体物質構造体は、前駆液の濃縮でゲル化が生じるが、この制御については記載されていない。また基盤表面へ安定的な塗布膜を作製する事は技術的に難しいことと、生体物質構造体の作製のために、多量の蛋白質を使用する必要があるために、経済的に不利である点が挙げられる。
これらの観点から見ると、特許文献2、非特許文献1記載の高分子微粒子は1μm未満から10μmまでの直径でかつ粒度分布が広く多分散である。また、特許文献4及び5に記載のコンジュゲートの分子構造が直鎖状であるため、これらをドラッグデリバリー用などのカプセルとして用いる場合には、薬剤等を内部に担持させたり、外部環境から保護したりすることは困難であった。さらに、特許文献3に記載の微粒子は、作製中に凝集してしまうため、抗体等を導入後に粉砕する必要があり、操作が煩雑になることがある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有できる生体物質構造体により構成された、粒径のそろったコロイド粒子を含む組成物を表面に固定化した平板状担体を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、溶媒、生体物質、及び該生体物質と結合可能な化合物とを、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、得られた混合液を所定時間溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌して製造される生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子(以下、「生体物質構造体粒子」と称することがある)を溶媒に分散させた組成物を塗布または滴下することにより生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有できる生体物質構造体により構成された、粒径のそろったコロイド粒子を含む組成物を表面に固定化した平板状担体が得られることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、
(1)生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子を溶媒中に分散させた組成物を塗布又は滴下し、該粒子もしくは該組成物のいずれかを固定化した平板状担体、
(2)前記生体物質と結合可能な化合物の少なくとも1種が、無電荷で、水に混和し得ると共に、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマー及び該生体物質と結合可能な官能基を有するモノマーの共重合体である高分子化合物であることを特徴とする上記(1)記載の平板状担体、
(3)前記高分子化合物が、ポリエチレングリコールである上記(1)または(2)に記載の平板状担体、
(4)前記粒子が、溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、前記生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造されることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平板状担体、
(5)前記生体分子が、タンパク質であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平板状担体、
(6)溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、
該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程と、該インキュベート工程で得られた粒子を緩衝液に分散させる分散工程と、該分散工程で得られた組成物を平板状担体へ塗布または滴下する塗布工程を少なくとも含む上記(1)〜(5)のいずれかに記載の平板状担体の製造方法、
に存する。
本発明の生体物質構造体粒子を溶媒に分散させた組成物を塗布または滴下して製造される平板状担体は、上記粒子が大きな粒径を有し、かつその粒径が揃っていることから、生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有でき、かつ生体物質構造体粒子を含む溶液を基板等に塗布または滴下した場合に厚みが均一となり、該平板状担体をセンサー等として用いる場合に、得られるシグナル強度が高く、むらが少なくなるという効果を有する。さらには、上記組成物として生体物質構造体粒子を高度に希釈した液を用いても、センサーの表面に高感度な生体物質構造体粒子の膜を作製する事が出来る。そのため経済的に有利である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態や例示物などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
(1)生体物質構造体粒子
本発明の生体物質構造体粒子は、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子である。
上記で生体物質は生体物質構造体粒子を構成する要素であり、その目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。また、生体物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
生体物質の分子量は、1000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、さらに好ましくは10万以上である。また、水中での粒径が、直径1以上100nm以下、好ましくは直径2以上50nm以下、より好ましくは直径3以上20nm以下である。粒径が極度に小さい場合は、反応性基を複数有することが困難となり、一方粒径が極度に大きい場合は、生体物質が沈降し反応の進行が困難となる虞がある。等電点(pI)については、生体物質表面の官能基の荷電状態により反応性が変わるため、pI2以上pI13以下、好ましくはpI3以上pI12以下、より好ましくはpI4以上pI10以下である。
生体物質は、これを含む生体物質構造体粒子を解析用途や精製用途に用いる場合の標的物質(本明細書中では、「アナライト」と称することがある)と相互作用する。ここで、生体物質と標的物質との「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合等が挙げられる。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
生体物質の代表例としては、タンパク質で、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プ ロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュー
トラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質、サイトカイン、ホルモン、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab’)2、Fab’、Fab、レセプター等が挙げられる。また、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、上述以外の生体物質由来の高分子有機物質、低分子化合物、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子等が挙げられる。
生体物質として、アルブミンを用いた場合、非特異的吸着を抑制するコーティング剤として用いることができる。また該生体物質にアビジンを用いれば、ビオチン化した提示物質(本明細書中では、生体物質に結合することにより生体物質構造体粒子に提示されるア
ナライトを「提示物質」ということがある)を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。また、該生体物質にプロテインAを用いれば、提示物質として抗体を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。また、該生体物質として低分子化合物を用いる場合には、医薬候補化合物等が好適に用いられる。
生体物質と標的物質の組み合わせとしては、酵素と基質、抗体と抗原分子(エピトープ)、レクチンと糖、レセプターとリガンド、プロテインA、プロテインGあるいはプロテインA/GとFc、アビジン及びストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質とビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとグルタチオン、アルブミンとアルブミン結合化合物、マルトース結合タンパク質とマルトース、Gタンパク質とグアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチドとニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、DNA結合タンパク質とDNA、抗体、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質とATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質とエストラジオールなどの各種受容体タンパク質とそのリガンド、FLAGと抗FLAG抗体、細胞と細胞結合物質、アポ酵素と補酵素、核酸と該核酸に相補的な配列を有する核酸等が挙げられる。
生体物質と結合可能な化合物(以下、「結合化合物」と称することがある)とは、少なくとも1種が、分子中に該生体物質と結合可能な官能基(以下、「結合官能基」と称することがある)を有する高分子化合物をいう。結合官能基は、結合化合物中に2つ以上、さらには3つ以上あることが好ましい。結合化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
結合化合物は、反応性基を有する高分子であることが好ましい。結合化合物は、反応性基を有する共重合体もしくは、末端に反応性基で分岐型高分子であることがより好ましい。結合化合物は、少なくとも1種が両親媒性又は水溶性であることが好ましく、水溶性で
あることがさらに好ましい。ここで、結合とは、通常、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、静電力による結合のうち一つ以上の結合から成り立つものを指す。中でも好ましくは共有結合である。
結合官能基としては、上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体物質の種類並びに本発明の生体物質構造体粒子及びそれを含む粒子含有組成物の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
結合官能基は、通常、反応性基として共有結合を介して生体物質と結合するものと、非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。共有結合により結合する場合、結合官能基の具体例としては、スクシンイミドオキシカルボニル基、エポキシ基、ホルミル基、マレイミド基、p−ニトロフェニルオキシ基等が挙げられる。結合官能基と共有結合によって結合する生体物質としては、例えば、タンパク質、核酸、糖類等が挙げられる。
生体物質がタンパク質である場合、通常は、タンパク質の表層に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等の基と、結合化合物の結合官能基とが結合する。
また、生体物質が核酸である場合、通常は、核酸のアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等の基と、結合化合物の結合官能基とが結合する。
生体物質が糖類である場合、通常は、糖類の側鎖に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシカルボニル基、メルカプト基等の基と、結合化合物の結合官能基とが結合する。
生体物質中のアミノ基と結合する官能基としてはスクシンイミドオキシカルボニル基、エポキシ基、ホルミル基、マレイミド基、p−ニトロフェノキシ基等が挙げられ、ヒドロキシル基と結合する結合官能基としてはエポキシ基等が挙げられ、ヒドロキシカルボニル基と結合する結合官能基としてはヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、メルカプト基と結合する結合官能基としてはマレイミド基等が挙げられる。
一方、生体物質と結合化合物とが非共有結合により結合する場合、例えば、錯体形成、生体物質間相互作用などにより結合をさせることができる。
生体物質と標的物質とで錯体を形成させることにより両者を結合させる場合、結合官能基の具体例としては、ボロン酸基等が挙げられる。また、アビジン−ビオチン相互作用により結合させる場合には、結合官能基の具体例としては、ビオチン基等が挙げられる。
さらに、例えば生体物質としてウイルスを用いる場合、結合官能基の具体例としては単糖や多糖等の糖類が挙げられる。また、例えば生体物質が疎水性領域を有している場合には、疎水性相互作用による物理吸着により結合させるようにしても良い。
結合化合物は、生体物質と結合化合物との結合が主となるように、結合化合物同士の結合が無いことが好ましい。このように結合化合物同士の結合が無い生体物質構造体粒子を形成させるためには、結合化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、さらに、結合化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は具体的には前述したように、スクシンイミドオキシカルボニル基、エポキシ基、ホルミル基、マレイミド基、ボロン酸基、ビオチン基などが挙げられる。
結合化合物は、共重合性を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。さらに、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーを用いることがより好ましい。これに加えて、合成高分子化合物が溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で、疎水性モノマーを含有させるようにすることも好ましい。
結合化合物として使用しうる合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、2−(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、等の重合性カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類;重合性不飽和ニトリル類;ハロゲン化ビニル類;共役ジエン類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類、などが挙げられる。
また、付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。この付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は芳香族イソシアナート類、ケテン類、エポキシ基含有化合物類、ビニル基含有化合物類などが挙げられる。これらのうち、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。さらに、活性化水素を有する官能基を備えたモノマーを用いることもできるし、、架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させても良い。
これらのモノマーのうち、少なくとも1部に上記結合官能基を有するものを用いること
により、結合化合物がその分子中に2つまたはそれ以上の該官能基を有することになる。結合官能基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクロレイン、マレイミドアクリレート、p−ニトロフェニルオキシカルボニルポロエチレングリコールメタクリレート、p−ニトロフェニルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、アクリルオキシスクシンイミドが好ましく用いられる。上記の結合官能基を有するモノマーと結合官能基を有さないモノマーの共重合比は、反応性基の割合が、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。反応性基の割合が、極度に高い場合は、結合可能な化合物が生体物質と多点結合することで、生体物質の活性が低下してしまう虞がある。一方極度に低い場合は、結合反応が進行しない虞がある。
本発明の結合化合物の好適な例としては、N−アクリロイルモルホリンとアクリルオキシスクシンイミドの共重合体、ポリエチレングリコール、具体的には、日本油脂社製のSUNBRIGHTシリーズ DE−030AS、DE−030CS、DE−030GS、PTE−100GS、PTE−200GS、HGEO−100GS、HGEO−200GSなどが挙げられる。好ましくは、HGEO−200GSが挙げられる。
本発明の生体物質構造体粒子は、生体物質と該生体物質と結合可能な化合物とからなる主鎖を有するマトリックス構造を有するもの(以下、適宜「マトリックス」ということがある)で、生体物質と結合化合物とを含み、その骨格が、生体物質と結合化合物とが結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスとなっているものである。溶媒中に分散した対象がこのマトリックス構造や、その構造をとっているか否かの確認方法については、AFM等の各種顕微鏡により、その形状が粒子であることを確認する。そ
の形状が粒子である場合には、国際公開公報WO06/038456に記載の方法でその組成を確認
する。固定化担体上に塗布した対象がこのマトリックス構造や、その構造をとっているか否かの確認方法については、Tenkor等の各種触針計により、形成した膜の厚みが均一であることを確認する。その膜の厚みが均一である場合には、国際公開公報WO06/038456に記
載の方法でその組成を確認する。
本発明の生体物質構造体粒子は、重量平均粒径が1nm以上、好ましくは10nm以上、より
好ましくは200nm以上で、1000nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下
のものをいう。また、本発明の生体物質構造体粒子の粒径分布の重量平均/数平均(即ち、数平均粒径に対する重量平均粒径の比)は、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。なお、下限に制限は無いが、通常は1.0以上である。このように重量平均粒径が所望の範囲に収まっていると共に、重量平均/数平均が小さいこと(即ち、粒径がそろっていること)により、フィルターのポアサイズによる分離精製時において精製効率が高まる、アフィニティー粒子として使用した際のデータの良好な再現性が得られる、安定した製造が可能となる、水溶液中で沈降せず長期間安定に分散するなどの利点が得られる。ここで、重量平均粒径及び重量平均/数平均は、動的光散乱により測定できる。また、重量平均粒径とは、動的光散乱測定により得られる重量換算粒径分布の平均値をいう。また、本発明の生体物質構造体粒子のアスペクト比は3以上が好ましく、さらに
好ましくは4以上、最も好ましくは5以上のものである。
また、生体物質構造体粒子中の生体物質に対する結合化合物の重量比[(結合化合物の重量)/(生体物質の重量)]は、0.1/100以上、好ましくは1/100以上、より好ましくは5/100以上である。また、上限について制限は無いが、通常200/100未満、好ましくは150/100以下、より好ましくは100/100以下である。
(2)生体物質構造体粒子の製造方法
本発明の生体物質構造体粒子は溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程等により製造することができる。また、
(2−1)混合工程
生体物質及び結合化合物は上述のとおりである。混合工程において、生体物質に対する結合化合物の重量比[(結合化合物の重量)/(生体物質の重量)]は、0.1/100以上、好ましくは1/100以上、より好ましくは5/100以上である。また、上限について制限は無いが、通常200/100未満、好ましくは150/100以下、より好ましくは100/100以下である。生体物質に対する結合化合物の重量比がこの範囲を上回る場合、ゲル化してしまい、該重量比がこの範囲を下回る場合、反応が進行せず粒子が生成しない。
上記結合化合物として、モノマーの共重合体を用いる場合には、上記混合に先立ってまず結合化合物を製造する。結合化合物は、上記モノマーを溶媒と混合して、密閉可能な容器等を用いて室温で5分〜1時間程度脱気する。この際、該容器中の空気は窒素置換しておくことが好ましい。溶媒としては、モノマーが溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、脱水ジオキサン等が用いられる。上記モノマーは、結合化合物1分子中に2つ
以上の結合官能基を有するものであれば何れのものでもよいが、好ましくは結合官能基を有するモノマーの割合が、モノマー全体の50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下となるように混合することが好ましい。結合官能基を有するモノマーの割合が、極度に高い場合は、結合可能な化合物が生体物質と多点結合することで、生体物質の活性が低下してしまう虞がある。一方極度に低い場合は、結合反応が進行しない虞がある。モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させる。重合剤としては公知のものを用いることができるが、好ましくは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
生体物質の結合化合物の混合工程で用いられる溶媒は、本発明の生体物質構造体粒子の製造が可能な限り任意のものを用いることができる。具体的には、水、炭酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、HEPESバッファー、TRISバッファー、MESバッファー等の緩衝液、有機溶媒を用いることができる。さらに、有機溶媒の中でも、水に混和しうる有機溶媒が好ましく、アルコール、ジオキサン等のエーテル等が挙げられる。これらのうち、炭酸バッファーが好適に用いられる。溶媒量は、その混合溶液の固形分濃度が、0.0001%以上から50%以下であり、好ましくは0.001%以上から25%以下、よ
り好ましくは0.01%以上から10%以下、さらに好ましくは0.1%以上から10%以下である
ことが好ましい。また、必要に応じて、添加剤を用いてもよい。混合液のpHは、2以上、好ましくは3、さらに好ましくは4以上で、通常12以下、好ましくは11以下、さらに好ましくは10以下となるように、溶媒を選択する。
生体物質及び結合化合物の混合状態は任意であり、溶解状態であっても分散状態であってもよいが、両者を安定して結合させるためには、溶解状態で存在していることが好ましい。生体物質、結合化合物、溶媒、および必要に応じて使用される添加剤は、どのような順番で混合してもよい。また、これらは、一回で全量を混合しても、二回以上に分けて混合してもよい。容器は、密閉型のものを用いることが好ましい。混合工程における温度条件は、通常0℃以上、好ましくは4℃以上、より好ましくは10℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。温度が低すぎると結合反応が進行しなくなることや溶質の溶解度が低下する可能性があり、高すぎると生体物質が変性を生じる可能性がある。
(2−2)インキュベート工程
上記で調製した混合液は、その混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしく
は攪拌するインキュベート工程に供する。これにより、生体物質と結合化合物とが結合する反応が進行し、本発明の生体物質構造体粒子が生成する。
混合液は、生成する生体物質構造体粒子の粒径をより均一にするため、外部から力を加えることなく静置することが好ましい。溶媒の蒸発を防ぐとは、具体的には、インキュベート工程を通じた混合液の重量の減少が、通常1.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下の範囲に収まることを意味する。具体的手段としては、密閉容器内で行うことや、底部に水を張った密閉容器内で蓋をせずに行うこと等が挙げられる。インキュベート時間は、通常0.5分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは60
分以上、さらに好ましくは90分以上、また、上限は特にないが、30日以内、好ましくは20日以内、さらに好ましくは10日以内である。
インキュベート工程には、必要に応じて、生体物質と結合化合物との結合反応を停止させる停止工程が含まれる。再現性のある生体物質構造体粒子を作製するためには、停止工程を行うことが好ましい。通常は、一定時間静置した混合液に停止剤を添加することにより行う。停止剤は、当該の結合反応を停止させることができれば任意であるが、例えば、結合官能基と反応するエタノールアミン、トリエタノールアミン、システアミン、トリス、ポリリジン、システイン、グリシンなどのアミノ酸などが挙げられる。これらのうち、エタノールアミンが分子が小さいため好ましく用いられる。上記インキュベート工程で、結合化合物同士が結合していないことを確認するためには、例えば、松本勲武他、アフィニティークロマトグラフィー、238頁から(東京化学同人)に記載の方法を用いることが
できる。
上記で製造された本発明の生体物質構造体粒子は、これをゲルろ過、フィルター分離や透析等を用いて精製することができる。具体的には、PIERCE社製の透析キット(Slide-A-Lyzer TM Cassette Kit, 3.5K MWCO, 0.5-3 ml Capacity、分子量3500カットの透析膜)
等が挙げられる。また、限外ろ過を行うことにより、未反応の生体物質などの、生体物質構造体粒子よりも小さな液中の物質が除去できる。市販のものが使用でき、目的を達する限りにおいて、特に制限はないが、具体的にはミリポア社製マイクロコン(YM-100、100 kDa NMWL)が挙げられる。
上記製造方法により、本発明の生体物質構造体粒子が製造されたことは、公知の方法で、粒径を測定することにより確認することができる。具体的には、粒径の測定及びその粒径分布の測定方法としては、その粒子の粒径及び単分散性については、動的光散乱法などにより確認することができる。生体物質と結合可能な化合物からなる粒子の粒径及び構造は、AFM、TEM等の各種顕微鏡により、粒子をグリッドに滴下し観察することで判別することが可能である。
(3)生体物質構造体粒子が溶媒中に分散した組成物
上記の生体物質構造体粒子は、生体物質構造体粒子が溶媒中に分散させた組成物(以下、「粒子含有組成物」と称することがある)として用いることもできる。本発明の粒子含有組成物中の生体物質構造体粒子の濃度は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重
量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは20重量
%以下、より好ましくは10重量%以下である。濃度が低すぎると反応性が低下し使用できない可能性があり、一方、高すぎると粒子同士が極度に近接するため、凝集し沈降してしまう可能性がある。
溶媒は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、通常は、本発明の生体物質構造体粒子の製造工程において使用した溶媒を、粒子含有組成物の溶媒として用いる。
粒子含有組成物の製造方法としては、本発明の生体物質構造体粒子が、溶媒中に分散しているものが製造される方法であれば如何なるものであってもよい。具体的には、上記生体物質構造体粒子の製造法で製造された生体物質構造体粒子含有液を、必要に応じて精製した後に、溶媒にて希釈すること等が挙げられる。
さらに、本発明の粒子含有組成物は、本発明の効果を著しく妨げない限り、生体物質構造体粒子及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。その例を挙げると、NaCl、KCl、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の塩;酸;塩基;バッファー;グリセリン等の保湿剤;生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤、変性剤などが挙げられる。また、該組成物を製造する際に無機化合物である磁性粒子や金コロイドのような金属粒子やCdSeナノクリスタルのような半導体材料の粒子等を添加することにより生体物質構造体粒子の中にこれらの無機化合物を含むこともできる。
(4)生体物質構造体粒子が溶媒中に分散した組成物または生体物質構造体粒子を固定化した平板状担体
本発明の粒子含有組成物を、固定化用平板状担体に塗布、又は滴下することにより生体物質構造体粒子を固定化することにより、本発明の生体物質構造体粒子が溶媒中に分散した組成物または生体物質構造体粒子を固定化した平板状担体を製造することができる。ここで、固定化担体とは、ガラス、プラスチック、セラミック、金属製平板や、磁性体粒子、ラテックス、多孔質体等である。固定化担体の表面積は問わない。また、生体物質や結合官能基と反応する官能基を表面に有していてもよい。固定化担体は、コストの面からはプラスチックが好適であり、感度の面からはガラスが好適であるが、目的に応じて選べばよい。
本発明の生体物質構造体粒子を固定する方法としては、それを含む溶液を表面に塗布あるいは滴下し、物理吸着させてもよいし、共有結合で固定化してもよい。この時の溶液の濃度は、その生体物質構造体粒子の濃度が、10%以下が好ましく、その中でも5%以下が好
ましく、さらにその中でも3%以下が好ましく、その中でも特に0.3%以下が好ましい。また、下限値は、1ppb以上が好ましく、さらには10ppb以上が好ましく、その中でもさらには100ppb以上が好ましく、その中でも特には1ppm以上が好ましい。また、該粒子を含む溶液から、未反応の生体物質や結合化合物を除去した後に、用いることが好ましい。
いずれの場合も、固定時の温度は溶液の凍結温度よりも高く、生体物質構造体粒子の変性温度よりも低ければよいが、4℃以上が好ましく、さらには8℃以上が好ましく、その中でも20℃以上が好ましい。上限は40℃以下が好ましく、さらには37℃以下が好ましく、その中でも30℃以下が好ましい。また、液を塗布又は滴下後に、乾燥しないようにしてもよいし、乾燥しても良い。乾燥を行う場合は、液をそのまま乾燥しても良いし、ピ
ペット等を用いて抜き取った後に乾燥してもよい。また、乾燥を行う場合は、室内で開放状態で行ってもよいし、乾燥気体下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。滴下する場合には、市販のスポッターを用いて極微量の液滴を滴下し、小さなスポットを作製することは、集積化の観点から好ましい。その後洗浄を行い、表面に結合しなかった物質を除去することにより、目的のチップを得ることが出来る。なお、この後被検出物質の非特異吸着を抑制する目的で、BSAなどによるブロッキング操作を行ってもよい。
本発明で用いられる固定化担体は凹凸のない平板であっても、窪みがあってもかまわない。このような平板状の固定化担体にはスライドガラス状の板が挙げられる。窪みがない場合は、平板の表面を撥水性とし、担持したい部分だけを親水性とすることで、微小なスポット状態を作成することが出来る。異なる性質を持たせたスポットを多く作製するにおいてはこの方が好ましい。窪みを有する場合は、その窪みに、本発明の生体物質構造体粒子を含む溶液を滴下し、固定化すればよい。この時、窪みの壁面のために担体表面での横への広がりを防ぐことが出来る。また、窪みは、円錐状、半球状、丸穴状、角穴状、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。くぼみの深さはチップの厚みよりも浅ければよく、通常1mm以下、好ましくは0.5mm以下である。窪みのチップ表面での大きさはその最大長さが1cm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下である。
また、市販されているELISAプレートを固定化担体として用いることも好ましい。ELISAプレートとは、ポリスチレンなどの材質により作製された、96穴や384穴などのウェル(窪み)を有する85×126×14mm程度の平板であるが、色や光の透過性、穴の数など、目的に応じて選べばよい。そのウェル内表面に本発明の生体物質構造体粒子を固定化することにより、被検出物質の捕捉量を大幅に増加させることが出来、感度のよい検出が可能となる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[使用した試薬]
反応に用いられる試薬及び溶媒としては、全て市販品を使用した。HRP化されたWGA(小麦胚芽レクチン)は、生化学バイオビジネス社製を使用した。以下HRP-WGAと記載する。
ストレプトアビジンは和光純薬社製を使用した。BSA(ウシ血清アルブミン)およびPBS(リン酸緩衝生理食塩水)は、シグマアルドリッチ社製を使用した。純水はMILLIPORE社製Milli−Q Gradient A10を用いて製造した。炭酸バッファー(pH=9.4)は、純正化学社製の炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを使用し、それぞれ100mM水溶液を調製後、2液を混合してpH=9.4に調整した。
アクリルオキシスクシンイミドは、ACROS ORGANICS社製を使用した。N−アクリロイルモルホリンはKOHJIN社製を使用した。エタノールアミン塩酸塩は東京化成社製を使用した。p−ニトロフェニルテトラ−N−アセチル−β−キトテトラオシ
ドは生化学バイオビジネス社製のものを使用し、後述の化学合成法を用いて、GlcNAcリガンドを合成した。アミノ基のビオチン化には、ピアス社製EZ−Link Sulfo−NHS−LC−Biotinを使用した。
[使用した機器類]
化学発光検出器はmolecular Devices社製SPECTRA MAX190を使用した。タイタープレートは住友ベークライト(株)社製、SUMILON MULTI WELL PLATE (型番MS-8096)(96穴)を使用した。透析は、PIERCE社製の透析キット(Slide-A-Lyzer TM Cassette Kit, 3.5K MWCO, 0.5-3 ml Capacity、分子量3500カットの透析
膜)を用いた。
実施例1:ストレプトアビジンを含む生体構造体粒子を固定化した担体によるbiotin化HRPの検出
(1)N−アセチルグルコサミンリガンドの合成
p−ニトロフェニルテトラ−N−アセチル−β−キトテトラオシドのニトロ基を還元し
てアミノ基へ変換し、その後ビオチン化剤を用いて末端にビオチンを持つN−アセチルグルコサミンリガンドを合成した。本リガンドはN−アセチルグルコサミンが4分子結合した構造を持ち、小麦胚芽レクチン(WGA)が特異的に結合することが知られている。
(I)還元反応
接触還元によりニトロ基をアミノ基へ変換した。
Figure 2011099706
100mlナスフラスコに、ニトロ体(1−ニトロフェニル−N−アセチル−β−キトテトラオシド、21.0mg、22.1μmol)を入れて、メタノール980μlと水670μlを加えて溶解させた。窒素雰囲気下10%パラジウムカーボン(Pd/C)3.5mg(32.9μmol)を加え、水素置換した後、4時間撹拌した。窒素置換した後、セライトでPd/Cを分離した。ろ液を溶媒留去してアミノ体(収量21.4mg、収率100%)を得た。得られた化合物の同定は1H、13C NMR及びESI−MSにより行なった。その結果を以下に示す。
1HNMR(D2O、400MHz、J in Hz)δ6.76(d,8.8,2H),6.64(d,8.8,2H),4.83(d,8.3,1H),4.76(s,1H),4.71(s,1H),4.59(s,11H),4.43(t,7.5,3H),3.84−3.31(m,28H),3.19(s,2H),2.09(s3H),1.91(s3H),1.90(s,3H),1.88(s,3H).
13CNMR(D2O,100MHz):δ175.2(1C),175.0(3C),150.6(1C),142.3(1C),118.6(2C),117.9(2C),101.9(1C),101.7(1C),101.6(1C),101.0(1C),79.5,79.3,79.3,76.3,75.1,74.9,73.8,72.6,72.5,72.5,70.1,60.9(1C),60.3(3C),56.0(1C),55.4(3C),22.5(4C).
質量分析:マルチモードESI+APCI法(Agilent technology
6130 Quandrupole LC/MS)
質量走査条件:500〜1800m/e、2.9sec/scan
印加電圧:3.8kV、Cone電圧:+/−50,−100V
ESI(+)法で、m/z922(M+H)、m/z944(M+Na)が観測された。目的物質の質量数はMW921.4であり、合成目的物に相当する質量数と一致した。
(II)ビオチン化反応
Figure 2011099706
1.5mlのエッペンチューブに、アミノ体(10.8mg、11.7μmol)を入れ、ビオチン化試薬(EZ−Link Sulfo−NHS−LC−Biotin)の水
溶液400μl(ビオチン化試薬は4.9mg、8.8μmol)を加えた。さらに水400μlを加えて、3時間撹拌した。反応液を1.5mlに希釈し、Waters社製oasis HLB(3cc、60mg)を用いて固相抽出を行った。溶離液に水とメタノ
ールの混合溶媒(50:50)を50ml用いた。溶媒留去後に、目的のN−アセチルグルコサミンリガンド(ビオチン化合物、収量3.6mg、収率23%)が得られた。得られた化合物の同定は1H NMR及びESI−MSにより行なった。その結果を以下に示す。
1HNMR(D2O,400 MHz,J in Hz) δ7.36(d,8.8,
2H),7.07(d,8.8,2H),5.13(d,8.3,1H),4.90(s,1H),4.85(t,0.8,1H),4.80(s,10H),4.75(s,1H),4.59(t,8.1,4H),4.55(dd,4.8&8.1,1H),4.3
1(dd,4.3&8.1,1H),4.01(dd,8.3&10.1,1H),3.94−3.47(m,28H), 3.24−3.17(m,3H),2.94(dd,
4.8&13.0,1H),2.73(d,13.0,1H),2.44−2.41(m,2H),2.23−2.21(m,2H),2.08(s,3H),2.074(s,3H),2.071(s,3H),2.04(s,3H),1.75−1.30(m,12H)。
質量分析:ESI−MS法(Micromass type−ZMD)
質量走査条件:50〜1500m/e、4.0sec/scan
印加電圧:3.8kV、Cone電圧:+/−50,−100V
溶媒:メタノール
ESI(+)法で、m/z1283(M−H+Na)、m/z1284(M+Na)が観測された。目的物質の質量数はMW1260.5であり、合成目的物に相当する質量数と一致した。
(2)ストレプトアビジンを含む生体物質構造体粒子の作製
特開2007−101520号公報の実施例1の記載に従い、アクリルオキシスクシンイミドとN−アクリロイルモルホリンからポリマーを作製した。そのポリマーをミリQ水に溶解させ、水溶液(濃度3wt%、以下「ポリマー水溶液」と称する)を0.5ml調製した。別途、ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液(濃度3wt%、pH=9.4)を0.5ml調製した。ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液(0.833ml)
と、上記ポリマー水溶液(0.250ml)と混合し(重量比は10:3)、全量を1.
08mlとした。これを一晩、22℃にて静置することにより、ポリマーとストレプトアビジンを反応させ、生体物質構造体粒子を作製した。この液へ、1Mエタノールアミン溶液(pH=8.5)を、110μl加え、混合後のエタノールアミンの濃度が100mMになるようにし
た。攪拌後、30分静置し、ポリマー中の未反応のNHS基を十分に反応させた。PIERCE社製
の透析キット(分子量3500カット)を用いて、0.1M 炭酸Buffer(PH9.4)で90分間透析
を行い、エタノールアミンを除去した。透析後の体積を測定し、体積変化がないことを確認した。この、生体物質構造体粒子を含む組成物を、以下、ナノ粒子溶液Aと称する。この溶液は、少なくとも30日間は安定に分散していた。
合成された生体物質構造体の大きさは、大塚電子株式会社製DLS−7000DHを用いた動的
光散乱測定(アルゴンレーザー使用)により50nmであることが明らかとなった。すなわち、10mM炭酸バッファー(pH9.4)で10倍に希釈して測定に供した。さらに装置
付属のソフトウェアにてヒストグラム解析(NNLS解析)を行い結果を得た。
また、上記ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液と、上記ポリマー水溶液とを10:3の割合で混合後に、7日間4℃にて静置したこと以外は、上記と同様にナノ粒子溶液Bを作製した。
(3)生体物質構造体粒子のタイタープレートへの固定化
タイタープレート(住友ベークライト社製、SUMILON MULTI WELL PLATE (#MS-8096
プレート)の複数のセル(穴)へ、上記(2)で作製したナノ粒子溶液AまたはBをPBS(pH=7.4)で表1に記載の所定の希釈倍率に薄め、150μlずつピペットで入れた。
蒸発を防ぐためにシールを行い、室温で60分間静置した後、同じピペットを用いて、液を入れたセルから出来る限りの多くの液を吸い出した。抜き出した液の量は、入れた液とほぼ同量であった。このタイタープレートをデシケーターに入れ、30分間減圧乾燥した。デシケーター内のゲージ圧力はマイナス0.08MPaであった。
このプレートを取り出し、各セルにエタノールアミン/BSAのPBS緩衝液(BSAは3%、エタノールアミンは1M、pH=7.4)を200μl入れ、22℃にて30分間静置した。
プレートをミリQ水で3回洗浄した後、アッセイ工程を行った。
(4)アッセイ工程(biotin化HRPの検出)
所定の濃度のbiotin化HRP(炭酸バッファー、pH=7.4)を、上記(3)で作製したタイタープレートへ100μl加え、37℃にて60分間静置した。その後十分な量のPBST(tween20を.05%含有のPBS、pH=7.4)で3回洗浄し、引き続き十分な量のミリQ水で3回洗浄した。100μlの発色剤(ECL−PLUS)を入れ、リーダーで化学発光を測定した。同時に同じプレートで、上記(3)で作製したナノ粒子溶液Bを用いたアッセイも行い、その結果も合わせて表1に記載する。ただし、×3000は3000倍に希釈したこ
とを示す。以下に同じ。全ての場合において、Biotin-HRP濃度とシグナルの間に相関が認められ、2ng/mlの濃度でも優位に検出した。
Figure 2011099706
(5)
ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液と、ポリマー水溶液との混合割合を、10:1および10:3とし、また混合からエタノールアミン処理までの時間(熟成時間と称す)を15分と60分とし、これら全部で4通りの組み合わせの液を調製した以外は、上記(2)と同様に、ナノ粒子溶液を調製した。さらにはナノ粒子溶液Aも同じプレートでアッセイを行った。さらに、これらナノ粒子溶液を3000倍に希釈した以外は、上記(3)と同様に、プレートを作製し、上記(4)と同様にBiotin・HRPの検出を行った。この結果を表
2に示す。
何れのストレプトアビジンを含む生体物質構造体粒子もビオチンと結合することがわかった。biontin-HRPの濃度とシグナルに相関が見られ、1.6ng/mlでも十分に検出された。
Figure 2011099706
(6)ナノ粒子溶液のBiotin・HRPのアッセイ
上記ポリマー水溶液と上記ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液を3wt%とした以外は、上記(5)と同様の方法でかつ同じプレート内に、3wt%の生体物質構造体粒子を
作製し、これを用いてタイタープレートを作製し、同時に上記(5)と同様にBiotin・HRPの検出を行った。結果を表3に示す。濃度が3wt%でもanalyteの濃度とシグナルに相関が見られ、1.6ng/mlでも十分に検出された。生体物質構造体粒子を含む溶液が1wt%および3wt%の場合、3000倍に薄めても、1.6 ng/mlのbiotin-HRPが有意に検出された。
Figure 2011099706
実施例2:糖鎖を含む生体物質構造体粒子を固定化した担体によるレクチンの検出
(1)
実施例1(6)で作製した生体物質構造体粒子を含む溶液を所定の倍率にPBSで希釈し、実施例1(3)と同様の方法でプレートを作製し糖鎖を固定化した後に、レクチンを検出した。すなわち、実施例1で作製した糖鎖を含む生体物質構造体粒子(100μg/ml、
ミリQ水溶液)を、ナノ粒子がコーティングされたセルへ50μlずつピペットで入れた。
蒸発を防ぐためにシールを行い、37℃にて60分間静置した後、同じピペットを用いて、液を入れたセルから出来る限りの多くの液を吸い出した。抜き出した液の量は、入れた液とほぼ同量であった。プレートをミリQ水で3回洗浄した後、各セルに所定濃度のWGA-HRPのPBS(pH=7.4)を100μlを入れ、蒸発を防ぐためにシールを行い、37℃にて60分間静置した。プレートをミリQ水で3回洗浄した後、各セルに発色剤(ECL−PLUS
)を100μl入れて検出器で検出した。条件ごとに、セルは2つずつ行い、平均値を算出し
た。この結果を表4に示す。いずれの条件においても、0.5 ng/mlのWGA・HRPが検出され
ていることが明らかとなった。
Figure 2011099706
(2)
上記ポリマー水溶液と上記ストレプトアビジンの炭酸バッファー溶液を5wt%とし、熟成時間を一晩とした以外は、実施例1(2)と同様の方法で、5wt%の生体物質構造体
粒子を含む組成物(以下、「ナノ粒子溶液C」と称することがある)を作製した。
(3)
実施例1(2)で作製したナノ粒子溶液A、実施例1(3)で作製したナノ粒子溶液B、実施例2(2)で作製したナノ粒子溶液Cを所定の倍率に希釈し、実施例2(1)と同様の方法で、糖鎖リガンドの固定化、WGA-HRPの検出をおこなった。この結果を表5に示
す。いずれの条件においても、0.5 ng/mlのWGA・HRPが検出されていることが明らかとな
った。
Figure 2011099706
(4)
実施例1(2)で作製したナノ粒子溶液AをPBSで3000倍に希釈し、糖鎖リガンドの濃度を変えた以外は、実施例2(1)と同様にアッセイを行った。この結果を表6に示す。いずれの糖鎖リガンド濃度においても、0.5 ng/mlのWGA・HRPが検出された。
Figure 2011099706
(5)
実施例1(3)のナノ粒子溶液Bを用い、PBSで12000倍に希釈した以外は、実施例2(4)と同じプレート上に同様にアッセイを行った。この結果を表7に示す。いずれの糖鎖リガンド濃度においても、WGA・HRPが検出された。
Figure 2011099706
実施例3:未反応の生体物質を除去して製造した生体物質構造体粒子を固定化した担体によるbiotin化HRPの検出
(1)生体物質構造体粒子を含む溶液のBN−PAGE分析
表8に示す各種濃度および熟成期間の生体物質構造体粒子を含む溶液を、INVITROGEN社製BN−PAGEを用いてBlue Native電気泳動法を行った。参照用に、原料
のストレプトアビジンおよび、BSAについても実施し、バンドの位置を確認した。entry1から10において、多くの生体物質構造体粒子が生成しており、その大きな分子量のために泳動しなかった。また、薄いながらも泳動したバンドが検出されたが、分子量からストレプトアビジンの会合体と思われた。これらのバンドの濃さがentry3から10において、混合比が10:3のものの方が10:1のそれにくらべて弱いことは、ポリマーが多いほど、ストレプトアビジンがよく反応し、生体物質構造体粒子になっている割合が高い事を示している。
Figure 2011099706
(2)
上記ストレプトアビジン水溶液(3wt%)と、上記ポリマーの水溶液(3Wt%)を10:3で混合し、30分後にエタノールアミンを加えた後に透析した。半分量の液を用いて、ミリポア社製マイクロコン(YM-100、100 kDa NMWL)で限外ろ過を行い、未反応のストレプトアビジンを除去した。続いて0.1M炭酸バッファ(PH9.4)を加え、元の体積に戻した。これを繰
り返し、全部で3回行い、ナノ粒子溶液Dを得た。未反応のストレプトアビジンが除去さ
れたことは、実施例3(1)と同様に行い、確認した。
上記で得られた生体物質構造体粒子を含む溶液から未反応のストレプトアビジンを除去した溶液(以下、「ナノ粒子溶液D」と称することがある)を0.1M炭酸バッファで10倍
希釈にし、Biotin・HRPは所定の濃度の液を各セルあたり50μl使用した以外は、実施例1(4)と同様にアッセイを行った。各条件は2つずつのセルで行い、計測すべきセルが隣り合わないように配置した。化学発光の数値を、セルの平均値で示す。表9から明らかなように限外ろ過を行った方が、全てのBiotin-HRPの濃度において、シグナルが増加した。
Figure 2011099706
(3)
上記ナノ粒子溶液Dを0.1M炭酸バッファで10倍希釈し、使用した以外は、実施例2(1)と同様にアッセイを行った。各条件は2つずつのセルで行い、計測すべきセルが隣り合わないように配置した。化学発光の数値を、セルの平均値で示す。表10から明らかなように限外ろ過を行った方が、全てのWGA-HRPの濃度において、シグナルが増加した。ま
た、限外ろ過実施の実施/非実施のいずれでも、1 ng/mlのレクチン濃度がS/N=1.9で検
出された。
Figure 2011099706
実施例4:生体物質構造体粒子を含む溶液の保存安定性
(1)
実施例1(2)で作製したナノ粒子溶液Aを3000倍に希釈し、実施例1(3)と同様の方法でプレートを作製し、実施例1(4)と同様の方法でビオチン-HRPの検出を行った。プレート作製後はシリカゲル入りデシケーター内に入れて室温にて保存した。30分後、1日後、5日後、7日後に取り出し、アッセイに使用した。また、30分後に使用したも
の以外は、ゲージ圧マイナス0.08MPaの減圧下で保存した。各条件は4つずつのセルで行い、計測すべきセルが隣り合わないように配置した。結果を表11に示す。いずれのプレートも化学発光強度は変わらず、プレートの高い保存耐久性が示された。
Figure 2011099706
(2)
実施例1(2)で作製したナノ粒子溶液Aを10倍に希釈し、実施例1(3)と同様の方法でプレートを作製し、実施例2(1)と同様の方法でHRP-WGAの検出を行った。プレ
ート作製後はシリカゲル入りデシケーター内に入れて室温にて保存した。30分後、1日後
に取り出し、アッセイに使用した。また、1日後に使用したものは、ゲージ圧0.08MPaの減圧下で保存した。各条件は4つずつのセルで行い、計測すべきセルが隣り合わないように配置した。結果を表12に示す。化学発光強度は変わらず、プレートの高い保存耐久性が示された。
Figure 2011099706
本発明の生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物を固定化した平板状担体は、産業上の広い範囲において用いることが可能である。具体的な用途としては、生体物質及び/又は提示物質と、その生体物質及び/又は提示物質と特異的に相互作用する標的物質との「相互作用」を検出する用途に用いることが好適である。
具体的には、生体物質と相互作用する作用物質を検出するバイオセンサーとして好適に使用できる。バイオセンサーの具体例としては、蛍光法、化学発光法、RI法、SPR(表面プラズモン共鳴)法、QCM(水晶発振子マイクロバランス)法、ピエゾ方式カンチレバー法、レーザー方式カンチレバー法、質量分析法、電気化学的方法によるセンサー、
電極法、電界効果トランジスタ(FET)法、カーボンナノチューブを用いたFET及び/又は単一電子トランジスタ法などが挙げられる。
蛍光法や化学発光法を用いる検出は、感度が高いことに加えて、検出機器が広く使われているために、特に好適に用いることが出来る。本発明によれば単位面積あたりに捕捉する作用物質の量を大幅に増大させるために、さらに高感度な検出が可能となる。この時にELISAプレートへの固定化体を使用すると特に有用である。

Claims (6)

  1. 生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子を溶媒中に分散させた組成物を塗布又は滴下し、該粒子もしくは該組成物のいずれかを固定化した平板状担体。
  2. 前記生体物質と結合可能な化合物の少なくとも1種が、無電荷で、水に混和し得ると共に、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマー及び該生体物質と結合可能な官能基を有するモノマーの共重合体である高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の平板状担体。
  3. 前記高分子化合物が、ポリエチレングリコールである請求項1または2に記載の平板状担体。
  4. 前記粒子が、溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、前記生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平板状担体。
  5. 前記生体分子が、タンパク質であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の平板状担体。
  6. 溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程と、
    該インキュベート工程で得られた粒子を緩衝液に分散させる分散工程と、
    該分散工程で得られた組成物を平板状担体へ塗布する塗布工程を少なくとも含む請求項1〜5のいずれかに記載の平板状担体の製造方法。
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