JP2010032504A - 組成物、粒子及びその製造方法 - Google Patents

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美奈子 花崎
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Abstract

【課題】生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有できる生体物質構造体により構成された、粒径のそろったコロイド粒子、並びに、それを含む組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造される。
【選択図】なし

Description

本発明は、生体物質を含有する粒子及びその製造方法、並びに、当該粒子を含有する組成物に関するものである。
生体物質を含む構造体(以下、「生体物質構造体」ということがある。)は、例えば、医療・診断、遺伝子解析、プロテオミクスに用いることができ、特に、アフィニティー精製及び医薬作用解析ツールなどとして用いて好適である。このような生体物質構造体として、本発明者らは、特許文献1において、生体物質、及び、当該生体物質と結合可能な化合物を含有してなる生体物質構造体等を提案した。特許文献1記載の生体物質構造体は、多量の生体物質をその反応性を維持したままで含有できるため、それ以前の技術に比べて非常に有用である。
また、特許文献2には、水溶液中で1または複数の高分子から形成される高分子粒子が記載されている。ここで、高分子としてはイムノグロブリンまたはインスリンを用いている。この高分子微粒子は1μm未満から10μmまでの直径であり、総じて粒径は大きく、また、その均一性についての記載は無く、架橋剤には、主に低分子化合物であるグルタルアルデヒドを使用している。
非特許文献1には酵素架橋粒子が記載されている。この酵素架橋粒子は、はじめに0.1〜1μmの粒径を持つ酵素沈殿物から作製するものであるが、このままでは溶解してばらばらになってしまうため、次にグルタルアルデヒドのような架橋剤を用いて作製される。粒径は1〜100μmの範囲で制御可能ではあるが、粒径が比較的大きく、また、粒径分布(均一性)に関しての記述は無い。
特許文献3には、低分子架橋剤であるグルタルアルデヒドを用いてマクロな粒子を作製し、その表面に抗体もしくは抗原を導入し、懸濁状態で得られる粒子が記載されている。この粒子は溶液中から粒子のみを分離精製する点で有用であるが、攪拌等が必要であり工程が煩雑になる。
また、非特許文献2には、Poly(NAM−co−NAS)を使用し、カタラーゼ、リボヌクレアーゼとのコンジュゲートを作製する技術が記載されているが、微粒子が生成したという記述はなく、ゲルが生成し沈殿してしまう。さらに、非特許文献3において、水に溶解しないポリマーmaleic anhydride-alt-methyl vinyl ether(MAMVE)を用
いたコンジュゲートの例が示されているが、ここでも微粒子が生成したという記述は無い。
特許文献4及び5には、抗体、酵素、デキストランのコンジュゲートが記載されている。また、特許文献4には、直鎖構造にすることで細胞に進入しやすくし、細胞がより免疫染色しやすくなることが記載されている。
特許文献6には、架橋剤を用い作製したコンジュゲートをプレートの塗布に用いることでタンパク質の固定化量が増大し高感度化を実現したとある。タンパク質のコンジュゲートを高感度用の塗布剤として用いた好例である。但し、2、3、4量体を最適とし、それ
ら以上に多量化したものは用いておらず、製造等の点から無駄が生じる虞がある。
非特許文献4には、アビジン、ビオチンからなる多量体を用いたABC法による増感法は免疫染色の場合に有効とある。しかしながら、用事調整のため毎回溶液を調液する必要があり取扱が煩雑になる虞がある。
国際公開第2006/038456号パンフレット 特許公開第2007/297633号パンフレット 特開平7−318561号公報 特表2007−513334号公報 特表平6−509167号公報 米国特許第6638728号公報
Biocatalysis and Biotransformation, 2005, 23(3/4): 141-147 Applied Biochemistry and Biotechnology, 1985, 11, 269-277. Bioconjugate Chem., 2001, 12, 972-979. VECTASTAIN ABCシステム 実験マニュアル(第5版) フナコシ株式会社
特許文献1記載の生体物質構造体は、その用途によっては微粒子状にして取り扱うことが望まれる場合がある。特許文献1においては減圧等による濃縮でゲル粒子を作製していたが、濃度の程度を制御することが困難なため、反応速度をコントロールすることが困難であり、大きなゲル粒子が形成された。このように特許文献1記載の方法では、ゲル粒子の大きさを制御することが難しく、1μm以下の生体物質構造体の微粒子で、粒径が揃ったものを作製することは困難であった。粒径を1μm以下にすることができると、粒子はコロイド粒子として振る舞うようになり、ブラウン運動のため沈降しなくなる。また、自由に水中を動くため、生体物質構造体をバイオセンサーに使用する場合にアナライトと反応しやすくなる。
また、生体物質構造体の品質の安定性、並びに、診断、遺伝子解析及びプロテオミクス等の分野で検査に用いる場合には、検査結果の信頼性を高めるためには、生体物質構造体を粒子状に形成した場合には、単分散であること、つまり、溶液中での粒径がそろっていることが望まれる。
さらに、センサー表面に生体物質が固定化されたバイオセンサーにおいて感度を向上させるためには、より多くの生体物質をセンサー表面に固定化することが望ましい。この場合、ポリマーとタンパク質とのコンジュゲートがセンサー表面の表面処理剤として使用されることがあるが、直鎖状のコンジュゲートを表面に垂直に立たせた状態で固定化することは難しく、一般的には表面に寝たような状態で固定化される。もし、コンジュゲートが微粒子の状態であれば、生体物質の固定化量をさらに増加させることが可能となる。また、この場合に粒径が均一であれば、信頼性の高いコーティングを実現可能である。さらに、粒子径をコントロールすることができれば、大きな粒子による散乱を避けることが可能となり、光を用いた検出系で使用することが可能となる。
これらの観点から見ると、特許文献2、非特許文献1記載の高分子微粒子は1μm未満から10μmまでの直径でかつ粒度分布が広く多分散である。また、特許文献4及び5に記載
のコンジュゲートの分子構造が直鎖状であるため、これらをドラッグデリバリー用などのカプセルとして用いる場合には、薬剤等を内部に担持させたり、外部環境から保護したりすることは困難であった。さらに、特許文献3に記載の微粒子は、作製中に凝集してしまうため、抗体等を導入後に粉砕する必要があり、操作が煩雑になることがある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有できる生体物質構造体により構成された、粒径のそろったコロイド粒子、並びに、それを含む組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、溶媒、生体物質、及び該生体物質と結合可能な化合物とを、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、得られた混合液を所定時間溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することで、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、
粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子(以下、「生体物質
構造体粒子」と称することがある)が得られることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、
(1)生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子、
(2)該生体物質と結合可能な化合物の少なくとも1種が、無電荷で、水に混和し得ると共に、分子中に該生体物質と結合可能な官能基を2つ以上有する高分子化合物であること
を特徴とする上記(1)記載の粒子、
(3)該高分子化合物が、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマー及び該生体物質と結合可能な官能基を有するモノマーの共重合体である上記(2)に記載の粒子、
(4)該高分子化合物が、ポリエチレングリコールである上記(2)に記載の粒子、
(5)溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造される上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粒子、
(6)該生体分子が、タンパク質であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粒子、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粒子が溶媒中に分散したことを特徴とする組成物、
(8)溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程を少なくとも含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粒子の製造方法、
(9)溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程と、該インキュベート工程で得られた粒子を緩衝液に分散させる分散工程を少なくとも含む上記(7)に記載の組成物の製造方法、
(10)上記(7)に記載の組成物を塗布又は滴下した固定化担体、
に存する。
本発明の生体物質構造体粒子によれば、大きな粒径を有し、かつその粒径が揃っていることから、生体物質の反応性を保ったまま多量の生体物質を含有でき、かつ該構造体粒子を含む溶液を基板等に塗布した場合に厚みが均一となり、該基板をセンサーチップ等として用いる場合に、得られるシグナル強度が高く、むらが少なくなるという効果を有する。また、アフィニティー粒子や診断薬として本発明の生体物質構造体粒子を使用した場合、
衝突確率の増大により反応性が向上し、且つ、凝集による沈殿が生じにくいという効果がある。さらに、本発明の生体物質構造体粒子をフィルターのポアサイズによる分離精製に用いる場合には、精製効率が高まる。
本発明の生体物質構造体粒子中のマウスIgGと抗マウスIgG抗体との結合を蛍光強度により測定した結果を示す図である。 本発明の生体物質構造体粒子中のストレプトアビジンとビオチンとの相互作用をQCMシグナルにより測定した結果を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態や例示物などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
(1)生体物質構造体粒子
本発明の生体物質構造体粒子は、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下で
あり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子である。
上記で生体物質は生体物質構造体粒子を構成する要素であり、その目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。また、生体物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
生体物質の分子量は、1000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、さらに好ましくは10万以上である。また、水中での粒径が、直径1以上100nm以下、好ましくは直径2以上50nm以下、より好ましくは直径3以上20nm以下である。粒径が極度に小さい場合は、反応性基を複数有することが困難となり、一方粒径が極度に大きい場合は、生体物質が沈降してしまうことで反応が進行することが困難となる虞がある。等電点(pI)については、生体物質表面の官能基の荷電状態により反応性が変わるため、pI2以上pI13以下、好ましくはpI3以上pI12以下、より好ましくはpI4以上pI10以下である。
生体物質は、これを含む生体物質構造体粒子を解析用途や精製用途に用いる場合の標的物質(本明細書中では、「アナライト」と称することがある)と相互作用する。ここで、生体物質と標的物質との「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合等が挙げられる。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
生体物質の代表例としては、タンパク質で、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プ ロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュー
トラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質、サイトカイン、ホルモン、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab’)2、Fab’、Fab、レセプター等が挙げられる。また、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、上述以外の生体物質由来の高分子有機物質、低分子化合物、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子等が挙げられる。
生体物質として、アルブミンを用いた場合、非特異的吸着を抑制するコーティング剤として用いることができる。また該生体物質にアビジンを用いれば、ビオチン化した提示物
質(本明細書中では、生体物質に結合することにより生体物質構造体粒子に提示されるアナライトを「提示物質」ということがある)を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。また、該生体物質にプロテインAを用いれば、提示物質として抗体を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。また、該生体物質として低分子化合物を用いる場合には、医薬候補化合物等が好適に用いられる。
生体物質と標的物質の組み合わせとしては、酵素と基質、抗体と抗原分子(エピトープ)、レクチンと糖、レセプターとリガンド、プロテインA、プロテインGあるいはプロテインA/GとFc、アビジン及びストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質とビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとグルタチオン、アルブミンとアルブミン結合化合物、マルトース結合タンパク質とマルトース、Gタンパク質とグアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチドとニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、DNA結合タンパク質とDNA、抗体、カルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質とATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質とエストラジオールなどの各種受容体タンパク質とそのリガンド、FLAGと抗FLAG抗体、細胞と細胞結合物質、アポ酵素と補酵素、核酸と該核酸に相補的な配列を有する核酸等が挙げられる。
生体物質と結合可能な化合物(以下、「結合化合物」と称することがある)とは、少なくとも1種が、分子中に該生体物質と結合可能な官能基(以下、「結合官能基」と称することがある)を有する高分子化合物をいう。結合官能基は、結合化合物中に2つ以上、さらには3つ以上あることが好ましい。結合化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
結合可能な化合物は、反応性基を有する高分子であることが好ましい。結合可能な化合物は、反応性基を有する共重合体もしくは、末端に反応性基で分岐型高分子であることがより好ましい。結合可能な化合物は、少なくとも1種が両親媒性又は水溶性であることが
好ましく、水溶性であることがさらに好ましい。ここで、結合とは、通常、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、静電力による結合のうち一つ以上の結合から成り立つものを指す。中でも好ましくは共有結合である。
結合官能基としては、上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体物質の種類並びに本発明の生体物質構造体粒子及びそれを含む粒子含有組成物の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
結合官能基は、通常、反応性基として共有結合を介して生体物質と結合するものと、非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。共有結合により結合する場合、結合官能基の具体例としては、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、p−ニトロフェニル基等が挙げられ、この場合、結合官能基と共有結合によって結合する生体物質としては、例えば、タンパク質、核酸、糖等が挙げられる。 また、生体物質が核酸である場合、通常は、核酸のアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等の基と、結合化合物の結合官能基とが結合する。この際、例えばアミノ基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としては、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、p−ニトロフェニル基等が挙げられる。また、例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。さらに、例えばチオール基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
さらに、生体物質が糖である場合、通常は、糖の側鎖に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等の基と、結合化合物の結合官能基とが結合する。この際、例えばアミノ基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、p−ニトロフェニル基等が挙げられる。また、例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、例えばチオール基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。
一方、生体物質と結合化合物とが非共有結合により結合する場合、例えば、錯体形成、生体物質間相互作用などにより結合をさせることができる。
生体物質と標的物質とで錯体を形成させることにより両者を結合させる場合、結合官能基の具体例としては、ボロン酸基等が挙げられる。また、アビジン−ビオチン相互作用により結合させる場合には、結合官能基の具体例としては、ビオチン基等が挙げられる。生体物質としてウイルスを用いる場合、結合官能基の具体例としては糖や多糖が挙げられる。生体物質が疎液領域を有している場合には、疎液相互作用による物理吸着により結合させるようにしても良い。
結合化合物は、生体物質と結合化合物との結合が主となるように、結合化合物同士の結合が無いことが好ましい。このように結合化合物同士の結合が無い生体物質構造体粒子を形成させるためには、結合化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、さらに、結合化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は、例えば、前述したようにスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、p−ニトロフェニル基、ボロン酸基、ビオチン基などが挙げられる。
結合化合物は、共重合性を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。さらに、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーを用いることがより好ましい。これに加えて、合成高分子化合物が溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で、疎水性モノマーを含有させるようにすることも好ましい。
結合化合物として使用しうる合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレン、クロルスチレン、α
−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、2−(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリロイルオキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の重合性カルボン酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類等が挙げられる。
また、付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。この付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシア
ナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ジシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の脂肪族又は芳香族イソシアナート類、ケテン類、エポキシ基含有化合物類、ビニル基含有化合物類等が挙げられる。これらのうち、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。さらに、活性化水素を有する官能基を備えたモノマーを用いることもできるし、、架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させても良い。
これらのモノマーのうち、少なくとも1部に上記結合官能基を有するものを用いること
により、結合化合物がその分子中に2つまたはそれ以上の該官能基を有することになる。結合官能基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクロレイン、マレイミドアクリレート、p−ニトロフェニルオキシカルボニルポロエチレングリコールメタクリレート、p−ニトロフェニルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、アクリルオキシスクシンイミドが好ましく用いられる。上記の結合官能基を有するモノマーと結合官能基を有さないモノマーの共重合比は、反応性基の割合が、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。反応性基の割合が、極度に高い場合は、結合可能な化合物が生体物質と多点結合することで、生体物質の活性が低下してしまう虞がある。一方極度に低い場合は、結合反応が進行しない虞がある。
本発明の結合化合物の好適な例としては、N−アクリロイルモルホリンとアクリルオキシスクシンイミドの共重合体、ポリエチレングリコール、具体的には、日本油脂社製のSUNBRIGHTシリーズDE−030AS、DE−030CS、DE−030GS、PTE−100GS、PTE−200GS、HGEO−100GS、HGEO−200GSなどが挙げられる。好ましくは、HGEO−200GSが挙げられる。
本発明の生体物質構造体粒子は、生体物質と該生体物質と結合可能な化合物とからなる主鎖を有するマトリックス構造を有するもの(以下、適宜「マトリックス」ということがある)で、生体物質と結合化合物とを含み、その骨格が、生体物質と結合化合物とが結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造を有するマトリックスとなっているものである。溶媒中に分散した対象がこのマトリックス構造や、その構造をとっているか否かの確認方法については、AFM等の各種顕微鏡により、その形状が粒子であることを確認する。その形状が粒子である場合には、国際公開公報WO06/038456に記載の方法でその組成を確認する。固定化担体上に塗布した対象がこのマトリックス構造や、その構造をとっているか否かの確認方法については、Tenkor等の各種触針計により、形成した膜の厚みが均一であることを確認する。その膜の厚みが均一である場合には、国際公開公報WO06/038456に記載の方法でその組成を確認する。
本発明の生体物質構造体粒子は、重量平均粒径が1nm以上、好ましくは10nm以上、より
好ましくは200nm以上で、1000nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下
のものをいう。また、本発明の生体物質構造体粒子の粒径分布の重量平均/数平均(即ち、数平均粒径に対する重量平均粒径の比)は、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。なお、下限に制限は無いが、通常は1.0以上である。
このように重量平均粒径が所望の範囲に収まっていると共に、重量平均/数平均が小さいこと(即ち、粒径がそろっていること)により、フィルターのポアサイズによる分離精製時において精製効率が高まる、アフィニティー粒子として使用した際のデータの良好な再現性が得られる、安定した製造が可能となる、水溶液中で沈降せず長期間安定に分散するなどの利点が得られる。ここで、重量平均粒径及び重量平均/数平均は、動的光散乱により測定できる。また、重量平均粒径とは、動的光散乱測定により得られる重量換算粒径
分布の平均値をいう。また、本発明の生体物質構造体粒子のアスペクト比は3以上が好ま
しく、さらに好ましくは4以上、最も好ましくは5以上のものである。
また、生体物質構造体粒子中の生体物質に対する結合化合物の重量比[(結合化合物の重量)/(生体物質の重量)]は、0.1/100以上、好ましくは1/100以上、より好ましくは5/100以上である。また、上限について制限は無いが、通常200/100未満、好ましくは150/100以下、より好ましくは100/100以下である。
(2)生体物質構造体粒子の製造方法
本発明の生体物質構造体粒子は溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程等により製造することができる。
(2−1)混合工程
生体物質及び結合化合物は上述のとおりである。混合工程において、生体物質に対する結合化合物の重量比[(結合化合物の重量)/(生体物質の重量)]は、0.1/100以上、好ましくは1/100以上、より好ましくは5/100以上である。また、上限について制限は無いが、通常200/100未満、好ましくは150/100以下、より好ましくは100/100以下である。生体物質に対する結合化合物の重量比がこの範囲を上回る場合、ゲル化してしまい、該重量比がこの範囲を下回る場合、反応が進行せず粒子が生成しない。
上記結合化合物として、モノマーの共重合体を用いる場合には、上記混合に先立ってまず結合化合物を製造する。結合化合物は、上記モノマーを溶媒と混合して、密閉可能な容器等を用いて室温で5分〜1時間程度脱気する。この際、該容器中の空気は窒素置換しておくことが好ましい。溶媒としては、モノマーが溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、脱水ジオキサン等が用いられる。上記モノマーは、結合化合物1分子中に2つ以上の結合官能基を有するものであれば何れのものでもよいが、好ましくは結合官能基を有するモノマーの割合が、モノマー全体の50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下となるように混合することが好ましい。結合官能基を有するモノマーの割合が、極度に高い場合は、結合可能な化合物が生体物質と多点結合することで、生体物質の活性が低下してしまう虞がある。一方極度に低い場合は、結合反応が進行しない虞がある。モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させる。重合剤としては公知のものを用いることができるが、好ましくは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
生体物質の結合化合物の混合工程で用いられる溶媒は、本発明の生体物質構造体粒子の製造が可能な限り任意のものを用いることができる。具体的には、水、炭酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、HEPESバッファー、TRISバッファー、MESバッファー等の緩衝液、有機溶媒を用いることができる。さらに、有機溶媒の中でも、両親媒性溶媒、即ち、水に混和しうる有機溶媒が好ましい。具体例としては、アルコール、ジオキサン等のエーテル等が挙げられる。このうち、好ましくは炭酸バッファーが用いられる。溶媒量は、その混合溶液の固形分濃度が、0.0001%以上から50%以下であり、好ましくは0.001%以上から25%以下、より好ましくは0.01%以上から10%以下、さらに好ましくは0.1%以上から10%以下となるように添加することが好ましい。また、必要に応じて、添加剤を用いてもよい。混合液のpHは、2以上、好ましくは3、さらに好ましくは4以上で、通常12以下、好ましくは11以下、さらに好ましくは10以下となるように、溶媒を選択する。
生体物質及び結合化合物の混合状態は任意であり、溶解状態であっても分散状態であってもよいが、生体物質と結合化合物とを安定して結合させるためには、生体物質及び結合化合物が溶媒中において溶解状態で存在していることが好ましい。混和方法としては、生体物質、結合化合物及び溶媒、並びに、必要に応じて使用される添加剤は、どのような順番で混合してもよい。また、各成分は、1回で全量を混合してもよく、2回以上に分けて混合してもよい。容器は、密閉型のものを用いることが好ましく、例えば、公知の攪拌手段により攪拌して混合することが好ましい。混合工程における温度条件は、通常0℃以上、好ましくは4℃以上、より好ましくは10℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。温度が低すぎると結合反応が進行しなくなることや溶質の溶解度が低下する可能性があり、高すぎると生体物質が変性を生じる可能性がある。
(2−2)インキュベート工程
上記で調製した混合液は、その混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしく
は攪拌するインキュベート工程に供する。好ましくは、外部から力を加えることなく混合液を静置することが好ましい。混合液中に生成する生体物質構造体粒子の粒径をより均一にするためである。溶媒の蒸発を防ぐとは、具体的には、インキュベート工程を通じた混合液の重量の減少量が、通常1.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下の範囲に収まることを意味する。具体的手段としては、例えば、インキュベート工程を、底部に水を張った密閉容器で行うこと等が挙げられる。インキュベート時間は、通常0.5分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましく
は90分以上、また、上限は特にないが、30日以内、好ましくは20日、さらに好ましくは10日以内である。インキュベート工程で混合液を静置もしくは攪拌することにより、混合液内では生体物質と結合化合物とが結合する反応が進行し、本発明の生体物質構造体粒子が生成する。
インキュベート工程には、必要に応じて、生体物質と結合化合物との結合反応を停止させる停止工程が含まれる。通常は、粒子含有組成物に停止剤を添加する。停止剤は、生体物質と結合化合物との結合反応を停止させることができれば任意であるが、例えば、結合化合物の結合官能基と反応するエタノールアミン、トリエタノールアミン、システアミン、トリス、ポリリジン、システイン、グリシンなどのアミノ酸などが挙げられる。これらのうち、エタノールアミンが好ましく用いられる。上記インキュベート工程で、結合化合物同士が結合していないことを確認するためには、例えば、松本勲武他、アフィニティークロマトグラフィー、238頁から(東京化学同人)に記載の方法を用いることができる。
上記で製造された本発明の生体物質構造体粒子は、これをゲルろ過、フィルター分離や透析等を用いて精製することができる。具体的には、PIERCE社製の透析キット(Slide-A-Lyzer TM Cassette Kit, 3.5K MWCO, 0.5-3 ml Capacity、分子量3500カットの透析膜)
等が挙げられる。また、限外ろ過を行うことにより、未反応の生体物質などの、生体物質構造体粒子よりも小さな液中の物質が除去できる。市販のものが使用でき、目的を達する限りにおいて、特に制限はないが、具体的にはミリポア社製マイクロコン(YM-100、100 kDa NMWL)が挙げられる。
上記製造方法により、本発明の生体物質構造体粒子が製造されたことは、公知の方法で、粒径を測定することにより確認することができる。具体的には、粒径の測定及びその粒径分布の測定方法としては、その粒子の粒径及び単分散性については、動的光散乱法などにより確認することができる。生体物質と結合可能な化合物からなる粒子の粒径及び構造は、AFM、TEM等の各種顕微鏡により、粒子をグリッドに滴下し観察することで判別することが可能である。
(3)生体物質構造体粒子が溶媒中に分散した組成物
上記の生体物質構造体粒子は、生体物質構造体粒子が溶媒中に分散させた組成物(以下、「粒子含有組成物」と称することがある)として用いることもできる。本発明の粒子含有組成物中の生体物質構造体粒子の濃度は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。濃度が低すぎると反応性が低下し使用できない可能性があり、一方、高すぎると粒子同士が極度に近接するため、凝集し沈降してしまう可能性がある。
溶媒は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、通常は、本発明の生体物質構造体粒子の製造工程において使用した溶媒を、粒子含有組成物の溶媒として用いる。
粒子含有組成物の製造方法としては、本発明の生体物質構造体粒子が、溶媒中に分散しているものが製造される方法であれば如何なるものであってもよい。具体的には、上記生体物質構造体粒子の製造法で製造された生体物質構造体粒子含有液を、必要に応じて精製した後に、溶媒にて希釈すること等が挙げられる。
さらに、本発明の粒子含有組成物は、本発明の効果を著しく妨げない限り、生体物質構造体粒子及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。その例を挙げると、NaCl、KCl、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の塩;酸;塩基;バッファー;グリセリン等の保湿剤;生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤、変性剤などが挙げられる。また、該組成物を製造する際に無機化合物である磁性粒子や金コロイドのような金属粒子やCdSeナノクリスタルのような半導体材料に基く粒子等を添加することにより生体物質構造体粒子の中にこれらの無機化合物を含むこともできる。
また、本発明の粒子含有組成物は、好ましくはこれを結合官能基と反応する官能基を表面に有する固定化担体に塗布、又は滴下することにより生体物質構造体粒子を固定化することができる。ここで、固定化担体とは、ガラスや樹脂製等の平面板、磁性体粒子、ラテックス、多孔質体等である。固定化担体の表面積は問わない。本発明の生体物質構造体粒子及び/又は粒子含有組成物を固定する方法としては、それを含む溶液を表面に塗布あるいは滴下し、物理吸着させてもよいし、共有結合で固定化してもよい。
(4)生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物の用途
本発明の粒子含有組成物は、通常はコロイド分散系となっている。即ち、本発明の粒子含有組成物は、通常、溶媒中に生体物質構造体粒子がコロイド粒子として分散したコロイド溶液となっている。この場合、本発明の粒子含有組成物は、粗大粒子が溶媒に分散した分散液と異なる特性を有する。具体的には、コロイド粒子はブラウン運動するため、沈澱しないなどの利点がある。従って、上記のコロイド分散系の特徴を活用し、本発明の粒子含有組成物は、例えば診断薬、ドラッグデリバリシステム(DDS)用担体、コート剤、表
面処理剤などとして有用である。
本発明の生体物質構造体粒子を特定の物質の提示に用いる場合には、上記生体物質構造体粒子を製造する何れかの工程の前、最中又は後において、提示の目的物質を結合させる提示物質結合工程を行なうようにすればよい。例えば、生体物質及び/又は結合化合物に予め提示物質を結合させておき、その後に生体物質構造体粒子を形成させたり、また、生体物質と結合化合物とから生体物質構造体粒子を製造した後に、生体物質構造体粒子中の生体物質及び/又は結合化合物に提示物質を結合させて製造してもよい。さらに、リンカーを用いる場合には、まずリンカーを生体物質及び/又は結合化合物に接触させてから、当該リンカーが結合した生体物質及び/又は結合化合物に特定物質を接触さたり、逆に、リンカーを特定物質と接触させてから、当該リンカーが接触した特定物質を生体物質及び/又は結合化合物に接触させたりすればよい。
本発明の生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物をアフィニティー分離に用いる場合には、生体物質構造体粒子中に含まれる生体物質及び/又は提示物質と結合するアナライトを吸着分離することができる。また、医薬候補化合物の作用機構の分析のためのツールとして本発明の生体物質構造体粒子及び/又は粒子含有組成物を使用する場合、生体物質及び/又は提示物質としてレセプターなどの疾患に寄与するタンパク質を用いることにより、複数の医薬候補化合物が分析すべき対象物質とすることができる。その他の用途については国際公開公報WO06/038456に記載のものが挙げられる。また、本発明の生体物質構造体粒子では、生体物質及び標的物質以外の生体物質構造体構成要素に起因する非特異的相互作用を抑制することができる。生体物質構造体粒子中における生体物質又は特定物質の比率を高め、非特異的相互作用の要因となる生体物質以外の物質の比率を抑制することができるからである。したがって、非特異的相互作用の影響を排除しながら、生体物質及び/又は特定物質と作用物質及び/又は特定作用物質との相互作用を用いた分析やアフィニティー分離を実施することができる。特に、結合化合物として無電荷のものを用いた場合には、電荷により生じる非特異的相互作用をより一層抑制することも可能となる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の実施例で、BSAとはウシ血清アルブミンをいい、PBSとはリン酸緩衝生理食塩水をいう。
[実施例1 マウスIgGを用いた生体物質構造体粒子の作製及び評価]
(1)結合化合物(ポリマーA)の合成
モノマーであるN−アクリロイルモルホリン(NAM、KOHJIN社製)2.82重量部及びN−
アクリロイルスクシンイミド(NAS、ACROS ORGANICS社製)0.84重量部と、溶媒である脱
水ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)20.87重量部とをよく混合し、50mLの四つ口
フラスコにそそぎ入れ、室温で30分間窒素にて脱気を行ない、モノマー溶液を調製した。
このモノマー溶液をオイルバスにて70℃に昇温し、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学株式会社製)0.0124重量部を脱水ジオキサン0.50重量部に溶かした溶液を入れることにより、重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、8時間行なっ
た。重合後、ポリマーが生成した溶液は、0.5Lのエタノール(純正化学株式会社製)に滴下することにより再沈殿させた後、溶媒を除去することにより粉末化し、結合化合物であるポリマーAを得た。
得られたポリマーAについて、標準ポリスチレンで校正されたSEC(Size Exclusion Chromatography)測定を行なった結果、ポリマーAの重量平均分子量(Mw)が約119000と見積もられた。また、得られたポリマーAに含まれるNASとNAMとのモル比(NAS/NAM)は、1H−NMR測定からNAS/NAM=23/77と見積もられた。
(2)生体物質構造体粒子の形成
限外ろ過フィルター(ミリポア社製、MWCO10000)を用いて、1重量%のマウスIgG溶液
(LAMPIRE BIOLOGICAL LABORATORIES製)を10mM炭酸バッファー(pH9.4)に交換し、さ
らに濃縮することで、4重量%のマウスIgG溶液を用意した。この4重量%のマウスIgGを含む水溶液(炭酸バッファー10mM、pH9.4)100μLとポリマーAをミリQ水に溶解させた溶液10μLを密閉可能なマイクロチューブに計り取り混合し、IgG(生体物質)/ポリマーA(結合化合物)の重量混合比が100/10となる溶液を調整した。この溶液を室温にて一晩静置した。その後、未反応の活性エステル基をブロッキングする目的で、1Mのエタノールアミン−HCl水溶液(pH8.5)を前記溶液に対して同体積量添加した後に混合し、室温にて静置して、本発明の生体物質構造体粒子を得た。この生体物質構造体粒子は水溶液中で沈降せず、少なくとも7日間安定に分散していた。
(3)生体物質構造体粒子の形成評価
得られた混合液を希釈して、非還元SDS−PAGEによる電気泳動を行い、その後CBB染色法により電気泳動ゲルを染色した。この結果、コントロールとして同じゲルに泳動したポリマーAを添加していないものには見られなかった高分子量領域にバンドが観察され、生体
物質構造体粒子の形成が示された。
(4)生体物質構造体粒子の粒径分布測定
得られた混合液を10mM炭酸バッファー(pH9.4)で10倍に希釈し、大塚電子株式会社製DLS−7000DHを用いてアルゴンレーザーで動的光散乱測定(DLS)を行った。さらに装置付
属のソフトウェアにてヒストグラム解析(NNLS解析)を行った結果を表1に示す。表1より、第1ピークが生体物質構造粒子を示し、その粒径は重量平均粒径が97.2nmであり、数平均粒径が88.8nmであった。また、粒径分布が1.09であった。
Figure 2010032504
[実施例2 BSAを用いた生体物質構造体粒子の作製]
(1)生体物質構造体粒子の形成
実施例1とは異なる生体分子として、10重量%のBSAを含む水溶液(炭酸バッファー100mM、pH9.4)1mLとポリマーAをミリQ水に溶解させた10重量%溶液200μLを密閉可能なマイクロチューブに計り取り混合し、生体物質/結合化合物の重量混合比が100/20となる溶液を調整した。この溶液を室温にて一晩静置した。それ以降は、実施例1−(2)と同様に行い、BSAとポリマーAをそれぞれ生体物質及び結合化合物とする生体物質構造体粒子を含む溶液を得た。
(2)生体物質構造体粒子の粒径分布測定
実施例1−(4)と同様に、動的光散乱測定(DLS)を行った結果を表2に示す。表2より、第1ピークが生体物質構造粒子を示し、その粒径は重量平均粒径が133.2nmであ
り、数平均粒径が121.4nmであった。また、粒径分布が1.10であった。
Figure 2010032504
[実施例3 PEG及びBSAを用いた生体物質構造体粒子の作製]
(1)生体物質構造体粒子の形成
10重量%のBSAを含む水溶液(炭酸バッファー100mM、pH 9.4)1mLとポリマーAの変わりにスクシンイミド末端を有する1重量%濃度の8−arms functional PEG (SUNBRIGHT HGEO
−200GS,日本油脂社製)20μLを密閉可能なマイクロチューブに計り取り混合し、生体物
質/結合化合物が100/0.2となる溶液を調整し、BSAと8−arms functional PEGを
それぞれ生体物質及び結合化合物とする生体物質構造体粒子を含む混合液を得た。
(2)生体物質構造体粒子の粒径分布測定
実施例1−(4)と同様に、動的光散乱測定(DLS)を行った結果を表3に示す。表3より、第1ピークが生体物質構造粒子を示し、その粒径は重量平均粒径が23.1nmであり、数平均粒径が21.9nmであった。また、粒径分布が1.05であった。
Figure 2010032504
[実施例4 生体物質構造体粒子の形状観察]
(1)金チップに塗布した場合の形状観察
金で被覆されたSi基板からなるチップを、10mMの16−メルカプトヘキサデカン酸(ALDRICH社製)エタノール溶液に室温で12時間浸漬させ、表面処理を行なった。反応終了後、金チップの表面にカルボキシル基を導入するためのエタノールで洗浄した。次に、基板表面に、スクシンイミド基を導入するため、該基板を0.1MのN−ヒドロキシスクシンイミド(和光純薬工業社製)水溶液1mLと0.4Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(同仁化学研究所製)水溶液1mLとを混合し、さらに脱塩水18mLで希釈した溶液に浸漬させ、15分間反応させた。
次に、実施例1−(2)で得られた生体物質構造体粒子を含む混合液を上記基板上に50μL滴下し、溶媒の蒸発を防ぐために湿潤環境(水を張った密閉容器中にチップを静置)にて2時間静置し、未反応の活性エステル基をブロッキングするために、1MエタノールアミンHCl溶液(pH8.5)に浸漬した。その後、基板に結合しなかった生体物質構造体粒子及び未反応の生体物質を除去することを目的として、この基板を水洗した後に、風乾した。
この基板の表面をAFM(原子間力顕微鏡、Digital Instruments社製 Nanoscope IIIa Multimode)によって観察した。250nm×250nm視野での観察結果から、上記基板表面に直径約100nm程度の粒子が観察され、実施例1〜3で測定した粒径がAFMでも確認された。
(2)粒子含有組成物としての形状観察
100μL の1% ストレプトアビジン水溶液(pH9.4)と10μLの5% ポリマーA水溶液を混
合し、密閉容器中で、室温にて3日間インキュベートした。その後、10μLの1M エタノー
ルアミン-HCl (pH8.5)を添加しマスキング処理を室温にて30分間行った。続いて、未反応のストレプトアビジン及びポリマーAを取り除くために、分画分子量100,000のマイクロコン(ミリポア社製)を用いて、遠心精製を行った。総量2mLの100mM炭酸バッファーpH9.4
を用い、回転数10000rpmにて行った。生体物質構造体粒子の濃度は2.99%であった。
観察前のサンプル前処理として、サンプル溶液を蒸留水にて10倍希釈を行った。サンプルの分散工程は、カーボン支持膜/400グリッド上に行った。電子染色工程として、2%酢酸ウラン水溶液を用い、ネガティブ染色を行った。TEM観察は、JEOL JEM2000FX 200kVにて行った。結果、生体物質構造体粒子が観察され、真球状でなく、凹凸のある構造であることがわかった。
[実施例5 インキュベーション工程における攪拌の効果の確認]
(1)生体物質構造体粒子の形成
ブタアルブミン(SIGMA製)を含むバッファー(100mM炭酸バッファー、pH9.4、10重量%)の溶液を100μL調整し、ポリマーAのミリQ溶液(10重量%)を10μL調製
し、実施例1と同様に混合した後、インキュベーション工程として室温にて30秒間ボルテックスにより攪拌して反応させた以外は実施例1と同様にして行った。その後は実施例(1)−4と同様に動的光散乱測定を行った結果、生体物質構造体粒子の粒径は重量平均粒径が48.1nmであり、数平均粒径が45.0nmであった。また、粒径分布は1.07であった。
[比較例1 混合比300/100(結合化合物/生体物質)の場合]
生体物質と結合化合物の比を300/100(結合化合物/生体物質)とした以外は、実施例
2と同様にして反応を行った。結果、溶液全体の流動性が低下しマイクロチューブ内でマクロなゲルの形成が目視にて確認され、生体物質構造粒子が形成されなかった。
[比較例2 混合比0.01/100(結合化合物/生体物質)の場合]
生体物質と結合化合物の比を0.01/100(結合化合物/生体物質)とした以外は、実施例2と同様にして反応を行った結果、マイクロチューブ内で、生体物質構造粒子が形成されなかった。
[実施例6 粒子含有組成物中に無機化合物(金コロイド)を添加した場合]
実施例4(2)と同様に生体物質構造体粒子を製造した後に、該溶液100μL中にビオチン金コロイド溶液(AURION社製)の原液100μLを混合し、密閉容器中、室温にて24時間反応させた。その後未反応のビオチン金コロイドを取り除くために分画分子量100,000のマ
イクロコン(ミリポア社製)を用いて、遠心精製を行った。観察前のサンプル前処理として、サンプルの分散工程は、カーボン支持膜/400グリッド上に行った。電子染色工程と
して、2%酢酸ウラン水溶液を用い、ネガティブ染色を行った。TEM観察は、JEOL JEM2000FX 200kVにて行った。
結果、該粒子の中には数nmの直径の金コロイド粒子が点在していることが確認され、金コロイドを分子中に含む生体物質構造体粒子が製造できた。
[実施例7 生体物質構造体粒子を塗布した膜の均一性]
実施例4(2)と同様に生体物質をストレプトアビジン、結合化合物をポリマーAとし
た生体物質構造体粒子を製造した。次に、1μL滴下した溶液を乾燥にて固定した以外は実施例7(1)と同様に生体物質構造体粒子を金被覆基板表面に塗布した。
生体物質構造体粒子を塗布し形成された膜の厚みの均一性を観察するために、LA Tencor P-15 Stylus Profilometerを用いて、乾燥条件下、スポットが形成された基板表面の領域を観察した。結果、形成された膜表面は均一であることがわかった。
[比較例3 生体物質と結合化合物を混合直後に塗布した膜の不均一性]
生体物質として1%ストレプトアビジン100μLと、結合化合物としてポリマーA 10μLを
混合した。その直後、インキュベーション工程を行わずにその混合溶液を実施例7と同様に金被覆基板表面に塗布し、表面を観察した。結果、形成された膜は凹凸の粗い表面であることがわかった。
[実施例8 蛍光検出法における生体物質構造体粒子の反応性]
(1)生体物質構造体粒子を固定化した場合
金で被覆された樹脂製チップを用いた以外は、実施例4−(1)と同様に行った。この金チップの表面に生体物質構造体粒子を含む溶液を、1μLスポッティングした以外は、実施例4−(2)と同様に行い、生体物質構造体粒子を固定した。上記基板を5重量%BS
A溶液(PBSバッファー)に室温にて約1時間浸漬することで、ブロッキングした。溶液を除去した後に水洗し、アナライトとして100μg/mLのAnti MouseIgG (whole molecule) F(ab’)2 fragment−Cy3(SIGMA製)を含むPBSバッファーを1mL添加し、室温で1時間、湿
潤条件下で静置した。溶液を除去した後、反応に関与しなかった余分なアナライトを除去することを目的として0.05重量%のTween20を含むPBSバッファーを用いて充分に洗浄を行なった。さらに水洗した後に、風乾した。MOLECULAR IMAGER(BIO−RAD製)を用いて励起波長532nm及び蛍光波長555nmにて各スポットにおけるCy3の蛍光強度測定を行なった。
結果を図1に示す。図1において、ポリマーAを添加することにより生体物質構造体粒
子が形成されることにより、形成されていないものと比較してより高い蛍光強度を示した。
(2)生体物質構造体粒子含有組成物を用いて生体物質構造体粒子をシグナル増感試薬として用いた場合
実施例4(2)と同様に生体物質をストレプトアビジン、結合化合物をポリマーAとした生体物質構造粒子を製造した。樹脂製金蒸着基板を10mMシステアミン水溶液中に室温して24時間浸漬し、基板表面にアミノ基を導入した。そのアミノ基にビオチン基を導入するために、1μL の5mM Sulfo-NHS ビオチン水溶液を基板上に2箇所滴下した。室温にて30分反応後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。その後、1mL
の1M エタノールアミン-HCl (pH8.5)を添加しマスキング処理を室温にて30分間行った。
脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
ビオチンを導入した1箇所の領域に、調製したサンプル溶液を1μL滴下した。続いて、もう一方のビオチンを導入した1箇所の領域に1μL の1%ストレプトアビジン水溶液(pH7.4)を滴下した。滴下後、直ちに基板を湿潤箱に入れ、常温にて1時間反応させた。その後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
10μg/mL Cy5-ビオチン1mLを基板上に滴下し、直ちに湿潤箱に入れ、室温にて1時間
反応させた。その後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。蛍光検出装置を用いて蛍光測定を行った。その結果、ストレプトアビジン生体物質構造粒子を作用させたスポットの蛍光強度は、1220となった。一方、ストレプトアビジンのみを作用させたスポットの蛍光強度は、441となった。生体物質構造粒子化することで蛍光強度
が2.8倍程度向上することがわかった。
[実施例9 QCM測定における生体物質構造体粒子の反応性]
(1)生体物質構造体粒子を固定化した場合
実施例4(2)と同様に生体物質をストレプトアビジン、結合化合物をポリマーAとした生体物質構造粒子を製造した。QCM用金基板(Affinix社製)を10mM メルカプトヘキサ
デカン酸/エタノール溶液中に室温して24時間浸漬しSAM膜を構築させ、基板表面にカル
ボキシル基を導入した。そのカルボキシル基に結合官能基であるスクシンイミド基を導入するために、1mLの0.1M EDC(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩)と1mLの0.4 M NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)を混合した溶液を基板上に30μL滴下した。室温にて15分反応後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
QCMセンサー表面に生体物質構造体粒子を固定するために、上記で得られた30μLの生体物質構造体粒子含有液をセンサー表面上に滴下した。滴下後、直ちに湿潤箱の中に入れ、室温にて1時間静置した。その後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにてセンサー表面
を乾燥させた。続いて、1mLの3% BSA, 1M エタノールアミン-HCl (pH8.5)を滴下しマスキング処理を室温にて30分間行った。反応後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
生体物質構造体粒子を固定化したQCMセンサーチップをQCM装置に取り付けQCM測定を行
った。8mLのPBSをQCMキュベットに入れ、続いてQCMセンサーチップを浸漬させ、ベースラインの安定化を行った。ベースラインが安定化した後、標的物質としてビオチン化HRPを添加し、その相互作用をQCMシグナルから評価した。
直接ストレプトアビジンをセンサーチップ上に固定する方法と、ストレプトアビジン含有生体物質構造体粒子固定法のアナライト反応量比較を行った。
Biotin-HRP溶液インジェクト後の振動数変化を比較すると、直接ストレプトアビジンをセンサーチップ上に固定する方法の場合は−50 Hz、ストレプトアビジン含有生体物質構
造体粒子固定法の場合は-415 Hzであった。ストレプトアビジン含有生体物質構造体粒子
固定法の方が8.3倍の反応量を示した。次に、未処理のセンサーチップ及びストレプトア
ビジン固定後のセンサーチップの空気中の振動数を測定し、基板へのストレプトアビジン固定量を調べた。Sauerbrey式より導かれる−Δ1Hz =+Δ30 pgを当てはめて振動数変化から基板への固定量を算出すると、ストレプトアビジン溶液の場合、0.067 μg/cm2, ス
トレプトアビジン含有生体物質構造体粒子溶液の場合1.4 μg/cm2となった。ストレプト
アビジン含有生体物質構造体粒子の基板への固定量からストレプトアビジンのみの固定量を算出すると、ストレプトアビジン量 = 0.93 μg/cm2となった。すなわち、生体物質構
造体粒子を固定化していない場合と比較して、粒子を形成しているものの方が全体量にして21倍、ストレプトアビジン量にして14倍固定化されていることが分かった。
(2)生体物質構造体粒子含有組成物を用いて生体物質構造体粒子をシグナル増感試薬として用いた場合
実施例4(2)と同様に生体物質をストレプトアビジン、結合化合物をポリマーAとした生体物質構造粒子を製造した。QCM用金基板を10mMシステアミン水溶液中に室温して24
時間浸漬し、基板表面にアミノ基を導入した。そのアミノ基にビオチン基を導入するために、5mM Sulfo-NHS Biotin水溶液を基板上に30μL滴下した。室温にて30分反応後、脱イ
オン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。その後、10μLの1Mエタノー
ルアミン-HCl (pH8.5)を添加しマスキング処理を室温にて30分間行った。脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。ビオチンを導入したQCMセンサーチップ
をQCM装置に取り付けQCM測定を行った。8mLのPBSをQCMキュベットに入れ、続いてQC
Mセンサーチップを浸漬させ、ベースラインの安定化を行った。ベースラインが安定化した後、生体物質構造体粒子含有組成物を添加し、その相互作用をQCMシグナルから評価した。結果を図2に示す。
ストレプトアビジン含有生体物質構造体粒子を添加した際のQCM周波数の変動は、1700Hzとなった。一方、ストレプトアビジンのみを添加した際のQCM周波数の変動は、700Hzとなった。生体物質構造体粒子化することでQCM周波数の変動が2.4倍程度向上することがわかった。従って、本発明の生体物質構造体粒子含有組成物は増感粒子として使用できることが確認された。
[実施例10 提示物質を結合させた生体物質構造体粒子]
プロテインAによるIgGの提示
100μL の1% プロテイン A水溶液(pH9.4)と10μLの10% ポリマーA水溶液を混合し、密閉容器で室温にて3日間インキュベートした。その後、10μLの1M エタノールアミン-HCl (pH8.5)を添加しマスキング処理を室温にて30分間行った。
樹脂製金被覆基板を10mM メルカプトヘキサデカン酸/エタノール溶液中に室温して24
時間浸漬しSAM膜を構築させ、基板表面にカルボキシル基を導入した。そのカルボキシル
基に活性エステルであるスクシンイミド基を導入するために、1mLの0.1M EDCと1mLの0.4M
NHSを混合した溶液を基板上に1mL滴下した。室温にて15分反応後、脱イオン水にて洗
浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
樹脂製金被覆基板に生体物質構造粒子を固定するために、上記で作製した1μLの生体物質構造粒子含有液を基板上に滴下した。また、対照として1μLの1% プロテインA水溶液(pH9.4)を同一の基板上に滴下した。滴下後、直ちに湿潤箱の中に入れ、室温にて1時間静置した。その後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。続いて、1mLの3% BSA, 1M エタノールアミン-HCl (pH8.5)を滴下しマスキング処理を室温にて30分間行った。反応後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥させた。
50μg/mL Cy5蛍光標識マウスIgG 1mLを基板上に滴下し、直ちに湿潤箱に入れ、室温
にて1時間反応させた。その後、脱イオン水にて洗浄し、窒素フローにて基板表面を乾燥
させた。蛍光検出装置を用いて蛍光測定を行った。
その結果、Protein A含有生体物質構造粒子を固定化したスポットの蛍光強度は、457となった。一方、プロテインAのみを固定化したスポットの蛍光強度は、158となった。生体物質構造粒子とすることで蛍光強度が3倍程度向上することがわかった。
本発明の生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物は、産業上の広い範囲において用いることが可能である。具体的な用途としては、生体物質及び/又は提示物質と、その生体物質及び/又は提示物質と特異的に相互作用する標的物質との「相互作用」を利用した用途に用いることが好適である。
例えば、本発明の生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物は、生体物質と相互作用する作用物質を検出するバイオセンサーとして好適に使用できる。バイオセンサーの具体例としては、蛍光法、化学発光法、RI法、SPR(表面プラズモン共鳴)法、QCM(水晶発振子マイクロバランス)法、ピエゾ方式カンチレバー法、レーザー方式カンチレバー法、質量分析法、電気化学的方法によるセンサー、電極法、電界効果トランジスタ(FET)法、カーボンナノチューブを用いたFET及び/又は単一電子トランジスタ法などが挙げられる。この中でも、SPR法およびQCM法による検出は、簡便に検体を無標識で分析することができるため、好適に用いられる。
SPR法は、表面プラズモン波を誘起させるために、センサーチップの表面は、金属で被覆されているのが好ましい。金属としては、表面プラズモン波を誘起しうるものであればよく、金、銀、銅、アルミニウムおよびこれらを含む合金などが挙げられる。なかでも、感度や安価な点では銀が好ましく、安定性の面では金が好ましい。
さらに、本発明の生体物質構造体粒子及び粒子含有組成物は、アフィニティー粒子、ハイパーサーミア用薬剤、DDS(ドラッグデリバリーシステム)のための薬剤の表面処理、再生医療担体の表面処理、人工臓器の表面処理、カテーテルなどの医療用材料の表面処理、研究用バイオツールの表面処理等に適用可能である。

Claims (10)

  1. 生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物からなる主鎖を有するマトリックスを含んで形成され、重量平均粒径が1nm以上1000nm以下であり、粒径分布の重量平均/数平均が1.5以下であることを特徴とする粒子。
  2. 該生体物質と結合可能な化合物の少なくとも1種が、無電荷で、水に混和し得ると共に、分子中に該生体物質と結合可能な官能基を2つ以上有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の粒子。
  3. 該高分子化合物が、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマー及び該生体物質と結合可能な官能基を有するモノマーの共重合体である請求項2に記載の粒子。
  4. 該高分子化合物が、ポリエチレングリコールである請求項2に記載の粒子。
  5. 溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合し、0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌することにより製造される請求項1〜4のいずれかに記載の粒子。
  6. 該生体分子が、タンパク質であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粒子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子が溶媒中に分散したことを特徴とする組成物。
  8. 溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程を少なくとも含む請求項1〜4のいずれかに記載の粒子の製造方法。
  9. 溶媒、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物を、該生体物質に対する該化合物の重量比が0.1/100以上200/100未満の範囲となるように混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合液を0.5分以上溶媒の蒸発を防ぎながら静置もしくは攪拌するインキュベート工程と、
    該インキュベート工程で得られた粒子を緩衝液に分散させる分散工程を少なくとも含む請求項7に記載の組成物の製造方法。
  10. 請求項7に記載の組成物を塗布又は滴下した固定化担体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011099706A (ja) * 2009-11-04 2011-05-19 Mitsubishi Chemicals Corp 生体物質構造体粒子固定化担体
CN103086941A (zh) * 2012-12-19 2013-05-08 吉林大学 N-丙烯酰基琥珀酰亚胺及其合成方法
CN113711041A (zh) * 2019-03-26 2021-11-26 积水医疗株式会社 磁响应性颗粒和使用其的免疫测定方法、免疫测定试剂

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