JP2004317314A - バイオマイクロアレイ用基板およびバイオマイクロアレイ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、基板表面に、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有することを特徴とするバイオマイクロアレイ用基板を提供することにより上記目的を達成するものである。
【選択図】 無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA、ペプチド、タンパク質、多糖類、細胞または組織などのプローブ生体分子がアレイ状に配置されてなるバイオマイクロアレイとそれに用いるバイオマイクロアレイ用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオマイクロアレイ(バイオチップという場合もある。)は、ゲノム解析に役立ってきたDNAマイクロアレイのみならず、ペプチド、タンパク質、多糖類、細胞または組織などの生体分子を搭載したマイクロアレイに開発対象が拡大している。
【0003】
バイオマイクロアレイの分析には、高感度である点、多様な標識を入手できる点が評価され、一般に標識として試料に導入された蛍光分子の発光を解析する手法が用いられている。本手法による解析装置としては、共焦点顕微鏡の原理を用いてバイオマイクロアレイを1スポットごとに解析する高精度型の装置や検知機として電荷結合素子アレイなどを用い、ある領域中の複数のスポットを一度に解析する高スループット型の装置などがある。本手法において、データのS/N比を落とす原因としては、例えば、データ増幅・変換時に発生するノイズ、基板上のチリやガラス表面処理状態の不均一性によるバックグラウンド蛍光などが挙げられる。解析精度を上げるためには、これらのノイズに対する蛍光分子の発光によるシグナル強度を相対的に高めることが必要である。マイクロアレイ用基板として用いられるガラス基板は反射率が片面あたり4%程度であり、蛍光分子のシグナル強度を高める方法の一つとして、励起された蛍光を反射させることにより、検出器に取り込まれる蛍光分子のシグナル強度を高める技術が知られている。
【0004】
例えば、マイクロアレイ用基板において、プローブ生体分子を載せる面と反対側の面に均一に反射コーティングを施した基板が市販されている。
【0005】
しかしながら、このように単に反射を高める機能を有するだけでは、基板上に固定化されたプローブ生体分子が微量である場合や種類等によっては、検出される蛍光が十分に得られない場合があり、より高精度な解析を実現できるマイクロアレイ用基板の開発が求められている。
【0006】
なお、本発明に関する先行技術文献は、発見されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、標識としての蛍光が検出されやすくなることにより種々の解析の精度を向上させることのできるバイオマイクロアレイおよびそれに用いるバイオマイクロアレイ用基板を提供することを主目的とするものである。
【0008】
【課題が解決するための手段】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、基板上に特殊な構造を有する反射機能領域を設けることにより、励起光が散乱反射して蛍光分子が励起光を吸収できる機会を増やすことにより、また、励起された蛍光を反射することにより蛍光を検出しやすくすることができ、さらに、基板上にプローブ生体分子を高密度に集積させることが可能となるため、蛍光分子のシグナル強度が高められ、解析精度が飛躍的に向上することを見出して本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明においては、請求項1に記載するように、基板表面に、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有することを特徴とするバイオマイクロアレイ用基板を提供する。本発明は、基板表面に微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有することにより、励起された蛍光が検出されやすくなるため検出精度を高める効果と、基板表面に高密度にプローブ生体分子を集積することにより検出精度を高める効果との両方の効果により、検出精度を飛躍的に向上させるものである。
【0010】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、基板表面に反射層を形成することにより、上記反射機能領域を有するようにしたものであることが好ましい。基板表面に反射層を形成することにより、バイオマイクロアレイ用基板に上記のような反射機能領域を容易に付与することができるからである。
【0011】
上記請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記反射層が、パターン状に形成されていることが好ましい。反射層をパターン状に形成することにより反射機能領域を選択することができる。これにより蛍光分子の相対的なシグナル強度を高めることがきでき、解析精度をさらに向上させることができるからである。
【0012】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、基板上に、プローブ生体分子を固定化するための固定化層がパターン状に形成されていることが好ましい。プローブ生体分子の拡散を防止し、より高密度に集積することができると共に、不要なプローブ生体分子の吸着を防止して解析精度をさらに向上させることができるからである。
【0013】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項5に記載するように、基板上に位置検知用マークが形成されてなることが好ましい。基板にプローブ生体分子を固定化する場合や、その後の解析過程において、作業性を向上することができ、また、エラー率を低減することができるからである。
【0014】
本発明はまた、請求項6に記載するように、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のバイオマイクロアレイ用基板にプローブ生体分子が固定化されていることを特徴とするバイオマイクロアレイを提供する。本発明のバイオマイクロアレイ用基板を用いてなるバイオマイクロアレイは、蛍光分子のシグナル強度を高めることができ、また、定量性にも優れているため、高い解析精度が得られるといった効果を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明のバイオマイクロアレイ用基板とその製造方法について詳細に説明する。
【0016】
A.バイオマイクロアレイ用基板
本発明のバイオマイクロアレイ用基板は、基板表面に、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有することを特徴とするものであり、このような反射機能領域を有することにより、励起された蛍光が検出されやすくなるため検出精度を高める効果と、基板表面に固定化されたプローブ生体分子をより高密度とすることにより検出精度を高める効果との両方の効果が得られるものである。以下、まずこの反射機能領域について詳細に説明する。
【0017】
(反射機能領域)
本発明における反射機能領域は、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造を有することにより励起光(入射光)および標識としての蛍光を反射する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0018】
本発明のバイオマイクロアレイ用基板は、このような微細な凹凸構造または微細な多孔質構造により、照射された励起光を散乱反射させてプローブ生体分子に吸収される励起光の量を増やすことができるので、標識である蛍光の検出精度を向上させることができるという利点がある。これまで励起光は、バイオマイクロアレイ用基板に固定されたプローブ生体分子にほぼ垂直かまたは一定の角度で照射されるのが通常であり、バイオマイクロアレイ用基板に反射を高める機能を付与したとしても、励起光の照射量に対して検出される蛍光のシグナル強度には限界があったが、このような微細な凹凸構造または微細な多孔質構造を有することにより、励起光の有効利用を図ることができる。
【0019】
このような微細な凹凸構造または微細な多孔質構造は、蛍光を反射するものでもあるので、蛍光分子が発光した際、基板側に向かった蛍光を反射することにより、より蛍光の検出が容易となり、検出精度を大幅に向上させることができる。
【0020】
さらにまた、このような微細な凹凸構造または微細な多孔質構造により、表面積を大幅に増加させることが可能となり、表面上は同一の領域であっても、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造を形成することにより、より多くのプローブ生体分子を固定させることが可能となるので、検出精度を飛躍的に向上させることができるのである。
【0021】
本発明における反射機能領域を形成する方法としては、一般的には基板表面に反射層を形成する方法が挙げられるが、基板表面に対し反射機能領域を有するように加工したものであってもよい。このような反射機能領域は、上述のように微細な凹凸構造または微細な多孔質構造が、基板表面に固定化されるプローブ生体分子の密度を高めるはたらきを有することから、少なくとも基板のプローブ生体分子が固定される側の表面に形成されているのが好ましい。
【0022】
図1は、上述したような方法により、バイオマイクロアレイ用基板に特殊構造の反射機能領域を付与した例を示すものである。
【0023】
図1Aは、基板1上に反射層が形成され、その上にプローブ生体分子を固定化するための固定化層3が形成された例を示すものであり、図1Bは、基板1の表面に加工により反射機能領域4が形成され、その上に固定化層3が形成された例を示すものである。
【0024】
上記各層の間には種々の機能を有する層が形成されていてもよく、例えば、密着性を上げるための接着層が形成されていてもよい。
【0025】
本発明においては、このような反射機能領域が、基板全面にわたって形成されていてもよいが、より高い検出精度を得るために、パターン状に形成されていてもよい。なお、ここで反射機能領域は、上述した例に示すようないずれの態様であってもよく、これをパターン状に形成するとは、例えば基板の表面に形成された反射層がパターン状に形成されたもの等を例示することができる。
【0026】
本発明における反射機能領域のパターンとしては、プローブ生体分子が固定される領域(以下、プローブ生体分子固定領域とする場合がある。)のみに形成する態様と、プローブ生体分子固定領域とプローブ生体分子固定領域以外の領域の両方に形成する態様とがある。励起光を照射しつつ標識の蛍光を検出する際、プローブ生体分子固定領域のみに励起光が照射される場合は、上記態様の何れであってもよいが、励起光がたとえば基板全面などプローブ生体分子固定領域外も含めた領域に照射されている場合は、プローブ生体分子固定領域以外に照射された不要な励起光の反射が検出精度を低下させる要因となることから、プローブ生体分子が固定される領域のみに形成する態様であることが好ましい。
【0027】
本発明においてはさらに、上記反射機能領域がプローブ生体分子固定領域のみに形成する態様である場合、プローブ生体分子固定領域以外の領域を励起光の反射を抑制する機能を有する反射抑制機能領域とすることができる。このようにすることにより、励起光の照射の際に不要な励起光の反射による検出精度の低下を抑制することができると共に、プローブ生体分子固定領域では励起光および蛍光が反射され、蛍光分子の相対的なシグナル強度が高められ、検出精度をさらに向上させることができるからである。
【0028】
ここでこの反射抑制機能領域は、照射される励起光のうち蛍光分子に吸収されない不要な励起光の反射を抑制するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、励起光の透過率を高めることにより反射を抑制する反射防止層を形成する方法や、励起光を吸収することにより反射を抑制する光吸収層を形成する方法等により形成される。
【0029】
図2は、バイオマイクロアレイ用基板に反射機能領域と反射抑制領域とをパターン状に形成した例を示すものである。
【0030】
図2Aは、基板1上に反射層2が形成され、その上にプローブ生体分子を固定化するための固定化層3が形成され、基板1の逆側の表面には反射防止層5が形成された例を示すものである。また図2Bは、基板1上に反射層2が形成され、その上にプローブ生体分子を固定化するための固定化層3が形成され、基板1の逆側の表面には光吸収層6が形成された例を示すものである。これらの各層の間には種々の機能を有する層が形成されていてもよく、例えば、密着性を上げるための接着層が形成されていてもよい。また、反射防止層5および光吸収層6は、単一の層からなるものであってもよく、複数の層からなるものであってもよい。特に、反射防止層5が複数の層からなる場合には、通常、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層して構成される。
【0031】
このように、プローブ生体分子固定領域を反射機能領域とし、プローブ生体分子固定領域以外の領域を反射抑制機能領域とする方法としては、例えば、基板の生体分子を固定する側の表面に反射層をパターニングして反射機能領域を形成し、逆側の表面に光吸収層をパターニングすることにより反射抑制機能領域を形成するようにし、この際同じフォトマスクを用い、一方をポジ型フォトレジストでパターニングし、他方をネガ型フォトレジストでパターニングする方法等を挙げることができる。
【0032】
(反射層)
本発明に用いられる反射層は、上記反射機能を有するものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いられる反射層の励起光(入射光)または蛍光に対する反射率としては、好ましくは15%以上の範囲であり、より好ましくは30%以上の範囲である。
【0033】
この反射層が微細な凹凸構造または微細な多孔質構造を有するものである場合の例を図3および図4を用いて説明する。
【0034】
図3AおよびBは、基板1上に形成された微細な凹凸構造を有する反射層2の一例を示す模式図である。このように微細な凹凸構造は、平坦な層をエッチング等により凹凸を形成したものであってもよく、また種々の形状の微粒子を一層配置して形成したものであってもよい。これらの微細な凹凸構造を有する反射層は、後述する高反射率材料そのものが凹凸状にエッチングされていたり微粒子状である場合と、凹凸状にエッチングされた基板の上にポリマーやシリカなどの適当な微粒子が一層配置された基板の上に高反射率層が形成される場合とがある。
【0035】
図4AおよびBは、基板1上に形成された微細な多孔質構造を有する反射層2の一例を示す模式図である。このように微細な多孔質構造は、多孔質層を用いたものであってもよく、種々の形状の微粒子を複数層積層して形成したものであってもよい。
【0036】
まず、微細な凹凸構造について説明する。本発明に用いられる微細な凹凸構造は、上述したように平坦な膜をエッチング等により凹凸を形成したものや、微粒子を一層配置したものを挙げることができる。
【0037】
微粒子を用いて微細な凹凸構造とする場合は、その平均粒径は、1000nm以下が望ましく、さらに望ましくは30nm以上800nm以下の範囲内である。1000nmを超える粒子を用いた場合、特に共焦点顕微鏡方式の場合に焦点が合わなくなる傾向があり検出感度が低下する原因となるので好ましくない。また、高反射率材料は比重が大きいので、後述する湿式プロセスを用いて高反射率材料微粒子で凹凸構造を形成する場合は、微粒子の分散媒中での沈降が大きなプロセス上の問題となるため1000nmを超える粒子は不適当である。上記平均粒径は、電子顕微鏡により、個々の粒径を計測し、それらの値の平均値を平均粒径として規定した。
【0038】
高反射率材料から成る微粒子としては、入射光が照射された際にバルクの反射率として高い反射率を示す微粒子であれば特に限定されるものではない。
【0039】
具体的に用いることができる微粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等の金属微粒子やCaCO3、TiO2、ZnOおよびZnAl2O4等の白色系の金属酸化物微粒子等が挙げられる。材料の安定性で選択するならば、金、銀、白金などの貴金属、低コスト性で選択するならば、CaCO3、TiO2など汎用の金属酸化物微粒子が好ましい。
【0040】
一方、高反射率材料から成る平坦な層を形成する方法は特に限定されるものではなく、通常行われる方法により形成され、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の乾式法、電解めっき法、無電解めっき法や、塗布法等を挙げることができる。
【0041】
このような微細な凹凸により反射層とした際に用いられる材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等の金属材料や、CaCO3、TiO2、ZnOおよびZnAl2O4等の白色系の金属酸化物材料等を用いることができる。
【0042】
上記微細な凹凸構造を形成する方法としては、サブトラクティブ法とアディティブ法に大別される。サブトラクティブ法とは材料のエッチングによる方法である。エッチングによるものとしては、例えばサンドブラスト法がある。基板そのものを凹凸状にエッチングする場合で且つその基板が有機高分子や有機無機複合材料である場合は、酸素プラズマ処理を用いることもできる。一方、アディティブ法とは、材料を凹凸構造となるように基材上に成膜する方法である。乾式プロセスとしてはスパッタリング法、蒸着法などが挙げられる。湿式プロセスとしては、粒子を含むコーティング液を用いて、吸着法、スプレー法、ディップコーティング法などにより成膜する方法等を挙げることができる。また、電解めっき法や光重合法(通称2P法)により微細凹凸を形成することも可能である。その他、基板に対して微細な凹凸を有する型を押し当てることにより基板表面に微細な凹凸を形成する方法(インプリント法)もある。
【0043】
高反射率材料に凹凸構造を形成する場合、下地に凹凸構造を形成した後に高反射率層を形成する場合ともに、高反射率凹凸構造の深さは、30nm〜1000nmの範囲内が望ましい。また、凹凸のピッチ(隣り合う凹部間または凸部間の平均距離)は30nm〜2000nmの範囲内が望ましい。
【0044】
一方、微細な多孔質構造として、多孔質層を用いる場合は、連通孔を有し、孔径が3nm〜1000nmの範囲内、特に10nm〜800nmの範囲内である材料を用いることができる。
【0045】
このような材料を形成する方法としては、交互吸着法や粒子沈降法などの微粒子積層体を形成する方法を好適に用いることができる。粒子としては、材料の安定性で選択するならば、金、銀、白金などの貴金属、低コスト性で選択するならば、CaCO3、TiO2など汎用の金属酸化物微粒子が好ましい。平均粒径は、1000nm以下が望ましい。また、微粒子積層体を鋳型として多孔質材料を形成することもできる。この鋳型となる微粒子はシリカやポリマーなどから成るものが好適である。具体的な作製方法は、鋳型となる微粒子積層体を形成した後に、無電解めっきや電解めっき等により空隙に金などを析出させ、その後、鋳型微粒子を選択的に除去するという方法である。
【0046】
また、微粒子を積層させて形成する場合に用いる微粒子の大きさは、その平均粒径は1000nm以下が望ましく、さらに望ましくは10nm〜800nmの範囲内である。その他材料等は上記微細な凹凸構造のものと同様である。
【0047】
(反射防止層)
本発明においては、上述したように反射抑制機能領域をパターン状に形成する際には、反射防止層を形成し、これをパターニングするのが一般的である。
【0048】
このような反射防止層としては、励起光の透過率が高いものであれば特に限定されるものではないが、屈折率が基板より小さく、かつ、入射光の散乱を防止するのに十分な厚さを有していることが好ましい。
【0049】
反射防止層の形成方法は、特に限定されるものではなく通常行われる方法により形成され、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の乾式法や、塗布法等を挙げることができる。
【0050】
このような反射防止層に用いられる材料としては、低屈折率層としては酸化珪素や弗化マグネシウムなどを挙げることができ、高屈折材料としては酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ITO等が挙げられる。
【0051】
(光吸収層)
光吸収層は、励起光を吸収する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、光吸収層に達した励起光の吸収率が50%以上、特に90%以上のものが好適に用いられる。
【0052】
このような光吸収層は、固定化層側に配置される場合には、反射防止層と同様にプローブ生体分子を高密度に集積する観点から微細な多孔質構造を有するものが好ましい。
【0053】
光吸収層が平坦構造を有する場合、このような光吸収層を形成する方法としては、入射光を吸収する塗料を基材に塗布する方法を挙げることができる。着色ガラスや着色プラスチックをそのまま基板として用いることも可能である。光吸収剤は、試料に標識された蛍光分子からの蛍光スペクトルと光吸収剤からの蛍光スペクトルが互いに重ならず、かつ励起光を吸収する性質を有する材料でなければならない。励起光による光吸収剤からの蛍光が無いのが特に好ましい。このような材料としては、黒鉛、フラーレンなどを挙げることができる。バインダーとしては、一般的なバインダー樹脂を用いることができる。また、微細な多孔質構造を有する光吸収層は、酸素プラズマ法などの、バインダー樹脂のみを選択的に除去することができる方法や交互吸着法などにより得ることができる。
【0054】
(基板)
本発明に用いられる基板の材料としては、それぞれの用途に応じた要求特性を満たす材料が選択される。具体的には、アルミニウム、銅、ステンレス、亜鉛などの金属、シリコンなどの半導体、酸化チタンやガラスなどの無機物、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の高分子物質を主成分とするフィルムなどを挙げることができるが、通常はガラスや高分子材料等の透明材料が用いられる。
【0055】
本発明においては、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域をバイオマイクロアレイ用基板に付与するために、上述のように別途層を設けるのではなく、基板自体が上記反射機能領域を有するものであってもよい。このような微細な凹凸構造もしくは微細な多孔質構造は、上述した方法により形成することができ、高集積化の観点から、少なくともプローブ生体分子が固定される側に形成されているのが好ましい。
【0056】
(固定化層)
本発明に用いられる固定化層は、プローブ生体分子を固定化するために基板上に設ける薄膜である。このような固定化層は、例えば、基板表面をアルカリ洗浄し、リンスすることにより表面をマイナスに帯電させ、これにポリ−L−リシンなどの固定化剤を吸着させることにより表面をプラスに帯電させ、遠心機により不要なポリ−L−リシンを取り除いて乾燥させることにより形成される。また、基板表面にアミノ基を有する活性分子を化学蒸着する方法もある。活性分子としては、例えばアミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。さらには、アルデヒド基や活性エステル基などを含有する高分子材料の吸着層を形成する方法もある。
【0057】
なお、固定化層の厚さは、前述のように基板上に凹凸構造の反射防止層または光吸収層が形成される場合や、基板表面自体に凹凸構造を形成することにより、表面積を拡大し、プローブ生体分子を高密度に集積するという目的を損なわない範囲内であることが好ましい。具体的には、平均凹凸深さの1/3以下または平均孔径の1/3以下の厚みであることが望ましく、更に望ましくは、単分子層(分子吸着層)級の厚みである。
【0058】
本発明においては特に、基板上に、少なくとも2種類の異なる表面自由エネルギーを有する領域がパターン状に配置されてなることが好ましい。すなわち、固定化層がパターニングされており、かつ固定化層と基板表面との表面自由エネルギーが異なるものであることが好ましい。ここで表面自由エネルギーとは、単位面積の表面を作り出すのに必要なエネルギー(erg・cm−2)をいい、表面分子が受ける内方に引かれる力の指標となるものである。
【0059】
さらに、そのような異なる表面自由エネルギーを有する領域が、プローブ生体分子との濡れ性が高い第1の表面自由エネルギーを有する独立した複数の領域と、その周囲に配置されたプローブ生体分子との濡れ性が低い第2の表面エネルギーを有する連続した領域とから構成されてなることが好ましい。このように固定化層と基材表面との表面自由エネルギーの差を利用することにより、搭載されたプローブ生体分子の拡散を防止し、より高密度に集積することが可能となると共に、不要なプローブ生体分子の吸着を防止して解析精度を更に高めることができるからである。
【0060】
このような異なる表面自由エネルギーを有する領域としては、例えば、親水性領域と疎水性領域、帯電している領域と帯電していない領域、プローブ生体分子との共有結合が可能な領域と共有結合が不可能な領域など種々のパターンが可能である。
【0061】
このように基板上に異なる表面自由エネルギーを有する領域をパターン状に形成する方法としては、上述のようにポリ−L−リシン等の固定化剤からなる薄膜を形成した後、光触媒技術、エッチング法またはフォトリソグラフィ法等を用いて所望のパターンを形成する方法等が挙げられる。ここで光触媒技術とは、特開2002−274077号公報、特開2000−249821号公報等に記載の方法をいう。
【0062】
また、マイクロコンタクト印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法などの印刷法によっても基板上に異なる表面自由エネルギーを有する領域をパターン状に形成することが可能である。
【0063】
B.バイオマイクロアレイ
本発明のバイオマイクロアレイは、上述した本発明のバイオマイクロアレイ用基板にプローブ生体分子が結合してなることを特徴とするものである。本発明のバイオマイクロアレイは、反射機能を有するバイオマイクロアレイ用基板を用いることにより、蛍光ラベルのシグナル強度が相対的に高められ、高い解析精度を得ることができる。また、本発明のバイオマイクロアレイは、反射層に特定の構造を採用することにより、反射機能のみならずプローブ生体分子を高密度に集積する機能をも付与することができるので、高い感度を得ることができる。さらに、本発明のバイオマイクロアレイは、反射抑制機能と反射機能とがパターン状に形成されたバイオマイクロアレイ用基板を用いることにより、蛍光ラベルのシグナル強度を高めると共に、不要な励起光の反射を抑えることができるので、さらに優れた解析精度を得ることができるなど種々の利点を有するものである。
【0064】
スポッティング法は、マイクロアレイ用基板上にプローブ生体分子を含む溶液をスポットするためのスポッティング工程と、スポットを固定化するための後処理工程とからなるものである。
【0065】
スポッティング工程において用いられるプローブ生体分子を含む溶液(または分散液)は、予め調製したものでも良く、プローブ生体分子と溶媒とを別々にスポットし、基板上で調製するのでも良い。プローブ生体分子溶液の濃度は、通常の範囲内であれば特に限定されるものではない。また、プローブ生体分子を溶解するための溶媒は、生体分子に不活性なものであれば良く、用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0066】
マイクロアレイ用基板上に形成されるスポット径は、用途に応じて異なるものではあるが、定量性および解析効率の観点から50μmφ〜400μmφの範囲内であることが好ましい。
【0067】
後処理工程においては、例えば、スポット形状を整える処理を行った後、UV照射を行うことによりプローブ生体分子をクロスリンクさせてマイクロアレイ用基板との結合を強化する。
【0068】
次に、後処理溶液に浸漬してプローブ生体分子の非搭載部をマスクする。後処理溶液は用途に応じて適宜選択すれば良い。例えば、無水コハク酸、N−メチルピロリジノン、0.2Mホウ酸ナトリウム(pH8.0)等が挙げられる。続いて、95℃の蒸留水、95%エタノールで洗浄することによりマイクロアレイ用基板上に付着した不要な試料を取り除き、遠心処理し、乾燥させることによりマイクロアレイを得る。
【0069】
また、マイクロアレイ用基板にプローブ生体分子を結合させる方法としては、上記スポッティング法の他、インクジェット方式やノズル方式等を用いることも可能である。
【0070】
また、先にも記載したように、生体分子としてはDNAのみならず、RNA、ペプチド、タンパク質、多糖類、細胞または組織などの生体分子などを用いることが可能である。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0073】
[実施例1]
(基材表面の凹凸化)
10000番のアルミナ粉を用いてサンドブラスト法によりポリスチレン基板を粗面化した。表面粗さ計を用いて計測した結果、凹凸の平均的深さは凡そ600nm、凸部間の平均的距離は凡そ1730nmであった。
【0074】
(凹凸化基材への反射層の形成)
上記凹凸化基板上へ金を蒸着し、反射層を形成した。
【0075】
(反射層付き基材への固定化層の形成)
上記反射層付き基材をポリ−L−リシンの0.1%溶液に10分間浸し、次いでイオン交換水で2分間洗浄した。この操作により、分子層レベルのポリ−L−リシンからなる固定化層を形成することができた。表面粗さ計を用いて計測した結果、凹凸の平均的深さは凡そ510nm、凸部間の平均的距離は凡そ1410nmであった。これら一連の操作によりマイクロアレイ用基板を得ることができた。
【0076】
[実施例2]
(基材表面の凹凸化)
先ずポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)の0.4%溶液、平均粒子径が120nmのシリカ粒子分散液、イオン交換水を用意した。市販のスライドガラスを洗浄後、2分間PDDA溶液に浸してPDDAをスライドガラス上に吸着させた。次いで、不要なPDDAを除去するためにイオン交換水で2分間洗浄した。次に凹凸を形成するためにシリカ粒子分散液に2分間浸し、シリカ粒子を吸着させた後、pH10に調整したイオン交換水で4分間洗浄した。この操作により、反射防止層としても機能する凹凸を基板両面に形成した。
【0077】
(凹凸基材への反射層の形成)
上記基板の片面にアルミニウムを約50nm蒸着し、反射層を形成した。
【0078】
(反射層付き基材への固定化層の形成)
実施例1と同様にして上記基材に固定化層を形成した。これら一連の操作により裏面に反射防止層が形成され表面に固定化層と反射層が形成されたマイクロアレイ基板を得ることができた。
【0079】
【発明の効果】
本発明のバイオマイクロアレイ用基板は、基板表面に微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有するので、励起された蛍光が検出されやすくなるため検出精度を高める効果と、基板表面に高密度にプローブ生体分子を固定化することにより検出精度を高める効果との両方の効果により、検出精度を飛躍的に向上させるという効果を有する。
【0080】
また、このような反射機能領域をパターン状に形成することにより、反射機能領域を選択することができ、プローブ生体分子固定領域にのみ反射機能領域を形成することにより、精度低下要因である不要な励起光の反射を抑制し、標識としての蛍光が検出されやすくなることにより、検出精度をさらに向上させることができるという効果を有する。
【0081】
さらにまた、プローブ生体分子固定領域に反射機能領域を形成し、プローブ生体分子固定領域以外の領域に反射抑制機能領域を形成することにより、蛍光の相対的なシグナル強度を高めることにより、検出精度を大幅に向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバイオマイクロアレイ用基板の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のバイオマイクロアレイ用基板の一例を示す模式図である。
【図3】本発明における反射防止層の一例を示す模式図である。
【図4】本発明における反射防止層の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ・・・ 基板
2 ・・・ 反射層
3 ・・・ 固定化層
4 ・・・ 反射機能領域
5 ・・・ 反射防止層
6 ・・・ 光吸収層
Claims (6)
- 基板表面に、微細な凹凸構造または微細な多孔質構造からなる反射機能領域を有することを特徴とするバイオマイクロアレイ用基板。
- 基板表面に反射層を形成することにより、前記反射機能領域を有するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバイオマイクロアレイ用基板。
- 前記反射層が、パターン状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバイオマイクロアレイ用基板。
- 基板上に、プローブ生体分子を固定化するための固定化層がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のバイオマイクロアレイ用基板。
- 基板上に、位置検知用マークが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のバイオマイクロアレイ用基板。
- 請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のバイオマイクロアレイ用基板にプローブ生体分子が固定されていることを特徴とするバイオマイクロアレイ。
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