JP2006201091A - 捕捉ビーズ用マイクロ粒子およびそれを用いた捕捉ビーズならびにバイオチップ - Google Patents

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Abstract

【課題】 表面に固定化した生理活性物質と検体溶液中の検出目的となる生理活性物質との反応効率が高く、流路内で滞ることなく流路内での移動や充填が容易な捕捉ビーズを提供する。
【解決手段】 捕捉ビーズの表面に、ホスホリルコリン基を有する第一単位と、電子求引性の置換基がカルボニル基に結合されてなるカルボン酸誘導基を有する第二単位と、を含む高分子物質が被覆されている。そして、カルボン酸誘導基と、生理活性物質を捕捉する捕捉物質とが反応して、共有結合を形成しており、生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されている。この捕捉ビーズを用いて試験液中の前記生理活性物質の処理を行う。
【選択図】 なし

Description

本発明は、捕捉ビーズ用マイクロ粒子およびそれを用いた捕捉ビーズならびにバイオチップに関する。
遺伝子活性の評価や疾患プロセス、薬効効果の生物学的プロセスを含む生物学的プロセスを解読するための試みは、伝統的に、ゲノミクスに焦点が当てられてきたが、プロテオミクスは、細胞の生物学的機能についてより詳細な情報を提供する。プロテオミクスは、遺伝子レベルというよりむしろ、タンパク質レベルでの発現を検出し、定量することによる、遺伝子活性の定性的かつ定量的な測定を含む。また、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質間の相互作用など遺伝子にコードされない事象の研究を含む。
膨大なゲノム情報の入手が可能となった今日、プロテオミクス研究は益々迅速効率(ハイスループット)化が求められている。この目的として、DNAマイクロアレイやプロテインチップが提唱され研究が進められている。
マイクロアレイとしてはスライド状のものを用いるのが一般的であるが、他に、マイクロビーズを用いるビーズアレイが提唱されている(特許文献1)。また、微細流路中でビーズを用いた免疫分析を行う技術が提案されている(特許文献2)。
特開2003−121436 特開2001−004628 泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇道典著、「ペプチド合成の基礎と実験」、1985年発行、丸善
ところが、上記特許文献1および2に記載の技術は、以下の点で改善の余地があった。
まず、ビーズアレイや微細流路内での免疫分析を行なう際に用いられるマイクロビーズとしては、大きさが10〜500μm程度の大きさのものが用いられるが、このような大きさのビーズの取り扱いの際に、流路壁面にビーズが付着したり、ビーズが凝集し、流路内に滞ったりするという不具合が生じる場合があった。また、DNAにおけるハイブリダイゼーションや抗原抗体反応について、反応効率が高く、高いシグナルが得られるビーズが切望されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面に固定化された物質と検体溶液中の検出目的となる生理活性物質との反応効率が高く、流路内での移動または充填が容易な捕捉ビーズを提供する。
本発明によれば、
生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化され、捕捉ビーズ用担体として使用されるマイクロ粒子であって、
ホスホリルコリン基を有する第一単位と、電子求引性の置換基がカルボニル基に結合されてなるカルボン酸誘導基を有する第二単位と、を含む高分子物質が、表面に被覆されていることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子が提供される。
また、本発明によれば、
生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化され、捕捉ビーズ用担体として使用されるマイクロ粒子であって、
ホスホリルコリン基を有する第一単位と、下記式(1)に示される一価の基を有する第二単位と、を含む高分子物質が、表面に被覆されていることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子が提供される。
−COA (1)
(ただし、上記式(1)において、Aは水酸基およびアルコキシル基を除く一価の脱離基である。)
本発明の捕捉ビーズ用マイクロ粒子では、粒子表面に被覆されている高分子物質がカルボン酸誘導基もしくは上記式(1)で示される基と、ホスホリルコリン基とを有する。このため、生理活性物質をはじめとする試験液中の成分が粒子表面に非特異的吸着したり、粒子同士が凝集したりすることを抑制しつつ、カルボン酸誘導基もしくは上記式(1)で示される基の求核反応により捕捉物質を化学的に高分子物質に固定化することができる。よって、生理活性物質を選択的に効率よく粒子表面に捕捉させることができる。したがって、捕捉ビーズ用担体として好適に用いることができる。なお、カルボン酸誘導基の具体的構成については後述する。
なお、本明細書において、捕捉ビーズとは、所定の生理活性物質を特異的吸着により捕捉することができるμmオーダーの粒子(ビーズ)である。本発明の捕捉ビーズは、捕捉ビーズ用担体として使用される捕捉ビーズ用マイクロ粒子に、生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されてなり、捕捉物質との特異的吸着を有する生理活性物質をビーズ表面に捕捉する。この捕捉ビーズは、たとえば、試験液中の生理活性物質の、試験液からの単離、特定、検出、定量、もしくはその他の分析等の処理に用いられる。
また、本発明において、高分子物質が粒子の表面を被覆しているとは、少なくとも粒子の表面の一部を被覆していればよい。高分子物質が粒子表面全体を被覆している構成とすることにより、粒子表面への非特異的吸着または粒子同士の凝集をより一層確実に抑制することができる。
また、生理活性物質を捕捉する捕捉物質は生理活性を有することができる。また、捕捉物質は、生理活性物質を有する分子であってもよい。この分子は単独で生理活性物質を捕捉することもできるし、複数の分子で生理活性物質を捕捉することもできる。
本発明によれば、
粒子表面に生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており、試験液中の前記生理活性物質の処理に用いられる捕捉ビーズであって、
前記捕捉ビーズ用マイクロ粒子の前記カルボン酸誘導基と、前記捕捉物質とが反応して、共有結合を形成していることを特徴とする捕捉ビーズが提供される。
また、本発明によれば、
粒子表面に生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており、試験液中の前記生理活性物質の処理に用いられる捕捉ビーズであって、
前記捕捉ビーズ用マイクロ粒子の前記式(1)で示される一価の基と、前記捕捉物質とが反応して、共有結合を形成していることを特徴とする捕捉ビーズが提供される。
本発明の捕捉ビーズでは、ホスホリルコリン基を有する高分子物質が表面に被覆されている。このため、試験液と接触した際に、生理活性物質をはじめとする試験液中の成分が粒子表面に非特異的吸着することが抑制された構成となっている。また、粒子表面の高分子物質中のカルボン酸誘導基もしくは上記式(1)で示される基と捕捉物質とが反応して共有結合を形成している。このため、補足物質が粒子表面に安定的に固定化された構成となっている。したがって、この捕捉ビーズによれば、所定の生理活性物質を選択的に効率よく粒子表面に捕捉することができる。また、試験液中の生理活性物質の単離、特定、検出、定量、もしくはその他の分析等の処理を確実に行うことができる。
また、本発明の捕捉ビーズにおいては、ホスホリルコリン基を有する高分子物質が表面に被覆されているため、粒子同士の凝集が抑制された構成となっている。このため、分散安定性や流動性が充分に確保された構成となっている。よって、本発明の捕捉ビーズは、流路中で使用する際の流路の目詰まりを抑制し、流動性を向上させることができる。また、捕捉ビーズの粒径が小さすぎると、流路中で目詰まりを起こしたり、流路中にせき止めておくことが困難となったりすることにより、実験の再現性が低下する懸念がある。これに対し、本発明の捕捉ビーズは、捕捉ビーズ用マイクロ粒子を有するため、流路中に安定的にせき止めておくことができる。さらに具体的には、本発明の捕捉ビーズが設けられた流路に試験液を流し、連続的に試験液を処理することができる。こうすれば、試験液中の生理活性物質をさらに効率よく粒子表面に捕捉することができる。また、捕捉ビーズの表面に固定化された補足物質との相互作用が選択的に効率よくなされることにより、試験液中の生理活性物質の特定、検出、または定量等の精度を向上させることができる。さらに、捕捉ビーズ用マイクロ粒子を有する構成とすることにより、ビーズアレイとして顕微鏡観察することができる。このため、試験液中の生理活性物質の検出手順を簡素化することができる。
本発明によれば、流路と、前記流路中に設けられた捕捉ビーズと、を含み、前記捕捉ビーズが前記捕捉ビーズであることを特徴とするバイオチップが提供される。
本発明のバイオチップは、流路中に前述した捕捉ビーズが設けられた構成となっている。そして、本発明の捕捉ビーズは、表面に補足物質が固定化されている。また、この捕捉ビーズは、分散安定性および流動性に優れ、流路中での扱いが容易であり、流路内で滞ることなく流路内での移動や充填が容易な構成となっている。このため、本発明のバイオチップによれば、生理活性物質を含む試験液を流路中に導入することにより、捕捉ビーズに固定された補足物質に生理活性物質を捕捉させることができる。よって、生理活性物質の特定、検出、定量や、その他の処理を確実に行うことができる。さらに具体的には、生理活性物質の検出においては、シグナルが高くかつ、バックグラウンドとなるブランクにおけるシグナルが低く、高感度な検出が可能となる。
本発明のバイオチップにおいて、前記流路が基板に設けられるとともに、前記捕捉ビーズの透過を制限するせきが前記流路に設けられている構成とすることができる。こうすることにより、流路の所定の領域に、捕捉ビーズを確実にせき止めて保持しておくことができる。よって、生理活性物質の特定、検出、定量やその他の処理をより一層安定的に行うことができる。
本発明によれば、表面に固定化された物質と検体溶液中の検出目的となる生理活性物質との反応効率が高く、流路内での移動または充填が容易な捕捉ビーズを提供する技術が実現される。
以下、生理活性物質を捕捉する捕捉物質が捕捉ビーズ用マイクロ粒子に固定化された捕捉ビーズを用いて、試料中の生理活性物質の検出または定量を行う場合を例に、本発明の実施形態について説明する。ここで、試料は、たとえば所定の生理活性物質を含む液体とすることができ、さらに具体的には、生体試料とすることができる。
捕捉ビーズ用マイクロ粒子は、捕捉ビーズ用担体として使用される粒子であって、ホスホリルコリン基を有する第一単位と、電子求引性の置換基がカルボニル基に結合されてなるカルボン酸誘導基を有する第二単位と、を含む高分子物質が、表面に被覆されている。このような高分子物質の被覆を有するため、本実施形態の捕捉ビーズ用マイクロ粒子は、粒子表面に存在するホスホリルコリン基が試料中の生理活性物質等の非特異的吸着を抑制するとともに、カルボン酸誘導基部分を介して生理活性物質を補足する捕捉物質を容易に固定化できる。
捕捉ビーズ用マイクロ粒子および捕捉ビーズは、セルソータでの認識が可能な大きさである。また、μm〜mmオーダーの流路幅、さらに具体的には200μm程度の流路幅を有する微細流路を用いた分析に適当な形状および大きさである。捕捉ビーズ用マイクロ粒子を担体とする捕捉ビーズは、非特異的吸着の抑制とともに、粒子同士の凝集も抑制することができる。このため、微細流路中で使用した際にも、流路の目詰まりを抑制し、生理活性物質を効率よく捕捉することができる。
捕捉ビーズおよび捕捉ビーズ用マイクロ粒子の形状は、球状とすることができる。球状とすることにより、生理活性物質の検出反応において生じる誤差を低減させることができる。また、流路中での流動性をさらに安定化することができる。また、微細流路中等で使用した際に粒子同士が衝突した場合にも破損を抑制し、粒子の耐久性を向上させることができる。
捕捉ビーズ用マイクロ粒子および捕捉ビーズの直径(数平均粒径)は、たとえば10μm以上、好ましくは20μm以上とすることができる。こうすることにより、流路中で使用する際に、流路の所定の位置に安定的にせき止めておくとともに、目詰まり等の発生をさらに好適に抑制することができる。また、セルソータにてより一層確実に認識可能な構成とすることができる。また、これらの直径(数平均粒径)は、たとえば500μm以下、好ましくは100μm以下とすることができる。こうすることにより、微細流路中への充填率を向上させることができる。また、粒子の比表面積をさらに向上させて、生理活性物質の検出反応における感度をさらに向上させることができる。また、捕捉ビーズの直径をμmオーダーとすることにより、使用後の捕捉ビーズをビーズアレイとして顕微鏡観察することができる。このため、試験液中の生理活性物質が捕捉されることにより生じる粒子表面の変色等の変化を観察することにより、生理活性物質の検出を簡便に行うことができる。
また、本実施形態の捕捉ビーズにおいて、補足物質が固定されていないカルボン酸誘導基が不活化されていてもよい。こうすれば、ホスホリルコリンの効果であるタンパクをはじめとする生理活性物質の非特異的吸着を防止することが可能になる。また、ホスホリルコリン基により捕捉ビーズ同士の付着が抑制される。この理由は、ホスホリルコリン基により、捕捉ビーズ表面が親水化されて親水化度が高くなることによると推察される。
以下、捕捉ビーズ用マイクロ粒子および捕捉ビーズの構成部材についてさらに詳細に説明する。
(高分子物質)
ホスホリルコリン基を含む第一単位とカルボン酸誘導基を含む第二単位とを有する高分子物質は、生理活性物質の非特異的吸着を抑制する性質と生理活性物質を補足する捕捉物質を固定化する性質とを併せ持つポリマーである。第一単位に含まれるホスホリルコリン基は生理活性物質の非特異的吸着を抑制する役割を果たし、第二単位に含まれるカルボン酸誘導基は捕捉分子を化学的に固定化する役割を果たす。
第一の単位は、たとえば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホリルコリン基;
2−メタクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン基および10−メタクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン基等の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキルホスホリルコリン基;
アリルホスホリルコリン基、ブテニルホスホリルコリン基、ヘキセニルホスホリルコリン基、オクテニルホスホリルコリン基、およびデセニルホスホリルコリン基等のアルケニルホスホリルコリン基;
等の基を有し、ホスホリルコリン基がこれらの基中に含まれている構成とすることができる。
また、これらの基のうち、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましい。第一単位が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを有する構成とすることにより、捕捉ビーズの表面への生理活性物質の非特異的吸着をより一層確実に抑制することができる。
カルボン酸誘導基は、カルボン酸のカルボキシル基が活性化されたものであり、C=Oを介して脱離基を有するカルボン酸由来の基である。カルボン酸誘導基は、具体的には、アルコキシル基よりも電子求引性の高い基がカルボニル基に結合されてなる。カルボン酸誘導基は、電子吸引性基の高い基の結合により、求核反応が活性化された基であり、具体的には、アミノ基、チオール基、または水酸基等に対する反応性を有する基である。
活性化されたカルボン酸誘導体として、さらに具体的には、カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基が、酸無水物、酸ハロゲン化物、活性エステル、活性化アミドに変換された化合物が挙げられる。カルボン酸誘導基は、こうした化合物に由来する活性化された基であり、たとえば、p−ニトロフェニル基やN−ヒドロキシスクシンイミド基等の活性化されたエステル基(活性エステル基);
コハク酸イミド基やフタル酸イミド基等のイミド基;
―Cl、−F等のハロゲン;
等の基を有することができる。なお、活性エステル基の定義および具体例については、さらに詳細に後述する。
また、カルボン酸誘導基は、下記式(1)に示される基とすることができる。
−COA (1)
(ただし、上記式(1)において、Aは水酸基およびアルコキシル基を除く脱離基である。)
上記式(1)に示される一価の基は、たとえば下記式(p)または式(q)から選択されるいずれかの基とすることができる。
−COOCR1 (p)
−COONR2 (q)
(ただし、上記式(p)および式(q)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、一価の有機基であり、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。また、上記式(p)において、R1はCとともに環を形成する二価の基であってもよい。また、上記式(q)において、R2はNとともに環を形成する二価の基であってもよい。)
上記式(p)に示される基として、たとえば下記式(r)、(s)、および(w)に示される基が挙げられる。また、上記式(q)に示される基として、たとえば下記式(u)、(v)に示される基が挙げられる。
上記式(1)に示される基は、たとえば下記式(r)、式(s)等に示される酸無水物由来の基;
下記式(t)に示される酸ハロゲン化物由来の基;
下記式(u)、式(w)に示される活性エステル由来の基;または
下記式(v)に示される活性化アミド由来の基とすることができる。
Figure 2006201091
カルボン酸誘導基のうち、活性エステル基は、穏やかな条件における反応性に優れるため、好ましく用いられる。穏やかな条件としては、たとえば中性からアルカリ性の条件、具体的にはpH7.0以上10.0以下、さらに具体的にはpH7.6以上9.0以下、さらにまた具体的にはpH8.0とすることができる。
なお、本明細書において規定するところの「活性エステル基」は、その定義について厳密な規定はなされていないが、慣用の技術表現としては、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味するものとして、各種の化学合成、たとえば高分子化学、ペプチド合成等の分野で慣用されているものである。なお、ペプチド合成の分野においては、泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇道典著、「ペプチド合成の基礎と実験」、1985年発行、丸善、に記載されているように、活性エステル法はアミノ酸またはペプチドのC末端を活性化する方法の一つとして用いられている。
活性エステル基とは、実際的には、エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、または水酸基等の基に対する反応性を有する。
さらに具体的には、p−ニトロフェニル基等のフェノールエステル類;
チオフェノールエステル類;
N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基等のN−ヒドロキシアミンエステル類;
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等の複素環ヒドロキシ化合物のエステル類;および
シアノメチルエステル基;
等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。
以下においては、高分子物質中の活性化カルボン酸誘導体基が活性エステル基である場合を例に、説明する。活性エステル基は、固定化の対象となる捕捉物質によって使い分けることができるが、たとえばp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
第一単位と第二単位のさらに具体的な構成の組み合わせとして、たとえば、ホスホリルコリン基を含む第一単位が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基を有し、活性エステル基がp−ニトロフェニル基である構成とすることができる。また、ホスホリルコリン基を含む第一単位が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基を有し、活性エステル基がN−ヒドロキシスクシンイミド基である構成とすることができる。
また、高分子物質は、ホスホリルコリン基およびカルボン酸誘導基以外に他の基を含んでもよい。また、高分子物質は共重合体とすることができる。具体的には、高分子物質が、ホスホリルコリン基およびカルボン酸誘導基以外に、ブチルメタクリレート基を含む共重合体であることが好ましい。こうすることにより、高分子物質を適度に疎水化し、コア粒子の表面への吸着性をさらに好適に確保することができる。
具体的には、高分子物質を、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)基を有する第一単量体と、p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート(NPMA)基を有する第二単量体と、ブチルメタリレート(BMA)基を有する第三単量体との共重合体とすることができる。これらの共重合体であるpoly(MPC−co−BMA−co−NPMA)(PMBN)は、模式的に下記一般式(2)で示される。
Figure 2006201091
ただし、上記一般式(2)において、a、b、およびcは、それぞれ独立して、正の整数である。また、上記一般式(2)において、第一〜第三単量体がブロック共重合していてもよいし、これらの単量体がランダムに共重合していてもよい。
上記一般式(2)で示される共重合体は、高分子物質の適度な疎水化と、非特異吸着を抑制する性質と、捕捉物質を固定化する性質とのバランスにより一層優れた構成である。このため、これを用いることにより、コア粒子の表面をより一層確実に高分子物質で被覆するとともに、高分子物質の被覆を有するコア粒子上への非特異的吸着を抑制しつつ、捕捉物質をさらに確実に共有結合により固定化して捕捉ビーズ用マイクロ粒子に導入することができる。
なお、上記一般式(2)で示される共重合体は、MPC、BMA、およびNPMAの各単量体を混合し、ラジカル重合等の公知の重合方法により得ることができる。上記一般式(2)で示される共重合体をラジカル重合により作製する場合、たとえば、Ar等の不活性ガス雰囲気にて、30℃以上90℃以下の温度条件で溶液重合を行うことができる。
溶液重合に使用される溶媒は適宜選択されるが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、ジエチルエーテル等のエーテル、クロロホルム等の有機溶媒を単独でまたは複数混合して用いることができる。具体的には、ジエチルエーテルとクロロホルムを体積比で8対2とした混合溶媒とすることができる。
また、ラジカル重合反応に使用されるラジカル重合開始剤としては、通常使用されるものを用いることができる。たとえば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系開始剤;
過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート等の油溶性の有機過酸化物;
などが用いられる。
さらに具体的には、ジエチルエーテルとクロロホルムを体積比で8対2とした混合溶媒およびAIBNを用い、Ar中、60℃にて2〜6時間程度重合を行うことができる。
また、高分子物質は、複数のカルボン酸誘導基を有し、複数のカルボン酸誘導基は、捕捉物質と反応して共有結合を形成しているか、または不活化されている。ここで、カルボン酸誘導基が不活性化されているとは、カルボン酸誘導基を構成する一部の基(脱離基)が他の基に置換されて、活性を喪失していることをいう。
高分子物質は、コア粒子の表面に層状に形成されていてもよい。こうすれば、捕捉ビーズ用マイクロ粒子の表面における非特異的吸着をさらに確実に抑制することができる。この場合、高分子物質からなる層の厚さに特に制限はないが、たとえば5nm以上とすることができる。こうすれば、より一層確実に非特異的吸着の抑制が図られる。また、高分子物質からなる層の厚さの上限は、捕捉ビーズ用マイクロ粒子がμmオーダーの粒子となる程度であればよく、たとえばコア粒子の粒径に応じて決定することができる。
また、高分子物質は、コア粒子の表面に膜状に設けられていてもよい。こうすることにより、コア粒子の表面をさらに安定的に高分子物質の膜で被覆することができる。高分子物質は、コア粒子の表面全面に設けられていてもよい。こうすれば、コア粒子の表面への非特異的吸着をより一層確実に抑制することができる。
(コア粒子)
本発明に使用する捕捉ビーズに用いるコア粒子の材料としては、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられる。このうち、表面処理の容易性および量産性から、プラスチックが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂としては、蛍光発生量の少ないものを用いることができる。蛍光発生量の少ない樹脂を用いることにより、生理活性物質の検出反応におけるバックグラウンドを低下させることができるため、検出感度をさらに向上させることができる。
また、コア粒子を検出光に対して透明な樹脂とすることができる。透明な樹脂の材料は、生理活性物質の検出反応に用いられる検出光の波長に応じて適宜選択されるが、たとえば、飽和環状ポリオレフィン、PMMA、ポリスチレン、ポリカーボネイトなどが挙げられる。コア粒子を検出光の波長にて透明な材料とすることにより、送液の状態を容易に確認することができる。また、コア粒子に適当な着色を施すこともできる。こうすることにより、検出反応を光学的観察により検出する際に、検出感度を向上させることができる。
(捕捉物質)
生理活性物質を捕捉する捕捉物質は、生理活性物質に特異的に相互作用する物質とすることができる。特異的な相互作用は物理的な相互作用であっても化学的な相互作用であってもよい。また、捕捉物質は生理活性を有することができる。生理活性を有する捕捉物質としては、たとえば、核酸、アプタマー、タンパク質、酵素、抗体、オリゴペプチド、糖鎖、または糖タンパク質とすることができる。
捕捉ビーズ用マイクロ粒子に固定化される捕捉物質は、活性エステル基との反応性を高めるため、アミノ基を有することが好ましい。アミノ基は活性エステル基との反応性に優れるため、アミノ基を有する捕捉物質を用いることにより、効率よくかつ強固に粒子上に捕捉物質を固定化することができる。アミノ基の導入位置は分子鎖末端あるいは側鎖であってもよいが、分子鎖末端に導入されていることが好ましい。分子鎖末端にアミノ基を導入し、この末端のアミノ基を導入した方が、固定化した捕捉物質の配向性を保つことが可能であり、たとえば、DNA鎖のハイブリダイゼーションや抗原抗体反応を効率よく行うことができる。
たとえば、本実施形態および以下の実施形態に記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子上に固定化する捕捉物質として核酸、アプタマーを用いる場合、活性エステル基との反応性を高めるために、アミノ基を導入することが好ましい。DNAやアプタマー等の核酸鎖の場合、分子鎖末端にアミノ基を導入してもよい。こうすることにより、末端に導入されたアミノ基を活性エステル基と反応させて、高分子物質とさらに確実に共有結合を形成させることができる。また、末端のアミノ基を固定化に用いることにより、DNA相補鎖とのハイブリダイゼーションやタンパクとの相互の反応をより一層効率よく行うことができる。
また、捕捉物質として、タンパク質、酵素、抗体、オリゴペプチド、糖鎖、糖タンパク質を用いる場合にも、必要に応じてアミノ基を導入することが好ましい。
次に、捕捉ビーズ用マイクロ粒子の製造方法について説明する。
まず、コアとなる粒子を準備する。コア粒子の材料は、前述した構成とする。具体的には、10μm以上500μm以下、好ましくは直径20μm以上100μm以下のポリスチレンに代表される樹脂製の微細粒子を準備することができる。
このコア粒子の表面をホスホリルコリン基および活性エステル基を有する高分子物質でコートする。高分子物質のコートは、ホスホリルコリン基および活性エステル基を有する高分子物質を溶解または分散させた液体中にコア粒子を分散させ、所定の時間放置した後、遠心分離により、粒子を回収することにより行われる。そして、回収した粒子を純水中等に分散させて洗浄し、再び遠心分離により粒子を回収する。回収された粒子は表面がホスホリルコリン基および活性エステル基を有する高分子物質でコートされている。
このように、本実施形態の捕捉ビーズ用マイクロ粒子は、予め準備しておいたコア粒子の表面に高分子物質を被覆することにより得られるため、簡便な方法で効率よく製造可能な構成となっている。また、コア粒子の粒径の調整により、粒径を容易に制御することができる。
次に、得られた捕捉ビーズ用マイクロ粒子に補足物質を固定化して捕捉ビーズとする方法について説明する。ここでは、高分子物質に捕捉物質を共有結合により固定化する。具体的には、捕捉物質を溶解または分散させた液体中に、高分子物質でコートした捕捉ビーズ用マイクロ粒子を投入し分散させる。捕捉物質を含む液体のpHは、たとえば2以上11以下、好ましくは、穏やかな条件として前述したpH7.0以上10.0以下とすることができる。捕捉物質を含む液体のpHが大きすぎたり小さすぎたりする場合、強酸側または強アルカリ側となるため、生理活性を有する捕捉物質の変性が起こる可能性がある。たとえば、捕捉物質がタンパク質である場合、捕捉物質を含む液体のpHを中性付近とすることができる。
捕捉ビーズ用マイクロ粒子の分散液を所定の時間放置した後、遠心分離により粒子を回収する。そして、純水等により洗浄することにより、固定化されなかった余剰の捕捉物質を除去する。洗浄の後、粒子上に残存している活性エステル基を不活性化する。捕捉物質が固定されていない活性エステル基の不活化処理は、たとえばアルカリ化合物、あるいは一級アミノ基を有する化合物を用いて行うことができる。
アルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウムなどを好適に用いることができる。
一級アミノ基を有する化合物としては、グリシン、9−アミノアクアジン、アミノブタノール、4−アミノ酪酸、アミノカプリル酸、アミノエタノール、5−アミノ2,3ジヒドロ−1,4ペンタノール、アミノエタンチオール塩酸塩、アミノエタンチオール硫酸、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、リン酸二水素2−アミノエチル、硫酸水素アミノエチル、4−(2−アミノエチル)モルホリン、5−アミノフルオレセイン、6−アミノヘキサン酸、アミノヘキシルセルロース、p−アミノ馬尿酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、5−アミノイソフタル酸、アミノメタン、アミノフェノール、2−アミノオクタン、2−アミノオクタン酸、1−アミノ2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、3−アミノプロペン、3−アミノプロピオニトリル、アミノピリジン、11−アミノウンデカン酸、アミノサリチル酸、アミノキノリン、4−アミノフタロニトリル、3−アミノフタルイミド、p−アミノプロピオフェン、アミノフェニル酢酸、アミノナフタレンなどを用いることができる。これらのうち、アミノエタノール、グリシンを用いることが好ましい。
活性エステルの不活性化の後、純水により洗浄を行い、補足物質が表面に固定化された捕捉ビーズを得ることができる。
得られた捕捉ビーズは、たとえば流路中に試験液とともに流動させて、捕捉物質に捕捉された試験液中の生理活性物質の検出または定量に用いることができる。また、試験液中に含まれる成分の特定も可能である。検出対象となる生理活性物質は、たとえば、核酸、アプタマー、タンパク質、酵素、抗体、オリゴペプチド、糖鎖、または糖タンパク質とすることができる。
次に、得られた捕捉ビーズを用いて生理活性物質の処理を行う方法を説明する。ここでは、捕捉ビーズを備えるバイオチップを用いる場合を例に説明する。
図1は、捕捉ビーズを備えるバイオチップの構成を示す平面図である。図1に示したバイオチップ100は、流路基板および蓋基板の二つの板状部材が接合されてなる基板101と、基板101の接合面に設けられた溝107と、溝107の両端に設けられ、溝107に連通する導入孔103および排出孔105とを有する。導入孔103および排出孔105は、蓋基板を貫通する貫通孔である。これらの貫通孔は外気に接続しているため、溝107中の液体を流動させる導気孔としても機能する。
溝107は、液体を流通可能な微細流路として機能し、所定の位置にフィルタ109が設けられている。フィルタ109よりも上流側(導入孔103側)に、捕捉ビーズ111がせき止められている。捕捉ビーズ111は、前述した構成とする。フィルタ109は、たとえば捕捉ビーズ111の直径よりも小さい孔径のメンブランフィルタとする。フィルタ109を設けることにより、捕捉ビーズ111の透過を制限し、捕捉ビーズ111を微細流路の所定の領域にさらに確実にせき止めて保持することができる。よって、捕捉ビーズを用いた生理活性物質の操作をさらに安定的に行うことができる。なお、バイオチップ100は、捕捉ビーズ111を溝107の途中に保持することができる構成になっていればよく、フィルタ109を設ける構成には限られない。たとえば流路幅を一部絞った構造の溝107を有する基板を用いてもよい。
バイオチップ100においては、溝107の所定の位置に複数の捕捉ビーズ111がせき止められているため、導入孔103から試験液を溝107内に導入することにより、捕捉ビーズ111に固定された補足物質に、試験液中の生理活性物質を特異的に捕捉させることができる。このため、簡素な構成で生理活性物質の処理を安定的に行うことができる。また、捕捉ビーズ111の表面に生理活性物質を捕捉することにより、捕捉ビーズ111がせき止められている領域に生理活性物質を濃縮することができる。このため、生理活性物質が試験液中の微量成分である場合にも、これを確実に濃縮して検出することができる。また、生理活性物質を補足する捕捉物質が捕捉ビーズ111の表面に固定化されているため、溝107に直接補足物質を固定化する場合に比べて補足物質の固定化密度を向上させることができる。よって、生理活性物質をさらに確実に濃縮することができる。また、捕捉ビーズ111は生理活性物質に対する特異性を有し、生理活性物質を効率よく捕捉できるのに加えて、流路内で凝集したり、非特異的吸着を生じたりすることが抑制されている。このため、流路内での移動や充填が滞ることなく、これを安定的に行うことが可能な構成となっている。
また、バイオチップ100において、nmオーダーの粒子を適用しようとした場合、フィルタ109を粒子が通過してしまい、溝107の所定の領域にせき止めておくことが困難となったり、フィルタ109に目詰まりが生じたりする懸念がある。また、これをせき止めるためには、フィルタ109の構成とともに、溝107の幅や深さもさらに微細化する必要があり、基板101の加工が煩雑化する。これに対し、バイオチップ100では、μmオーダーの捕捉ビーズ111を用いることにより、捕捉ビーズ111の流動性を確保しつつ、フィルタ109に確実にせき止め、さらにフィルタ109の目詰まりが抑制された構成となっている。また、溝107の加工も容易に行うことが可能である。
なお、図1では、基板101を構成する流路基板の表面に3つの直線状の溝107が互いに平行に設けられている構成を示しているが、溝107の数、平面形状および配置は図1の態様には限られない。
また、微細流路は、たとえば基板の表面に溝状に設けられていてもよい。また、基板の形状は板状には限られず、たとえばフィルム状やシート状であってもよい。具体的には、基板を可とう性のプラスチックフィルムとすることもできる。また、基板は、一つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。また、微細流路を覆う保護部材を有していてもよい。こうすれば、微細流路中の捕捉ビーズや液体が流路外に漏出したり、乾燥したりすることを抑制できる。このため、捕捉ビーズを用いた分析をさらに安定的に行うことができる。保護部材の形状に特に制限はないが、たとえば板状、シート状、またはフィルム状とすることができる。
また、バイオチップ100において、捕捉ビーズ111表面だけでなく溝107、導入孔103および排出孔105の表面にも高分子物質を被覆しておいてもよい。こうすれば、生理活性物質の非特異的に吸着を装置全体においてより一層確実に抑制することができる。このため、生理活性物質の処理をより一層確実に行うことができる。
次に、バイオチップ100の使用方法の具体例として、抗体を固相化し、微細流路中で抗原抗体反応による抗原の検出を行う場合について説明する。
バイオチップ100を用いて試験液中の生理活性物質の検出または定量する際には、まず、所定量の捕捉ビーズをPBS等の緩衝液中に分散させる。捕捉ビーズ111としては、検出または定量の対象となる物質(抗原)に対する抗体を前述した捕捉ビーズ用マイクロ粒子に固定化したものを用いる。
次に、マイクロポンプやマイクロシリンジ等の送液手段を用いて、導入孔103から微細流路(溝107)中に捕捉ビーズ111の分散液を一定量送液する。この際、従来のビーズでは、ビーズが流路の途中に付着したり、ビーズ間に空気を巻き込んだりことが多々あるが、捕捉ビーズ111では、これらを効果的に抑制することができる。なお、送液の際に、導入孔103または排出孔105と送液用のチューブ等を接続する際には、接続部分から孔内に空気が入らないようにするとよい。こうすれば、溝107中に空気が送られることをさらに確実に抑制し、捕捉ビーズ111による捕捉をより一層効率よく確実に行うことができる。
捕捉ビーズ111を溝107内のフィルタ109の設けられた領域にせき止めて保持した後、マイクロポンプやマイクロシリンジを用いて、サンプル溶液を一定量送液する。この工程で、抗原抗体反応により、検出または定量の対象となるタンパク質等の物質(抗原)が、捕捉ビーズ111表面に固定化された抗体に捕捉される。
その後、ELISAでのサンドイッチ法に従い、溝107中に、洗浄液、酵素標識した2次抗体液、および洗浄液をこの順番で送液し、最後に発色基質を送液する。そして、発色の度合いを吸光度や蛍光強度、発光強度などにより測定する。捕捉ビーズ111では、非特異吸着を抑制しつつ、補足物質の効率的な固定化が可能な構成であるため、これを用いることにより、抗原抗体反応の効率が高く、少ない送液量で充分なタンパク質の捕捉が可能である。このため、微量な試料中の成分についても確実に検出または定量することができる。
このように、本実施形態の捕捉ビーズを用いることにより、吸着防止剤をコーティングすることなく、試験液中の成分、ここでは検出対象の生理活性物質を含む成分のビーズ表面への非特異的吸着を抑制することができる。このため、吸着防止剤をコーティングすることなく、微細流路と捕捉ビーズとを用いた生理活性物質の検出における検出感度を向上させることができる。
また、検出部を微細流路とし、微細流路の所定の領域に捕捉ビーズを充填して用いることにより、流路表面に直接捕捉物質を固定化する場合に比べて、捕捉物質を固定化する領域の比表面積を増加させることができる。このため、捕捉物質と生理活性物質との特異的な相互作用の効率をより向上させて、確実に生理活性物質を検出することができる。このため、生体試料中のタンパク質、核酸等の生理活性物質の分析を、微細流路を用いて確実に行うことができる。
なお、本実施形態の捕捉ビーズは、上述したように微細流路を有するチップ等と組み合わせて用いられてもよいし、単独で用いられてもよい。なお、前述したように、捕捉ビーズの粒子径を10μm以上500μm以下とすることにより、微細流路中に充填する場合や、セルソータを用いて分析する場合にさらに好適な構成とすることができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。この実施形態はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、以上の実施形態において、捕捉物質の固定化反応を中性またはアルカリ性の条件で行ってもよい。たとえば、捕捉物質を溶解または分散した液体を中性またはアルカリ性とする。こうすることにより、捕捉物質と高分子物質の第二単位中の活性エステル基とをさらに確実に反応させ、共有結合を形成させることができる。
こうした条件として、たとえばpH7.0以上、好ましくはpH7.6以上とすることができる。さらに具体的には、pHを8.0とすることができる。pHが低すぎる条件では、活性エステル基と捕捉物質とが反応を起こしにくく、捕捉物質を固定化することが困難となる懸念がある。また、捕捉物質を含む液体のpHの下限は、捕捉物質の種類や高分子物質の材料に応じて適宜選択されるが、たとえばpH10以下とすることができる。
また、本実施形態において、捕捉物質の固定化後、生理活性物質を捕捉させる際に、生理活性物質を含む酸性または中性の液体を捕捉ビーズ用マイクロ粒子上の高分子物質に接触させることもできる。具体的には、液体のpHは8.0以下、好ましくは7.6以下とすることができる。また、さらに具体的には、たとえばpH7.0とすることができる。こうすることにより、生理活性物質の非特異的吸着を抑制しつつ、捕捉物質にさらに安定的に相互作用させることができる。pHが高すぎると、活性エステル基と生理活性物質のアミノ基とが反応を起こし、捕捉分子を点着した以外の部分に、検出する生理活性物質が共有結合により固定化されやすくなる。
また、本実施形態において、生理活性物質を含む液体のpHを、捕捉物質を含む液体のpH以下のpH、好ましくは捕捉物質を含む液体のpHより低いpHとすることもできる。このようにすれば、捕捉物質と活性エステル基との反応をさらに生じさせ、共有結合を形成させるとともに、生理活性物質と活性エステル基との反応をさらに確実に抑制することができる。
また、以上においては、流路の表面に高分子物質を有するバイオチップについて説明したが、流路と高分子物質との間に、これらを接着する接着層を有していてもよい。たとえば、コア粒子の表面に、アミノ基を有する化合物を含む第一の層と、ホスホリルコリン基を含む第一単位とカルボン酸誘導体とを含む第二単位とを有する高分子物質を含む第二の層と、がこの順に積層されている構成とすることができる。第一の層は、たとえば、アミノ基を有するシランカップリング剤等のアミノシランを含むことができる。こうすれば、コア粒子の表面に第一の層をさらに安定的に設け、コア粒子の表面を第一の層でさらに確実に被覆することができる。なお、アミノ基を有するシランカップリング剤は、オルガノシロキサンやポリオルガノシロキサン等の形態で存在していてもよい。
また、本実施形態において、複数のカルボン酸誘導基のうち、一部のカルボン酸誘導基と捕捉物質とが反応して共有結合を形成しており、残りのカルボン酸誘導基と親水性基を有する親水性ポリマーとが反応して共有結合を形成している構成としてもよい。共有結合による高分子物質への親水性ポリマーの導入により、捕捉ビーズ表面の高分子物質へのタンパク質の非特異的吸着をさらに低減できる。
親水性ポリマーは、親水基を有するポリマーであり、たとえばポリアルキレンオキシドまたは複数種類のポリアルキレンオキシドを構造中に含むことができる。ポリアルキレンオキシドとして、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらの共重合体、およびこれらの少なくとも一つと他のポリアルキレンオキシドとの共重合体のいずれかを構造中に含むことができる。また、親水性ポリマーは、活性エステル基との反応性を高めるために末端がアミノ化されていることが好ましい。
また、高分子物質が下記(a)成分からなる構成または下記(a)成分と下記(b)成分との混合物である構成とすることもできる。
(a)ホスホリルコリン基を含む第一単位と活性エステル基を有する第二単位とを必須成分とし、ブチルメタクリレート基を有する第三単位を任意成分とする高分子
(b)ホスホリルコリン基を含む第一単位とブチルメタクリレート基を含む第三単位とを有する高分子
この構成において、高分子物質中に含まれるホスホリルコリン基の、ホスホリルコリン基と活性エステル基とブチルメタクリレート基との合計に対する割合は、たとえば3モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上とすることができる。ホスホリルコリン基の割合が小さすぎると、生理活性物質の非特異的吸着を起こすようになり、バックグランドが高くなる懸念がある。また、高分子物質中に含まれるホスホリルコリン基の、ホスホリルコリン基と活性エステル基とブチルメタクリレート基との合計に対する割合は、たとえば、40モル%以下、好ましくは40モル%未満、さらに好ましくは35モル%以下、さらにまた好ましくは35モル%未満とすることができる。ホスホリルコリン基の割合が大きすぎると、混合ポリマーの水溶性が高くなるため表面層が剥離してしまう懸念がある。
また、高分子物質中に含まれる活性エステル基の、ホスホリルコリン基と活性エステル基とブチルメタクリレート基との合計に対する割合を、たとえば1モル%以上とすることができる。活性エステル基の割合が小さすぎると、生理活性物質の固定化量が低下し十分なシグナルが得られない懸念がある。また、高分子物質に含まれる活性エステル基の、ホスホリルコリン基と活性エステル基とブチルメタクリレート基との合計に対する割合を、たとえば25モル%以下、好ましくは8モル%以下とすることができる。活性エステル基の割合が大きすぎると、最表面に存在する活性エステル基量が飽和してしまいシグナル強度が向上しない懸念がある。
また、本実施形態において、コア粒子上にオルガノシロキサンを含む第一の層が設けられ、第一の層上に、ホスホリルコリン基を有する単量体とカルボン酸誘導基を有する単量体との共重合体を含む第二の層とが設けられた構成とすることができる。第一の層を構成するオルガノシロキサンは、重合性二重結合を有する基を有する化合物とすることができる。重合性二重結合を有する基がアルケニル基(オレフィン基)を構成していてもよい。また、重合性二重結合を有する基の少なくとも一部がアクリレート基、メタクリレート基、またはビニル基を構成していてもよい。第一の層は、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、または他のアルケニル基から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物を有することができる。
(実験例)
以下の実験例では、生理活性物質を含む試料として、タンパク質、核酸等を含む試料を用い、これらの分析を行う際に用いる補足物質を捕捉ビーズ作製用のマイクロ粒子に固定化し、これらの検出を行った。
(溶液類の調製)
DNA溶液1:5'末端にアミノ基を有した鎖長24bpのオリゴDNA(TAGAAGCATTTGCGGTGGACGATG(配列番号1)(シグマジェノシス社製)を5μg/mLの濃度になるように所定の緩衝液に溶解し調製した。
DNA溶液2:5'末端にビオチン標識を有した鎖長24bpのオリゴDNA(CATCGTCCACCGCAAATGCTTCTA(配列番号2)を2μg/mLの濃度になるように3×SSC(standard saline citrate)、0.2%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の溶液に溶解した。
抗体溶液:抗マウスIgG2a抗体(ラット由来)をPBS(phosphate buffered saline)中に10μg/mLの濃度の濃度で溶解し調製した。
抗原溶液1:FBS(fetal bovine serum)中にマウスIgG2a抗体を1μg/mL濃度で溶解し、pH9.5の炭酸バッファー1mL中に、上記マウスIgG2a抗体を含むFBSを100μLを加え、さらに1mg/mL濃度でNHS活性エステルを導入したビオチンを超純水に溶解させた溶液を10μL添加し、25℃で2時間放置し、ゲルろ過カラムにより未反応のNHS化ビオチンを除き、マウスIgG2aおよびFBS中のタンパク質にビオチンを導入した。ビオチンを導入したタンパクをPBS中に溶解させ抗原溶液1とした。
抗原溶液2:上記抗原溶液1の調製において、マウスIgG2a抗体を除き、同じ条件でFBSのタンパク質をビオチン標識した。ビオチンを導入したFBSタンパク質をPBS中に溶解させ、抗原溶液2とした。
POD(peroxidase)標識アビジン溶液:PODを標識したアビジンを、PBS中に0.1μg/mLで溶解させ、調製した。
発色基質液:ELISA用TMBZ(3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine)発色試薬(住友ベークライト社製)を所定の方法で調製した。
ブロッキング溶液1:pH9.5の炭酸バッファー中に20mMの濃度でグリシンを溶解させ調製した。
ブロッキング溶液2:水素化ホウ素ナトリウムを0.5重量%の濃度でPBS中に溶解させ調製した。
ブロッキング溶液3:BSAを1重量%濃度でPBS中に溶解させ調製した。
(実験例1)
3−メタクリロイルオキシエチルホシホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液中に、市販の直径40μmのポリスチレン樹脂製粒子を分散させた。これを1時間放置した後、遠心分離により粒子を回収した。洗浄のため、回収した粒子を純水中に分散させた。そして、再び遠心分離により粒子を回収した。こうして、捕捉ビーズ用のマイクロ粒子を得た。
つづいて、回収した粒子をDNA溶液1中に分散させて、1時間放置した。その後、遠心操作により粒子を回収した。さらに、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。
そして、DNAが固定されていない活性エステル基を不活化するため、ブロッキング溶液1中に粒子を分散させて1時間放置した後、遠心分離により粒子を回収した。つづいて、回収した粒子を純水で洗浄し、遠心分離により粒子を回収した。DNAを固定化した捕捉ビーズとして回収した粒子を用い、後述するDNAハイブリダイゼーションによる評価に供した。
(実験例2)
3−メタクリロイルオキシエチルホシホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液中に、市販の直径40μmのポリスチレン樹脂製粒子を分散させた。これを1時間放置した後、遠心分離により粒子を回収した。洗浄のため回収した粒子を純水中に分散し、再び遠心操作により粒子を回収した。こうして、捕捉ビーズ用のマイクロ粒子を得た。
つづいて、回収した粒子を抗体溶液中に分散させて、1時間放置した。その後、遠心操作により粒子を回収した。さらに、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。
そして、抗体が固定されていない活性エステル基を不活化するため、ブロッキング溶液1中に粒子を分散させて1時間放置した後、遠心分離により粒子を回収した。つづいて、回収した粒子を純水で洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。抗体を固定化した捕捉ビーズとして回収した粒子を用い、後述する抗原抗体反応による評価に供した。
(実験例3)
直径40μmのポリスチレン樹脂粒子の表面に親水化処理を施した後、アミノアルキルシラン2重量%溶液中に分散させて1時間放置した。そして、純水熱処理を施し粒子の表面にアミノ基を導入した。この粒子を1重量%グルタルアルデヒド水溶液に分散させて、1時間放置することにより、粒子表面のアミノ基とグルタルアルデヒドを反応させ、アルデヒド基を導入した。遠心分離により粒子を回収した。そして、回収した粒子を純水中に分散させて洗浄した後、再び遠心操作により回収した。
つづいて、回収した粒子をDNA溶液1中に分散させて、1時間放置した。その後、遠心操作により粒子を回収した。さらに、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。
そして、DNAが固定されていないアルデヒド基を不活化するため、ブロッキング溶液2中に粒子を分散させて1時間放置した後、遠心操作により粒子を回収した。つづいて、回収した粒子を純水で洗浄し、遠心分離により粒子を回収した。回収した粒子を用い、後述するDNAハイブリダイゼーションによる評価に供した。
(実験例4)
直径40μmのポリスチレン樹脂粒子の表面に親水化処理を施した後、アミノアルキルシラン2重量%溶液中に分散させて1時間放置した。そして、純水熱処理を施し粒子の表面にアミノ基を導入した。この粒子を1重量%グルタルアルデヒド水溶液に分散させて、1時間放置することにより、粒子表面のアミノ基とグルタルアルデヒドを反応させ、アルデヒド基を導入した。遠心分離により粒子を回収した。そして、回収した粒子を純水中に分散させて洗浄した後、再び遠心操作により回収した。
つづいて、回収した粒子を抗体溶液中に分散させて、1時間放置した。その後、遠心操作により粒子を回収した。さらに、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。
抗体が固定されていないアルデヒド基を不活化するため、ブロッキング溶液2中に粒子を分散させて1時間放置した後、遠心操作により粒子を回収した。つづいて、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により、粒子を回収した。さらに、回収した粒子をブロッキング溶液3中に分散させて1時間放置した。これを純水で洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。回収した粒子を、後述する抗原抗体反応による評価に供した。
(実験例5)
抗体溶液中に直径40μmのポリスチレン樹脂粒子を分散させて1時間放置した後、遠心操作により粒子を回収した。そして、回収した粒子を純水により洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。つづいて、回収した粒子をブロッキング溶液3中に分散させて1時間放置し、純水で洗浄した後、遠心操作により粒子を回収した。回収した粒子を、後述する抗原抗体反応による評価に供した。
(DNAハイブリダイゼーションによる評価)
実験例1および実験例3で得られた粒子(捕捉ビーズ)を用いて評価を行った。評価には、幅200μm、深さ60μmの流路を有し、流路の途中に捕捉ビーズを保持するためのせき止め手段を設けたアクリル樹脂製の微細流路チップを用いた。捕捉ビーズをせき止める手段として、孔径100nm(0.1μm)のメンブランフィルタを流路の両側面および底面に固定して用いた。
まず、捕捉ビーズをPBS中に分散させた。そして、微細流路チップの注入孔から流路内に約100個の捕捉ビーズを含むビーズ分散液を注入した。実験例1では、捕捉ビーズは流路内に付着することなく、流路内を移動し、せきであるメンブランフィルタ付近に留まった。実験例3では、捕捉ビーズ分散液の注入において流路の途中に付着が認められたため、PBSを5μL/分のスピードで10分間流し続けることで、全ビーズをメンブランフィルタ付近まで移動させた。
次に、DNA溶液2を2μL/分のスピードで流路内に5分間送液した後、PBS(−)を5μL/分のスピードで10分間送液して洗浄を行った。そして、POD標識アビジン溶液を2μL/分のスピードで5分間送液した後、PBS(−)を5μL/分のスピードで10分間送液して洗浄を行った。つづいて、TMBZ溶液を2μL/分のスピードで30分間送液し、排出孔から流出する溶液をサンプリングチューブに採取し、2N硫酸を60μL加えた。ELISA用の96ウェルプレートに発色した溶液を移し、TMBZの発色の度合いを吸光度測定により比較した。結果を表1に示す。
(抗原抗体反応による評価)
実験例2、実験例4および実験例5を用いて評価を行った。評価には、幅200μm、深さ60μmの流路を有し、流路の途中に捕捉ビーズを保持するためのせき止め手段をもったアクリル製微細流路チップを準備して用いた。捕捉ビーズをせき止める手段として、孔径100nm(0.1μm)のメンブランフィルタを流路の両側面および底面に固定して用いた。
まず、捕捉ビーズをPBS中に分散させた。また、流路内にブロッキング溶液3を送液し流路内のブロッキング処理を行った。ブロッキング処理済みの微細流路チップの注入孔から約100個の捕捉ビーズを含むビーズ分散液を流路内に注入した。実験例2では、捕捉ビーズは流路内に付着することなく、流路内を移動し、せきであるメンブランフィルタ付近に留まった。実験例4および実験例5では、ビーズ分散液の注入において流路の途中に付着が認められたため、PBSを5μL/分のスピードで10分間流し続けることで、全ビーズをメンブランフィルタ付近まで移動させた。
次に、抗原溶液1または2を2μL/分のスピードで5分間送液した後、PBS(−)を5μL/分のスピードで10分間送液して洗浄を行った。そして、POD標識アビジン溶液を2μL/分のスピードで5分間送液した後、PBS(−)を5μL/分のスピードで10分間送液して洗浄を行った。つづいて、TMBZ溶液を2μL/分のスピードで30分間送液し、排出孔から流出する溶液をサンプリングチューブに採取し、2N硫酸を60μL加えた。ELISA用の96ウェルプレートに発色した溶液を移しTMBZの発色の度合いについて吸光度測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 2006201091
Figure 2006201091
なお、捕捉ビーズの粒径を0.2μm程度として、同様にしてマイクロチップを作製した。すると、複数のマイクロチップを作製した際に、メンブランフィルタの孔を粒子が通過する場合があり、以上の実験例の場合に比べて、マイクロチップの製造歩留まりが低かった。また、コア粒子としてポリスチレン樹脂粒子に代えてガラスビーズを用いた場合にも、以上と同様の傾向が認められた。
本発明の捕捉ビーズは、分散安定性および流動性が高く、流路中での扱いや、セルソータと組み合わせた利用が容易である。また生理活性物質の検出において、高感度な検出が可能である。
実施の形態に係るバイオチップの構成を示す平面図である。
符号の説明
100 バイオチップ
101 基板
103 導入孔
105 排出孔
107 溝
109 フィルタ
111 捕捉ビーズ

Claims (19)

  1. 生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化され、捕捉ビーズ用担体として使用されるマイクロ粒子であって、
    ホスホリルコリン基を有する第一単位と、電子求引性の置換基がカルボニル基に結合されてなるカルボン酸誘導基を有する第二単位と、を含む高分子物質が、表面に被覆されていることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  2. 請求項1に記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、
    前記カルボン酸誘導基が、エステル基のアルコール側に電子求引性の置換基を有する活性エステル基であることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  3. 請求項2に記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、前記エステル基がp−ニトロフェニルエステル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基であることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  4. 生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化され、捕捉ビーズ用担体として使用されるマイクロ粒子であって、
    ホスホリルコリン基を有する第一単位と、下記式(1)に示される一価の基を有する第二単位と、を含む高分子物質が、表面に被覆されていることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
    −COA (1)
    (ただし、上記式(1)において、Aは水酸基およびアルコキシル基を除く一価の脱離基である。)
  5. 請求項4に記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、前記式(1)に示される一価の基が、下記式(p)または式(q)から選択されるいずれかの基であることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
    −COOCR1 (p)
    −COONR2 (q)
    (ただし、上記式(p)および式(q)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、一価の有機基であり、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。また、上記式(p)において、R1はCとともに環を形成する二価の基であってもよい。また、上記式(q)において、R2はNとともに環を形成する二価の基であってもよい。)
  6. 請求項1乃至5いずれかに記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、直径10μm以上500μm以下の球状であることを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  7. 請求項1乃至6いずれかに記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、ホスホリルコリン基を含む前記第一単位が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基を有することを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  8. 請求項1乃至7いずれかに記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、プラスチック材料からなるコア粒子を有することを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  9. 請求項1乃至7いずれかに記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子において、ガラス材料からなるコア粒子を有することを特徴とする捕捉ビーズ用マイクロ粒子。
  10. 粒子表面に生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており、試験液中の前記生理活性物質の処理に用いられる捕捉ビーズであって、
    請求項1乃至3いずれかに記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子の前記カルボン酸誘導基と、前記捕捉物質とが反応して、共有結合を形成していることを特徴とする捕捉ビーズ。
  11. 請求項10に記載の捕捉ビーズにおいて、複数の前記カルボン酸誘導基を有し、前記複数のカルボン酸誘導基は、前記捕捉物質と反応して共有結合を形成しているか、または不活化されていることを特徴とする捕捉ビーズ。
  12. 粒子表面に生理活性物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており、試験液中の前記生理活性物質の処理に用いられる捕捉ビーズであって、
    請求項4または5に記載の捕捉ビーズ用マイクロ粒子の前記式(1)で示される一価の基と、前記捕捉物質とが反応して、共有結合を形成していることを特徴とする捕捉ビーズ。
  13. 請求項12に記載の捕捉ビーズにおいて、複数の前記式(1)で示される一価の基を有し、前記複数の式(1)で示される一価の基は、前記捕捉物質と反応して共有結合を形成しているか、または不活化されていることを特徴とする捕捉ビーズ。
  14. 請求項10乃至13いずれかに記載の捕捉ビーズにおいて、前記捕捉ビーズ用マイクロ粒子が、直径10μm以上500μm以下の球状であることを特徴とする捕捉ビーズ。
  15. 請求項10乃至14いずれかに記載の捕捉ビーズにおいて、ホスホリルコリン基を含む前記第一単位が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基を有することを特徴とする捕捉ビーズ。
  16. 請求項10乃至15いずれかに記載の捕捉ビーズにおいて、前記捕捉物質が、核酸、アプタマー、タンパク質、酵素、抗体、オリゴペプチド、糖鎖および糖タンパク質からなる群から選択される一または二以上の物質であることを特徴とする捕捉ビーズ。
  17. 請求項10乃至16いずれかに記載の捕捉ビーズにおいて、前記生理活性物質が、核酸、アプタマー、タンパク質、酵素、抗体、オリゴペプチド、糖鎖および糖タンパク質からなる群から選択される一または二以上の物質であることを特徴とする捕捉ビーズ。
  18. 流路と、
    前記流路中に設けられた捕捉ビーズと、
    を含み、前記捕捉ビーズが請求項10乃至17いずれかに記載の捕捉ビーズであることを特徴とするバイオチップ。
  19. 請求項18に記載のバイオチップにおいて、
    前記流路が基板に設けられるとともに、
    前記捕捉ビーズの透過を制限するせきが前記流路に設けられていることを特徴とするバイオチップ。
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