JP2006325520A - 3−ハロ−1,2−プロパンジオールの製造方法及びそれに用いる微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エピハロヒドリンを3-ハロ-1,2-プロパンジオールに変換する能力を有するリゾビウム(Rhizobium)属又はレイフソニア(Leifsonia)属に属する微生物、微生物が受領番号FERM AP-20452で特定されるリゾビウム・ラジオバクター (Rhizobium radiobacter MRC01株)、及びレイフソニア(Leifsonia)属に属する微生物が受領番号FERM AP-20453で特定されるレイフソニア エスピー(Leifsonia sp. MRC03株)、並びに上記のいずれかに記載の微生物又はその処理物をエピハロヒドリンと接触させ、3-ハロ-1,2-プロパンジオールを回収する3-ハロ-1,2-プロパンジオールの製造方法。
【選択図】なし
Description
また、この他にもシュードモナス属、アルカリゲネス属を利用し、3-ハロ-1,2-プロパンジオールから(S)体又は(R)体を資化させ、残留する(R)体又は(S)体を回収する方法(特許文献7)や(R)-1-アシロキシ-3-クロロ-2-プロパノールを加水分解することで(S)-3-クロロ-1,2-プロパンジオールを得る方法(特許文献8)が知られている。
しかし、上述の方法で使用されている酵素は、シュードモナス(Pseudomonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、オウレオバクテリウム(Aureobacterium)属又はアグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する微生物由来の酵素のみであった。
下記一般式(1)で示される化合物を、下記一般式(2) で示される3-ハロ-1,2-プロパンジオールに変換する能力を有するリゾビウム(Rhizobium)属、若しくはレイフソニア(Leifsonia)属に属する微生物。
以下にMRC01株及びMRC03株の分類学的性質を説明する。
MRC01株及びMRC03株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に平成17年3月9日付で寄託されており、その受領番号はMRC01株がFERM AP-20452及びMRC03株がFERM AP-20453である。
得られた16S rRNAの塩基配列を用いて相同性検索を行い、相同率上位10株を決定した。更に検索された上位10株とMRC03株の16S rRNAを用いて近接結合法により分子系統樹を作製し、MRC01株及びMRC03株の近縁種及び帰属分類の検討を行った。相同性検索及び系統樹の作製にはMicroSeq Microbial Identification System Software1.4.1を使用した。
以上の事から、MRC01株は、リゾビウム・ラジオバクター (Rhizobium radiobacter)に属する菌株であると判断した。また、MRC03株は、レイフソニア(Leifsonia)属に属する菌株であると判断した。
MRC01株又はMRC03株を含む本発明に係る微生物の培養方法は、当該微生物が生育できる方法であればいずれの方法でもよい。
本発明に係る微生物の培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下、10〜50℃、好ましくは25〜45℃で行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、pH2〜11、好ましくはpH5〜9、特に好ましくはpH7〜8に設定すれば良い。培養時間は、好ましくは1〜96時間、特に好ましくは8〜72時間である。
その使用形態は、該触媒活性を示す限り特に制限されず、培養液そのまま又は該培養物から遠心分離等の集菌操作によって得られる微生物菌体、培養上清、菌体処理物又は常法により固定化した菌体等の形で、利用することができる。処理物としては、例えば、アセトン、トルエン等で処理した菌体、菌体の破砕物、無細胞抽出物、粗酵素、精製酵素、遺伝子操作微生物等が挙げられ、菌体の破砕物、無細胞抽出物、粗酵素、精製酵素又は遺伝子操作微生物が好ましい。
ここで、遺伝子操作微生物とは、酵素を発現し得るように宿主細胞中に該酵素をコードする遺伝子が組み込まれた微生物のことである。遺伝子操作微生物の使用形態も上記と同様に特に制限されない。また、一般に、菌体処理物、粗酵素、精製酵素又は遺伝子操作微生物等の形態では微生物菌体、菌体培養液等に比べて酵素活性が上昇することがある。
本発明において一般的に使用される基質は一般式(1)で示される。
反応液中の一般式(1)で表される基質の濃度は、 0.01〜15(W/V) %とすることが好ましい。この範囲内であると酵素安定性の観点から好ましい。基質濃度を10%以下とすることが特に好ましい。
基質は反応液に一括して加えるかあるいは分割添加することができる。分割添加により基質濃度を一定とすることが3-ハロ-1,2-プロパンジオールの蓄積性の観点から好ましい。
また、反応系内に微生物又はその処理物及び基質を添加する順序は問わない。例えば、培養液あるいは遠心分離等により得られた微生物又はその処理物に基質を添加する方法や微生物の培養時に基質を培養液に添加して培養と同時に反応を行う方法等が挙げられる。
例えば、反応液から遠心分離により菌体を除いた後、有機溶媒で抽出を行い、その有機相から減圧下に溶媒を除去することにより3-ハロ-1,2-プロパンジオールのシロップを得ることができる。また、これらのシロップを減圧下に蒸留することによりさらに精製することもできる。
以上のように、本発明に係る一般式(2)で示される3-ハロ-1,2-プロパンジオールの製造方法によれば、一般式(1)の化合物から一般式(2)で示される3-ハロ-1,2-プロパンジオールを効率よく製造することができる。
なお、3-ハロ-1,2-プロパンジオールの定量及び光学純度は、下記の分析条件でガスクロマトグラフィーを用いて決定した。
試料調製方法: 試料を等量の酢酸エチルに溶解
装置: カラムオーブン 島津製作所社製 GC-17A
インテグレータ 島津製作所社製 C-R5A
カラム: DB−5 J&W Scientific社製
キャリヤー: He 純度 99.995%以上
メイクアップガス: He 純度 99.995%以上
検出器ガス: 水素 純度 99.995%以上
カラム温度: 50℃から10℃ずつ昇温して、250℃で5分保持
インジェクション温度: 250℃
デテクタ温度: 250℃
線速度 : 35 cm/s
リテンションタイム:10min
試料調製方法:反応液から等量の塩化メチレンで抽出を行い、p-toluenesulfonateを用いて誘導体化した後、減圧下で溶媒を除去してシロップを得、シロップ中の3-クロロ1,2-プロパンジオールを200μlのキャリアに溶解して、高速液体クロマトグラフィ−による光学異性体の分析を行う。
装置: カラムオーブン 島津製作所社製 CTO―6AUV
ポンプ ジャスコ社製 PU―1580
インテグレーター sic社製 Chromatocoder 21J
UV ジャスコ社製 UV 1575
カラム: CHIRALCEL OC ダイセル化学工業社製
キャリヤー: ヘキサン/2-プロパノール=98.5/1.5(容積比)
カラム温度: 40 ℃
流速: 2.5mL/min
波長: 235nm
リテンションタイム:S体 20min
R体 26min
光学純度(エナンチオマー過剰率;%e.e.)は、 (S)- 3-ハロ-1,2-プロパンジオール及び(R)- 3-ハロ-1,2-プロパンジオールのHPLCによる各ピーク面積から、以下の式によって算出することができる。
R>Sの場合:R体の光学純度(%e.e.)=(R−S/R+S)×100
S>Rの場合:S体の光学純度(%e.e.)=(S−R/R+S)×100
S:(S)- 3-ハロ-1,2-プロパンジオールのピーク面積
R:(R)- 3-ハロ-1,2-プロパンジオールのピーク面積
培地(培地組成;グルコース1%、ペプトン0.5%、肉エキス0.3%、酵母エキス0.3%)をpH7.0に調整し500ml三角フラスコに100mlずつ分注し、121℃で15分滅菌した。培地を常温に戻してから、メンブレンフィルターで除菌した25(w/v)%の3-クロロ-1,2-プロパンジオール水溶液を0.8ml添加した。
[調製例2]
3-クロロ-1,2-プロパンジオール水溶液に代えてエピクロロヒドリンを0.1ml添加した以外は、調製例1と同様の方法で培地を作成した。
調製例1で作製された培地に、レイフソニア エスピー(Leifsonia sp.)MRC03株(FERM AP-20453)をピペットマンで100μl接種し30℃で48時間振とう培養を行った。この培養液を各々遠心分離(15000xg)して菌体を集菌した。これに100mM Tris―HCl(pH8.0)緩衝液100mlを加えた。その後、遠心分離(15000xg)して菌体の洗浄を行った。その後、780mMの1,3-ジクロロ−2-プロパノール溶液(1Mリン酸緩衝液pH7.0)100mlに菌体を懸濁し、反応を30℃で23時間振とうして行った。
反応後、反応液を遠心分離(15000xg)し、菌体を除去した。上清中の生成3-クロロ1,2-プロパンジオールをガスクロマトグラフィーで定量し、基質からの収率を求めた。結果、600mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。また、この上清に50mlの塩化メチレンを加えて抽出を行い、p-toluenesulfonateを用いて誘導体化した後、減圧下で溶媒を除去してシロップを得、シロップ中の3-クロロ1,2-プロパンジオールを200μlのキャリヤーに溶解して、高速液体クロマトグラフィ−による光学異性体の分析を行った。3-クロロ-1,2-プロパンジオールの光学純度はR体83%eeであった。
終濃度110mMとなるようエピクロロヒドリンを1MTris-HCl緩衝液(pH8.0)35mlに添加した後、菌体を懸濁した以外は実施例1と同様の方法で行った。
結果、86mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。3-クロロ-1,2-プロパンジオールの光学純度は、R体32%eeであった。
調製例2で作製された培地に、リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter )MRC01株(FERM AP-20452)を接種し30℃で48時間振とう培養を行った。この培養液を各々遠心分離(15000xg)して菌体を集菌した。これに100mM 燐酸緩衝液(pH7.0)100mlを加え、遠心分離(15000xg)して菌体の洗浄を行った。同緩衝液50mlに、菌を懸濁し菌液とした。その後、156mMの1,3-ジクロロ-2-プロパノール溶液(1M燐酸緩衝液pH7.0)100mlに上記菌液50mlを混合し、反応を20℃で30分間振とうして行った。反応後、反応液を遠心分離(15000xg)し、菌体を除去した。実施例1と同様の方法で分析した結果、156mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。3-クロロ-1,2-プロパンジオールの光学純度は、S体95%eeであった。
菌体の洗浄を100mM Tris-HCl緩衝液100mlで行った以外は実施例3と同様の方法で行った。同緩衝液50mlに、菌を懸濁し菌液とした。終濃度110mMとなるようエピクロロヒドリンを1MTris-HCl緩衝液(pH8.0)35mlに添加し、上記菌液50mlを混合し、反応を30℃で23時間振とうして行った以外は実施例3と同様の方法で行った。その結果、70mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。シロップの比旋光度は、S体の光学純度5%eeであった。
100mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液140mlで3回洗浄した以外は実施例1と同様の方法で行った。同緩衝液50mlに、培養して得られた菌を遠心分離(15000xg)して得たものを懸濁し、超音波で菌体を破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離して上清を回収した。この上清を粗酵素液とした。粗酵素液に1,3-ジクロロ−2−プロパノールを終濃度50mMになるよう添加し、反応を20℃で50分間振とうして行った。分析した結果、36mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。光学純度が87%eeで(R)-3-クロロ-1,2-プロパンジオールあった。
実施例3と同様の方法でリゾビウム・ラジオバクター (Rhizobium radiobacter )MRC01株(FERM AP-20452)の菌体を得た。実施例5と同様の方法で粗酵素液を得た。得られた粗酵素液に1,3-ジクロロ−2−プロパノールを終濃度50mMになるよう添加し、反応を20℃で30分間振とうして行った。分析した結果、46mMの3-クロロ-1,2-プロパンジオールが生成していた。光学純度が96%eeの(S)-3-クロロ-1,2-プロパンジオールであった。
Claims (4)
- 微生物がリゾビウム・ラジオバクター (Rhizobium radiobacter )MRC01株(FERM AP-20452)である請求項1記載の微生物。
- 微生物が、レイフソニア エスピー (Leifsonia sp.)MRC03株(FERM AP-20453)である請求項1記載の微生物。
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